(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738123
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20200730BHJP
A47K 13/24 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
A47K13/24
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-246053(P2014-246053)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-108798(P2016-108798A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小清水 謙之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 貴則
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎介
(72)【発明者】
【氏名】立石 美陽子
【審査官】
舟木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−229814(JP,A)
【文献】
特開2000−282550(JP,A)
【文献】
実開平01−039097(JP,U)
【文献】
特開2007−291644(JP,A)
【文献】
特開2004−065545(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3139412(JP,U)
【文献】
特開2008−173260(JP,A)
【文献】
特開2006−230888(JP,A)
【文献】
実開平04−015498(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3046476(JP,U)
【文献】
特開2006−009364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−7/00、11/00−13/00
A47K 13/00−17/02
E03D 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、前記便鉢の上方に設けられるリムと、を有する便器本体と、
前記便器本体に対して開閉可能に取り付けられる便座と、を備え、
平面視において、
前記便座は環状であり、その内周は円形状を有し、
前記リムは環状であり、その内周の少なくとも前端部は、前記便座の内周よりも内側に位置し、
前記便座と前記リムの前記前端部との間に、前記便座および前記リムとは別体の部材が存在せず、
前記便座の前端部を含む前面側の外周、側面側の外周はそれぞれ、前記リムの前記前端部を含む前面側の外周、側面側の外周より外側に位置し、
前記便座の前面および側面は、当該便座が閉じた状態において全体が露出していることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
便鉢と、前記便鉢の上方に設けられるリムと、を有する便器本体と、
前記便器本体に対して開閉可能に取り付けられる便座と、を備え、
平面視において、
前記便座は環状であり、その内周は円形状を有し、
前記リムは環状であり、当該リムの内周のうち、前記便座の内周の横幅が最大となる最大横幅部よりも前側の部分の全体は、前記便座の内周と重なる、または、前記便座の内周よりも内側に位置し、
前記便座と前記リムの前端部との間に、前記便座および前記リムとは別体の部材が存在せず、
前記便座の前端部の下面と、前記リムの前記前端部の上面との間に隙間が存在し、
前記便座の前端部を含む前面側の外周、側面側の外周はそれぞれ、前記リムの前記前端部を含む前面側の外周、側面側の外周より外側に位置し、
前記便座の前面および側面は、当該便座が閉じた状態において全体が露出していることを特徴とする便器装置。
【請求項3】
前記リムの内周は、前記最大横幅部よりも後ろ側において、直線的に延びる直線部を有することを特徴とする請求項2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記リムの内周の後端部は、前記便座の内周の後端部よりも外側に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋式の便器装置は、通常、便鉢と便鉢の上方に設けられるリムとを有する便器本体と、便器本体に開閉可能に取り付けられる便座と、を備える。従来では、例えば便器本体と便座との隙間から汚水が流出するのを抑止する便器装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便器装置では、小便時に、便鉢や便鉢に溜まった洗浄水で尿が跳ね返ることがある。特許文献1に記載される便器装置では、リムよりも便座が内側に張り出しているため、跳ね返った汚水が便座裏に付着し、便座裏が汚れうる。特に便器装置に座って小便をする場合、前方に尿が跳ね返りやすいため、便座裏の前方部分が汚れうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、便座裏が汚れにくい便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の便器装置は、便鉢と、便鉢の上方に設けられるリムと、を有する便器本体と、便器本体に対して開閉可能に取り付けられる便座と、を備える。平面視において、便座は環状であり、その内周は円形状を有する。リムは環状であり、その内周の少なくとも一部は、便座の内周と重なる、または、便座の内周よりも内側に位置する。
【0007】
