特許第6737354号(P6737354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6737354
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501M
   H02K1/27 501K
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-20270(P2019-20270)
(22)【出願日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】上野 駿
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0007131(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第107565723(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104242509(CN,A)
【文献】 特開2016−073056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0179779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心に、径方向断面視において各d軸を中心として線対称に離間して配され、それぞれの四隅には外向きに広がる凹部が形成される複数の外径側磁石溝と、
前記回転子鉄心に、径方向断面視において各前記d軸を中心として線対称に離間して配され、それぞれの各前記d軸側の一端は、前記外径側磁石溝における各前記d軸側の一端よりも内径側に位置し、それぞれの四隅には外向きに広がる凹部が形成される複数の内径側磁石溝と、
径方向断面視において矩形状であり、各前記外径側磁石溝に嵌合する複数の外径側磁石と、
径方向断面視において矩形状であり、各前記内径側磁石溝に嵌合する複数の内径側磁石と、
前記両外径側磁石溝の凹部間に湾曲状に形成された外径側ブリッジ部と、
前記両内径側磁石溝の凹部間に湾曲状に形成された内径側ブリッジ部と、を備え、
前記外径側磁石溝の各前記凹部のなかで最も前記d軸に近い凹部の径方向の長さをLb1とし、前記内径側磁石溝の各前記凹部のなかで最も前記d軸に近い凹部の径方向の長さをLb2とすると、Lb2>Lb1となり、
前記内径側ブリッジ部が、外径側ブリッジ部よりも緩やかに湾曲することを特徴とする回転子。
【請求項2】
前記外径側磁石の径方向断面視における長手方向の長さをW1とし、前記内径側磁石の径方向断面視における長手方向の長さをW2とすると、0.42≦W1/W2≦0.63となる
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
さらに、0.45≦W1/W2≦0.63となる
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
前記外径側磁石と回転子軸心との最短距離をL1、前記外径側磁石の最もq軸側の角部と前記回転子軸心との距離をL2、前記内径側磁石と前記回転子軸心との最短距離をL3、内径側磁石と前記回転子軸心との最大距離をL4とすると、α=(L1−L3)/(L4−L3),0.5≦α≦1,L1<L2となる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項5】
さらに、0.5≦α≦0.85となる
ことを特徴とする請求項4に記載の回転子。
【請求項6】
前記内径側磁石は、複数の内径側磁石片からなる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に設けられる回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機に設けられる回転子のうち、磁石が埋め込まれた回転子においては、磁石の量を増加させることなくトルクを向上させるため、例えば下記特許文献1に開示されるように、磁石を多層配置とし、突極比を向上させる手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5259927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、磁石を多層配置にすることで、トルクリプルを低減しつつ出力を向上させることが開示されているが、回転子の強度については検討されておらず、回転子が高速回転する場合に損傷する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、機械的強度を確保しつつ、トルク及び回転速度を向上させることを可能とする回転子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明に係る回転子は、
