(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737711
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】安静時心拍数モニタシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20200730BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
A61B5/0245 AZDM
A61B5/00 102A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-571709(P2016-571709)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公表番号】特表2017-521126(P2017-521126A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015062995
(87)【国際公開番号】WO2015189304
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】14172096.1
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ボノミ,アルベルト ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】デ フロート,クーン テオ ヨハン
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−317912(JP,A)
【文献】
特開2005−124718(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0066782(US,A1)
【文献】
特開平10−314127(JP,A)
【文献】
特開2003−102694(JP,A)
【文献】
特開2000−051157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02−5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの皮膚上に取り付けられ又は配置され得るウェアラブルデバイスとして実装される、心拍数モニタシステムであって、
前記ユーザに取り付けられた少なくとも一つの動作センサによって検出された動作データに基づいて、前記ユーザの非活動期間を判断するための非活動判断ユニットであり、前記動作データは、活動カウント、速度情報、ステップ数情報、および、動作レベル情報のうち1つまたはそれ以上を含んでいる、非活動判断ユニットと、
時間にわたり、かつ、非制限的な生活状況の最中に、前記ユーザの心拍数データを測定するための少なくとも一つの心拍数センサと、
前記非活動判断ユニットによって判断された前記非活動期間の最中に前記少なくとも一つの心拍数センサによって測定された前記心拍数データに基づいて、前記ユーザの安静時心拍数を計算するための安静時心拍数計算ユニットと、
前記測定された心拍数データの中から信頼できる心拍数データを確立するための信頼性確立ユニットであり、下限よりも小さく、かつ、上限よりも大きい心拍数データを無視するように適合されている、信頼性確立ユニットと、
を含み、
前記安静時心拍数計算ユニットは、前記信頼性確立ユニットによって確立された前記信頼できる心拍数データに基づいて、前記ユーザの前記安静時心拍数を計算するように構成されており、
前記信頼性確立ユニットは、標準偏差閾値より小さい標準偏差を有する心拍数データを無視するように適合されている、
心拍数モニタシステム。
【請求項2】
前記心拍数モニタシステムは、さらに、
時間にわたり、かつ、非制限的な生活状況の最中に、ユーザの動作データを測定するため、または、判断するための少なくとも一つの動作センサと、
を含む、請求項1に記載の心拍数モニタシステム。
【請求項3】
前記下限は毎分30ビートであり、前記上限は毎分150ビートであり、かつ、前記標準偏差閾値は毎分0.1ビートである、
請求項1に記載の心拍数モニタシステム。
【請求項4】
前記非活動判断ユニットは、昼12時と午後7時との間ではない前記ユーザの非活動期間を排除するように適合されている、
請求項1に記載の心拍数モニタシステム。
【請求項5】
前記安静時心拍数計算ユニットは、数日にわたる前記ユーザの心拍数データおよび非活動期間に基づいて、前記ユーザの安静時心拍数を計算するように適合されている、
請求項4に記載の心拍数モニタシステム。
【請求項6】
前記非活動判断ユニットは、前記判断された非活動期間から身体活動の後の回復時間を取り除くことによって、前記ユーザの非活動期間を判断するように適合されている、
請求項1に記載の心拍数モニタシステム。
