(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738106
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】トラクタに連結する長いも掘取り装置
(51)【国際特許分類】
A01D 13/00 20060101AFI20200730BHJP
A01B 59/043 20060101ALI20200730BHJP
A01B 63/10 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
A01D13/00
A01B59/043 A
A01B63/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-99254(P2019-99254)
(22)【出願日】2019年5月28日
(62)【分割の表示】特願2018-50161(P2018-50161)の分割
【原出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-162137(P2019-162137A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016937
【氏名又は名称】株式会社苫米地技研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 力
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−084805(JP,U)
【文献】
実開昭59−000621(JP,U)
【文献】
特開平07−222502(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1388220(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00
A01B 59/043
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタのロアリンク及びトップリンクからなる三点リンクに装着して、成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで掘り取る掘削手段と、後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に上向き後方へ移動させる長いもの掘取り装置において、
前記のトラクタに装備された三点リンクのトップリンクに代えて掘り取り刃体の姿勢を制御する複動油圧シリンダを兼用して配備するとともに、
前記ロアリンクは機枠体の前方側の両側面にロアピンを介して接続され、
前記機枠体の両側面には下方へ向けて前記掘削手段が設けられ、
前記機枠体の後方には、前記機枠体の両側面から下方へ向けて接続された支持板を介して、前記掘り取り刃体が設けられ、
前記機枠体の上部にはマストステイが配置され、
前記マストステイには、支軸が設けられ、前記支軸には、トップブラケットの一端側が回動可能に支持されており、
前記トップブラケットの他の一端側には、前記複動油圧シリンダをトラクタの機種による昇降量の違いに応じて取り付けるための複数個の取り付け穴を有し、
前記複動油圧シリンダの伸縮に伴って、前記トップブラケットが、前記支軸を介して、前記マストステイの周りを回動することで、前記トップブラケットを前記マストステイに対して前後に搖動可能に構成し、
前記複動油圧シリンダの伸縮に伴い前記マストステイが配置された前記機枠体を前記ロワピンを支点として回動させることを特徴としたトラクタに連結した長いも掘り取り装置。
【請求項2】
トップブラケットの搖動固定の止めピンはトラクタ運転者が遠隔操作可能に構成した請求項1に記載のトラクタに連結した長いも掘り取り装置
【請求項3】
前記止めピンは、前記マストステイの上部に、前記支軸と平行に設けられると共に、前記マストステイの一側面側から突出した摺動軸と一体の軸棒であり、
前記摺動軸の移動部には、コイルばねが装備されて、前記摺動軸は、前記コイルばねの内側を摺動可能に設けられ、
前記摺動軸の、前記止めピンとは反対側の端部には、ひもが結束され、
前記ひもの他方端は、運転席に配置され、
前記トップブラケットは、前記トップブラケットの回動に応じて、前記止めピンを前記ひもを介して抜き取ったり戻したりすることにより、前記マストステイの前面板、又は、前記後面板に当接させることが可能であり、
前記トップブラケットを前記マストステイの前記後面板に当接することにより、
