(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737503
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】3Dスキャナ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20200730BHJP
G03B 15/00 20060101ALI20200730BHJP
G03B 17/56 20060101ALI20200730BHJP
G03B 37/00 20060101ALI20200730BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G03B15/00 W
G03B15/00 H
G03B17/56 A
G03B37/00 A
H04N5/225
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-178390(P2016-178390)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-44812(P2018-44812A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】316014722
【氏名又は名称】株式会社VRC
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 道久
(72)【発明者】
【氏名】謝 英弟
【審査官】
山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−201670(JP,A)
【文献】
特開2005−338977(JP,A)
【文献】
特開昭63−304108(JP,A)
【文献】
特開2001−264035(JP,A)
【文献】
特開平11−014320(JP,A)
【文献】
実開昭62−140316(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0300383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G03B 15/00−15/035、15/06−15/16
G03B 17/56−17/58
G03B 35/00−37/06
H04N 5/222−5/257
A61B 5/06−5/22
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被写体を収容する空間を有する固定構造体と、
前記空間を貫く仮想的な回転軸を中心に回転する可動構造体と、
前記可動構造体の内周面において、当該可動構造体の回転方向と交わる方向に配置され、前記被写体の表面状態を検知する第1センサー群と、
前記可動構造体の内周面において、前記回転方向と交わる方向に配置され、前記第1センサー群に対し当該回転方向に位置し、前記被写体の表面状態を検知する第2センサー群と、
前記固定構造体に固定され、前記可動構造体を回転させるためのモーターと
を有する3Dスキャナ。
【請求項2】
前記可動構造体は、
設置面から少なくとも上向きに延びる複数の第1軸材と、
前記複数の第1軸材と交差する方向に延び、当該複数の第1軸材に固定された第2軸材と、
前記複数の第1軸材の一端に固定され、前記回転軸に相当するシャフトを有する支持部と
を有し、
前記固定構造体は、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受
を有する
請求項1に記載の3Dスキャナ。
【請求項3】
前記第2軸材の外周側に設けられたタイミングベルトと、
前記モーターの出力軸に設けられ、前記タイミングベルトと噛み合うタイミングプーリと
を有する請求項2に記載の3Dスキャナ。
【請求項4】
前記タイミングプーリに対し前記第2軸材を挟んで対向する位置に設けられたガイドローラー
を有する請求項3に記載の3Dスキャナ。
【請求項5】
前記第1軸材の下端に設けられた車輪
を有する請求項2ないし4のいずれか一項に記載の3Dスキャナ。
【請求項6】
前記シャフトは中空である
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の3Dスキャナ。
【請求項7】
前記モーターは、前記固定構造体において、前記3Dスキャナの重心よりも低い位置に固定される
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の3Dスキャナ。
【請求項8】
前記第1センサー群のうち隣り合う2つのカメラの光軸が交わる
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の3Dスキャナ。
【請求項9】
前記第1センサー群は、複数のカメラおよび複数の距離センサーを含み、
前記3Dスキャナは、前記可動構造体に固定された複数のマウント台を有し、
