(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
〔実施の形態〕
図1は、旋盤機10を示す概略図である。旋盤機10は、工具を用いて加工対象物を加工するものであり、基礎ベッド12、主軸支持部14、テーブル支持部16、テーブル18および主軸装置20を有する。
【0012】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して左右方向へ移動可能に主軸装置20を支持するものである。なお、主軸装置20における主軸シャフト22が延びている方向(軸方向)を前後方向とし、当該主軸装置20が載置される載置面Fに平行な面内で軸方向に対して直交する方向を左右方向とし、当該載置面Fおよび軸方向に対して直交する方向を上下方向とする。下方向は、重力が働く方向である。また、主軸装置20においてチャック部30が設けられる主軸シャフト22の一端側を前側とし、当該主軸シャフト22の他端側を後側とする。
【0013】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に左右方向に沿って設けられる第1スライド部14aと、第1スライド部14aに沿って移動可能な主軸移動台14bと、主軸移動台14bを駆動する不図示の第1駆動機構とを有する。
【0014】
第1駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじなどの部材が含まれる。第1駆動機構によって主軸移動台14bが第1スライド部14aに沿って移動することで、その主軸移動台14b上に設けられる主軸装置20が基礎ベッド12に対して左右方向へ移動する。
【0015】
テーブル支持部16は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して前後方向へテーブル18を移動可能に支持するものである。このテーブル支持部16は、基礎ベッド12上に前後方向に沿って設けられる第2スライド部16aと、第2スライド部16aに沿って移動可能なテーブル18を駆動する不図示の第2駆動機構とを有する。
【0016】
第2駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじなどの部材が含まれる。第2駆動機構によってテーブル18が第2スライド部16aを通じて基礎ベッド12に対して前後方向へ移動する。テーブル18は、上下方向の軸を回転軸として回転可能に設けられてもよい。
【0017】
なお、本実施の形態では、主軸装置20におけるチャック部30に加工対象物が保持され、テーブル18に工具が保持されるものとする。ただし、主軸装置20におけるチャック部30に工具が保持され、テーブル18に加工対象物が保持されてもよい。
【0018】
図2は、
図1の主軸装置20の断面を示す図である。本実施の形態の主軸装置20は、加工対象物を回転可能に保持するものであり、加工対象物に対する加工をナノ単位で制御する場合などに使用される。この主軸装置20は、主軸シャフト22、主軸ハウジング24、主軸取付台26、カバー部材28および取付台カバー29を主な構成要素として備える。
【0019】
主軸シャフト22は、円筒状の部材であり、軸方向に沿って貫通する円筒状の貫通孔22Hを有する。
図2に示す例では、貫通孔22Hは、前側貫通孔22Haと、前側貫通孔22Haの直径よりも小さい直径となる後側貫通孔22Hbとを有している。この主軸シャフト22の一端側(前側)にはチャック部30が設けられ、他端側(後側)にはモータ40が設けられる。
【0020】
チャック部30は、主軸シャフト22の一端に対して、主軸シャフト22の回転に連動して主軸ハウジング24の前側の表面上で回転可能に設けられる回転部材であり、本実施の形態では加工対象物を着脱する。なお、
図1では、チャック部30が円盤状に形成されているが、他の形状であってもよい。このチャック部30は、主軸シャフト22の前側に固定されたベース30aと、ベース30aに対して着脱可能に取り付けられた吸着パッド30bとを有する。吸着パッド30bの吸着面には開口OPが形成される。ベース30aおよび吸着パッド30bには、開口OPと主軸シャフト22の貫通孔22Hの一端とを連通する連通路30cが形成される。チャック部30では、不図示の真空ポンプによって開口OPから連通路30cを通じて、チャック部30の外部の空気が貫通孔22Hに吸引されることで、加工対象物が吸着面に密着した状態で保持される。