前記機枠体の引き上げ角度を大きくすることが可能な、
請求項2に記載の長芋掘り取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部三点リンクによって連結し、畝に生育した長いもの下端部へ掘り取り刃体を挿入させて鋤き込み、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもに擦り傷を与えないように掘り取る収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長いもの掘取り装置は、種々に提案されているが、後部が上方へ傾斜した掘取り刃体によって長いもを保護・保持した栽培土ブロックを順次上方へ浮上させるものにあっては、同一出願人による「長いもの掘り取り方法及びその装置」特許第2865252号公報(特許文献1)が知られる。また同一の趣旨の改良発明として特開2016−202004号公報(特許文献2)等が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2865252号公報
【特許文献2】特開2016−202004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1においては、浮上してきた長いもを補助作業者が長いもの首を把持して土中から掘り上げる。このときトラクタの運転者が長いもの生育中心線とずれている場合はトラクタの進行方向を修正することになる。しかし従来公知の構成によれば、トラクタの運転者が、地下に垂設する掘削部の作業姿勢を調節するための油圧シリンダや浮上する掘削土の排除クリーナの駆動装置に遮られて、補助作業者が長いもの首を把持する手元の状況を目視できなかった。したがっておうおうにして長いもの生育中心がずれた場合でも、運転者がすぐに修正できずに走行し、長いもに傷をつけたり補助作業者の負担を重くしていた。
【0005】
また、掘削部の姿勢制御の油圧シリンダが掘取り装置重量を重くしていたので、トラクター三点リンクの昇降力に負担をかけたり、トラクタ後部が重荷になって後輪を支点としてトラクタの前輪浮き上がり現象があった。従って全体として、大型馬力のトラクタを採用することになり不経済になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の課題を達成するために、トラクタのロアリンク及びトップリンクからなる三点リンクに装着して、成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで掘取
る掘削手段と、後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に上向き後方へ移動せる長いもの掘取り装置において、
前記のトラクタに装備した三点リンクのトップリンクに代えて掘り取り刃体の姿勢を制御する
複動油圧シリンダを配備するとともに、
前記ロアリンクは機枠体の前方側の両側面にロアピンを介して接続され、
前記機枠体の両側面には下方へ向けて前記掘削手段が設けられ、
前記機枠体の後方には、前記機枠体の両側面から下方へ向けて接続された支持板を介して、前記掘り取り刃体が設けられ、
前記機枠体の上部にはマストステイが配置され、
前記マストステイには、支軸が設けられ、前記支軸には、トップブラケットの一端側が回動可能に支持されており、
前記トップブラケットの他の一端側には、前記複動油圧シリンダをトラクタの機種による昇降量の違いに応じて取り付けるための複数個の取り付け穴を有し
、
前記複動油圧シリンダの伸縮に伴って、前記トップブラケットが、前記支軸を介して、前記マストステイの周りを回動することで、前記トップブラケットをマストステイに対して前後に搖動可能に構成し、
前記複動油圧シリンダの伸縮に伴い前記マストステイが配置された前記機枠体を前記ロワピンを支点として回動させることとしたものである。
また、前記のトップブラケットの搖動固定の止めピンはトラクタ運転者が遠隔操作可能に構成したことを特徴としたトラクタに連結した長いも掘取り装置である。
また、本発明では、前記止めピンは、前記マストステイの上部に、前記支軸と平行に設けられると共に、前記マストステイの一側面側から突出した摺動軸と一体の軸棒であり、前記摺動軸の移動部には、コイルばねが装備されて、前記摺動軸は、前記コイルばねの内側を摺動可能に設けられ、前記摺動軸の、前記止めピンとは反対側の端部には、ひもが結束され、前記ひもの他方端は、運転席に配置され、前記トップブラケットは、前記トップブラケットの回動に応じて、前記止めピンを前記ひもを介して抜き取ったり戻したりすることにより、前記マストステイの前面板、又は、前記後面板に当接させることが可能であり、前記トップブラケットを前記マストステイの前記後面板に当接することにより、前記機枠体の引き上げ角度を大きくすることも可能である。