前記複数のマウント台の各々に対し、前記複数のカメラのうち一のカメラおよび前記複数のセンサーのうち一のセンサーが固定される
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の3Dスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の表面状態(凹凸および色彩)を三次元的に検知してデータ化する、いわゆる3Dスキャナが知られている。例えば非特許文献1には、スマートフォンを被写体の回りで回転させながら写真を撮影することにより、被写体を3Dデータ化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“スマホでの3Dスキャンやパノラマ撮影に便利な回転台「PIXELIO」”、[online]、平成27年11月5日、[2016年8月4日検索]、インターネット<URL:http://japan.cnet.com/news/service/35073037/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の技術においては、単一のカメラを被写体の回りで360°回転させて被写体を撮影するため、被写体の走査に時間がかかるという問題があった。
【0005】
これに対し本発明は、被写体をより高速に走査できる3Dスキャナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に被写体を収容する空間を有する固定構造体と、前記空間を貫く仮想的な回転軸を中心に回転する可動構造体と、前記可動構造体の内周面において、当該可動構造体の回転方向に垂直な方向に配置され、前記被写体の表面状態を検知する第1センサー群と、前記可動構造体の内周面において、前記回転方向に垂直な方向に配置され、前記第1センサー群に対し当該回転方向に位置し、前記被写体の表面状態を検知する第2センサー群と、前記固定構造体に固定され、前記可動構造体を回転させるためのモーターとを有する3Dスキャナを提供する。
【0007】
前記可動構造体は、設置面から少なくとも上向きに延びる複数の第1軸材と、前記複数の第1軸材と交差する方向に延び、当該複数の第1軸材に固定された第2軸材と、前記複数の第1軸材の一端に固定され、前記回転軸に相当するシャフトを有する支持部とを有し、前記固定構造体は、前記シャフトを回転可能に支持する軸受を有してもよい。
【0008】
この3Dスキャナは、前記第2軸材の外周側に設けられたタイミングベルトと、前記モーターの出力軸に設けられ、前記タイミングベルトと噛み合うタイミングプーリとを有してもよい。
【0009】
この3Dスキャナは、前記タイミングプーリに対し前記第2軸材を挟んで対向する位置に設けられたガイドローラーを有してもよい。
【0010】
この3Dスキャナは、前記第1軸材の下端に設けられた車輪を有してもよい。
【0011】
前記シャフトは中空であってもよい。
【0012】
前記モーターは、前記固定構造体において、前記3Dスキャナの重心よりも低い位置に固定されてもよい。
【0013】
前記第1センサー群のうち隣り合う2つのカメラの光軸が交わってもよい。
【0014】
前記第1センサー群は、複数のカメラおよび複数の距離センサーを含み、前記3Dスキャナは、前記可動構造体に固定された複数のマウント台を有し、前記複数のマウント台の各々に対し、前記複数のカメラのうち一のカメラおよび前記複数のセンサーのうち一のセンサーが固定されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体をより高速に走査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】別の関連技術に係る3Dスキャナを例示する図。
【
図3】さらに別の関連技術に係る3Dスキャナを例示する図。
【
図4】一実施形態に係る3Dスキャナ1の外観を例示する図。
【
図5】支持部115および支持部126の断面構造を示す模式図。
【
図7】保持フレーム131に固定される4台のカメラCの撮影範囲を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.概要
被写体Sの表面状態を検知する3Dスキャナには、種々のタイプのものがある。本発明の実施形態の説明に先立ち、まずはそれらの関連技術に係る3Dスキャナの概要を説明する。
【0018】
図1は、関連技術に係る3Dスキャナを例示する図である。この3Dスキャナは、被写体Sの表面状態を複数のセンサー群SD(カメラおよび距離センサー)により検知する。この3Dスキャナでは、被写体Sもセンサー群も固定される。センサー群は、被写体Sの全表面を一度に検知できるだけの数および位置で配置される。この3Dスキャナは、被写体Sの動作の瞬間を捉えることができる反面、被写体Sの全表面を空間的にカバーする必要があるため装置が大がかりになってしまい、さらに多数のセンサー群を有するため装置が高価になってしまうという問題があった。
【0019】