【請求項7】
ウェアラブルな心拍数モニタシステムを使用してユーザの安静時心拍数を判断する方法であって、
ユーザの皮膚上に取り付けられ又は配置される前記ウェアラブルな心拍数モニタシステムを身に付けるステップと、
前記心拍数モニタシステムにおける少なくとも一つの動作センサによって検出された動作データに基づいて、前記ユーザの非活動期間を判断するステップであり、前記動作データは、活動カウント、速度情報、ステップ数情報、および、動作レベル情報のうち1つまたはそれ以上を含んでいる、ステップと、
前記心拍数モニタシステムにおける心拍数センサによって、時間にわたり、かつ、非制限的で自由な生活状況の最中に、ユーザの心拍数データを測定するステップと、
下限よりも小さい心拍数データと上限よりも大きい心拍数データを無視することによって、前記判断または測定された心拍数データの中から信頼できる心拍数データを確立するステップと、
判断された非活動期間の最中に測定された前記心拍数データ、および、前記信頼できる心拍数データに基づいて、前記ユーザの安静時心拍数を計算するステップと、
を含み、
前記信頼できる心拍数データを確立するステップにおいては、標準偏差閾値より小さい標準偏差を有する心拍数データが無視される、
方法。
【請求項8】
請求項1に記載の心拍数モニタシステムにおいてユーザの心拍数をモニタリングするためのコンピュータプログラムであって、
前記心拍数モニタシステムをコントロールしているコンピュータ上で前記コンピュータプログラムが実行されると、
前記心拍数モニタシステムに、請求項7に記載のユーザの安静時心拍数を判断する方法に係るステップを実行するようにさせる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの心拍数を測定するための心拍数モニタシステムに関する。ユーザの安静時心拍数を判断する方法も同様である。
【背景技術】
【0002】
ユーザの心拍数を、例えば、光学センサを用いてモニタリングすることは、よく知られている。ここで、光学センサは、ユーザの皮膚の中へ光を発し、そして、発せられた光は、皮膚の中で散乱される。反射された光は皮膚を抜け出し、そして、適切な検出器によって検出され得る。センサから受け取った信号に基づいて、ユーザの心拍数が判断され得る。
【0003】
心拍数センサは、例えば、フィットネスアプリケーションのために使用される。ここで、センサは、リスト(wrist)デバイスとして、または、前腕(forearm)デバイスとして、もしくは、身体の他のあらゆる場所において皮膚に対して接触するデバイスとして、身に付けることができる。従って、心拍数センサは、ユーザの心拍数を検出し、そして、検出された心拍数をデバイス上に、または、電気器具のディスプレイといった接続されたシステムに対して表示することができる。
【0004】
検出されたユーザの心拍数が評価されるときには、安静時心拍数(resting heart rate、RHR)が、心肺適応能(cardio−respiratory fitness)、等といった状況を示すための生理学的に有意義なパラメータとして考えられている。別の言葉で言えば、安静時心拍数(RHR)は、非常に役に立つパラメータである。安静時心拍数RHRは、また、生理学的なストレスの指標として使用されてもよい。さらに、安静時心拍数(RHR)と検出されたユーザの心拍数に基づいて、ユーザのカロリー消費が、パーソナル化されたやり方で判断され、または、予想され得る。従って、より正確なものである。安静時心拍数は、また、患者の心筋梗塞後、または、患者の以降のリハビリテーションプログラムにおいて、治療効果の予測因子としても使用され得る。安静時心拍数は、また、ウォーキング、ランニング、サイクリング、等といった、身体活動の強度を評価するためにも使用され得る。ここで、検出された心拍数と安静時心拍数との差異は、エネルギー消費と心肺適応能を判断するために使用される。
【0005】
安静時心拍数を判断するためのいくつかのやり方が存在する。安静時心拍数は、典型的に、ユーザが、横になっているか、もしくは、座っている又は仰向けになって休んでいるようなときに、判断される。典型的には、カフェインと食べ物の消費が避けられ、そして、安静時心拍数は朝に判断される。このプロシージャは、安静時心拍数を判断するために、十分に長い期間について飲食を控えること、および、いくらかの時間について横たわることを要求するので、面倒であり、かつ、押し付けがましいものである。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0066782号は、ユーザの安静時心拍数を判断するためのシステムを開示している。ユーザから身体的信号が受け取られ、そして、有効な鼓動(heart beat)を特定するためにモニタされる。有効な鼓動に基づいて、心拍信号が判断される、心拍信号は、一連のデータポイントからベースラインデータポイントを特定するために分析される。