(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピストンにより区画される操作室と、前記ピストンと一体的に移動する弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体を前記弁座にシールさせるシール荷重を付与するシール荷重付与手段とを有し、真空容器と真空ポンプとの間に配置される真空弁と、前記真空容器の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて前記真空弁の弁開度を制御する弁開度制御信号を出力するコントローラとを有する真空圧力制御システムにおいて、
操作圧力を測定し、操作圧力測定信号を出力する操作圧力センサと、
前記弁開度制御信号と前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作室に操作流体を給排気し、前記操作圧力を制御する操作圧力制御機構とを有すること、
前記コントローラは、
前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知し、前記真空弁の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段を有し、
前記内圧を前記真空圧力目標値に制御する場合に、前記動作特性データを用いて前記弁開度制御信号を生成し、前記操作圧力制御機構に出力すること、
を特徴とする真空圧力制御システム。
真空容器と真空ポンプとの間に配置される真空弁の弁開度を制御する弁開度制御信号を、前記真空容器の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて出力する真空圧力制御用コントローラにおいて、
前記真空弁のピストンにより区画された操作室の操作圧力を測定して、操作圧力測定信号を出力する操作圧力センサに接続されること、
前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知し、前記真空弁の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段を有すること、
前記真空容器の内圧を前記真空圧力目標値に制御する場合には、前記操作圧力測定信号と前記弁開度制御信号に基づいて前記操作室に操作流体を給排気することにより前記操作圧力を制御する操作圧力制御機構に、前記動作特性データに基づいて生成した前記弁開度制御信号を出力すること、
を特徴とする真空圧力制御用コントローラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の真空圧力比例制御システムは、真空弁に囲繞された位置センサにより弁開度を検出するため、真空弁が大きく、高価であった。
また、真空弁は、ピストンに装着されたパッキンの摺動抵抗の相違、部品の組立公差や寸法公差などにより、動作特性に個体差がある。特許文献1記載の真空圧力制御システムは、真空弁の動作特性を個別に採取していなかった。そのため、特許文献1記載の真空圧力制御システムでは、動作特性の個体差を見込んで真空弁の操作圧力を制御する必要があった。この場合、操作流体を無駄に排気したり供給したりする不感帯が大きくなり、制御応答性が悪かった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、小型且つ安価で制御応答性が良い真空圧力制御システム及び真空圧力制御用コントローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)ピストンにより区画される操作室と、前記ピストンと一体的に移動する弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体を前記弁座にシールさせるシール荷重を付与するシール荷重付与手段とを有し、真空容器と真空ポンプとの間に配置される真空弁と、前記真空容器の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて前記真空弁の弁開度を制御する弁開度制御信号を出力するコントローラとを有する真空圧力制御システムにおいて、操作圧力を測定し、操作圧力測定信号を出力する操作圧力センサと、前記弁開度制御信号と前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作室に操作流体を給排気し、前記操作圧力を制御する操作圧力制御機構とを有すること、前記コントローラは、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知し、前記真空弁の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段を有し、前記内圧を前記真空圧力目標値に制御する場合に、前記動作特性データを用いて前記弁開度制御信号を生成し、前記操作圧力制御機構に出力すること、を特徴とする。
【0007】
真空弁のピストンは、弁体がシール荷重付与手段により弁座にシールする場合に、弁座側限界位置で停止する。この場合、操作室は、操作流体が排気されても体積が変化せず、操作圧力が急激に減少する。また、ピストンは、反弁座側限界位置まで移動して停止し、弁開度を最大にする。この場合、操作室は、操作流体が供給されても体積が変化せず、操作圧力が急激に増加する。これに対して、ピストンは、弁座側限界位置と反弁座側限界位置との間では操作圧力に比例して移動する。この場合、操作室は、操作圧力の給排気に従って体積を変動させるため、操作圧力がゆるやかに変化する。よって、操作圧力は、弁体が全閉位置から反弁座方向に動き始める弁開始動ポイントと、弁体が全開位置に到達する全開ポイントと、弁体が全開位置から弁座方向に動き始める弁閉始動ポイントと、弁体が弁座にシールする全閉ポイントにおいて、変化率が変化する。これらの変曲点の操作圧力は、真空弁のヒステリシス特性における弁開開始時の端部、弁開終了時の端部、弁閉開始時の端部、弁閉終了時の端部の操作圧力にそれぞれ一致する。よって、操作圧力の変曲点を検知することにより、真空弁の動作特性データを採取することができる。
【0008】
上記構成によれば、真空圧力制御システムは、操作圧力センサにより測定された真空弁の操作圧力が変化率を変化させる変曲点により、真空弁の動作特性データを採取し、それを用いてコントローラが弁開度制御信号を生成して操作圧力制御機構に出力する。操作圧力制御機構は、操作圧力センサの操作圧力測定信号とコントローラの弁開度制御信号に基づいて真空弁の操作圧力を制御する。これにより、真空圧力制御システムは、コントローラの指示に従って真空弁が開閉し、真空容器から真空ポンプに流れるガスの流量を制御することにより、真空容器の内圧が真空圧力目標値に到達する。かかる真空圧力制御システムは、真空弁に位置センサを設けなくても、操作圧力センサにより測定される操作圧力の変曲点により真空弁の動作を把握して真空弁の弁開度を制御するので、システムを小型かつ安価にできる。また、真空圧力制御システムは、真空弁に固有の動作特性データを用いて真空弁の弁開度を制御するので、操作流体を給排気しても弁開度が変化しない不感帯をなくして、制御応答性を向上させることができる。
