(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738145
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】次亜塩素酸ソーダの製造方法及び次亜塩素酸ソーダの製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 11/06 20060101AFI20200730BHJP
C25B 1/46 20060101ALI20200730BHJP
C02F 5/02 20060101ALI20200730BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20200730BHJP
C02F 9/14 20060101ALI20200730BHJP
C02F 9/08 20060101ALI20200730BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20200730BHJP
C02F 9/12 20060101ALI20200730BHJP
C02F 9/00 20060101ALI20200730BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20200730BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20200730BHJP
C02F 1/461 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
C01B11/06 A
C25B1/46
C02F5/02 B
C02F5/02 C
C02F1/42 B
C02F1/42 H
C02F9/14
C02F9/08
C02F9/04
C02F9/12
C02F9/00
C02F5/00 620B
B01J45/00
C02F1/461 Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-249495(P2015-249495)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-114705(P2017-114705A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じて発表 2015年8月3日 http://jsmcwm.or.jp/?page_id=4742 第26回廃棄物資源環境学会研究発表会B3‐6「隔膜電解法による脱塩濃縮水のリサイクルに関する研究」 [刊行物等]集会において発表 2015年9月2日 第26回廃棄物資源環境学会研究発表会 九州大学伊都キャンパス「隔膜電解法による脱塩濃縮水のリサイクルに関する研究」B3‐6 [刊行物等]電気通信回線を通じて発表 2015年8月3日 http://jsmcwm.or.jp/?page_id=4742 第26回廃棄物資源環境学会研究発表会D4−9「浸出水中のカルシウムイオン高度処理に関する研究」 [刊行物等]集会において発表 2015年9月4日 第26回廃棄物資源環境学会研究発表会 九州大学伊都キャンパス「浸出水中のカルシウムイオン高度処理に関する研究」D4−9
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ−ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】滝本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】樋口 壯太郎
(72)【発明者】
【氏名】武下 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 尚季
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−144435(JP,A)
【文献】
特開平06−010177(JP,A)
【文献】
特開昭51−052661(JP,A)
【文献】
特表2011−518257(JP,A)
【文献】
特開2007−330831(JP,A)
【文献】
特開2014−014738(JP,A)
【文献】
特開昭63−258690(JP,A)
【文献】
特開2011−116944(JP,A)
【文献】
特表2002−528253(JP,A)
【文献】
特開2007−054819(JP,A)
【文献】
特開昭58−156393(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0089116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B7/00−11/24
C02F1/42,1/46−1/48
C25B1/00−9/20,13/00−15/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理工程と、
前記軟化処理工程で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成工程とを備え、
前記軟化処理工程は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理工程と、前記第1軟化処理工程の後にキレート吸着法でカルシウム濃度をさらに低下させる第2軟化処理工程を含み、
前記第1軟化処理工程は、脱塩濃縮水をpH11以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入することにより炭酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する工程を含むことを特徴とする次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項2】
前記第1軟化処理工程は、脱塩濃縮水をpH12以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入することによりカルシウム濃度を10mg/L以下に調整する工程を含む請求項1記載の次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項3】
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理工程と、
前記軟化処理工程で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成工程とを備え、
前記軟化処理工程は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理工程と、前記第1軟化処理工程の後にキレート吸着法でカルシウム濃度をさらに低下させる第2軟化処理工程を含み、
前記第1軟化処理工程は、カルシウム濃度250mg/L以下の脱塩濃縮水をpH10以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の1〜2倍のシュウ酸を注入することによりシュウ酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する工程を含む次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項4】
第2軟化処理工程は、キレート吸着法でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させる工程である請求項1から3の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項5】
前記軟化処理工程の前に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理工程と脱塩処理工程をさらに備えている請求項1から4の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項6】