安静時心拍数は、ベースラインデータポイントに基づいて計算される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有効で、押し付けがましくなく、そして非侵襲的なやり方で心拍数を判断することができる心拍数モニタシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様においては、ユーザに取り付けられた少なくとも一つの動作センサによって検出された動作データ(MD)に基づいて、ユーザの非活動期間を判断するための非活動判断ユニット、および、非活動判断ユニットによって判断された非活動期間の最中に、ユーザに取り付けられた少なくとも一つの心拍数センサによって測定された心拍数データ(HR)に基づいて、ユーザの安静時心拍数(RHR)を計算するための安静時心拍数計算ユニット、を含む心拍数モニタシステムが提供される。
【0009】
心拍数モニタシステムは、時間にわたり、かつ、自由な生活状況の最中に、ユーザの心拍数を測定するために少なくとも一つ
の心拍数センサを含んでいる。従って、心拍数センサは、選択可能な時間期間にわたりユーザの心拍数データを測定している。例えば、全日にわたり、そして、自由な生活状況、つまり、非制限的な生活状況の最中である。心拍数モニタシステムは、測定された心拍数データの中から信頼できる心拍数データを確立し、または、判断するための信頼性確立ユニットを含んでいる。安静時心拍数計算ユニットは、次に、信頼性確立ユニットによって確立された信頼できる心拍数データに基づいて、ユーザの安静時心拍数を計算することができる。信頼性確立ユニットは、下限よりも小さい心拍数データ、および、上限よりも大きい心拍数データを無視するように適合されている。
心拍数モニタシステムは、ユーザの皮膚上に取り付けられ又は配置され得るウェアラブルデバイスとして実装される。それに応じて、信頼性確立ユニットは、心拍数データの事前選択を実行している。
【0010】
そうした心拍数モニタシステムを用いて、有効で、押し付けがましくなく、そして非侵襲的なやり方で、ユーザの安静時心拍数が判断され得る。ユーザは、安静時心拍数が判断されるときに、あらゆる種類の制限的なプロトコルを経験する必要がないからである。代わりに、心拍数モニタシステム自身が、安静時心拍数を決定または計算するために、検出された心拍数データがいつ効果的に使用され得るかを判断する。そうした心拍数データは、ユーザの非活動期間の最中に検出された安静時心拍数を決定するために使用される。
【0011】
信頼性確立ユニットの助けを借りて、測定誤差に対応、または、信じ難い心拍数データに対応する、そうした心拍数データが、安静時心拍数を計算するために使用される心拍数データから排除される。このようにして、より正確な安静時心拍数が判断され得る。
【0012】
別の言葉で言えば、非侵襲的な心拍数モニタシステムは、安静時心拍数を判断するために使用される心拍数データについて、2ステップの事前選択プロセスを含んでいる。
【0013】
心拍数モニタシステムは、動作センサからそれぞれの動作データ、および、必ずしも心拍数モニタシステムの一部である必要はない心拍数センサからそれぞれの心拍数データを受け取ってよい。本発明のこの態様に従った心拍数モニタシステムは、安静時心拍数を判断するために、心拍数データと同様に動作データを必要とするだけである。
【0014】
本発明のさらなる態様に従って、心拍数モニタシステムは、時間にわたり、かつ、自由な生活状況の最中に、ユーザの動作を測定または判断するための少なくとも一つの動作センサを含んでいる。そうした心拍数モニタシステムを用いて、非活動判断ユニットは、非活動期間を判断する。非活動期間は、ユーザが休息しており、かつ、あらゆる主要な身体活動を実行していない間の期間を意味するものである。こうした時間期間の最中に、ユーザの安静時心拍数を判断するために効果的に使用され得る心拍数データが、測定され、または、判断され得る。
【0015】
信頼性確立ユニットは、測定された心拍数データにおける低品質を示す標準偏差閾値より小さい標準偏差を有する心拍数データを無視するように適合されている。このように、心拍数データの信頼性を、さらに増すことができる。
【0016】
本発明のさらなる態様に従って、下限は30bpmに対応し、上限は150bpmに対応しており、かつ、標準偏差閾値は0.1bpmである。これらの値を用いて、信頼性確立ユニットは、安静時心拍数の計算の最中に安静時心拍数のひずみ(distortion)を導き得るであろうそうした心拍数データを効果的に取り除くことができる。これらの閾値は、また、医療治療を受けている非常にフィットした個人または患者といった、ユーザの特定グループについて期待される心拍数値に従って、変更されてもよい。
【0017】
