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特許6737563透明導電性支持体、タッチセンサ、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737563
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】透明導電性支持体、タッチセンサ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   G06F3/041 420
   G06F3/041 495
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-21763(P2014-21763)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-148966(P2015-148966A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月2日
【審判番号】不服2018-10600(P2018-10600/J1)
【審判請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 富士男
【合議体】
【審判長】 稲葉 和生
【審判官】 小田 浩
【審判官】 野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−183259(JP,A)
【文献】 特開2013−197045(JP,A)
【文献】 特開平09−270573(JP,A)
【文献】 特開2013−254469(JP,A)
【文献】 特開2013−246723(JP,A)
【文献】 吉村俊之 他4名,ナノメーターリソグラフィーにおけるレジスト高分子のサイズ効果,応用物理,第63巻第11号,1994年,p.1131−1134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/041−3/047
H05K3/10 −3/26
H05K3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に触媒膜層が形成された透明支持体の前記触媒膜層上に、または触媒を含有させた透明支持体上に、銅、銀、アルミニウムのいずれかからなる無電解メッキ膜層と、平均粒子径0.1〜5μmの微粒子を含み、側面全体が算術平均粗さRa0.3〜2μmの微細な凹凸形状であるレジスト層とが並列して形成され、前記無電解メッキ膜層の上部にのみニッケル、スズ、ロジウム、パラジウム、銅−スズ−亜鉛の合金のいずれかからなるメッキ膜が形成された、導電性支持体。
【請求項2】
前記無電解メッキ膜層は、線幅が0.5〜10μmで線間が前記線幅の10〜1000倍のメッシュ状またはハニカム状の微細な線状パターンからなる透明導電膜である、請求項1に記載の導電性支持体。
【請求項3】
表面に触媒膜層が形成された透明支持体の前記触媒膜層上に、または触媒を含有させた透明支持体上に、銅、銀、アルミニウムのいずれかからなる無電解メッキ膜層と、平均粒子径0.1〜5μmの微粒子を含み、側面全体が算術平均粗さRa0.3〜2μmの微細な凹凸形状であるレジスト層とを並列して形成した後、前記レジスト層を剥離せず残したままで前記無電解メッキ膜層の上部にのみ、ニッケル、スズ、ロジウム、パラジウム、銅−スズ−亜鉛の合金のいずれかからなるメッキ膜を形成する、導電性支持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、タッチセンサ、液晶や有機EL用のディスプレイ前面板等の用途に適用可能な透明導電性支持体の製造方法などを対象とする。
【背景技術】
【0002】
最近、ITOフィルムにとって代わる透明導電性支持体やタッチセンサとして、金属メッシュパターンからなる透明電極を使用する試みがなされている。下記特許文献1の発明は、電磁波遮蔽用シートの発明であるが、金属層を透明基材上に形成した後に、金属層面へレジスト層をメッシュパターン状に設け、次いでレジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去する所謂フォトリソグラフイ法でメッシュパターンを形成する製造方法を開示している。
【0003】
そして、この特許文献1に記載の電磁波遮蔽用シートの製造方法は、メッシュ状に形成した金属層が銅であり、さらに金属層の表面及び側面に銅−コバルト合金粒子からなる黒化処理層を設け、金属層の光沢を抑制して透明性を維持し、ディスプレイ用前面板の用途に使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4346607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の発明は、形成した金属層の99.9%以上をエッチングにより除去廃棄することになるので、金属材料の浪費および高騰の原因になっていた。また、黒化処理層を設ける際にも希少金属であるコバルト合金を使用するので金属資源の枯渇の原因になっていた。そして、黒化処理には時間がかかるので、生産性が低い問題もあった。
