(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏光子におけるヨウ素含有量(重量%)に対するカリウム含有量(重量%)の比K/Iが0.180〜0.235である、請求項1から3のいずれかに記載の有機EL表示装置用円偏光板。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0010】
A.円偏光板
A−1.円偏光板の全体構成
本発明の実施形態による円偏光板は、有機EL表示装置に用いられる。本発明の1つの実施形態による円偏光板は、偏光子と、λ/4板として機能する位相差層と、バリア層と、バリア機能を有する粘着剤層と、をこの順に備える。本発明の別の実施形態による円偏光板は、偏光子と位相差層との間にλ/2板として機能する別の位相差層をさらに備える。以下、これらの代表的な実施形態について円偏光板の全体的な構成を具体的に説明し、その後で、円偏光板を構成する各層および光学フィルムを詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の1つの実施形態による円偏光板の概略断面図である。本実施形態の円偏光板100は、偏光子10と位相差層20とバリア層30と粘着剤層40とをこの順に備える。上記のとおり、位相差層20はλ/4板として機能し、粘着剤層40はバリア機能を有する。図示例の円偏光板100は、偏光子の位相差層20と反対側に保護フィルム50を備える。また、円偏光板は、偏光子と位相差層との間に別の保護フィルム(内側保護フィルムとも称する:図示せず)を備えてもよい。図示例においては、内側保護フィルムは省略されている。この場合、位相差層20が内側保護フィルムとしても機能し得る。このような構成であれば、円偏光板のさらなる薄型化が実現され得る。
【0012】
本実施形態においては、偏光子10の吸収軸と位相差層20の遅相軸とのなす角度は35°〜55°であり、好ましくは38°〜52°であり、より好ましくは40°〜50°であり、さらに好ましくは42°〜48°であり、特に好ましくは44°〜46°である。当該角度がこのような範囲であれば、所望の円偏光機能が実現され得る。なお、本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0013】
図2は、本発明の別の実施形態による円偏光板の概略断面図である。本実施形態の円偏光板101は、偏光子10と位相差層20との間に別の位相差層60をさらに備える。別の位相差層60は、λ/2板として機能する。なお、本実施形態においては便宜上、位相差層20を第1の位相差層と称し、別の位相差層60を第2の位相差層と称する場合がある。図示例の円偏光板101は、偏光子の位相差層と反対側に保護フィルム50を備える。また、円偏光板は、偏光子と位相差層との間に別の保護フィルム(内側保護フィルムとも称する:図示せず)を備えてもよい。図示例においては、内側保護フィルムは省略されている。この場合、第2の位相差層60が内側保護フィルムとしても機能し得る。
【0014】
本実施形態においては、偏光子10の吸収軸と第1の位相差層20の遅相軸とのなす角度は、好ましくは65°〜85°であり、より好ましくは72°〜78°であり、さらに好ましくは約75°である。さらに、偏光子10の吸収軸と第2の位相差層60の遅相軸とのなす角度は、好ましくは10°〜20°であり、より好ましくは13°〜17°であり、さらに好ましくは約15°である。2つの位相差層を上記のような軸角度で配置することにより、広帯域において非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する円偏光板が得られ得る。
【0015】
A−2.偏光子
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0016】
上記ヨウ素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは、3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、ポリビニルアルコール系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。なお、ポリビニルアルコール系フィルムは、単層のフィルム(通常のフィルム成形されたフィルム)であってもよく、樹脂基材上に塗布形成されたポリビニルアルコール系樹脂層であってもよい。単層のポリビニルアルコール系フィルムから偏光子を作製する技術は当業界で周知である。樹脂基材上に塗布形成されたポリビニルアルコール系樹脂層から偏光子を作製する技術は、例えば特開2009−098653号公報に記載されている。
【0017】
偏光子の厚みは、代表的には、1μm〜80μm程度である。
【0018】
1つの実施形態においては、偏光子におけるヨウ素含有量(重量%)に対するカリウム含有量(重量%)の比K/Iは、好ましくは0.180〜0.235であり、より好ましくは0.200〜0.230である。K/Iがこのような範囲であれば、非常に優れた耐熱性を有する偏光子が得られ得る。その結果、バリア層および粘着剤層のバリア性との相乗的な効果により、非常に優れた耐久性を有する有機EL表示装置を実現し得る円偏光板を得ることができる。より詳細には、このようなK/Iを有する偏光子を含む円偏光板は、代表的には加熱による色相変化が小さい。例えば、円偏光板を95℃で500時間加熱した後のa値(ハンターの表色系)の変化量は、例えば7以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。
【0019】
偏光子は、好ましくは亜鉛成分を含む。亜鉛成分としては、例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛が挙げられる。亜鉛成分を含有することにより、より優れた耐久性を有する偏光子が得られ得る。
【0020】
A−3.位相差層
位相差層20は、上記のとおりλ/4板として機能し得る。このような位相差層の面内位相差Re(550)は、100nm〜180nmであり、好ましくは110nm〜170nmであり、さらに好ましくは120nm〜160nmであり、特に好ましくは135nm〜155nmである。位相差層20は、代表的にはnx>ny=nzまたはnx>ny>nzの屈折率楕円体を有する。なお、本明細書において例えば「ny=nz」は、厳密に等しいのみならず、実質的に等しいものを包含する。したがって、位相差層のNz係数は、例えば0.9〜2であり、好ましくは1〜1.5であり、より好ましくは1〜1.3である。
【0021】
上記位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10μm〜80μmであり、さらに好ましくは10μm〜60μmであり、最も好ましくは30μm〜50μmである。
【0022】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。フラットな波長分散特性を示すことが好ましい。フラットな波長分散特性を有するλ/4板(位相差層)を採用することにより、優れた反射防止特性および斜め方向の反射色相を実現することができる。位相差層のRe(450)/Re(550)は好ましくは0.99〜1.03であり、Re(650)/Re(550)は好ましくは0.98〜1.02である。
【0023】
位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテル系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、環状オレフィン系(ポリノルボルネン系)、ポリオレフィン系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アセテート系等の透明樹脂等の樹脂が挙げられる。位相差層20を単独で用いる実施形態においては、位相差層20は、好ましくはポリカーボネート樹脂で形成され得る。本実施形態に用いられ得るポリカーボネート樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むものであり、分子内に少なくとも一つの結合構造 −CH
2−O− を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。
【0025】
上記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基−CH
2−O−を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。また、上記ポリカーボネート樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用してもよい。以下、
構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記することがある。
【0026】
<ジヒドロキシ化合物(A)>
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基−CH
2−O−」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子又は炭素原子と酸素原子が同時に結合し得る原子としては、炭素原子が最も好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基−CH
2−O−」の数は1以上であり、好ましくは2〜4である。
【0027】
さらに具体的には、ジヒドロキシ化合物(A)としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(
4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等で例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]プロパン、2,2−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4−メチルペンタン、2,2−ビ