本発明のさらなる態様に従って、心拍数データを受け容れるか、または、拒否するために、一日の時間が考慮に入れられる。心拍数データは、信頼性確立ユニットによって、および、非活動判断ユニットによって確立された非活動期間において、信頼できるものであると判断されたものである。本発明のこの態様により、システムは、主観的および文化的に決定されたユーザの習慣に従って目が覚めるイベントがおそらく発生するであろう一日の期間においてキャプチャされた心拍数データから安静時心拍数をけいさんすることを避けることができる。習慣は、食事、カフェイン、薬または取り入れる薬物療法、もしくは、以前にスケジュールされた活動、といったものである。本発明のこの態様は、非活動判断ユニットの中に統合され得る。
【0018】
本発明のさらなる態様に従って、非活動判断ユニットは、昼12時と午後7時との間ではないそうした非活動期間を排除するように適合されている。昼12時から午後7時までの期間は、その間に非活動期間が判断され、そして、心拍数データが安静時心拍数RHRを計算するために最適である、最良の期間である。
【0019】
本発明のさらなる態様に従って、安静時心拍数計算ユニットは、数日にわたる非活動期間と同様に数日にわたるユーザの心拍数データとに基づいて、安静時心拍数を計算するように適合されている。
【0020】
本発明のさらなる態様に従って、非活動判断ユニットは、身体活動の後に続くそうした非活動期間を排除し得る。こうした回復時間の最中には、安静時心拍数を計算するために使用される心拍数データからこれらの心拍数データが排除されるように、ユーザの心拍数がゆっくりと低下する。
【0021】
本発明のさらなる態様に従って、
ウェアラブルな心拍数モニタシステムを使用してユーザの安静時心拍数を測定または判断する方法が提供される。
ウェアラブルな心拍数センサは、ユーザの皮膚上に取り付けられ又は配置されて、身に付けられる。ユーザに取り付けられた
心拍数モニタシステムにおける少なくとも一つの動作センサによって検出された動作データに基づいて、ユーザの非活動期間が判断される。ユーザの安静時心拍数は、非活動期間の最中に、ユーザに取り付けられた少なくとも一つの心拍数センサによって検出された心拍数データに基づいて計算される。
【0022】
本発明の一つの実施例に従って、ユーザの動作に関するデータと同様に、検出された心拍数データが、一日または数時間にわたり収集され、そして、次に、分析される。特に、測定は、ユーザの標準的手順(normal routine)の最中に行われる。ユーザの移動に関するデータは、ユーザによる非活動期間を見つけるために分析される。次に、安静時心拍数を判断するために、対応する心拍数データが分析される。心拍数モニタシステムは、本発明の一つの実施例に従った心拍数をモニタリングするための方法と同様に、有利なものである。ユーザの安静時心拍数を判断し、そして、さらに、ユーザの心拍数をモニタするための控えめな方法ができるようにしている。特に、心拍数モニタシステムは、ユーザの心拍数を検出するため、同様にユーザの活動レベルを検出するために使用されるリストデバイスを含んでよい。本発明に従った心拍数モニタシステムを用いて、ユーザは、彼のいつもの日常的な活動の最中にモニタシステムを身に付けることができ、一方で、なお、実際の心拍数と同様に、安静時心拍数を判断することもできる。
【0023】
請求項1に従った心拍数モニタシステム、ユーザの安静時心拍数を判断するための方法、および請求項11に従ったコンピュータプログラムは、特に従属請求項において定められるように、類似の、及び/又は、同一の望ましい実施例を有することが理解されよう。
【0024】
本発明における望ましい実施例は、また、従属請求項のあらゆる組み合わせ、または、それぞれの独立請求項を用いる上記の実施例でもあり得ることが、理解されよう。
【0025】
本発明に係るこれら及び他の態様は、これ以降に説明される実施例から明らかであり、そして、実施例を参照して解明されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、被験者のグループの中で一日の異なる時間において検出された心拍数と安静時心拍数の統計的な表現の差異を示しているグラフである。
【
図2】
図2は、第1実施例に従って、心拍数モニタの模式的なブロックダイヤグラムを示している。
【
図3】
図3は、本発明の一つの実施例に従って、検出された心拍数データの信頼性を判断するためのフローチャートを示している。
【
図4】
図4は、本発明の一つの実施例に従って、心拍数モニタシステムによって非活動の期間を判断するためのフローチャートを示している。
【
図5】
図5は、本発明の一つの実施例に従って、心拍数モニタシステムによる安静時心拍数の見積りを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一つの態様に従って、ユーザの心拍数を測定するために使用される心拍数モニタシステムが提供される。心拍数モニタシステムは、リストバンド(スマートウォッチのようなもの)又は他のウェアラブルデバイス、つまりユーザの上に取り付けられ又は配置され得るデバイス、の中に実装され得るものである。心拍数モニタシステムは、ユーザの心拍数を判断するための光学センサとして任意的に具現化され得る心拍数センサを含んでよい。