回転子鉄心に、径方向断面視において各d軸を中心として線対称に離間して配され、それぞれの四隅には外向きに広がる凹部が形成される複数の外径側磁石溝と、
前記回転子鉄心に、径方向断面視において各前記d軸を中心として線対称に離間して配され、それぞれの各前記d軸側の一端は、前記外径側磁石溝における各前記d軸側の一端よりも内径側に位置し、それぞれの四隅には外向きに広がる凹部が形成される複数の内径側磁石溝と、
径方向断面視において矩形状であり、各前記外径側磁石溝に嵌合する複数の外径側磁石と、
径方向断面視において矩形状であり、各前記内径側磁石溝に嵌合する複数の内径側磁石とを備え、
前記外径側磁石溝の各前記凹部のなかで最も前記d軸に近い凹部の径方向の長さをLb1とし、前記内径側磁石溝の各前記凹部のなかで最も前記d軸に近い凹部の径方向の長さをLb2とすると、Lb2>Lb1となる
ことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するための第2の発明に係る回転子は、
上記第1の発明に係る回転子において、
前記外径側磁石の径方向断面視における長手方向の長さをW1とし、前記内径側磁石の径方向断面視における長手方向の長さをW2とすると、0.42≦W1/W2≦0.63となる
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するための第3の発明に係る回転子は、
上記第2の発明に係る回転子において、
さらに、0.45≦W1/W2≦0.63となる
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための第4の発明に係る回転子は、
上記第1から3のいずれか1つの発明に係る回転子において、
前記外径側磁石と回転子軸心との最短距離をL1、前記外径側磁石の最もq軸側の角部と前記回転子軸心との距離をL2、前記内径側磁石と前記回転子軸心との最短距離をL3、内径側磁石と前記回転子軸心との最大距離をL4とすると、α=(L1−L3)/(L4−L3),0.5≦α≦1,L1<L2となる
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための第5の発明に係る回転子は、
上記第4の発明に係る回転子において、
さらに、0.5≦α≦0.85となる
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための第6の発明に係る回転子は、
上記第1から5のいずれか1つの発明に係る回転子において、
前記内径側磁石は、複数の内径側磁石片からなる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る回転子によれば、機械強度を確保しつつ、トルク及び回転速度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1における回転子鉄心の部分拡大図である。
図2】本発明の実施例1に係る回転子の部分拡大図である。
図3】外径側ブリッジ部の径方向の長さよりも内径側ブリッジ部の径方向の長さの方が長く、さらに、内径側磁石溝のd軸側の一端が外径側磁石溝に接近した形状となっている回転子の部分拡大図である。
図4】本発明の実施例1における、磁石幅比とトルク変化率との関係の解析結果を表すグラフである。
図5】本発明の実施例1における、外径側磁石と回転子の軸心との最短距離、外径側磁石の最もq軸側の角部と回転子の軸心との距離、内径側磁石と回転子の軸心との最短距離、及び、内径側磁石と回転子の軸心との最大距離と、トルク変化率との関係の解析結果を表すグラフである。
図6】本発明の実施例2に係る回転子の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る回転子について、実施例にて図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例1]
まず、図1,2の部分拡大図を用いて、本実施例に係る回転子(回転子1)の構成を説明する。図1,2中において、破線で表しているd軸は主磁束方向を、q軸はd軸と電気的及び磁気的に直交する方向を、それぞれ示す一般的な表記である。そして図1,2は、1つのq軸からそのq軸に対して周方向に隣り合うq軸までの範囲を表している。
