特許第6737781号(P6737781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6737781セルピン融合ポリペプチド及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737781
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】セルピン融合ポリペプチド及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20200730BHJP
   A61K 38/57 20060101ALI20200730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200730BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20200730BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20200730BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200730BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20200730BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20200730BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20200730BHJP
【FI】
   C07K19/00ZNA
   A61K38/57
   A61K39/395 Y
   A61K47/65
   A61P25/00
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P35/00
   A61P9/10
   A61P29/00 101
   A61P19/02
   A61P7/00
   A61P1/04
   A61P17/06
   A61P3/10
   A61P31/04
   A61P37/06
   A61P37/02
   A61P17/02
   A61P31/10
   A61P31/12
   !C12N15/13
   !C07K14/76
   !C07K14/47
【請求項の数】13
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2017-522654(P2017-522654)
(86)(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公表番号】特表2017-537888(P2017-537888A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015057533
(87)【国際公開番号】WO2016069574
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】14/524,832
(32)【優先日】2014年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519050439
【氏名又は名称】インヒブルクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン ピー.エッケルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー.ティンマー
(72)【発明者】
【氏名】クイン ドゥブロー
【審査官】 松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523900(JP,A)
【文献】 特表2011−502126(JP,A)
【文献】 特表2014−528913(JP,A)
【文献】 特表2014−519308(JP,A)
【文献】 特表2002−537810(JP,A)
【文献】 特表2015−504675(JP,A)
【文献】 特表2016−500371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常セリンプロテアーゼ発現又は活性に関連する疾患又は障害の症状を治療又は軽減する方法、感染のリスクを低下させる方法、あるいは感染のリスクを低めながら、炎症又は炎症性疾患若しくは障害の症状を治療又は軽減する方法において、それを必要とする対象で使用するための、修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチド操作可能的に連結され少なくとも1つのヒトセルピンポリペプチドを含む、単離された融合タンパク質であって、ここで修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドは、配列番号60、69又は70のアミノ酸配列を含み、ここで前記修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドは、位置M252(配列番号60の残基34)及び/又は位置M428(配列番号60の残基210)において変異を含む、単離された融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、さらに:
サイトカイン標識化ポリペプチド、又はサイトカイン標的化ポリペプチドに由来する配列;
WAPドメイン含有ポリペプチド、又はWAPドメイン含有ポリペプチド由来の配列;及び
アルブミンポリペプチド、又は血清アルブミンポリペプチド由来のアミノ酸配列、
から成る群から選択される追加のポリペプチドを含む、請求項1に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒトセルピンポリペプチドが、ヒトα−1抗トリプシン(AAT)ポリペプチドであるか、又はヒトAATポリペプチドに由来する、請求項1に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項4】
前記AATポリペプチドが、配列番号2又は配列番号80のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項5】
前記AATポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を含むAATの反応部位ループを含む、請求項3に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項6】
前記AATポリペプチドが、配列番号32又は33のアミノ酸配列を含む、AATの変異導入された反応部位ループを含む、請求項3に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項7】
前記修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドが、位置T256(配列番号60の残基38)において変異をさらに含む、請求項1に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項8】
前記修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドが、配列番号73のアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項9】
前記セルピンポリペプチド及び前記修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドが、ンカー領域介して、操作可能的に連結されており任意にここで前記リンカー領域が、ペプチド配列を含む、請求項1又は3に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項11】
前記修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチドが、位置T246(配列番号60の残基38)において変異を含む、請求項に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項に記載の単離された融合タンパク質
【請求項13】
前記炎症性疾患若しくは障害が、以下:α−1抗トリプシン欠損症、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アレルギー性喘息、嚢胞性線維症、肺癌、虚血−再灌流傷害、心臓移植後の虚血/再灌流傷害、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、I型及び/又はII型糖尿病、肺炎、敗血症、移植片対宿主病(GVHD)、創傷治癒、全身性エリテマトーデス、及び多発性硬化症から選択されるものであって前記感染が、細菌感染、真菌感染又はウイルス感染から選択される、請求項に記載の単離された融合タンパク質
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年10月27日に出願された米国特許出願第14/524,832号の利益を主張するものであり、その内容は全て引用により本明細書に組込まれる。
【0002】
配列表
2015年10月26日に作成され、そして228KBのサイズである、「INHI002002WO_SeqList.txt」という名称のテキストファイルの内容は、それらの全体を、引用により本明細書に組込まれる。
【0003】
本発明は、分子、特にポリペプチド、より特定には、セルピンポリペプチド又はセルピンポリペプチド由来のアミノ酸配列及び第二ポリペプチドを含む融合タンパク質に関する。さらに、本発明は、セルビンポリペプチド、又はセルピンポリペプチドに由来するアミノ酸配列、第二ポリペプチド及び第三ポリペプチドを含む融合タンパク質に関する。特に、本発明は、少なくとも1つのセルピンポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む融合タンパク質、又は少なくとも1つのセルピンポリペプチド、第二ポリペプチド及び第三ポリペプチドを含む融合タンパク質に関し、ここで本発明の融合タンパク質の第二及び第三ポリペプチドは、以下の少なくとも1つであり得る:Fcポリペプチド、又はFcポリペプチド由来のアミノ酸配列;サイトカイン標的化ポリペプチド、又はサイトカイン標的化ポリペプチド由来の配列;WAP含有ポリペプチド、又はWAP含有ポリペプチド由来の配列;又はアルブミンポリペプチド、又は血清アルブミンポリペプチド由来のアミノ酸配列。本発明はまた、そのような分子を、種々の治療又は診断指標に使用する方法、及びそのような分子の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
異常セリンプロテアーゼ活性、又はプロテアーゼ対プロテアーゼインヒビターの不均衡が、プロテアーゼ介在性組織破壊及び炎症応答を導くことができる。従って、異常セリンプロテアーゼ活性及び/又はプロテアーゼ対プロテアーゼインヒビターの不均衡を標的とする治療法及び治療の必要性がある。さらに、増強された治療効果が、異常サイトカインシグナル伝達及びセリンプロテアーゼ活性の減衰を通して得られ得る。さらに、セルピンタンパク質は、抗感染活性を示しているが、炎症性サイトカインの標的化は、感染のリスクを高めることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の融合タンパク質は、炎症性のサイトカイン活性を弱め、そして感染のリスクを制限する可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載される融合タンパク質は、少なくとも1つのセルピンポリペプチド、又はセルピンポリペプチド(ポリペプチド1)由来のアミノ酸配列、及び第二ポリペプチド(ペプチド2)を含む。さらに、本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド、又はセルピンポリペプチド(ポリペプチド1)由来のアミノ酸配列、第二ポリペプチド(ポリペプチド2)、及び第三ポリペプチド(ポリペプチド3)を含む。本明細書において交換可能に使用される場合、用語「融合タンパク質(fusion protein)」及び「融合ポリペプチド(fusion polypeptide)」とは、少なくとも第二ポリペプチド又は少なくとも第二ポリペプチド由来のアミノ酸配列に操作可能的に連結されたセルピンポリペプチド、又はセルピンポリペプチド由来のアミノ酸配列をいう。融合タンパク質の個別化された要素は、例えば、直接的結合、中間体又はスペーサーペプチドの使用、リンカー領域の使用、ヒンジ領域の使用、又はリンカー及びヒンジ領域の両者の使用を包含する種々の手段のいずれかで連結され得る。いくつかの実施形態によれば、リンカー領域は、ヒンジ領域の配列内にあり、又は他方では、ヒンジ領域は、リンカー領域の配列内である。好ましくは、リンカー領域は、ペプチド配列である。例えば、リンカーペプチドは、0〜40個のアミノ酸、例えば0〜35個のアミノ酸、0〜30個のアミノ酸、0〜25個のアミノ酸、又は0〜20個のアミノ酸を含む。好ましくは、ヒンジ領域は、ペプチド配列である。例えば、ヒンジペプチドは、0〜75個のアミノ酸、例えば0〜70個のアミノ酸、0〜65個のアミノ酸又は0〜62個のアミノ酸を含む。融合タンパク質がリンカー領域及びヒンジ領域の両者を含む実施形態によれば、好ましくは、リンカー領域及びヒンジ領域の個々は、ペプチド配列である。それらの実施形態によれば、ヒンジペプチド及びリンカーペプチドは共に、0〜90個のアミノ酸、例えば0〜85個のアミノ酸又は0〜82個のアミノ酸を含む。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及び第二ポリペプチドは、中間結合タンパク質を介して連結され得る。いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のセルピンベース部分及び第二ポリペプチド部分は、非共有的に連結され得る。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、本発明の融合タンパク質は、N末端からC末端方向又はC末端からN末端方向に、以下の式の1つを有することができる:
ポリペプチド1(a) −ヒンジm −ポリペプチド2(b)
ポリペプチド1(a) −リンカーn −ポリペプチド2b)
ポリペプチド1(a) −リンカーn −ヒンジm −ポリペプチド2(b)
ポリペプチド1(a) −ヒンジm −リンカーn −ポリペプチド2(b)
ポリペプチド1(a) −ポリペプチド2(b)−ポリペプチド3(c)
ポリペプチド1(a) −ヒンジm −ポリペプチド2(b)−ヒンジm −ポリペプチド3(c)
ポリペプチド1(a) −リンカーn −ポリペプチド2(b)−リンカーn −ポリペプチド3(c)
ポリペプチド1(a) −ヒンジm −リンカーn −ポリペプチド2(b)−ヒンジm −リンカーn −ポリペプチド3(c)
ポリペプチド1(a) −リンカーn −ヒンジm −ポリペプチド2(b)−リンカーn −ヒンジm−ポリペプチド3(c)
式中、nは、0〜20の整数であり、mは1〜62の整数であり、そしてa、b及びcは少なくとも1の整数である。それらの実施形態は、上記式及びそのいずれかの変形又は組み合わせを含む。例えば、式中のポリペプチドの順序はまた、ポリペプチド3(c) −ポリペプチド1(a)−ポリペプチド2(b)、ポリペプチド2(b)−ポリペプチド 3(c)−ポリペプチド1(a)、又はその何れかの変形又は組み合わせを含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、ポリペプチド1配列は、セルピンポリペプチドを含む。セルピンは、プロテアーゼを阻害できる一組のタンパク質として最初に同定された類似する構造を有するタンパク質群である。本明細書に提供される融合タンパク質における使用のために適切なセルピンタンパク質は、非制限的例によれば:α−1抗トリプシン(AAT)、抗トリプシン関連タンパク質(SERPINA2)、α1−抗キモトリプシン(SERPINA3)、カリスタチン(SERPINA4)、単球好中球エラスターゼ阻害剤(SERPINB1)、PI−6(SERPINB6)、抗トロンビン(SERPINC1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(SERPINE1)、α2 − 抗プラスミン(SERPINF2)、補体1インヒビター(SERPING1)、及びニューロセルピン(SERPINI1)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、ポリペプチド1配列は、α−1抗トリプシン(AAT)ポリペプチド配列、又はAAT由来のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、ポリペプチド1配列は、AATタンパク質の一部を含む。いくつかの実施形態によれば、ポリペプチド1配列は、AATタンパク質の少なくとも反応部位ループ部分を含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、少なくともアミノ酸配列:
【表1】
を含む。
【0011】
好ましい実施形態によれば、AATポリペプチド配列又はAAT由来のアミノ酸配列は、ヒトAATポリペプチド配列であるか、又はそれに由来する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を含む:
【表2】
【0013】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、AATポリペプチド配列は、以下のものであるか、又はAATポリペプチド由来のアミノ酸配列は、以下のものに由来する:GenBank受託番号AAB59495.1、CAJ15161.1、P01009.3、AAB59375.1、AAA51546.1、CAA25838.1、NP_001002235.1、CAA34982.1、NP_001002236.1、NP_000286.3、NP_001121179.1、NP_001121178.1、NP_001121177.1、NP_001121176.16、NP_001121175.1、NP_001121174.1、NP_001121172.1及び/又はAAA51547.1で示されるヒトAATポリペプチド配列の1又は2以上の配列。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、1又は2以上の変異を含む。例えば、融合タンパク質は、その融合タンパク質のセルピン部分において、メチオニン(Met)残基で少なくとも1つの変異を含む。それらのMet変異においては、Met残基が、任意のアミノ酸により置換され得る。例えば、Met残基は、疎水性側鎖を有するアミノ酸、例えばロイシン(Leu、L)により置換され得る。理論に束縛されるものではないが、Met変異(単数又は複数)は、本発明の融合タンパク質の酸化及びそれに続く阻害活性の不活性化を妨げる。いくつかの実施形態によれば、Met残基は、荷電された残基、例えばグルタミン酸(Glu、E)により置換され得る。いくつかの実施形態によれば、Met変異は、AATポリペプチドの位置358に存在する。例えば、Met変異は、Met358Leu(M358L)である。いくつかの実施形態によれば、Met変異は、AATポリペプチドの位置351に存在する。例えば、Met変異は、Met351Glu(M351E)である。いくつかの実施形態によれば、Met変異は、AATポリペプチドの位置351及び位置358に存在し、例えば、Met変異は、Met351Glu(M351E)及びMet358Leu(M358L)である。例えば、融合AATポリペプチドのこの変異体の反応部位ループは、以下の配列を有する:
