(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに接続されてコイル状又はループ状の導体の主要部又は全部を形成する第1導体及び第2導体と、前記第2導体に接続されて、前記コイル状又は前記ループ状の導体に電気的に接続されるRFICとを備え、
前記第1導体は、前記第2導体に接続された状態で、前記コイル状又は前記ループ状の周回範囲より外方へ端部が突出することで形成される端子を有し、
前記RFICのキャパシタ及び前記端子を有する前記第1導体により形成される前記コイル状又は前記ループ状の導体のインダクタにより、RFIDタグとして用いる周波数帯域内の共振周波数を有するLC共振回路が形成されていることを特徴とする、
RFIDタグ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0011】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係るRFIDタグ101の外観斜視図である。
図2(A)、
図2(B)は、RFIDタグ101の構造とその構成要素を示す図である。
図3はRFIDタグ101の縦断面図である。
【0012】
図1に表れているように、第1の実施形態に係るRFIDタグ101は、その内部に第1導体1及び第2導体21,22を有し、外部に突出する金属製の端子T1,T2を有する。後に示すように、この端子T1,T2を導電部材に溶接することで、RFIDタグ付き物品が構成される。
【0013】
図2(B)に表れているように、RFIDタグ101は、第1導体素子10、絶縁性基材5及びRFIC3で構成されている。具体的には、絶縁性基材5にRFIC3及び第1導体素子10が実装されることで、
図1に示したRFIDタグ101が構成される。
【0014】
第1導体素子10は、第1導体1、磁石4及びこれらを覆う成型樹脂6によって構成されている。つまり、第1導体1の一部及び磁石4の全体は成型樹脂6によって樹脂モールドされて一体化されている。磁石4は直方体形状であり、その三面が第1導体1で囲まれる状態で、成型樹脂6で覆われている。第1導体1は、例えば、鉄、銅、黄銅、ステンレススチール、チタン、アルミニウム等の金属板の成形体である。磁石4は、例えばフェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石、ネオジム磁石等である。絶縁性基材5は例えばガラス・エポキシ基材であり、第2導体21,22は例えば銅箔パターンである。成型樹脂6は例えばエポキシ樹脂等の硬質な樹脂材料の成形体である。
【0015】
絶縁性基材5には第2導体21,22が形成されている。第2導体21,22上には、はんだペーストパターンSP1,SP3が塗布形成される。RFIC3は、はんだペーストパターンSP3,SP3上に載置され、第1導体素子10の端子T1,T2の根元部は、はんだペーストパターンSP1,SP1上に載置され、その後のはんだリフロー工程によって、絶縁性基材5上にRFIC3及び第1導体素子10が実装される。つまり、RFIC3及び第1導体1は第2導体21,22に電気的に接続される。
【0016】
上記はんだペーストパターンSP1,SP1上には、第1導体素子10の下面に露出する端子T1,T2が接し、上記はんだリフロー工程によって、第2導体21,22に端子T1,T2がはんだ付けされる。
【0017】
図2(A)に表れているように、第1導体1は金属板が4箇所で直角に折り曲げ加工されることで成形された部材である。
図2(A)、
図2(B)等の各図において、第1導体1の折り曲げ部を、その内面も外面も丸みが無いように描いているが、折り曲げ部は丸みを帯びた形状であってもよい。この第1導体1が第2導体21,22に接続された状態で、第1導体1及び第2導体21,22によってループ状の導体が形成される。そして、このループ状の周回範囲より外方へ端子T1,T2が突出する構造となる。上記RFIC3は、第1導体1及び第2導体21,22によるループ状の導体の途中に挿入されるので、つまり、第1導体1、第2導体21,22及びRFIC3によって電気的なループが構成される。
【0018】
上記ループ状の導体は、
図1、
図2(A)、
