(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0013】
〔実施の形態〕
図1は、旋盤機10の外観構成を示す図である。旋盤機10は、工具を用いて加工対象物を加工するものであり、基礎ベッド12、主軸支持部14、テーブル支持部16、テーブル18および主軸装置20を有する。
【0014】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して左右方向へ移動可能に主軸装置20を支持するものである。なお、主軸装置20における主軸シャフト22が延びている方向(軸方向)を前後方向とし、当該主軸装置20が載置される載置面CFに平行な面内で軸方向に対して直交する方向を左右方向とし、当該載置面CFおよび軸方向に対して直交する方向を上下方向とする。下方向は、重力が働く方向である。また、主軸装置20においてチャック部30が設けられる主軸シャフト22の一端側を前側とし、当該主軸シャフト22の他端側を後側とする。
【0015】
主軸支持部14は、基礎ベッド12上に左右方向に沿って設けられる第1スライド部14aと、第1スライド部14aに沿って移動可能な主軸移動台14bと、主軸移動台14bを駆動する不図示の第1駆動機構とを有する。
【0016】
第1駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじ等の部材が含まれる。第1駆動機構によって主軸移動台14bが第1スライド部14aに沿って移動することで、その主軸移動台14b上に設けられる主軸装置20が基礎ベッド12に対して左右方向へ移動する。
【0017】
テーブル支持部16は、基礎ベッド12上に設けられており、基礎ベッド12に対して前後方向へテーブル18を移動可能に支持するものである。このテーブル支持部16は、基礎ベッド12上に前後方向に沿って設けられる第2スライド部16aと、第2スライド部16aに沿って移動可能なテーブル18を駆動する不図示の第2駆動機構とを有する。
【0018】
第2駆動機構には、モータ、および、モータの回転力を直進運動に変換するボールねじ等の部材が含まれる。第2駆動機構によってテーブル18が第2スライド部16aを通じて基礎ベッド12に対して前後方向へ移動する。テーブル18は、上下方向の軸を回転軸として回転可能に設けられてもよい。
【0019】
なお、本実施の形態では、主軸装置20におけるチャック部30に加工対象物が保持され、テーブル18に工具が保持されるものとする。ただし、主軸装置20におけるチャック部30に工具が保持され、テーブル18に加工対象物が保持されてもよい。
【0020】
図2は、
図1の主軸装置20の断面を示す図である。本実施の形態の主軸装置20は、加工対象物を回転可能に保持するものであり、加工対象物に対する加工をナノ単位で制御する場合などに使用される。この主軸装置20は、主軸シャフト22、主軸ハウジング24、主軸取付台26およびカバー部材28を主な構成要素として備える。
【0021】
主軸シャフト22は、円筒状に形成された部材であり、軸方向に沿って貫通する円筒状の貫通孔22Hを有する。
図2に示す例では、貫通孔22Hは、前側貫通孔22Haと、前側貫通孔22Haの直径よりも小さい直径となる後側貫通孔22Hbとを有している。この主軸シャフト22の一端側(前側)にはチャック部30が設けられ、他端側(後側)にはモータ40が設けられる。
【0022】
チャック部30は、主軸シャフト22の一端に対して、主軸シャフト22の回転に連動して主軸ハウジング24の前側の表面上で回転可能に設けられる回転部材であり、本実施の形態では加工対象物を着脱する。なお、
図1では、チャック部30が円盤状に形成されているが、他の形状であってもよい。このチャック部30は、主軸シャフト22の前側に固定されたベース30aと、ベース30aに対して着脱可能に取り付けられた吸着パッド30bとを有する。吸着パッド30bの吸着面には開口OPが形成される。ベース30aおよび吸着パッド30bには、開口OPと主軸シャフト22の貫通孔22Hの一端とを連通する連通路30cが形成される。チャック部30では、不図示の真空ポンプによって開口OPから連通路30cを通じて、チャック部30の外部の空気が貫通孔22Hに吸引されることで、加工対象物が吸着面に密着した状態で保持される。
【0023】
