特許第6737609号(P6737609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6737609粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737609
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
   G02B5/30
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-57290(P2016-57290)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-173434(P2017-173434A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 友徳
(72)【発明者】
【氏名】三田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
(72)【発明者】
【氏名】池嶋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−161782(JP,A)
【文献】 特開2014−112259(JP,A)
【文献】 特開2001−350021(JP,A)
【文献】 特開2008−257025(JP,A)
【文献】 特開2013−254072(JP,A)
【文献】 特開2013−160775(JP,A)
【文献】 特開2011−227450(JP,A)
【文献】 特開2015−152911(JP,A)
【文献】 特開2005−43858(JP,A)
【文献】 特開2013−68804(JP,A)
【文献】 特開2014−119501(JP,A)
【文献】 特開2016−153883(JP,A)
【文献】 特開2016−153884(JP,A)
【文献】 特許第6078132(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムの偏光子の側から透明樹脂層および粘着剤層をこの順で有する粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法であって、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、下記式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたものであり、
前記透明樹脂層および粘着剤層の形成は、
前記片保護偏光フィルムを搬送しながら、前記片保護偏光フィルムの偏光子の側に、樹脂成分または樹脂層を構成することができる硬化性成分を含む塗工液を塗工する工程(1)および前記塗工工程(1)の後に前記塗工液を固化または硬化する工程(2)を施すことにより厚さ3μm未満の透明樹脂層を形成した後に、
得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取ることなく、前記透明樹脂層に、粘着剤層を形成する工程(3)を施すことにより行うことを特徴とする粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)の後、前記工程(3)の前に、搬送ライン中で透明樹脂層の膜厚を測定する工程(4)を有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程(4)は、光源の先端に偏光素子を用いる光学干渉方式により行うことを特徴とする請求項2記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)における塗工液は水に溶解または分散した樹脂成分を含み、工程(2)において固化することによって透明樹脂層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂成分を含む塗工液が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶液であることを特徴とする請求項4記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)における塗工液は、25℃における粘度が1000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記偏光子は、偏光子全量に対してホウ酸を20重量%以下で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記粘着剤層には、セパレータが積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法。
【請求項9】
粘着剤層付の片保護偏光フィルムを、巻回体とすることを特徴とする請求項8記載の粘着剤層付片保護偏光フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法に関する。前記製造方法で得られた粘着剤層付の片保護偏光フィルムはこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。
【0003】
偏光子としては、高透過率、高偏光度を有することから、例えばポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が最も一般的に広く使用されている。このような偏光子は、機械的強度が極端に弱く、熱や水分により収縮してしまい偏光機能が顕著に低下してしまう短所をもっている。従って、得られた偏光子は直ちに、接着剤が塗工された保護フィルムと接着剤を介して貼り合わせられて、偏光フィルムとして用いられている。
【0004】
前記偏光フィルムを液晶セル等に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、偏光フィルムを瞬時に固定できること、偏光フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、偏光フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている。即ち、偏光フィルムの貼着には粘着剤層付偏光フィルムが一般的に用いられる。
【0005】
一方、液晶表示装置等の画像表示装置は、薄型化がすすんでおり、偏光フィルムについても薄型化が要求されている。そのため、薄型化は偏光子についても行われている(特許文献1)。また、薄型化は、偏光子の片側にのみ保護フィルムを設け、他の片側には保護フィルムを設けていない片保護偏光フィルムを用いることにより行うことができる。当該片保護偏光フィルムは、偏光子の両面に保護フィルムを設けた両保護偏光フィルムに比べると、保護フィルムが一枚少ないため、薄化型を図ることができる。
【0006】
一方、片保護偏光フィルムは、前記熱衝撃による耐久性が不十分なため、偏光子側に保護層(透明樹脂層)を設けたものが提案されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4751481号明細書
【特許文献2】特開2010−009027号公報
【特許文献3】特開2013−160775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2、3では、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムを用いることで薄型化を図るとともに、他方では、保護層を設けることにより、片保護偏光フィルムを用いることにより生じる偏光子の吸収軸方向への貫通クラック(熱衝撃(例えば、−30℃と80℃の温度条件を繰り返すヒートショック試験)の過酷な環境下において偏光子の収縮応力の変化により偏光子の吸収軸方向の全体に生じるクラック)の発生を抑えている。また、特許文献2、3において、片保護偏光フィルムへの保護層(透明樹脂層)の形成は、その形成材料を各種の塗工方式により行うことができることが記載されている。
【0009】
