特許第6737589号(P6737589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6737589-炭酸水注出バルブ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737589
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】炭酸水注出バルブ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   B67D1/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-238578(P2015-238578)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2017-105478(P2017-105478A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佐紀
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−194393(JP,A)
【文献】 特開2000−025899(JP,A)
【文献】 実開昭63−059899(JP,U)
【文献】 実開昭50−136499(JP,U)
【文献】 特開2002−104594(JP,A)
【文献】 特開2009−057053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸飲料吐出口を有するノズルと、
前記ノズルの前記炭酸飲料吐出口に炭酸水を供給する炭酸水供給流路と、
前記炭酸水供給流路による前記炭酸水の供給を制御するバルブ本体と、
前記バルブ本体に取り付けられるコーンとを備え、
前記コーンは、外周面に網目構造が形成される円筒形状の内コーンと、前記内コーンの前記外周面に対向して設けられる円筒形状の外コーンとを有し、
前記内コーンの外周面と前記外コーンの内周面との間には、前記炭酸水供給路の一部を構成する間隙が設けられ、
前記内コーン又は前記外コーンの少なくともいずれか1つは、ステンレス鋼によって形成される炭酸水注出バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭酸水注出バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、従来の炭酸飲料ディスペンサに設けられる炭酸水注出バルブには、炭酸水の供給経路の一部に、炭酸水の動揺を抑制して炭酸ガスの濃度を上げるための減圧経路が設けられている。この減圧経路は、バルブ本体の内部に挿入された円筒形状のコーンの外周面とバルブ本体との間の間隙によって構成される。また、コーンの外周面である円筒面には網目状の細溝が形成されている。さらにコーンは樹脂によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−194393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の炭酸水注出バルブでは、樹脂製のコーンは流通する低温の炭酸水に一定時間以上接触することで熱収縮したり、炭酸水によって圧力を受けたりして変形してしまう可能性があった。このため、コーンとバルブ本体との間に設けられる減圧経路の断面積が拡大してしまい、炭酸水を充分に減圧することができず、炭酸水の濃度を高くすることができないという問題があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされ、コーンの変形を抑制し、高濃度な炭酸水を作成することができる炭酸水注出バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係る炭酸水注出バルブは、炭酸飲料吐出口を有するノズルと、ノズルの炭酸飲料吐出口に炭酸水を供給する炭酸水供給流路と、炭酸水供給流路による前記炭酸水の供給を制御するバルブ本体と、バルブ本体に取り付けられるコーンとを備え、コーンは、外周面に網目構造が形成される円筒形状の内コーンと、内コーンの外周面に対向して設けられる円筒形状の外コーンとを有し、内コーンの外周面と外コーンの内周面との間には、炭酸水供給路の一部を構成する間隙が設けられ、内コーン又は外コーンの少なくともいずれか1つは、ステンレス鋼によって形成される。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る炭酸水注出バルブによれば、コーンの変形を抑制し、高濃度な炭酸水を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係る炭酸水注出バルブの正面図であって、特に炭酸水供給流路近傍の構造を断面で示す図である。