【0021】
モータ40は、主軸シャフト22の駆動源であり、主軸ハウジング24の後側に取り付けられるモータケース40aと、モータケース40a内に設けられるロータ40bおよびステータ40cとを有する。ロータ40bには主軸シャフト22が固定される。したがって、ロータ40bの回転に連動して主軸シャフト22が回転する。
【0022】
主軸ハウジング24は、略円筒状のハウジング本体24aと、後側ハウジング蓋24bとを有する。ハウジング本体24aには、ハウジング本体24aの外周面から外側に向かって突出する環状のフランジ部50が設けられる。フランジ部50は、ハウジング本体24aと一体に成形されていてもよく、ハウジング本体24aとは別体として所定の固定具によりハウジング本体24aに固定されていてもよい。
【0023】
ハウジング本体24aの後側には、そのハウジング本体24aの後側の開口を覆うように後側ハウジング蓋24bが着脱可能に取り付けられる。後側ハウジング蓋24bの表面(後端面)側には、モータ40のモータケース40aが固定される。
【0024】
後側ハウジング蓋24bとハウジング本体24aとには、前後方向に沿って貫通する略円筒状のシャフト配置空間が形成される。このシャフト配置空間に主軸シャフト22が配置され、当該シャフト配置空間に配置された主軸シャフト22は、軸受60を介して回転可能に支持される。
【0025】
軸受60は、本実施の形態では、スラスト軸受60aおよびラジアル軸受60bを有する。スラスト軸受60aは、主軸シャフト22の左側と右側とにそれぞれ設けられ、ラジアル軸受60bは、スラスト軸受60aよりも主軸シャフト22の後側において、当該主軸シャフト22の前と後とにそれぞれ設けられる。なお、軸受60は、静圧軸受であっても、転がり軸受であってもよい。ただし、上記のように加工対象物に対する加工をナノ単位で制御する場合には静圧軸受であることが好ましい。
【0026】
主軸取付台26は、主軸移動台14bの載置面F(
図1)上に載置される。この主軸取付台26は、主軸シャフト22の軸方向に沿って主軸ハウジング24が挿通される挿通孔26Hを有する。挿通孔26Hに挿通された主軸ハウジング24の前側は、ハウジング本体24aに設けられるフランジ部50を介して主軸取付台26の前側に固定され、当該主軸ハウジング24の後側は、主軸取付台26の後側に設けられる支持部材70を介して支持される。
【0027】
具体的には、フランジ部50は、主軸取付台26における前側(挿通孔26Hの一方の開口側)に対してボルトなどの棒状締結部材で着脱可能に固定される。一方、支持部材70は、主軸取付台26における後側(挿通孔26Hの他方の開口側)を基礎として主軸ハウジング24を支持する。つまり、主軸ハウジング24は、主軸取付台26に対して、当該主軸ハウジング24の前後から両持ちで保持される。
【0028】
カバー部材28は、フランジ部50における前側の表面と、その表面から前側に延在するハウジング本体24aの外周面と、チャック部30の外周面の一部とを覆うように設けられる。なお、カバー部材28は、チャック部30の外周面の一部を覆っているが、当該外周面の全体を覆っていてもよく、チャック部30の外周面の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0029】
カバー部材28には、シール部をシールするシールガスを流すためのガス用の流路28aが形成される。シール部は、チャック部30とカバー部材28との間およびチャック部30とハウジング本体24aとの間の隙間である。ガスは、所定圧にまで圧縮されていてもよい。具体的には、例えば、空気などが挙げられる。シール部にシールガスが供給されることで、加工対象物の加工時に生じる屑、あるいは、加工時に用いられるクーラントなどが隙間を介して主軸ハウジング24の内部(シャフト配置空間)に入ることが抑制される。なお、シール部に流れたシールガスは主軸装置20の前側などから外部に排出される。
【0030】
また、カバー部材28には、冷媒を流すための不図示の冷媒用の流路が形成されており、その冷媒用の流路を流れる冷媒によってカバー部材28の温度が調整される。この冷媒は、例えば、水あるいは圧縮空気などとされる。
【0031】
図1および