【0016】
回転子1は、磁石を径方向に多層配置する構造であり、複数の磁石溝12〜15を有する回転子鉄心11、及び、この磁石溝12〜15にそれぞれ配される、複数の径方向断面視において矩形状の磁石21〜24を備えている。なお、回転子1のうち、図示されていない部分においても、図示されている部分と同様の構成となっているが、以下では説明の重複を避けるため省略する。
【0017】
図2に示すように、2つの外径側磁石溝12,13は(径方向断面視において)、回転子鉄心11の外縁11a近傍で、d軸を中心として線対称に配されている。また、外径側磁石溝12,13は、それぞれ、d軸側の一端(後述する凹部12c,12d,13c,13d)が、q軸側の他端(後述する凹部12a,12b,13a,13b)よりも回転子1の内径側に位置するように延伸して形成されている。
【0018】
同じく図2に示すように、2つの内径側磁石溝14,15は(径方向断面視において)、d軸を中心として線対称に配されている。また、内径側磁石溝14,15は、それぞれ、d軸側の一端(後述する凹部14c,14d,15c,15d)が、q軸側の他端(後述する凹部14a,14b,15a,15b)よりも回転子1の内径側に位置するように延伸して形成されている。
【0019】
また、内径側磁石溝14,15のd軸側の一端(後述する凹部14c,14d,15c,15d)は、上述した外径側磁石溝12,13におけるd軸側の一端よりも内径側に位置している。
【0020】
さらに、内径側磁石溝14,15のq軸側の他端(後述する凹部14a,14b,15a,15b)は、周方向において、上述した外径側磁石溝12,13におけるq軸側の他端と当該他端に最も近いq軸との間に位置している。
【0021】
そして、磁石溝12〜15は、それぞれ四隅には外向きに広がる凹部が形成されている。すなわち、図1に示すように、外径側磁石溝12の四隅には凹部12a〜12dが、外径側磁石溝13の四隅には凹部13a〜13dが、内径側磁石溝14の四隅には凹部14a〜14dが、内径側磁石溝15の四隅には凹部15a〜15dが、それぞれ形成されている。
【0022】
図2に示すように、外径側磁石溝12,13に配される磁石を、それぞれ外径側磁石21,22とする。外径側磁石21,22は、外径側磁石溝12,13(の各凹部以外の部分)に嵌合して配されている。同じようにして、内径側磁石溝14,15に配される磁石を、それぞれ内径側磁石23,24とする。内径側磁石23,24は、内径側磁石溝14,15(の各凹部以外の部分)に嵌合して配されている。
【0023】
磁石溝12〜15にそれぞれ磁石21〜24が1つずつ配された状態において、上記各凹部と磁石12〜15との間には、それぞれ非磁性領域(フラックスバリア)としての空隙が形成される形状となっている。
【0024】
すなわち、図2に示すように、外径側磁石溝12については、凹部12aと外径側磁石21との間には空隙12Aが、凹部12bと外径側磁石21との間には空隙12Bが、凹部12cと外径側磁石21との間には空隙12Cが、凹部12dと外径側磁石21との間には空隙12Dが、それぞれ形成されることとなる。ただし、このうち空隙12Cについては、外径側磁石21の角部が凹部12cに当接していることで、空間が2分割されている。
【0025】
そして、その他の磁石溝13,14,15の凹部13a〜13d,14a〜14d,15a〜15についても同様に、磁石22〜24がそれぞれ配された状態において、空隙13A〜13D,14A〜14D,15A〜15Dがそれぞれ形成され、空隙13C,14C,15Cにおいては、磁石22,23,24により、それぞれ空間が2分割されている。
【0026】
また、回転子鉄心11は、外径側磁石溝12の凹部12cと外径側磁石溝13の凹部13cとの間に、外径側ブリッジ部16が形成されており、内径側磁石溝14の凹部14dと内径側磁石溝15の凹部15dとの間には、内径側ブリッジ部17が形成されている。
【0027】
換言すれば、回転子鉄心11において、外径側磁石溝12と外径側磁石溝13とは互いに離間して形成されており、内径側磁石溝14と内径側磁石溝15も互いに離間して形成されているということである。
【0028】
回転子鉄心11は、図1に示すように、外径側ブリッジ部16の径方向の長さ、すなわち凹部12c,13c(外径側磁石溝12,13の各凹部のなかで最もd軸に近い凹部)の径方向の長さを、Lb1とし、内径側ブリッジ部17の径方向の長さ、すなわち凹部14d,15d(外径側磁石溝14,15の各凹部のなかで最もd軸に近い凹部)の径方向の長さを、Lb2とすると、Lb2>Lb1となっている。