図2図1に示す炭酸水注出バルブの炭酸水供給流路近傍の構造を拡大した図である。
図3図1に示す炭酸水注出バルブの側面図であって、特に炭酸水供給流路近傍の構造を断面で示す図である。
図4図1に示す炭酸水注出バルブの内コーンを示す斜視図である。
図5図1に示す炭酸水注出バルブの内コーンと外コーンとの位置関係を模式的に示す、部分的な断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態に係る炭酸水注出バルブ100について図1〜4に基づいて説明する。
まず、図1及び3に示すように、炭酸水注出バルブ100は、内部を炭酸水が流通する炭酸水供給管3と、内部をシロップやリカー等の飲料原液が流通する飲料原液供給管4と、炭酸水供給管3及び飲料原液供給管4が接続するバルブ本体1とを有している。また、バルブ本体1は、炭酸水供給管3による炭酸水の供給を制御する炭酸水供給弁1aと、飲料原液供給管4による飲料原液の供給を制御する飲料原液供給弁1bとを有する。さらに、バルブ本体1の下部には、炭酸水供給弁1a及び飲料原液供給弁1bの開閉を制御するバルブレバー2が取り付けられる。
【0010】
さらに、バルブ本体1には、略円筒形状のノズル取付部12が下方に突出して一体的に設けられている。バルブ本体1には、ノズル取付部12を介してノズル22が取り付けられる。ノズル22は、下方に開放された炭酸飲料吐出口25を有している。また、ノズル取付部12の内側には略円柱形状の空間であるコーン収容空間13が形成される。さらに、コーン収容空間13の上部には、炭酸水供給管3に連通する炭酸水導入空間11が形成されている。そして、炭酸水導入空間11の上面11aは、炭酸水供給管3との接続箇所を頂点としてコーン収容空間13の径方向に亘って徐々に低くなるように傾斜して形成されている。また、コーン収容空間13の中央には、飲料原液供給管4に連通する飲料原液注出管5が軸方向に沿って下方に延びている。
【0011】
また、コーン収容空間13の内側には略円筒形状の外コーン20が嵌め込まれている。外コーン20はステンレス鋼によって形成されている。また、外コーン20は、円筒形状の外周面20b及び内周面20cと、外周面20b及び内周面20cの上端に配置された上端面20aとを有する。図5に示すように、外コーン20の上端面20aは平面であり、一定の幅tを有する円の軌跡をなす形状である。
【0012】
そしてさらに、外コーン20の内側には、図4に示す略円筒形状の内コーン10が配置される。内コーン10も外コーン20と同様にステンレス鋼によって形成されている。内コーン10は円筒形状の外周面を有し、円筒形状の外周面10bと、外周面10bの上端に配置された平面状の上端面10aとを有する。また、内コーン10の中央部分には第一取付孔10cが形成されている。さらに、内コーン10の外周面10bには複数の細溝が各々互いに交差しつつ網目形状に形成され、網目構造10dをなしている。また、図5に示すように、内コーン10の外径D1は外コーン20の内径D2よりもやや小さい。すなわち、外コーン20は内コーン10の外周面10bに対向して設けられるとともに、内コーン10の外周面10bと外コーン20の内周面20cとの間には、幅が0.05mm程度の間隙15が形成される。また、内コーン10の軸方向の長さは外コーン20の軸方向の長さよりも短い。また、外コーン20及び内コーン10は、コーン収容空間13の上面に当接するように配置されており、内コーン10の第一取付孔10cには飲料原液注出管5が挿入されている。
ここで、内コーン10及び外コーン20は、コーン40を構成する。
さらに、炭酸水供給管3、炭酸水導入空間11、網目構造10d及び間隙15は、炭酸水供給流路を構成する。
【0013】
また、ノズル22の内部には略円盤形状の整流部30が嵌め込まれており、整流部30は上面が外コーン20の下端に当接するように配置される。また、整流部30の中央には第二取付孔32が形成され、第二取付孔32には飲料原液注出管5が挿入される。さらに、整流部30の外縁には、複数の切欠溝30aが形成されている。
【0014】
次に、炭酸水注出バルブ100による炭酸飲料の作製方法について図1〜3を用いて説明する。