【表3】
いくつかの実施形態によれば、Met変異は、AATポリペプチドの位置351及び位置358に存在し、例えば、Met変異は、Met351Leu(M351L)及びMet358Leu(M358L)である。例えば、融合AATポリペプチドのこの変異体の反応部位ループは、以下の配列を有する:
【表4】
【0016】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、M351及びM358で修飾された変異反応部位ループを含む全長ヒトポリペプチド配列を含み、以下のアミノ酸配列を有する:
【表5】
【0017】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、セルピン融合タンパク質の第二ポリペプチド(ポリペプチド2)は、Fcポリペプチドであるか、又はFcポリペプチド由来である。それらの実施形態は、「セルピン−Fc融合タンパク質(serpin−Fc fusion proteins)」として集合的に言及される。本明細書に記載されるセルピン−Fc融合タンパク質は、少なくとも、セルピンポリペプチド、又はセルピン由来のアミノ酸配列、及びFcポリペプチド又はFcポリペプチド由来のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、単一のセルピンポリペプチドを含む。他の実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、2つ以上のセルピンポリペプチドを含み、そしてそれらの実施形態は、「セルピン(a’)−Fc融合タンパク質」(式中、(a’)は少なくとも2の整数である)として、本明細書において集合的に言及される。いくつかの実施形態によれば、セルピン(a’)−Fc融合タンパク質中の各セルピンポリペプチドは、同じアミノ酸配列を含む。他の実施形態によれば、セルピン(a’)−Fc融合タンパク質中の各セルピンポリペプチドは、異なったアミノ酸配列を有するセルピンポリペプチドを含む。セルピン(a’)−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、融合タンパク質内の任意の位置に位置することができる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、配列番号1のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体は、配列番号32又は33のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2、32、33又は80のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、以下のものではあるか、又はAATポリペプチド由来のアミノ酸配列は、以下のものに由来する:GenBank受託番号AAB59495.1、CAJ15161.1、P01009.3、AAB59375.1、AAA51546.1、CAA25838.1、NP_001002235.1、CAA34982.1、NP_001002236.1、NP_000286.3、NP_001121179.1、NP_001121178.1、NP_001121177.1、NP_001121176.16、NP_001121175.1、NP_001121174.1、NP_001121172.1及び/又はAAA51547.1で示されるヒトAATポリペプチド配列の1又は2以上の配列。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、ヒトFcポリペプチド、例えばヒトIgG Fcポリペプチド配列、又はヒトIgG Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。例えば、いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG1 Fcポリペプチド、又はヒトIgG1 Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG2 Fcポリペプチド、又はヒトIgG2 Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG3 Fcポリペプチド、又はヒトIgG3 Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG4 Fcポリペプチド、又はヒトIgG4 Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgM Fcポリペプチド、又はヒトIgM Fcポリペプチド配列に由来するアミノ酸配列である。
【0022】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するIgG1 Fcポリペプチド配列を含む:
【表6】
【0023】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、その融合タンパク質のFcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含み、ここで前記Fcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgG1 Fcポリペプチド配列を含む。
【表7】
【0024】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、配列番号3又は43のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトIgG1 Fcポリペプチド配列を含む。
【0025】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、FcRn結合を増強するために、変異導入されるか、又は修飾される。それらの実施形態によれば、変異導入されたか又は修飾されたFcポリペプチドは、以下の変異を含む:Met252Tyr、Ser254Thr、Thr256Glu (M252Y、S256T、T256E) 又はMet428Leu及びAsn434Ser (M428L、N434S) 又は Met428Val 及び Asn434Ser (M428V、N434S)(Kabat番号付けシステムを用いる)。いくつかの実施形態によれば、変異導入されたか又は修飾されたFcポリペプチドは、Met252Tyr(M252Y)、Ser254Thr(S256T)、Thr256Glu(T256E)、Met428Leu(M428L)、Met428Val(M428V)、Asn434Ser(N434S)及びそれらの組合せから成る群から選択される1又は2以上の変異を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド部分は、Fc−介在性二量体化を破壊するために、変異導入されるか、又は他方では、修飾される。それらの実施形態によれば、融合タンパク質は、天然では、単量体である。
【0026】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、変異導入されるか、又は修飾される。いくつかの実施形態によれば、変異導入されるか又は修飾されたFcポリペプチドは、M252、T246、M428及びそれらの組合せから選択された位置で、1又は2以上の変異を含む。いくつかの実施形態によれば、変異導入されるか又は修飾されたFcポリペプチドは、以下の変異を含む:Met252Ile、Thr256Asp、Met428Leu (M252I、T256D、M428L)(Kabat番号付けシステムを用いる)。
【0027】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号3の残基22、26及び198、又は配列番号43の残基32、36及び208に対応する、残基M252、T256及びM428に変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表8】
【0028】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号3の残基22、26及び198、又は配列番号43の残基32、36及び208に対応する、残基M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表9】
【0029】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、修飾されたヒトIgG1 Fcポリペプチド配列を含み、ここで上記に示される配列番号3の残基6又は配列番号43の残基16に対応する残基G236が欠失されており、そして以下のアミノ酸配列を有する:
【表10】
【0030】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、修飾されたヒトIgG1 Fcポリペプチド配列を含み、ここで上記に示される配列番号3の残基6又は配列番号委43の残基16に対応する残基G236は欠失されており、そして融合タンパク質は以下のアミノ酸配列を少なくとも含む:
【表11】
【0031】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号3の残基4及び5、又は配列番号43の残基14及び15に対応する残基L234及びL235で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表12】
【0032】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号3の残基4及び5、又は配列番号43の残基14及び15に対応する残基L234及びL235で変異を含み、そして融合タンパク質は以下のアミノ配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表13】
【0033】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234及びL235で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表14】
【0034】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234及びL235で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表15】
【0035】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234、L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表16】
【0036】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234、L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表17】
【0037】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG1 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG1 Fcポリペプチドは、配列番号44、45、46、47、48、49、50、51、52又は53のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である修飾されたヒトIgG1 Fcポリペプチド配列を含む。
【0038】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgG2 Fcポリペプチド配列を含む:
【表18】
【0039】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトIgG2 Fcポリペプチド配列を含む。
【0040】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG2 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG2 Fcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する修飾されたヒトIgG2 Fcポリペプチド配列を含む:
【表19】
【0041】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG2 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG2 Fcポリペプチドは、配列番号54のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である修飾されたヒトIgG2 Fcポリペプチド配列を含む。
【0042】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgG3 Fcポリペプチド配列を含む:
【表20】
【0043】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトIgG3 Fcポリペプチド配列を含む。
【0044】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する修飾されたヒトIgG3 Fcポリペプチド配列を含む:
【表21】
【0045】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号5の残基6に対応する残基G236が欠失され、そして以下のアミノ酸配列を有する、修飾されたヒトIgG3 Fcポリペプチド配列を含む:
【表22】
【0046】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号5の残基4及び5に対応する残基L234及びL235で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表23】
【0047】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234及びL235で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列を有する:
【表24】
【0048】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、残基G236で欠失及び残基L234、L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列を有する:
【表25】
【0049】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG3 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG3 Fcポリペプチドは、配列番号55、56、57、58又は59のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である修飾されたヒトIgG3 Fcポリペプチド配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、ヒトIgG3 Fc領域は、抗体のグリコシル化を防止するためにアミノ酸Asn297(Kabat番号付け)で修飾され、例えばAsn297Ala(N297A)を有する。いくつかの実施形態によれば、ヒトIgG3 Fc領域は、半減期を延ばすために、アミノ酸435で修飾され、例えばArg435His(R435H)を有する。いくつかの実施形態によれば、ヒトIgG3 Fc領域は、Lys447を欠いている(Kabat et al 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interestの欧州インデックス)。
【0051】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含む:
【表26】
【0052】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、融合タンパク質のFcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含み、ここでFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含む:
【表27】
【0053】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、配列番号6又は60のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含む。
【0054】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号5の残基6の残基22、26及び19、又は配列番号60の残基34、38及び210に対応する残基M252、T256及びM428での変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表28】
【0055】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基22、26及び197又は配列番号60の残基34、38及び210に対応する、残基M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を少なくとも含む:
【表29】
【0056】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基6又、配列番号60の残基19に対応する残基G236が欠失されている修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含み、そして以下のアミノ酸配列を有する:
【表30】
【0057】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基6又、配列番号60の残基19に対応する、残基G236が欠失されている修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含み、そして融合タンパク質が、少なくとも以下のアミノ酸配列を有する:
【表31】
【0058】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基5、又は配列番号60の残基17に対応する、残基L235で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を含む:
【表32】
【0059】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基5、又は配列番号60の残基17に対応する、残基L235で変異を含み、そして融合タンパク質が、少なくとも以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を含む:
【表33】
【0060】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、は上記に示される配列番号6の残基4及び5、又配列番号60の残基16及び17に対応する、残基L234及びL235で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表34】