【0009】
(2)(1)に記載の構成において、前記動作特性データ採取手段は、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の減少を検出する範囲で、減少率が小さい状態から大きい状態に変化する小−大減少変曲点を検知し、前記小−大減少変曲点の操作圧力を、前記弁体が前記弁座にシールする全閉ポイントの全閉時操作圧力パラメータとして記憶することにより、前記動作特性データを採取すること、前記コントローラは、前記真空弁を全閉状態にする場合に、前記全閉時操作圧力パラメータに前記操作圧力を一致させるように前記弁開度制御信号を生成すること、が好ましい。
【0010】
真空弁は、操作室から操作流体が排気される場合、弁体が弁座にシールするまでは、操作圧力の減少に従ってピストンが弁座方向に動き、弁体が弁座にシールすると、ピストンが停止する。この場合、弁体が弁座にシールするときを境に、操作圧力の減少率が小さい状態から大きい状態に変化する。よって、操作圧力が減少する範囲で、減少率が小さい状態から大きい状態に変化する小−大減少変曲点の操作圧力を全閉ポイントの全閉時操作圧力パラメータに設定できる。
【0011】
上記構成によれば、真空圧力制御システムは、操作室の操作圧力が全閉時操作圧力パラメータに到達すると、操作室から操作流体が排気されなくなるので、真空弁が弁閉状態になった後に、操作室から操作流体を無駄に排気しない。そのため、真空圧力制御システムは、真空弁を全閉状態にする時間、及び、真空弁を全閉状態から弁開状態にする時間が短縮され、制御応答性を向上させることができる。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載の構成において、前記動作特性データ採取手段は、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の増加を検出する範囲で、増加率が小さい状態から大きい状態に変化する小−大増加変曲点を検知し、前記小−大増加変曲点の操作圧力を、前記弁開度が最大になる全開ポイントの全開時操作圧力パラメータとして記憶することにより、前記動作特性データを採取すること、前記コントローラは、前記真空弁を全開状態にする場合に、前記全開時操作圧力パラメータに前記操作圧力を一致させるように前記弁開度制御信号を生成すること、が好ましい。
【0013】
真空弁は、操作室に操作流体が供給される場合、ピストンは、反弁座側限界位置に到達するまでは操作圧力の増加に従ってピストンが反弁座方向に動き、反弁座側限界位置に到達すると、停止する。この場合、ピストンが反弁座側限界位置に到達し、弁体を全開位置に配置したとき(弁開度が最大になったとき)を境に、操作圧力の増加率が小さい状態から大きい状態に変化する。よって、操作圧力が増加する範囲で、増加率が小さい状態から大きい状態に変化する小−大減少変曲点の操作圧力を全開ポイントの全開時操作圧力パラメータに設定できる。
【0014】
上記構成によれば、真空圧力制御システムは、操作室の操作圧力が全開時操作圧力パラメータに到達すると、操作室に操作流体が供給されなくなるので、真空弁が全開状態になった後に、操作室に操作流体を無駄に供給しない。かかる真空圧力制御システムは、真空弁を全開状態にする時間、及び、真空弁を全開状態から弁閉状態にする時間が短縮され、制御応答性を向上させることができる。
【0015】
(4)(
2)に記載の構成において、
前記動作特性データ採取手段は、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の増加を検出する範囲で、増加率が小さい状態から大きい状態に変化する小−大増加変曲点を検知し、前記小−大増加変曲点の操作圧力を、前記弁開度が最大になる全開ポイントの全開時操作圧力パラメータとして記憶することにより、前記動作特性データを採取すること、前記コントローラは、前記真空弁を全開状態にする場合に、前記全開時操作圧力パラメータに前記操作圧力を一致させるように前記弁開度制御信号を生成すること、前記動作特性データ採取手段は、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の増加を検出する範囲で、増加率が大きい状態から小さい状態に変化する大−小増加変曲点を検知し、前記大−小増加変曲点の操作圧力を前記弁体が前記弁座から離間し始める弁開始動ポイントの弁開始動時操作圧力パラメータとして記憶すると共に、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の減少を検出する場合に、減少率が大きい状態から小さい状態に変化する大−小減少変曲点を検知し、前記大−小減少変曲点の操作圧力を前記弁体が全開位置から弁座方向に移動し始める弁閉始動ポイントの弁閉始動時操作圧力パラメータとして記憶することにより、前記動作特性データを採取すること、前記コントローラは、前記全閉時操作圧力パラメータと前記弁開始動時操作圧力パラメータとの差圧、及び、前記全開時操作圧力パラメータと前記弁閉始動時操作圧力パラメータとの差圧に基づいて、バイアス値を自動的に設定するバイアス値自動設定手段を有し、前記真空弁を全閉状態から弁開させる場合、及び、前記真空弁を全開状態から弁閉させる場合に、前記バイアス値を前記操作圧力制御機構に出力すること、が好ましい。
【0016】
真空弁は、操作室に操作流体が供給される場合、ピストンは、操作圧力がシール荷重以下である間は、操作圧力が供給されても停止しており、操作圧力がシール荷重より大きくなると、反弁座方向に動き始める。この場合、ピストンが反弁座方向に移動して弁体を弁座から離間させ始めるとき(弁開度が大きくなり始めるとき)を境に、操作圧力の増加率が大きい状態から小さい状態に変化する。よって、操作圧力が増加する範囲で、増加率が大きい状態から小さい状態に変化する大−小増加変曲点の操作圧力を弁開始動ポイントの全開始動時操作圧力パラメータに設定できる。
【0017】
また、真空弁は、操作室から操作流体が排気される場合、ピストンが反弁座側限界位置で停止する間は、操作室の体積が変化せず、ピストンが反弁座側限界位置から弁座方向に動き始めると、操作室の体積が減少する。この場合、弁体が全開位置から弁座方向に動き始めるときを境に、操作圧力の減少率が大きい状態から小さい状態に変化する。よって、操作圧力が減少する範囲で、減少率が大きい状態から小さい状態に変化する小−大減少変曲点の操作圧力を弁閉始動ポイントの弁閉始動時操作圧力パラメータに設定できる。
【0018】
上記構成によれば、真空圧力制御システムは、真空弁が全閉状態のときにバイアス値を出力することにより、弁体が全閉位置から弁開始動位置まで直ぐに移動し、弁開始動時の応答時間を短縮できる。また、真空弁が全開状態のときにバイアス値を出力することにより、弁体が全開位置から弁閉始動位置まで直ぐに移動し、弁閉始動時の応答時間を短縮できる。これは、真空圧力制御システムが、真空圧力制御開始時に真空弁の弁体を全閉位置から微小量上昇させ、真空容器のガスをスロー排気した後、真空弁を全開状態にしてガスを大流量排気し、その後、真空弁を全開状態から全閉状態にして真空圧力制御を終了するような場合に、制御応答性を向上させるのに、特に有効である。