なお、本発明では、前記のトラクタに連結した長いも掘取り装置の掘取り刃体を構成する無端ベルトは油圧モーターにより回転駆動され、かつ掘削土の排除クリーナは油圧モー-ターにより左右に搖動され、これらの油圧駆動ポンプは掘取り装置の一側部に配設して、長いも抜き上げの補助者の手元がトラクタ運転者から可視可能に構成することもできる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように従来、三点リンクに連結した掘取り機の上部に油圧シリンダを設けていたが、その油圧シリンダを排除してトラクタに直結したトップリンクに代えて取り付けたので、長いも掘り取り装置自体の重量は油圧シリンダの重さだけ軽量になる。したがって本体機枠部は軽量となりトラクタの前輪浮き上がりバランスも緩和されて結果としてトラクタの馬力負荷も軽減される。また、掘り取り刃体を構成する無端ベルト及び掘削土の排除クリーナのそれぞれの駆動部を掘り取り装置の一側部に寄せて配設したので、抜き上げ補助者の手元がトラクタ運転者から可視可能になり、常に生育畝中心を確認できるので作業ロスがなくなる。また、複数個の取り付け穴を有したトップブラケットをマストステイに対して前後に搖動可能にしたので、昇降作用が不足する場合は取り付け穴をさらに後方へ回動させて、昇降量を大きくとると移動時においても掘り取り装置の地上高を十分とれる。またトップブラケットの搖動固定の止めピンはトラクタ運転者がひもの引き作用によって遠隔操作可能に構成したので、掘り取り作業中でも運転者はトラクタに座上したままで、掘り取り機の昇降量や、地上高の調整が可能となり便利である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はトラクタのロアリンク及びトップリンクからなる三点リンクに装着して、成育した長いもの両側部を掘削して長いもの下端部まで掘取り、後部が上方に傾斜した掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に上向き後方へ移動させる長いもの掘取り装置において、前記のトラクタに装備された三点リンクのトップリンクに代えて掘り取り刃体の姿勢を制御する復動油圧シリンダを兼用して配備したことを特徴としたトラクタに連結した長いも掘取り装置であって長いも掘取り装置自体の重量は油圧シリンダの重さだけ軽量になるので、トラクタの前輪浮き上がりバランスも緩和され、さらに掘取り刃体を構成する無端ベルトは回転駆動され、かつ掘削土の排除クリーナの駆動ポンプは掘り取り装置の一側部に寄せて配備して、長いもの抜き上げ補助者の手元がトラクタ運転者から可視可能に構成されたので畝の中心にトラクタの走行中心を速やかに修正するものである
【実施例】
【0010】
図1は本発明を実施した側面図で一部を省略した作業状態を示したものである。aは四輪トラクタの後部を示し、1は後輪で、4は出力軸である。2は一対のロアリンクで3の油圧アームによって作業機を装着して昇降するものである。dは通常のトップリンクに代えて複動油圧シリンダを配備したもので従来の三点リンク手段のトップリンクを兼用する。bは掘取り機を示し6の機枠体に変速ボックス9を配設して、左右の下方にブーム14と掘削チェン13からなる掘削手段を装備する。7はマストステイで中央の頂部にはトップブラケット8を前後に搖動可能に形成する。トップブラケット8には前記した複動油圧シリンダdの一端を装着する。複動シリンダdは土中にある掘削手段の作業姿勢と掘削深さを適宜修正する。10は入力軸を示し前記した出力軸4とにユニバーサルジョイント5をかけ渡して回転力を伝える。15は掘り取り刃体を示し支持板18の後方に固着される。本実施例においては後方に向けて尻上がりの無端ベルト19を装備して油圧モーター16によって回転される。15の掘り取り刃体は水平な鋤板を直接に斜設してもよい。11は油圧ポンプを示し変速ボックス9の入力軸10からスプロケット10−2を介して駆動し、前記した油圧モーター16を駆動する。cはクリーナ装置を示し、20は掃き棒で17のモーターにより左右に搖動して長いもと一緒に浮上してきた栽培土を左右に排土するものである。eは抜き取りの補助者を示し、次第に浮上してきた長いも25の首を把持して抜き上げる。