【0028】
本発明に従った心拍数センサは、心臓または心肺システムの電気的、音響的、または光学的活動を測定することができる非侵襲的な心拍数センサである。
【0029】
図1は、一日の異なる時間において検出された心拍数と安静時心拍数との間の差異を示しているグラフである。
図1は、単に説明目的のために、時間にわたる心拍数の一つの例を示している。x軸は、一日の時間であり、そして、y軸には、安静時心拍数の上の心拍数(heart rate above resting heart rate)HRARが示されている。研究室で決定された安静時心拍数(laboratory−determined resting herat rate)RHRは、ゼロで示されており、つまり、実際の心拍数と安静時心拍数との間に差異はない。安静時心拍数の上の心拍数HRARの平均(mean)心拍数は、ラインHRAR1として描かれている。安静時心拍数の上の心拍数の中央値(median value)は、ラインHRAR2として描かれており、そして、安静時心拍数の上の心拍数HRARの分布の25パーセンタイル(25
th percentile)が、ラインHRAR3として描かれている。
【0030】
図1で分かるように、一日の時間にわたる心拍数の平均または中央値の分布は、安静時心拍数の過大評価を導き得るものである。本発明に従って、一日のうち非活動期間の最中に検出されたこうした心拍数データだけが、上述の過大評価を避ける観点において有利であり、そして、このように使用されるべきである。特に、ラインHRAR3(心拍数分布の25パーセンタイル)から見て分かるように、安静時心拍数の観点において良好な近似が、例えば、11時と19時との間の時間の最中でさえ、示されている。
【0031】
以下の表1においては、安静時心拍数RHRの研究室でアセスされた判断に関する誤差統計と、一日にわたり記録された実際の心拍数の値からの安静時心拍数のあらゆる見積りが示されている。
【表1】
【0032】
図2は、第1実施例に従って、心拍数モニタの模式的なブロックダイヤグラムを示している。心拍数モニタシステム10は、少なくとも非侵襲的な心拍数センサ100、任意的に、動作データMDを測定または判断するための少なくとも一つの動作センサ200、処理ユニット300、および、任意的にタイムスタンプユニット500と任意的にディスプレイ400、を含んでいる。処理ユニット300は、任意的に、信頼性確立ユニット310、非活動判断ユニット320、および、安静時心拍数計算ユニット330を含んでいる。これら3つのユニット310、320、330は、処理ユニット300から離れた専用ユニットとして実施され得るものであり、もしくは、処理ユニット300に統合され、又は、その一部であり得る。ディスプレイ400は、任意的に、グラフィックユーザインターフェイスGUI410を含んでよい。ユーザの心拍数HRは、少なくとも非侵襲的な心拍数センサ100によって検出される。少なくとも非侵襲的な心拍数センサ100の心拍数データHRは、タイムスタンプTSを含み得る(または、タイムスタンプが心拍数データに対して関連付けされ得る)。タイムスタンプTSは、心拍数センサ100自身が生成し得るもの、または、タイムスタンプユニット500によって生成され得るものである。タイムスタンプTSは、心拍数センサ100または処理ユニット300において、直接的に心拍数センサ100の測定と関連付けされてよい。動作センサ200の動作データMDは、処理ユニット300に対して転送される。動作センサ200からの動作データMDは、また、タイムスタンプTSを含んでよい(または、タイムスタンプは、心拍数データと関連付けされ得る)。タイムスタンプTSは、動作センサ200自身が生成し得るもの、または、タイムスタンプユニット500によって生成され得るものである。タイムスタンプTSは、動作センサ200または処理ユニット300において、動作データMDの中に組み込まれてよく、または、動作データMDに対して関連付けされてよい。
【0033】
信頼性確立ユニット310においては、任意的に、心拍数センサ100からの測定データ、つまり、検出された心拍数HRが分析されて、心拍数データが信頼性ある心拍数データHRRであるか否か、もしくは、その値があまりに低いか、または、あまりに高いとして、心拍数データが信頼できないものであるか否かを判断する。そうした信頼できない値は、異所性の(ectopic)鼓動または測定エラーに関連し得るものである。従って、信頼性確立ユニット310においては、信頼できないものと考えられる心拍数センサ100からのこれらのデータは、信頼性ある心拍数データを獲得するために、取り除かれ、または、無視され得る。信頼性確立ユニット310の詳細なオペレーティングシステムは、
図3に関して以下に説明される。
