(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737538
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】逆溶融性を有する液体金属熱界面材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/26 20060101AFI20200730BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20200730BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20200730BHJP
B23K 35/40 20060101ALI20200730BHJP
C22F 1/16 20060101ALI20200730BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20200730BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
H05K7/20 F
C22C13/00
B23K35/40 340H
C22F1/16 Z
H01L23/36 M
!C22F1/00 681
!C22F1/00 682
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 685Z
!C22F1/00 694A
!C22F1/00 650F
!C22F1/00 651Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-551288(P2018-551288)
(86)(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公表番号】特表2019-517921(P2019-517921A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】CN2017081749
(87)【国際公開番号】WO2018161416
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】201710138707.2
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518341482
【氏名又は名称】ニンボー シャンマ メタル マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ヤジュン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ハクァン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ジシン
【審査官】
小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−193171(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0048172(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0110813(US,A1)
【文献】
特開2000−141078(JP,A)
【文献】
特開昭63−123594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/26
B23K 35/40
C22C 13/00
C22F 1/16
H01L 23/373
H05K 7/20
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆溶融性を有する液体金属熱界面材料であって、
重量百分率で、成分として、インジウム20−40wt%、ビスマス1.4−6wt%、アンチモン0.3−2wt%、亜鉛1.6−3wt%、銀0.02−0.6wt%、ニッケル0.01−0.3wt%、セリウム0.01−0.8wt%、ユウロピウム0.01−0.6wt%を含み、
残部が錫であることを特徴とする、
液体金属熱界面材料。
【請求項2】
重量百分率で、成分として、インジウム22wt%、ビスマス1.4wt%、アンチモン0.3wt%、亜鉛1.6wt%、銀0.05wt%、ニッケル0.02wt%、セリウム0.02wt%、ユウロピウム0.01wt%を含み、
残部が錫であることを特徴とする、