一方、上述したように、薄型化は偏光子についても行われている。偏光フィルムまたは粘着剤層付偏光フィルムに用いる偏光子を薄くした場合(例えば、厚み10μm以下にした場合)には、偏光子の収縮応力の変化が小さくなる。そのため、薄型化した偏光子によれば、前記貫通クラックの発生を抑制することができることが分かった。
【0010】
しかし、前記貫通クラックの発生が抑制された片保護偏光フィルムまたはそれを用いた粘着剤層付偏光フィルムにおいて、特許文献1のように光学特性を制御し、かつ偏光子を薄くした場合(例えば、厚み10μm以下にした場合)には、片保護偏光フィルムまたはそれを用いた粘着剤層付偏光フィルムに機械衝撃が負荷されたとき(偏光子側に凸折れによる負荷がかかる場合を含む)に、偏光子の吸収軸方向に部分的に極細のスリット(以下、ナノスリットともいう)が発生することが分かった。前記ナノスリットは、偏光フィルムのサイズに無関係に生じることも分かった。さらには、前記ナノスリットは、偏光子の両面に保護フィルムを有する両保護偏光フィルムを用いた場合には生じないことも分かった。また、偏光子に貫通クラックが生じた場合には、貫通クラックの周辺の応力が解放されるため、貫通クラックは隣接して生じることはないが、ナノスリットは単独で生じる他に、隣接して生じることが分かった。また、貫通クラックは、クラックが生じた偏光子の吸収軸方向に伸びる進行性を有しているが、ナノスリットは前記進行性のないことも分かった。このように、前記ナノスリットは、貫通クラックの発生が抑制された片保護偏光フィルムにおいて、偏光子を薄く、かつ、光学特性を所定の範囲に制御した場合に生じる新たな課題であり、従来知られていた前記貫通クラックとは異なる現象により生じる課題であることが分かった。
【0011】
また、前記ナノスリットは極細であるため、通常の環境下では検出できない。従って、仮に、偏光子にナノスリットが発生していたとしても、片保護偏光フィルムおよびそれを用いた粘着剤層付偏光フィルムの光抜けによる欠陥を確認することは一見したのみでは困難である。すなわち、通常、片保護偏光フィルムは長尺フィルム状に作製され、自動的光学検査にて欠陥検査されるが、この欠陥検査でナノスリットを欠陥として検出することが困難である。前記ナノスリットによる欠陥は、片保護偏光フィルムまたは粘着剤層付偏光フィルムが画像表示パネルのガラス基板等に貼り合わされたうえで加熱環境下におかれた場合に、ナノスリットが幅方向に広がることで検出可能(例えば、前記光抜けの有無)になることも分かった。
【0012】
よって、偏光子の厚みが10μm以下の片保護偏光フィルムまたはそれを用いた粘着剤層付偏光フィルムにおいては、貫通クラックだけでなく、ナノスリットの発生も抑制しておくことが望まれる。
【0013】
しかし、薄型の片保護偏光フィルムを用いた場合には、保護層(透明樹脂層)の塗工液から透明樹脂層を形成した後に、例えば硬化を促進させて所定の膜厚に制御された透明樹脂層を得るために、一旦、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取り、巻き取られた前記透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを再度繰り出してから、粘着剤層の次工程の形成工程に移行させようとすると、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを繰り出す際にブロッキング(巻き取ったフィルム同士の密着)により、偏光子に局所的に応力が掛る場合がある。そのため、得られる透明樹脂層付の片保護偏光フィルムのロール状物はナノスリットの発生リスクを高めたり、次工程への繰り出しが困難になったりしていた。一方、透明樹脂層を形成後、透明樹脂層上に表面保護フィルムを貼り付けたたうえで巻回すれば、透明樹脂層に起因したブロッキングは防げるものの、表面保護フィルムを剥がす際に偏光子に局所的に応力が掛るため、ナノスリットが発生するリスクが高まる。
【0014】
本発明は、薄型の片護保護フィルムを用いた場合であっても、安定して、透明樹脂層、次いで粘着剤層を形成することができるとともに、ナノスリットの発生を抑制することができる粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、下記の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0016】
即ち本発明は、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムの偏光子の側から透明樹脂層および粘着剤層をこの順で有する粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法であって、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含み、厚みが10μm以下であり、かつ、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、下記式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたものであり、
前記透明樹脂層および粘着剤層の形成は、
前記片保護偏光フィルムを搬送しながら、前記片保護偏光フィルムの偏光子の側に、樹脂成分または樹脂層を構成することができる硬化性成分を含む塗工液を塗工する工程(1)および前記塗工工程(1)の後に前記塗工液を固化または硬化する工程(2)を施すことにより透明樹脂層を形成した後に、
得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取ることなく、前記透明樹脂層に、粘着剤層を形成する工程(3)を施すことにより行うことを特徴とする粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法、に関する。
【0017】
前記粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法において、前記工程(2)の後、前記工程(3)の前に、搬送ライン中で透明樹脂層の膜厚を測定する工程(4)を有することができる。前記工程(4)は、光源の先端に偏光素子を用いる光学干渉方式により行うことができる。
【0018】
前記粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法において、前記工程(1)における塗工液として、水に溶解または分散した樹脂成分を含むものを用いて、工程(2)において固化することによって透明樹脂層を形成することができる。前記樹脂成分を含む塗工液としては、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶液が好ましい。
【0019】
前記粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法において、前記工程(1)における塗工液は、25℃における粘度が1000mPa・s以下であることが好ましい。
【0020】
前記粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法において、前記偏光子は、偏光子全量に対してホウ酸を20重量%以下で含有することが好ましい。
【0021】
前記粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法において、前記粘着剤層には、セパレータを積層しても用いることができる。セパレータが設けられた粘着剤層付の片保護偏光フィルムは巻回体として得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法により得られる粘着剤層付の片保護偏光フィルムは、厚み10μm以下の偏光子を用いており、薄型化されている。また、前記厚み10μm以下の薄型の偏光子は、偏光子の厚みが大きい場合に比べて、熱衝撃により偏光子に加わる収縮応力の変化が小さいため、貫通クラックの発生を抑制することができる。
【0023】