【0019】
(5)(1)乃至(4)の何れか一つに記載の構成において、前記コントローラは、前記操作室に充填される前記操作流体の充填量、又は、前記操作室より排出される前記操作流体の排出量に基づいて前記真空弁の口径を判定する口径判定手段を有すること、が好ましい。ここで、口径とは、操作室の平均内径寸法をいう。
【0020】
上記構成によれば、真空弁の設置後でも、真空弁の口径を自動的に判定することができる。
【0021】
(6)(5)に記載の構成において、前記コントローラは、前記口径判定手段が判定した前記口径が所定値以下である場合に、前記操作圧力のランプアップ制御とランプダウン制御を行い、前記操作圧力センサが出力する前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力のランプ制御変化率を求め、前記ランプ制御変化率を所定のしきい値範囲と比較して前記操作圧力により前記弁開度を制御できるか否かを判定する制御可能判定手段を有すること、が好ましい。ここで、所定値とは、ピストンが操作圧力に比例して移動しない可能性がある口径を判定する基準になる値をいう。また、所定のしきい値範囲とは、操作圧力により弁開度を制御する許容範囲をいう。
【0022】
真空弁は、弁開閉動作時にピストンがスティックスリップする。例えば、口径が直径16mm以下の真空弁は、スティックスリップの影響により、操作圧力により弁開度をリニアに制御できないことがある。上記構成によれば、真空圧力制御システムは、真空弁の口径が所定値(例えば16mm)以下である場合に、操作圧力で弁開度を制御できる真空弁であるか否かを自動的に認識し、制御可能な真空弁を用いて真空圧力制御を行うことが可能になるので、真空圧力制御の信頼性を高めることができる。
【0023】
(7)真空容器と真空ポンプとの間に配置される真空弁の弁開度を制御する弁開度制御信号を、前記真空容器の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて出力する真空圧力制御用コントローラにおいて、前記真空弁のピストンにより区画された操作室の操作圧力を測定して、操作圧力測定信号を出力する操作圧力センサに接続されること、前記操作圧力測定信号に基づいて前記操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知し、前記真空弁の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段を有すること、前記真空容器の内圧を前記真空圧力目標値に制御する場合には、前記操作圧力測定信号と前記弁開度制御信号に基づいて前記操作室に操作流体を給排気することにより前記操作圧力を制御する操作圧力制御機構に、前記動作特性データに基づいて生成した前記弁開度制御信号を出力すること、を特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、真空圧力制御用コントローラは、上述の真空圧力制御システムと同様に、操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知して真空弁の動作特性データを採取し、採取した動作特性データを用いて真空弁の弁開度を制御し、真空容器の内圧を制御する。かかる真空圧力制御用コントローラは、位置センサを備えない真空弁でも、制御応答性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
従って、本発明によれば、小型且つ安価で制御応答性が良い真空圧力制御システム及び真空圧力制御用コントローラを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る真空圧力制御システム及び真空圧力制御用コントローラの実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0028】
<真空圧力制御システムの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る真空圧力制御システム1の概略構成図である。真空圧力制御システム1は、例えば、半導体の製造に使用される真空容器8の内圧を真空圧力目標値に制御するのに使用される。真空圧力制御システム1は、真空弁2と、電空レギュレータ3(操作圧力制御機構の一例)と、コントローラ4(真空圧力制御用コントローラの一例)を備える。
【0029】
真空弁2は、真空容器8と真空ポンプ9を接続する流路L上に配置されている。コントローラ4は、電源5から供給される電力により駆動し、真空圧力センサ8aが真空容器8の内圧を検出して出力する真空圧力測定信号と、上位装置6又はパソコン7に設定された真空圧力目標値を入力する。コントローラ4は、真空圧力測定信号と真空圧力目標値との偏差に基づいて、真空弁2の弁開度(操作圧力)を制御するコマンド(弁開度制御信号の一例)を電空レギュレータ3に出力する。電空レギュレータ3は、弁開度制御信号に従って真空弁2に操作流体を給排気し、真空弁2の操作圧力を制御する。真空弁2は、操作圧力に応じて弁開度を変化させる。真空容器8は、真空ポンプ9に排気するガスの排気流量が真空弁2に制御され、内圧が真空圧力目標値に制御される。
【0030】
<真空弁2の概略構成>
図2は、
図1に示す真空弁2の断面図である。真空弁2の構成は、従来と同様なので、ここでは簡単に説明する。
【0031】
真空弁2は、エアオペレイトタイプの単動弁である。真空弁2は、シリンダ21にピストン22が摺動可能に装填されている。ピストン22は、外周面に装着されたパッキン23をシリンダ21の内壁に摺接させることにより、ピストン22の弁座側に操作室24を気密に形成している。操作室24は、シリンダ21に開設された操作ポート25に連通流路26を介して連通し、操作流体が給排気される。ピストン22は、シリンダ21のロッド保持部28に摺動可能に保持されたピストンロッド27を介して弁体36に連結され、弁体36と一体的に軸線方向(図中上下方向)に往復直線運動する。
【0032】
弁体36は、ボディ30の弁室33に配置されている。弁室33は、第1ポート31と第2ポート32に連通し、第1ポート31と連通する開口部34の外周に沿って弁座35が平坦な面で形成されている。弁体36は、弁座35と対向する位置にアリ溝37が形成され、そのアリ溝37に弾性シール部材38が弾性変形可能に装着されている。弁体36は、圧縮ばね39(シール荷重付与手段の一例)により弁座方向に常時付勢され、弾性シール部材38を弁座35にシールさせるシール荷重を付与されている。ベローズ40は、弁室33に伸縮可能に配置されている。
【0033】
<電空レギュレータ3の構成>
図3は、電空レギュレータ3の回路図である。電空レギュレータ3は、第1ポート3aと第2ポート3bと第3ポート3cを備える。第1ポート3aは、操作流体を供給する操作流体供給源に接続される。第2ポート3bは大気開放される。第3ポート3cは真空弁2の操作ポート25(
図2参照)に接続される。
【0034】