図2は、別の関連技術に係る3Dスキャナを例示する図である。この3Dスキャナでは、被写体Sのある限られた領域だけを撮影できる数および位置に配置された複数のセンサー群SDが用いられる。この例では、被写体Sの全表面を時間的にカバーするため、固定されたセンサー群SDに対し被写体Sを載せるステージTが回転する。
【0020】
図3は、さらに別の関連技術に係る3Dスキャナを例示する図である。この3Dスキャナでは、被写体Sのある限られた領域だけを撮影できる数および位置に設置された複数のカメラCが用いられる。この例では、被写体Sの全表面を時間的にカバーするため、カメラCが設置されたフレームが、固定された被写体Sの回りを回転する。
図2および
図3の3Dスキャナによれば
図1の例と比較してカメラCの数を大幅に削減できるためコストを低減できる一方、撮影には時間がかかるという問題があった。さらに、撮影が終了するまでの間、被写体Sには同じ姿勢を保持することが要求され、ストレスを与えることがあった。特に
図2の例においては、ステージTの回転が被写体Sの姿勢の保持を妨げるという問題もあった。本実施形態では、これらの問題に対処する。
【0021】
2.構成
図4は、一実施形態に係る3Dスキャナ1の外観を例示する図である。3Dスキャナ1は、例えば人間を被写体とし、被写体の表面状態を走査してデータ化する装置である。3Dスキャナ1は、被写体のある限られた表面領域を検知するセンサー群を被写体に対して回転させるものであるが、センサー群を複数用いることによって、各センサー群が検知する範囲を限定し、全体としての走査時間を短縮するものである。
【0022】
3Dスキャナ1は、固定構造体11および可動構造体12を有する。固定構造体11および可動構造体12は、内部に被写体を収容する空間を有する。固定構造体11は3Dスキャナ1を設置場所に対し固定するための構造体であり、可動構造体12はセンサー群を被写体の回りで移動させるための構造体である。この例で、可動構造体12は、固定構造体11の内部に収容される。なお、内側とは使用状態において被写体に面する側をいい、外側とは被写体と反対方向をいう。可動構造体12は固定構造体11に対し相対的に移動、具体的には、固定構造体11の内部の、被写体が収容される空間を貫く仮想的な回転軸を中心に回転する。なお、以下の説明において、3Dスキャナ1を水平面に設置した場合に鉛直上向きとなる方向を「上」といい、鉛直下向きになる方向を「下」という。また、上下に沿った方向を縦方向といい、これに垂直な方向を横方向という。
【0023】
この例で、固定構造体11は、軸材111、112、および113、軸材114、並びに支持部115から構成されるフレーム構造を有する。軸材111、112、および113、並びに軸材114は、3Dスキャナ1に機械的な強度を与えるための構造材である。軸材111、112、および113、並びに軸材114は、装置の運搬、設置、または使用の際に装置がその形状を保持できる程度の機械的強度を与えるものであることが好ましい。軸材111、112、および113は、設置面から全体として少なくとも上向きに延びる軸材である。「設置面から少なくとも上向きに延びる」とは、3次元座標系において上向きに延びる成分を有することをいい、設置面から真っ直ぐ上向きだけに延びることを意味するものではない。また、「全体として上向きに延びる」とは軸材の一端から他端までが少なくとも上向きに延びることを意味するものであり、その一部に水平方向に延びる部分を含んでいてもよい。
【0024】
軸材111、112、および113は、設置面近傍においては設置面に対してほぼ上向き(縦方向)に真っ直ぐ延びる。軸材111、112、および113は、ある高さにおいて内側に曲がっており、3Dスキャナ1を上から見たときにその中心近傍において支持部115に固定される。軸材114は、軸材111、112、および113と交差する方向(例えば水平方向。横方向)に延びており、軸材111、112、および113とそれぞれ固定される。3Dスキャナ1を上から見ると、軸材114は円弧を描く。軸材114は全周に渡って設けられているわけでなく、一部が開口している。軸材114は、軸材111、112、および113の構造を補強するための補強材である。このように、固定構造体11は、開口を有するドーム型のフレーム構造を有する。
【0025】
可動構造体12は、軸材121、122、および123、軸材124および125、支持部126、並びに軸材127から構成されるフレーム構造を有する。軸材121、122、および123は、下端側において全体として少なくとも上向き(縦方向)に伸びる軸材である。具体的には、軸材121、122、および123は、設置面に対してほぼ上向きに真っ直ぐ延びる。軸材121、122、および123は、軸材111、112、および113と同様に、ある高さにおいて内側に曲がっており、3Dスキャナ1を上から見たときにその中心近傍において支持部126に固定される。軸材124、125、および127は、軸材121、122、および123と交差する方向(例えば水平方向。横方向)に延びており、軸材121、122、および123とそれぞれ固定される。3Dスキャナ1を上から見ると、軸材124、125、および127は円弧を描く。軸材124、125、および127は全周に渡って設けられているわけでなく、一部が開口している。可動構造体12が基準位置にあるとき、この開口は固定構造体11の開口に相当する位置にある。このように、可動構造体12は、開口を有するドーム型のフレーム構造を有する。