【0006】
さらに、黒化処理層は金属層の光沢は抑えられるが、金属層の側面にも形成するので導電性が殆ど向上しないにもかかわらず、金属層の線幅が太くなり、太くなった分だけパターン見えが生じやすくなる。太くなるのを抑えるために粒径の細かい銅−コバルト合金粒子を用いれば金属層の光沢抑制効果が低下する。また、金属層全体に均一に形成されるわけでなく、メッシュパターンの交差した箇所に偏って形成されてしまう問題があった。したがって本発明は、エッチングによる除去廃棄の量を少なくし、黒化処理層を設けることなく金属層の光沢を抑制して透明性を維持できる透明導電性支持体の製造方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1実施態様は、少なくとも触媒膜層上に形成される微細な線状パターンからなる透明導電膜が金属膜層で構成される透明導電性支持体の製造方法であって、触媒膜層上に厚膜のレジスト層を形成し、該レジスト層を露光現像して前記触媒膜層の一部が露出した前記微細な線状パターンからなる溝を形成し、該露出した溝の触媒膜層上にのみ厚膜の金属膜層を形成することを特徴とする透明導電性支持体の製造方法である。
【0008】
本発明の第2実施態様は、少なくとも触媒膜層上に形成される引き回し回路および微細な線状パターンからなる透明導電膜が金属膜層で構成されるタッチセンサの製造方法であって、触媒膜層上に厚膜のレジスト層を形成し、該レジスト層を露光現像して前記触媒膜層の一部が露出した前記引き回し回路パターンおよび前記微細な線状パターンからなる溝を形成し、該露出した溝の触媒膜層上にのみ厚膜の金属膜層を形成することを特徴とするタッチセンサの製造方法である。
【0009】
本発明の第3実施態様は、前記第1実施態様の透明導電性支持体の製造方法において、金属膜層が無電解メッキ膜であり、さらに該金属膜層上に金属膜よりも耐食性に優れたメッキ膜を形成することを特徴とする透明導電性支持体の製造方法である。
【0010】
本発明の第4実施態様は、前記第2実施態様のタッチセンサの製造方法において、金属膜層が無電解メッキ膜であり、さらに該金属膜層上に金属膜よりも耐食性に優れたメッキ膜を形成することを特徴とするタッチセンサの製造方法である。
【0011】
本発明の第5実施態様は、前記第1実施態様または第3実施態様の透明導電性支持体の製造方法において、露光現像して形成される線状パターンの溝の断面形状を楔状にすることを特徴とする透明導電性支持体の製造方法である。また、本発明の第6実施態様は、前記第2実施態様または第4実施態様のタッチセンサの製造方法において、露光現像して形成される線状パターンの溝および引き回し回路部の溝の断面形状を楔状にすることを特徴とするタッチセンサの製造方法である。
【0012】
本発明の第7実施態様は、前記第1実施態様または第3実施態様の透明導電性支持体の製造方法において、露光現像して形成される線状パターンの溝の側面を微細な凹凸状にすることを特徴とする透明導電性支持体の製造方法である。また、本発明の第8実施態様は、前記第2実施態様または第4実施態様のタッチセンサの製造方法において、露光現像して形成される線状パターンの溝の側面および引き回し回路部の溝の側面を微細な凹凸状にすることを特徴とするタッチセンサの製造方法である。
【0013】
本発明の第9実施態様は、前記第7実施態様の透明導電性支持体の製造方法において、レジスト層に微細な微粒子が含有され、該微粒子の存在によって露光現像して形成される線状パターンの溝の側面を微細な凹凸状にすることを特徴とする透明導電性支持体の製造方法である。また、本発明の第10実施態様は、前記第8実施態様のタッチセンサの製造方法において、レジスト層に微細な微粒子が含有され、該微粒子の存在によって露光現像して形成される線状パターンの溝の側面および引き回し回路部の溝の側面を微細な凹凸状にすることを特徴とするタッチセンサの製造方法である。
【0014】
本発明の第11実施態様は、触媒膜層上に形成される微細な線状パターンからなる透明導電膜が金属膜層で構成される透明導電性支持体であって、触媒膜層上に該金属膜層とレジスト層とが並列して構成されていることを特徴とする透明導電性支持体である。また、本発明の第12実施態様は、触媒膜層上に形成される微細な線状パターンからなる透明導電膜および引き回し回路が金属膜層で構成されるタッチセンサであって、触媒膜層上に該金属膜層とレジスト層とが並列して構成されていることを特徴とするタッチセンサである。
【0015】
本発明の第13実施態様は、第11実施態様の金属膜層が無電解メッキで形成され、該金属膜層の上に金属膜層よりも耐食性に優れたメッキ層が積層されていることを特徴とする透明導電性支持体である。また、本発明の第14実施態様は、第12実施態様の金属膜層が無電解メッキで形成され、該金属膜層の上に金属膜層よりも耐食性に優れたメッキ層が積層されていることを特徴とするタッチセンサである。
【0016】