【0061】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基4及び5、又は配列番号60の残基16及び17に対応する、残基L234及びL235で変異を含み、そして融合タンパク質は、少なくとも以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表35】
【0062】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号60の残基10に対応する、残基S228で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表36】
【0063】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号60の残基10及び17に対応する、残基S228及びL235で変異を含み、そして融合タンパク質が、少なくとも以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を含む:
【表37】
【0064】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基5、22、26及び197、又は配列番号60の残基17、34、38及び210に対応する、残基L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を有する:
【表38】
【0065】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号6の残基5、22、26及び197、又は配列番号60の残基17、34、38及び210に対応する、残基L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質が、少なくとも以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を含む:
【表39】
【0066】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 FcポリペプチドのN末端に結合されるヒンジ領域を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、上記に示される配列番号60の残基10、17、34、38及び210に対応する、残基S228、L235、M252、T256及びM428で変異を含み、そして融合タンパク質が、少なくも以下のアミノ酸配列(変異導入されたアミノ酸残基は囲まれている)を含む:
【表40】
【0067】
本発明の融合タンパク質が修飾されたIgG4 Fcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質の修飾されたIgG4 Fcポリペプチドは、配列番号61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である修飾されたヒトIgG4 Fcポリペプチド配列を含む。
【0068】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するヒトIgM Fcポリペプチド配列を含む:
【表41】
【0069】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトIgM Fcポリペプチド配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそのアミノ酸配列に由来するFcポリペプチド配列に対して操作可能的に連結されるAATタンパク質の反応部位ループ部分のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、配列番号1のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域、例えばグリシン−セリンリンカー又はグリシン−セリン系リンカーを介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、ヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域及びヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。他の実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、直接結合される。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来するFcポリペプチド配列に操作可能的に連結されるAATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体は、配列番号32又は33のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域、例えばグリシン−セリンリンカー又はグリシン−セリン系リンカーを介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、ヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域及びヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。他の実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、直接結合される。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来するFcポリペプチドに操作可能的に連結される配列番号2のアミノ配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来するFcポリペプチド配列に操作可能的に連結される配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、配列番号43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72及び73から成る群から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域、例えばグリシン−セリンリンカー又はグリシン−セリン系リンカーを介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、ヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域及びヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。他の実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、直接結合される。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来するFcポリペプチドに操作可能的に連結される配列番号80のアミノ配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−Fc融合タンパク質は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来するFcポリペプチド配列に操作可能的に連結される配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域、例えばグリシン−セリンリンカー又はグリシン−セリン系リンカーを介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、ヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、リンカー領域及びヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。他の実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びFcポリペプチドは、直接結合される。
【0074】
本明細書において提供される融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、セルピン融合タンパク質の第二ポリペプチド(ポリペプチド2)は、サイトカイン標的化ポリペプチドであるか、又はサイトカイン標的化ポリペプチドに由来する。それらの実施形態は、「セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質」として、本明細書において集合的に言及される。本明細書に記載されるセルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、セルピンポリペプチド、又はセルピンポリペプチド由来のアミノ酸配列、及びサイトカイン標的化ポリペプチド、又はその誘導体を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、単一セルピンポリペプチドを含む。他の実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、2つ以上のセルピンポリペプチドを含み、そしてそれらの実施形態は、「セルピン(a’)−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質」((a’)は少なくとも2の整数である)として、本明細書において集合的に言及される。いくつかの実施形態によれば、セルピン(a’)−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質中の各セルピンポリペプチドは、同じアミノ酸配列を含む。他の実施形態によれば、セルピン(a’)−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質中の各セルピンポリペプチドは、異なったアミノ酸配列を有するセルピンポリペプチドを含む。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質中のサイトカイン標的化ポリペプチドは、サイトカイン受容体であるか、又はサイトカイン受容体に由来する。好ましい実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチド、又はサイトカイン受容体に由来するアミノ酸配列は、ヒトサイトカイン受容体配列であるか、又はそれに由来する。他の実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、抗体又は抗体フラグメント、例えば抗−サイトカイン抗体又は抗−サイトカイン抗体フラグメントである。好ましい実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチド、又は抗体又は抗体フラグメントに由来するアミノ酸配列は、キメラ、ヒト化、又は完全ヒト抗体配列に由来する。用語、抗体フラグメントは、単鎖、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体及び単一ドメイン軽鎖抗体を含む。
【0076】
他の実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、サイトカイン受容体を結合し、そして受容体へのサイトカインの結合を妨げる。他の実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、抗体又は抗体フラグメント、例えば抗−サイトカイン受容体抗体又は抗−サイトカイン受容体抗体フラグメントである。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、配列番号1のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体は、配列番号32又は33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を含むか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列を有する完全ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含むか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2、32、33又は80のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATポリペプチド配列、或いはGenBank受託番号AAB59495.1、CAJ15161.1、P01009.3、AAB59375.1、AAA51546.1、CAA25838.1、NP_001002235.1、CAA34982.1、NP_001002236.1、NP_000286.3、NP_001121179.1、NP_001121178.1、NP_001121177.1、NP_001121176.16、NP_001121175.1、NP_001121174.1、NP_001121172.1及び/又はAAA51547.1で示されるヒトAATポリペプチド配列の1又は2以上の配列であるか、又はそれに由来するAATポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。
【0079】
セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、セルピン−Fc融合タンパク質の一部を組込むことができる。例えば、抗体はFcポリペプチドを含む。従って、サイトカイン標的化ポリペプチドがサイトカイン−標的化抗体であるいくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、セルピン−Fc融合タンパク質の一部を組込むであろう。さらに、治療的に有用であるほとんどの受容体融合タンパク質は、Fc融合タンパク質である。従って、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質がセルピン−サイトカイン受容体融合タンパク質であるいくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、セルピン部分及びサイトカイン受容体部分に加えて、Fcポリペプチドを組込んでもよい。
【0080】
セルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド配列は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73の任意の1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれに由来する。セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質がFcポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド配列は、配列番号3、4、5、6、7、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73のアミノ酸の任意の1つに対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びサイトカイン標的化ポリペプチドは、リンカー領域、例えばグリシン−セリンリンカー又はグリシン−セリン系リンカーを介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びサイトカイン標的化ポリペプチドは、ヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。いくつかの実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びサイトカイン標的化ポリペプチドは、リンカー領域及びヒンジ領域を介して操作可能的に連結される。他の実施形態によれば、セルピンポリペプチド及びサイトカイン標的化ポリペプチドは、直接結合される。
【0081】
本明細書に提供される融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、セルピン融合タンパク質の第二ポリペプチド(ポリペプチド2)は、ホエー酸性タンパク質(WAP)ドメイン含有ポリペプチド、又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列である。それらの実施形態は、「セルピン−WAPドメイン融合タンパク質」として、集合的に本明細書において言及される。セルビン−WAPドメイン融合タンパク質は、少なくともセルピンポリペプチド又は少なくともセルピン由来のアミノ酸配列、WAPドメイン含有ポリペプチド又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質は、単一のセルピンポリペプチドを含む。他の実施形態によれば、セルピン−WAP標的化ポリペプチド融合タンパク質は、複数のセルピンポリペプチドを含む。それらの実施形態は、「セルピン(a’)−WAPドメイン融合タンパク質」((a’)は少なくとも2の整数である)として、本明細書において集合的に言及される。いくつかの実施形態によれば、セルピン(a’)−WAPドメイン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、同じアミノ酸配列を含む。他の実施形態によれば、セルピン(a’)−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、異なったアミノ酸配列を有するセルピンポリペプチドを含む。
【0082】
それらのセルピン−WAPドメイン融合タンパク質は、WAPドメイン含有ポリペプチド、又はWAPドメイン含有ポリペプチドであるか、又はそれに由来するポリペプチド配列を含む。WAPドメインは、特徴的な4−ジスルフィドコア配列(また、4−ジスルフィドコアモチーフとも呼ばれる)に見出される8個のシステイン含有の50個のアミノ酸の進化的に保存された配列モチーフである。WAPドメイン配列モチーフは、多くのタンパク質におけるセリンプロテアーゼ阻害活性により特徴づけられる機能的モチーフである。
【0083】
本明細書に提供される融合タンパク質への使用のために適切なWAPドメイン含有ポリペプチドは、非制限的な例によれば、分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)、エラフィン(Elafin)及びエッピン(Eppin)を含む。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のWAPドメイン含有ポリペプチド配列は、分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)ポリペプチド配列、又はSLPIに由来するアミノ酸配列を含む。それらの実施形態は、「セルピン−SLPI由来の融合タンパク質」として、本明細書において言及される。いくつかの実施形態によれば、SLPIポリペプチド配列は、SLPIタンパク質の一部、例えばWAP2ドメイン、又はその下位部分(sub−portion)を含む。好ましい実施形態によれば、SLPIポリペプチド配列、又はSLPIに由来するアミノ酸配列は、ヒトSLPIポリペプチド配列であるか、又はそれに由来する。
【0085】
本発明のセルビン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、以下のアミノ酸配列を有する全長ヒトSLPIポリペプチド配列を含む:
【表42】