モータ40は、主軸シャフト22の駆動源であり、主軸ハウジング24の後側に取り付けられるモータケース40aと、モータケース40a内に設けられるロータ40bおよびステータ40cとを有する。ロータ40bには主軸シャフト22が固定される。したがって、ロータ40bの回転に連動して主軸シャフト22が回転する。
【0024】
主軸ハウジング24は、略円筒状のハウジング本体24aと、後側ハウジング蓋24bとを有する。ハウジング本体24aには、ハウジング本体24aの外周面から外側に向かって突出する環状のフランジ部50が設けられる。フランジ部50は、ハウジング本体24aと一体に成形されていてもよく、ハウジング本体24aとは別体として所定の固定具によりハウジング本体24aに固定されていてもよい。
【0025】
ハウジング本体24aの後側には、そのハウジング本体24aの後側の開口を覆うように後側ハウジング蓋24bが着脱可能に取り付けられる。後側ハウジング蓋24bの表面(後端面)側には、モータ40のモータケース40aが固定される。
【0026】
後側ハウジング蓋24bとハウジング本体24aとには、前後方向に沿って貫通する略円筒状のシャフト配置空間が形成される。このシャフト配置空間に主軸シャフト22が配置され、当該シャフト配置空間に配置された主軸シャフト22は、軸受60を介して回転可能に支持される。
【0027】
軸受60は、本実施形態では、スラスト軸受60aおよびラジアル軸受60bを有する。スラスト軸受60aは、主軸シャフト22の左側と右側とにそれぞれ設けられ、ラジアル軸受60bは、スラスト軸受60aよりも主軸シャフト22の前側において、当該主軸シャフト22の前後にそれぞれ設けられる。なお、軸受60は、静圧軸受であっても、転がり軸受であってもよい。ただし、上記のように加工対象物に対する加工をナノ単位で制御する場合には静圧軸受であることが好ましい。
【0028】
主軸取付台26は、主軸移動台14bの載置面CF(
図1)上に載置される。この主軸取付台26は、主軸シャフト22の軸方向に沿って主軸ハウジング24が挿通される挿通孔26Hを有する。挿通孔26Hに挿通された主軸ハウジング24の前側は、ハウジング本体24aに設けられるフランジ部50を介して主軸取付台26の前側に固定され、当該主軸ハウジング24の後側は、主軸取付台26の後側に設けられる支持部材70を介して支持される。
【0029】
具体的には、フランジ部50は、主軸取付台26における前側(挿通孔26Hの一方の開口側)に対してボルトなどの棒状締結具で着脱可能に固定される。一方、支持部材70は、主軸取付台26における後側(挿通孔26Hの他方の開口側)を基礎として主軸ハウジング24を支持する。つまり、主軸ハウジング24は、主軸取付台26に対して、当該主軸ハウジング24の前後から両持ちで保持される。
【0030】
カバー部材28は、自身の温度が調整されるカバー部材である。このカバー部材28は、主軸装置20の前側に設けられる。具体的には、カバー部材28は、フランジ部50における前側の表面と、その表面から前側に延在するハウジング本体24aの外周面と、チャック部30の外周面の一部とを覆うように設けられる。なお、カバー部材28は、チャック部30の外周面の一部を覆っているが、当該外周面の全体を覆っていてもよい。
【0031】
カバー部材28には、カバー部材28の温度を調整する冷媒を流すための冷媒用流路28aが形成される。冷媒は、水などの液体であってもよく、気体であってもよい。本実施の形態の場合、冷媒用流路28aは、カバー部材28の左側と右側とに形成される。
【0032】
図3は、カバー部材28の概略斜視図であり、
図4は、
図2の一部を拡大して示す図である。具体的に
図3ではカバー部材28の一部を後側からみた斜視図が示され、
図4ではカバー部材28の左側の冷媒用流路28aとその周辺部分とが拡大した図が示されている。
【0033】
冷媒用流路28aは、第1の連通部82および第2の連通部84を有する。第1の連通部82は、カバー部材28の外部と、カバー部材28に覆われるフランジ部50の前面とを連通する。この第1の連通部82は、本実施の形態では、カバー部材28に覆われる環状のフランジ部50の前面と接する状態で、当該フランジ部50の周方向全体にわたって環状に延在する環状部位82a(
図3参照)を有する。
【0034】
第2の連通部84は、カバー部材28の外部と、カバー部材28に覆われるハウジング本体24aの外周面とを連通する。この第2の連通部84と、第1の連通部82とは、中継路86を介して連結される。中継路86は、フランジ部50の前面から前側に延在するハウジング本体24aと、カバー部材28との間に形成される隙間(空間)である。