第1ポート3aと第2ポート3bとの間には、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eが直列に配置され、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eとの間に第3ポート3cが連通している。これにより、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dが開き、排気用電磁弁3eを閉じることにより、第1ポート3aと第3ポート3cが連通し、操作ポート25を介して操作室24に操作流体を供給する。また、電空レギュレータ3は、排気用電磁弁3eが開き、供給用電磁弁3dを閉じることにより、第3ポート3cと第2ポート3bが連通し、操作ポート25を介して操作室24の操作流体を大気に排出する。緊急排気弁3fは、緊急時に排気流量を増加させて真空弁2を瞬時に弁閉するために、排気用電磁弁3eに対して並列に設けられている。操作圧力センサ3kは、第3ポート3cに接続し、真空弁2の操作圧力を測定して操作圧力測定電圧(操作圧力測定信号の一例)を出力する。
【0035】
操作指令部3jは、減算器3gと偏差増幅回路3hとPWM回路3iを備える。減算器3gは、コントローラ4(
図1参照)のコマンドと操作圧力センサ3kの操作圧力測定電圧との偏差を求める。偏差増幅回路3hは、減算器3gから偏差を入力して増幅させる。PWM回路3iは、偏差増幅回路3hで増幅された偏差を入力し、その偏差を小さくするように、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eの弁開時間を制御するパルス信号を生成し、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eに出力する。
【0036】
かかる電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dの開時間を長くし、排気用電磁弁3eの開時間を短くするパルス信号によって、真空弁2の操作室24(
図1参照)に操作流体を供給して操作圧力を増加させ、真空弁2の弁開度を大きくすることができる。また、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dの開時間を短くし、排気用電磁弁3eの開時間を長くするパルス信号によって、真空弁2の操作室24(
図1参照)から操作流体を排気して操作圧力を減少させ、真空弁2の弁開度を小さくすることができる。
【0037】
<コントローラ4の構成>
図4は、コントローラ4のハード構成を示すブロック図である。コントローラ4は、周知のマイクロコンピュータである。コントローラ4は、中央演算処理装置(CPU)41と入出力インターフェース42と記憶部43と電圧制御部44がバス45を介して接続されている。
【0038】
電圧制御部44は、電源5に接続され、供給される電力を制御する。入出力インターフェース42は、電空レギュレータ3、真空圧力センサ8a、上位装置6、パソコン7等に接続され、電気信号の入出力を制御する。
【0039】
記憶部43は、プログラムやデータなどを記憶する。記憶部43は、例えば、操作圧力パラメータを真空弁2の動作に関連付けて記憶する操作圧力パラメータ記憶部43aを備える。また例えば、記憶部43は、真空弁2を全閉状態から弁開させる場合、又は、真空弁2を全開状態から弁閉させる場合に出力するバイアス値を記憶するバイアス値記憶部43bを備える。さらに例えば、記憶部43は、所定のしきい値範囲を記憶するしきい値範囲記憶部43cを備える。ここで、所定のしきい値範囲とは、操作圧力により弁開度を制御する許容範囲をいう。
【0040】
<真空弁の動作と操作圧力の変曲点との関係について>
まず、真空弁2の動作について説明する。
図5は、口径が直径50mmの真空弁2のヒステリシス特性の一例を示す。
図5の縦軸は、弁開度(mm)を示し、横軸は操作圧力(MPa)を示す。ここで、口径とは、操作室24の平均内径寸法をいう(以下同じ。)。真空弁2は、図中A1,A2に示すように、操作圧力の増加に比例して、弁開度が大きくなる。図中A1は、弁体36が全閉位置から反弁座方向に移動し始める弁開始動ポイントである。弁開始動ポイントの操作圧力は0.16MPaである。図中A2は、弁体36が全開位置に配置され、弁開度が最大になる全開ポイントである。全開ポイントの操作圧力は0.21MPaである。また、真空弁2は、図中A3,A4に示すように、操作圧力の減少に比例して、弁開度が小さくなる。図中A3は、弁体36が全開位置から弁座方向に移動し始める弁閉始動ポイントである。弁閉始動ポイントの操作圧力は0.18MPaである。図中A4は、弁体36が弁座35にシールする全閉ポイントである。全閉ポイントの操作圧力は0.13MPaである。操作圧力は、増加時と減少時との間にヒステリシス(0.03MPa)が発生している。
【0041】
次に、操作圧力の変曲点について説明する。発明者らは、真空弁2の動作と操作圧力との関係を調べる実験を行った。実験では、
図5に示すヒステリシス特性を有する口径が直径50mmの真空弁2を用いた。そして、コントローラ4から電空レギュレータ3にコマンドを最大電圧(5V)で5秒間出力し、弁体36を全閉位置と全開位置との間で一往復させた。このときの操作圧力を操作圧力センサ3kにより測定した。また、弁体36の位置を位置センサにより測定した。ここで、コマンドが0Vのとき、操作圧力は0MPaに制御される。また、弁開度は、操作圧力が0MPaのときの弁体36の位置を0mmとした。この実験結果を
図6に示す。
図6は、左側縦軸にコマンド(V)と弁開度(mm)を示し、右側縦軸に操作圧力(MPa)を示し、横軸に時間(sec)を示す。
【0042】
実験の結果、操作圧力センサ3kにより測定される操作圧力は、
図6に示すように、第1〜第4変曲点B1〜B4が確認された。そして、第1〜第4変曲点B1〜B4は、位置センサにより検出される弁開始動検出位置C1と、全開検出位置C2と、弁閉始動検出位置C3と、全閉検出位置C4に一致していた。この原理について説明する。
【0043】
真空弁2は、コマンドが0Vのとき、圧縮ばね39が、弁体36と弁座35との間で弾性シール部材38を押し潰して弁座35にシールさせるシール荷重を、弁体36に付与している。真空弁2は、コマンドが出力されると、操作室24が操作流体を供給されて加圧される。しかし、操作圧力が圧縮ばね39のばね力以下である間は、ピストン22が弁座側限界位置(以下「下限位置」ともいう。)で停止し、弁体36の弾性シール部材38を弁座35にシールさせている。この間、操作室24は、操作流体を供給されても体積を変化させないので、操作圧力が急激に増加する(図中D1参照)。
【0044】
操作圧力が圧縮ばね39のばね力より大きくなると、ピストン22が下限位置から反弁座方向に動き始める。ピストン22は、反弁座方向への移動が制限される反弁座方向制限位置(以下「上限位置」ともいう。)まで、操作圧力に比例して反弁座方向に動く。このとき、ピストン22は、ピストンロッド27を介して弁体36と一体的に動き、弁体36と弁座35との間の離間距離(弁開度)を操作圧力に応じて大きくする。この間、操作室24は、操作流体の供給に従って体積が増加するので、操作圧力がゆっくり増加する(図中D2参照)。