請求項1に記載の液体金属熱界面材料。
【請求項3】
重量百分率で、成分として、インジウム28wt%、ビスマス1.9wt%、アンチモン0.4wt%、亜鉛1.8wt%、銀0.03wt%、ニッケル0.01wt%、セリウム0.01wt%、ユウロピウム0.02wt%を含み、
残部が錫であることを特徴とする、
請求項1に記載の液体金属熱界面材料。
【請求項4】
重量百分率で、成分として、インジウム32wt%、ビスマス2.1wt%、アンチモン0.6wt%、亜鉛2.9wt%、銀0.02wt%、ニッケル0.03wt%、セリウム0.02wt%、ユウロピウム0.01wt%を含み、
残部が錫であることを特徴とする、
請求項1に記載の液体金属熱界面材料。
【請求項5】
逆溶融温度範囲が64℃−180℃であることを特徴とする、
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の液体金属熱界面材料。
【請求項6】
60−180℃の温度範囲でのIGBTシステムの放熱に適することを特徴とする、
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の液体金属熱界面材料。
【請求項7】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の逆溶融性を有する液体金属熱界面材料の製造方法であって、
1)アルゴンガス/窒素ガスを保護雰囲気として、黒鉛ルツボにおいて配合比率で成分を配合した材料を誘導溶融するステップと、
2)次に400−500℃で均一になるまで十分に撹拌するステップと、
3)均一に撹拌した合金溶湯を黒鉛鋳型に投入して凝固させるステップと、
4)凝固後の合金インゴットを40℃−140℃で2−4時間熱処理し、次に冷間圧延処理をすることを特徴とする、
製造方法。
【請求項8】
冷間圧延において、各パスの圧延量が20−30%であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆溶融性を有する液体金属熱界面材料及びその製造方法に関し、具体的には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)システム用の液体金属熱界面材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、IGBT素子は、入力抵抗が高く、スイッチング速度が高く、オン電圧が低くて、オフ電圧が高く、耐え得る電流が大きい等の特徴を有するため、現在、パワー半導体素子として、主流素子となっており、各種のACモータ、インバーター、スイッチング電源、照明回路、トラクションドライブ等の分野のパワー電子回路に幅広く使用されている。
【0003】
しかしながら、IGBT素子が作動するとき、生じた熱によりチップの温度が迅速に上昇して最大許容IGBT接合部温度を超えてしまう。それによって、IGBTは、性能が大幅に低下して、安定的に作動できなくなり、性能の低下又は故障を引き起こす。近年、IGBT技術のさらなる発展によって、関連する極限環境での効率的な放熱技術は熱管理エンジニアや科学者が解決しようとする重要な技術的課題となっている。
【0004】
完全なIGBTモジュールは、IGBT素子、放熱器、放熱ファン及び伝熱媒体の4つの部分を含んで構成され、IGBT素子自体と伝熱媒体は放熱特性に決定的な役割を果たす。発熱体と放熱体の間の接触面には空気が満たされた微視的な孔が存在する。空気が不良な熱伝導体であるため、発熱体と放熱器の間の熱界面の抵抗が極めて大きく、熱伝導を深刻に抑制し、最終的に低放熱効率を引き起こす。高熱伝導率を有する熱界面材料で上記微視的な隙間を充填することで、有効な熱伝導チャンネルを形成して、熱界面の抵抗を大幅に低減させることができる。このため、高熱伝導特性を有する熱界面材料の開発が期待されている。
【0005】
特許文献1において、圧接型IGBTモジュールに発生した大きな熱抵抗、高い昇温速度によりモジュールの電気特性が不安定になるという問題を解決するために、ナノ銀半田ペーストを高熱伝導特性の熱界面材料とすることが開示されている。しかし、該特許文献に記載のナノ銀半田ペーストは正常溶融挙動を有する合金材料である。熱界面材料として発熱体と放熱体の間の隙間充填に用いる場合でも、固体として作動している熱界面材料であり、使用温度で固−液状態になり且つ逆溶融性を有する液体金属熱界面材料とは言えない。
【0006】
