(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動平面取得部は、前記加工エリアにおける3次元座標軸のうち2軸の選択、及び当該2軸で決定される平面の各軸周りの回転角度の入力により、前記移動平面の指定を受け付ける請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法では、各軸のそれぞれを別々に操作する必要があり、さらに、各軸が目的の位置に移動するまでタッチパネル上のアイコンを押し続ける必要があった。また、軸の移動が予め設定された速度に限られるため、目視により所望の位置まで正確に移動させることが難しく、オペレータの負担が大きかった。
【0005】
本発明は、工作機械の軸移動に際してオペレータの負担を低減できる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る制御装置(例えば、後述の数値制御装置1)は、工作機械(例えば、後述の工作機械2)における加工エリア内の位置を示す3次元の機械座標系において、操作対象を移動させるための移動平面の指定を受け付ける移動平面取得部(例えば、後述の移動平面取得部111)と、前記機械座標系から、カメラ(例えば、後述のカメラ3)により撮像された加工エリアの画像における位置を示す2次元の画像座標系へ座標値を変換する機械座標変換部(例えば、後述の機械座標変換部112)と、前記画像座標系から前記機械座標系の前記移動平面内へ座標値を変換する画像座標変換部(例えば、後述の画像座標変換部113)と、前記操作対象の前記機械座標系における現在の位置情報を取得する操作対象位置取得部(例えば、後述の操作対象位置取得部114)と、前記位置情報に対応する前記画像座標系における座標に操作アイコンを重畳して表示させる操作アイコン表示部(例えば、後述の操作アイコン表示部115)と、オペレータにより前記操作アイコンがタッチされた後、スライド操作された先のスライド位置を取得するスライド位置取得部(例えば、後述のスライド位置取得部116)と、前記画像座標系における前記スライド位置が前記機械座標系に変換された座標に基づいて、前記工作機械の軸移動量を計算する移動量計算部(例えば、後述の移動量計算部117)と、計算された前記軸移動量に応じて、前記操作対象を移動させる軸移動部(例えば、後述の軸移動部118)と、を備える。
【0007】
(2) (1)に記載の制御装置において、前記スライド位置取得部は、前記スライド位置として、前記スライド操作の終了位置を取得し、前記移動量計算部は、前記終了位置の前記機械座標系における座標まで、前記操作対象を移動させるための前記工作機械の軸移動量を計算してもよい。
【0008】
(3) (1)に記載の制御装置において、前記スライド位置取得部は、前記スライド操作の開始から終了までの間、周期的に前記スライド位置を取得し、前記移動量計算部は、前記スライド位置が前記機械座標系に変換された座標値を時系列に取得し、当該座標値を順に通過するための軸移動量を計算してもよい。
【0009】
(4) (3)に記載の制御装置において、前記移動量計算部は、時系列に取得した前記座標値を曲線で補間した経路を通過するための軸移動量を計算してもよい。
【0010】
(5) (3)又は(4)に記載の制御装置において、前記スライド位置取得部は、前記スライド操作の開始から終了までの間、周期的に取得した前記スライド位置の個数と、予め指定された前記スライド位置の取得周期とに基づいて前記スライド位置に到達するまでの時間を算出し、前記軸移動部は、前記時間と同一の時間を掛けて前記操作対象を移動させてもよい。
【0011】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の制御装置において、前記スライド位置取得部は、前記スライド位置に到達するまでの時間を取得し、前記軸移動部は、前記時間と同一の時間を掛けて前記操作対象を移動させてもよい。
【0012】
(7) (6)に記載の制御装置において、前記軸移動部は、前記スライド位置を取得後、所定時間後に前記操作対象の移動を開始してもよい。
【0013】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の制御装置において、前記移動平面取得部は、予め設定された複数の候補を示す画像から前記移動平面の選択入力を受け付けてもよい。
【0014】
