(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、活性汚泥槽にオゾンが供給されると、沈殿槽に汚泥が浮上する事があることを発見した。沈殿槽で浮上した汚泥を放置すると、処理水とともに浮上した汚泥も流出するため、処理水の水質が悪化する。
【0005】
そこで、開示の技術の1つの側面は、活性汚泥法において活性汚泥槽へのオゾンの供給によって生じる沈殿槽からの汚泥の流出を抑制できる有機性排水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような有機性排水の処理方法によって例示される。有機性排水処理システムによって有機性排水を浄化処理する有機性排水処理方法であって、有機性排水処理システムは、好気性微生物群を含む活性汚泥によって有機性排水に含まれる有機物を分解する活性汚泥槽と、分解された有機物を含む汚泥とともに有機物が分解された有機性排水を活性汚泥槽から受け入れ、汚泥を沈殿させる沈殿槽と、を備える。有機性排水の処理方法は、活性汚泥槽にオゾンを供給するとともに、活性汚泥によって有機性排水に含まれる有機物を分解する分解工程と、沈殿槽において、汚泥のうち気泡を含んで水面に浮上する浮上汚泥を破砕して沈殿させる沈殿工程と、を含む。
【0007】
活性汚泥槽にオゾンが供給されると、気泡を含んだ浮上汚泥が沈殿槽の水面に浮上する。このような有機性排水の処理方法によれば、沈殿工程によって浮上した浮上汚泥が破砕されて気泡が除去される。気泡が除去された浮上汚泥は沈殿槽において沈殿するため、処理水への浮上汚泥の流出が抑制される。
【0008】
さらに、有機性排水の処理方法は次の特徴を有してもよい。沈殿工程は、沈殿槽を曝気して沈殿槽内の水を撹拌するとともに、曝気によって生じる気泡によって浮上汚泥を破砕する工程をさらに含む。このような有機性排水の処理方法によれば、曝気によって生じる気泡によって浮上汚泥が破砕される。さらに、曝気によって沈殿槽内が撹拌されることに
よって、活性汚泥槽に返送されずに沈殿槽の底に蓄積された汚泥をいったん浮上させて破砕した上で、再度沈殿させることができる。そのため、沈殿槽の底に蓄積された汚泥の活性汚泥槽への返送効率が高くなる。
【0009】
さらに、有機性排水の処理方法は次の特徴を有してもよい。沈殿工程は、浮上した汚泥に対して放水する工程を含む。このような有機性排水の処理方法によれば、放水によって浮上汚泥を破砕することが可能である。
【0010】
さらに、有機性排水の処理方法について開示した上記の技術的思想は、技術的齟齬が生じない限りにおいて、有機性排水の処理システムに適用する事も可能である。
【発明の効果】
【0011】
本有機性排水の処理方法は、活性汚泥法において活性汚泥槽へのオゾンの供給によって生じる沈殿槽からの汚泥の流出を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る有機性排水処理システムについて説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る有機性排水処理システム1の構成の一例を示す図である。有機性排水処理システム1は、流量調整槽11、活性汚泥槽12および沈殿槽13を備える。有機性排水処理システム1は、「有機性排水の処理システム」の一例である。
【0015】
流量調整槽11には、有機性排水処理システム1の処理対象となる有機性排水が流入する。流量調整槽11はポンプ14aを備える。ポンプ14aは、活性汚泥槽12および沈殿槽13で処理可能な量の有機性排水を活性汚泥槽12に送る。
【0016】
活性汚泥槽12は、好気性微生物群を含む活性汚泥によって流量調整槽11から送られた有機性排水に含まれる有機物の分解処理を行う。活性汚泥槽12では、曝気が行われることにより好気性微生物群が繁殖し、有機性排水の処理に好適な活性汚泥が維持される。活性汚泥槽12には、活性汚泥による浄化処理の効率を高めるためオゾン供給装置20によってオゾンが供給される。活性汚泥によって有機物が分解された水は、沈殿槽13に送られる。
【0017】