【0035】
この中継路86を形成するカバー部材28の外周面28F(
図3参照)は、環状に形成される。一方、中継路86を形成するハウジング本体24aの外周面には、主軸シャフト22の前側に向かって周回するらせん状の凹部88(
図4参照)が形成される。
【0036】
ハウジング本体24aの外周面とカバー部材28との間のうち、第1の連通部82が開口する位置よりもカバー部材28の外部側の部位には、冷媒が外部へ流れることをシールするシール部材90が設けられる。また、カバー部材28とハウジング本体24aとの間のうち、第2の連通部84が開口する位置よりもカバー部材28の外部側の部位にもシール部材90が設けられる。なお、シール部材90の具体例としては、Oリングなどが挙げられる。
【0037】
第1の連通部82における外部側の開口と、第2の連通部84における外部側の開口とは、カバー部材28の外部に配置される配管92を介して連結される。配管92にはポンプ94が設けられる。
【0038】
配管92内の冷媒は、ポンプ94によって、第1の連通部82に流入する。第1の連通部82に流入した冷媒は、第1の連通部82における環状部位82aを通じてフランジ部50の前面と一部が接する状態で前側を流れ、中継路86に流入する。中継路86に流入した冷媒は、第2の連通部84に向かって流れる。具体的には、中継路86に流入した冷媒は、中継路86を囲うハウジング本体24aの外周面に形成されるらせん状の凹部88内を通じて、主軸シャフト22の周方向に向かってハウジング本体24aの外周面を周回するように流れ、第2の連通部84に流入する。第2の連通部84に流入した冷媒は、その第2の連通部84を流れて配管92に流出し、ポンプ94によって再び第1の連通部82に流入する。このようにしてカバー部材28の内外を冷媒が循環し、循環する冷媒によってカバー部材28の温度が調整される。
【0039】
なお、カバー部材28の左側に形成された冷媒用流路28aの第1の連通部82に流入した冷媒と、当該カバー部材28の右側に形成された冷媒用流路28aの第1の連通部82に流入した冷媒とは、ともに同じ1つの中継路86を流れる。また、この中継路86を流れた冷媒は、カバー部材28の左側に形成された冷媒用流路28aの第2の連通部84と、当該カバー部材28の右側に形成された冷媒用流路28aの第2の連通部84とに流出する。つまり、中継路86は、カバー部材28の左側に形成される循環経路と、当該カバー部材28の右側に形成される循環経路とで共通とされる。
【0040】
カバー部材28には、冷媒用流路28aの他に、シール部をシールする圧縮ガスを流すためのガス用流路28bが形成される。シール部は、チャック部30とカバー部材28との間およびチャック部30とハウジング本体24aとの間の隙間である。圧縮ガスは、所定圧にまで圧縮されたガスである。このガスとしては、例えば、空気などが挙げられる。
【0041】
ガス用流路28bは、第2の連通部84の開口位置の前側に設けられるシール部材90よりもチャック部30側に形成される。なお、冷媒用流路28aは、第2の連通部84の開口位置の前側に設けられるシール部材90よりもフランジ部50側に形成される。本実施の形態の場合、ガス用流路28bは、カバー部材28の左側と右側とに形成される(
図2参照)。
【0042】
ガス用流路28bの流入口には、コンプレッサ106(
図2、
図4参照)が接続される。本実施の形態の場合、左側のガス用流路28bと、右側のガス用流路28bとの各々にコンプレッサ106が接続されているが(
図2参照)、1つのコンプレッサ106に対して左側のガス用流路28bと、右側のガス用流路28bとの各々が接続されていてもよい。
【0043】
コンプレッサ106は圧縮ガスを出力するものであり、当該コンプレッサ106から供給される圧縮ガスは、ホース106aを介してガス用流路28bに流入し、そのガス用流路28bを流れてシール部に供給される。これにより、加工対象物の加工時に生じる屑、あるいは、加工時に用いられるクーラントなどがシール部を介して主軸ハウジング24の内部(シャフト配置空間)に入ることが抑制される。なお、シール部に流れたシールガスは主軸装置20の前側などから外部に排出される。
【0044】
ガス用流路28bは、第1の連通部102および第2の連通部104を有する(