【0034】
信頼性確立ユニット310は、心拍数データのセットから信頼できないデータを取り除くための下限と上限(lower and upper threshold)を使用する。上限と下限は、使用されている心拍数センサに、そして、測定エラーに依存するものであってよい。さらに、子供、老人、男女別の患者、または、ユーザの心拍数と心臓リズムに影響する医療治療を受けている患者に対して、異なる閾値が使用されてよい。
【0035】
非活動判断ユニット320においては、非活動または休んでいる期間IPを判断するために、動作センサ200からの動作データMDが分析される。非活動の期間は、ユーザが身体活動を控えている、つまり、ユーザが休んでいる、最中の時間期間と関連する。本発明の一つの実施例に従って、非活動または休息の期間は、安静時心拍数RHRを判断するために効果的に使用され得るであろう心拍数の測定データを結果として生じ得るものと考えられている。従って、非活動判断ユニット320は、休息または非活動に係る一日の間の時間期間を判断するために、少なくとも一つの動作センサ200からの動作データMDを、これらのデータMDに関連付けされたタイムスタンプTSも同様に、分析する。非活動判断ユニット320の詳細なオペレーションは、
図4を参照して以下に説明される。
【0036】
安静時心拍数計算ユニット330は、非活動判断ユニット320が非活動IPまたはユーザの休息であると判断したときに、一日の間のこれらの時間期間から心拍数データを選択するために、信頼性確立ユニット310からの出力データを、非活動判断ユニット320からのデータも同様に、使用することができる。別の言葉で言えば、安静時心拍数RHRを判断し、または、計算するために、非活動の時間期間に対応する心拍数センサ100からのデータだけが使用されるのである、他の心拍数データ(つまり、ユーザが休息していないとき)は、従って、安静時心拍数RHRの判断のためには使用されない。安静時心拍数計算ユニット330の詳細なオペレーションは、
図5を参照して以下に説明される。
【0037】
図3は、本発明の一つの実施例に従って、検出された心拍数データの信頼性を判断するためのフローチャートを示している。ステップS311においては、心拍数センサ100からの心拍数データHRが、信頼性確立ユニット310によって受け取られる。心拍数データHRは、また、心拍数HRの標準偏差stdHRを含んでよい。ステップS312においては、心拍数HRが下限および上限と比較される。心拍数HRが下限より低いか、または、上限より高い場合に、心拍数データは破棄され、そして、転送されない。さらに、ステップS312においては、任意的に、心拍数データHRの標準偏差stdHRが閾値に対して比較される。標準偏差がこの閾値より小さい場合には、関連する心拍数データが破棄され、または、無視される。しかしながら、標準偏差が閾値より大きい場合には、次に、ステップS313において、対応する心拍数データが、信頼できる心拍数データHRRとして転送される。
【0038】
本発明の一つの態様に従って、心拍数の下限は30bpmであってよく、そして、上限値は、例えば、150bpmであってよい。つまり、毎分のビート(beats per minute)である。心拍数データの標準偏差に対する閾値は、例えば、0.1bpmであってよい。例えば、過去の、例えば5分間の時間間隔において計算された場合である。
【0039】
信頼性確立ユニット310においては、心拍数センサ100からの心拍数データHRが分析され、そして、信頼できると考えられるそうしたデータだけが転送される。信頼できると考えられないデータは、破棄され、または、無視される。信頼できる心拍数データについて上限と下限を導入することによって、小さい、または、再現可能性が乏しい心拍数データが、破棄され、または、無視され得る。そうでなければ、不正確な安静時心拍数RHRを導いてしまうものである。
【0040】
任意的に、心拍数データの大きさ(magnitude)は、既定の時間間隔の中で判断され得る。これらの時間間隔は、例えば、5分であってよい。しかしながら、あらゆる他の時間期間も、また、使用され得ることに留意すべきである。任意的に、この時間期間の中で心拍数データの標準偏差が判断され得る。
【0041】
従って、下限(例えば、30bpm)より高く、かつ、上限(例えば、150bpm)より低く、そして、0.1bpmより大きい標準偏差を有する、そうした心拍数データHRだけが、信頼できる心拍数データHRRであると判断され、または、そのように考えられる。
【0042】