特許文献2において、LED完成品の熱伝導率が低く、シランカップリング剤で表面処理を行っても、100%の充填材表面が被覆されることを確保できないという問題を解決するために、ポリドーパミンで機能的に修飾された高熱伝導性シリコーンゴム熱界面材料が開示されている。しかし、該熱界面材料は有機物で製造されるものであり、金属の高熱伝導率に比べて、特許文献2には低放熱係数の熱界面材料となる。使用温度で溶融することがなく、発熱体と放熱体の間の隙間を効果的に充填するのに適する逆溶融性を備えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN106373954A号公報
【特許文献2】CN106317887A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子技術の高速発展に伴い、電子チップにより生じた大量の熱が熱管理分野、特にIGBTシステムにおいて深刻な問題となる。従来、シリコーングリースを熱源と放熱器の間の隙間の充填に用いているが、熱伝導率が極めて低く、通常、3W/m・K未満であることから、電子放熱分野での普及が深刻に制限されている。
【0009】
新規な高性能放熱材料(熱伝導率40−85w/m・K程度)として、液体金属は極限環境でのIGBT素子の熱管理にとって最適な解決手段であると考えられる。残念ながら、従来の液体金属は、融点付近の温度では熱界面材料として使用するときに横漏れが発生しやすく、電子チップの短絡を引き起こすことがある。
【0010】
理想的な熱界面材料には下記物理的及び化学的特性が求められる。(1)効果的な放熱を確保するための高い熱伝導率、(2)発熱体と放熱体との間の小さな隙間を効果的に満たすための良好な流動性、(3)低圧力で取り付けるときの高柔軟性。シリコーングリースは、従来から電子素子の熱伝導に用いられる熱界面材料であるものの、熱伝導率が極めて低い(〜1−2W/m・K)。さらに、長期間使用されると、有機成分の蒸発と酸化によりシリコーングリースは脆化したり老化したりする。それに対して、近年、開発された液体金属は極高熱伝導率を有する以外、極めて低い蒸気圧と抗酸化性のため、放熱分野において最適な材料であると考えられ、特に高密度高出力電子部品に適用できる。
【0011】
液体金属は、融点付近で高熱伝導率(〜20−85W/m・K)を有する低融点合金である。使用条件での物質状態によって、液体金属は以下の3種類に分けられる。(1)融点が約2℃に低下できる完全に液状になる液体金属。このような液体金属は、電磁ポンプの駆動下で放熱パイプにおける冷媒として放熱効率を向上させる。(2)融点が50℃と高いため、広範な温度範囲内で固−液状態を保持できるペースト状液体金属。このような液体金属はシリコーンゴムの代わりに熱界面材料として用いられ得る。(3)熱界面材料として使用されるときに融点が60−180℃になる箔状液体金属。この3種類の液体金属は、無毒で、安定的な物理的/化学的特性を有し、極限条件での長期間使用に適する。特に、箔状液体金属は、取り付け特性が柔軟であるため、生産ラインへの普及が期待できる。
【0012】
周知のように、箔状液体金属は融点付近で固−液状態を示す。このような状態では、箔状液体金属は効果的な固有の隙間充填能力を有する。正常の箔状液体金属の場合、固−液二相状態の液体画分が温度の増加につれて増加する。
図1は一般的な箔状液体金属の加熱時の液相と固相の温度に伴う変化の模式図である。合金の溶融温度範囲として、T
1温度で合金が溶融し始め、T
2温度で合金の溶融が終了する。このため、ΔT=T
2−T
1の温度範囲内で該合金は固−液混合状態を保持されて、溶融中を示している。T
*は熱界面材料として許容可能な最高温度の液相の温度を指す。従って、
図1にマークされた網掛け領域(ΔT=T
*−T
1)では、このような材料は熱界面材料として用いられ得る。温度がさらに増大すると、液相は迅速に増加して、横漏れした液体金属熱界面材料により回路基板の短絡を招く恐れがある。その根本原因として、増加する液体画分が固−液混合物の流動性を大幅に向上させるためである。
【0013】
図1は、正常溶融状態での箔状液体金属の相画分の温度に伴う変化の模式図(該系は液相とα相だけを含む)である。
【0014】
本発明者は長期間にわたって研究した結果、液体金属が溶融過程において液相含有量の増加により横漏れすることを克服するのに有効な方法を見出し、逆溶融特性を有する新規な液体金属材料が設計された。
【0015】
該材料の逆溶融性の説明の便宜上、
図2中の模式図を例にして説明する。該系は液相、α相及びβ相の三相を含む。該図中、合金のT
1とT'の間の溶融挙動が