【0086】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、配列番号8のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトSLPIポリペプチド配列を含む。
【0087】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、全長ヒトSLPIポリペプチド配列の一部を含み、ここで前記一部は、以下のアミノ酸配列を有する:
【表43】
【0088】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、配列番号9のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトSLPIポリペプチド配列を含む。
【0089】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、全長ヒトSLPIポリペプチド配列のWAP2ドメインを含み、ここで前記WAP2ドメインは、以下のアミノ酸配列を有する:
【表44】
【0090】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPI配列又はSLPI由来の配列は、配列番号10のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトSLPIポリペプチド配列を含む。
【0091】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、SLPIポリペプチド配列、又はSLPIポリペプチド由来のアミノ酸配列は、GenBank受託番号 CAA28187.1、NP_003055.1、EAW75869.1、P03973.2、AAH20708.1、CAB64235.1、CAA28188.1、AAD19661.1及び/又はBAG35125.1に示されるヒトSLPIポリペプチド配列の1又は2以上の配列であるか、又はそれに由来する。
【0092】
本発明のセルピン−SLPI融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のSLPIポリペプチド配列又はSLPI由来の配列は、メチオニン(Met)残基で修飾されるヒトSLPIポリペプチドを含む。それらのMet変異においては、Met残基が任意のアミノ酸により置換される。例えば、Met残基は、疎水性側鎖を有するアミノ酸、例えばロイシン(Leu、L)又はバリン(Val、V)により置換され得る。理論的に束縛されるものではないが、Met変異(単数又は複数)は、本発明の融合タンパク質の酸化及び続くその阻害活性の不活性化を防止する。いくつかの実施形態によれば、Met変異は、SLPIポリペプチドの位置98に存在する。例えば、セルピン−SLPIの修飾されたSLPIポリペプチド配列は、配列番号8において変異M98L又はM98Vを含む。
【0093】
他の実施形態によれば、融合タンパク質のWAPドメイン含有ポリペプチド配列は、エラフィン(elafin)ポリペプチド配列、又はエラフィン由来のアミノ酸配列を含む。それらの実施形態は、「セルピン−エラフィン融合タンパク質」として、本明細書において言及される。いくつかの実施形態によれば、エラフィンポリペプチド配列は、エラフィンタンパク質の一部、例えばWAPドメイン又はその下部部分を含む。好ましい実施形態によれば、エラフィンポリペプチド配列、又はエラフィン由来のアミノ酸配列は、ヒトエラフィンポリペプチド配列であるか、又はそれに由来する。
【0094】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する全長ヒトエラフィンポリペプチド配列を含む:
【表45】
【0095】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号11のアミノ酸に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトエラフィンポリペプチド配列を含む。
【0096】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する、全長ヒトエラフィンポリペプチド配列の一部を含む:
【表46】
【0097】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトエラフィンポリペプチド配列を含む。
【0098】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する、全長ヒトエラフィンポリペプチド配列のWAPドメインを含む:
【表47】
【0099】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトエラフィンポリペプチド配列を含む。
【0100】
セルピン−エラフィン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、エラフィンポリペプチド配列、又はエラフィンポリペプチドに由来するアミノ酸配列は、GenBank受託番号P19957.3、NP_002629.1、BAA02441.1、EAW75814.1、EAW75813.1、Q8IUB2.1及び/又はNP_542181.1に示されるヒトエラフィンポリペプチド配列の1又は2以上の配列に由来する。
【0101】
他の実施形態によれば、融合タンパク質のWAPドメイン含有ポリペプチド配列は、エッピンポリペプチド配列、又はエッピンポリペプチド由来のアミノ酸配列を含む。それらの実施形態は、「セルピン(a’)−エッピン融合タンパク質」として、本明細書において言及される。いくつかの実施形態によれば、セルピン−エッピン融合タンパク質のエッピンポリペプチド配列は、エッピンタンパク質の一部、例えばWAPドメイン又はその下部部分を含む。好ましい実施形態によれば、エッピンポリペプチド、又はエッピン由来のアミノ酸配列は、ヒトエッピンポリペプチド配列であるか、又はそれに由来する。
【0102】
セルピン−エッピン融合タンパク質のいくつかの実施形態によれば、エッピンポリペプチド配列、又はエッピンポリペプチドに由来するアミノ酸配列は、GenBank受託番号O95925.1、NP_065131.1、AAH44829.2、AAH53369.1、AAG00548.1、AAG00547.1及び/又はAAG00546.1に示されるヒトエッピンポリペプチド配列の1又は2以上の配列に由来する。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、配列番号1のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAP融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体は、配列番号32又は33のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含むか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2、32、33又は80のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATポリペプチド配列又はAATポリペプチドに由来するアミノ酸配列が、GenBank受託番号 AAB59495.1、CAJ15161.1、P01009.3、AAB59375.1、AAA51546.1、CAA25838.1、NP_001002235.1、CAA34982.1、NP_001002236.1、NP_000286.3、NP_001121179.1、NP_001121178.1、NP_001121177.1、NP_001121176.16、NP_001121175.1、NP_001121174.1、NP_001121172.1及び/又はAAA51547.1に示されるヒトAATポリペプチド配列の1又は2以上の配列である、又はそれに由来するものを含む。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質はまた、Fcポリペプチド、又はFcポリペプチドに由来するアミノ酸配列も含み得る。それらの実施形態は、「セルピン−Fc−WAPドメイン融合タンパク質」として、本明細書において、集合的に言及される。それらの実施形態によれば、この用語法によって特定の順序が解釈されるべきではない。例えば、融合タンパク質の順序は、セルピン−Fc−WAPドメイン、セルピン−WAPドメイン−Fc、又はその任意の変型の組合せであり得る。本明細書に記載されるセルピン−Fc−WAPドメイン融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、WAPドメイン含有ポリペプチド又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びFcポリペプチド又はFcポリペプチドに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。
【0106】
セルピン−WAPドメイン融合タンパク質がFcポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド配列は、配列番号3〜7及び43〜73のアミノ酸配列を有し得る。セルピン−WAPドメイン融合タンパク質がFcポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド配列は、配列番号3〜7及び43〜73のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。いくつかの実施形態によれば、セルピン−WAPドメイン融合タンパク質はまた、アルブミンポリペプチド、又はアルブミンポリペプチドに由来するアミノ酸配列も含み得る。それらの実施形態は、「セルピン−アルブミン−WAPドメイン融合タンパク質」として、本明細書において集合的に言及される。それらの実施形態によれば、この用語法によって特定の順序は解釈されない。例えば、融合タンパク質の順序は、セルピン−アルブミン−WAPドメイン、セルピン−WAPドメイン−アルブミン、又はその任意の変型の組合せであり得る。本明細書に記載されるセルピン−アルブミン−WAPドメイン融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、WAPドメイン含有ポリペプチド又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びアルブミンポリペプチド又はアルブミンポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。
【0107】
セルピン−WAPドメイン融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、アルブミンポリペプチド配列は、本明細書に記載される配列番号14〜15のアミノ酸配列を有する。セルピン−WAPドメイン融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、アルブミンポリペプチド配列は、配列番号14又は15のアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、セルピン融合タンパク質の第二ポリペプチド(ポリペプチド2)は、アルブミンポリペプチドであるか、又はアルブミンポリペプチドに由来する。それらの実施形態は、「セルピン(a’)−アルブミン融合タンパク質」として、本明細書において集合的に言及される。本明細書に記載されるセルピン−アルブミン融合タンパク質は、少なくとも、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、及びアルブミンポリペプチド又はアルブミンポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。さらに、本発明は、セルピンアルブミン結合ポリペプチド融合タンパク質に関し、ここでアルブミンは中間体結合分子を介してセルピンに操作可能的に連結される。ここで、セルピンは、ヒト血清アルブミンに非共有結合されるか、又は共有結合される。
【0109】
本発明の融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含む実施形態によれば、融合タンパク質のアルブミンポリペプチド配列は、ヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチド、又はHSAに由来するアミノ酸配列である。いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有するHSAポリペプチド配列を含む:
【表48】
【0110】
本発明の融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のアルブミンポリペプチド配列は、配列番号14のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒト血清アルブミンポリペプチド配列を含む。
【0111】
本発明の融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含む実施形態によれば、融合タンパク質のアルブミンポリペプチド配列は、以下のアミノ酸配列を有するヒト血清アルブミンポリペプチド配列のドメイン3を含む:
【表49】
【0112】
本発明の融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質のアルブミンポリペプチド配列は、配列番号15のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒト血清アルブミンポリペプチド配列を含む。
【0113】
本発明の融合タンパク質がアルブミンポリペプチド配列を含むいくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、中間体アルブミン結合ポリペプチドを介して、ヒト血清アルブミンに連結される。アルブミン結合ポリペプチドは、抗体又は抗体フラグメントであるか、又は抗体フラグメントに由来する。好ましい実施形態によれば、アルブミン結合ポリペプチド、又は抗体又は抗体フラグメント由来するアミノ酸配列は、キメラ、ヒト化、又は完全ヒト抗体配列に由来する.用語、抗体フラグメントとは、単鎖、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体及び単一ドメイン軽鎖抗体を含む。さらに、アルブミン結合ポリペプチドは、アルブミン結合ペプチドであり得る。本発明の別の実施形態は、セルピンアルブミン結合ポリペプチド融合体であり、ここでアルブミン結合ポリペプチドは、連鎖球菌(Streptococcal)プロテインG、又は連鎖球菌プロテインGのドメイン3に由来する配列である。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、セルピン(a’)−アルブミン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATタンパク質の反応部位ループ部分のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分は、配列番号1つのアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルビン−アルブミン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AAT部分の反応部位ループ部分の変異体のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、AATタンパク質の反応部位ループ部分の変異体は、配列番号32又は33のアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−アルブミン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、セルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列を有する全長ヒトAATポリペプチド配列を含むか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態によれば、セルピン−アルブミン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、配列番号2、32、33又は80のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるヒトAATポリペプチド配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、セルピン−アルブミン融合タンパク質のセルピンポリペプチドは、AATポリペプチド配列、又はAATポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含み、そしてそのAATポリペプチド配列又はAATポリペプチドに由来するアミノ酸配列は、GenBank受託番号AAB59495.1、CAJ15161.1、P01009.3、AAB59375.1、AAA51546.1、CAA25838.1、NP_001002235.1、CAA34982.1、NP_001002236.1、NP_000286.3、NP_001121179.1、NP_001121178.1、NP_001121177.1、NP_001121176.16、NP_001121175.1、NP_001121174.1、NP_001121172.1及び/又はAAA51547.1に示されるヒトAATポリペプチド配列の1又は2以上の配列であるか、又はそれに由来する。
【0116】
いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、1又は2以上のタンパク質分解切断部位を変異させることにより、タンパク質分解切断を高め、又は他方では、阻害するために修飾される。いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、未変更の融合タンパク質に比較して、結合及び阻害機能を同時に保持しながら、融合タンパク質のFcエフェクター機能を変更するか、又は他方では、モジュレートするために修飾される。Fcエフェクター機能は、非制限的例によれば、次のものを包含する:Fc受容体結合、Fc受容体への結合に基づく前炎症性メディエーター放出の防止、ファゴサイトーシス、修飾された抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)、修飾された補体依存性細胞毒性(CDC)、FcポリペプチドのAsn297残基(Kabat番号付けの欧州インデックス、Kabat et al 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest)における修飾されたグリコシル化。いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、Fc受容体結合に影響を与えるために、変異導入されるか、又は他方では、修飾される。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、FcRn結合を増強するために修飾される。FcRnへの結合を増強するFcポリペプチド変異の例は、Met252Tyr、Ser254Thr、Thr256Glu (M252Y、S256T、T256E)(Kabat番号付け、Dall’Acqua et al 2006,J.Biol.Chem.Vol.281(33)23514−23524)又はMet428Leu及びAsn434Ser(M428L、N434S)(Zalevsky et al.2010 Nature Biotech.,Vol.28(2)157−159)(Kabat et al.1991 Sequences of Proteins of Immunological Interestの欧州インデックス)又はMet428Val及びAsn434Ser (M428V、N434S)(Kabat番号付けはシステムを用いる)。いくつかの実施形態によれば、変異導入された、又は修飾されたFcポリペプチドは、Met252Tyr(M252Y)、Ser254Thr(S256T)、Thr256Glu(T256E)、Met428Leu (M428L)、Met428Val(M428V)、Asn434Ser(N434S)、及びそれらの組合せから成る群から選択された1又は2以上の変異を含む。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチド部分は、Fc−介在性二量体化を崩壊するために、変異導入されるか、又は他方では、修飾される(Ying et al.2012 J.Biol.Chem.287(23):19399−19408)。それらの実施形態によれば、融合タンパク質は、天然において単量体である。