【0026】
軸材121、122、および123の下端には車輪Wが取り付けられる。さらに、固定構造体11と設置面(床面)との間には平板19が設置される。この例で平板19は固定構造体11に固定される。すなわち、車輪Wと設置面との間には平板19が挟まれる。平板19の表面は摩擦を低減した平滑な構造を有しており、この上を車輪Wが接触しつつ移動する。平板19を挟むことにより設置面の凹凸の影響を低減し、可動構造体12の回転運動に伴うセンサー群の上下動を抑制することができる。なお平板19は車輪Wの可動範囲にだけ存在していればよいので、この例では、中心部に孔を有する円板形状(ドーナツ型)を有する。
【0027】
3Dスキャナ1の構造材は、例えば、ステンレス鋼もしくはアルミニウム合金等の金属、樹脂、またはこれらの複合材料により形成される。なお、部材同士の固定は、ボルトおよびナット等の固定具を用いて、または溶接により行われる。また、軸材としては、断面形状が、例えば、円、四角形、L字形、またはH字型のものが用いられる。軸材は中空であってもよい。固定構造体11および可動構造体12は、それぞれ、フレーム構造を採用することにより、モノコック構造を採用する例と比較して3Dスキャナ1全体を軽量化および低コスト化することができる。
【0028】
図5は、支持部115および支持部126の断面構造を示す模式図である。この図は、上下方向に平行な断面を示す。支持部126は、上向きに延びるシャフト1261を有する。シャフト1261は、可動構造体12の回転運動の軸となる。シャフト1261は中空の構造を有する。支持部115は、シャフト1261を回転可能に支持するための軸受1151を有する。軸受1151は、例えば、転がり軸受またはすべり軸受である。軸受1151も軸方向に中空の構造を有する。シャフト1261および軸受1151が中空構造を有しているため、この内部空間に電気配線用のケーブル(図示略)を通すことができ、シャフトの外にケーブルを通す例と比較してケーブルを短くすることができる。なお、図においてシャフト1261の中心線が、仮想的な回転軸を表す。
【0029】
再び
図4を参照する。3Dスキャナ1はさらに、保持フレーム131、132、および133を有する。保持フレーム131は、センサー群を保持すなわち固定するためのフレームである。保持フレーム131、132、および133は、可動構造体12に対して固定される。
【0030】
図6は、保持フレーム131の構造を例示する図である。保持フレーム131は、平行に延びる2本の軸材1311および1312を有する。軸材1311および1312も、設置面近傍においては設置面に対してほぼ上向きに真っ直ぐ延び、ある高さにおいて内側に曲がっている。保持フレーム131には、複数のマウント台、この例ではマウント台1411〜1414の4つのマウント台が固定される。マウント台1411〜1414は、それぞれ、センサーを固定する(取り付ける)ための構造体であり、この例では開口を有する箱型の構造を有する。各マウント台に、1台のカメラCおよび1台のセンサーDが固定される。すなわちこの例では、単一の保持フレーム131に、合計で4台のカメラCおよび4台のセンサーDが取り付けられる。
【0031】
カメラCは、被写体の表面を撮影する。カメラCは、被写体の表面の色彩に関する情報を検知する色センサー(RGBセンサー)である。センサーDは、被写体までの距離を検知する距離センサーである。センサーDは、赤外光等の可視光外の波長で所定のパターン図形の像を投写する投写部、および投写された像を読み取る撮像部を有する。あるマウント台に固定されるカメラCおよびセンサーDは、両者の光軸がほぼ同じ位置を向いている。単一のマウント台に対しカメラCおよびセンサーDが固定されているため、両者がそれぞれ個別に保持フレーム131に固定される例と比較して、カメラCとセンサーDとの位置関係の変化を抑制することができる。
【0032】
図7は、保持フレーム131に固定される4台のカメラCの撮影範囲を例示する図である。ここでは、これら4台のカメラCを区別するため、カメラC1〜C4という符号を用いる。これら4台のカメラのうち、隣り合う2台のカメラの撮影範囲は一部が重なっている。例えば、カメラC3の撮影範囲とカメラC4の撮影範囲とは一部が重なっている。また、これら4台のカメラのうち、少なくとも1組の隣り合う2台のカメラ、