図2は一部を省略した平面図でaのトラクタの後部に掘取り機bを装着したもので、掘り取り刃体15を形成する無端ベルト19の上面に位置する長いも25を補助者eが抜き取ろうとするところである。11は油圧ポンプIを示し、11−1は油圧ポンプIIを示し機枠体の一側に寄せて配置し、変速ボックス9からチェン10−1を介してそれぞれ駆動される。従来は機枠体の変速ボックスの上部にあった複動油圧シリンダdがトラクタのトップリンクを兼用する位置に移動したので作業者の手元が運転席から目視できるとともに掘取り機b自体の重量が軽減された。掘り取り機bはトラクタの後輪より後方にオーバーハングした分だけ尻下がりのモーメントが働くので重い分だけトラクタの前輪を持ち上げられる力が働く。17はクリーナ装置cのモーターを示し油圧ポンプII11−1から伝動される。
図3はトラクタの移動時を示す側面図で、aのトラクタの後部に対してロアリンク2を油圧アーム3の回動によって、掘り取り機bはやや平行に上昇する。次いで複動油圧シリンダdを短縮して、ロアリンク端部のロアピン6−1を支点として掘取り機bは上方に回動しながら上昇する。Lは掘取り機bの下端の地上高を示す。この地上高Lはトラクタの機種、メーカーによって異なり、田んぼを移動するときは、すくなくも畦を超えるための高さが必要になる。また、トラックに積み荷するときはさらに大きな地上高が必要になるのでトップブラケット8を後方に変えて引き上げ角度を大きくすると良い。
図4は複動油圧シリンダ取り付け説明図である。6は機枠体で上部にマストステイ7を設けて、8のトッ
プブラケットを支軸8−2を支点として前後に回動自在に固着する。マストステイ7には前面
板8−3と後面板8−
4を設けてストッパーの役目をする。8−5は止めピンを示し、マストステイ7の中央部を横断してトップブラケット8の前部位置と後部位置を固定するものである。8−1は複動シリンダdの取り付け穴を示して、トラクタの機種による昇降量の違いを調整するものであり、本実施例においては3個有している。トップブラケット8は特に掘取り機の地上高が
少ないときに後方へ回動させて仮想線のように後面板8−
4に当接させ
て止めピンにて固定する。
図5はトップブラケットの回動固定説明図である。(イ)マストステイ7の斜視図を示し、止めピン8−5は摺
動軸8−8と一体の軸棒であり摺
動軸の移動部にはコイルばね8−7が装備される。8−9はひもを示し摺
動軸8−8に結束されて他方端は運転席に配置する。(ロ)はトップブラケット8の斜視図である。8−6は横穴を示しマストステイ7の下穴に固着される。(ハ)マストステイ7とトップブラケット8の組み立て正面図である。
トラックに積み荷するときは地上高Lを大きくとるために、運転席側のひもを引き、摺
動軸8−8上のコイルバネ8−7圧縮させて止めピン8−5を抜き取ってトップブラケット8を後方に変えて引き上げ角度を大きくすると良い。
図6はクリーナ装置の説明図である。6は機枠体で中央に主軸21が固着されて24の搖動アームが垂下される。搖動アーム24の下端はフォーク上に掃き棒20が設けられている。17は掘取り機の一側に寄せて配置した油圧モーターIIである。油圧モーター17は22の減速スプロケットを駆動し、23の偏心軸を介して連結ロッド26により前記搖動アーム24を搖動させて掃き棒によって浮上してきた栽培土を左右に掻き落すものである。
【0011】
本発明によるトラクタに連結する掘取り機は、大規模プロ農家において、圃場においてトラクタの運転者と長いもの抜き取り補助者が速やかに連携して確実な掘り取りをなし、同時に掘取り機の適宜な旋回性や、掘削部の掘り取り差し込み及び移動時の適宜な昇降作用を向上させた、スピーデイな収穫作業を提供するものである。
【符号の説明】
【0012】
A トラクタ後部
b 掘取り機
c クリーナ装置
d 複動油圧シリンダ
e 作業補助者
1 後輪
2 ロアリンク
3 油圧アーム
4 出力軸
5 ユニバーサルジョイント
6 機枠体
6−1 ロアピン
7 マストステイ
7−1 上穴
7−2 下穴
8 トップブラケット
8−1 取り付け穴
8−2 支軸
8−3 前面板
8−4 後面版
8−5 止めピン
8−6 横穴
8−7 コイルバネ
8−8 摺動軸
8−9 ひも
9 変速ボックス
10 入力軸
10−1 チェン
10−2 スプロケット
11 油圧ポンプI
11−1 油圧ポンプII
12 駆動スプロケット
13 掘削チェン
14 ブーム
15 掘り取り刃体
16 油圧モーターI
17 油圧モーターII
18 支示板
19 無端ベルト
20 掻き棒
21 主軸
22 減速スプロケット
23 偏心軸
24 搖動アーム
25 長いも
26 連結ロッド