(9) (1)から(7)のいずれかに記載の制御装置において、前記移動平面取得部は、前記加工エリアにおける3次元座標軸のうち2軸の選択、及び当該2軸で決定される平面の各軸周りの回転角度の入力により、前記移動平面の指定を受け付けてもよい。
【0015】
(10) (1)から(9)のいずれかに記載の制御装置において、前記スライド位置取得部は、前記スライド操作に伴って、前記スライド位置の前記画像座標系から前記機械座標系に変換された座標値を表示してもよい。
【0016】
(11) 本発明に係る制御方法は、工作機械(例えば、後述の工作機械2)における加工エリア内の位置を示す3次元の機械座標系において、操作対象を移動させるための移動平面の指定を受け付ける移動平面取得ステップと、前記機械座標系から、カメラ(例えば、後述のカメラ3)により撮像された加工エリアの画像における位置を示す2次元の画像座標系へ座標値を変換する機械座標変換ステップと、前記画像座標系から前記機械座標系の前記移動平面内へ座標値を変換する画像座標変換ステップと、前記操作対象の前記機械座標系における現在の位置情報を取得する操作対象位置取得ステップと、前記位置情報に対応する前記画像座標系における座標に操作アイコンを重畳して表示させる操作アイコン表示ステップと、オペレータにより前記操作アイコンがタッチされた後、スライド操作された先のスライド位置を取得するスライド位置取得ステップと、前記画像座標系における前記スライド位置が前記機械座標系に変換された座標に基づいて、前記工作機械の軸移動量を計算する移動量計算ステップと、計算された前記軸移動量に応じて、前記操作対象を移動させる軸移動ステップと、をコンピュータ(例えば、後述のCPU11)が実行する。
【0017】
(12) 本発明に係る制御プログラムは、工作機械(例えば、後述の工作機械2)における加工エリア内の位置を示す3次元の機械座標系において、操作対象を移動させるための移動平面の指定を受け付ける移動平面取得ステップと、前記機械座標系から、カメラ(例えば、後述のカメラ3)により撮像された加工エリアの画像における位置を示す2次元の画像座標系へ座標値を変換する機械座標変換ステップと、前記画像座標系から前記機械座標系の前記移動平面内へ座標値を変換する画像座標変換ステップと、前記操作対象の前記機械座標系における現在の位置情報を取得する操作対象位置取得ステップと、前記位置情報に対応する前記画像座標系における座標に操作アイコンを重畳して表示させる操作アイコン表示ステップと、オペレータにより前記操作アイコンがタッチされた後、スライド操作された先のスライド位置を取得するスライド位置取得ステップと、前記画像座標系における前記スライド位置が前記機械座標系に変換された座標に基づいて、前記工作機械の軸移動量を計算する移動量計算ステップと、計算された前記軸移動量に応じて、前記操作対象を移動させる軸移動ステップと、をコンピュータ(例えば、後述のCPU11)に実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、工作機械の軸移動に際してオペレータの負担が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態では、工作機械の制御装置として、後述の各種機能が新たに実装された数値制御装置1を例示するが、制御装置は、既存の数値制御装置とのインタフェースを備えた情報処理装置であってもよい。
【0021】
図1は、本実施形態に係る数値制御装置1の要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
数値制御装置1において、CPU11は、数値制御装置1の全体を制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステムプログラムを、バス20を介して読み出し、このシステムプログラムに従って数値制御装置1の全体を制御する。
RAM13には、一時的な計算データ、表示データ、及び表示器/MDIユニット70を介してオペレータが入力した各種データが格納される。また、一般にRAMへのアクセスはROMへのアクセスよりも高速であることから、CPU11は、ROM12に格納されたシステムプログラムを予めRAM13上に展開しておき、RAM13からシステムプログラムを読み込んで実行してもよい。
不揮発性メモリ14は、磁気記憶装置、フラッシュメモリ、MRAM、FRAM(登録商標)、EEPROM、又はバッテリでバックアップされるSRAM若しくはDRAM等であり、数値制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15、表示器/MDIユニット70又は通信部27を介して入力された加工プログラム等が記憶される。