前記軟化処理工程の前に、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を低下させる前置軟化処理工程と、生物処理工程と、凝集沈殿処理工程と、砂ろ過処理工程と、活性炭吸着処理工程と、キレート吸着処理工程とからなる群から選ばれる1以上の処理工程または2以上の処理工程の組合せからなる前処理工程を備えている請求項1から4の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造方法。
【請求項7】
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理装置と、
前記軟化処理装置で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解装置と、
前記電解装置で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成装置とを備え、
前記軟化処理装置は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理装置と、前記第1軟化処理装置の後にキレート吸着法でカルシウム濃度を低下させる第2軟化処理装置を含み、
前記第1軟化処理装置は、脱塩濃縮水をpH11以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入する反応槽と、反応後に炭酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されていることを特徴とする次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【請求項8】
前記第1軟化処理装置は、脱塩濃縮水をpH12以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入する反応槽と、反応後にカルシウム塩を沈殿させカルシウム濃度を10mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されている請求項7記載の次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【請求項9】
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理装置と、
前記軟化処理装置で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解装置と、
前記電解装置で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成装置とを備え、
前記軟化処理装置は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理装置と、前記第1軟化処理装置の後にキレート吸着法でカルシウム濃度を低下させる第2軟化処理装置を含み、
前記第1軟化処理装置は、カルシウム濃度250mg/L以下の脱塩濃縮水をpH10以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対してモル比で理論値の1〜2倍のシュウ酸を注入する反応槽と、反応後にシュウ酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されている次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【請求項10】
第2軟化処理装置は、キレート吸着法でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させるキレート吸着機構を備えて構成されている請求項7から9の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【請求項11】
前記軟化処理装置の前段に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理装置と脱塩処理装置をさらに備えている請求項7から10の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【請求項12】
前記軟化処理装置の前段に、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を低下させる前置軟化処理装置と、生物処理装置と、凝集沈殿処理装置と、砂ろ過処理装置と、活性炭吸着処理装置と、キレート吸着処理装置とからなる群から選ばれる1以上の処理装置または2以上の処理装置の組合せからなる前処理装置を備えている請求項7から10の何れかに記載の次亜塩素酸ソーダの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物由来の脱塩濃縮水のリサイクルのための次亜塩素酸ソーダの製造方法及び次亜塩素酸ソーダの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、焼却残渣を埋め立てた最終処分場では、浸出水の高塩類化が進んでいる。浸出水を脱塩処理している施設ではその処理プロセスから排出される脱塩処理時の濃縮水および乾燥塩の処理が問題になっている。このような濃縮水および乾燥塩をリサイクルするために滅菌剤の生成処理が実用化されつつある。
【0003】
最終処分場の浸出水を脱塩処理する際に発生する脱塩濃縮水以外に、都市ごみ焼却炉や溶融炉に備えた湿式排ガス処理装置で生じる洗煙排水や、乾式二段バグフィルタの後段側のナトリウム系脱塩剤噴霧残渣等の高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水も同様に滅菌剤としてリサイクルすることができる。
【0004】
特許文献1には、脱塩濃縮処理水を電解処理して次亜塩素酸溶液を生成する際に、カルシウム及びマグネシウム由来のスケールの析出を抑制して安定した電解処理を行うことができる有機性廃水の処理方法が提案されている。
【0005】
当該有機性廃水の処理方法は、塩類及び有機物を含有する有機性廃水に対して、軟化処理を行ってカルシウム濃度を低減させる第1軟化処理工程と、生物処理、凝集沈殿処理、活性炭吸着処理、砂ろ過処理、精密ろ過膜処理からなる群から選ばれる1以上の処理または2以上の組み合わせからなるSS除去処理工程とを備えると共に、前記第1軟化処理工程及びSS除去処理工程を実施した後に、電気透析処理により電気透析濃縮水と電気透析処理水とに分離する電気透析処理工程と、逆浸透膜処理により逆浸透濃縮水と逆浸透膜処理水とに分離する逆浸透膜処理工程と、NF膜処理によりNF膜濃縮水とNF膜処理水とに分離するNF膜処理工程のうちの何れかの工程或いは2種類以上の工程を含む塩類除去処理工程を備え、前記塩類除去工程で得られた塩類濃縮水、すなわち電気透析濃縮水、逆浸透濃縮水又はNF膜濃縮水に対して、軟化処理を行ってカルシウム濃度を低減させる第2軟化処理工程を実施し、次いで、第2軟化処理工程で得られた第2軟化処理水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウム溶液を生成する電解処理工程を実施するように構成されている。
【0006】
上述の有機性廃水の処理方法によれば、電解処理工程で被処理水のpHを10以上に調整して電気分解することにより、有効塩素濃度を2500mg/Lと安定させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−14738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された有機性廃水の処理方法によれば、電解処理工程で用いられる電解処理装置が、軟化処理工程で得られた軟化処理水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウム溶液を生成する電解処理装置、つまり電解槽で電解により生成された塩素ガス及び苛性ソーダを槽内で反応させて次亜塩素酸ソーダを生成する無隔膜法を採用した電解処理装置を用いるため、生成される次亜塩素酸ソーダの濃度が0.5%以下に制限されるという問題があった。
【0009】