まず、利用者が手に持ったコップ等でバルブレバー2を図3の矢印Pの方向に押すと、通常時は閉鎖状態である炭酸水供給管3の炭酸水供給弁1a及び飲料原液供給管4の飲料原液供給弁1bが開放される。これにより、炭酸水供給管3を炭酸水が、飲料原液供給管4を飲料原液が流通する。
【0015】
炭酸水供給管3から炭酸水導入空間11に流入した炭酸水は、まず、図2の矢印Aに示すように、内コーン10の上端面10aを径方向外側へ向かって流通する。そして、炭酸水は、矢印Bに示すように、内コーン10と外コーン20との間の間隙15及び網目構造10dを流通して下方へ流れ落ちる。この時、図5に示すように、間隙15を流通する炭酸水の内圧は0.54Pa程度であり、これによって外コーン20には引張応力σが生じる。また、間隙15を流通する炭酸水の炭酸水注出温度Tは約0℃である。
【0016】
そして、矢印Cに示すように、炭酸水は整流部30の切欠溝30aを介してノズル22の内部に流入し、矢印Dに示すように、ノズル22の炭酸飲料吐出口25に供給される。
すなわち、炭酸水供給管3とノズル22の炭酸飲料吐出口25とは、炭酸水導入空間11、網目構造10d、間隙15及び切欠溝30aを介して連通されており、これにより、炭酸水供給管3はノズル22の炭酸飲料吐出口25に炭酸水を供給することができる。
【0017】
一方、飲料原液供給管4を流通する飲料原液は飲料原液注出管5を流通して下方へ流れ落ち、矢印Eに示すようにノズル22の内部に流入し、炭酸飲料吐出口25に供給される。そして、飲料原液は炭酸水と混ざり合い、炭酸飲料として、ノズル22の炭酸飲料吐出口25から矢印Fに示すように外部に注出される。
【0018】
以上より、この実施の形態1に係る炭酸水注出バルブ100では、内コーン10の外周面10bに網目構造10dが形成されることによって、炭酸水の流通経路の面積及び距離が実質的に大きくなる。従って、炭酸水が内コーン10と外コーン20との間の網目構造10d及び間隙15を流通する間にも、炭酸水の流速が充分に減速されることとなり、炭酸水の動揺が抑制される。従って、炭酸ガスと水との結びつきの乱れも軽減されるため、より高濃度な炭酸水を注出することができる。
【0019】
また、内コーン10がステンレス鋼で形成されることにより、内コーン10の変形が防止される。具体的には、間隙15を流通する炭酸水の炭酸水注出温度Tは0℃程度であるため、内コーン10は低温の炭酸水に一定時間以上晒されることにより熱収縮してしまう。この時の内コーン10の外径D1の変位量は、内コーン10の材質の熱膨張係数に依存する。従って、内コーン10を熱膨張係数が小さいステンレス鋼にすることによって、内コーン10の形状が維持されるとともに、間隙15の拡大が防止され、より高濃度の炭酸水が作製される。
なお、この実施の形態において、内コーン10の変形を無視することができる程微小に留めるには、内コーン10を、熱膨張係数が約20×10−6以下の材料で形成する必要があるが、ステンレス鋼は一般的に17.3×10−6の熱膨張係数を有する。
【0020】
また、内コーン10と同様に、外コーン20がステンレス鋼で形成されることにより、外コーン20の変形が防止される。具体的には、図5に示すように、間隙15を流通する炭酸水の内圧によって外コーン20に引張応力σが生じた場合、外コーン20は内径D2が拡大するように変形する。この時の外コーン20の内径D2の変位量は、外コーン20の材質の縦弾性係数に依存する。従って、外コーン20を縦弾性係数が大きいステンレス鋼にすることによって、外コーン20の形状が維持されるとともに、間隙15の拡大が防止され、より高濃度の炭酸水が作製される。
なお、この実施の形態において、外コーン20の変形を無視することができる程微小に留めるには、外コーン20を、縦弾性係数が50[GPa]以上の材料で形成する必要があるが、ステンレス鋼は一般的に193[GPa]の縦弾性係数を有する。
【0021】
なお、この実施の形態に限定されず、外コーン20を樹脂で形成し、内コーン10のみをステンレス鋼で形成してもよい。また、内コーン10を樹脂で形成し、外コーン20のみをステンレス鋼で形成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 バルブ本体、3 炭酸水供給管(炭酸水供給流路)、10 内コーン、10b 内コーンの外周面、11 炭酸水導入空間(炭酸水供給流路)、15 間隙(炭酸水供給流路)、20 外コーン、20c 外コーンの内周面、22 ノズル、25 炭酸飲料吐出口、40 コーン、100 炭酸水注出バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5