【0045】
よって、ピストン22が動き始めるときに、すなわち、弁体36が全閉位置から反弁座方向に動きはじめる弁開始動検出位置C1において、操作圧力の増加率が大きい状態から小さい状態に変化する第1変曲点B1(大−小増加変曲点の一例)が現れる。
【0046】
ピストン22は、上限位置まで移動して弁体36を全開位置に配置する(弁開度を最大にする)と、停止する。しかし、操作室24には、操作流体の元圧と同じ圧力になるまで操作流体が供給される。この場合、操作室24は、操作流体を供給されても体積が増加しないため、操作圧力が急激に増加する(図中D3参照)。
【0047】
よって、ピストン22が上限位置に到達したときに、すなわち、弁体36が全開位置に配置される全開検出位置C2において、操作圧力の増加率が小さい状態から大きい状態に変化する第2変曲点B2(小−大増加変曲点の一例)が現れる。
【0048】
操作圧力は、操作流体の元圧と同じ圧力になると、安定する(図中D4参照)。真空弁2は、コマンドが0Vにされると、操作室24から操作流体が排気され、操作圧力が減少し始める。しかし、真空弁2は、ピストン22が上限位置に移動した後も操作室24を加圧されているため、操作流体が操作室24から排気されても、直ぐにピストン22が弁座方向に移動しない。ピストン22は、操作圧力が圧縮ばね39のばね力と弁室33の真空圧力との合力より小さくなるまで弁座方向に移動しない。この間、操作室24は、操作流体を排気されても体積が変化しないため、操作圧力が急激に減少する(図中D5参照)。
【0049】
その後、更に操作室24から操作流体を排気し、操作圧力が減少すると、ピストン22が弁座方向に移動し始める。ピストン22は、弁体36が弁座35に当接して移動を制限されるまで、操作圧力の減少に比例して弁座方向に移動する。この間、操作室24は、操作流体の排気に従って体積が減少するため、操作圧力がゆっくり減少する(図中D6参照)。
【0050】
よって、ピストン22が上限位置から弁座方向に動き始めたときに、すなわち、弁体36が弁座方向に動き始める弁閉始動検出位置C3において、操作圧力の減少率が大きい状態から小さい状態に変化する第3変曲点B3(大−小減少変曲点の一例)が現れる。
【0051】
真空弁2は、コマンドが0Vであるため、弁体36が弁座35にシールした後も、操作圧力が0MPaになるまで、操作流体が操作室24から排気される。この間、操作室24は、操作流体を排気されても体積が変化しないため、操作圧力が急激に減少する(図中D7参照)。
【0052】
よって、ピストン22が下限位置に到達したときに、すなわち、弁体36が全閉位置に配置される全閉検出位置C4において、操作圧力の減少率が小さい状態から大きい状態に変化する第4変曲点B4(小−大減少変曲点の一例)が現れる。
【0053】
図6に示す第1〜第4変曲点B1〜B4の操作圧力は、
図5に示す各動作ポイントA1〜A4の操作圧力と一致している。よって、真空弁2の動作特性データは、操作圧力の変曲点を検知して採取することができる。
【0054】
すなわち、
図6に示す第1変曲点B1の操作圧力(0.16MPa)は、
図5に示す弁開始動ポイントA1の操作圧力に一致する。よって、第1変曲点B1の操作圧力は、弁開始動ポイントA1の弁開始始動操作圧力パラメータとして検出できる。
【0055】
また、
図6に示す第2変曲点B2の操作圧力(0.21MPa)は、
図5に示す全開ポイントA2の操作圧力に一致する。よって、第2変曲点B2の操作圧力は、全開ポイントA2の全開時操作圧力パラメータとして検出できる。
【0056】
また、
図6に示す第3変曲点B3の操作圧力(0.18MPa)は、
図5に示す弁閉始動ポイントA3の操作圧力に一致する。よって、第3変曲点B3の操作圧力は、弁閉始動ポイントA3の弁閉始動時操作圧力パラメータとして検出できる。
【0057】
また、
図6に示す第4変曲点B4の操作圧力(0.13MPa)は、
図5に示す全閉ポイントA4の操作圧力に一致する。よって、第4変曲点B4の操作圧力は、全閉ポイントA4の全閉時操作圧力パラメータとして検出できる。
【0058】
更に、第4変曲点B4の操作圧力(0.13MPa)と第1変曲点B1の操作圧力(0.16MPa)の差圧(0.03MPa)と、第2変曲点B2の操作圧力(0.21MPa)と第3変曲点B3の操作圧力(0.18MPa)の差圧(0.03MPa)は、真空弁2のヒステリシスに一致する。よって、第4変曲点B4の操作圧力(全閉時操作圧力パラメータ)と第1変曲点B1の操作圧力(弁開始動時操作圧力パラメータ)との差圧、及び、第2変曲点B2の操作圧力(全開時操作圧力パラメータ)と第3変曲点B3の操作圧力(全閉始動時操作圧力パラメータ)との差圧に基づいて、ヒステリシスを解消するためのバイアス値を設定できる。
【0059】
<動作特性データ採取方法>
次に、動作特性データ採取方法を説明する。動作特性データ採取方法は、例えば、半導体製造装置を起動したときに、実行される。真空弁2は、全閉状態を継続すると、パッキン23がシリンダ21の内壁に固着していたり、馴染みにくかったりする。そこで、コントローラ4は、馴らし運転を行ってから、変曲点を検知して動作特性データを採取する。コントローラ4は、馴らし運転を利用して真空弁2の口径を自動的に判定し、判定した口径が所定値以下である場合には、真空弁2の弁開度を操作圧力により制御可能か否かを自動的に判断する。
【0060】
<馴らし運転時に実行される制御可能判定機能について>
図7は、制御可能判定機能を示すブロック図である。コントローラ4は、馴らし運転指令手段51により、弁体36を全閉位置と全開位置との間で高速で一往復させるように、電空レギュレータ3にコマンドを出力する。これにより、パッキン23の固着が解消されたり、パッキン23とシリンダ21との間に発生する摺動抵抗が安定したりする。
【0061】
真空弁2は、操作流体の充填量が口径によって異なる。そこで、口径判定手段52は、馴らし運転指令手段51が真空弁2を開閉する際に操作圧力センサ3kの操作圧力測定電圧を入力し、操作流体の充填量を算出する。そして、口径判定手段52は、算出した充填量に基づいて口径を自動的に認識する。
【0062】
真空弁2は、口径が小さいほど、弁開閉動作がパッキン23の摺動抵抗の影響を受ける。例えば、真空弁2の口径には、直径16mm、直径25mm、直径40mm、直径50mmがあるが、直径16mmのものは、パッキン23のスティックスリップの大きさが弁開閉動作に影響しやすく、操作圧力により弁開度を制御できないことがある。そこで、コントローラ4は、口径判定手段52により自動認識した口径が、操作圧力により弁開度を制御できない口径の基準になる所定値以下(例えば直径16mm以下)である場合には、制御可能判定手段53を実行する。尚、口径が所定値より大きい場合には、後述する動作特性採取用コマンド制御手段61(
図9参照)を実行する。
【0063】
制御可能判定手段53では、