図2(B)に示す直交XYZ座標において、Y軸に平行な方向がループ状導体の巻回軸方向である。このループ状導体は巻回軸方向に視て矩形であり、第1導体1は矩形の三辺を形成し、第2導体21,22は矩形の残る一辺を形成する。
【0019】
図4(A)はRFIDタグ付き物品301の構成途中の状態を示す図であり、
図4(B)はRFIDタグ付き物品301の構成を示す図である。このRFIDタグ付き物品301は、導電部材201とRFIDタグ101とで構成される。まず、
図4(A)に示すように、導電部材201上にRFIDタグ101を載置し、RFIDタグ101の端子T1,T2を導電部材201の表面に近接させる。その後、RFIDタグ101の端子T1,T2を導電部材201に溶接することで、
図4(B)に示すRFIDタグ付き物品301が構成される。
【0020】
上記導電部材201は、例えば鉄(鋼)性の部材であり、
図4(A)に示すように、導電部材201上にRFIDタグ101を載置した際、磁石4が導電部材201を吸引するので、RFIDタグ101は導電部材201に吸着された状態となる。したがって、導電部材201の表面からRFIDタグ101が脱落するおそれが低減される。また、上記溶接時にRFIDタグ101の位置ずれや傾きが防止でき、定まった位置に容易に取り付けることができる。
【0021】
上記溶接の方式としては、例えばアーク溶接やレーザ溶接のような「融接」、抵抗スポット溶接のような「圧接」が挙げられる。
【0022】
図5はRFIDタグ付き物品301の斜視図である。このRFIDタグ付き物品301は、導電部材201及びRFIDタグ101によって構成される。RFIDタグ101は、その端子T1,T2が導電部材201に溶接されている。この状態で、RFIDタグ付き物品301が構成される。
【0023】
RFIDタグ101は、RFIDタグリーダ(ライタ)と磁界結合する状態で通信する。つまり、RFIDタグリーダ(ライタ)から発生される磁束が、第1導体1、第2導体21,22及びRFIC3によって形成される電気的なループの開口面を鎖交する状態で通信が行われる。
【0024】
なお、第1導体1及び第2導体21,22は導電部材201に電気的に導通する。このことにより、導電部材201を放射体の一部として利用してもよい。
【0025】
図6はRFIDタグ付き物品301の等価回路図である。
図6において、インダクタL1は、第1導体1及び第2導体21,22によるループで構成されるインダクタである。また、この例では、RFIC3をキャパシタC3及び抵抗素子R3の並列回路で表している。
【0026】
第1導体1及び第2導体21,22によるループの内側には磁石4が存在するので、この磁石4は磁芯として作用する。そのため、実質的に1ターンのループでありながら、所定のインダクタンスが容易に得られる。また、全体に小型でありながら、所定の共振周波数に定めることができる。
【0027】
図6において、キャパシタC3及びインダクタL1によってLC並列共振回路が構成されている。このLC並列共振回路の共振周波数はRFIDタグとして用いる周波数帯内の周波数又はその近傍の周波数である。
【0028】
次に、RFIDタグ付き物品について示す。
図7はRFIDタグ付き物品302の斜視図である。このRFIDタグ付き物品302は、物品本体210、導電部材201及びRFIDタグ101で構成される。RFIDタグ101は、RFIDタグ付き物品302の一部である導電部材201にねじ留めされている。この例では、物品本体210は電気的には絶縁体で構成されている。
【0029】
このように、RFIDタグ付き物品302の一部である導電部材201にRFIDタグ101を取り付けることにより、RFIDタグ付き物品を構成してもよい。
【0030】
図8はRFIDタグ付き物品303の部分平面図である。このRFIDタグ付き物品303は、止血用鉗子や医療用はさみ等の鋼製小物202にRFIDタグ101を取り付けた物品である。この鋼製小物202にRFIDタグ101の端子が溶接されている。
【0031】