図3、
図4参照)。第1の連通部102は、カバー部材28の外周面側の外部と連通している。本実施の形態では、第1の連通部102の幅Wは、第1の連通部102の全体にわたって略一定とされるが、第1の連通部102の1または複数の箇所が他の箇所と異なっていてもよい。なお、第1の連通部102の幅Wは、ガス用流路28bが延在する方向に対して直交する方向で最大となる長さ(直線距離)である。第1の連通部102の流入口には、コンプレッサ106のホース106aが接続される。
【0045】
第2の連通部104は、第1の連通部102と、チャック部30およびハウジング本体24aの間の隙間とを連通しており、環状として形成される(
図3参照)。この第2の連通部104は、第1の連通部102の流出口OG1よりも広い空間を有する。第2の連通部104の流出口OG2は、ハウジング本体24aにおいてチャック部30が対向する表面(ハウジング本体24aの前面)と対向する。
【0046】
この第2の連通部104を囲う壁面は、第1の連通部102から流出する圧縮ガスが衝突する衝突面Fを有する。第2の連通部104を囲う壁面とは、第2の連通部104を形成するカバー部材28の隔壁の壁面を意味する。衝突面Fは、第1の連通部102から流出した圧縮ガスがチャック部30およびハウジング本体24aの間の隙間に向かうように、第2の連通部104の流出口OG2に対して傾斜している。なお、この衝突面Fは、
図3に示す例では、環状の第2の連通部104の全周にわたって形成されているが、少なくとも、第1の連通部102から流出する圧縮ガスが衝突する壁面部分だけに形成されていればよい。
【0047】
ガス用流路28bでは、コンプレッサ106から供給される圧縮ガスは、第1の連通部102に流入し、その第1の連通部102を流れて、第1の連通部102の流出口OG1から第2の連通部104に流入する。第2の連通部104に流入した圧縮ガスは衝突面Fに衝突し、その衝突面Fに沿って第2の連通部104の流出口OG2から流出し、チャック部30およびハウジング本体24aの間の隙間に向かう。
【0048】
ガス用流路28bでは、第2の連通部104が第1の連通部102よりも広いため、当該第1の連通部102から第2の連通部104に流入した圧縮ガスは断熱膨張して圧縮ガスの温度が低下する場合がある。この場合であっても、温度が調整された状態にあるカバー部材28の隔壁の衝突面Fに圧縮ガスが衝突したときに、その圧縮ガスの温度はカバー部材28の温度に近づき易い。このため、圧縮ガスに起因して、カバー部材28に外周面が覆われているハウジング本体24aでの局部間の温度差が大きくなり難くなる。
【0049】
したがって、本実施の形態の主軸装置20によれば、ハウジング本体24aにおける局部間の温度差に起因したハウジング本体24aの熱変形を低減することができ、この結果、ハウジング本体24aの熱変形に起因した加工精度の低下を抑制することができる。
【0050】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記の実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。上記の実施の形態に変更または改良を加えた例を以下に記載する。
【0051】
(変形例1)
図5は、変形例1のガス用流路28cを
図4と同様の視点で示す図である。変形例1のガス用流路28cは、実施の形態のガス用流路28bとは異なる位置に形成されている。
【0052】
すなわち、実施の形態のガス用流路28bは、カバー部材28における外周側の外部と、ハウジング本体24aの前面とを連通するのに対し、変形例1のガス用流路28cは、カバー部材28における外周側の外部と、ハウジング本体24aの外周面とを連通する。
【0053】
変形例1のガス用流路28cにおける第2の連通部104を形成するカバー部材28の隔壁の衝突面Fは、当該カバー部材28の外周面側から内部側に向かうにつれてカバー部材28の前側に近づくように傾斜している。
【0054】
変形例1のガス用流路28cでは、上記の実施の形態と同様に、第2の連通部104に流入した圧縮ガスが断熱膨張して圧縮ガスの温度が低下しても、当該温度は、カバー部材28における隔壁の衝突面Fの衝突時にそのカバー部材28の温度に近づくように変化し易い。したがって、上記の実施形態と同様に、ハウジング本体24aにおける局部間の温度差に起因したハウジング本体24aの熱変形を低減することができる。