一方、所定の光学特性を有する薄型の偏光子は、偏光子にナノスリットが発生しやすくなる。ナノスリットは、片保護偏光フィルムに粘着剤層を設ける粘着剤層付偏光フィルムの製造工程、粘着剤層付偏光フィルムを製造した後の各種工程において、前記片保護偏光フィルムまたはそれを用いた粘着剤層付偏光フィルムに対して機械衝撃が負荷されたときに生じると考えられ、熱衝撃により生じる貫通クラックとは異なるメカニズムにより生じると想定される。また、前記ナノスリットによる欠陥は、粘着剤層付の片保護偏光フィルムが画像表示パネルのガラス基板等に貼り合わされたうえで加熱環境下におかれた場合に、ナノスリットが幅方向に広がることで検出可能(例えば、前記光抜けの有無)になる。
【0024】
本発明の製造方法により得られる粘着剤層付の片保護偏光フィルムでは、偏光子の他の片面(保護フィルムを有しない面)に、透明樹脂層を設けることで、前記ナノスリットの発生を抑制することができる。
【0025】
本発明の製造方法によれば、薄型の偏光子を用いた片護保護フィルムに、工程(1)、工程(2)により透明樹脂層を形成した後に、得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に一旦巻き取り、かつ巻き取られた前記透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを再度繰り出すというようなことを行うことなく、次工程(3)に移行させて、前記透明樹脂層に粘着剤層を形成している。このように、本発明の製造方法では、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムの巻き取り工程及び繰り出し工程を有していないため、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムのブロッキングに因るナノスリットの発生リスクを高めることなく、連続して、かつ安定して、粘着剤層付の片保護偏光フィルムを製造することができる。
【0026】
また、本発明の製造方法において、前記工程(2)の後、前記工程(3)の前に、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムについて、透明樹脂層の膜厚を測定する工程(4)を設けることができる。前記工程(4)により、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取らなくとも、安定的に透明樹脂層の膜厚を測定することができ、透明樹脂層が所定の膜厚になるように管理することができる。その結果、膜厚管理をオフラインで確認する必要がなくなるため、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の製造方法に係る実施形態の一例を示す概念図である。
図2】本発明の製造方法における工程(4)係る一形態を示す概念図である。
図3】偏光子に生じるナノスリットと貫通クラックを対比する概念図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムの製造方法の工程(1)乃至を工程(3)について、図1を参照しながら説明する。
【0029】
塗工工程(1)では、搬送している片保護偏光フィルム1に塗工液2´を塗工する。片保護偏光フィルム1は、偏光子10の片面にのみ保護フィルム20を有し、偏光子10/保護フィルム20、の構成で表されている。図1では前記塗工液2´は、片保護偏光フィルム1の偏光子に(直接)塗工された状態で表されている。なお、前記片保護偏光フィルム1は、通常5〜50m/分で搬送するのが好ましく、さらには10〜40m/分で搬送するのが好ましい。固化または硬化工程(2)では、前記塗工液2´から透明樹脂層2を形成して、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムAを得る。次いで、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムAをロール状に巻き取ることなく、前記透明樹脂層2に、粘着剤層3を形成する工程(3)を施して、粘着剤層付の片保護偏光フィルムBを製造する。
【0030】
また、図1に示すように、本発明の製造方法では、前記工程(2)の後、前記工程(3)を施す前に、搬送ライン中で透明樹脂層の膜厚を測定する工程(4)を有することができる。前記工程(4)は、図2に示すように、光源40と片保護偏光フィルムの間に偏光素子41を用いて、光学干渉方式により行うことができる。透明樹脂層付の片保護偏光フィルムAの透明樹脂層2側から垂直になるように光源40を設置する。光源40と透明樹脂層付の片保護偏光フィルムAの間に偏光素子41を用いて、光源40が透明樹脂層付の片保護偏光フィルムAの偏光子10と吸収軸が直交状態になるようにし、光学干渉方式より透明樹脂層2の厚みを測定する。
【0031】
また、図示していないが、本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムBの、粘着剤層にはセパレータを設けることができる。また本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムBの保護フィルム20の側には、表面保護フィルムを設けることができる。少なくともセパレータを有する粘着剤層付の片保護偏光フィルム(さらには、表面保護フィルムを有するもの)は巻回体として用いることができ、例えば、巻回体から繰り出され、セパレータにより搬送された粘着剤層付偏光フィルムを、粘着剤層を介して画像表示パネルの表面に貼り合せる方式(「ロール・トゥ・パネル方式」ともいう。代表的には、特許第4406043号明細書)へ適用して、画像表示装置を連続的に製造することができる。
【0032】
図3は、偏光子に生じるナノスリットaと貫通クラックbを対比する概念図である。図3(A)には、偏光子10に生じるナノスリットaが、図3(B)には、偏光子10に生じる貫通クラックbが示されている。ナノスリットaは、機械衝撃により発生し、偏光子10の吸収軸方向に部分的に発生する、ナノスリットaは、発生した当初は確認できないが、熱環境下(例えば、80℃や60℃,90%RH)において、幅方向への広がりによって確認することができる。一方、ナノスリットaは偏光子の吸収軸方向に伸びる進行性は有しないと考えられる。また、前記ナノスリットaは、偏光フィルムのサイズに無関係に生じると考えられる。ナノスリットaは単独で生じる他に、隣接して生じることもある。一方、貫通クラックbは、熱衝撃(例えば、ヒートショック試験)により生じる。貫通クラックは、クラックが生じた偏光子の吸収軸方向に伸びる進行性を有している。貫通クラックbが発生した場合には周辺の応力が解放されるため、貫通クラックは隣接して生じることはない。
【0033】
<工程(1)>
≪片保護偏光フィルム≫
前記片保護偏光フィルムは、薄型偏光子の片面にのみ保護フィルムを有するものを用いる。また片保護偏光フィルムは、厚み(総厚み)が60μm以下のものが好ましい。かかる薄型の片護保護フィルムにおいても、本発明の製造方法によれば、安定した膜厚の透明樹脂層を形成することができる。前記片保護偏光フィルムの厚みはさらには55μm以下のものを用いることができる。一方、搬送性の観点から薄型の片護保護フィルムの厚みは20μm以上、さらには25μm以上であるのが好ましい。
【0034】
≪偏光子≫
本発明では、厚み10μm以下の偏光子を用いる。偏光子の厚みは薄型化および貫通クラックの発生を抑える観点から8μm以下であるのが好ましく、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0035】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0036】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0037】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や光学耐久性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックの発生抑制、拡張抑制の観点から、偏光子全量に対して20重量%以下であるのが好ましく、さらには18重量%以下、さらには16重量%以下であることが好ましい。一方、偏光子の延伸安定性や光学耐久性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10重量%以上であることが好ましく、さらには12重量%以上であることが好ましい。