図8に示す鋼製小物202のように、RFIDタグ101を取り付ける鋼製小物202が医療器具である場合、滅菌処理のために高温環境下に晒されることがある。鋼製小物202に対してRFIDタグ101を接着剤により取り付けた場合には、当該接着剤からアウトガスが発生するおそれがある。また、鋼製小物202に対してRFIDタグ101をゴムチューブにより取り付けた場合には、当該ゴムチューブ内を滅菌することができないので、十分に滅菌処理を行うことができない。
【0032】
これに対して、本実施形態によれば、鋼製小物202に対してRFIDタグ101を、接着剤やゴムチューブを用いることなく、溶接することにより取り付けることができる。
【0033】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1の実施形態とは第1導体及び第2導体の構成が異なるRFIDタグ及びRFIDタグ付き物品について例示する。
【0034】
図9は、第2の実施形態に係るRFIDタグ102の外観斜視図である。
図10(A)、
図10(B)は、RFIDタグ102の構造とその構成要素を示す図である。
【0035】
図9に表れているように、第2の実施形態に係るRFIDタグ102は、その内部に第1導体1A,1B及び第2導体21,22を有し、外部に突出する金属製の端子T1,T2を有する。第1の実施形態で示したRFIDタグ付き物品と同様に、この端子T1,T2を導電部材に溶接することで、RFIDタグ付き物品が構成される。
【0036】
RFIDタグ102は、
図10(B)に表れているように、第1導体素子10、絶縁性基材5及びRFIC3で構成されている。具体的には、絶縁性基材5にRFIC3及び第1導体素子10が実装されることで、
図9に示したRFIDタグ102が構成される。
【0037】
第1導体素子10は、第1導体1A,1B、磁石4及びこれらを覆う成型樹脂6によって構成されている。つまり、第1導体1A,1Bの一部及び磁石4の全体は成型樹脂6によって樹脂モールドされて一体化されている。磁石4は直方体形状であり、その三面が第1導体1A,1Bで囲まれる状態で、成型樹脂6で覆われている。第1導体1A,1Bの材料及び磁石4の材料は第1の実施形態で示したものと同様である。
【0038】
絶縁性基材5には、第2導体21,22及び第1導体実装用電極23,24が形成されている。RFIC3及び第1導体素子10は、はんだリフロー工程によって、絶縁性基材5上に実装される。なお、
図10(A)、
図10(B)はでははんだペーストの図示は省略している。
【0039】
図10(A)に表れているように、第1導体1A,1Bは、それぞれ金属板が4箇所で直角に屈折されることで成形された部材である。第1導体1Aの一端は第2導体21の端部に接続され、第1導体1Aの他端は第1導体実装用電極23に接続される。また、第1導体1Bの一端は第2導体22の端部に接続され、第1導体1Bの他端は第1導体実装用電極24に接続される。
【0040】
第1導体1A,1Bが第2導体21,22に接続され、さらに、後に示すように、端子T1,T2が導電部材201に接続された状態で、第1導体1A,1B、第2導体21,22及び導電部材によって、約2ターンのコイル状の導体が形成される。そして、このコイル状の周回範囲より外方へ端子T1,T2が突出する構造となる。上記RFIC3は、第1導体1A,1B及び第2導体21,22によるコイル状の導体の途中に挿入されるので、つまり、第1導体1A,1B、第2導体21,22及びRFIC3によって電気的なループが構成される。
【0041】
上記コイル状の導体は、
図9、
図10(A)、
図10(B)に示す直交XYZ座標において、Y軸に平行な方向がコイル状導体の巻回軸方向である。このコイル状導体は巻回軸方向に視て矩形であり、第1導体1A,1Bは矩形の三辺を形成し、第2導体21,22は矩形の残る一辺を形成する。
【0042】
図11はRFIDタグ付き物品302の斜視図である。このRFIDタグ付き物品302は、導電部材201及びRFIDタグ102によって構成される。RFIDタグ102は、その端子T1,T2が導電部材201に溶接されている。上述のとおり、この状態で、第1導体1A,1B、第2導体21,22及び導電部材201によって、約2ターンのコイル状の導体が形成され、このコイル状の導体経路の途中にRFIC3が挿入された構造となる。このようにして、RFIDタグ付き物品302が構成される。