図8のE1,E2に示すように、操作圧力のランプアップ制御とランプダウン制御を行うように、コントローラ4が電空レギュレータ3にコマンドを出力する。制御可能判定手段53は、ランプアップ制御時に操作圧力が一定時間内に変化するランプ制御変化率を算出し、算出したランプ制御変化率をしきい値範囲記憶部43cに記憶されたしきい値範囲と比較する。制御可能判定手段53は、ランプ制御変化率がしきい値範囲内(上限しきい値以下、下限しきい値以上)であれば、制御可能と判断する。この場合、後述する動作特性採取用コマンド制御手段61(
図9参照)を実行する。一方、制御可能判定手段53は、ランプ制御変化率がしきい値範囲外(上限しきい値より大きい、又は、下限しきい値より小さい)場合には、制御不可能と判断する。この場合、コントローラ4は、後述する動作特性採取用コマンド制御手段61(
図9参照)を実行せず、制御不可能である旨を上位装置6又はパソコン7に通知する。
【0064】
尚、コントローラ4は、馴らし運転時に、
図8のE3に示すように、操作圧力が上限値で安定した場合に、上限値と操作流体の元圧とを比較する。そして、上限値が元圧と同じであれば、真空弁2が正常と判断する。一方、上限値が元圧より小さければ、パッキン23から操作流体が漏れるなどの不具合が生じている可能性が高いので、上位装置6又はパソコン7に異常発生を警告する。
【0065】
また、コントローラ4は、コマンドを0Vにしたときから、操作圧力が上限値から減少し始めるときまでの応答遅れを測定し、応答遅れにより口径を追認識するようにしても良い。このように口径を二重認識するようにすれば、口径判定精度が向上する。
【0066】
<動作特性データ採取機能について>
図9は、動作特性データ採取機能を示すブロック図である。
図10は、変曲点の検出方法を説明する図であって、左側縦軸にコマンド(V)を示し、右側縦軸に操作圧力測定電圧(V)を示し、横軸に時間(sec)を示す。コントローラ4は、
図9に示す動作特性採取用コマンド制御手段61により、コマンドを最大値(例えば5V)で所定時間(例えば2秒間)出力する。この間、操作圧力測定信号入力手段62が、操作圧力センサ3kの操作圧力測定電圧を入力し、
図10に示すような操作圧力データを取得する。
【0067】
図9に示す変化率算出手段63は、操作圧力データに基づいて操作圧力の変化率を算出する。そして、変曲点検知手段64は、
図10の操作圧力データに基づいて、操作圧力の変化率が変化する第1〜第4変曲点B1〜B4を検知する。
図9に示す操作圧力パラメータ記憶手段65は、第1変曲点B1の操作圧力を弁開始動時操作圧力パラメータとして操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶する。また、操作圧力パラメータ記憶手段65は、第2変曲点B2の操作圧力を全開時操作圧力パラメータとして操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶する。また、操作圧力パラメータ記憶手段65は、第3変曲点B3の操作圧力を弁閉始動時操作圧力パラメータとして操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶する。また、操作圧力パラメータ記憶手段65は、第4変曲点B4の操作圧力を、全閉時操作圧力パラメータとして操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶する。尚、本実施形態では、動作特性採取用コマンド制御手段61、操作圧力測定信号入力手段62、変化率算出手段63、変曲点検知手段64、操作圧力パラメータ記憶手段65により、動作特性データ採取手段60が構成されている。
【0068】
そして、
図9に示すバイアス値自動設定手段66は、第1変曲点B1の操作圧力と第4変曲点B4の操作圧力との差圧、及び、第2変曲点B2の操作圧力と第3変曲点B3の操作圧力との差圧に基づいて、バイアス値を自動的に設定し、バイアス値記憶部43bに記憶する。
【0069】
<真空圧力制御機能について>
上記のように動作特性データを検出したら、コントローラ4は、操作圧力パラメータ記憶部43aとバイアス値記憶部43bに記憶したデータを用いて、真空弁2の弁開度(操作圧力)を指示する弁開度制御信号を電空レギュレータ3に出力し、真空容器8の内圧を真空圧力目標値に制御する。
【0070】
例えば、真空容器8の内圧を大気圧から真空圧力目標値まで減圧する場合、全閉状態の真空弁2は、一次側と二次側の差圧が大きい。そこで、コントローラ4は、真空弁2の弁開度を微小制御する弁開度制御信号を電空レギュレータ3に出力する。これにより、真空容器8は、真空容器8内のパーティクルを巻き上げないようにスロー排気され、内圧がゆっくり低下する。
【0071】
図11を参照しながら、スロー排気動作を具体的に説明する。
図11は、真空圧力制御開始時の動作の一例を示す図であって、左側縦軸に真空圧力(133Pa)を示し、右側縦軸にコマンドと操作圧力測定電圧(V)を示し、横軸に時間(sec)を示す。
【0072】
コントローラ4は、例えば真空圧力制御開始指令を上位装置6から入力した直後に、
図11のG1に示すように、バイアス値記憶部43bに記憶されているバイアス値を電空レギュレータ3に出力する。その後、コマンドを徐々に増加させる。
【0073】
電空レギュレータ3は、バイアス値を入力すると、コントローラ4から入力したバイアス値と操作圧力センサ3kから入力した操作圧力測定電圧との偏差に基づいて、供給用電磁弁3dの弁開時間を排気用電磁弁3eの弁開時間より長くするパルス信号を出力する。電空レギュレータ3は、真空弁2が全閉状態のとき、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを同時に弁開閉動作させ、図中Hに示すように、操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶されている全閉時操作圧力パラメータに一致させるように、操作室24の操作圧力を制御している。そのため、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eがパルス信号の変更に応答性良く追従し、操作流体を操作室24に供給する。また、真空弁2は、全閉状態のときに、操作室24が全閉時操作圧力パラメータに予圧されているため、不感帯がない。よって、真空弁2は、コマンドが出力されると直ぐに、弁体36が全閉位置から反弁座方向に移動し、弁開始動位置に到達する。
【0074】
その後、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dの弁開時間を排気用電磁弁3eの弁開時間より徐々に長くし、操作圧力を少しずつ増加させる。これにより、真空弁2は、弁体36が操作圧力の増加に応じて弁開始動ポイントから反弁座方向に移動し、弾性シール部材38の弾性変形量を緩和させる。真空弁2は、全閉状態のときに操作室24が無駄に減圧されていないので、コントローラ4が弁開度を微小制御するためのコマンドを出力すると、弁体36が全閉位置から反弁座方向に直ぐに移動し始め、全閉状態から弁開状態にする時間が短縮される。このように真空弁2が弾性シール部材38の弾性変形量を緩和して弁開することにより、真空容器8は、ガスが弾性シール部材38と弁座35との間から真空ポンプ9側に漏れ始め、内圧が低下し始める。