図1と一致するが、温度が高くなって溶融し続けると、液相の画分は温度の上昇に伴って激しく減少するとともに、α相とβ相の画分が増加する。一般的に、逆溶融挙動は、同
図2中のT'とT
*の温度区間での溶融挙動として定義され、すなわち液相が温度の上昇に伴い急激に減少することである。一旦温度が
図2中のT
*を超えると、液相の画分は、合金が完全に溶融するまで、温度の上昇に伴い急激に増加する。また、T'とT
*温度での液相減少により液体金属の流動性を低下させることができ、この特徴は熱界面材料にとって特に重要なことである。
図2中、網掛け領域は、該材料が熱界面材料として適する温度区間である。逆溶融性を有する箔状液体金属熱界面材料は一般的な箔状液体金属よりも広い作動温度区間を有することが明らかになる。
【0016】
図2は異常溶融状態での箔状液体金属の相画分の温度に伴う変化の模式図(該系は液相、α相及びβ相である)である。
【0017】
合金の溶融と相含有量は合金の熱力学的性質に密接に関係する。従って、理論的に相図を参照して逆溶融挙動を有する箔状液体金属を設計できる。一般的に、c成分系の相図はc次元で、単相領域、二相領域、三相領域、…、c相領域から構成される。
図2に示すように、新規な材料設計技術によって、適切な合金成分を見付けて、液体金属として使用されるときに逆溶融挙動を持たせることができる。つまり、液体金属の横漏れを抑制するとともに、熱伝導率を最大限に向上できるように、固−液状態での箔状液体金属の流動性を設定できる。また、このような設計方法は、IGBTシステムのために、使用温度範囲が60−180℃で逆溶融性を有する箔状液体金属を提供できる。
【0018】
以上の新規な材料設計技術によって、本発明は、IGBT放熱用の逆溶融性を有する液体金属熱界面材料を提供している。使用に適するIGBT放熱系の作動温度は60−180℃である。逆溶融性を有する液体金属熱界面材料は、合金熔錬、鋳造、熱処理及び冷間圧延プロセスを経て製造される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、本発明は以下の発明を含む。
(1)逆溶融性を有する液体金属熱界面材料であって、
重量百分率で、インジウム20−40wt%、ビスマス0−6wt%、アンチモン0−2wt%、亜鉛0−3wt%、銀0−0.6wt%、ニッケル0−0.3wt%、セリウム0−0.8wt%、ユウロピウム0−0.6wt%を含み、残部が錫であることを特徴とする。
【0020】
(2)逆溶融温度範囲が64℃−180℃である(1)に記載の液体金属熱界面材料。このような材料は、60℃−140℃で溶融し始め、60℃−200℃の間で固−液状態を保持する。関連する逆溶融温度範囲は、選択される合金成分に応じて64℃−180℃から選ばれる。
【0021】
(3)60−180℃の温度範囲にあるIGBTシステムの放熱に適する(1)又は(2)に記載の液体金属熱界面材料。
【0022】
(4)アルゴンガス/窒素ガスを保護雰囲気として、誘導溶融技術により、黒鉛ルツボにおいて(1)〜(3)に記載の配合比率で合金を配合した材料を誘導溶融して、次に400−500℃(具体的な温度は選択される合金成分に応じて選択される)で約10分間撹拌し、均一に撹拌した合金溶湯を黒鉛鋳型内に投入して凝固させ、凝固後の合金インゴットを40℃−140℃で2−4時間熱処理し、次に冷間圧延をすることを特徴とする(1)〜(3)に記載の液体金属熱界面材料の製造方法。熱処理の目的は、材料の優れた機械的特性を向上させて、さらに冷間圧延に適するようにするために、合金の相沈殿を完全に行うことにある。
【0023】
(5)冷間圧延において、各パスの圧延量が20−30%である(4)に記載の液体金属熱界面材料の製造方法。熱処理後の合金インゴットは、室温で所望の厚さ、たとえば0.05ミリメートルに冷間圧延できる。各パスの圧延量20−30%について、選択される合金成分に応じて決定される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明に係る箔状液体金属熱界面材料は、十分な温度区間を有し、逆溶融性を備える。これら温度区間内で十分な固相含有量を有する固−液状態を維持する。横漏れを防止するのに十分な粘度を有するため、電子システムの短絡を完全に防止できる。放熱への要求が高まる中、IGBTの放熱要求を満たすのに最適な解決手段を提供できる。
(2)該箔状液体金属熱界面材料は、加工ステップが簡単で、誘導溶融、鋳造、熱処理及び冷間圧延を含む。製品は、生産コストが低く、且つIGBTの作動環境では優れた熱伝導特性と化学的安定性を有する。量産及び実用用のIGBT素子に非常に適する。