【0117】
本明細書に提供される融合タンパク質及びその変異体は、セリンプロテアーゼ、例えばヒト好中球エラスターゼ(NE)、すなわち、炎症応答の間、好中球により分泌されるキモトリプシン−フォールドセリンプロテアーゼを阻害することにより、阻害活性を示す。本明細書に提供される融合タンパク質は、セリンプロテアーゼ、例えばヒトセリンプロテアーゼへの結合、又は他方では、そのプロテアーゼとの相互作用に基づいて、セリンプロテアーゼ発現又は活性を、完全に又は一部、低めるか、又は他方では、モジュレートする。セリンプロテアーゼの生物学的機能の低減又はモジュレーションは、融合タンパク質と、ヒトセリンプロテアーゼタンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチドとの間の相互作用に基づいて、完全又は部分的である。本明細書に記載される融合タンパク質との相互作用の不在下、例えば結合の不在下でのセリンプロテアーゼ発現又は活性のレベルに比較して、融合タンパク質の存在下でのセリンプロテアーゼ発現又は活性のレベルが、少なくとも95%、例えば96%、97%、98%、99%又は100%低められる場合、融合タンパク質は、セリンプロテアーゼ発現又は活性を、完全に阻害するとみなされる。本明細書に記載される融合タンパク質との相互作用の不在下、例えば結合の不在下でのセリンプロテアーゼ発現又は活性のレベルに比較して、融合タンパク質の存在下でのセリンプロテアーゼ発現又は活性のレベルが、少なくとも95%以下、例えば10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85% 又は90%低められる場合、融合タンパク質は、セリンプロテアーゼ発現又は活性を、部分的に阻害するとみなされる。
【0118】
本明細書に記載される融合タンパク質は、種々の治療、診断及び予防指標において有用である。例えば、融合タンパク質は、対象における種々の疾患及び障害の治療において有用である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質を包含するセルピン融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)欠損症、気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アレルギー性喘息、嚢胞性線維症、肺癌、虚血−再灌流傷害(例えば、心臓移植後の虚血/再灌流傷害を含む)、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、I型及び/又はII型糖尿病、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、肺炎、敗血症、移植片対宿主病(GVHD)、創傷治癒、全身性エリテマトーデス、及び多発性硬化症から選択された疾患又は障害を有するか、又はそのリスクがあるものとして同定されている対象における疾患又は障害の症状を治療し、軽減し、その進行を改善し、そして/又は遅延することにおいて有用である。
【0119】
本発明の医薬組成物は、本発明の融合タンパク質(修飾された融合タンパク質及び他の変異体を含む)と、適切な担体とを共に含む。それらの医薬組成物は、キット、例えば診断キットに含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1A-B】図1Aは、本発明のセルピン−Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態の概略図である。セルピンは、融合タンパク質内の任意の位置に位置することができる。複数のセルピンポリペプチドを組込むセルピン−Fc融合タンパク質もまた、表される。図1Bは、血清由来AAT(レーン1)、AAT−Fc1(レーン2、ヒトIgG1 Fc)及びAAT−EL−Fc1(レーン3、ATT内のMet351Glu、Met358Leu変異、ヒトIgG1 Fc)を示すSDS−PAGEゲルの写真である。
図1C-D】図1Cは、AAT−Fc融合タンパク質による好中球エラスターゼ活性の阻害を示すグラフである。図1Dは、Fcポリペプチド当たり2つのAATポリペプチドを有する、四価AAT−Fc−AATを示すSDS−PAGEゲルの写真である。
図1E-F】図1Eは、四価のAAT−Fc−AAT融合タンパク質による好中球エステラーゼ活性の阻害を示すグラフである。図1Fは、プロテインA樹脂からの低pH溶出の効果を示すグラフであり、ここで低pHで溶出されるAAT−Fc融合タンパク質のNE阻害能力が劇的に低められる。
図1G-H】図1Gは、二重変異体AAT−EL−Fc(Met351Glu、Met358Leu変異)が、野生型AAT及び単一変異体AAT−EM−Fc(Met351Glu)に比較して、H不活性化(濃)に対して耐性であることを示すグラフである。図1Hは、10mg/kgのタンパク質を投与されたラット(3匹のラット/試験タンパク質)における、AAT−Fcと比較した、血清由来のAAT(sdAAT)の血清クリアランス速度を示すグラフである。AAT−Fcの半減期は、sdAATの半減期よりも実質的に長い。
図2A-B】図2Aは、本発明のセルピン−サイトカイン標的化融合タンパク質のいくつかの実施形態の概略図である。セルピンは、抗体の重鎖、軽鎖、又は両者の何れかに融合され得る。セルピン−サイトカイン受容体融合タンパク質もまた示されている。図2Bは、D2E7抗体(レーン1)、及び重鎖に融合されるAATを有するD2E7抗体(レーン2)を示すSDS−PAGEゲルの写真である。
図2C図2Cは、AATに融合されたD2E7抗体による好中球エラスターゼ活性の阻害を示すグラフである。血清由来のAATが、正の対照として示され、そしてD2E7抗体は単独で、NE阻害について負の対照として示されている。
図3A図3Aは、セルピン−Fc−WAP融合タンパク質のいくつかの実施形態の概略図である。
図3B-C】図3Bは、AAT−Fc−ELAFIN(レーン1)及びAAT−Fc−SLPI(レーン2)を示すSDS−PAGEゲルの写真である。図3Cは、AAT−Fc−FLAFIN融合タンパク質及びAAT−Fc−SLPI融合タンパク質による好中球エラスターゼ活性の阻害を示すグラフである。AAT−Fc融合タンパク質及び血清由来のAATは、比較のために含まれる。
図4A-B】図4Aは、AAT−HSA融合タンパク質のいくつかの実施形態の概略図である。図4Bは、AAT−HSA融合を示すSDS−PAGEゲルの写真である。
図4C図4Cは、血清由来のAATに比較した、AAT−HSAによる好中球エラスターゼの阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0121】
ヒト好中球エラスターゼ(NE)は、炎症の間、好中球により分泌されるキモトリプシン−フォールドセリンプロテアーゼである。NEの異常活性が、エラスチン組織の進行性分解、及び肺気腫及び肺線維症を導く肺の肺胞構造の遅い破壊をもたらす(Lungarella et al.2008 Int.J.Biochem.Cell Biol.40:1287)。しばしば、誤ったNE活性は、その天然のインヒビターであるα−1抗トリプシン(AAT)によるプロテアーゼの不均衡によるものである。この不均衡は、喫煙者及び嚢胞性線維症(CF)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の肺で観察されるように、肺への増強された好中球浸潤に起因する。逆に、通常、ATTの肝臓における凝集及び蓄積を引起す点変異の結果、ATTの欠損は、検査されていないNE活性に暴露された肺を残す。AAT欠損を有する個人は、気腫、COPD、肝臓疾患、及び多くの他の病状のリスクが高い。
【0122】
AAT欠損は、およそ、10万人のアメリカ人に影響を及ぼし(Alpha−1 Foundationの推定)、そして苦しんでいる人々の多くは、30代及び40代で死亡している。現在、ATT欠損の治療薬としてFDAが承認した薬剤はごくわずかである(Prolastin(登録商標)、Aralast(登録商標)、Zemaira(登録商標)、Glassia(商標))。各薬剤は、プールされたヒト血漿に由来する天然のAATであり、これは、予想される臨床的要求を満たすには不十分のようである。さらに、それらの製品は、短い血清半減期(およそ5日のT1/2)を有し、そして高い用量(60mg/kg体重)の毎週の注入を必要とする。それらの薬剤についての現在の市場は、およそ4億ドルと見積もられている。AAT様薬剤の市場は、AAT欠損を有する個人の95%ほどが未診断であるとの推定、及びそれら薬剤がAAT欠損でない個人において増強されたNE活性により特徴づけられる病理(例えば、嚢胞性線維症(CF)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喫煙誘発性肺気腫及び/又はCOPD)に効果的な治療法である可能性を有する事実に基づいて、かなり拡大する可能性が高い。
【0123】
AATは、広範囲の抗炎症性活性を有することが示唆されている(Tilg et al.1993 J.Exp.Med.178:1629−1636,Libert et al.1996 Immunol.157:5126−5129,Pott et al.,Journal of Leukocyte Biology 85 2009,Janciauskiene et al.2007 J.Biol.Chem.282(12):8573−8582,Nita et al.2007 Int.J.Biochem.Cell Biol.39:1165−1176)。最近、AATは、一般的に示唆されている炎症性肺疾患外で、多くのヒト病状を治療するのに有用であり得るという証拠があがっている。ヒトAATは、実験的な自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床的及び組織病理学的徴候からマウスを保護することを示しており、それが自己免疫疾患、例えば多発性硬化症又は全身性エリテマトーデスの潜在的な治療になりうることを示唆している(Subramanian et al.2011 Metab.Brain Dis.26:107−113)。血清AATは、移植片対宿主病(GVHD)の齧歯類モデルにおいて活性を示しており(Tawara et al.2011 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109:564−569,Marcondes et al.2011 Blood Nov.3;118(18):5031−9)、これは、ステロイド非応答性GVHD(NCTO1523821)の個人を治療するためにAATを用いたヒト臨床試験を導いて来た。さらに、AATは、I型及びII型糖尿病の動物モデルにおいて効果的であり、炎症を減衰させ、膵島細胞をアポトーシスから保護し、そして耐性膵島細胞同種移植を可能にする(Zhang et al.2007 Diabetes 56:1316−1323,Lewis et al.2005 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:12153−12158,Lewis et al.2008 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:16236−16241,Kalis et al.2010 Islets 2:185−189)。現在、血清由来のAAT産物を用いたI型糖尿病の早期ヒト臨床試験が数多く存在する(NCT01183468、NCT01319331、NCT01304537)。
【0124】
現在の血清由来のAAT産物は、病原性ウイルスの除去を確実にするために大規模な精製及び試験を受けるが、しかしながら、感染性因子の伝達のリスクは完全には排除され得ない。さらに、血清は限定されており、これが、血清由来のAATの産生能力を制限する。血清由来の製品及び生産上の問題の懸念に取り組む試みは、組み換えAATの発現を目的としている。しかしながら、20年の研究の後、治療的に実行可能な組換えAATの生成はまだ市場に到達していない(Karnaukhova et al.2006 Amino Acids 30:317)。血漿由来の製品と同様に、AATの組換え型は、血清半減期が短く、生産収率が低く、そして肺への分布が悪いという欠点がある。
【0125】
本発明の融合タンパク質は、修飾されていないAAT分子に比較して、増強された機能性を有する。新生児Fc受容体(FcRn)と相互作用する第二ポリペプチドとのAATポリペプチドの融合体は、血清半減期を高める働きをし、患者に必要とされる投薬の利益を提供する。融合タンパク質のそれらのFcRn相互作用ポリペプチドは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はIgM及びヒトアルブミンの誘導体に由来する免疫グロブリン(Ig)Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、融合タンパク質は、酸化による不活性化に対して、分子をより耐性にするAAT部分を有する変異を組込む。例えば、Met351Glu、Met358Leu (AAT−EL−Fc)は、H22酸化による耐性不活性化を示す(図1G)。AATは天然の抗炎症タンパク質であるが、本発明のいくつかの実施形態は、AATポリペプチド及びサイトカイン標的化ポリペプチドの融合を介して増強された炎症減衰能力を提供する。AAT及び第二ポリペプチドからの二重抗炎症性機能のカップリングは、いずれかのポリペプチド自身よりも、より強力な治療タンパク質を提供する。さらに、AATの抗感染活性のカップリングは、ほとんどのサイトカイン標的化生物製剤の感染リスクを軽減するであろう。いくつかの実施形態は、AAT−ポリペプチド及びWAPドメイン含有ポリペプチドの融合を介して、より強力な抗炎症性及び抗感染性タンパク質を提供する。本発明の融合タンパク質は、高い治療有用性であり、そして現在の血清由来のAAT産物よりも優れていると期待されている。
【0126】
組み換えAATの半減期を延長するために、所望のタンパク質産物がAATに続くFcドメイン(AAT−Fc(IgG1)、AAT−Fc(IgG2)、AAT−Fc(IgG3)、AAT−Fc(IgG4)、AAT−Fc(IgM))、又はAATに続くHSAとなるように、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はIgMのFcドメイン又はHSAを用いてAAT遺伝子融合を創造するために組み換えDNA技法を使用した。いくつかのタンパク質、タンパク質ドメイン又はペプチドへのHSAのFcドメインの融合がそれらの半減期を延長することができることは知られているが(例えば、Jazayeri et al.BioDrugs 22,11−26,Huang et al.(2009)Curr Opin Biotechnol 20,692−699,Kontermann et al.(2009)BioDrugs 23,93−109,Schmidt et al.(2009)Curr Opin Drug Discov Devel 12,284−295を参照のこと)、AATに融合されるFcドメイン又はHSAが適切なフォールディング及びNE阻害活性の維持を可能にするかどうか、又は組換えAATの半減期を延長できるかどうかは未知である。本発明の融合タンパク質は、NEの強力なインヒビターであり、延長された血清半減期を有し、いくつかの実施形態によれば、酸化に対して耐性があることが示されている。他の実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、サイトカイン標的化ポリペプチド及びWAPドメイン含有ポリペプチドを包含する他の機能的ポリペプチドの組込みにより異なった性質を有する。
【0127】
好中球エラスターゼ(NE)の主要源である好中球はしばしば、NEの分泌と同時に酸化的バーストを受ける。従って、本発明の融合タンパク質が酸化環境において活性であることは、大きな治療的有用性を有する。Met351及び/又はMet358での反応部位ループ内でのAATの酸化は、AATの好中球エラスターゼを阻害する能力を弱める。図1Gに示されるように、酸化不活性化は、配列番号32で示される変異Met351Glu及びMet358Leu(M351E/M358L)を介して低められ得る。さらに、Met252及びMet438でのFc領域の酸化は、FcRn結合を低め、そして続いて、Fc含有タンパク質の血清半減期を低めることが示されている。Met252及びMet428の変異は、Fc領域の酸化を低める。本発明は、最適化されたAAT−Fc融合タンパク質を開示し、ここでそれは、M351及びM358での変異を介して融合タンパク質のAAT部分内の酸化−不活性化;及びM252及びM428での変異を介してFcRn相互作用の酸化破壊に対して耐性であり、そしてM252I、T256D及びM428Lの変異を介して延長された半減期を有する。
【0128】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、FcRn結合を増強するために変異導入されるか又は修飾される。それらの実施形態によれば、変異導入されたか又は修飾されたFcポリペプチドは以下の変異を含む:Met252Ile、Thr256Asp及びMet428Leu(M252I、T256D、M428L)(Kabat番号付けシステムを用いて)。
【0129】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、修飾されたIgG1 Fcポリペプチドであり、そして融合タンパク質は少なくとも配列番号53のアミノ酸配列を含む。
【0130】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、修飾されたIgG1 Fcポリペプチドであり、そして融合タンパク質は少なくとも配列番号73のアミノ酸配列を含む。
【0131】
本発明の融合タンパク質がFcポリペプチドを含むいくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、Fc−γ受容体(FcgRs)への結合を低減するために変異導入されるか、又は修飾される。いくつかの実施形態によれば、低減されたFcgRs結合は、Asn297でのFcグリコシル化の修飾により達成され得る。例えば、Asn297Ala(N297A) 又はAsn297Gln(N297Q)の変異。いくつかの実施形態によれば、低減されたFcgRs結合は、Fcの下部ヒンジ領域の修飾により達成される。いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG1に由来する。それらの実施形態のいくつかによれば、Kabat番号付けシステムを使用して、Leu234Val及び Leu235Ala (L235V/L235A)の変異及びGly236 (ΔG236)の欠失を介して、下部ヒンジ領域がIgG2のそれを模倣するように修飾される:
【表50】
それらの実施形態のいくつかによれば、融合タンパク質は、配列番号51のアミノ酸配列を少なくとも含む。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、Fcポリペプチドは、ヒトIgG4に由来する。それらの実施形態のいくつかによれば、下部ヒンジ領域は、Leu235Glu(L235E)での変異により修飾される。さらに、FcポリペプチドがIgG4に由来する本発明の形態によれば、ヒンジ領域は、Kabat番号付けシステムを用いて、安定化変異Ser228Pro(S228P)を介して修飾される:
【表51】
それらの実施形態のいくつかによれば、融合タンパク質は、配列番号70のアミノ酸配列を少なくとも含む。
【0133】
本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、及び第二ポリペプチドを少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、例えば、本発明は、ヒトIgG1−Fc、IgG2−Fc、IgG3−Fc、IgG4−Fc、IgM−Fc又はHSA誘導体に融合されるセルピンポリペプチドを提供する。本明細書に記載されるセルピン−融合体は、種々の徴候、例えば非制限的例によれば、α−1−抗トリプシン(AAT)欠損症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アレルギー性喘息、嚢胞性線維症、肺癌、虚血−再灌流傷害(例えば心臓移植後の虚血/再灌流傷害を含む)、心筋梗塞、慢性関節リウマチ、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、I型及び/又はII型糖尿病、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、肺炎、敗血症、移植片対宿主病(GVHD)、創傷治癒、全身性エリテマトーデス、及び多発性硬化症の治療において有用であると期待されている。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸、及び第二ポリペプチドを含む。例えば、本発明は、ヒトIgG1−Fc、IgG2−Fc、IgG3−Fc、IgG4−Fc、IgM−Fc又はHSA誘導体に融合されるα−1−抗トリプシン(AAT)を提供する。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びサイトカイン標的化ポリペプチド又はサイトカイン標的化ポリペプチドに由来するアミノ酸を少なくとも含む。例えば、本発明は、ヒトサイトカイン受容体若しくはその誘導体に融合されるセルピンポリペプチド、又はセルピンポリペプチドに由来する配列を提供する。本発明の別の実施形態は、サイトカイン標的化抗体、例えば抗−サイトカイン抗体に融合される、又はサイトカイン標的化抗体、例えば抗−サイトカイン抗体に由来する配列に融合される、又はサイトカイン標的化抗体フラグメント、例えば抗−サイトカイン抗体フラグメントに由来する配列に融合されるセルピンポリペプチド若しくはセルピンポリペプチド由来の配列を提供する。例えば、本発明は、サイトカイン標的化ポリペプチドに融合されるセルピンポリペプチド若しくはセルピンポリペプチドに由来する配列を提供し、ここで前記サイトカイン標的化ポリペプチドは、以下のヒトサイトカインのいずれかを結合する:TNFα、IgE、IL−12、IL−23、IL−6、IL−1α、IL−1β、IL−17、IL−13、IL−4、IL−10、IL−2、IL−18、IL−27又はIL−32。
【0136】
例えば、いくつかの実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、TNFαを標的化し、そして以下のTNFα−標的化ポリペプチド、又はTNFα−標的化ポリペプチドに由来する配列の何れかを含む:Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Simponi(登録商標)、Cimiza(登録商標)、Enbrel(登録商標)又はATN−103及びATN−192。
【0137】
例えば、いくつかの実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、IgEを標的化し、そして以下のIgE−標的化ポリペプチド、又はIgE−標的化ポリペプチドに由来する配列の何れかを含む:Xolair又はFcεRI。
【0138】
例えば、いくつかの実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、IL−12及びIL−23の共有されたp40サブユニットを標的化し、そしてStelara(登録商標)ポリペプチド、又はStelara(登録商標)ポリペプチドに由来する配列を含む。
【0139】
例えば、サイトカイン標的化ポリペプチド、Stelara(登録商標)は、IL−13を標的化し、そしてCDP7766ポリペプチド、又はCDP7766ポリペプチドに由来する配列を含む。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド、又はAATに由来するアミノ酸配列、及びサイトカイン標的化ポリペプチド、又はサイトカイン標的化ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。例えば、本発明は、サイトカイン標的化ポリペプチドに融合されるα−1−抗トリプシンインヒビター(AAT)を提供し、ここで前記サイトカイン標的化ポリペプチドは、以下のヒトサイトカインの何れを結合する:TNFα、IgE、IL−6、IL−1α、IL−1β、IL−12、IL−17、IL−13、IL−23、IL−4、IL−10、IL−2、IL−18、IL−27、又はIL−32。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、サイトカイン受容体に結合し、そしてサイトカインの結合を阻害する。例えば、本発明は、サイトカイン受容体標的化抗体に融合されるセルピンを含む。例えば、本発明は、サイトカイン標的化ポリペプチドに融合されるα−1−抗トリプシンインヒビター(AAT)を提供し、ここで前記サイトカイン標的化ポリペプチドは、以下のヒトサイトカインの何れを結合する:TNFα、IgE、IL−6、IL−1α、IL−1β、IL−12、IL−17、IL−13、IL−23、IL−12及びIL−23のp40サブユニット、IL−4、IL−10、IL−2、IL−18、IL−27、又はIL−32。
【0142】
例えば、いくつかの実施形態によれば、サイトカイン標的化ポリペプチドは、IL−6受容体を標的化し、そしてActemra(登録商標)ポリペプチド(欧州特許公報第0628639号に記載される)、又はALX−0061ポリペプチド(国際公開第2010/115998号に記載される)、又はActemra(登録商標)ポリペプチドに由来する配列、又はALX−0061ポリペプチドを含む。
【0143】
例えば、サイトカイン標的化ポリペプチドのActemra(登録商標)は、IL−6受容体を標的化し、そしてトシリズマブ(tocilizumab)ポリペプチド、又はトシリズマブポリペプチドに由来する配列を含む。
【0144】
タンパク質療法による炎症性サイトカイン及び免疫刺激剤の標的化は、多数の炎症状態において臨床的成功を立証している。サイトカイン標的剤として使用される最も一般的なタンパク質は、可溶性サイトカイン受容体、及びモノクローナル抗体及びそのフラグメントである。サイトカインを標的化した場合の有意な欠点は、TNFα標的化生物製剤、Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Simponi(登録商標)、Cimiza(登録商標)、及びEnbrel(登録商標)、及びIL−12/23p40標的化抗体、Stelara(登録商標)により証明されているように、それらの患者における感染のリスクを高くすることである。これは、患者において免疫抑制を誘導する炎症性サイトカインを標的化することの共通の問題である可能性が高い。AAT及び他のセルピンタンパク質は、それらが抗感染及び抗炎症活性を示す点で興味深い。従って、本発明のセルピン−サイトカイン標的化ポリペプチド融合タンパク質は、感染のリスクを軽減しながら、異常サイトカイン活性を弱め得る。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、WAPドメイン含有ポリペプチド又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びFcポリペプチド又はFcポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。例えば、本発明は、セルピンポリペプチド、WAPドメイン含有ポリペプチド、及び任意の機能的組合せで共に操作可能的に連結されるヒトIgG1−Fc、IgG2−Fc、IgG3−Fc、IgG4−Fc又はIgM−Fc誘導体を提供する。いくつかの実施形態によれば、WAPドメイン含有タンパク質は、ヒトSLPIであるか、又はヒトSLPIに由来する。他の実施形態によれば、WAPドメイン含有タンパク質は、ヒトELAFINであるか、又はヒトELAFINに由来する。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸配列、及びSLPIポリペプチド又はSLPIに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、AATポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸配列、及びELAFINポリペプチド又はエラフィンに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。
【0146】
SLPI及びエラフィンは、セリンプロテアーゼ阻害活性を示す、WAPドメイン含有タンパク質である。それらの両タンパク質は、機能的に抗炎症性である。さらに、それらのタンパク質は、細菌、ウイルス及び真菌類の多くの株に対して広範な抗感染能力を有する。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、及びヒト血清アルブミン(HSA)ポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。本発明のさらなる実施形態は、セルピン−アルブミン結合ポリペプチド融合タンパク質を含み、ここでアルブミン結合ポリペプチドは、セルピン及びHSAの会合を担っている。それにより、本発明は、セルピンポリペプチド及びHSAポリペプチド、又はセルピンポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来する配列の共有及び非共有結合を含む。例えば、本発明は、ヒトHSA又はHSA誘導体、又はHSA結合ペプチド若しくはポリペプチドに融合されるセルピンポリペプチド提供する。
【0148】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸配列、及びHSAポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。例えば、本発明は、HSA又はHSAに由来するフラグメント、又はアルブミン結合ポリペプチドに融合されるα−1−抗トリプシン(AAT)を提供する。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、セルピンポリペプチド又はセルピンに由来するアミノ酸配列、HSAポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びWAPドメイン含有ポリペプチド又はWAPドメイン含有ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸配列、及びHSAポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びSLPIポリペプチド又はSLPIに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。他の実施形態によれば、本明細書に記載される融合タンパク質は、α−1−抗トリプシン(AAT)ポリペプチド又はAATに由来するアミノ酸配列、及びHSAポリペプチド又はHSAポリペプチドに由来するアミノ酸配列、及びエラフィンポリペプチド又はエラフィンに由来するアミノ酸配列を少なくとも含む。
【0150】
本発明の融合タンパク質は、哺乳類細胞発現系において容易に産生され得る。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞、COS細胞、PER.C6(登録商標)、NS0細胞、SP2/0、YB2/0は、本明細書に記載されるセルピン融合タンパク質の発現のために容易に使用され得る。重要なことには、哺乳類細胞発現系は、一般的に、治療使用のためにより最適であるタンパク質を生成する。細菌、昆虫又は酵母に基づく発現系とは対照的に、哺乳類細胞発現系は、天然のヒトタンパク質に見出されるそれらに類似するか又は同じであるグリコシル化パターンを有するタンパク質を産生する。タンパク質の適切なグリコシル化は、血清安定性、薬物動態、生体内分布、タンパク質のフォールディング及び機能性に大きな影響を与え得る。従って、哺乳類発現系における治療タンパク質の産生能力は、他の系列より優れた利点を有する。さらに、哺乳類発現系(例えば、CHO、NS0、PER.C6(登録商標)細胞)のほとんどは、臨床的要求を満たす治療用タンパク質を産生するために商業的製造施設で容易に調整され得る。本明細書に記載される融合タンパク質は、天然形のAATよりも増強された機能性を有し、そして臨床的及び商業的供給のために、哺乳類発現系において産生され得る。本発明のいくつかの実施形態は、NEを阻害するそれらの能力を保持するセルピン融合タンパク質の単離を可能にする精製システムを含む。重要なことには、本発明の精製方法は、今日の商業的哺乳類細胞ベースの製造工程に容易に組込まれ得る。
【0151】
特に定義されていない限り、本発明に関連して使用される化学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するであろう。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は、複数形を含み、そして複数形の用語は単数形を含むであろう。一般的に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、及びタンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法及び技術は、当技術分野において周知であり、そして一般的に使用される。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用される標準技法が使用される。酵素反応及び精製技法は、製造業者の仕様に従って、又は技術分野で一般的に、又は本明細書に記載されるように実施される。前述の技法及び手順は一般的に、当業界において良く知られている従来の方法に従って、及び本明細書を通して引用され議論されている種々の一般的及びより具体的な参考文献に記載されるようにして実施される。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照のこと。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、及び薬学的及び医学化学に関連して使用される命名法、及び実験手順及び技法は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬調製、処方及び送達、及び患者の治療に使用される標準技法が使用される。患者という用語は、ヒト及び動物対象を含む。
【0152】
本開示に従った治療実体の投与が、改善された導入、送達、耐性及び同様のものを提供するために、製剤中に組込まれる適切な担体、賦形剤及び他の剤と共に投与されるであろうことは理解されるであろう。多数の適切な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方に見出され得る:Blaug,Seymour による、Remington’s Pharmaceutical Sciences (15th ed,Mack Publishing Company,Easton,PA(1975)),特に、Chapter 87。それらの製剤は例えば、粉末、ペースト、軟膏、ジェリー、ワックス、オイル、脂質、小胞(例えば、リポフェクチン(登録商標))含有脂質(カチオン又はアニオン性)、DNAコンジュゲート、無水吸収性ペースト、水中油及び油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル及び半固体混合物含有カーボワックスを包含する。前述の混合物の何れでも、本開示に従った治療及び療法において適切であるが、但し、製剤中の活性成分は、製剤により不活性化されず、そして製剤は投与経路と生理学的に適合し、且つ許容される。また、薬剤師に良く知られている、製剤、賦形剤及び担体に関連する追加の情報については、またBaldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210−8(2000),Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000),Charman WN“Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.”J.Pharm.Sci.89(8):967−78(2000),Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA J.Pharm.Sci.Technol.52:238−311(1998)及びそこにおける引用文献を参照のこと。
【0153】
本発明の融合タンパク質を含む本発明の治療用製剤は、対象における異常セリンプロテアーゼ活性に関連する疾患又は障害に関連する症状を治療するか、又は軽減するために使用される。本発明はまた、対象における異常セリンプロテアーゼ活性に関連する疾患又は障害に関連する症状を治療するか、又は軽減する方法も提供する。治療レジメは、種々の臨床的及び/又は実験的手段の何れかを含む、標準方法を用いて、異常セリンプロテアーゼ活性に関連する疾患又は障害(又は進行のリスク)を有する対象、例えばヒト患者を同定することにより実施される。用語、患者は、ヒト及び動物対象を包含する。用語、対象は、ヒト及び他の動物を包含する。
【0154】
異常セリンプロテアーゼ活性に関連する特定の疾患又は障害を診断するか、又は治療するための何れか既知の方法と関連して、治療の有効性が決定される。異常セリンプロテアーゼ活性に関連する疾患又は障害の1又は2以上の症状の軽減は、融合タンパク質が臨床的利益をもたらすことを示す。
【0155】
所望する特異性を有する融合タンパク質のスクリーニング方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素アッセイ、フローサイトメトリー、及び当技術分野で公知の他の免疫学的に媒介される技術を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0156】