本発明の第15実施態様は、第13実施態様の無電解メッキで形成される金属膜層の断面形状が楔状になっていることを特徴とする透明導電性支持体である。また、本発明の第16実施態様は、第14実施態様の無電解メッキで形成される金属膜層の断面形状が楔状になっていることを特徴とするタッチセンサである。
【0017】
本発明の第17実施態様は、第11実施態様等の金属膜層の側面が微細な凹凸形状になっていることを特徴とする透明導電性支持体である。また、本発明の第18実施態様は、第12実施態様等の金属膜層の側面が微細な凹凸形状になっていることを特徴とするタッチセンサである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1実施態様の透明導電性支持体の製造方法は、触媒膜層の一部が露出した前記微細な線状パターンからなる溝を形成し、該露出した溝の触媒膜層上のみに厚膜の金属膜層を無電解メッキ等により形成することを特徴とするので、本発明の第11実施態様のような透明導電性支持体を製造することができる。したがって、無電解メッキ等に使用される金属材料の消費量が必要最低限で済む効果がある。したがって、環境に優しくかつコストパフォーマンスにも優れた透明導電性支持体を製造することができる。
【0019】
本発明の第2実施態様のタッチセンサの製造方法は、透明導電膜の部分とともに引き回し回路の部分も同時に形成することを特徴とするので、本発明の第12実施態様のようなタッチセンサを製造することができる。したがって、工程が短縮され、透明導電膜のパターンと引き回し回路のパターンとの位置合わせが不要になるので、生産性が大幅に向上しコストダウンができる効果がある。
【0020】
本発明の第3実施態様の透明導電性支持体の製造方法または第4実施態様のタッチセンサの製造方法は、金属膜層が無電解メッキ膜であり、さらに該金属膜層上に金属膜よりも耐食性に優れたメッキ膜を形成して、本発明の第13実施態様のような透明導電性支持体または第14実施態様のようなタッチセンサを製造することを特徴とする。したがって、該メッキ膜によって金属膜層が覆われ、金属膜層表面の腐食を防止できる効果がある。金属膜層表面の光沢が抑制されるため、該光沢によって視認されていた微細な線状パターンからなる透明導電膜のパターン見えを軽減できる効果がある。また、該メッキ膜には金属膜層上のみに形成されるので、該メッキ膜の材料の使用量も少なくて済み、かつ金属膜層の側面には形成されないので透明導電膜の微細な線状パターンの線幅は該メッキ膜より太くならない。よって、透明導電膜の微細な線状パターンの開口率はそのまま維持され、透明性に優れた透明導電膜およびタッチセンサを製造できる効果がある。
【0021】
本発明の第5実施態様の透明導電性支持体の製造方法または第6実施態様のタッチセンサの製造方法は、露光現像して形成される線状パターンの溝の断面形状を楔状にすることを特徴とする。したがって、該製造方法によって形成される金属膜層はその側面が第15実施態様の透明導電性支持体または第16実施態様のタッチセンサのような隠される形状になるため、該金属膜層の側面が光沢を有していても、該光沢が視認されにくいため、微細な線状パターンからなる透明導電膜のパターン見えを軽減できる効果がある。
【0022】
本発明の第7実施態様の透明導電性支持体の製造方法または第8実施態様のタッチセンサの製造方法は、露光現像して形成される線状パターンの溝の側面が微細な凹凸状になっていることを特徴とする。したがって、該製造方法によって形成される金属膜層はその側面が第17実施態様の透明導電性支持体または第18実施態様のタッチセンサのような微細な凹凸状になり、該微細な凹凸によって該側面の光沢も抑制されるため、該側面の光沢によって視認されていた微細な線状パターンからなる透明導電膜のパターン見えをさらに軽減できる効果がある。
【0023】
本発明の第9実施態様の透明導電性支持体の製造方法および第10実施態様のタッチセンサの製造方法は、レジスト層に微細な微粒子が含有され、該微粒子の存在によって露光現像して形成される線状パターンの溝の側面が微細な凹凸状になることを特徴とする。したがって、容易に線状パターンの溝の側面を微細な凹凸状にすることができ、生産性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施態様の透明導電性支持体の製造方法の全工程例を示す断面図である。
図2】本発明の第二実施態様のタッチセンサの製造方法等によって製造された第十実施態様のタッチセンサ300の例を示す断面図である。
図3】本発明の第三実施態様の透明導電性支持体の製造方法の工程例の一部を示す断面図である。
図4図3(b)で形成された積層膜30を拡大した断面図である。
図5】本発明の第九実施態様の透明導電性支持体の製造方法の工程例の一部を示す断面図である。