【0038】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0039】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されている。前記条件を満足するように構成された偏光子は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0040】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法によって得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0041】
≪保護フィルム≫
前記保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。これら保護フィルムは、通常、接着剤層により、偏光子に貼り合わせられる。
【0042】
なお、保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは60〜98質量%、特に好ましくは70〜97質量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0043】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム等も用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0044】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0045】
前記保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より2〜200μmであるのが好ましく、さらには3〜100μmであるのが好ましい。特に、片保護偏光フィルムの厚み(総厚み)を60μm以下に調整するには、前記保護フィルム(予めフィルムが形成されている場合)の厚みは、搬送性の点から15〜60μm未満が好ましく、さらには20〜55μmが好ましい。一方、前記保護フィルム(塗布、硬化により形成する場合)の厚みは搬送性の点から、3〜50μmが好ましく、さらには5〜40μmが好ましい。前記保護フィルムは、複数枚または複数層で用いることもできる。
【0046】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0047】
<介在層>
前記保護フィルムと偏光子は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層することができる。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。なお、偏光子1と保護フィルム2の介在層は図1では示していない。
【0048】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0049】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0050】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0051】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0052】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30〜300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは60〜150nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは0.2〜20μmになるよう行うのが好ましい。
【0053】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0054】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0055】
粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0056】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
≪塗工液≫
塗工液は、樹脂成分または樹脂層を構成することができる硬化性成分を含む。当該塗工液により透明樹脂層が形成される。
【0058】
また、前記塗工液である塗工液の形態は、液状を示すものであれば特に制限はなく、水系、水分散系、溶剤系、無溶剤のいずれでもよい。
【0059】
前記塗工液は、粘度が低い方が、偏光子の損傷部に浸透しやすいため有利である。前記粘度は、25℃で測定した値が2000mPa・s以下であるのが好ましく、さらには1000mPa・s以下であるのが好ましく、さらには500mPa・s以下であるのが好ましく、さらには100mPa・s以下であるのが好ましい。
【0060】
前記塗工液の片保護偏光フィルム(偏光子側)への塗工は、工程(2)の後に形成される透明樹脂層の厚みが0.2μm以上になるように行なうのが好ましい。前記透明樹脂層の厚さは0.5μm以上であるのが好ましく、さらには0.7μm以上であるのが好ましい。一方、透明樹脂層の厚くなりすぎると光学信頼性と耐水性が低下するため、透明樹脂層の厚さは3μm以下であるのが好ましく、さらには3μm未満であるのが好ましく、さらには2μm以下であるのが好ましい。
【0061】
前記透明樹脂層の形成材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、PVA系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂等を挙げることができる。これら樹脂材料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でもポリウレタン系樹脂、PVA系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましく、PVA系樹脂、アクリル系樹脂がより好ましい。
【0062】
前記塗工液としては、水に溶解または分散した樹脂成分を含む塗工液が好ましい。水に溶解または分散した樹脂成分は、常温(25℃)で、水に溶解した樹脂、水に可溶な樹脂を水系溶媒に溶解させたもののことをいう。塗工液が、水系または水分散系であると、偏光子の表面が膨潤することで損傷部に、前記塗工液が馴染むため有利である。すなわち、塗工液が水系または水分散系であると、偏光子を構成する当該損傷部周辺のポリビニルアルコール分子の配向性を一部緩和すると共に、当該損傷部周辺のホウ酸含有量を低減することができるため、透明樹脂層の厚みが小さくても(例えば3μm未満、好ましくは2μm以下であっても)、当該損傷部の拡大を効果的に抑制することができる。
【0063】
水に溶解または分散することができる樹脂成分の代表例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、メチロール化メラミン樹脂、メチロール化ユリア樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースなどがあげられる。これは単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。前記樹脂成分としてはポリビニルアルコール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、メチロール化メラミンが好適に用いられる。特に、偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂との密着性の観点から前記樹脂成分としてはポリビニルアルコール系樹脂が好適である。以下では、ポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合を説明する。