【0022】
ROM12には、加工プログラムの作成及び編集のために必要とされる編集モードの処理や自動運転のための処理を実施するための各種システムプログラムが予め書き込まれている。
各種加工プログラムは、インタフェース15、表示器/MDIユニット70又は通信部27を介して入力され、不揮発性メモリ14に格納される。
インタフェース15は、数値制御装置1と外部機器72とを接続する。外部機器72からは、加工プログラム及び各種パラメータ等が数値制御装置1に読み込まれる。また、数値制御装置1内で編集された加工プログラムは、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。インタフェース15の具体例としては、RS232C、USB、SATA、PCカードスロット、CFカードスロット、SDカードスロット、イーサネット(登録商標)、Wi−Fi等が挙げられる。インタフェース15は、表示器/MDIユニット70上に存在してもよい。外部機器72の例としては、コンピュータ、USBメモリ、CFast、CFカード、SDカード等が挙げられる。
【0023】
PMC(Programmable Machine Controller)16は、数値制御装置1に内蔵されたシーケンスプログラムにより、工作機械の補助装置(例えば、自動工具交換装置)にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、PMC16は、工作機械の本体に配備された操作盤71の各種スイッチ等の信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU11に渡す。なお、PMC16は、一般に、PLC(Programmable Logic Controller)とも呼ばれる。
操作盤71は、PMC16に接続される。操作盤71は、手動パルス発生器等を備えていてもよい。
表示器/MDIユニット70は、ディスプレイ701(表示部)、及びキーボード若しくはタッチパネル702等の操作部を備えた手動データ入力装置である。インタフェース18は表示用の画面データを表示器/MDIユニット70のディスプレイ701に送るほか、表示器/MDIユニット70の操作部からの指令及びデータを受けてCPU11に渡す。
【0024】
各軸の軸制御回路30〜34は、CPU11からの各軸の移動指令量を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40〜44に出力する。
サーボアンプ40〜44は、この指令を受けて、各軸のサーボモータ50〜54を駆動する。各軸のサーボモータ50〜54は、位置及び速度の検出器を内蔵し、位置及び速度フィードバック信号を軸制御回路30〜34にフィードバックして、位置及び速度のフィードバック制御を行う。
【0025】
スピンドル制御回路60は、工作機械への主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61は、このスピンドル速度信号を受けて、工作機械のスピンドルモータ62を指令された回転速度で回転させ、工具を駆動する。
スピンドルモータ62には、歯車又はベルト等でパルスエンコーダ63が結合され、パルスエンコーダ63が主軸の回転に同期して帰還パルスを出力し、この帰還パルスは、バス20を経由してCPU11によって読み取られる。
【0026】
図2は、本実施形態に係る数値制御装置1におけるCPU11の機能構成を示すブロック図である。
CPU11は、移動平面取得部111と、機械座標変換部112と、画像座標変換部113と、操作対象位置取得部114と、操作アイコン表示部115と、スライド位置取得部116と、移動量計算部117と、軸移動部118とを備える。
これらの各機能部は、ROM12に格納されたシステムプログラムをCPU11が実行することにより実現される。
【0027】
また、ディスプレイ701には、カメラ3により撮像された工作機械2の加工エリアの映像が表示される。なお、カメラ3は、数値制御装置1を介してディスプレイ701と接続されてもよいし、映像信号が直接、ディスプレイ701に入力されてもよい。
ディスプレイ701とタッチパネル702とは、表示器/MDIユニット70において互いに重畳して配置され、タッチ位置におけるディスプレイ701の座標値とタッチパネル702の座標値とは一致する。