図2に示すように、取付台カバー29は、主軸取付台26を覆うカバー部材である。取付台カバー29は、主軸取付台26の略全体を覆う状態で主軸移動台14b(
図1参照)に固定される。この主軸取付台26の挿通孔26Hに挿通される主軸ハウジング24の前側の一部は取付台カバー29から外部に露出している。
【0032】
取付台カバー29の内部には、取付台カバー29の内部の温度を調節するための温調部80(
図1参照)が、主軸取付台26の外周面のうち左側の外側面と右側の外側面との双方にそれぞれ設けられる。各々の温調部80は、主軸取付台26の外側面に固定された放熱板82を有する。
【0033】
放熱板82は、本実施の形態では、第1の放熱片82aと、第1の放熱片82aに対して間隙を隔てて配置される第2の放熱片82bとを有する。第2の放熱片82bは、第1の放熱片82aよりも前側に配置される。第1の放熱片82aと第2の放熱片82bとの間の間隙は、主軸シャフト22の軸方向と交わる方向に沿って延在する。なお、
図1に示す例では、間隙が延在する方向は、主軸シャフト22の軸方向と略直交する。
【0034】
放熱板82には配管84が取り付けられる。配管84は、冷媒を循環させるための配管である。冷媒は、本実施の形態では水などの液体とされる。ただし、ガスであってもよい。配管84は、取付台カバー29を貫通しており、取付台カバー29の内部に配置されるカバー内配管部位84aと、取付台カバー29の外部に配置されるカバー外配管部位84bとを有する。
【0035】
カバー内配管部位84aは、放熱板82に所定の固定具により固定される。カバー外配管部位84bには循環ポンプ86が設けられる。なお、
図1および
図2に示す例では、主軸取付台26における左側の配管84と右側の配管84とは連結されておらず別々の循環経路となっているが、左側の配管84と右側の配管84とが連結されて1つの循環経路となっていてもよい。
【0036】
循環ポンプ86によって配管84(カバー内配管部位84aおよびカバー外配管部位84b)の内部を冷媒が循環し、少なくともこの冷媒によって取付台カバー29に覆われる主軸取付台26が冷却される。主軸取付台26の左側および右側の双方には、シールガスを冷却するための冷却用流路26a(
図2参照)が形成される。
【0037】
冷却用流路26aの流入口には、取付台カバー29の外部に設けられるコンプレッサ88(
図2参照)のホース88aが接続される。一方、冷却用流路26aの流出口には、連通管89を介して、カバー部材28に形成された流路28a(
図2参照)が接続される。したがって、冷却用流路26aを流れたシールガスは、連通管89および流路28aを順次経由し、ガス供給先であるチャック部30とカバー部材28との間の隙間に供給される。
【0038】
また、取付台カバー29には、シールガスを取付台カバー29の内部に供給するためのガス供給管90が接続される。ガス供給管90の流入口には、カバー部材28に形成された流路28b(
図2参照)が接続される。
【0039】
流路28bは、チャック部30とカバー部材28との間の隙間に供給されたシールガスの一部を、ガス供給管90に供給するための流路である。本実施の形態では、この流路28bの一端側はチャック部30とカバー部材28との間の隙間に開口し、当該流路28bの他端側はカバー部材28の外周面に開口する。なお、シール部に供給されたシールガスを主軸ハウジング24の外部に排出するため、当該主軸ハウジング24に設けられた不図示の排出経路に、ガス供給管90が接続されていてもよい。
【0040】
次に、
図1および
図2を用いて、シールガスの流れに関して説明する。本実施の形態の主軸装置20では、コンプレッサ88からシールガスが出力される。シールガスは、コンプレッサ88から出力されると、コンプレッサ88のホース88aを介して、主軸取付台26に形成される冷却用流路26aに流入し、冷却用流路26aを流れる。
【0041】
冷却用流路26aから流出したシールガスは、連通管89を介して、カバー部材28に形成された流路28aに流入し、その流路28aを経由して、チャック部30とカバー部材28との間の隙間に流れる。この隙間に流れたシールガスの一部は主軸装置20の前側から外部に排出され、当該シールガスの他の一部はカバー部材28に形成された流路28bに流入する。
【0042】