【0064】
透明樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材から形成することが好ましい。透明樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂は、「ポリビニルアルコール系樹脂」である限り、偏光子が含有するポリビニルアルコール系樹脂と同一でも異なってもいてもよい。
【0065】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。また、ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物が挙げられる。前記共重合性を有する単量体がエチレンの場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体が得られる。また、前記共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。
【0066】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、例えば、95モル%以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、ケン化度は99モル%以上が好ましく、さらには99.7モル%以上が好ましい。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0067】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、500以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、平均重合度は、1000以上が好ましく、さらには1500以上が好ましく、さらには2000以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度はJIS−K6726に準じて測定される。
【0068】
また前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記ポリビニルアルコールまたはその共重合体の側鎖に親水性の官能基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。前記親水性の官能基としては、例えば、アセトアセチル基、カルボニル基等が挙げられる。その他、ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0069】
透明樹脂層または形成材(固形分)中のポリビニルアルコール系樹脂の割合は、80重量%以上であるのが好ましく、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上であるのが好ましい。
【0070】
前記塗工液は、前記ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解させた溶液として調整される。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶剤として水を用いた水溶液として用いるのが好ましい。前記形成材(例えば水溶液)における、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0071】
なお、前記塗工液(例えば水溶液)には、添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0072】
前記塗工液の塗布は、乾燥後の厚みが0.2μm以上になるように行なうのが好ましい。塗布操作は特に制限されず、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、グラビアコート法(ダイレクト,リバースやオフセット)、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等各種手段を採用できる。
【0073】
次いで、前記透明樹脂層の形成にあたり、樹脂を構成することができる硬化性成分を含む塗工液を用いる場合について説明する。硬化性成分としては、電子線硬化型、紫外線硬化型、可視光線硬化型等の活性エネルギー線硬化型と熱硬化型に大別することができる。さらには、紫外線硬化型、可視光線硬化型は、ラジカル重合硬化型とカチオン重合硬化型に区分出来る。本発明において、波長範囲10nm〜380nm未満の活性エネルギー線を紫外線、波長範囲380nm〜800nmの活性エネルギー線を可視光線として表記する。前記ラジカル重合硬化型の硬化性成分は、熱硬化型の硬化性成分として用いることができる。
【0074】
≪ラジカル重合硬化型形成材≫
前記硬化性成分としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素二重結合のラジカル重合性の官能基を有する化合物が挙げられる。これら硬化性成分は、単官能ラジカル重合性化合物または二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物のいずれも用いることができる。また、これらラジカル重合性化合物は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。なお、本発明において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、「(メタ)」は以下同様の意味である。
【0075】
≪単官能ラジカル重合性化合物≫
単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体は、偏光子との密着性を確保するうえで、また、重合速度が速く生産性に優れる点で好ましい。(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN−メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;などが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等があげられる。
【0076】
前記(メタ)アクリルアミド誘導体のなかでも、偏光子との密着性の点から、N−ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、特に、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0077】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する各種の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0078】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;
2−イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5−ノルボルネン−2−イル−メチル(メタ)アクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、等の多環式(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0079】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブチロラクトン(メタ)アクリレート、などの複素環を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、p−フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0081】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等が挙げられる。