沈殿槽13は、活性汚泥槽12から送られた水に含まれる活性汚泥を沈殿させ、上澄みの水を処理水として排水する。沈殿槽13は、円筒形状に形成された壁部13cと、壁部13cから底面中央部13aに向けてすり鉢状に傾斜した傾斜部13bとが設けられる。底面中央部13aは、返送汚泥管15によって活性汚泥槽12の底部と接続される。傾斜部13bの角度は、水平方向に対して60度以上である。返送汚泥管15上における沈殿槽13と活性汚泥槽12との間には、ポンプ14bが設けられる。沈殿槽13で沈殿した汚泥は、傾斜部13bに沿って底面中央部13aに集められ、ポンプ14bによって返送汚泥管15を経由して返送汚泥として活性汚泥槽12に返送される。沈殿槽13には、曝気装置21および放水装置22が設けられる。曝気装置21は、沈殿槽13の上面視略中央に設けられ、沈殿槽13中の水を曝気する。放水装置22は、沈殿槽13に貯められた水の水面に向けて、放水する。
【0018】
図2から
図4は、活性汚泥槽12にオゾンが供給された有機性排水処理システム1の状態の一例を示す図である。以下、
図2から
図4を参照して、オゾンが供給された有機性排水処理システム1の状態について説明する。
【0019】
図2は、オゾン供給装置20によるオゾンの供給開始前における有機性排水処理システム1の一例を示す図である。沈殿槽13の底には、活性汚泥槽12から水とともに流入した活性汚泥を含む汚泥30が沈殿している。沈殿した汚泥30は、傾斜部13bに沿って底面中央部13aに集められ、返送汚泥管15を経由して活性汚泥槽12に返送される。しかしながら、沈殿した全ての汚泥30が傾斜部13bに沿って底面中央部13aに集められるとは限らない。汚泥30は、沈殿槽13の傾斜部13bと壁部13cとの境界部分や傾斜部13bの不特定の箇所または傾斜部13b全体等に残留する事がある。活性汚泥槽12に返送されずに沈殿槽13に残留した汚泥30の少なくとも一部は、沈殿槽13の底にとどまることで酸素との接触が減少した結果、絶対嫌気性菌が増殖した腐敗汚泥31となる。
【0020】
図3は、オゾン供給装置20によって活性汚泥槽12にオゾンが供給された有機性排水処理システム1の一例を示す図である。活性汚泥槽12にオゾンが供給されることで、活性汚泥槽12による有機性排水に含まれる有機物を分解する効率が高まる。活性汚泥槽12に供給されたオゾンは、活性汚泥槽12によって処理された水とともに沈殿槽13に流入する。沈殿槽13にオゾンが流入すると、腐敗汚泥31の一部は沈殿槽13に貯められた水の表面に浮上する。腐敗汚泥31が浮上する仕組みは、腐敗汚泥31の絶対嫌気性菌が減少するとともに通性嫌気性菌が増殖し、増殖した通性嫌気性菌による脱窒反応によって腐敗汚泥31に気泡が含まれるためと考えられる。浮上した腐敗汚泥31は、数cmから数十センチメートル四方程度の大きさを有し、その硬さは、例えば、木綿豆腐と同程度である。腐敗汚泥31は、「浮上汚泥」の一例である。
【0021】
図4は、曝気装置21が沈殿槽13を曝気した状態の一例を示す図である。曝気装置21によって曝気されることで、沈殿槽13の水中に気泡21aが生ずる。曝気装置21は、沈殿槽13に貯められた水全体を撹拌できる程度の空気を供給する。また、曝気装置21は、直径10センチメートルから30センチメートル程度の気泡21aが生成できる程度の空気を供給する。沈殿槽13では、気泡21aがぶつかったり、沈殿槽13内の水が撹拌によって腐敗汚泥31同士が衝突したりして、腐敗汚泥31が破砕される。腐敗汚泥31は、破砕されることで付着した気泡が除去される。また、沈殿槽13の中の水が撹拌されることで、沈殿槽13の底に残留した腐敗汚泥31の浮上が促される。曝気装置21は、「破砕手段」の一例である。
【0022】
図5は、有機性排水処理システム1による有機性排水の処理方法の一例を示す図である
。
図5では、活性汚泥槽12にオゾンが供給されたところから、説明が始められる。
図5に例示される処理方法では、活性汚泥槽12への有機性排水の流入が停止される。そのため、停止させている間に流入する有機性排水を流量調整槽11で溜めておけるように、流量調整槽11に流入する有機性排水が少ない時期に
図5の例示される処理方法が行われることが好ましい。例えば、操業日が月曜日から金曜日の工場からの有機性排水を処理するのであれば、金曜日の夜間にオゾンの供給が開始され、土曜日から月曜日の朝にかけて活性汚泥槽12への有機性排水の流入が停止される。以下、
図5を参照して、有機性排水処理システム1による有機性排水の処理方法の一例について説明する。
【0023】