流路28bに流入したシールガスは、その流路28bを経由して、ガス供給管90に流入し、ガス供給管90を流れて、取付台カバー29の内部に流入する。取付台カバー29の内部に流入したシールガスは、取付台カバー29の内部で対流し、その一部は、取付台カバー29の排出口から外部に排出される。この排出口は、取付台カバー29と主軸ハウジング24との間に形成される隙間であってもよく、取付台カバー29に設けられた貫通孔であってもよい。
【0043】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記の実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。上記の実施の形態に変更または改良を加えた例を以下に記載する。
【0044】
(変形例1)
図3は、変形例1の主軸装置20を示す概略図である。なお、
図3では、上記実施の形態において説明した構成と同様の構成については同一の符号が付されており、既に説明した上記実施の形態の構成については適宜省略する。
【0045】
変形例1の主軸装置20では、取付台カバー29の内部に圧縮ガスを供給する専用のコンプレッサ92にガス供給管90が接続され、当該コンプレッサ92からガス供給管90に流入する圧縮ガスが取付台カバー29の内部に供給される。このように、取付台カバー29の内部に供給される圧縮ガスは、上記実施の形態のようにシールガスでなくてもよい。
【0046】
(変形例2)
図4は、変形例2の主軸装置20を示す概略図である。なお、
図4では、上記実施の形態において説明した構成と同様の構成については同一の符号が付されており、既に説明した上記実施の形態の構成については適宜省略する。
【0047】
変形例2の主軸装置20では、軸受60は静圧軸受とされ、主軸ハウジング24(ハウジング本体24a)には軸受60に対して軸受用のガスを供給するための流路60dが形成される。軸受用のガスは、例えば、エアなどのガスが所定圧にまで圧縮された圧縮ガスとされ、シールガスよりも大きい圧力で圧縮されてもよい。この軸受用のガスを供給する供給部94は、連通路96を介して、主軸取付台26に形成された冷却用流路26bの流入口と接続され、当該冷却用流路26bの流出口は、流路60dと接続される。
【0048】
なお、
図4のハウジング本体24aでは、便宜上、ラジアル軸受60bと冷却用流路26bとを接続する流路が省略されている。
【0049】
このような変形例2の主軸装置20では、供給部94から出力された軸受用ガスは、連通路96を介して冷却用流路26bに流入し、冷却用流路26bを流れ、当該冷却用流路26bから流出した軸受用ガスは、流路60dを介して軸受60に供給される。軸受60に供給された軸受用ガスは、軸受60からシャフト配置空間に流れて主軸シャフト22の支持体として作用する。なお、シャフト配置空間に流れた軸受用ガスは、主軸ハウジング24に形成された不図示の排出経路を通じて外部に排出される。
【0050】
このように、軸受用ガスを冷却するための冷却用流路26bが主軸取付台26に形成され、当該冷却用流路26bを流れた軸受用ガスがガス供給先である軸受60に供給されてもよい。
【0051】
(変形例3)
図5は、変形例3の主軸装置20の一部を拡大して示す図である。なお、
図5では、上記実施の形態において説明した構成と同様の構成については同一の符号が付されており、既に説明した上記実施の形態の構成については適宜省略する。
【0052】
変形例3の主軸装置20では、上記実施の形態の冷却用流路26aに代えて冷却用流路26cが設けられる。冷却用流路26cは、流入口と連通する第1の連通部100と、その第1の連通部100と流出口とを連通する第2の連通部102とを有する。第2の連通部102は、第1の連通部100よりも広く形成される。つまり、冷却用流路26cを流れるガスの流路方向に直交する方向の断面積は、第1の連通部100よりも第2の連通部102のほうが大きい。
【0053】
このように冷却用流路26cの後側が前側よりも広い空間とされることで、第1の連通部100から第2の連通部102に流入した圧縮ガスが断熱膨張して圧縮ガスの温度が低下し易くなる。したがって、上記実施の形態の場合に比べて、冷却用流路26cを流れるガスをより冷却することができる。
【0054】