図7の例では最下段のカメラC4およびその1つ上のカメラC3の光軸a4およびa3は、設置面の中心Coよりも手前、より詳細には被写体Sよりも手前で交わる。これにより、カメラC3およびC4の位置関係と、その撮影範囲の位置関係が逆転する。すなわち、最下段のカメラC4の撮影範囲は、カメラC3の撮影範囲よりも上に位置する。例えば、カメラC3もカメラC4も被写体Sを上方から撮影するような位置関係にあると、被写体Sの床面付近の表面状態を検知することが難しくなる場合がある。例えば、カメラCまたはセンサーDには、被写体を検知可能な距離範囲が定められている場合がある、この場合において、最下段のカメラC4で被写体の足元を撮影すると、検知可能な最短距離よりも被写体までの距離が短くなってしまうことがある。これに対し本実施形態のようにセンサーの位置関係と検知範囲の位置関係を逆転させることにより、被写体までの距離をかせぐことができる。すなわち、この配置によれば、カメラCの回転半径を増やすことなく人体の足元付近の撮影視野を広げることができる。さらに、例えば被写体として人間を想定した場合、床面付近は足元であり、また、ズボンまたはスカートの裾の詳細な状態は上方からの撮影だけでは検知しにくいという問題がある。これに対しセンサーの位置関係と検知範囲の位置関係とが逆転する配置とすることにより、被写体Sが複雑な表面形状を有していてもその状態をより正確に検知することができる。本実施形態によれば、足を開いている人間の足元や、スカートの裾の開いた部分までより正確に検知することができる。
【0033】
保持フレーム132および133においても、それぞれ4台のカメラCおよび4台のセンサーDが固定される。すなわち、3Dスキャナ1は、全体として12台のカメラCおよび12台のセンサーDを有する。3Dスキャナ1においては、1群のセンサー群が、可動構造体12の回転方向(横方向)と垂直な方向(縦方向)に配置されている。可動構造体12を回転することにより、回転方向(横方向)の領域の撮影をカバーする。さらに、このセンサー群を回転方向において複数(上記の例では3群)配置することにより、可動構造体12の回転角を削減することができる。すなわち、保持フレーム131および132には、それぞれ、縦方向に配置された1群のセンサー群が固定される。保持フレーム131に固定された1群のセンサー群は第1センサー群の一例であり、保持フレーム132に固定された1群のセンサー群は第1センサー群に対し回転方向に位置する第2センサー群の一例である。
【0034】
この例では、垂直方向に延びる軸材121、122、および123が水平方向に延びる軸材124により補強される。したがって、軸材124が無い例と比較して、保持フレーム間の距離のずれすなわちカメラCの、可動構造体12の回転方向における距離のずれを抑制することができる。なお、カメラCおよびセンサーDの電源ケーブルおよび信号ケーブルは、各保持フレームを伝い、軸受1151の中空から3Dスキャナ1の外に導かれ、電源装置および信号処理装置(いずれも図示略)に接続される。
【0035】
再び
図4を参照する。3Dスキャナ1は、さらに駆動装置15を有する。駆動装置15は、可動構造体12を回転させるための装置である。駆動装置15は、平板19に固定される。なお駆動装置15は、平板19に代えて、または加えて、固定構造体11の構造材(軸材111等)に固定されてもよい。
【0036】
図8は、駆動装置15の詳細を例示する図である。駆動装置15は、モーター151、コントローラ152、およびタイミングプーリ153を有する。また、軸材125の外周にはタイミングベルト1251が設けられる。モーター151は、回転運動を出力する装置である。モーター151の出力軸にはタイミングプーリ153が設けられる。タイミングプーリ153はタイミングベルト1251と噛み合い、モーター151の動力を軸材125(可動構造体12)に伝達する。コントローラ152は、入力される制御信号に応じてモーター151の出力を制御する。
【0037】
図9は、駆動装置15の内周側の構造を例示する図である。3Dスキャナ1は、さらにガイドローラー16を有する。ガイドローラー16は、軸材125を挟んでタイミングプーリ153と対向する位置において、平板19に固定される。ガイドローラー16は、可動構造体12の回転の偏心を抑制し、また、タイミングプーリ153とタイミングベルト1251との噛み合いを安定させる。
【0038】
本実施形態においては、駆動装置15が平板19に固定、すなわち、3Dスキャナ1の最下部に設置される。一般に駆動装置15は重量が重いが、3Dスキャナ1の重心よりも低い位置に配置することにより、3Dスキャナ1の振動または転倒に対する安定性を向上させることができる。また、駆動装置15は可動構造体12の外周部分を駆動するので、例えばシャフト1261を直接駆動する例と比較してモーターの負荷を低減することができる。また、駆動装置15をシャフト1261の近傍に取り付ける例と比較して、3Dスキャナ1の高さを低く抑えることができる。
【0039】
3.動作
図10は、3Dスキャナの動作の一例を示す図である。
図10(A)は可動構造体12の回転前の状態を、