【0028】
移動平面取得部111は、工作機械2における加工エリア内の位置を示す3次元の機械座標系において、操作対象を移動させるための移動平面の指定を受け付ける。
数値制御装置1は、タッチパネル702を介して、この移動平面上での操作対象の移動指示を受け付け、工作機械2の軸移動を行う。
【0029】
ここで、移動平面取得部111は、例えば、以下の(A)又は(B)のいずれかの手法によって移動平面の指定を受け付ける。
【0030】
(A)移動平面取得部111は、予め設定された複数の候補を示す画像から移動平面の選択入力を受け付ける。
図3は、本実施形態に係る移動平面の指定手法(A)を例示する図である。
【0031】
移動平面取得部111は、例えば、機械座標系における3次元の座標軸x,y,zのうち2軸からなるx−y平面、y−z平面、z−x平面の3つの選択肢を、移動平面の候補としてディスプレイ701に表示する。移動平面取得部111は、タッチパネル702を介してオペレータから選択入力を受け付ける。
このとき、ディスプレイ701には、加工エリアの画像と共に、操作対象Aの位置を示す操作アイコンI、選択された移動平面を表す平行四辺形、及び各軸の方向を示す矢印等の画像が表示されてもよい。
【0032】
(B)移動平面取得部111は、加工エリアにおける3次元座標軸x,y,zのうち2軸の選択と、これらの2軸で決定される平面の各軸周りの回転角度の入力により、移動平面の指定を受け付ける。
図4は、本実施形態に係る移動平面の指定手法(B)を例示する図である。
【0033】
移動平面取得部111は、3つの座標軸(操作対象軸)x,y,z毎に、例えば、2軸(移動軸)を選択するためのチェックボックスと、軸周りの回転角度の入力フィールドとをディスプレイ701に表示する。
この例では、オペレータにより指定された移動軸及び回転角度に応じて、x軸周りにx−y平面を30度回転させてできるx−y’平面が機械座標系における移動平面として指定されている。
【0034】
機械座標変換部112は、機械座標系から、カメラ3により撮像された加工エリアの画像における位置、すなわちディスプレイ701及びタッチパネル702における2次元の画像座標系へ座標値を変換する。
ここで、加工エリア内の位置を示す機械座標系における3次元の座標値Xは、画像座標系の2次元の座標値uへ、u=PXのように一意に変換される。変換行列Pは、予め所定の手順で実施されるキャリブレーションによって設定され、カメラ情報として記憶部(例えば、RAM13)に格納される。
【0035】
画像座標変換部113は、画像座標系から機械座標系の移動平面内へ座標値を変換する。
2次元の座標値を3次元の座標値へ変換する場合、座標は一意に決まらないが、移動平面内の座標に限定することで、2次元から2次元への変換となるため、機械座標系の座標値が一意に決定される。
【0036】
操作対象位置取得部114は、加工エリアにある操作対象の機械座標系における現在の位置情報を取得する。
具体的には、操作対象位置取得部114は、工作機械2から得られる各軸の位置フィードバックに基づいて、機械座標系における工具の先端等の操作対象の座標値を算出する。なお、操作対象の部位は予め設定され、操作対象の座標値と各軸の位置フィードバックとの対応関係を示す情報が記憶部に格納される。
【0037】
操作アイコン表示部115は、操作対象の位置情報に対応するディスプレイ701の画像座標系における座標に、操作アイコンを加工エリアの画像に重畳して表示させる。この操作アイコンは、タッチパネル702におけるオペレータのスライド操作の起点となる。すなわち、オペレータは、操作アイコンをタッチした後、操作対象を移動させたい目的の位置まで、スライド操作を行う。
【0038】
スライド位置取得部116は、オペレータにより操作アイコンがタッチされた後、スライド操作された先のスライド位置を取得する。
本実施形態において、スライド位置取得部116は、スライド位置として、スライド操作の終了位置を取得する。さらに、スライド位置取得部116は、スライド操作の開始位置から終了位置に到達するまでの時間を、時刻情報の差分を算出する、又はタイマで計測する等の方法により取得してもよい。
このとき、スライド位置取得部116は、操作アイコンの移動に伴って、スライド位置の、画像座標系から機械座標系に変換された座標値を表示してもよい。
【0039】
図5は、本実施形態に係るスライド操作に伴う座標値の表示例を示す図である。
スライド操作に伴って変化するスライド位置の画像座標系における座標値は、画像座標変換部113により機械座標系の座標値に変換される。