また、変形例3における第2の連通部102を囲う壁面には凹凸が形成される。このため、凹凸がない場合に比べて壁面の表面積が大きくなることで、冷却用流路26cを流れるガスをより冷却することができる。ただし、第2の連通部102を囲う壁面に凹凸が形成されていなくてもよい。なお、第2の連通部102を囲う壁面とは、第2の連通部102を形成する主軸取付台26の隔壁の壁面を意味する。
【0055】
図5に示す例では、第2の連通部102は、主軸シャフト22の軸方向に沿って略真っ直ぐ延在していたが、蛇行するなどといったように屈曲部位を有していてもよい。第2の連通部102が屈曲部位を有する場合、略真っ直ぐ延在する場合に比べて第1の連通部100から流出口までの距離が長くなることで、冷却用流路26cを流れるガスをより冷却することができる。
【0056】
また、
図5に示す例では、冷却用流路26cを流れるガスの流路方向に直交する方向における第2の連通部102の断面積は略一定であったが、一定でなくてもよい。例えば、第1の連通部100から流出口に向かうにつれて、冷却用流路26cを流れるガスの流路方向に直交する方向における第2の連通部102の断面積が大きくなっていてもよい。
【0057】
(変形例4)
第1の放熱片82aと第2の放熱片82bとの形状は、上記実施の形態では同じであったが、異なっていてもよい。また、第1の放熱片82aと第2の放熱片82bとの大きさは、上記実施の形態では同じであったが、異なっていてもよい。
【0058】
なお、主軸ハウジング24の内部から主軸ハウジング24に伝わる熱はその主軸ハウジング24に固定されるフランジ部50から伝わり易いため、主軸取付台26では前側の温度が後側よりも高い温度勾配となる傾向にある。したがって、第2の放熱片82bの表面積は、第1の放熱片82aの表面積よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、主軸取付台26の前後方向で温度勾配があっても、その前後方向で生じる温度勾配を緩和することができる。
【0059】
なお、主軸取付台26と放熱板82との温度差に起因する放熱板82の反りを低減し易くするためには、主軸取付台26に対する第1の放熱片82aおよび第2の放熱片82bの固定箇所は、ともに1か所であることが好ましい。
【0060】
(変形例5)
上記実施の形態では、放熱板82が第1の放熱片82aと第2の放熱片82bとの2つに分割されていた。しかし、放熱板82は、
図6に例示するように第1の放熱片82a〜第4の放熱片82dの4つに分割されていてもよい。また、放熱板82は、図示しないが、3つもしくは5つ以上に分割されていてもよく、1つに統合されていてもよい。
【0061】
(変形例6)
上記の実施の形態と上記変形例とは、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0062】
〔技術的思想〕
上記の実施の形態および変形例から把握し得る技術的思想について、以下に記載する。
【0063】
主軸装置(20)は、主軸ハウジング(24)と、主軸ハウジング(24)の内部で回転可能に支持される主軸シャフト(22)と、主軸シャフト(22)の軸方向に沿って主軸ハウジング(24)が挿通される挿通孔(26H)を有する主軸取付台(26)と、を備える。
また、主軸装置(20)は、主軸取付台(26)を覆う取付台カバー(29)を備え、取付台カバー(29)の内部には、取付台カバー(29)の内部の温度を調節するための温調部(80)が設けられる。
このような主軸装置(20)では、温調部(80)によって取付台カバー(29)の内部を冷却することができる。このため、取付台カバー(29)に覆われる主軸取付台(26)、その主軸取付台(26)の挿通孔(26H)に挿通される主軸ハウジング(24)、あるいは、主軸ハウジング(24)の内部で支持される主軸シャフト(22)の発熱を低減することができる。したがって、主軸取付台(26)、主軸ハウジング(24)および主軸シャフト(22)の熱変形に起因した加工精度の低下を抑制することができる。
【0064】
温調部(80)は、主軸取付台(26)の外周面に固定された放熱板(82)を有し、放熱板(82)には、冷媒が流れる配管(84)が取り付けられるようにしてもよい。
このようにすれば、放熱板(82)によって主軸取付台(26)で生じる熱を放熱するのみならず、冷媒によって取付台カバー(29)の内部を冷却することができる。このため、主軸取付台(26)、主軸ハウジング(24)あるいは主軸シャフト(22)の発熱をより低減し易くなる。
【0065】