【0029】
そして、図2に示すように、外径側磁石21,22の(径方向断面視における)長手方向(図1の外径側磁石溝12,13の延伸方向)の長さをW1、内径側磁石23,24の(径方向断面視における)長手方向(図1の内径側磁石溝14,15の延伸方向)の長さをW2とすると、0.42≦W1/W2≦0.63、好ましくは、0.45≦W1/W2≦0.63となる。
【0030】
さらに、外径側磁石21,22と回転子1の軸心(図示略)との最短距離をL1、外径側磁石21,22の最もq軸側の角部と回転子1の軸心との距離をL2、内径側磁石23,24と回転子1の軸心との最短距離をL3、内径側磁石23,24と回転子1の軸心との最大距離をL4とすると、α=(L1−L3)/(L4−L3),0.5≦α≦1,L1<L2となるものとする。ただし、好ましくは0.5≦α≦0.85とする。
以上が回転子1の構成についての説明である。
【0031】
ここで、仮に、外径側磁石21,22と内径側磁石23,24との磁石幅比を、W1/W2<0.42とすると、外径側磁石21,22のサイズが小さすぎてしまい、マグネットトルクが低下するが、当該磁石幅比を、0.63<W1/W2としても、外径側磁石21,22のサイズが大きすぎて、回転子鉄心11の磁路(特に後述する磁路M2)が狭くなってしまい、リラクタンストルクが低下する。
【0032】
図4は、磁石幅比W1/W2とトルク変化率との関係の解析結果を表すグラフである。なお、当該グラフにおけるトルク変化率については、W1/W2=0.35を基準(0%)としている。そして、当該グラフには、W1/W2<0.42及び0.63<W1/W2の領域において、トルク率が大きく減少することが示されている。
【0033】
したがって、本実施例のように、0.42≦W1/W2≦0.63、より好ましくは、0.45≦W1/W2≦0.63とすることで、高トルク特性を有することができる。
【0034】
また、一般的に、磁石を径方向に多層配置する構造の回転子の回転中においては、外径側ブリッジ部16に比べ、内径側ブリッジ部17の方が大きな応力が発生する。これは、回転子1の内径側に回転軸を焼き嵌めする製造工程に起因するもので、回転子1の内径側は、遠心力に加え、焼き嵌め時の応力を受けるためである。
【0035】
そこで、回転子1は、Lb2>Lb1とすることで、内径側ブリッジ17の方が外径側ブリッジ部16より緩やかに湾曲することとなり、強度を高めることができ、高速回転時の損傷を防止することができる。
【0036】
しかしながら、単にLb2>Lb1の関係にするだけでは、例えば、図3の回転子11´の形状であっても成立する。図3に示す回転子1´は、回転子鉄心11´に形成される磁石溝12´〜15´のうち、外径側磁石溝12´,13´は、図1,2における外径側磁石溝12,13と同様の形状であるが、内径側磁石溝14´,15´は、図1,2における内径側磁石溝14,15に比べ、d軸側の一端が外径側磁石溝12´,13´に接近した形状となっている。
【0037】
磁石を径方向に多層配置する構造の回転子においては、図2に一点鎖線矢印で示すように、外径側磁石溝13と外縁11aとの間を通る磁路M1、外径側磁石溝13と内径側磁石溝15との間を通る磁路M2、及び、内径側磁石溝15とそれに最も近いq軸との間を通る磁路M3がある。
【0038】
図3に示す回転子1´の場合、外径側磁石溝12´,13´と内径側磁石溝14´,15´との距離が狭くなる。すなわち、図3中に一点鎖線矢印で示すような、外径側磁石溝12´,13´と内径側磁石溝14´,15´との間を通る磁路M2´(図2の磁路M2に対応)の幅が、特に破線円A周辺の位置(d軸側の一端周辺)において狭くなる。これにより、磁気飽和を引き起こしてリラクタンストルクが低下する虞がある。
【0039】
そこで、磁石21〜24のサイズを、0.42≦W1/W2≦0.63、より好ましくは、0.45≦W1/W2≦0.63とするとともに、磁石溝12〜15の配置を、α=(L1−L3)/(L4−L3),0.5≦α≦1,L1<L2とすることで、磁石21〜24の径方向断面視における断面積を同一にしながら、磁石溝12〜15間の距離、すなわち、磁路M1、磁路M2、及び、磁路M3を確保することができる。これにより、回転子1は、磁気飽和が抑制され、トルクの向上を実現することができる。
【0040】