ス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2−ビス[3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シ
クロペンタン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル等で例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルフィド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホキシド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホン等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−5,7−ジメチルアダマンタン、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、および下記一般式(6)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
これらジヒドロキシ化合物(A)は、単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
なお、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と、他のジヒドロキシ化合物との使用割合は、上記ポリカーボネート樹脂を構成する各ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合として後述する通りである。これらのジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0031】
イソソルビドは酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。また、水分が混入しないようにすることも必要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートを製造すると、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともある。
【0032】
さらに、蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする場合がある。安定剤としては還元剤や制酸剤が用いられ、このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライドなどが挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等が挙げられるが、このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒ともなるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなることもある。
【0033】
酸化分解物を含まないイソソルビドを得るために、必要に応じてイソソルビドを蒸留しても良い。また、イソソルビドの酸化や、分解を防止するために安定剤が配合されている場合も、これらを除去するため、必要に応じて、イソソルビドを蒸留しても良い。この場合、イソソルビドの蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。雰囲気はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気にした後、減圧下で蒸留を実施する。
【0034】
例えばイソソルビドについて、このような蒸留を行うことにより、蟻酸含有量が20ppm未満、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、特に好ましくは蟻酸を全く含まないような高純度とすることができる。同時に、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量が、イソソルビド1モルに対して、金属換算量として10μモル以下、好ましくは5μモル以下、より好ましくは3μモル以下、さらに好ましくは1μモル以下、特に好ましくはアルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物を全く含まないような高純度とすることができる。
【0035】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂では、蟻酸含有量が20ppm未満のジヒドロキシ化合物(A)、例えば一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。さらに、蟻酸含有量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下、特に好ましくはジヒドロキシ化合物(A)の分解等により発生する蟻酸を全く含まないものである。かかる高純度のジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を原料として用いることにより、後述する重合反応における問題点が解決され、より着色等が少ない高品質のポリカーボネートを安定的かつ効率的に製造することができる。
【0036】
このように、蟻酸やアルカリ及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量の少ないジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を、炭酸ジエステルとの反応に供するための具体的な手段としては、特に限定されないが、例えば、次のような方法を採用することができる。
高純度のジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルとの反応直前まで、好ましくは不活性ガス雰囲気又は減圧ないし真空雰囲気といった、酸素の存在しない雰囲気下に保管する。この保管状態から取り出した後、40℃、80%RHの環境の保管の場合、通常2週間以内に、より好ましくは1週間以内に、炭酸ジエステルとの反応系に供給することが好ましい。40℃、80%RHの環境の保管であれば、通常2週間以内、好ましくは1週間以内の間、上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を、大気中に放置しておいても重合を阻害することがない。40℃、80
%RHより温度、湿度が低い場合には、保管期間をより長くすることができる。
【0037】
ここで、不活性ガス雰囲気下とは、窒素、アルゴン等の一種又は二種以上の酸素含有量が1000ppm以下、特に全く酸素を含まない雰囲気下が挙げられ、また減圧雰囲気下とは、13.3kPa以下で酸素含有量100ppm以下の雰囲気下が挙げられる。この保管系内には必要に応じて鉄の粉を主成分とした脱酸素剤、例えばエージレス(三菱瓦斯化学株式会社製)、オキシータ(上野製薬株式会社製)等の脱酸素剤や、シリカゲル、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム等の乾燥剤を共存させてもよい。
【0038】
また、ジヒドロキシ化合物(A)、例えばイソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生するので、発生させないよう、低温で保管することも有効である。
保管温度は40℃以下なら、脱酸素剤を共存させ、不活性ガス雰囲気下で酸素濃度1000ppm以下の環境を保つと、1ヶ月は重合に供することができる。保管温度は40℃以下、好ましくは、25℃以下、さらに好ましくは、10℃以下、特に好ましくは5℃以下である。
【0039】
粉体や、フレーク状のイソソルビドは、湿度は80%RHといった高湿度下でも保管は可能であるが、吸湿による質量変化があるので、水分を吸湿しないよう、アルミ防湿袋などでの密封保管や、不活性ガス雰囲気下での保管が好ましい。
さらに、これら条件は、適宜組合せて用いることができる。
なお、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を、後述する炭酸ジエステルとの反応に供する場合、その形態は特に限定されず、粉末状、フレーク状であっても、溶融状態や水溶液などの液状であってもよい。
【0040】
<ジヒドロキシ化合物(B)>
上記ポリカーボネート樹脂においては、ジヒドロキシ化合物としてジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である、ジヒドロキシ化合物(B)を用いてもよい。ジヒドロキシ化合物(B)としては、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類等を、ポリカーボネートの構成単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とともに用いることができる。
【0041】
上記ポリカーボネート樹脂に使用できる、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物を用いる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。この値が大きくなるほど、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が小さくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
【0042】
5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(II)又は(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH
2−R
1−CH
2OH (II)
HO−R
2−OH (III)
(式(II)、(III)中、R
1、R
2はそれぞれ、炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(II)において、R
1が下記一般式(IIa)(式中、R