スライド位置取得部116は、スライド位置を取得すると、このスライド位置の付近等に、変換された機械座標を表示したウィンドウWを描画する。
【0040】
機械座標を表示したウィンドウWは、ディスプレイ701の所定位置に描画されてもよいし、スライド位置と同期して移動してもよい。また、このウィンドウWは、スライド操作の終了後、オペレータのタッチ操作により移動されてもよい。
【0041】
移動量計算部117は、画像座標系におけるスライド位置が機械座標系に変換された座標に基づいて、この変換された座標に操作対象を移動させるために工作機械2に指示すべき各軸の移動量を計算する。
このとき、移動量計算部117は、スライド操作の軌跡によらず、開始位置から終了位置まで、機械座標系において操作対象を移動させるための各軸の移動量を計算する。
【0042】
軸移動部118は、計算された各軸の移動量に応じて、操作対象を実際に移動させるように工作機械2に指示する。
このとき、軸移動部118は、スライド位置取得部116により取得された操作時間と同一の時間を掛けて操作対象を移動させてもよい。
【0043】
図6は、本実施形態に係るオペレータの操作の手順を例示する図である。
この例では、スライド操作により操作対象の移動先が決定した後に、オペレータによる移動開始指示に応じて実際の軸移動が開始される。
【0044】
オペレータは、まずタッチパネル702において操作アイコンIを指でタッチし(1)、加工エリアの画像上で目的の位置Gまで、スライド操作を行う(2)。
このとき、スライド操作の開始位置である操作アイコンから現在のスライド位置へ矢印等が表示されてもよい。
【0045】
オペレータがスライド操作を終了し、指をタッチパネル702から離すと(3)、このスライド操作の終了位置と、スライド操作を行った時間とが保存される。
スライド操作の終了位置が機械座標系の座標値に変換され、各軸の移動量が計算されると、スタートボタンBが有効となり、オペレータがこのスタートボタンBをタッチすると(4)、軸移動部118は、保存された時間を掛けて操作対象を移動させる。
【0046】
なお、実際の軸移動の契機はこの例に限られず、例えば、軸移動部118は、スライド操作が終了しスライド位置を取得後、所定時間後に操作対象の移動を自動で開始してもよい。
【0047】
本実施形態によれば、数値制御装置1は、工作機械2の加工エリアを撮像した画像上で、操作対象を示すアイコンに対してスライド操作を行うことにより、実際の操作対象を目的の位置まで移動させる。このとき、数値制御装置1は、移動平面が指定されることにより、スライド位置を画像座標系から機械座標系へ一意に変換できる。
これにより、工作機械2のオペレータは、タッチパネル702を介して直感的な軸操作ができる。したがって、数値制御装置1は、工作機械2の軸移動に際してオペレータの負担を低減できる。
【0048】
数値制御装置1は、スライド操作の終了位置を取得して、開始位置から終了位置までの工作機械2における各軸の移動量を計算するので、スライド操作の軌跡によらず、操作対象を適切な経路(例えば、最短経路)で目的の位置へ移動できる。
【0049】
数値制御装置1は、スライド操作の時間を計測することで、この時間に合わせて実際の操作対象の移動に掛かる時間を調整できる。これにより、オペレータは、操作対象を所望の速度で移動させることができる。
【0050】
数値制御装置1は、複数の候補から移動平面の選択入力を受け付けることにより、オペレータの操作を簡略化でき、さらに、容易に移動平面を決定できる。
また、数値制御装置1は、加工エリアにおける3次元座標軸のうち2軸の選択、及びこの2軸で決定される平面の各軸周りの回転角度の入力を受け付けることにより、移動平面の詳細な設定を可能にし、利便性を向上できる。
【0051】
数値制御装置1は、スライド操作に伴って、対応する機械座標系の座標値を表示することにより、オペレータによるスライド操作の精度を高めることができるので、利便性が向上する。
【0052】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
本実施形態では、スライド位置取得部116、移動量計算部117及び軸移動部118の機能が第1実施形態と異なる。
【0053】
スライド位置取得部116は、スライド操作の開始から終了までの間、周期的にスライド位置を取得する。