【0075】
コントローラ4は、真空容器8がパーティクルを巻き上げない程度に減圧されるまで、真空弁2の弁開度を微小制御する。コントローラ4は、真空容器8がパーティクルを巻き上げない程度まで減圧されると、図中G2に示すように、操作圧力パラメータ記憶部43aに記憶されている全開時操作圧力パラメータに操作圧力を一致させるようにコマンドを生成し、電空レギュレータ3に出力する。
【0076】
電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dを弁開、排気用電磁弁3eを弁閉し、操作流体の供給量を増加させる。電空レギュレータ3は、操作圧力が全開時操作圧力パラメータに達すると、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを同時に弁開閉動作させ、操作流体の供給を停止する。よって、真空弁2は、弁体36が全開位置に到達した後に、操作室24に操作流体が供給されなくなり、操作圧力が全開時操作圧力パラメータに維持される。真空弁2は、操作室24に操作流体を無駄に供給されることなく全開状態になるので、全開状態にする時間が短縮される。このように真空弁2が全開状態になることにより、真空容器8は、ガスが大流量で排気され、内圧が真空圧力目標値に短時間で到達する。
【0077】
コントローラ4は、真空圧力制御終了指示を上位装置6から入力すると、全閉時操作圧力パラメータに操作圧力を一致させるようにコマンドを出力する。すると、電空レギュレータ3は、供給用電磁弁3dを弁閉、排気用電磁弁3eを弁開することにより、操作室24から操作流体を排気し、操作圧力を減少させる。真空弁2は、操作圧力の減少に応じて弁体36が全開位置から弁座方向に移動させる。このとき、真空弁2は、全開状態のときに、操作圧力が全開時操作圧力パラメータに制御されているため、不感帯がない。よって、操作室24から操作流体が排気されると直ぐに、弁体36が弁座方向に移動し始める。真空弁2は、全開状態のときに操作室24が無駄に加圧されていないので、弁を閉じるためのコマンドが出力されると、弁体36が弁座方向に直ぐに移動し始め、全開状態から弁閉状態にする時間が短縮される。電空レギュレータ3は、操作圧力が全閉時操作圧力パラメータまで減圧されると、供給用電磁弁3dと排気用電磁弁3eを同時に弁開閉動作させる。よって、真空弁2は、弁体36が弁座35にシールした後、操作流体が操作室24から無駄に排気されなくなる。そのため、真空弁2は、全閉状態にするまでの時間が短縮される。このように真空弁2が全閉状態になることにより、真空容器8は、真空弁2により流路Lを遮断され、ガスが排気されなくなる。
【0078】
コントローラ4は、次に真空圧力制御開始指示を入力するまで、真空弁2の操作圧力を全閉時操作圧力パラメータに制御する。これにより、真空弁2は、操作室24を予圧されながら、全閉状態になる。
【0079】
<制御応答性確認試験について>
発明者らは、実施例と比較例にスロー排気動作を行わせ、制御応答性確認試験を行った。実施例は、上記実施形態のように、真空弁2に弁開閉動作を行わせ、操作圧力データに基づいて第1〜第4変曲点B1〜B4を検知し、真空弁2の動作特性データ(全閉時操作圧力パラメータ、全開時操作圧力パラメータ、弁開始動時操作圧力パラメータ、弁閉始動時操作圧力パラメータ、バイアス値)を自動的に採取し、それらを用いてスロー排気を行った。また、比較例は、真空弁2を予圧せずにスロー排気を行った。また、比較例は、バイアス値を手動で設定した。この他の機器条件や制御条件は、実施例と比較例で同じである。
【0080】
その結果、比較例は、
図11のt2に示すように、コマンドを出力してから真空容器8の内圧が低下し始めるまでの応答時間が、30秒〜40秒かかった。これに対して、実施例は、
図11のt1に示すように、コマンドを出力してから真空容器8の内圧が低下し始めるまでの応答時間が7秒であった。これは、実施例が、
図11のHに示すように操作室24を予圧し、不感帯をなくしたためと考えられる。また、実施例は、第1〜第4変曲点B1〜B4に基づいて、真空弁2のヒステリシスに合致するバイアス値を設定できたためと考えられる。
【0081】
<まとめ>
本実施形態の真空圧力制御システム1は、ピストン22により区画される操作室24と、ピストン22と一体的に移動する弁体36と、弁体36が当接又は離間する弁座35と、弁体36を弁座35にシールさせるシール荷重を付与する圧縮ばね39とを有し、真空容器8と真空ポンプ9との間に配置される真空弁2と、真空容器8の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて真空弁2の弁開度を制御するコマンドを出力するコントローラ4とを有する真空圧力制御システム1において、操作圧力を測定し、操作圧力測定電圧を出力する操作圧力センサ3kと、コマンドと操作圧力測定電圧に基づいて操作室24に操作流体を給排気し、操作圧力を制御する電空レギュレータ3(操作圧力制御機構の一例)とを有すること、コントローラ4は、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の変化率が変化する変曲点を検知し、真空弁2の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段60を有し、内圧を真空圧力目標値に制御する場合に、動作特性データを用いてコマンドを生成し、電空レギュレータ3に出力すること、を特徴とする。
【0082】
この構成によれば、真空圧力制御システム1は、操作圧力センサ3kにより測定された真空弁2の操作圧力が変化率を変化させる第1〜第4変曲点B1〜B4により、真空弁2の動作特性データを採取し、それを用いてコントローラ4がコマンドを生成して電空レギュレータ3に出力する。電空レギュレータ3は、操作圧力センサ3kの操作圧力測定電圧とコントローラ4のコマンドに基づいて真空弁2の操作圧力を制御する。これにより、真空圧力制御システム1は、コントローラ4の指示に従って真空弁2が開閉し、真空容器8から真空ポンプ9に流れるガスの流量を制御することにより、真空容器8の内圧が真空圧力目標値に到達する。かかる真空圧力制御システム1は、真空弁2に位置センサを設けなくても、操作圧力センサ3kにより測定される操作圧力の第1〜第4変曲点B1〜B4により真空弁2の動作を把握して真空弁2の弁開度を制御するので、システムを小型かつ安価にできる。また、真空圧力制御システム1は、真空弁2に固有の動作特性データを用いて真空弁2の弁開度を制御するので、操作流体を給排気しても弁開度が変化しない不感帯をなくして、制御応答性を向上させることができる。
【0083】
本実施形態の真空圧力制御システム1では、動作特性データ採取手段60は、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の減少を検出する範囲で、減少率が小さい状態から大きい状態に変化する第4変曲点B4を検知し、第4変曲点B4の操作圧力を、弁体36が弁座35にシールする全閉ポイントA4の全閉時操作圧力パラメータとして記憶することにより、動作特性データを採取すること、コントローラ4は、真空弁2を全閉状態にする場合に、全閉時操作圧力パラメータに操作圧力を一致させるようにコマンドを生成すること、を特徴とする。