この態様によると、便座裏の内側部分の少なくとも一部はリムに隠れるため、その部分に汚水の跳ね返りが付着しにくくなる。
【0008】
上述のリムの少なくとも一部は、リムの内周の前端部であってもよい。この場合、便座裏の内側部分の前端部がリムに隠れるため、その部分に汚水の跳ね返りが付着しにくくなる。
【0009】
上述のリムの少なくとも一部は、リムの内周のうち、便座の内周の横幅が最大となる最大横幅部よりも前側の部分であってもよい。この場合、便座裏の内側部分のうちの前側部が比較的広範囲にわたってリムに隠れ、その部分に汚水の跳ね返りが付着しにくくなる。
【0010】
リムの内周は、最大横幅部よりも後ろ側において、直線的に延びる直線部を有してもよい。この場合、リムは比較的単純な形状となるため、高い清掃性を確保できる。
【0011】
リムの内周の後端部は、便座の内周の後端部よりも外側に位置してもよい。この場合、便座の後方に設けられる機能部品が利用者に視認されるのを抑止できる。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、便座裏が汚れにくい便器装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る便器装置を示す斜視図である。
【
図6】比較例に係る便器装置の便座およびリム部を平面視した図である。
【
図7】実施の形態の変形例に係る便器装置の便座およびリム部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
小便をする場合、一般に、便鉢の前側における尿の跳ね返りが多い。座って小便をする場合、特にそれが顕著となる。また、座って小便をする場合、便鉢の後方における尿の跳ね返りは生じにくい。以上を前提として、実施の形態に係る便器装置について説明する。
【0017】
図1、2は、実施の形態に係る便器装置10を示す斜視図である。
図1は、便座が閉じた状態を示し、
図2は便座が開いた状態を示す。
図3は、便器装置10の中央縦断面図である。便器装置10は、洋式の水洗式大便器であり、便器本体12と、便座14と、洗浄タンク16と、機能部品18と、肘掛け42と、を備える。以下、便座14が設けられる側を前側、洗浄タンク16が設けられる側を後ろ側として説明する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向として説明する。
【0018】
洗浄タンク16は、便器本体12の後方上部に設けられる。洗浄タンク16は、セラミック材料や樹脂材料などから形成されるタンクであり、便器洗浄に利用する洗浄水を貯水する。操作レバー16aが操作されると、洗浄タンク16内の洗浄水が便器本体12の便鉢20(後述)に供給される。
【0019】
便器本体12は、セラミック材料や樹脂材料などから形成される。便器本体12は、便鉢20と、便器排水路22と、外周壁部24と、を有する。便鉢20は、汚物受け部26と、リム部28と、を有する。汚物受け部26は、上方に開口した椀状の部材であり、汚物を受ける。汚物受け部26の底部には流出口26aが形成されている。
【0020】
リム部28は、開口28aが形成された環状の部材であり、汚物受け部26の上縁部に設けられる。リム部28の下面28bは、汚物受け部26の上端部26bとともに、旋回流を生成するためのリム通水路30を構成する。また、リム部28の上面28cは平坦に形成され、便座14が閉じているときに便座14が着座する着座面として機能する。
【0021】
便器排水路22は、一端は流出口26aに通じ、他端は排水管(不図示)に通じている。洗浄タンク16から汚物受け部26に洗浄水が供給されると、汚物は、洗浄水とともに便器排水路22内に流れ、そこから排水管に排出される。外周壁部24は、便鉢20の外周や便器排水路22を隠すよう、それらを前後左右から囲む。
【0022】
便座14は、便鉢20の上方に設けられる。便座14はセラミック材料や樹脂材料などから形成される。便座14は、開口14aが形成された環状の部材であり、ヒンジ機構(不図示)を介して便器本体12に対して開閉可能に取り付けられる。便座14には利用者が着座する。
【0023】
機能部品18は、便座14の後方に設けられる。機能部品18は、便器本体12に付随して用いられる電装品であり、局部洗浄装置、局部乾燥装置、脱臭装置、便座暖房装置等の機械装置を1つ以上含んで構成される。
図3では、機能部品18が局部洗浄装置を含む場合を示している。肘掛け42は洗浄タンク16の側面に取り付けられる。
【0024】
図4は、便座14およびリム部28を平面視した(すなわち上から見た)図である。なお、
図4は、リム部28の上面28cに平行なある平面に便座14とリム部28とを投影した投影図であるとも言える。
図4を参照して、リム部28および便座14の形状について説明する。なお、便座14の開口14aの大きさは、便座14に着座する利用者が嵌らないような大きさに決定される。そのため、便座14の設計自由度は比較的小さい。そこで、基本的にはリム部28の開口28aの大きさを調整することによって後述の関係が実現する。
【0025】
図4において、環状線32、34はそれぞれ、リム部28の内壁面28d、外壁面28eに対応する。環状線38、40はそれぞれ、便座14の内壁面14b、外壁面14cに対応する。環状線38は円形状を有する。つまり、平面視において、便座14の内周は円形状を有する。
図4では、環状線38が略楕円形状である場合を示している。
【0026】