【0055】
(変形例2)
図6は、変形例2のガス用流路28dを
図4と同様の視点で示す図である。変形例2のガス用流路28dは、実施の形態のガス用流路28bとは異なる位置に形成されている。
【0056】
すなわち、実施の形態のガス用流路28bは、カバー部材28における外周側の外部と、ハウジング本体24aの前面とを連通するのに対し、変形例2のガス用流路28dは、カバー部材28における前側の外部と、ハウジング本体24aの前面とを連通する。ただし、ガス用流路28dの第1の連通部102がカバー部材28の外周側の外部から主軸シャフト22に向けて延在した後に屈曲しハウジング本体24aの前面に向けて延在することで、カバー部材28の外周側の外部とハウジング本体24aの前面とが連通されてもよい。
【0057】
変形例2のガス用流路28dにおける第2の連通部104を形成するカバー部材28の隔壁の衝突面Fは、当該カバー部材28の前側から後側に向かうにつれて主軸シャフト22に近づくように傾斜している。
【0058】
変形例2のガス用流路28dでは、上記の実施の形態と同様に、第2の連通部104に流入した圧縮ガスが断熱膨張して圧縮ガスの温度が低下しても、当該温度は、カバー部材28における隔壁の衝突面Fの衝突時にそのカバー部材28の温度に近づくように変化し易い。したがって、上記の実施形態と同様に、ハウジング本体24aにおける局部間の温度差に起因したハウジング本体24aの熱変形を低減することができる。
【0059】
(変形例3)
図7は、変形例3のガス用流路28eを
図4と同様の視点で示す図である。変形例3のガス用流路28eは、変形例2のガス用流路28dの衝突面F(
図6参照)をなくした点で、当該変形例2のガス用流路28dと異なる。
【0060】
変形例3のガス用流路28eでは、コンプレッサ106から供給される圧縮ガスは、第1の連通部102に流入し、その第1の連通部102を流れて、第2の連通部104に流入する。第2の連通部104に流入した圧縮ガスは、第2の連通部104の流出口OG2から流出し、ハウジング本体24aの前面に衝突した後、チャック部30およびハウジング本体24aの間の隙間に向かう。
【0061】
変形例3のガス用流路28eでは、衝突面F(
図6参照)がないが、上記のようにハウジング本体24aの前面に衝突する。このハウジング本体24aは、温度が調整された状態にあるカバー部材28に覆われるため、そのカバー部材28の温度と同程度に変化する。したがって、圧縮ガスは、断熱膨張により温度低下したとしても、少なくともハウジング本体24aに衝突したときに、カバー部材28の温度と同程度に変化したハウジング本体24aの温度に近づき易い。したがって、上記の実施形態と同様に、ハウジング本体24aにおける局部間の温度差に起因したハウジング本体24aの熱変形を低減することができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態、変形例1および変形例2のガス用流路28b〜28dのように、衝突面Fがある場合には、温度が調整された状態にあるカバー部材28に対して直接的に圧縮ガスが衝突するため、当該温度により近づき易い。
【0063】
(変形例4)
上記実施の形態では、ガス用流路28bにおける第1の連通部102がおおむね真っ直ぐに延在していたが、屈曲していてもよい。なお、変形例1〜変形例3のガス用流路28c〜28eにおける第1の連通部102についても同様に、屈曲していてもよい。
【0064】
(変形例5)
上記実施の形態では、カバー部材28の左側と右側との双方に冷媒用流路28aが形成された。しかし、左側の冷媒用流路28aまたは右側の冷媒用流路28aはなくてもよい。なお、冷媒用流路28aは、カバー部材28の温度を調整する冷媒を流すためのものである限り、冷媒用流路28aの形成部位、形状、循環の有無などは特に限定されない。また、上記の実施の形態では、カバー部材28とハウジング本体24aとの間に中継路86が設けられた。しかし、中継路86は、カバー部材28の内部に設けられていてもよく、第1の連通部82と第2の連通部84とを連通するものである限り、当該中継路86の形成部位あるいは形状などは特に限定されない。要するに、冷媒によってカバー部材28の温度が調整可能であればよい。
【0065】
上記の実施の形態および上記変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0066】