図4は、本発明の一つの実施例に従って、心拍数モニタシステムによって非活動の期間を判断するためのフローチャートを示している。非活動判断ユニット320は、動作データMDを少なくとも一つの動作センサ200から受け取る(対応するタイムスタンプ情報TSも同様である)。ステップS321においては、動作データMDが、活動が起こっていない最中の時間期間を判断するために分析される。つまり、非活動または休息の期間を判断するためである。任意的に、非活動判断ユニット320は、また、信頼性確立ユニット310から、信頼できる心拍数データHRRも受け取り得る。ステップS322においては、そうした信頼できる心拍数データHRRだけが、何の動作も起こっていない時間期間の最中、つまり、非活動の期間の最中に転送される。ステップS323においては、非活動の期間からの心拍数データが、出力され、または、転送され得る。
【0043】
非活動期間IPは、動作センサ200からの動作データMDに基づいて、様々な方法によって判断され得る。動作データMDは、活動カウント、速度情報、ステップ数情報、動作レベル情報、等を含んでよい。活動カウントは、例えば、加速度センサの出力を分析することによって判断され得る。一日の間の非活動または休息の期間に係る情報に基づいて、安静時心拍数RHRが判断され得る。心拍数RHRは、ユーザが非活動であり又は休息しているそうした時間期間においてだけ、評価され、または、判断され得ることが、さらに理解される。非活動判断ユニット320は、非活動の期間に関する情報を安静時心拍数計算ユニット330に対して転送してよく、または、増加した活動を伴う時間期間から生じるそうした心拍数データを既に廃棄することができるか、いずれかでよい。
【0044】
図5は、本発明の一つの実施例に従って、心拍数モニタシステムによる安静時心拍数の見積りを示すフローチャートである。安静時心拍数計算ユニット330は、心拍数センサ100から、タイムスタンプ情報TS、検出された心拍数HRを受け取ることができる。非活動期間IP及び/又は信頼できる心拍数データHRRに関する情報も同様である。ステップS331においては、信頼できる心拍数データHRRが非活動期間IPからのものであるか否かが判断される。そうでない場合に、このデータは破棄され、または、考慮されない。ステップS332においては、心拍数データHRが累積され、そして、非活動の期間の長さが判断される。
【0045】
ステップS333においては、非活動期間IPが、例えば5分間であってよい閾値より長いかが判断される。ステップS334においては、任意的に非活動期間が昼12時(12am)と午後7時(7pm)との間であるかが判断される。
【0046】
そうである場合には、次に、ステップS335において、安静時心拍数の即時見積りRHRiとして、累積心拍数データの25パーセンタイルが計算される。このデータから、ステップS336において、毎日の安静時心拍数アセスメントRHRdが判断される。ステップS337においては、グローバル安静時心拍数が、例えば5連続日の平均として判断される。
【0047】
従って、安静時心拍数計算ユニット330においては、そうした信頼できる心拍数データHRRだけが考慮される。少なくとも5分間の持続期間を有する非活動期間IPの最中に生じるものである。他の全てのデータは廃棄され、または、考慮されない。任意的に、非活動期間IPは、さらに、限定されてよい。つまり、昼12時と午後7時との間の時間期間である。この時間期間(昼12時と午後7時との間)は、研究室で決定された安静時心拍数からの最小の偏差を伴なう安静時心拍数RHRを有する。安静時心拍数の即時見積りRHRiは、非活動の選択された期間における心拍数データの統計的分布から判断される。S336においては、毎日の安静時心拍数RHRのために、安静時心拍数の即時見積りRHRiの中間値が判断される。安静時心拍数の信頼性をさらに改善するために、後に続く数日からのデータが分析される。
【0048】
本発明に従って、心拍数モニタシステムは、スマートウォッチのようなリストデバイスの中、または、ユーザの耳の後ろに付けられるデバイスの中に実装され得る。従って、心拍数モニタシステム10のエレメントは、一つのハウジングの中に配置されてよい。代替的に、心拍数センサ100は、外部に実装され得る。同じことが、動作センサ200に対して提供される。動作センサ200は、ユーザが常に持ち歩ける、例えば、スマートフォンまたはモバイルデバイスの中に実装され得る。さらに、心拍数センサ100は、また、外部センサとしても実装され得る。心拍数センサ100からのデータおよび動作センサ200からのデータは、無線で、または、有線によって、処理ユニット300に対して転送され得る。
【0049】
心拍数センサ100は、ユーザの心拍数を信頼性よく検出することができる、あらゆる非侵襲的なセンサとして実装され得る。従って、心拍数センサは、心臓または心肺システムの電気的、音響的、または、光学的な活動を検知するために使用され得るものである。
【0050】
本発明の一つの望ましい実施例に従って、心拍数センサは、光学センサとして具現化され得る。ユーザの皮膚の中へと光を発し、そして、発せられた光が皮膚の中で散乱されるものである。反射された光は皮膚を抜け出し、そして、光学センサによって検出され得る。従って、光学センサは、フォトプレスチモグラフィ(photoplethysmography)PPGセンサとして具現化され得る。