図10(B)は回転後の状態を、それぞれ示す。これらの図は、3Dスキャナ1を上から見た図である。また、図面を簡単にするため、ここでは、軸材111、112、113、114、121、122、123、および125のみを示す。この例では、軸材111と軸材113との間に軸材114が設けられず開口している。軸材111、112、および113は、上から見たときに均等には配置されておらず、軸材111と軸材113とがなす角θ1は、軸材111と軸材112とがなす角θ2および軸材112と軸材113とがなす角θ3よりも広い。あくまで一例ではあるが、θ1=140°、θ2=θ3=110°である。固定構造体11の開口は、被写体が撮影位置に入るための出入口となる。開口が広い方が被写体の出入りには便利である。なお軸材121、122、および123についても同様である。この状態から、可動構造体12がθr=約120°回転し、この回転と同期してカメラCが被写体を撮影し、センサーDが被写体までの距離を計測する。カメラCおよびセンサーDにより得られたデータは、情報処理装置(図示略)により処理され、被写体の表面状態を表すデータとしてデータ化される。なお、可動構造体12の回転角は開口の角θ1よりも小さいが、カメラCの画角により被写体の全周を撮影することが可能である。
【0040】
4.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
固定構造体11および可動構造体12の具体的構成は実施形態で例示したものに限定されない。例えば、縦方向に延びる軸材の数は3本に限定されない。軸材は2本または4本以上であってもよい。固定構造体11および可動構造体12において、縦方向の軸材の数は異なっていてもよい。
【0042】
固定構造体11と可動構造体12との位置関係は、固定構造体11の内部に可動構造体12が収容されるものに限定されない。固定構造体11が可動構造体12の内部に収容される関係にあり、可動構造体12は、固定構造体11の外周に沿って回転してもよい。
【0043】
固定構造体11はドーム型の形状に限定されない。固定構造体11は、円筒型または円錐形等、ドーム型以外の形状を有してもよい。円筒形または円錐形の場合、ドーム型と比べて軸材111〜113および軸材121〜123の加工が容易になるので低コスト化することができる。さらに、可動構造体12が固定構造体11の内部に位置する場合、固定構造体11は、上から見た形状が円でなくてもよい。可動構造体12を内部に収容できるものであれば、固定構造体11を上から見た形状は、例えば四角形であってもよい。この場合、固定構造体11を上から見た形状が円である例と比較して軸材114の加工が容易になるので低コスト化することができる。
【0044】
固定構造体11および可動構造体12の少なくとも一方は、フレーム構造に代わりモノコック構造を有していてもよい。ただし一般にはモノコック構造よりもフレーム構造の方が軽量化できるというメリットがある。
【0045】
センサー群を可動構造体12に固定する手法は、保持フレーム131〜133およびマウント台1411〜1414を介して取り付けるものに限定されない。例えば、マウント台1411〜1414は、保持フレーム131を介さず、直接、軸材121〜123のいずれかに固定されてもよい。あるいは、可動構造体12がモノコック構造を有している場合には、モノコックの本体に直接、マウント台1411〜1414が固定されてもよい。
【0046】
軸受1151の位置は、実施形態で例示したものに限定されない。例えば、軸受1151は、3Dスキャナ1の上部ではなく下部に設けられてもよい。すなわち、実施形態では3Dスキャナ1の上部で回転を支持する例を説明したが、3Dスキャナ1は下部で回転を支持する構成を有していてもよい。
【0047】
モーター151の位置は、実施形態で例示したものに限定されない。例えば、モーター151は、3Dスキャナ1の上部においてシャフト1261の近傍に固定されてもよい。この場合、モーター151の出力軸およびシャフト1261にそれぞれギアが取り付けられ、これらのギアを噛み合わせることによってモーター151の動力がシャフト1261に伝達される。ただし、実施形態において説明したように、振動または転倒に対する安定性の観点からは、モーター151は3Dスキャナ1の重心よりも低い位置に固定されることが好ましい。また、ガイドローラー16は省略されてもよい。さらに、車輪Wは省略されてもよい。車輪Wが省略される場合、可動構造体12の下端は平板19から浮いていてもよい。その他、実施形態で例示した構造の一部は省略されてもよい。
【0048】
センサー群の数およびその配置は実施形態で例示したものに限定されない。例えば、保持フレーム131は、可動構造体12において、斜め方向(縦方向および横方向のいずれに対しても垂直でない方向)に延びてもよい。要は、1群のセンサー群は、可動構造体12の回転方向と交わる方向に配置されていればよい。
【符号の説明】
【0049】
1…3Dスキャナ、11…固定構造体、12…可動構造体、15…駆動装置、16…ガイドローラー、111…軸材、112…軸材、113…軸材、114…軸材、115…支持部、121…軸材、122…軸材、123…軸材、124…軸材、125…軸材、126…支持部、127…軸材、131…保持フレーム、132…保持フレーム、133…保持フレーム、1411…マウント台、1412…マウント台、1413…マウント台、1414…マウント台、151…モーター、152…コントローラ、153…タイミングプーリ、1151…軸受、1251…タイミングベルト、1261…シャフト