T1では、流量調整槽11から活性汚泥槽12に有機性排水が流入する。活性汚泥槽12では、流入した有機性排水にオゾンが供給される。供給されるオゾンの量は、流入する有機性排水の量に基づいて適宜決定される。活性汚泥による有機性排水に含まれる有機物の分解処理が行われる。オゾンが供給された活性汚泥槽12では、活性汚泥による有機性排水の有機物を分解する処理が行われる。T1のオゾンが供給され、活性汚泥によって有機性排水の有機物が分解される処理は、「分解工程」の一例である。
【0024】
T2では、T1から腐敗汚泥31の処理水への流出が始まるまでの所定待ち時間経過後、流量調整槽11から活性汚泥槽12に流入する水が停止される。T2の処理は、流入する水を停止しなくとも、沈殿槽13から処理水が流出しない程度に流入する水量に制限してもよい。T3では、沈殿槽13において、腐敗汚泥31が浮上したか否かが判定される。腐敗汚泥31が浮上した場合、処理はT4に進められる。腐敗汚泥31が浮上しない場合、T3の処理を繰り返す。
【0025】
T4では、曝気装置21によって沈殿槽13が曝気される。曝気されることで、沈殿槽13の水中に気泡21aが生じ、さらに沈殿槽13内が撹拌される。沈殿槽13が撹拌されることで、沈殿槽13に沈殿していた気泡を含む腐敗汚泥31が浮上する。腐敗汚泥31は、気泡21aとの衝突や、腐敗汚泥31同士の衝突によって破砕される。破砕された腐敗汚泥31は、気泡が除去されて沈殿する。T4の処理は、「沈殿工程」の一例である。
【0026】
撹拌された沈殿槽13に沈殿していた全ての腐敗汚泥31が浮上すると判断される所定浮上時間が経過した場合(T5でYES)、処理はT6に進められる。所定浮上時間が経過していない場合(T5でNO)、処理はT5に戻される。所定浮上時間は、例えば、有機性排水処理システム1の試験運転を行って実際に測定することで決定可能である。
【0027】
T6では、曝気装置21による沈殿槽13の曝気が停止される。T4の処理で沈殿しなかった腐敗汚泥31が存在した場合、まだ浮上している腐敗汚泥31をT6の処理によって沈殿させることができる。T6の処理は、「沈殿工程」の一例である。
【0028】
沈殿槽13に浮上していたほぼ全ての腐敗汚泥31が沈殿する所定沈殿時間経過した場合(T7でYES)、処理はT8に進められる。ほぼ全ての腐敗汚泥31が沈殿する所定沈殿時間がまだ経過していない場合(T7でNO)、T7の処理が繰り返される。所定沈殿時間は、例えば、有機性排水処理システム1の試験運転を行って実際に測定することで決定可能である。なお、T4の処理で気泡が除去された腐敗汚泥31を全て沈殿させることができる場合、T7での所定沈殿時間は「0」となる。T7で所定沈殿時間経過を待つ処理は、「沈殿工程」の一例である。
【0029】
所定沈殿時間経過後に沈殿槽13に浮上している腐敗汚泥31がある場合(T8でYES)、処理はT9に進められる。所定沈殿時間経過後に沈殿槽13に浮上している腐敗汚泥31が無い場合(T8でYES)、処理はT10に進められる。
【0030】
T9では、放水装置22が、沈殿槽13に向けて放水を行う。放水装置22による放水によって、沈殿槽13にまだ浮上していた腐敗汚泥31が破砕され、破砕された腐敗汚泥は気泡が除去されて沈殿槽13の底に沈殿する。放水装置22による放水を開始してから腐敗汚泥31が沈殿するまでの時間は、例えば、有機性排水処理システム1の試験運転を行って実際に測定することで決定可能である。T9の処理は、「沈殿工程」の一例である。T10では、流量調整槽11から活性汚泥槽12への水の流入が再開される。放水装置22は、「破砕手段」の一例である。
【0031】
有機性排水処理システム1によれば、沈殿槽13で浮上した腐敗汚泥31を曝気装置21の曝気および放水装置22の放水によって破砕した。破砕された腐敗汚泥31は、気泡が除去されて沈殿した。その結果、有機性排水処理システム1によれば、処理水への腐敗汚泥31の流出を抑制できる。
【0032】
有機性排水処理システム1では、浮上した腐敗汚泥31の破砕に曝気装置21や放水装置22が採用された。既存の有機性排水処理システムに曝気装置を設けるには、空気を送出するポンプと沈殿槽13に空気を供給する管を設置すればよい。また、放水装置22を既存の有機性排水処理システムに設けるには、沈殿槽13に向けて放水ホースを設ければよい。すわなち、有機性排水処理システム1は、既存の有機性排水処理システムに対して、容易に設置できる。