3は炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0044】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、R
1が下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0046】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、R
1が下記一般式(IIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノールなどが挙げられる。
【0048】
また、上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(II)において、R
1が下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどが挙げられる。
【0050】
一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(II)において、R
1が下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノールなどが挙げられる。
【0052】
また、上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(III)において、R
2が下記一般式(IIIa)(式中、R
3は炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0054】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(III)において、R
2が下記一般式(IIIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0056】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又はトリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(III)において、R
2が下記一般式(IIIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオールなどが用いられる。
【0058】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、一般式(III)において、R
2が下記一般式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオールなどが用いられる。
【0060】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、一般式(III)において、R
2が下記一般式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオールなどが用いられる。
【0062】
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0063】
使用可能な脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
使用可能なオキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0064】
使用可能な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェ
ニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、9,9−ビス[4−(2
−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0065】
使用可能な環状エーテル構造を有するジオール類としては、例えば、スピログリコール類、ジオキサングルコール類が挙げられる。
なお、上記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、1種又は2種以上を式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とともに用いることができる。
【0066】
これらのジヒドロキシ化合物(B)を用いることにより、用途に応じた柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることができる。ポリカーボネート樹脂を構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物の割合は特に限定されないが、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、光学特性等の性能を低下させたりすることがある。
【0067】
上記他のジヒドロキシ化合物の中で、脂環式ジヒドロキシ化合物を用いる場合、ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の合計の割合は特に限定されないが、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0068】
また、ポリカーボネート樹脂における、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合については、任意の割合で選択できるが、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=1:99〜99:1(モル%)が好ましく、特に式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=10:90〜90:10(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくくなる傾向がある。
【0069】
さらに、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類を用いる場合、ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とこれらの各ジヒドロキシ化合物の合計の割合は特に限定されず、任意の割合で選択できる。また、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とこれらの各ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合も特に限定されず、任意の割合で選択できる。
【0070】
ここで、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネート樹脂(以下これを「ポリカーボネート共重合体」と称することがある)の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの質量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート濃度を1.00g/dlに精密に調製し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネートの還元粘度」と称す。)として、好ましくは0.40dl/g以上、より好ましくは0.43dl/g以上であり、また、通常2.00dl/g以下、好ましくは1.60dl/g以下のような重合度であることが好ましい。このポリカーボネート還元粘度が極端に低いものでは成形した時の機械的強度が弱い場合が多い。また、ポリカーボネートの還元粘度が大きくなると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形サイクルが長くなり、また得られる成形品の複屈折が大きくなり易い傾向がある。
【0071】
また、ポリカーボネート樹脂のアッベ数は好ましくは20以上、より好ましくは50以上、特に好ましくは55以上である。この値が大きくなるほど、屈折率の波長分散が小さくなり、収差が小さくなり、光学用フィルムとして好適となる。アッベ数が小さくなるほど屈折率の波長分散が大きくなり、色収差が大きくなる。従って、アッベ数の値が大きいほど好ましく、その上限は特に限定されない。
【0072】
また、ポリカーボネート樹脂の5%熱減量温度は、好ましくは340℃以上、より好ましくは345℃以上である。5%熱減量温度が高いほど、熱安定性が高くなり、より高温での使用に耐えるものとなる。また、製造温度も高くでき、より製造時の制御幅が広くできるので、製造し易くなる。低くなるほど、熱安定性が低くなり、高温での使用がしにくくなる。また、製造時の制御許容幅が狭くなり作りにくくなる。従って、5%熱減量温度の上限は特に限定されず、高ければ高いほど良く、共重合体の分解温度が上限となる。
【0073】
また、ポリカーボネート樹脂のアイゾット衝撃強度は、好ましくは30J/m
2以上である。アイゾット衝撃強度が大きい程、成形体の強度が高くなり、こわれにくくなるので、上限は特に限定されない。
また、ポリカーボネート樹脂は、110℃での単位面積あたりのフェノール成分以外の発生ガス量(以下、単に「発生ガス量」と称す場合がある。)が5ng/cm
2以下であることが好ましく、また、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物由来の発生ガス量は0.5ng/cm
2以下であることがより好ましい。
【0074】
ポリカーボネート樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与えるが、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することで、そのガラス転移温度を、用途に応じて、例えば45℃程度から155℃程度まで任意のガラス転移温度を持つ重合体として得ることができる。
【0075】
フィルム用途では通常柔軟性が必要とされるため、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が45℃以上、例えば45〜130℃に調整することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂において、上記物性は、少なくとも二つを同時に有するものが好ましく、さらに他の物性を併せもつものがより好ましい。