本明細書に記載される融合タンパク質は、例えば適切な生理学的サンプル内のそれらの標的のレベルの測定への使用、診断方法への使用、タンパク質のイメージングへの使用などのために、セリンプロテアーゼなどの標的の局在化及び/又は定量化に関する当該分野で公知の方法に使用され得る。交換可能的に使用される用語、「生理学的サンプル」及び「生物学的サンプル」とは、対象から単離された組織、細胞及び生物学的流体、並びに対象内に存在する組織、細胞及び流体を包含するものである。従って、血清、血漿又はリンパ液を含む血液の分画又は成分は、用語、「生理学的サンプル」及び「生物学的サンプル」の使用に包含される。
【0157】
所定の実施形態によれば、標的結合ドメインを含む、所定の標的、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は相同体に対して特異的な融合タンパク質が、薬理学的活性化合物(この後、「治療薬」として言及される)として使用される。
【0158】
本発明の融合タンパク質は、標準技法、例えば免疫親和性、クロマトグラフィー又は免疫沈澱を用いて、特定の標的を単離するために使用され得る。検出は、検出可能物質への抗体のカップリング(すなわち、物理的結合)により促進され得る。検出可能物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質を包含する。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを包含し;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを包含し;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジンアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンを包含し;発光物質の例は、ルミノールを包含し;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを包含し;そして適切な放射性物質の例は、125I、131I,35Sは又は3Hを包含する。
【0159】
本発明の融合タンパク質の治療的有効量は、一般的に、治療目的を達成するために必要な量に関する。上記に示されるように、これは、融合タンパク質と、ある場合、標的の機能を干渉するその標的との間の結合相互作用であり得る。投与される必要がある量はさらに、その特定標的のための融合タンパク質の結合親和性に依存し、そしてまた、投与された融合タンパク質が、それが投与される他の対象の自由体積から枯渇される速度にも依存するであろう。融合タンパク質又はそのフラグメントの治療有効量の通常の範囲は、非制限的例によれば、約0.1mg/kg体重〜約250mg/kg体重であり得る。通常の投与頻度は例えば、毎日2度〜月1度であってもよい。
【0160】
融合タンパク質フラグメントが使用される場合、標的に対して特異的に結合する最少の阻害フラグメントが好ましい。例えば、標的に結合する能力を保持するペプチド分子が設計され得る。そのようなペプチドは、組換えDNA技法により、化学的に合成される及び/又は生成され得る。(例えば、Marasco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993)を参照のこと)。製剤はまた、治療される特定の徴候に必要な場合、互いに悪影響を与えない補完的活性を有する、複数の活性化合物を含むこともできる。或いは、又は、さらに、組成物は、その機能を増強する剤、例えば細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤、増殖阻害剤、抗炎症剤又は抗感染剤を含み得る。そのような分子は、意図される目的のために効果的である量で、組み合わせて適切に存在する。
【0161】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技法又は界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)、又はマイクロエマルジョンに封入され得る。
【0162】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、無菌濾過膜を通しての濾過により容易に達成される。
【0163】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例は、融合タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを包含し、ここで前記マトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形で存在する。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタノートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−クリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能マイクロスフェア)、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を包含する。ポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸は100日間にわたって分子の放出を可能にするが、特定のハイドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。
医薬組成物
【0164】
本発明の融合タンパク質(本明細書においては、「活性化合物」としても言及される)、及びその誘導体、フラグメント、類似体及び相同体は、投与のために適切な医薬組成物中に組込まれ得る。そのような組成物の典型的には、融合タンパク質及び医薬的に許容できる担体を含む。本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容できる担体(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、医薬投与と適合できる、何れか及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、及び同様のものを含むことが意図される。適切な担体は、参照により本明細書に組込まれる、この分解においては標準的参考テキストであるRemington’s Pharmaceutical Scienceの最新版に記載される。そのような担体又は希釈剤の好ましい例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンを包含するが、但しそれらだけには限定されない。リポソーム及び非水性ビヒクル、例えば固定油がまた使用され得る。医薬活性物質のためのそのような媒体及び剤の使用は、当業界においては良く知られている。任意の従来の媒体又は剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物へのその使用が企画される。補助活性化合物もまた、組成物中に組込まれ得る。
【0165】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合できるよう製剤化される。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、及び直腸投与を包含する。非経口、皮内又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は次の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、及び浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウム及びデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムにより調節され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラス若しくはプラスチックから製造される複数回投与バイアルに封入され得る。
【0166】
注射使用に適した医薬組成物は、無菌注射可能溶液又は分散液の即時調製のための、無菌水溶液(水溶性)又は分散液、及び無菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝溶液(PBS)を包含する。すべての場合、組成物は、容易な注射針通過まで無菌で且つ流体であるべきである。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきであり、そして微生物、例えば細菌及び真菌類の汚染作用に対して保護されるべきである。担体は、例えば水エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール及び同様のもの)及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合に必要とされる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同様のものにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを、組成物に含むことによりもたらされ得る。
【0167】
無菌注射用溶液は、適切な溶媒中、必要とされる量での活性成分を、上記に列挙される成分の1つ又は組み合わせと共に組込むことにより、必要な場合、続いて、濾過減菌により調整され得る。一般的に、分散液は、基本的分散媒及び上記の列挙されるそれらからの必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組込むことにより調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、活性成分及びその前もって減菌濾過された溶液からの任意の追加の所望する成分を生成する、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0168】
経口組成物は一般的に不活性希釈剤又は食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入されるか、又は錠剤に圧縮され得る。経口治療投与のためには、活性化合物は、賦形剤と共に組込まれ、そして錠剤、トローチ又はカプセルの形で使用される。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして使用のための液体担体を用いて調製され得、ここで液体担体中の化合物は、経口適用され、そしてスウィッシュされ、そして吐き出されるか、又は飲み込まれる。医薬的に適合できる結合剤、及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチ及び同様のものは、次の成分の何れか、又は類似する性質の化合物を含むことができる:結合剤、例えば微晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えば澱粉又はラクトース;崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はステロート(Sterotes);滑剤、例えばコロイド状二酸化珪素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;又は風味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料。
【0169】
吸入による投与のために、化合物は、適切な推進剤、例えばガス、例えば二酸化炭素を含む加圧された容器又はディスペンサー、又はネブライザーからエアロゾル噴霧の形で送達される。
【0170】
全身性投与はまた、経粘膜又は経皮手段によるものであっても良い。経粘膜又は経皮投与のためには、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は一般的に当業界において知られており、そして例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を包含する。経粘膜投与は、鼻腔内スプレー又は坐剤の使用を介して達成され得る。経皮投与のためには、活性化合物は、当業界において一般的に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル又はクリーム中に配合される。
【0171】
化合物はまた、直腸送達のために、坐剤(例えば、従来の坐剤基剤、例えばココアバター及び他のグリセリドと共に)又は保持浣腸の形態で調製され得る。
【0172】
1つの実施形態によれば、活性化合物は、身体からの急速な排除に対して化合物を保護するであろう担体、例えばインプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む、制御性放出製剤と共に調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。そのような製剤の調製方法は、当業者に明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation 及びNova Pharmaceuticals,Incから市販されている。リポソーム懸濁液がまた、医薬的に許容される担体として使用され得る。それらは、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に知られている方法に従って調製され得る。
【0173】
投与の容易性及び投与量の均一性のための単位剤形で経口又は非経口組成物を製剤化することが特に好都合である。単位剤形とは、本明細書において使用される場合、治療される対象のための単位用量として適した物理的に別個の単位を意味し;各単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望する治療効果を生成するよう計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、及び個体の治療のためのそのような活性化合物を配合する技術的に固有の制限により決定され、そしてそれらに直接的に依存する。
【0174】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、容器、パック又はディスペンサーに含まれ得る。
【0175】
本発明は、次の実施例にさらに記載されるが、それらは本明細書に記載される本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0176】
実施例1:AAT−Fc融合タンパク質及び変異体
【0177】
本発明のAAT−Fc融合タンパク質の例ではあるが、但し非制限的な例は、以下の配列を含む。それらの例は、ヒンジ配列及び/又はリンカー配列を含むが、本発明の融合タンパク質は、長さ及び/又は柔軟性で適した任意のヒンジ配列及び/又はリンカー配列を用いて製造され得る。他方は、融合タンパク質は、ヒンジ及び/又はリンカー配列を用いないで製造され得る。例えば、ポリペプチド成分は、直接結合され得る。
【0178】
例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、本明細書に記載されるATT−hFc1(ヒトIgG1 Fc)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号2)、そして融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれている(配列番号3)。
【表52】
【0179】
本明細書に記載される、例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、ATT−hFc2(ヒトIgG2 Fc)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号2)、そして融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれている(配列番号4)。
【表53】
【0180】
本明細書に記載される例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、AAT−MM−EL−hFc1(ヒトIgG1 Fc、Met351Glu/Met358Leu)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号34)、融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれ(配列番号3)、そしてMet351Glu変異は囲まれ、そしてMet358Leu変異はグレーで網掛されている。
【表54】
【0181】
本明細書に記載される例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、AAT−MM−EL−hFc2(ヒトIgG2 Fc、Met351Glu/Met358Leu)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号34)、融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれ(配列番号4)、そしてMet351Glu変異は囲まれ、そしてMet358Leu変異はグレーで網掛されている。
【表55】
【0182】
本明細書に記載される例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、AAT−MM−LL−hFc1(ヒトIgG1 Fc、Met351Leu/Met358Leu)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号35)、融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれ(配列番号3)、そしてMet351Leu変異は黒で網掛され、そしてMet358Leu変異はグレーで網掛されている。
【表56】
【0183】
本明細書に記載される例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、AAT−MM:LL−hFc2(ヒトIgG2 Fc、Met351Leu/Met358Leu)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号35)、融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれ(配列番号4)、そしてMet351Leu変異は黒で網掛され、そしてMet358Leu変異はグレーで網掛されている。
【表57】
【0184】
本明細書に記載される例示的なAAT−Fc融合タンパク質は、AAT−hFc1−AAT(ヒトIgG1)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ(配列番号2)、融合タンパク質のIgG−Fcポリペプチド部分は斜体で書かれている(配列番号3)。
【表58】
AAT−EL−Fc−IgG1−DV,ΔG,IDL(AAT:Met351Glu/Met358Leu;FcIgG1:Leu234Val/Leu235Ala,欠失されたGly236,Met252Ile,Thr256Asp,Met428Leu)
【表59】
AAT−EL−Fc−IgG4−PE,IDL(AAT:Met351Glu/Met358Leu;Fc IgG4:Ser228Pro Leu235Glu,Met252Ile,Thr256Asp,Met428Leu)
【表60】
【0185】
それらの例示的なAAT−Fc融合タンパク質を、次の技法を用いて製造した。
【0186】