さらに、スライド位置取得部116は、各スライド位置に到達するまでの時間を、例えば、時刻情報の差分を算出する、又はタイマで計測する等の方法により取得する。あるいは、スライド位置取得部116は、周期的に取得したスライド位置の個数と、予め指定されたスライド位置の取得周期とに基づいて、各スライド位置に到達するまでの時間を算出してもよい。例えば、スライド位置の取得が10ミリ秒の一定周期で行われ、取得開始から取得終了までのスライド位置の取得個数が1000個だとすると、スライド操作の開始から終了までの時間は10ミリ秒×1000=10秒と算出される。
また、スライド位置取得部116は、第1実施形態と同様に、スライド操作に伴って、スライド位置が画像座標系から機械座標系に変換された座標値を表示してもよい。
【0054】
移動量計算部117は、スライド操作の開始から終了まで、スライド位置が機械座標系に変換された座標値を時系列に取得し、操作対象がこれらの座標を順に通過するための各軸の移動量を計算する。
また、移動量計算部117は、時系列に取得した複数の座標値を曲線で補間した経路を通過するための各軸の移動量を計算する。さらに、移動量計算部117は、新たに座標値が取得される度に、補間のための曲線を更新することで、操作対象の滑らかな移動を実現する。
【0055】
軸移動部118は、スライド操作の開始から終了までの時間と同一の時間を掛けて操作対象を移動させる。
また、軸移動部118は、オペレータがスライド操作を開始してから所定時間後、例えば数周期後に、操作対象の移動を開始する。すなわち、周期毎にスライド位置を取得後、所定時間後にこのスライド位置に対応する機械座標系の座標への操作対象の移動が開始される。これにより、スライド操作から所定時間の遅れで操作対象が追随して移動する。
【0056】
図7は、本実施形態に係るオペレータの操作の手順を例示する図である。
この例では、スライド操作に同期して、また、スライド操作の経路に従って、自動で操作対象の軸移動が実行される。
【0057】
オペレータは、まずタッチパネル702において操作アイコンIを指でタッチし(1)、加工エリアの画像上で目的の位置Gまで、スライド操作を行う(2)。
スライド操作の開始から終了までの間、スライド位置が周期的に検出され、スライド位置が機械座標系に変換された座標値と、これらの座標値の間を補間した曲線Cとが保存される。
【0058】
スライド操作の開始から所定時間後、保存された曲線Cに沿った軸移動が開始される。(a)の位置から移動を開始した操作対象Aは、スライド位置が(2)の時点では(b)の位置まで移動し、スライド位置が(3)の時点では(c)の位置まで移動する。
オペレータがスライド操作を終了し、指をタッチパネル702から離すと(3)、所定時間後に、スライド操作の終了位置Gに対応する機械座標系の座標に操作対象Aが到達し、移動が終了する。
【0059】
本実施形態によれば、数値制御装置1は、スライド操作の開始から終了までの間、周期的にスライド位置を取得し、スライド操作の軌跡に沿って操作対象を移動させる。
これにより、数値制御装置1は、オペレータの要求する経路で操作対象を移動できる。
また、数値制御装置1は、移動経路の座標群を曲線で補間することにより、操作対象の自然な動きを実現できる。
【0060】
数値制御装置1は、スライド操作から所定時間遅れて、スライド操作と同じ速度で操作対象を移動させる。これにより、数値制御装置1は、オペレータのスライド操作に同期して操作対象を移動できる。
したがって、オペレータは、操作対象の実際の動きを確認しつつ、目的の位置へ移動できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、前述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0062】
前述の実施形態において、数値制御装置1は、操作対象を2次元の移動平面内で移動させたが、移動平面に代えて単一の軸(例えば、x軸、y軸、z軸)内の移動に限定してもよい。
【0063】
前述の実施形態において、オペレータのスライド操作時に、操作アイコンは移動しないこととしたが、スライド操作は、操作アイコン自体が移動する、いわゆるドラッグ操作であってもよい。
【0064】
数値制御装置1の制御対象は、特定の工作機械には限られず、前述の実施形態は、切削加工機、レーザ加工機、放電加工機等を含む様々な工作機械に適用できる。
【0065】
数値制御装置1による制御方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。