【0076】
ポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物(A)を含むジヒドロキシ化合物を、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法により製造することができる。
<炭酸ジエステル>
ポリカーボネート樹脂の製造方法で用いられる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示され、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0077】
炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは0.96〜1.04のモル比率である。このモル比が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなかったりする場合がある。また、このモル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となったりするばかりか、製造されたポリカーボネート共重合体中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、又は成形品の臭気の原因となることもある。
【0078】
第1の位相差層20と後述の第2の位相差層60とを組み合わせて用いる実施形態においては、位相差層20は、好ましくは環状オレフィン系樹脂で形成され得る。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0079】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0080】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0081】
位相差層20は、例えば、上記樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。上記樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記樹脂は、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0082】
上記フィルムの延伸倍率は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸温度等に応じて変化し得る。具体的には、延伸倍率は、好ましくは1.75倍〜3.00倍、さらに好ましくは1.80倍〜2.80倍、最も好ましくは1.85倍〜2.60倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する位相差層が得られ得る。
【0083】
上記フィルムの延伸温度は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくは125℃〜150℃、さらに好ましくは130℃〜140℃、最も好ましくは130℃〜135℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する位相差層が得られ得る。
【0084】
上記フィルムの延伸方法としては、任意の適切な延伸方法が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、水平方向、垂直方向、厚さ方向、対角方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。
【0085】
1つの実施形態においては、位相差層は、樹脂フィルムを自由端一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより形成される。自由端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、周速の異なるロール間で延伸する方法が挙げられる。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。
【0086】
別の実施形態においては、位相差層は、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して所定の角度の方向に連続的に斜め延伸することにより作製される。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して所定の角度の配向角(所定の角度の方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、ロールトゥロールとは、フィルムをロール搬送しながら長尺方向を揃えて積層する方式をいう。
【0087】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0088】
A−4.別の位相差層
別の位相差層(第2の位相差層)60は、上記のとおりλ/2板として機能し得る。このような位相差層の面内位相差Re(550)は、180nm〜320nmであり、より好ましくは200nm〜290nmであり、さらに好ましくは230nm〜280nmである。別の位相差層60は、代表的にはnx>ny=nzまたはnx>ny>nzの屈折率楕円体を有する。別の位相差層のNz係数は、例えば0.9〜2であり、好ましくは1〜1.5であり、より好ましくは1〜1.3である。
【0089】
別の位相差層の厚みは、λ/2板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10μm〜60μmであり、より好ましくは30μm〜50μmである。
【0090】
別の位相差層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2.0×10
−11m
2/N以下、より好ましくは2.0×10
−13m
2/N〜1.5×10
−11m
2/N、さらに好ましくは1.0×10
−12m
2/N〜1.2×10
−11m
2/Nの樹脂を含む。光弾性係数がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。したがって、このような光弾性係数を有する樹脂を用いて位相差層を形成することにより、得られる有機EL表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
【0091】
別の位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。フラットな波長分散特性を示すことが好ましい。フラットな波長分散特性を有するλ/4板(位相差層)を採用することにより、優れた反射防止特性および斜め方向の反射色相を実現することができる。位相差層のRe(450)/Re(550)は好ましくは0.99〜1.03であり、Re(650)/Re(550)は好ましくは0.98〜1.02である。別の位相差層(第2の位相差層)は、好ましくは環状オレフィン系樹脂で形成され得る。環状オレフィン系樹脂および第2の位相差層の形成方法については、第1の位相差層に関して上記A−3項で説明したとおりである。
【0092】
A−5.バリア層
バリア層30は、水分およびガス(例えば酸素)に対するバリア性を有する。バリア層の40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)は、好ましくは0.2g/m
2/24hr以下であり、より好ましくは0.1g/m
2/24hr以下であり、さらに好ましくは0.05g/m
2/24hr以下である。一方、透湿度の下限は、例えば0.001g/m
2/24hrであり、好ましくは0.005g/m
2/24hrである。バリア層の60℃、90%RH条件下でのガスバリア性は、好ましくは1.0×10
−7g/m
2/24hr〜0.5g/m
2/24hrであり、より好ましくは1.0×10
−7g/m
2/24hr〜0.1g/m
2/24hrである。透湿度およびガスバリア性がこのような範囲であれば、円偏光板を有機ELパネルに貼り合わせた場合に、有機ELパネルを空気中の水分および酸素から良好に保護し得る。また、ガスバリア層は、光学特性の点から、全光線透過率が好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0093】
バリア層30としては、上記所望の特性を有する限り、任意の適切な構成を採用することができる。バリア層30は、1つの実施形態においては、無機薄膜とアンカーコート層との積層構造を含む。この場合、バリア層30は、無機薄膜が有機ELパネル側(偏光子から遠い側)となるようにして位相差層に形成され得る。別の実施形態においては、無機薄膜は、位相差層に直接形成してもよい。
【0094】
上記無機薄膜は、任意の適切な無機化合物で形成される。無機薄膜は、好ましくは、酸化物、窒化物、水素化物およびその複合化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物を含む。具体的には、無機化合物は、酸化物、窒化物または水素化物単体である場合だけでなく、酸化物、窒化物および/または水素化物の複合化合物であり得る。このような化合物を用いることにより、透明性にさらに優れ得る。無機薄膜を形成する無機化合物は、任意の適切な構造を有し得る。具体的には、完全な結晶構造を有していてもよいし、アモルファス構造を有していてもよい。
【0095】
上記無機化合物を構成する元素としては、炭素(C)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、炭化水素、ならびに、これらの酸化物、炭化物、窒化物およびそれらの混合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられ得る。これらの中でも、炭素、ケイ素、アルミニウムが好ましく用いられる。無機化合物の具体例としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ケイ素窒化物(SiNx)、ケイ素酸化物(SiOy)、アルミニウム酸化物(AlOz)、アルミニウム窒化物等が挙げられる。SiNxのxの値としては、好ましくは0.3〜2である。SiOyのyの値としては、好ましくは1.3〜2.5である。AlOzのzの値としては、好ましくは0.7〜2.3である。ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物が特に好ましい。高いガスバリア性が安定して維持できるからである。