【0084】
この構成によれば、真空圧力制御システム1は、操作室24の操作圧力が全閉時操作圧力パラメータに到達すると、操作室24から操作流体が排気されなくなるので、真空弁2が弁閉状態になった後に、操作室24から操作流体を無駄に排気しない。そのため、真空圧力制御システム1は、真空弁2を全閉状態にする時間、及び、次の弁開状態にするまでの時間が短縮され、制御応答性を向上させることができる。
【0085】
本実施形態の真空圧力制御システム1では、動作特性データ採取手段60は、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の増加を検出する範囲で、増加率が小さい状態から大きい状態に変化する第2変曲点B2を検知し、第2変曲点B2の操作圧力を、弁開度が最大になる全開ポイントA2の全開時操作圧力パラメータとして記憶することにより、動作特性データを採取すること、コントローラ4は、真空弁を全開状態にする場合に、全開時操作圧力パラメータに操作圧力を一致させるようにコマンドを生成すること、を特徴とする。
【0086】
この構成によれば、真空圧力制御システム1は、操作室24の操作圧力が全開時操作圧力パラメータに到達すると、操作室24に操作流体が供給されなくなるので、真空弁2が全開状態になった後に、操作室24に操作流体を無駄に供給しない。かかる真空圧力制御システム1は、真空弁2を全開状態にする時間、及び、次の弁閉状態にするまでの時間が短縮され、制御応答性を向上させることができる。
【0087】
本実施形態の真空圧力制御システム1では、動作特性データ採取手段60は、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の増加を検出する範囲で、増加率が大きい状態から小さい状態に変化する第1変曲点B1を検知し、第1変曲点B1の操作圧力を弁体36が弁座35から離間し始める弁開始動ポイントA1の弁開始動時操作圧力パラメータとして記憶すると共に、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の減少を検出する場合に、減少率が大きい状態から小さい状態に変化する第3変曲点B3を検知し、第3変曲点B3の操作圧力を弁体36が全開位置から弁座方向に移動し始める弁閉始動ポイントA3の弁閉始動時操作圧力パラメータとして記憶することにより、動作特性データを採取すること、コントローラ4は、全閉時操作圧力パラメータと弁開始動時操作圧力パラメータとの差圧、及び、全開時操作圧力パラメータと弁閉始動時操作圧力パラメータとの差圧に基づいて、バイアス値を自動的に設定するバイアス値自動設定手段66を有し、真空弁2を全閉状態から弁開させる場合、及び、真空弁2を全開状態から弁閉させる場合に、バイアス値を電空レギュレータ3に出力すること、が好ましい。
【0088】
この構成によれば、真空圧力制御システム1は、真空弁2が全閉状態のときにバイアス値を出力することにより、弁体36が全閉位置から弁開始動位置まで直ぐに移動し、弁開始動時の応答時間を短縮できる。また、真空弁2が全開状態のときにバイアス値を出力することにより、弁体36が全開位置から弁閉始動位置まで直ぐに移動し、弁閉始動時の応答時間を短縮できる。これは、真空圧力制御システム1が、真空圧力制御開始時に真空弁2の弁体36を全閉位置から微小量上昇させ、真空容器8のガスをスロー排気した後、真空弁2を全開状態にしてガスを大流量排気し、その後、真空弁2を全開状態から全閉状態にして真空圧力制御を終了するような場合に、制御応答性を向上させるのに、特に有効である。
【0089】
本実施形態の真空圧力制御システム1では、コントローラ4は、操作室24に充填される操作流体の充填量に基づいて真空弁2の口径を判定する口径判定手段52を有する。
【0090】
この構成によれば、真空圧力制御システム1は、真空弁2を真空容器8と真空ポンプ9との間の流路Lに設置した後でも、真空弁2の口径を自動的に判定することができる。
【0091】
本実施形態の真空圧力制御システム1では、コントローラ4は、口径判定手段52が判定した口径が所定値以下である場合に、操作圧力のランプアップ制御とランプダウン制御を行い、操作圧力センサ3kが出力する操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力のランプ制御変化率を求め、ランプ制御変化率を所定のしきい値範囲と比較して操作圧力により弁開度を制御できるか否かを判定する制御可能判定手段53とを有すること、を特徴とする。
【0092】
この構成によれば、真空圧力制御システムは、真空弁の口径が所定値(例えば16mm)以下である場合に、操作圧力で弁開度を制御できる真空弁2であるか否かを自動的に認識し、制御可能な真空弁2を用いて真空圧力制御を行うことが可能になるので、真空圧力制御の信頼性を高めることができる。
【0093】
本実施形態のコントローラ4(真空圧力制御用コントローラの一例)は、真空容器8と真空ポンプ9との間に配置される真空弁2の弁開度を制御するコマンドを、真空容器8の内圧と真空圧力目標値との偏差に基づいて出力するコントローラ4において、真空弁2のピストン22により区画された操作室24の操作圧力を測定して、操作圧力測定電圧を出力する操作圧力センサ3kに接続されること、操作圧力測定電圧に基づいて操作圧力の変化率が変化する第1〜第4変曲点B1〜B4を検知し、真空弁2の動作特性データを採取する動作特性データ採取手段60を有すること、真空容器8の内圧を真空圧力目標値に制御する場合には、操作圧力測定電圧とコマンドに基づいて操作室24に操作流体を給排気することにより操作圧力を制御する電空レギュレータ3に、動作特性データに基づいて生成したコマンドを出力すること、を特徴とする。
【0094】
上記構成によれば、コントローラ4は、上述の真空圧力制御システム1と同様に、操作圧力の変化率が変化する第1〜第4変曲点B1〜B4を検知して真空弁2の動作特性データを採取し、採取した動作特性データを用いて真空弁2の弁開度を制御し、真空容器8の内圧を制御する。かかるコントローラ4は、位置センサを備えない真空弁2でも、制御応答性を向上させることができる。
【0095】
従って、本実施形態によれば、小型且つ安価で制御応答性が良い真空圧力制御システム1及びコントローラ4を提供することができる。
【0096】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、口径判定手段52は、馴らし運転指令手段51が真空弁2を開閉する際に操作圧力センサ3kの操作圧力測定電圧を入力し、操作室24から排出される操作流体の排出量を算出し、算出した排気量に基づいて真空弁2の口径を自動的に認識するようにしても良い。これによれば、操作流体の充填量に基づいて口径を判定する場合と同様、真空弁2を真空容器8と真空ポンプ9との間の流路Lに設置した後でも、真空弁2の口径を自動的に判定することができる。