ヒトAATをコードする遺伝子を、ヒト肝臓cDNA(Zyagen)からPCR増幅した。AAT又はFc領域をコードする遺伝子内の特異的な点変異を、オーバーラッピングPCRにより生成した。AATコード遺伝子を、ヒンジ領域、続いてCH2ドメイン、及びヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はIgMのCH3ドメインをコードする遺伝子と共に、AAT遺伝子挿入部位の上流に哺乳類シグナル配列を含む哺乳類発現ベクター中にクローンニングした。それらの発現ベクターを、哺乳類細胞(特に、HEK293又はCHO細胞)中にトランスフェクトし、そして8%CO下で37℃で数日間、増殖した。組換えAAT−Fc融合タンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーにより、発現細胞上清液から精製した。重要なことには、ほぼ中性のpH緩衝液を使用し(Gentle Ag/Ab Elution Buffer,Thermo Scientific)、プロテインA樹脂からAAT−Fc融合タンパク質を溶出した。AAT−Fc融合タンパク質は、NEを阻害するAATの能力が、恐らくAATの低pH介在性オリゴマー化のために、低pH処理後に損なわれるので、標準の低pH溶出を用いると、プロテインAから溶出され得ない。図1Fは、好中球エラスターゼを阻害するAATの能力に対する低pH溶出の効果を示す。AAT−Fc融合タンパク質を、プロテインA及びほぼ中性のpHの溶出緩衝液、又はCaptureSelect(登録商標)α−1抗トリプシン親和性マトリックス(BAC BV)の何れかにより精製することができる。
【0187】
精製されたAAT−Fc融合タンパク質を、好中球エラスターゼ(NE)を阻害するそれらの能力を決定することにより、活性について試験した。図1B及び1Dは、精製された血清由来のAAT(sdAAT)及びAAT−Fc融合タンパク質の還元SDS−PAGEゲルを示す(Fig 1B−レーン1:sdAAT、レーン2:AAT−Fc(配列番号16)、レーン3:AAT−EL−Fc(配列番号18)、Fig 1D AAT−Fc−AAT(配列番号 20))。タンパク質を、クーマシーブルーによる染色により可視化した。
【0188】
ヒト好中球エラスターゼ(NE)活性をモニターするために、蛍光マイクロプレートアッセイを使用した。阻害活性を、次のアッセイを用いて、残留NE活性の付随する低下により測定した。このアッセイ緩衝液は、100mMのトリス(pH7.4)、500mMのNaCl、及び0.0005%Triton X−100から構成される。ヒトNEを、5nM(但し、1〜20nMも使用され得る)の最終濃度で使用した。蛍光ペプチド基質AAVP−AMCを、アッセイにおいて100μMの最終濃度で使用する。Molecular Devices製のGemini EMプレートリーダーを用いて、それぞれ370nm及び440nmの励起波長及び発光波長、及び420nmのカットオフを用いてのアッセイ動態を読み取る。アッセイは、10分間、5〜10秒ごとに室温スキャンで読み取る。Vmax/秒は、残留NE活性に対応し、これは阻害剤の各濃度についてプロットされる。x軸の切片は、アッセイにおけるNEの出発濃度を完全に不活性化するのに必要とされる阻害剤の濃度を示す。ヒト血清由来のAAT(sdAAT)を、それらのアッセイにおいて陽性対照として使用した。AAT−Fc融合タンパク質は、図1Cに示されるように、強力なNE阻害活性を示す。単一のFcポリペプチドに融合される2つのAATポリペプチド(AAT−Fc−AAT)が存在する融合体は、sdAAT、及び単一のAATポリペプチドを含むAAT−Fc融合タンパク質の両者よりも増強した効力を示す(図1E)。ここで示されたそれらの所見は、AATがFc領域に融合され、そしてNEを阻害するその能力を維持することができることを、初めて示している。特に興味深いことには、AAT−Fc−AAT融合タンパク質がより強力なNEインヒビターであることが見出された。
【0189】
図1Fは、酸化による不活性化に対するAAT−EL−Fc (M351E、M358L)融合タンパク質の耐性を示す。AAT融合タンパク質、AAT−Fc (wt)、AAT−EL−Fc (M351E、M358L)及び AAT−EM−Fc (M351E)を、33mMのH22により処理し、そしてNE阻害アッセイにおいて未処理の融合タンパク質と比較した。AAT−EL−FcによるNEの阻害は、試験された他のタンパク質とは逆に、酸化に含まれていなかった。
【0190】
さらに、AAT−Fc融合タンパク質は、血清由来のAATと比較して、ラットにおいて、より長い血清半減期を示した(図1H)。それらの研究においては、各試験タンパク質当たり3匹のラットに、10mg/kgのsdAAT又はAAT−FcをI.V.注射した。血清サンプルを、48時間にわたって、種々の時点で採取した。血清AAT濃度を、ELISAを用いて測定した。これらの発見は、本発明の融合タンパク質が改善された薬物動態学的特性を有し、そして多数のヒト炎症状態及び感染性疾患を治療するために血清由来のAATより優れた治療形式であることを実証する。

実施例2:AAT−TNFα標的化分子融合タンパク質
【0191】
本明細書に提供される研究は、抗−TNFα抗体又はTNα受容体の誘導体に融合されたヒトAATを含む組換えAAT誘導体のいくつかの非制限的例を記載する。それらの例は、本発明の異なった特性をさらに示すために、下記に提供される。それらの例はまた、本発明を実施するための有用な方法論も示す。それらの例は、請求の範囲を制限せず、且つ制限するものではない。
【0192】
下記の融合タンパク質は、(i)抗−TNFα抗体D2E7(またAdalimumab又はHumira(登録商標)として知られている)、又は(ii)II型TNFα受容体(TNFR2−ECD)の細胞ドメインからであるか、又はそれらに由来するサイトカイン標的化ポリペプチド配列を含む。融合タンパク質のAATポリペプチド部分は、下線が引かれ、抗体定常領域(CH1−ヒンジ−CH2−CH3、又はCL)は斜体で書かれ、そしてD2E7−VH、D2E7−VK及びTNFR2−ECDは太字で示されている。それらの例は、ヒンジ配列及び/又はリンカー配列を含むが、本発明の融合タンパク質は、長さ及び/又は柔軟性に関して適切な任意のヒンジ配列及び/又はリンカー配列を用いて製造され得る。他方では、融合タンパク質は、ヒンジ及び/又はリンカー配列を用いないで、製造され得る。
【0193】
例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、本明細書に記載されるD2E7−軽鎖−AAT(GS)リンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、D2E7−VKは太字で示され(配列番号37)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号38)。
【表61】
【0194】
例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、本明細書に記載されるD2E7−軽鎖−AAT ASTGSリンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、D2E7−VKは太字で示され(配列番号37)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号38)。
【表62】
【0195】
例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、本明細書に記載されるD2E7−重鎖−AAT(GS)リンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、D2E7−VHは太字で示され(配列番号39)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号40)。
【表63】
【0196】
例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、本明細書に記載されるD2E7−重鎖−AAT ASTGSリンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、D2E7−VHは太字で示され(配列番号39)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号40)。
【表64】
【0197】
本明細書に記載される例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、TNFR2−ECD−Fc1−AAT(G3S)2リンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、TNFR2−ECDは太字で示され(配列番号41)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号42)。
【表65】
【0198】
本明細書に記載される例示的なAAT−TNFα融合タンパク質は、TNFR2−ECD−Fc1-AAT ASTGSリンカーである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、TNFR2−ECDは太字で示され(配列番号41)、そして抗体定常領域は斜体で書かれている(配列番号42)。
【表66】
【0199】
それらの例示的なAAT−TNFα標的化分子融合タンパク質を、次の技法を用いて製造した。
【0200】
抗−TNFα抗体D2E7の可変重鎖(VH)及び可変κ(VK)領域をコードする遺伝子を、遺伝子合成より生成した。D2E7−VH遺伝子を、VHドメイン挿入部位(2E7−LC)の上流に哺乳類分泌シグナル配列を含む哺乳類発現ベクターへ、CH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインから成る、ヒトIgG1抗体重鎖定常領域をコードする遺伝子と共にインフレームでクローニングした。D2E7−VK遺伝子を、VKドメイン挿入部位(2E7−LC)の上流に哺乳類分泌シグナル配列を含む哺乳類発現ベクターへ、ヒト抗体κ軽鎖定常(CL)ドメインと共にインフレームでクローニングした。AATコード遺伝子及び隣接する5’リンカー配列を、上記哺乳類発現ベクター中にて配列をコードするD2E7重鎖遺伝子(D2E7−HC−AAT)のCH3ドメイン、又はD2E7軽鎖遺伝子(D2E7−LC−AAT)のCLドメインの何れかの3’末端中にインフレームにてクローニングした。TNFα受容体2(TNFR2−ECD)の細胞外ドメインを、遺伝子合成により生成し、そしてヒンジ領域、それに続いてヒトIgG1(hFc1)のCH2ドメイン及びCH3ドメインをコードする遺伝子と共に、TNFR2−ECD挿入部位の上流に哺乳類分泌シグナル配列を含む哺乳類発現ベクター中にインフレームでクローニングした。AATコード遺伝子及び隣接する5’リンカー配列を、TNFR2−ECD−hFc1をコードする遺伝子の3’末端にインフレームで、哺乳類発現ベクター(TNFR2−ECD−hFc1−AAT)中にクローニングした。
【0201】
D2E7−HC−AAT発現ベクターを、D2E7−LC又はD2E7−LC−AAT発現ベクターの何れかと共に、哺乳類細胞(特に、HER293又はCHO細胞)中に同時にトランスフェクトし、重鎖のC末端、又は重鎖及び軽鎖の両者のC末端に融合されるAATを有するD2E7抗体をそれぞれ生成した。D2E7−LC−AATを、D2E7−HC発現ベクターと共に、哺乳類細胞中に同時トランスフェクトし、軽鎖のC末端に融合されるAATを有するD2E7抗体を生成した。TNFR2−hFc1−AAT発現ベクターを、哺乳類細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、8%CO2下で37℃で数日間、増殖した。
【0202】
組み換えAAT−TNFα標的化融合タンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーにより発現細胞上清液から精製した。ほぼ中性のpH緩衝液を使用し(Gentle Ag/Ab Elution Buffer,Thermo Scientific)、プロテイン樹脂から、AAT−TNFα標的化融合タンパク質を溶出した。
【0203】
図2Bは、D2E7抗体のみ(レーン1)、及びAATがD2E7の重鎖に融合される変異体(レーン2)のSDS−PAGEゲルを示す。タンパク質を、クーマシーブルーによる染色により可視化した。
【0204】
精製されたAAT−TNFα標的化分子融合タンパク質を、好中球エラスターゼを阻害するそれらの能力を決定することにより、活性について試験した。ヒト血清由来のAAT(sdAAT)を、それらのアッセイにおける陽性対照として使用した。NE阻害アッセイを、上記のようにして実施した。図2Cは、sdAATに関するものであり、AAT−TNFα標的化分子融合タンパク質が好中球エラスターゼの類似する阻害性を示すことを実証し、このことは、AATの阻害能力が抗体へのその融合により損なわれていないことを示している。

実施例3:AAT−Fc−SLPI及びAAT−Fc−エラフィン(Elafin)
【0205】
本明細書に提供される研究は、WAPドメイン含有タンパク質に融合されるヒトAATを含む組換えAAT誘導体のいくつかの非制限的例を記載する。それらの例は、本発明の異なった特徴をさらに示すために、下記に提供される。それらの例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を示す。融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ、Fc部分は斜体で書かれ、そしてWAPドメイン含有ポリペプチドは太字で表示されている。それらの例は、ヒンジ配列及び/又はリンカー配列を含むが、本発明の融合タンパク質は、長さ及び/又は柔軟性において適切な任意のヒンジ配列及び/又はリンカー配列を用いて製造され得る。他方では、融合タンパク質は、ヒンジ及び/又はリンカー配列を用いないで製造され得る。例えば、ポリペプチド成分は直接結合され得る。
【0206】
本明細書に記載される、例示的なAAT−Fc−SLPI融合タンパク質は、AAT−hFc1−SLPI(ヒトIgG1 Fc)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、Fc部分は斜体で書かれ(配列番号3)、そしてWAPドメイン含有ポリペプチドは太字で書かれている(配列番号9)
【表67】
【0207】
本明細書に記載される、例示的なAAT−Fc−SLPI融合タンパク質は、AAT−hFc1−SLPI(ヒトIgG1 Fc)である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、Fc部分は斜体で書かれ(配列番号3)、そしてWAPドメイン含有ポリペプチドは太字で書かれている(配列番号12)
【表68】
【0208】
SLPI及びエラフィンをコードする遺伝子を、ヒト脾臓cDNA(Zyagen)からPCR増幅した。それらの遺伝子を、実施例1の哺乳類発現ベクター中にクローニングし、ここでSLPI又はエラフィンは、AAT−Fc遺伝子とともにインフレームで挿入された。それらの発現ベクターを、哺乳類細胞(特に、HEK293又はCHO細胞)中にトランスフェクトし、そして8%CO下で37℃で数日間、増殖した。組換えAAT−Fc−WAPドメイン融合タンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーにより、発現細胞上清液から精製した。ほぼ中性のpHの緩衝液(Gentle Ag/Ab Elution Buffer,Thermo Scientific)を使用し、プロテインA樹脂からAAT−Fc−WAPドメイン融合タンパク質を溶出した。
【0209】
図3Bは、AAT−Fc−WAP融合タンパク質のSDS−pAGEゲルを示す(レーン1:AAT−Fc−エラフィン、レーン2:AAT−Fc−SLPI)。タンパク質を、クーマシーブルーによる染色により可視化した。精製されたAAT−Fc−WAPドメイン融合タンパク質を、好中球エラスターゼを阻害するそれらの能力を決定することにより、活性について試験した。NE阻害アッセイを、上記のようにして実施した。ヒト血清由来のAAT(sdAAT)及びAAT−Fc融合タンパク質を、それらのアッセイにおいて陽性対照として使用した。sdAATと比較して、AAT−Fc−WAP標的化分子融合タンパク質は、好中球エラスターゼのNE阻害の増強された能力を示す(図3C)。

実施例4:AAT−アルブミン
【0210】
本明細書に提供される研究は、WAPドメイン含有タンパク質に融合されるヒトAATを含む組換えAAT誘導体のいくつかの非制限的例を記載する。それらの例は、本発明の異なった特徴をさらに示すために、下記に提供される。それらの例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を示す。それらの例は、本発明の請求項を制限せず、そして制限を意図するものではない。AAT部分は下線が引かれ、そしてアルブミン部分は斜体で書かれる。例えば、ポリペプチド成分は、直接結合され得る。
【0211】
本明細書に記載される例示的なAAT−アルブミン融合タンパク質は、AAT−HSAである。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、そしてアルブミンポリペプチドは斜体で書かれる(配列番号14)
【表69】
【0212】
本明細書に記載される例示的なAAT−アルブミン融合タンパク質は、AAT−HSAドメイン3である。下記に示されるように、融合タンパク質のAATポリペプチド部分は下線が引かれ(配列番号2)、そしてアルブミンポリペプチドは斜体で書かれる(配列番号15)
【表70】
【0213】
ヒト血清アルブミン(HSA)をコードする遺伝子を、ヒト肝臓cDNA(Zyagen)からPCR精製した。哺乳類発現ベクターを生成し、ここでHSA又はHSAのドメイン3をコードする遺伝子を、AATの上流に哺乳類分泌シグナル配列を含むAATコード遺伝子の3’末端に、インフレームでクローニングした。
【0214】
発現ベクターを、哺乳類細胞(特に、HEK293又はCHO細胞)中にトランスフェクトし、そして8%CO下で37℃で、数日間、増殖した。組換えAAT−HSA融合タンパク質を、CaptureSelect(登録商標)α−1抗トリプシン親和性マトリックス(BAC BV)を用いて、発現細胞上清液から精製した(結合緩衝液は20mMのトリス、150mMのNaCl(pH7.4)から構成され、溶出緩衝液は20mMのトリス、2MのMgCl(pH7.4)から構成される)。
【0215】
図4Bは、AAT−HSA融合タンパク質のSDS−PAGEゲルを示す。タンパク質を、クーマシーブルーによる染色により可視化した。精製されたAAT−HSA融合タンパク質を、好中球エラスターゼを阻害するそれらの能力を決定することにより、活性について試験した。NE阻害アッセイを、上記のようにして実施した。ヒト血清由来のAAT(sdAAT)を、それらのアッセイにおいて陽性対照として使用した。sdAATに関して、AAT−HSA融合タンパク質は、NE阻害の類似する能力を示し、アルブミンへの融合がNEを阻害するAATの能力を弱めないことを実証する。

他の実施態様
【0216】
本発明はその詳細な説明と併せて説明して来たが、前述の説明は例示であって、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。他の側面、利点及び修飾は、以下の特許請求の範囲内である。
図1A-B】
図1C-D】
図1E-F】
図1G-H】
図2A-B】
図2C
図3A
図3B-C】
図4A-B】
図4C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]