【0096】
無機薄膜は、任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、無機薄膜は、単一層で形成されていてもよいし、複数層の積層体であってもよい。無機薄膜が積層体である場合の具体例としては、無機酸化物層/無機窒化物層/無機酸化物層(例えば、SiOy層/SiNx層/SiOy層)の3層構成等が挙げられる。
【0097】
無機薄膜の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、蒸着法、コーティング法が挙げられる。バリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。蒸着法は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理的気相蒸着法)、CVD(化学的気相蒸着法)を包含する。
【0098】
無機薄膜の厚みは、好ましくは0.1nm〜5000nm、より好ましくは0.5nm〜1000nm、さらに好ましくは10nm〜1000nm、特に好ましくは30nm〜500nm、とりわけ好ましくは50nm〜200nmである。このような範囲であれば、十分なバリア性を有し、亀裂や剥離が発生せず、透明性に優れた無機薄膜が得られ得る。
【0099】
アンカーコート層の形成材としては、任意の適切な材料が採用され得る。当該材料としては、樹脂、炭化水素、金属、金属酸化物および金属窒化物が挙げられる。
【0100】
アンカーコート層は、例えば樹脂組成物で形成される。樹脂組成物に用いられる樹脂は、溶剤系であってもよく水系であってもよい。また、樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、光硬化性樹脂であってもよい。樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂(ビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂等)、ビニル系変性樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコキシル基含有樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネートが挙げられる。
【0101】
1つの実施形態においては、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、熱エネルギーが付加されることにより硬化し得、硬化後に透明でかつ平坦な面を形成し得る樹脂が挙げられる。代表例としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、メチルフタレート単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリ(−4−メチルペンテン−1)、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、またこれらをポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、多官能性アクリレート化合物等で変性したものや、架橋ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン/エポキシ樹脂、架橋ポリエチレン/シアナート樹脂、ポリフェニレンエーテル/エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル/シアナート樹脂等の熱可塑性樹脂で変性した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられ得る。光硬化性樹脂としては、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0102】
別の実施形態においては、樹脂組成物は、ガスバリア性の観点から、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、イソシアネート基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂及びこれらの樹脂の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む。ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0103】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を反応させることにより得ることができる。多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オルトフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジメチルフタル酸等が例示され、多価アルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロイレングリコール、1,3−プロイレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等が例示される。
【0104】
アンカーコート層を構成する樹脂の分子量は、ガスバリア性、密着性の観点から、数平均分子量が好ましくは3,000〜30,000、より好ましくは4,000〜28,000、さらに好ましくは5,000〜25,000である。
【0105】
アンカーコート層を形成する樹脂組成物には、層間の密着性向上の観点から、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジェトキシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤等、及びそれらの混合物が挙げられる。層間の密着性の観点から、好ましいシランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤は、密着性の観点から、アンカーコート層を形成する樹脂に対して、好ましくは0.1〜80質量%、更に好ましくは1〜50質量%の割合で添加される。
【0106】
アンカーコート層を形成する樹脂組成物は、硬化剤を含有することが好ましく、硬化剤としては、ポリイソシアネートを使用することが好ましい。具体的には、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートや、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。特に2官能以上のポリイソシアネートがバリア性向上の観点から好ましい。
【0107】
アンカーコート層を形成する樹脂組成物には、必要に応じて、任意の適切な添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール、水性エポキシ樹脂、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、抗菌剤、滑剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤、接着剤、可塑剤等が挙げられる。また、成膜性向上およびピンホール防止等を目的として、適切な樹脂や添加剤を添加してもよい。
【0108】
アンカーコート層を形成する金属としては、バリア性、密着性の観点から、クロム、アルミニウム、珪素、ニッケル、チタン、錫、鉄、モリブデン等又はこれら2種以上の合金が好ましく挙げられる。また、金属酸化物又は金属窒化物としては、バリア性、密着性の観点から、上記金属の酸化物、窒化物が好ましく挙げられる。好ましくは、クロム、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物であり、より好ましくは、酸化ケイ素、窒化ケイ素である。
【0109】
アンカーコート層を形成する炭化水素としては、例えばダイヤモンドライクカーボンが挙げられる。
【0110】
アンカーコート層の厚みは、好ましくは0.1nm〜5000nmであり、より好ましくは10nm〜2000nmであり、さらに好ましくは100nm〜1000nmであり、特に好ましくは300nm〜600nmである。
【0111】
アンカーコート層の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。樹脂組成物を用いる場合、形成方法としては、例えばコーティングおよび浸漬が挙げられる。コーティング方法の具体例としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイおよび刷毛が挙げられる。塗布または浸漬後、塗布層または浸漬により形成された層に任意の適切な乾燥処理を行って溶媒を蒸発させることにより、均一なアンカーコート層が形成され得る。乾燥処理としては、例えば、熱風乾燥や熱ロール乾燥などの加熱乾燥、赤外線乾燥が挙げられる。加熱温度は、例えば80℃〜200℃程度である。形成されたアンカーコート層には、耐水性、耐久性を高めるために、エネルギー線照射による架橋処理を行ってもよい。
【0112】
金属、金属酸化物または金属窒化物を用いる場合、形成方法としては、蒸着法、コーティング法が挙げられる。密着性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。蒸着法の代表例としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理的気相蒸着法)、及びCVD(化学的気相蒸着法)が挙げられる。
【0113】