本実施の形態では、左右方向における便座14の内周の幅(別の言い方をすると、左右方向における開口14aの幅)が最大となる位置P1、P2を基準として、それよりも前側において環状線38と環状線32が重なる。本実施の形態では、環状線38の前側の約2/3程度が、環状線32と重なっている。位置P1、P2よりも後ろ側においては、環状線38と環状線32とは重ならない。環状線32は特に、位置P1、P2から後方に直線的に延び、環状線38の外側に位置する。つまり、平面視において、位置P1、P2よりも前側ではリム部28の内周と便座14の内周とが重なり、位置P1、P2よりも後ろ側ではリム部28の内周が便座14の内周よりも外側に位置する。ここで「重なる」とは、平面視において、リム部28の内周と便座14の内周とが実際に重なっている場合に加え、製造誤差により実際には重なっていない(例えば便座14の内周がリム部28の内周よりも僅かに(例えば4〜8mm程度)内側に位置する)が重なるよう設計されている場合も含む。
【0027】
図5は、便座14およびリム部28の縦断面図である。便座14の内壁面14bは、内側下方に向かって傾斜している。つまり、内壁面14bは、下側ほど開口14aが狭くなるよう傾斜している。同様に、リム部28の内壁面28dは、内側下方に向かって傾斜している。つまり、内壁面28dは、下側ほど開口28aが狭くなるよう傾斜している。
図5に示されるように、便座14およびリム部28は、便座14の内壁面14bの最内周部14dと、リム部28の内壁面28dの最内周部28fとが重なるよう形成される。
【0028】
以上、実施の形態に係る便器装置10について説明した。
実施の形態に係る便器装置10によると、平面視において、位置P1、P2よりも前側では、リム部28と便座14の内周が互いに重なる。すなわち、リム部28によって便座14の下面の内側部分の前側が汚物受け部26に対して隠れるよう便座14およびリム部28が形成される。これにより、便座14の下面の内側部分の前側に汚水の跳ね返りが付着するのが抑止され、便座14の下面が汚れにくくなる。
【0029】
また、実施の形態に係る便器装置10によると、平面視において、位置P1、P2よりも後ろ側では、リム部28と便座14の内周は互いに重ならない。特に、リム部28の内周が、便座14の内周の外側に位置する。そのため、便座14によって機能部品を隠すことが可能となる。これにより、利用者に機能部品が視認されるのを抑止でき、良好な見栄えを確保できる。
【0030】
図6は比較例に係る便器装置の便座およびリム部を平面視した図である。
図6は
図4に対応する。
図6では、位置P1、P2よりも前側において環状線38と環状線32が重なっている。加えて、局部洗浄装置のノズル(不図示)が進入してくる後端部分を除いて、位置P1、P2より後ろ側においても環状線38と環状線32が重なっている。つまり、平面視において、リム部の内周は、局部洗浄装置のノズル(不図示)が進入してくる後端部分を除いて、便座14の内周と重なっている。言い換えると、リム部は、後端部分を除いて、便座14に対応した形状を有している。この比較例の場合、
図6から明らかなように、リム部の形状は比較的複雑になり、リム部の清掃性は低下する。これに対し本実施の形態では、平面視において、位置P1、P2よりも後ろ側では、リム部28の内周は直線的に後方に伸び、その形状は比較的簡単になる。そのため、リム部28の清掃性を向上できる。つまり、本実施の形態に係る便器装置10によると、汚水の跳ね返りの多い前方部分では、リム部28を便座14に対応した形状として便座14の下面が汚れるのを抑止でき、汚水の跳ね返りの少ない後方部分では、リム部28の形状を敢えて便座14に対応させず、リム部28を比較的簡単な形状としてリム部28の清掃性を向上できる。
【0031】
また、実施の形態に係る便器装置10によると、リム部28の内壁面28dは、内側下方に向かって傾斜している。つまり、リム部28の内壁面28dは、利用者側を向く。これにより、リム部28の内壁面28dの清掃性が向上する。
【0032】
以上、実施の形態に係る便器装置について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0033】
(変形例1)
実施の形態では、平面視において、位置P1、P2よりも前側においてリム部28と便座14の内周が互いに重なる場合について説明したが、これに限られない。平面視において、リム部28の内周の少なくとも一部が便座14の内周と重なるよう便座14およびリム部28が形成されてもよい。また、平面視において、リム部28の内周の少なくとも一部が便座14の内周よりも内側に位置するよう便座14およびリム部28が形成されてもよい。この場合、リム部28によって便座14の下面の内側部分の少なくとも一部が汚物受け部26に対して隠れるため、その部分に汚水の跳ね返りが付着するのが抑止される。なお、上述したように座って小便をする場合は前方に尿が跳ね返りやすいため、少なくとも便座14の下面の内側部分の前端部が、汚物受け部26に対して隠れるよう便座14およびリム部28が形成されることが望ましい。
【0034】
(変形例2)
図7は、実施の形態の変形例に係る便器装置の便座14およびリム部28の断面図である。
図7は
図5に対応する。
図7に示されるように、便座14の下面14eの最内周部14fと、リム部28の上面28cの最内周部28gとが平面視において重なるよう、便座14およびリム部28が形成されてもよい。この場合、リム部28によって、便座14の下面14eが汚物受け部26に対してより確実に隠れるため、便座14の下面14eがより汚れにくくなる。なお、便座14の下面14eの最内周部14fよりもリム部28の上面28cの最内周部28gが内側に位置するよう便座14およびリム部28が形成されてもよい。また、リム部28の内壁面28dは、
図7に示されるように、内側下方に向かって傾斜していなくてもよい。
【0035】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0036】
10 便器装置、 12 便器本体、 14 便座、 14a 開口、 14b 内壁面、 20 便鉢、 26 汚物受け部、 28 リム部、 28a 開口、 28d 内壁面、 32,34 環状線、 38,40 環状線。