〔技術的思想〕
上記の実施の形態および変形例から把握し得る技術的思想について、以下に記載する。
【0067】
主軸装置(20)は、主軸ハウジング(24)と、主軸シャフト(22)と、回転部材(30)と、フランジ部(50)と、カバー部材(28)とを備える。
主軸シャフト(22)は、主軸ハウジング(24)の内部で回転可能に支持される。回転部材(30)は、主軸シャフト(22)の一端に対して、主軸シャフト(22)の回転に連動して回転可能に設けられる。フランジ部(50)は、環状であり、主軸ハウジング(24)の外周面から外側に向かって突出する。カバー部材(28)は、フランジ部(50)における主軸シャフト(22)の一端側の表面と、その表面から主軸シャフト(22)の一端側に向かって延在する主軸ハウジング(24)の外周面と、回転部材(30)の外周面とを覆うように設けられ、温度が調整される。
このカバー部材(28)には、回転部材(30)とカバー部材(28)との間および回転部材(30)と主軸ハウジング(24)との間をシールする圧縮ガスを流すためのガス用流路(28b〜28e)が形成される。
このガス用流路(28b〜28e)は、第1の連通部(102)と第2の連通部(104)とを有する。第1の連通部(102)は、カバー部材(28)の外部と連通する。第2の連通部(104)は、第1の連通部(102)と、回転部材(30)と主軸ハウジング(24)との間の隙間とを連通し、第1の連通部(102)の流出口(OG1)よりも広い。第2の連通部(104)の流出口(OG2)は、主軸ハウジング(24)の表面と対向する。
【0068】
このような主軸装置(20)では、第2の連通部(104)の流出口(OG2)は主軸ハウジング(24)と対向するため、第1の連通部(102)から第2の連通部(104)に流入し、その第2の連通部(104)から流出する圧縮ガスは、主軸ハウジング(24)に衝突する。この主軸ハウジング(24)は、温度が調整されるカバー部材(28)に覆われるため、そのカバー部材(28)の温度と同程度に変化する。したがって、圧縮ガスは、断熱膨張により温度低下したとしても、少なくとも主軸ハウジング(24)に当たったときに、カバー部材(28)の温度と同程度に変化した主軸ハウジング(24)の温度に近づき易い。したがって、圧縮ガスに起因して主軸ハウジング(24)における局部間の温度差が大きくなって主軸ハウジング(24)に熱変形が生じることを低減することができる。この結果、主軸ハウジング(24)の熱変形に起因した加工精度の低下を抑制することができる。
【0069】
第2の連通部(104)を囲う壁面は、第1の連通部(102)から流出する圧縮ガスが衝突する衝突面(F)を有することが好ましい。このようにすれば、第1の連通部(102)に流入する圧縮ガスは、温度が調整されたカバー部材(28)に対して直接的に衝突するため、当該温度により近づき易い。したがって、圧縮ガスに起因して主軸ハウジング(24)における局部間の温度差が大きくなることをより一段と抑制することができる。
【0070】
衝突面(F)は、第1の連通部(102)から流出した圧縮ガスが隙間に向かうように、第2の連通部(104)の流出口(OG2)に対して傾斜していることが好ましい。このようにすれば、当該傾斜がない場合に比べて、衝突面(F)に衝突した圧縮ガスの流速が低下することを抑えることができる。
【0071】
第2の連通部(104)は、環状であることが好ましい。第2の連通部(104)が環状であることにより、第1の連通部(102)から流出した圧縮ガスの圧力が周方向において偏ることが緩和された状態で、当該圧縮ガスを主軸シャフト(22)の周囲に供給することができる。したがって、圧縮ガスが主軸シャフト(22)の周囲に局所的に供給されることに起因して、当該圧縮ガスにより主軸シャフト(22)が振れてしまうことを抑制することができる。
【0072】
カバー部材(28)は、主軸ハウジング(24)の外周面とカバー部材(28)との間の隙間の一部をシールするシール部材(90)と、シール部材(90)よりもフランジ部(50)側に形成され、カバー部材(28)の温度を調整する冷媒を流すための冷媒用流路(28a)とを備える。また、上記のガス用流路(28b〜28e)は、シール部材(90)よりも回転部材(30)側に形成される。このようにすれば、冷媒によってカバー部材(28)の温度を調整しながらも、当該冷媒がシール用の圧縮ガスと混合することを抑制することができる。