アンカーコート層形成面(本発明においては、位相差層表面)へのアンカーコート形成材の塗布性、接着性を改良するため、塗布前に当該面に任意の適切な表面処理(例えば、化学処理、放電処理)を施してもよい。また、このような表面処理は、バリア層を形成する前にアンカーコート層に施してもよい。
【0114】
バリア層の表面側(無機薄膜側、粘着剤層側)に保護層を形成してもよい。保護層は、代表的には樹脂で形成される。保護層を形成する樹脂は、溶剤性であってもよく水性であってもよい。具体例として、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂系、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレンビニルアルコール系樹脂、ビニル変性樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネートが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。保護層には、バリア性、耐摩耗性、滑り性向上のために無機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラーおよび層状無機フィラーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、混合により添加してもよく、無機粒子存在下で上記樹脂のモノマーを重合することにより添加してもよい。
【0115】
保護層を形成する樹脂としては、無機薄膜のガスバリア性向上の点から水性樹脂が好ましく、ビニルアルコール樹脂またはエチレンビニルアルコール樹脂がさらに好ましい。ポリビニルアルコールとエチレン・不飽和カルボン酸共重合体とのブレンドも好適である。
【0116】
保護層の形成方法は、上述した樹脂組成物を用いてアンカーコート層を形成する方法と同様である。保護層の厚みは、好ましくは0.05μm〜10μm,さらに好ましくは0.1μm〜3μmである。
【0117】
バリア層30は、単一層であってもよく複数層で構成されてもよい。ここで、「バリア層1層」というときは、アンカーコート層と無機薄膜と必要に応じて保護層とからなる構成単位層が1層であることを意味する。バリア層が複数層で構成される場合、構成単位層の層数は、好ましくは1層〜10層であり、より好ましくは1層〜5層である。この場合、それぞれの構成単位層は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0118】
A−6.粘着剤層
粘着剤層40は、上記のとおりバリア機能を有する。円偏光板の粘着剤層にバリア機能を付与することにより、バリア層との相乗的な効果により、優れた有機ELパネル保護機能を有する円偏光板を得ることができる。さらに、有機ELパネルにバリア層を形成する場合に比べて、優れた製造効率で有機EL表示装置を作製することができる。バリア機能を有する粘着剤としては、例えば、ゴム系ポリマーをベースポリマーとするゴム系粘着剤組成物が挙げられる。
【0119】
ゴム系ポリマーとしては、例えば、1種の共役ジエン化合物を重合することによって得られる共役ジエン系重合体、2種以上の共役ジエン化合物を重合することによって得られる共役ジエン系共重合体、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体、および、これらの水添物が挙げられる。
【0120】
共役ジエン化合物としては、重合可能な共役ジエンを有する単量体であれば特に限定されない。共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0121】
芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な芳香族ビニル構造を有する単量体であれば特に限定されない。芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0122】
ジエン系共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。また、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物以外の化合物を共重合して、ジエン系共重合体を得てもよい。
【0123】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物のモル比が、共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合=10/90〜90/10(モル%)であることが好ましい。
【0124】
このような共役ジエン系(共)重合体の具体例としては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イソプレン−スチレン共重合体が好ましい。また、これらの水添物も好適に用いることができる。
【0125】
ゴム系ポリマーとして、共役ジエン系(共)重合体の他にも、イソブチレン(IB)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレンプロピレン共重合体−スチレンブロック共重合体等も用いることができる。ゴム系ポリマーは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0126】
本発明に用いられ得るゴム系ポリマーは、ゴム系ポリマー全体中に、上記共役ジエン系(共)重合体を好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含む。共役ジエン系(共)重合体の含有量の上限は特に限定されるものではなく、100重量%(すなわち、共役ジエン系(共)重合体のみからなるゴム系ポリマー)であってもよい。
【0127】
上記のとおり、粘着剤組成物は、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む。粘着剤組成物におけるゴム系ポリマーの含有量は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。ゴム系ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、例えば90重量%以下である。
【0128】
粘着剤組成物は、ゴム系ポリマーに加えて、任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、エポキシ化合物、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂、ビニルトルエン樹脂など)、可塑剤、充填剤(例えば、層状シリケート、クレイ材料など)、老化防止剤が挙げられる。粘着剤組成物に添加される添加剤の種類、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。粘着剤組成物における添加剤の含有量(総量)は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0129】
粘着剤層40の厚さは、例えば1μm〜300μm程度であり、好ましくは1μm〜200μmであり、より好ましくは2μm〜100μmであり、さらに好ましくは25μm〜100μmである。
【0130】
粘着剤層40は、上記のとおりバリア性を有し、代表的には水分およびガス(例えば酸素)に対するバリア性を有する。粘着剤層の厚み100μmにおける40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)は、好ましくは200g/m
2/24hr以下であり、より好ましくは150g/m
2/24hr以下であり、さらに好ましくは100g/m
2/24hr以下であり、特に好ましくは70g/m
2/24hr以下である。透湿度の下限は、例えば5g/m
2/24hrであり、好ましくは15g/m
2/24hrである。粘着剤層の透湿度がこのような範囲であれば、上記のバリア層のバリア性との相乗的な効果により、円偏光板を有機ELパネルに貼り合わせた場合に、有機ELパネルを空気中の水分および酸素から良好に保護し得る。
【0131】
粘着剤層の表面には、使用に供されるまで、剥離フィルムが貼り合わされていることが好ましい。
【0132】
A−7.保護フィルム
保護フィルム50は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0133】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0134】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C
1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0135】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0136】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0137】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0138】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0139】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0140】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
【0141】
保護フィルム40には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。保護フィルムの厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜150μmである。
【0142】