【0033】
有機性排水処理システム1では、曝気によって沈殿槽13内を撹拌することで、活性汚泥槽12に返送されずに沈殿槽13に蓄積された腐敗汚泥31を浮上させ、破砕した上で沈殿させた。そのため、有機性排水システム1によれば、沈殿槽13に蓄積された腐敗汚泥の活性汚泥槽12への返送効率を高めることができる。
【0034】
実施形態において、浮上した腐敗汚泥31は、曝気装置21の曝気によって生じる気泡21aや放水装置22による放水によって破砕された。浮上した腐敗汚泥31は、破砕されることで気泡が除去されて沈殿した。しかしながら、浮上した腐敗汚泥31を破砕する方法は、これらに限定されない。浮上した腐敗汚泥31を破砕する方法は、例えば、腐敗汚泥31にエアスプレーを照射したり、軸を中心に回転する棒で腐敗汚泥31を叩いたりしてもよい。
【0035】
<実施例>
以下、有機性排水処理システム1を試験運転して、上記の所定待ち時間、所定浮上時間および所定沈殿時間を決定した実施例について説明する。
【0036】
<第1実施例>
第1実施例では、ある排水処理場において有機性排水処理システム1を構築し、4か月間オゾンの供給を行わずに運転した後にオゾン供給装置20によってオゾンが供給された場合が例示される。
図6は、第1実施例の処理フローの一例を示した図である。以下、
図6を参照して、第1実施例について説明する。
【0037】
T11では、4か月間オゾンの供給を行わずに有機性排水処理システム1の運転が行われる。T12では、有機性排水処理システム1のオゾン供給装置20が、活性汚泥槽12へのオゾン供給を開始する。オゾン供給装置20がオゾン供給を開始してから14時間経過後、沈殿槽13に腐敗汚泥31の浮上が確認され、16時間後には沈殿槽13の表面を覆うほどの腐敗汚泥31が確認された。そのため、腐敗汚泥31は、沈殿槽13から排出される処理水とともに排出された。
【0038】
T13では、有機性排水処理システム1のオゾン供給装置20から活性汚泥槽12へのオゾンの供給が停止される。オゾンの供給が停止された状態で、有機性排水処理システム1の運転が7日間継続される。T14では、オゾン供給装置20から活性汚泥槽12へのオゾンの供給が開始されたが、沈殿槽13での腐敗汚泥31の浮上は確認されなかった。
【0039】
T15では、有機性排水処理システム1のオゾン供給装置20から活性汚泥槽12へのオゾンの供給が停止される。オゾンの供給が停止された状態で、有機性排水処理システム1の運転が10日間継続される。T16では、オゾン供給装置20から活性汚泥槽12へのオゾンの供給が開始され、沈殿槽13での腐敗汚泥31の浮上が確認された。
【0040】
第1実施例で使用した施設では、オゾン供給を停止した期間が7日以内であれば、オゾンの供給を再開しても腐敗汚泥31の浮上は発生しないことが判明した。そこで、オゾン供給が停止された期間が7日以内の場合には沈殿槽13への曝気を行わずに有機性排水の処理を継続したところ、沈殿槽13での腐敗汚泥31の浮上は確認されなかった。
【0041】
第1実施例で使用した施設では、底に腐敗汚泥31が蓄積した沈殿槽13にオゾンの供給を開始して14時間程度経過すると沈殿槽13に腐敗汚泥31が浮上することが判明した。すなわち、第1実施例で使用した施設における所定待ち時間は、14時間未満であることがわかる。
【0042】
<第2実施例>
第2実施例では、第1実施例で使用した施設と同じ施設で有機性排水処理システム1が運転される。
図7は、第2実施例の処理フローの一例を示した図である。以下、
図7を参照して第2実施例について説明する。
【0043】
T21では、オゾン供給装置20によって、活性汚泥槽12にオゾンが供給される。T22では、オゾン供給から12時間後に流量調整槽11から活性汚泥槽12への流入水が停止される。12時間という時間は、第1実施例においてオゾン供給開始から14時間後に沈殿槽13での腐敗汚泥31の浮上が確認されたことから、腐敗汚泥31の浮上前に活性汚泥槽12への水の流入を停止できるように決定された時間である。さらに、オゾン供給から14時間後には、沈殿槽13において腐敗汚泥31が浮上する。
【0044】
T23では、曝気装置21が、沈殿槽13に曝気を行う。曝気によって沈殿槽13内を撹拌することで、腐敗汚泥31を破砕するとともに気泡を取り除く。また、沈殿槽13の底に残った腐敗汚泥31を浮上させ、浮上させた腐敗汚泥31を破砕するとともに付着した気泡を取り除く。沈殿槽13への曝気を2時間継続したところ、新たな腐敗汚泥31の浮上は確認されなくなった。