図6】微細な凹凸形状11のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳述する。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は本発明の第一実施態様の透明導電性支持体の製造方法の全工程例を示す断面図であり、透明支持体40の表面に触媒5を含有した触媒膜層10を形成し(図1(a))、該触媒膜層10上に厚膜のレジスト層50を形成して(図1(b))、該レジスト層50を露光現像して前記触媒膜層10の一部が露出した前記微細な線状パターンからなる溝1を形成し(図1(c))、該露出した溝1の触媒膜層10上のみに厚膜の金属膜層20を無電解メッキ等により形成している(図1(d))。なお、触媒5を透明支持体40に含有させておくことにより触媒膜層10を無くすことも可能であり、その構成も本願発明に含まれる。
【0027】
この製造方法により得られる透明導電性支持体400は透明支持体40の表面に触媒膜層10が形成され、該触媒膜層10上に透明導電膜100が形成されており、該透明導電膜100は微細な線状パターンからなる金属膜層20で構成される。そして、該透明導電膜100の微細な線状パターンとしては、線幅0.5〜10μmで線間が該線幅の10倍〜1000倍のメッシュ状またはハニカム状パターンなどが挙げられる。
【0028】
図2は本発明の第二実施態様のタッチセンサの製造方法等によって製造された第十実施態様のタッチセンサ300の例を示す断面図であり、触媒膜層10上に、金属膜層20によって構成される引き回し回路200および微細な線状パターンからなる透明導電膜100が形成されている。
【0029】
図3は本発明の第三実施態様の透明導電性支持体の製造方法の工程例の一部を示す断面図であり、露出した溝1の触媒膜層10上のみに厚膜の電解メッキ膜からなる金属膜層20を形成した後(図3(a))、さらに該金属膜層上に金属膜層よりも耐食性に優れたメッキ層25が形成されている(図3(b))。したがって、この製造方法により得られる透明導電膜100は微細な線状パターンからなり金属膜層20と耐食性に優れたメッキ層25との積層膜30で構成される。
【0030】
図4図3(b)で形成された積層膜30を拡大した断面図であり、露光現像して線状パターンの溝1を形成する工程において露光時間を長めにすることにより金属膜層20の断面が楔状の形状32になっていることを示す。該形状32になることにより、金属膜層20の側面は金属膜層よりも耐食性に優れたメッキ層25によって覆い隠されるので、透明導電膜の微細な線状パターンの線幅は太くならず、また金属膜層20の側面が光沢を有していても該光沢は外部から視認されにくくなるため、微細な線状パターンのパターン見えが軽減される。
【0031】
図5は本発明の第九実施態様の透明導電性支持体の製造方法の工程例の一部を示す断面図であり、レジスト層50に微細な微粒子55が含有され(図5(a))、該微粒子55の存在によって露光現像して形成される線状パターンの溝1の側面が微細な凹凸形状11になっており(図5(b))、それによって製造される金属膜層20の側面は光沢が抑えられた艶消し状態になり、微細な線状パターンのパターン見えが軽減される。
【0032】
図6は該図5の微細な凹凸形状11のプロファイル例を示した図であり、基準点はレジスト層50の表面と溝1の交点51とする。横軸は基準点から溝1の深さ方向の距離を,縦軸は各深さでの側面の位置を示している。プラス側は基準点より外側にはみ出た状態,マイナス側は基準点より凹んだ状態を示している。
【0033】
露光は、所定のパターンマスクを取り付け、その上から紫外線などの露光光線を照射するとよい。通常の露光では、ネガ型のレジスト層50を使用して露光光線を長く照射しすぎると露光光線が回り込んで硬化し現像後のレジスト層50の断面形状が逆楔型のような台形形状になってしまうので良くないとされるが、本発明では故意にレジスト層50の断面形状をそのような逆楔型の形状にして、それに伴って金属膜層20の断面形状を楔状の形状32に製造することができ、断面形状が楔状の形状32になれば金属膜層20の側面に光沢があっても、該光沢が外部から視認されず、微細な線状パターンのパターン見えが軽減されるようにしている。
【0034】
透明支持体40は、熱可塑性樹脂、熱や紫外線や電子線や放射線などで硬化する硬化性樹脂のほか、ガラス、セラミックス、無機材などからなる。透明な熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ニトロセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシクロヘキサンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、これらの樹脂の共重合体樹脂、これらの樹脂の混合樹脂が挙げられる。透明な硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0035】
金属膜層20は、無電解メッキによって形成される銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属膜のほか、直流を使用できるのであればアルミニウムや銅などの電解メッキ膜であってもよい。また、酸化チタンなどの導電性金属酸化物膜、金属ナノワイヤや金属粒子などを含有する金属含有導電性コーティング膜などでもよい。その中でも、効率性を考慮すると、無電解メッキによって形成される金属膜がとくに好ましい。なお、金属膜層20は複数の材料からなる積層膜であってもよい。