内側保護フィルムを採用する場合、当該内側保護フィルムは光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。内側保護フィルムのRe(550)は、好ましくは0nm〜8nmであり、より好ましくは0nm〜6nmであり、さらに好ましくは0nm〜3nmである。内側保護フィルムのRth(550)は、好ましくは−8nm〜+8nmであり、より好ましくは−6nm〜+6nmであり、さらに好ましくは−3nm〜+3nmである。内側保護フィルムが光学的に等方性であれば、表示装置の視野角をより拡大し、カラーシフトをより低減することができる。
【0143】
A−8.円偏光板の製造方法
以下、本発明の円偏光板の製造方法の代表的な実施形態について説明する。本実施形態は、偏光子と位相差層とをロールトゥロールにより連続的に積層する方式であり、非常に優れた製造効率で円偏光板を製造することができる。
【0144】
まず、位相差層20を構成する位相差フィルムを準備する。当該位相差フィルムは、長尺状であり、かつ、長尺方向に対して所定の角度の方向に遅相軸を有する。このような位相差フィルムの材料、特性および製造方法等は、上記A−3項で説明したとおりである。
【0145】
次に、位相差フィルムの一方の面に補強フィルムを、粘着剤を介してロールトゥロールにより貼り合わせ、位相差フィルム/補強フィルムの積層体を得る。代表的には、粘着剤を付与した補強フィルムと位相差フィルムとをロールトゥロールにより貼り合わせる。
【0146】
補強フィルムの材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。補強フィルムは、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。
【0147】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。好ましくはポリエステル系樹脂であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。このような樹脂は高い寸法安定性・強靭性・耐熱性を有し、かつ、副資材と成りうる観点からも汎用性に優れるという利点がある。
【0148】
補強フィルムは、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、補強フィルムの材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤の複数を含有することが好ましい。
【0149】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、補強フィルムのベース樹脂(補強フィルムがブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0150】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、補強フィルムのベース樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0151】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、補強フィルムのベース樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0152】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、補強フィルムを形成するベース樹脂(補強フィルムがブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0153】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0154】
補強フィルムの厚みとしては、任意の適切な厚みを採用し得る。補強フィルムの厚みは、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは10〜250μmであり、さらに好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜150μmである。さらに、補強フィルムおよび後述の粘着剤の総厚みは、好ましくは位相差フィルムの厚みの1倍〜4倍である。
【0155】
補強フィルムは、単層でも良いし、2層以上の積層体であっても良い。
【0156】
補強フィルムは、23℃における引張り弾性率(GPa)と厚み(μm)の積(GPa・μm)が、好ましくは20〜500であり、より好ましくは30〜300である。この値は、補強フィルムの形成材料、添加剤の種類および量、ならびに、補強フィルムが積層体である場合には各層の厚みの比を調整することにより制御することができる。上記積が20(GPa・μm)未満である場合には、補強フィルムの腰が不十分であり、位相差フィルムとの積層時に皺が入って外観を損なう場合がある。上記積が500(GPa・μm)を超える場合には、補強フィルムの腰が強すぎて、位相差フィルムから剥離する際のハンドリング性が不十分となる場合がある。
【0157】
補強フィルムの線膨張係数はできるだけ小さいことが好ましい。線膨張係数は、好ましくは5ppm/℃〜50ppm/℃であり、より好ましくは10ppm/℃〜30ppm/℃である。補強フィルムの加熱による寸法変化率もまた、できるだけ小さいことが好ましい。例えば180℃で5分間加熱後の寸法変化率は、好ましくは0.1%〜5.0%であり、より好ましくは0.5%〜3.0%である。線膨張係数および/または加熱による寸法変化率が小さい補強フィルムを用いることにより、バリア層形成過程の高温環境下においても、位相差フィルムの寸法変化を抑制することができ、分子の配向変化を軽減することができる。その結果、位相差フィルムの光学特性(遅相軸方向、位相差値等)を良好に維持することができる。
【0158】
補強フィルムは、1つの実施形態においては延伸されている。延伸条件は、目的、所望の線膨張係数等に応じて変化し得る。延伸倍率は、好ましくは1.5倍〜10倍であり、より好ましくは3.0倍〜5.0倍である。延伸温度は、好ましくは補強フィルムのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+50℃)である。延伸は、好ましくは二軸延伸である。熱的性質および機械的性質の面内における異方性を軽減することができるからである。二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法を用いてもよい。
【0159】
A−3項に記載したような位相差フィルムおよび上記のような補強フィルムを用いることにより、位相差フィルム/補強フィルムの積層体をバリア層形成のために蒸着法(例えばスパッタリング)に供した場合に、以下の利点が得られる:すなわち、斜め延伸により得られる位相差フィルムは、もともと配向(遅相軸方向)のバラツキが大きいという傾向にあり、また、熱的および/または機械的刺激により配向(遅相軸方向)のバラツキがさらに大きくなるという問題が生じる場合がある。さらに、蒸着法で高温環境下に置かれると、フィルムが割れたり変形したりする場合がある。上記のような位相差フィルムと補強フィルムとを組み合わせて用いることにより、蒸着法のような高温環境下に供した場合であっても位相差フィルムの光学特性および機械的特性を許容範囲内に維持することができる。したがって、斜め延伸により得られた位相差フィルムの特性を維持しつつ、その表面にバリア層を形成することができる。結果として、バリア層が形成された位相差フィルムをロールトゥロールに供することができる。
【0160】
補強フィルム用粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を用いることができる。粘着剤のベースポリマーの具体例としては、 (メタ)アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマーが挙げられる。粘着剤は、好ましくは、炭素数1〜20であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分(モノマー単位)として有する(メタ)アクリル系ポリマーを含有する。なお、「主成分」とは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位(成分)の内、最も構成割合の高いモノマーを意味する。このような粘着剤の詳細は、例えば特開2014−141649号公報に記載されており、該当する記載は本明細書に参考として援用される。
【0161】
次に、位相差フィルム/補強フィルムの積層体の位相差フィルム表面にバリア層を形成する。より詳細には、位相差フィルム表面にアンカーコート層を形成し、当該アンカーコート層表面に無機薄膜を形成し、必要に応じて、無機薄膜表面に保護層を形成する。アンカーコート層、無機薄膜および保護層の材料、形成方法等は、上記A−5項で説明したとおりである。
【0162】
アンカーコート層形成後、無機薄膜形成後、および/または保護層形成後に、加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、得られるバリア層のバリア性および膜質を安定化させることができ、および、得られるバリア層において気泡を微細に分散させることができ当該気泡による悪影響を防止することができる。加熱処理における加熱方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。具体例としては、所定温度に設定したオーブンまたは恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱版と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法が挙げられる。コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱処理を行うこともできる。
【0163】
加熱処理の条件は、バリア層の構造、形成材料および厚み等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。加熱処理の温度は、代表的には位相差フィルムの融点以下の温度であり、好ましくは位相差フィルムの光学特性および機械的特性に悪影響を与えない温度である。具体的には、加熱処理の温度は、加熱処理の効果が発現するために必要な処理時間を適度に設定できることから、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。一方、加熱処理温度の上限は、バリア性の低下を防止する観点から、例えば200℃、好ましくは160℃である。加熱処理時間は、加熱処理温度に依存し得る。例えば加熱処理温度が150℃である場合、加熱処理時間は3〜60分程度であり得る。