【0051】
動作センサ200は、非活動時間期間を判断するために使用され得るあらゆるセンサであってよい。従って、動作センサは、身体活動を定量化することができるあらゆるセンサであってよい。これは、ステップカウンタ、移動と速度を検出するためのGPSセンサ、間接的な心拍計、ガルヴァニック皮膚反応または筋活性に対するセンサ、を含んでよい。動作センサ200は、また、ユーザの活動を判断するための活動モニタとして実施されてもよい。これらの測定に基づいて、非活動期間が、また、推論され得る。動作センサは、例えば、身体加速の周期性、加速度の大きさ、歩行速度、毎分のステップ数量または時間期間の最中に燃焼されるカロリー、を判断するために使用され得る。この情報に基づいて、非活動期間が判断され得る。
【0052】
非活動判断ユニット320の上述のオペレーションに加えて、非活動判断ユニット320は、また、例えば徹底的な非活動の期間、の後に直ちに続く非活動期間から心拍数データを廃棄してもよい。身体活動の期間の後に続くそうした期間の最中には、ユーザの身体が回復する必要があるので、心拍数HRは、いまだに安静時心拍数RHRより高いであろう。そうした回復時間期間T
RECOVERYは、本発明に従って、信頼できない心拍数値が検出される時間期間に対応している。この時間期間は、身体活動の後に続くものである。回復時間期間T
RECOVERYは、以下の等式に従う。
T
RECOVERY=max(0、T
MIN+T
MAX×(median(HR
ACTIVITY)−HR
LOW)/(HR
MAX−HR
LOW))
【0053】
ここで、HR
MAXは、ユーザの年令に応じた心拍数の最大見積りに対応している(例えば、217−0.85×年令)。HR
ACTIVITYは、身体活動期間の最中に検出された心拍数に対応している。HR
LOWは、軽い身体活動の最中に判断された心拍数に対応している(例えば、HR
LOW=例として80bpm)。T
MINは、最小回復時間(例えば、30分)に対応しており、そして、T
MAXは、最大回復時間(例えば、120分)に対応している。
【0054】
加えて、安静時心拍数の良好な近似値を決定するために、そこから心拍数データが抽出され得る非活動期間IPは、異なる人々、異なる国、等について相違し得ることに留意すべきである。本発明の一つの態様に従って、処理ユニット300は、安静時心拍数の最も正確な見積りが決定され得る、そうした時間期間を判断するための学習アルゴリズムを実施することができる。特に、安静時心拍数を見積るためには、こうした時間期間からのデータだけが使用され得るものである。
【0055】
本発明の一つの態様に従って、上述のエレメントおよびユニットは、心拍数モニタシステムの代わりに活動モニタシステムにおいて実施され得る。そうした活動モニタシステムは、ユーザに対して、彼の身体活動レベル、エネルギー消費、および心肺適応能について正確な情報を与えるために使用される。そうした活動モニタシステムのために、本発明に従って判断される安静時心拍数は重要なパラメータである。
【0056】
本発明に従って、心拍数モニタシステム、そして、特に、心拍数センサは、ウェアラブルな検出器、つまり、非侵襲的な検出器、として実施され得る。
【0057】
処理ユニットによって判断される安静時心拍数RHRは、ディスプレイに対して出力され得る。もしくは、この情報は、ユーザの身体活動を正確に検出する、ストレスをモニタする、といったそれ自身の目的のために、そして、また、疾患予防のために使用し得るあらゆる他の外部デバイスに対して、出力され得る。
【0058】
図面、明細書、および添付の請求項を研究すれば、請求された本発明の実施において、当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され、もたらされ得る。
【0059】
請求項において、用語「含む(“comprising“」は、他のエレメントまたはステップの存在を排除するものではなく、不定冠詞「一つの(”a“または”an“)」は、複数を排除するものではない。
【0060】
単一のユニットまたはデバイスは、請求項で述べられるいくつかのアイテムに係る機能を満たし得る。所定の手段が、お互いに異なる従属請求項の中で引用されているという事実だけでは、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0061】
コンピュータプログラムは、光記録手段または半導体メディアといった適切な媒体上に記録され/配布され、他のハードウェアと共に、またはハードウェアの一部として提供され得る。しかし、また、インターネット、もしくは、他の有線もしくは無線の電子通信システムを介するといった、他の形式においても配布され得る。
【0062】
請求項におけるいかなる参照番号も、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。