【0036】
無電解メッキの中でも、電解メッキの効率性や材料の汎用性およびコストを考慮すると、自己触媒性のある銅の無電解メッキ膜がとくに好ましい。銅の無電解メッキ膜を得るには、銅イオン源と電子を供給するホルムアルデヒドなどの還元剤とがメッキ溶液中に含まれることが必須条件である。さらに、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびオキシカルボン酸などの緩衝剤、酒石酸やEDTAなどの錯化剤等を添加してもよい。膜厚は0.5〜30μm程度が好ましい。該膜厚が0.5未満であると導電性が不足しがちになり、該膜厚が30μmを超えると膜の強度が低下する場合がある。
【0037】
触媒膜層10は触媒5を含有させた層であって、表面に露出した触媒5の触媒核に還元された銅等が析出し金属膜層20が形成される。触媒5としては、パラジウム、銅、銀、ニッケル、コバルト、金などの触媒金属が挙げられる。その中でも、触媒活性が高く酸化されにくいパラジウムが最も好ましい。触媒5を樹脂バインダー等に含有させ、センシタイジング法やキャタリスト法などの方法により、触媒膜層10の表面を触媒活性が高い状態にしておくとよい。
【0038】
メッキ膜25は、電解メッキまたは無電解メッキのいずれで形成しても構わないが、金属膜層20よりも耐食性に優れていることが必要であり、着色や彩度が少なく、光沢の少ないマット調の膜に形成するのが好ましい。そのようなメッキ膜の例としては、ニッケルメッキ膜、スズメッキ膜、ロジウムメッキ膜、パラジウムメッキ膜、銅−スズ−亜鉛の合金メッキ膜などが挙げられる。
【0039】
レジスト層50は、露光光線が当たった箇所が分解し現像液に溶けて除去されるポジ型、露光光線が当たった箇所が重合により現像液に溶けなくなり露光光線が当たらなかった箇所を除去するネガ型のいずれでも構わない。しかしネガ型のレジスト層50は、前述したように露光光線を長く照射することにより溝1の断面形状を逆楔型のような台形形状にすることができ、最終的に微細な線状パターンのパターン見えを軽減できるメリットがあるので、ネガ型のレジストの方が好ましい。
【0040】
レジスト層50の材質としては、オレフィン系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、セルロース系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系などの単体樹脂およびこれらの樹脂の混合樹脂や共重合体樹脂などが挙げられる。とくに、ウレタンアクリレート系樹脂やシアノアクリレート系樹脂が好ましい。膜厚は5〜200μm程度で適宜設定するとよい。形成方法は汎用の各種印刷方法のほかコーターや塗装、ディッピングなどが挙げられる。
【0041】
レジスト層50に含有される微細な微粒子55は、オレフィン系、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、セルロース系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系などの硬化または未硬化の樹脂微粒子、アルミナ・酸化亜鉛・酸化チタン、酸化ケイ素などの無機微粒子などが挙げられる。これらの微細な微粒子55は、現像工程における現像液によって溶解してレジスト層50の側面を微細な凹凸形状11に形成するタイプであってもよいし、現像液によっても溶解せずレジスト層50内に残存したままでレジスト層50の側面を微細な凹凸形状11に形成するタイプであってもよい。
【0042】
溝1の側面の微細な凹凸形状11は、最終的に金属膜層20の側面が艶消し状態にさえ成るようにできればいずれの凹凸形状であっても構わないが、数値的には図6のプロファイルにおいて算術平均粗さRaが0.3〜2μm程度になるのが好ましい。そのためには微細な微粒子55の平均粒子径は0.1〜5μm程度のものが好ましく、この範囲外であると凹凸形状51が細かすぎ又は粗すぎて最終的に金属膜層20の側面に光沢が発現して、透明導電膜のパターン見えを軽減しにくくなる場合がある。なお、微細な微粒子55の形状としては球状・鱗片状などが挙げられる。
【0043】
なお、レジスト層50はそのまま残存させておいても構わないし、剥離除去しても構わない。ただし、剥離除去した場合には透明支持体40に対し金属膜層20を凸部とする厚みの段差が生じており、また金属膜層20の側面はそのままでは金属がむきだしの錆び易い状態になっているため、該段差を少なくして平坦化しかつ該金属膜層20の側面の防錆目的として、直ちに金属膜層20が形成されていない凹部に別の透明の樹脂層を充填しておくことが必要である。
【符号の説明】
【0044】
1 線状パターンの溝
10 触媒膜層
11 微細な凹凸形状
20 金属膜層
25 メッキ層
30 積層膜
32 金属膜層側面断面の楔状の形状
40 透明支持体
50 レジスト層
51 基準点
55 微粒子
100 透明導電膜
200 引き回し回路
300 タッチセンサ
400 透明導電性支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6