取付台カバー(29)には、取付台カバー(29)の内部に圧縮ガスを供給するためのガス供給管(90)が接続されるようにしてもよい。
このようにすれば、圧縮ガスによって取付台カバー(29)の内部を対流させることが可能となる。このため、取付台カバー(29)の内部に圧縮ガスが供給されない場合に比べて、取付台カバー(29)の内部での温度差がより小さくなるように、当該内部全体にわたって冷却することができる。
【0066】
ガス供給管(90)には、主軸ハウジング(24)における主軸シャフト(22)の一端側の表面上で回転可能に設けられる回転部材(30)と、回転部材(30)の外周面を覆うカバー部材(28)との間の隙間に供給されたシールガスの一部が流入するようにしてもよい。
このようにすれば、回転部材(30)とカバー部材(28)との間の隙間をシールするシールガスを、取付台カバー(29)の内部を対流させるための圧縮ガスとして利用することができる。このため、取付台カバー(29)の内部を対流させるための圧縮ガスとシールガスとを別々に用いる場合に比べて、消費ガス量を大幅に抑えることができる。したがって、取付台カバー(29)の内部を効率よく冷却することができる。
【0067】
主軸取付台(26)には、供給されたガスを冷却するための冷却用流路(26a〜26c)が形成され、冷却用流路(26a〜26c)を流れたガスは、ガス供給先に供給されるようにしてもよい。
このようにすれば、温調部(80)によって、取付台カバー(29)に覆われる主軸取付台(26)の冷却用流路(26a〜26c)を流れるガスを冷却し、その冷却したガスをガス供給先に供給することができる。このため、冷却用流路(26a〜26c)からガス供給先までの経路やガス供給先での発熱を低減することができる。したがって、熱変形に起因した加工精度の低下をより一段と抑制することができる。
【0068】
冷却用流路(26c)は、ガスの流入口と連通する第1の連通部(100)と、第1の連通部(100)よりも広く形成され、第1の連通部(100)とガスの流出口とを連通する第2の連通部(102)とを有するようにしてもよい。
このようにすれば、第1の連通部(100)から第2の連通部(102)に流入した圧縮ガスが断熱膨張して圧縮ガスの温度が低下し易くなる。したがって、冷却用流路(26c)を流れるガスをより冷却することができる。
【0069】
ガス供給先は、主軸ハウジング(24)における主軸シャフト(22)の一端側の表面上で回転可能に設けられる回転部材(30)と、回転部材(30)の外周面を覆うカバー部材(28)との間の隙間であってもよい。このようにすれば、当該隙間をシールするシールガスを冷却した状態で供給することができる。
【0070】
ガス供給先は、主軸シャフト(22)を回転可能に支持する軸受であってもよい。このようにすれば、静圧軸受用のガスを冷却した状態で供給することができる。
【0071】
放熱板(82)は、第1の放熱片(82a)と、第1の放熱片(82a)に対して間隙を隔てて配置される第2の放熱片(82b)とを有し、第2の放熱片(82b)は、第1の放熱片(82a)よりも、主軸シャフト(22)と連動して回転可能な回転部材(30)が設けられる主軸シャフト(22)の一端側に配置されるようにしてもよい。
このようにすれば、主軸取付台(26)における主軸シャフト(22)の一端側と他端側とで温度勾配が生じても、その一端側と他端側とで生じる温度勾配を緩和し易くなる。
【0072】
第1の放熱片(82a)と第2の放熱片(82b)との間隙は、主軸シャフト(22)の軸方向と交わる方向に沿って延在するようにしてもよい。
このようにすれば、第1の放熱片(82a)と第2の放熱片(82b)との間隙は、主軸シャフト(22)の軸方向と平行である場合に比べて、主軸取付台(26)における主軸シャフト(22)の一端側と他端側とで温度勾配を緩和し易くなる。
【0073】
第2の放熱片(82b)の表面積は、第1の放熱片(82a)の表面積よりも大きいようにしてもよい。
このようにすれば、主軸取付台(26)における主軸シャフト(22)の一端側と他端側とで温度勾配をより緩和し易くなる。
【0074】
主軸取付台(26)に対する第1の放熱片(82a)および第2の放熱片(82b)の固定箇所は、ともに1か所であるようにしてもよい。
このようにすれば、主軸取付台(26)と放熱板(82)との温度差に起因する放熱板(82)の反りを低減し易くなる。