【0082】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、末端または分子中に(メタ)アクリル基などの活性二重結合基を有し、かつ活性メチレン基を有する化合物である。活性メチレン基としては、例えばアセトアセチル基、アルコキシマロニル基、またはシアノアセチル基などが挙げられる。前記活性メチレン基がアセトアセチル基であることが好ましい。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;2−エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−(4−アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミドなどが挙げられる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0083】
≪多官能ラジカル重合性化合物≫
また、二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオぺンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンがあげられる。具体例としては、アロニックスM−220、M−306(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製)、SR−531(Sartomer社製)、CD−536(Sartomer社製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0084】
ラジカル重合性化合物は、偏光子との密着性と光学耐久性を両立させる観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。通常は、ラジカル重合性化合物100重量%に対して、単官能ラジカル重合性化合物3〜80重量%と多官能ラジカル重合性化合物20〜97重量%の割合で併用することが好ましい。
【0085】
≪ラジカル重合硬化型形成材の態様≫
ラジカル重合硬化型形成材は、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型の形成材として用いることができる。活性エネルギー線に電子線等を用いる場合には、当該活性エネルギー線硬化型形成材は光重合開始剤を含有することは必要ではないが、活性エネルギー線に紫外線または可視光線を用いる場合には、光重合開始剤を含有するのが好ましい。一方、前記硬化性成分を熱硬化性成分として用いる場合には、当該形成材は熱重合開始剤を含有するのが好ましい。
【0086】
≪光重合開始剤≫
ラジカル重合性化合物を用いる場合の光重合開始剤は、活性エネルギー線によって適宜に選択される。紫外線または可視光線により硬化させる場合には紫外線または可視光線開裂の光重合開始剤が用いられる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。
【0087】
前記光重合開始剤の配合量は、硬化性成分(ラジカル重合性化合物)の全量100重量部に対して、20重量部以下である。光重合開始剤の配合量は、0.01〜20重量部であるのが好ましく、さらには、0.05〜10重量部、さらには0.1〜5重量部であるのが好ましい。
【0088】
また、硬化性成分としてラジカル重合性化合物を含有する可視光線硬化型で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
【0089】
前記光重合開始剤としては、下記一般式(1)で表される化合物;
【化1】
(式中、RおよびRは−H、−CHCH、−iPrまたはClを示し、RおよびRは同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(1)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(1)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて密着性に優れる。一般式(1)で表される化合物の中でも、RおよびRが−CHCHであるジエチルチオキサントンが特に好ましい。当該形成材中の一般式(1)で表される化合物の組成比率は、硬化性成分の全量100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、0.5〜4重量部であることがより好ましく、0.9〜3重量部であることがさらに好ましい。
【0090】
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、硬化性成分の全量100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0〜4重量部、最も好ましくは0〜3重量部である。
【0091】
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する保護フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0092】
特に、光重合開始剤として、一般式(1)の光重合開始剤に加えて、さらに下記一般式(2)で表される化合物;
【化2】
(式中、R、RおよびRは−H、−CH、−CHCH、−iPrまたはClを示し、R、RおよびRは同一または異なっても良い)を使用することが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、市販品でもある2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE907 メーカー:BASF)が好適に使用可能である。その他、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名:IRGACURE369 メーカー:BASF)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商品名:IRGACURE379 メーカー:BASF)が感度が高いため好ましい。
【0093】
≪熱重合開始剤≫
熱重合開始剤としては、熱開裂によって重合が開始しないものが好ましい。例えば、熱重合開始剤としては、10時間半減期温度が65℃以上、さらには75〜90℃であるものが好ましい。なお、の半減期とは、重合開始剤の分解速度を表す指標であり、重合開始剤の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0094】
熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル(10時間半減期温度:64℃)、過酸化ベンゾイル(10時間半減期温度:73℃)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン(10時間半減期温度:90℃)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度:49℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(10時間半減期温度:51℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度:48℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド(10時間半減期温度:64℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度:66℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド(10時間半減期温度:73℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(10時間半減期温度:81℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機系過酸化物があげられる。
【0095】