【0045】
T24では、曝気装置21による曝気が停止される。曝気の停止1時間後には、ほぼ全ての腐敗汚泥31の沈殿が確認された。まだ浮上している腐敗汚泥31については、放水装置22によって浮上している腐敗汚泥31に対して1時間程度の放水を行う事で、ほぼ全ての腐敗汚泥31が沈殿した。T25では、流量調整槽11から活性汚泥槽12への水の流入が再開される。
【0046】
第2実施例により、この施設における全ての腐敗汚泥31が浮上すると判断される所定浮上時間は、曝気を開始してから2時間であることがわかる。また、この施設におけるほぼ全ての腐敗汚泥31が沈殿する所定沈殿時間は、曝気停止後1時間であることがわかる。
【0047】
第1実施例および第2実施例によって、所定待ち時間、所定浮上時間および所定沈殿時
間が判明した。これらの情報を基して、実施例で使用した施設において、有機性排水処理システム1を自動運転する事が可能となる。さらに、第1実施例によりオゾンの供給を停止した期間が7日であれば腐敗汚泥31の浮上は発生しないことが判明している。そのため、自動運転する際には、例えば、オゾン供給を停止している期間が7日以内の場合、活性汚泥槽12への流入水の停止、沈殿槽13での曝気および放水が行われなくともよい。
【0048】
<変形例>
実施形態では、水平方向に対して60度以上の傾斜が設けられた傾斜部13bを有する沈殿槽13が使用された。変形例では、底面の傾斜が傾斜部13bよりもなだらかに形成された沈殿槽について説明される。
図8および
図9は、変形例に係る沈殿槽43の一例を示す図である。
図8は、変形例に係る沈殿槽43を側面から見た図の一例である。
図9は、変形例に係る沈殿槽43を上面視した図の一例である。沈殿槽43は、上面視略四角形状であり、底面中央部43aおよび傾斜部43bを有する。底面中央部43aには、実施形態の沈殿槽13と同様に、返送汚泥管15が接続されており、底面中央部43aに集められた汚泥30が返送汚泥管15を介して活性汚泥槽12に返送されるようになっている。沈殿槽43の四隅の角部には、沈殿槽43を曝気する曝気装置21が設けられる。沈殿槽43の傾斜部43bは、実施形態の沈殿槽13の傾斜部13bよりも傾斜が緩やかである。そのため、傾斜部43bの傾斜によって汚泥30を底面中央部43aに集めることは難しい。そこで、沈殿槽43では、沈殿した汚泥30をかき集める汚泥掻き寄せ機44が設けられる。
【0049】
図10は、汚泥掻き寄せ機44の一例を示す図である。汚泥掻き寄せ機44は、軸44aおよび掻き寄せ部44bを有する。汚泥掻き寄せ機44は、軸44aを中心に掻き寄せ部44bを回転させることで、沈殿槽43の底面に堆積した汚泥30を沈殿槽43の底面中央部43aに掻き集める。
【0050】
図9では、汚泥掻き寄せ機44が回転して汚泥30の掻き集め可能な領域を回転領域44aとして例示している。汚泥掻き寄せ機44が回転する回転領域44aは円形となるため、沈殿槽43の四隅の領域は、汚泥掻き寄せ機44によって汚泥30が掻き寄せられない領域である死領域43cとなる。死領域43cでは、掻き寄せられなかった汚泥30が堆積するため、腐敗汚泥31が生じやすい。
【0051】
沈殿槽43では、上述の通り、四隅の領域に曝気装置21が設けられる。この四隅の領域は、腐敗汚泥31が生じやすい死領域43cである。死領域43cに堆積した汚泥30や腐敗汚泥31は、曝気装置21による曝気によって生じる気泡や沈殿槽43内の水流によって、死領域43cの外に運ばれる。死領域43cの外に運ばれた汚泥30および腐敗汚泥31は、汚泥掻き寄せ機44によって底面中央部43aに掻き集められる。また、沈殿槽43において腐敗汚泥31が浮上した場合は、実施形態と同様に、曝気装置21からの気泡によって浮上した腐敗汚泥31が破砕されるとともに腐敗汚泥31に付着した気泡が取り除かれる。その結果、浮上していた腐敗汚泥31は沈殿し、汚泥掻き寄せ機44によって底面中央部43aに掻き集められる。
【0052】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。例えば、実施形態の沈殿槽13に変形例の汚泥掻き寄せ機44を設けてもよい。