(3)逆溶融性を有する液体金属熱界面材料は、極限環境での放熱のために最適な有効な解決手段を提供する。実用的に、多数の産業分野の高速発展、特に高熱流束電子素子の高速発展を促進できる。近い将来、本発明の関連製品は、情報通信分野、新エネルギー、太陽光発電産業、宇宙応用、先端的な兵器システム、および先端エレクトロニクスに大規模で使用されることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】正常溶融状態での箔状液体金属の相画分の温度に伴う変化の模式図であり、該系は液相とα相だけを含む。
【
図2】異常溶融状態での箔状液体金属の相画分の温度に伴う変化の模式図であり、該系は液相、α相及びβ相を含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例によって本発明についてさらに説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0027】
実施例1 本発明に係る液体金属熱界面材料1の製造。
以下の重量百分率で合金原料を用意した。インジウム22wt%、ビスマス1.4wt%、アンチモン0.3wt%、亜鉛1.6wt%、銀0.05wt%、ニッケル0.02wt%、セリウム0.02wt%、ユウロピウム0.01wt%、Sn残部。
アルゴンガス又は窒素ガスを保護雰囲気として、上記配合比率の成分を配合した合金を黒鉛ルツボにおいて誘導溶融した。温度を420℃に保持しながら、10分間電磁撹拌して完全にホモジナイズした。次に溶融後の溶融合金を黒鉛鋳型内に注入して鋳造した。合金凝固後、合金インゴットを40℃で3時間熱処理して、合金中の第二相を完全に沈殿させるとともに、合金に優れた機械的特性を付与した。次に、室温で冷間圧延を行って、0.05ミリメートルの厚さになるまで、各パスの圧下量を24%にして複数回圧延した。
得られた合金材料は、60℃程度で溶融し始め、60−74℃で固−液状態を保持する箔状液体金属であり、該箔状液体金属は62−68℃で逆溶融性を有し、IGBT熱源温度が68℃未満のシステムの放熱に好適に使用できる。
【0028】
実施例2 本発明に係る液体金属熱界面材料2の製造
以下の重量百分率で合金原料を用意した。インジウム28wt%、ビスマス1.9wt%、アンチモン0.4wt%、亜鉛1.8wt%、銀0.03wt%、ニッケル0.01wt%、セリウム0.01wt%、ユウロピウム0.02wt%、Sn残部。
アルゴンガス又は窒素ガスを保護雰囲気として、上記配合比率で成分を配合した合金を黒鉛ルツボにおいて誘導溶融した。温度を420℃に保持しながら、10分間電磁撹拌して完全にホモジナイズした。次に溶融後の溶融合金を黒鉛鋳型内に注入して鋳造した。合金凝固後、合金インゴットを80℃で3時間熱処理して、合金中の第二相を完全に沈殿させるとともに、合金に優れた機械的特性を付与した。次に、室温で冷間圧延を行って、0.05ミリメートルの厚さになるまで、各パスの圧下量を28%にして複数回圧延した。
得られた合金材料は、84℃程度で溶融し始め、84−115℃で固−液状態を保持する箔状液体金属であり、該箔状液体金属は92−108℃で逆溶融性を有し、IGBT熱源温度が110℃未満のシステムの放熱に好適に使用できる。
【0029】
実施例3 本発明に係る液体金属熱界面材料3の製造
以下の重量百分率で合金原料を用意した。インジウム32wt%、ビスマス2.1wt%、アンチモン0.6wt%、亜鉛2.9wt%、銀0.02wt%、ニッケル0.03wt%、セリウム0.02wt%、ユウロピウム0.01wt%、Sn残部。
アルゴンガス又は窒素ガスを保護雰囲気として、上記配合比率で成分を配合した合金を黒鉛ルツボにおいて誘導溶融した。温度を420℃に保持しながら、10分間電磁撹拌して完全にホモジナイズした。次に溶融後の溶融合金を黒鉛鋳型内に注入して鋳造した。合金凝固後、合金インゴットを100℃で3時間熱処理して、合金中の第二相を完全に沈殿させるとともに、合金に優れた機械的特性を付与した。次に、室温で冷間圧延を行って、0.05ミリメートルの厚さになるまで、各パスの圧下量を30%にして複数回圧延した。
得られた合金材料は、118℃程度で溶融し始め、118−142℃で固−液状態を保持する箔状液体金属であり、該箔状液体金属は124−132℃で逆溶融性を有し、IGBT熱源温度が140℃未満のシステムの放熱に好適に使用できる。
本発明は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)システムに適用できる。