また、熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度:67℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度:67℃)、1,1−アゾビス−シクロへキサン−1−カルボニトリル(10時間半減期温度:87℃)などのアゾ系化合物があげられる。
【0096】
熱重合開始剤の配合量は、硬化性成分(ラジカル重合性化合物)の全量100重量部に対して、0.01〜20重量部である。熱重合開始剤の配合量は、さらには0.05〜10重量部、さらには0.1〜3重量部であるのが好ましい。
【0097】
≪カチオン重合硬化型形成材≫
カチオン重合硬化型形成材の硬化性成分としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が例として挙げられる。
【0098】
≪光カチオン重合開始剤≫
カチオン重合硬化型形成材は、硬化性成分として以上説明したエポキシ化合物及びオキセタン化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。
【0099】
硬化型形成材(塗工液)の塗工方式は、当該硬化型形成材の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0100】
<工程(2)>
工程(2)では、前記塗工工程(1)の後に前記塗工液を固化または硬化する工程(2)を施すことにより透明樹脂層を形成する。
【0101】
前記透明樹脂層の形成にあたり、前記樹脂成分を含む塗工液を塗工した後には、当該樹脂成分に種類に応じて固化させる。前記樹脂成分を含む塗工液は、前記樹脂成分を溶剤に溶解した溶液または分散させた分散液であり、例えば、水系の溶液、水分散系の分散液、または溶剤系の溶液として用いられる。前記固化は、前記塗工液中から溶剤を除去することにより樹脂層を形成することをいう。例えば、前記樹脂成分がポリビニルアルコール系樹脂の場合には、前記塗工液は水溶液として用いることができ、加熱等により固化を施すことができる。また、前記樹脂成分が水溶性アクリルの場合も同様に固化を施すことができる。
【0102】
乾燥温度は、通常、60〜200℃であるのが好ましく、さらには70〜120℃であるのが好ましい。乾燥時間は10〜1800秒であるのが好ましく、さらには20〜600秒であるのが好ましい。
【0103】
一方、前記透明樹脂層の形成にあたり、樹脂を構成することができる硬化性成分を含む塗工液を塗工した後には、当該硬化性成分の種類に応じて、当該硬化性成分が樹脂を形成することができる硬化を施す。前記樹脂を構成することができる硬化性成分を含む塗工液は、前記硬化性成分が塗工液を呈するものであれば、無溶剤系で用いることができる。また、前記塗工液は、前記硬化性成分を溶剤に溶解した溶液を用いることができる。なお、前記硬化性成分が塗工液を呈する場合にも溶液として用いることができる。前記溶剤としは、用いる硬化性成分に応じて適宜に選択することができる。例えば、前記硬化性成分として、アクリル系樹脂を形成するアクリル系モノマーを用いる場合、エポキシ樹脂を形成するエポキシ系モノマーを用いる場合には、前記硬化性成分を含む塗工液に活性エネルギー線照射(紫外線照射)等による硬化を施すことができる。
【0104】
前記硬化型形成材(塗工液)による透明樹脂層の形成は、偏光子の面に、硬化型形成材を塗工し、その後、硬化することにより行う。
【0105】
偏光子は、上記硬化型形成材を塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理による処理などが挙げられる。
【0106】
<形成材の硬化>
前記硬化型形成材は、活性エネルギー線硬化型形成材または熱硬化型形成材として用いられる。活性エネルギー線硬化型形成材では、電子線硬化型、紫外線硬化型、可視光線硬化型の態様で用いることができる。前記硬化型形成材の態様は生産性の観点から熱硬化型形成材よりも、活性エネルギー線硬化型形成材が好ましく、さらには活性エネルギー線硬化型形成材としては、可視光線硬化型形成材が生産性の観点から好ましい。
【0107】
≪活性エネルギー線硬化型≫
活性エネルギー線硬化型形成材では、偏光子に活性エネルギー線硬化型形成材を塗工した後、活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)を照射し、活性エネルギー線硬化型形成材を硬化して透明樹脂層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。好ましくは、透明樹脂層側から照射する。
【0108】
≪電子線硬化型≫
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型形成材を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が透明樹脂層最深部まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、保護フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0109】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。
【0110】
≪紫外線硬化型、可視光線硬化型≫
本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、活性エネルギー線として、波長範囲380nm〜450nmの可視光線を含むもの、特には波長範囲380nm〜450nmの可視光線の照射量が最も多い活性エネルギー線を使用することが好ましい。本発明に係る活性エネルギー線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380〜440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光などの紫外線と可視光線を含む光源を使用することができ、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の紫外線を遮断して用いることもできる。
【0111】
≪熱硬化型≫
一方、熱硬化型形成材では、加熱することにより、熱重合開始剤により重合を開始して、硬化物層を形成する。加熱温度は、熱重合開始剤に応じて設定されるが、60〜200℃程度、好ましくは80〜150℃である。
【0112】
<工程(3)>
次いで、工程(2)で得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取ることなく、前記透明樹脂層に、粘着剤層を形成する工程(3)を施して、粘着剤層付き偏光フィルムを製造することができる。粘着剤層付き偏光フィルムの粘着剤層には、セパレータを設けることができる。
【0113】
<粘着剤層>
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0114】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0115】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、偏光子に転写する方法または偏光子に前記粘着剤を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光子に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0116】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0117】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0118】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0119】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0120】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0121】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0122】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0123】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0124】