図5は、αとトルク変化率との関係の解析結果を表すグラフである。なお、当該グラフは、W1/W2=0.57,L3=45mm,L4=59mmを前提条件とし、トルクの変化率については、α=0.5を基準(0%)としている。当該グラフには、α<0.5の領域はα≧0.5の領域よりトルクの減少率が大きいことが示されている。
【0041】
さらに、トルクリプルは、α<0.5の領域では一度減少してから大きく増加する。これは、すなわち、製造ばらつきに対する感度が大きい(影響を受けやすい)ことを示している。
【0042】
よって、αは0.5≦α≦1が適しており、好ましくは、トルクが最大、トルクリプルは最小となる0.5≦α≦0.85の範囲が適している。
【0043】
このようにして本実施例においては、特に大きい応力が発生する内径側ブリッジ部を緩やかに湾曲させることで、機械強度が向上し、高速回転を可能とするとともに、外径側磁石溝と内径側磁石溝との距離を広げることで、ブリッジ部を緩やかに湾曲させることで非磁性領域が大きくなっても、磁気飽和すなわちトルクの低下を抑制することができ、高トルクかつ高速回転を可能とするものである。
【0044】
[実施例2]
図6の部分拡大図を用いて、本実施例に係る回転子(回転子2)の構成を説明する。以下では、実施例1の回転子1と相違する構成を中心に説明し、実施例1の回転子1と同一の構成については極力説明を省略する。
【0045】
なお、図6中においても、図1,2同様、破線で表しているd軸は主磁束方向を、q軸はd軸と電気的及び磁気的に直交する方向を、それぞれ示しており、図6は、1つのq軸からそのq軸に対して周方向に隣り合うq軸までの範囲を表していることになる。
【0046】
回転子2では、図6に示すように、内径側磁石溝14に収まる内径側磁石(回転子1における内径側磁石23)が、(径方向断面視における)長手方向に並べられた内径側磁石片23a,23bから成るものとし、内径側磁石溝15に収まる内径側磁石(回転子1における内径側磁石24)が、(径方向断面視における)長手方向に並べられた内径側磁石片24a,24bから成るものとしている。
【0047】
内径側磁石片23a,23bは、内径側磁石溝14に収まる内径側磁石(回転子1における内径側磁石23)を(径方向断面視における)長手方向に2等分したものであり、内径側磁石片24a,24bは、内径側磁石(回転子1における内径側磁石24)を(径方向断面視における)長手方向に2等分したものである。
【0048】
回転子2は、上述の構成とすることで、磁石の損失を低減することができ、それにより、モータ効率が向上し、温度上昇も低減されるため、より長い連続運転時間を実現することができる。
【0049】
なお、本実施例においては、内径側磁石溝14,15に収まる内径側磁石が、それぞれ(径方向断面視において)長手方向に2等分されたものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、内径側磁石が、分割の角度、分割の個数、互いの分割幅比に依らず、複数の内径側磁石片からなるものとすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、回転電機に設けられる回転子として好適である。
【符号の説明】
【0051】
1,1´,2 回転子
11,11´ 回転子鉄心
11a (回転子鉄心の)外縁
12,13,12´,13´ 外径側磁石溝
14,15,14´,15´ 内径側磁石溝
12a〜12d,13a〜13d,14a〜14d,15a〜15d 凹部
12A〜12D,13A〜13D,14A〜14D,15A〜15D 空隙
16 外径側ブリッジ部
17 内径側ブリッジ部
21,22 外径側磁石
23,24 内径側磁石
23a,23b,24a,24b 内径側磁石片
M1,M2,M2´,M3 磁路
【要約】
【課題】機械強度を確保しつつ、トルク及び回転速度を向上させることを可能とする回転子を提供する。
【解決手段】複数の外径側磁石溝12,13と、複数の内径側磁石溝14,15と、各外径側磁石溝12,13に嵌合する複数の外径側磁石21,22と、各内径側磁石溝14,15に嵌合する複数の内径側磁石23,24とを備え、外径側磁石溝12,13の各凹部12a〜12d,13a〜13dのなかで最もd軸に近い凹部12c,13cの径方向の長さをLb1とし、内径側磁石溝14,15の各凹部のなかで最も前記d軸に近い凹部14d,15dの径方向の長さをLb2とすると、Lb2>Lb1となるものとする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6