【0164】
このようにして、バリア層/位相差フィルム/補強フィルムの構成を有する光学積層体(円偏光板用中間体)が作製される。これまでの記載から明らかなように、本実施形態における光学積層体は長尺状(記載例ではロール状)である。上記のとおり、特定の位相差フィルムと特定の補強フィルムとを組み合わせて用いることにより、斜め延伸により得られた位相差フィルムの光学特性および機械的特性を維持しつつ、その表面にバリア層を形成することができる。したがって、バリア層が形成された位相差フィルムをロールトゥロールに供することができる。すなわち、このようにして得られた光学積層体は、本発明において実際に得られた成果の1つであり、かつ、本発明の円偏光板およびその優れた効果を実現する手段の1つである。
【0165】
次に、上記光学積層体から補強フィルムを剥離し、剥離面に偏光子をロールトゥロールにより貼り合わせる。1つの実施形態においては、補強フィルムを剥離して得られたバリア層/位相差フィルムの積層体と偏光板(偏光子/保護フィルムの積層体)とを、偏光子が位相差フィルムに隣接するようにしてロールトゥロールにより貼り合わせる。別の実施形態においては、バリア層/位相差フィルムの積層体と偏光子と保護フィルムとを一括してロールトゥロールにより貼り合わせる。さらに別の実施形態においては、バリア層/位相差フィルムの積層体と偏光子とをロールトゥロールにより貼り合わせ、次いで保護フィルムをロールトゥロールにより貼り合わせる。偏光板または偏光子は長尺状(記載例ではロール状)であり、かつ、長尺方向に吸収軸を有する。本発明の実施形態においては、上記のとおり、斜め方向(長尺方向に対して所定の角度の方向)に遅相軸を有する位相差フィルムにバリア層を形成することができるので、通常の縦一軸延伸で得られる偏光子を用いてロールトゥロールによる積層を行うことができる。
【0166】
最後に、バリア層表面に粘着剤層を形成する。粘着剤層を構成する粘着剤は、上記A−6項で説明したとおりである。
【0167】
以上のようにして、本発明の円偏光板が得られる。
【0168】
ロールトゥロールによる円偏光板の製造方法の代表例として、位相差層20を単独で用いる場合について説明したが、第1の位相差層20と第2の位相差層60とを組み合わせて用いる場合にも同様の手順が適用されることは当業者に自明である。具体的には、位相差層20を構成する位相差フィルムの代わりに、第1の位相差層20を構成する位相差フィルムと第2の位相差層60を構成する位相差フィルムとの積層体を用いればよい。
【0169】
本発明の円偏光板は、いわゆるバッチ式により製造してもよい。すなわち、バリア層が形成された位相差フィルムおよび偏光板(偏光子/保護フィルムの積層体)を所定サイズに裁断して貼り合わせてもよい。あるいは、バリア層が形成された位相差フィルム、偏光子および保護フィルムをそれぞれ所定サイズに裁断して貼り合わせてもよい。バッチ式であれば、ロール状態において偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸との角度を制御する必要がないので、縦延伸または横延伸により得られた位相差フィルムを用いることができる。
【0170】
B.有機EL表示装置
本発明の有機EL表示装置は、その視認側に上記A項に記載の円偏光板を備える。円偏光板は、粘着剤層が有機ELパネル側となるように(偏光子が視認側となるように)積層されている。
【実施例】
【0171】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0172】
(1)耐熱性
実施例および比較例で得られた円偏光板を50mm×50mmサイズに切断し、測定試料とした。この測定試料を石英ガラスに貼りあわせ、95℃のオーブンに500時間保管し、保管前後の色相値の変化量を計測した。色相値は、村上色彩技術研究所製「DOT−3」で測定した。
(2)透湿度
実施例および比較例で得られた円偏光板を10cmΦの円状に切り出し、測定試料とした。この測定試料について、テクノロックス社製「DELTAPERM」を用いて、40℃、90%RHの試験条件で透湿度を測定した。なお、比較例2の円偏光板については測定上限値を超えたため、MOCON社製「PERMTRAN」を用いて、40℃、90%RHの試験条件で透湿度を測定した。
【0173】
<実施例1>
市販のポリビニルアルコール(PVA)フィルム(クラレ社製「VF−PS」)を、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて約6倍に一軸延伸して長尺の偏光子(厚さ30μm)を得た。偏光子におけるヨウ素濃度(重量%)とカリウム濃度(重量%)との比K/Iは0.402であった。この偏光子の片面に保護フィルムとして市販のTACフィルム(富士写真フィルム社製「TD80UL」、厚さ80μm)を、PVA系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光子/保護フィルムの構成を有する偏光板を得た。この偏光板を縦20cm×横30cmに打ち抜いた。このとき、偏光子の吸収軸が縦方向となるようにした。
一方、市販の長尺状のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノア」、厚さ50μm)を1.52倍に延伸することによってRe(550)=140nmの位相差フィルム(厚さ35μm)を得た。この位相差フィルムにバリア層(厚さ150nm)を形成し、バリア層/位相差層の積層体を得た。なお、バリア層として、SiOターゲットを用いたスパッタ法によりSiOx膜を形成した。バリア層の透湿度は、0.05g/m
2/24hrであった。
上記で得られた偏光板とバリア層/位相差層の積層体とを、偏光子と位相差層とが隣接するように、アクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このとき、位相差層の遅相軸が偏光子の吸収軸に対して反時計回りで45°となるようにした。
最後に、バリア層表面にバリア機能を有する粘着剤層(厚さ50μm)を形成し、保護フィルム/偏光子/位相差層(λ/4板)/バリア層/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。なお、粘着剤層を構成する粘着剤としてスチレン・エチレンプロピレン共重合体・スチレンのブロックコポリマー(クラレ社製、商品名「セプトン2063」、スチレン含有量:13重量%)100重量部に対してポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製、「商品名「日石ポリブテンHV−300」」10重量部、テルペンフェノール粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターTH130」)40重量部、および芳香族粘着付与剤(イーストマンケミカル社製、商品名「ピコラスチックA5」)を配合し作製した粘着剤を用いた。粘着剤層の透湿度は、10g/m
2/24hr(50μm換算)であった。得られた円偏光板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0174】
<実施例2>
市販の長尺状のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノア」、厚さ75μm)を2.55倍に延伸することによってRe(550)=270nmの位相差フィルム(厚さ45μm)を得た。この位相差フィルム(第2の位相差層)と実施例1で得られた位相差フィルム(第1の位相差層)とを積層し、次いで、実施例1と同様にして第1の位相差層表面にバリア層を形成し、バリア層/第1の位相差層/第2の位相差層の積層体を得た。この積層体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/第2の位相差層(λ/2板)/第1の位相差層(λ/4板)/バリア層/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。得られた円偏光板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0175】
<実施例3>
K/Iが0.210である偏光子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、保護フィルム/偏光子/第2の位相差層(λ/2板)/第1の位相差層(λ/4板)/バリア層/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。得られた円偏光板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0176】
<比較例1>
バリア層を形成しなかったこと、および、通常のアクリル系粘着剤層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、保護フィルム/偏光子/第2の位相差層(λ/2板)/第1の位相差層(λ/4板)/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。得られた円偏光板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0177】
<比較例2>
バリア層を形成しなかったこと以外は実施例2と同様にして、保護フィルム/偏光子/第2の位相差層(λ/2板)/第1の位相差層(λ/4板)/粘着剤層の構成を有する円偏光板を得た。得られた円偏光板を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
表1から明らかなように、本発明の実施例の円偏光板はバリア性(透湿性)が非常に優れていることがわかる。さらに、実施例2と実施例3とを比較すると明らかなように、K/Iを調整して偏光子の耐熱性を向上させることにより、優れた透湿度と耐熱性を同時に満足する偏光板が得られる。