<表面保護フィルム>
本発明の偏光フィルム(片保護偏光フィルム、粘着剤層付偏光フィルムを含む)には、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0125】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚さは、一般的には、500μm以下、好ましくは10〜200μmである。
【0126】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。
【0127】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0128】
<他の光学層>
本発明の本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムは、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが好ましい。
【0129】
本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムに上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の粘着剤層付の片保護偏光フィルムやその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0130】
本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による、本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばIPS型、VA型などの任意なタイプのものを用いうるが、特にIPS型に好適である。
【0131】
液晶セルの片側又は両側に本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に本発明の粘着剤層付の片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0132】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0133】
<片保護偏光フィルム>
(偏光子の作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体を得た。
【0134】
(保護フィルムの作製)
保護フィルム:厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂フィルムの易接着処理面にコロナ処理を施して用いた。
【0135】
(保護フィルムに適用する接着剤の作製)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0136】
(片保護偏光フィルムの作製)
上記光学フィルム積層体の偏光子の表面に、上記紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚みが0.5μmとなるように塗布しながら、上記保護フィルムを貼合せたのち、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380〜440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた片保護偏光フィルム(総厚み45.5μm)作製した。得られた片保護偏光フィルムの光学特性は単体透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0137】
<単体透過率Tおよび偏光度P>
得られた片保護偏光フィルムの単体透過率Tおよび偏光度Pを、積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot−3c)を用いて測定した。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0138】
(透明樹脂層の形成材:塗工液)
重合度2500、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール樹脂を純水に溶解し、固形分濃度4重量%、粘度60mPa・Sの水溶液(塗工液)を調製した。
【0139】
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0140】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.075部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0141】
(粘着剤層の形成)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
【0142】
実施例1
<透明樹脂層付の片保護偏光フィルムの作製>
20m/分で搬送される上記片保護偏光フィルムの偏光子の面(保護フィルムが設けられていない偏光子面)に、透明樹脂層の形成材(塗工液)を、塗工装置(具体的にはグラビアコーター)を用いて、乾燥後厚みが1μmになるように塗布した後、85℃で30秒間熱風乾燥して、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを作製した。
【0143】
<粘着剤層付偏光フィルムの作製>
次いで、上記で得られた透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをロール状に巻き取ることなく、引き続いて(具体的には18秒間後)、前記透明樹脂層に、上記離型シート(セパレータ)の剥離処理面に形成した粘着剤層を貼り合わせて、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。その後、粘着剤層付偏光フィルムを巻き取ってロール状物とした。
【0144】
実施例では、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを製造した後で、粘着剤層を貼り合わせる前の製造ライン中に、装置(膜厚を測定する装置:光学分光器:Ocean optics社製のUSB2000+、光源:HL−2000、光ファイバー:ZFQ−12796(200μm反射ファイバー)、偏光素子:上記で得られた片保護偏光フィルム)を用いて透明樹脂層の膜厚を測定した。測定条件は、測定波長:450nm〜800nm、透明樹脂層屈折率:1.51である。実施例で得られた透明樹脂層の膜厚は1.0±0.1μmであり、安定していた。
【0145】
比較例1
実施例と同様にして作製した、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムを巻き取ってロール状物とした。その後、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムのロール状物から、繰り出しを試みたが、ロール状物にブロッキングが生じていたため、繰り出しを行うことができなかった。
【0146】
比較例2
実施例と同様にして作製した、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムをセパレータ付きで巻き取ってロール状物とした。その後、透明樹脂層付の片保護偏光フィルムのロール状物から、繰り出しを試みたが、透明樹脂層とセパレータの密着性が弱く、搬送時に揉まれにより、搬送直後に破断が発生した。
【0147】
実施例ではナノスリットの発生リスクは低く、一方、比較例ではナノスリットの発生リスクは高かった。
【符号の説明】
【0148】
1 片保護偏光フィルム
10 偏光子
20 保護フィルム
2´ 塗工液
2 透明樹脂層
3 粘着剤層
40 光源
41 偏光子
A 透明樹脂層付の片保護偏光フィルム
B 粘着剤層付の片保護偏光フィルム
図1
図2
図3