【0043】
第2の実施形態では、導電部材201をコイル状導体の一部として利用できるので、つまり、導電部材201が第2導体21,22に対して並列されないので、RFIDタグの設計が容易となり、安定した特性を得やすい。
【0044】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、樹脂成型を行う領域が第1、第2の実施形態とは異なるRFIDタグ及びRFIDタグ付き物品の例を示す。
【0045】
図12は第3の実施形態に係るRFIDタグ103の外観斜視図である。
図13(A)はRFIDタグ103の製造途中での正面図であり、
図13(B)はRFIDタグ103の縦断面図である。
【0046】
図12に表れているように、第3の実施形態に係るRFIDタグ103は、その内部に第1導体1及び第2導体21,22を有し、外部に突出する金属製の端子T1,T2を有する。第2導体21,22は絶縁性基材5に形成されていて、この絶縁性基材5にRFIC3が実装されている。磁石4は第1導体1に嵌合されている。
【0047】
第3の実施形態に係るRFIDタグ103は、
図13(A)に示すように、まず絶縁性基材5にRFIC3を実装し、続いて絶縁性基材5に第1導体1を実装する。磁石4は第1導体1に嵌合されているので、絶縁性基材5と磁石4との間に間隙が形成される。その後、
図13(B)に示すように、絶縁性基材5の上部に成型樹脂6を覆う。つまり、第1導体1の一部及び磁石4の全体は成型樹脂6によって樹脂モールドされて一体化される。
【0048】
なお、第1導体1が鉄や鉄合金等の強磁性体金属である場合には、上記「嵌合」によらずとも、磁石4は第1導体1に吸着するので、その状態で上記樹脂モールドを行ってもよい。
【0049】
図14(A)は、RFIDタグ付き物品304の構成途中の状態を示す図であり、
図14(B)は、RFIDタグ付き物品304の構成を示す図である。このRFIDタグ付き物品304は、導電部材201とRFIDタグ103とで構成される。まず、
図14(A)に示すように、導電部材201上にRFIDタグ103を載置し、RFIDタグ103の端子T1,T2を導電部材201の表面に近接させる。その後、RFIDタグ103の端子T1,T2を導電部材201に溶接することで、
図14(B)に示すRFIDタグ付き物品304が構成される。
【0050】
《その他の実施形態》
以上に示した例では、製造工程のどの段階でも、図面ではRFIDタグ単体での状態を示したが、連続する多数のRFIDタグを同時に製造し、最終工程で個々のRFIDタグに分離してもよい。例えば、個々の第1導体1が、それらの端子T1,T2を介して、Y軸方向に延びるフープ材に繋がった状態で製造し、最終段階で、各RFIDタグをフープ材から切断分離してもよい。
【0051】
また、絶縁性基材5についても、マザーボード状態で各工程での製造を行い、最後にマザーボードを分割することで、多数の絶縁性基材5を同時に製造してもよい。
【0052】
また、以上に示した例では、RFIC3内に設けられた容量成分をLC共振回路のキャパシタとして用いる構成を示したが、RFIC3に並列接続されるチップキャパシタを絶縁性基材5に実装してもよい。また、絶縁性基材5に、導体パターンによって共振回路のキャパシタを構成してもよい。
【0053】
また、絶縁性基材5として、複数の基材を積層した多層基板を用いて、内層に導体パターンを形成してもよい。また、樹脂材料ではなく、セラミック材料による基板を用いてもよい。また、第1面側導体パターン、第2面側導体パターンは金属箔ではなく、導電性材料の印刷によって形成してもよい。
【0054】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
RFIDタグ(101)は、互いに接続されてコイル状又はループ状の導体の主要部又は全部を形成する第1導体(1)及び第2導体(21,22)と、第2導体(21,22)に接続される、または第2導体(21,22)と電磁界結合する、RFIC(3)と、を備える。第1導体(1)は、第2導体(21,22)に接続された状態で、コイル状又はループ状の周回範囲より外方へ端部が突出することで形成される端子(T1,T2)を有する。