無隔膜法を採用する場合には電解水を精製するための前処理の精度がそれほど要求されない。しかし、電解効率もそれほど高くないため高濃度の次亜塩素酸ソーダを製造することができないのであった。
【0010】
脱塩濃縮水からイオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解法を採用すると、電解効率及び純度が高く濃度が5%以上の次亜塩素酸ソーダを製造することが期待できるのであるが、電解水を精製するための高い精度の前処理、例えばカルシウム濃度やマグネシウム濃度をμg/Lオーダーに調整する必要があった。
【0011】
カルシウム濃度やマグネシウム濃度が高いと電解槽に配置されたイオン交換膜にそれらに起因するスケールが付着し、電流を確保するために必要な電解電圧が上昇して数十時間で電解槽の運転を停止せざるを得ない状況になっていたためである。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水からカルシウムやマグネシウム等のスケール原因物質を効果的に除去して、長時間連続して電解処理を可能にすることで、高濃度の次亜塩素酸ソーダを得ることができる次亜塩素酸ソーダの製造方法及び次亜塩素酸ソーダの製造装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による次亜塩素酸ソーダの製造方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、 高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理工程と、
前記軟化処理工程で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解工程と、前記電解工程で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成工程とを備え、前記軟化処理工程は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理工程と、前記第1軟化処理工程の後にキレート吸着法でカルシウム濃度をさらに低下させる第2軟化処理工程を含み、前記第1軟化処理工程は、脱塩濃縮水をpH11以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入することにより炭酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する工程を含む点にある。
【0014】
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水に対して、先ず沈殿法でカルシウム濃度を低下させた後に、キレート吸着法でさらにカルシウム濃度を低下させるので、高価なキレートを長期に渡り機能させることができ、その結果イオン交換膜へのスケールの付着が効果的に抑制されて、長時間にわたって電解工程を継続させることができ、高濃度の次亜塩素酸ソーダを得ることができる。
【0015】
そして、本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脱塩濃縮水のpHを高アルカリ状態に調整して炭酸ソーダを過剰気味に注入することによって、効果的に脱塩濃縮水中のカルシウム濃度を低下させることができるという新知見を得た。pH11以上に調整し、炭酸ソーダを脱塩濃縮水のカルシウム濃度に対して2〜10モル、理論値(1モル)より過剰気味に注入することにより、脱塩濃縮水にイオンとして含有されるカルシウムと炭酸ソーダとの反応を促進させ、カルシウム濃度を20mg/L以下に調整することができるようになる。
【0016】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第1軟化処理工程は、脱塩濃縮水をpH12以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入することによりカルシウム濃度を10mg/L以下に調整する工程を含む点にある。
【0017】
pH12以上に調整し、炭酸ソーダを脱塩濃縮水のカルシウム濃度に対して2〜10モル、理論値(1モル)より過剰気味に注入することにより、脱塩濃縮水にイオンとして含有されるカルシウムと炭酸ソーダとの反応を促進させ、カルシウム濃度を10mg/L以下に調整することができるようになる。
【0018】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理工程と、前記軟化処理工程で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解工程と、前記電解工程で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成工程とを備え、前記軟化処理工程は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理工程と、前記第1軟化処理工程の後にキレート吸着法でカルシウム濃度をさらに低下させる第2軟化処理工程を含み、前記第1軟化処理工程は、カルシウム濃度250mg/L以下の脱塩濃縮水をpH10以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の1〜2倍のシュウ酸を注入することによりシュウ酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する工程を含む点にある。
【0019】
本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脱塩濃縮水のpHを高アルカリ状態に調整してシュウ酸を注入することによって、効果的に脱塩濃縮水中のカルシウム濃度を低下させることができるという新知見を得た。pH10以上に調整し、シュウ酸を脱塩濃縮水のカルシウム濃度に対して1〜2モル、理論値(1モル)より過剰気味に注入することにより、脱塩濃縮水にイオンとして含有されるカルシウムとシュウ酸との反応を促進させることができるようになるのである。沈殿法にシュウ酸を用いると、炭酸ソーダを用いる場合に必要となる無機系の凝集剤が不要になり、ランニングコストを低減できる。
【0020】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、第2軟化処理工程は、キレート吸着法でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させる工程である点にある。
【0021】
第2軟化処理工程でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させると、イオン交換膜へのスケールの付着がより効果的に抑制され、より一層長時間にわたって電解工程を継続させることができる。
【0022】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記軟化処理工程の前に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理工程と脱塩処理工程をさらに備えている点にある。
【0023】
前置軟化処理工程と脱塩処理工程で脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させておけば、第1軟化処理工程および第2軟化処理工程で効果的にカルシウム濃度を低下させることができ、イオン交換膜へのスケールの付着を効果的に抑制することができるようになる。また、シュウ酸を用いた沈殿法を採用する場合には、炭酸ソーダを用いる場合以上の汚泥発生量に抑制できる。
【0024】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記軟化処理工程の前に、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を低下させる前置軟化処理工程と、生物処理工程と、凝集沈殿処理工程と、砂ろ過処理工程と、活性炭吸着処理工程と、キレート吸着処理工程とからなる群から選ばれる1以上の処理工程または2以上の処理工程の組合せからなる前処理工程を備えている点にある。
【0025】
本発明による次亜塩素酸ソーダの製造装置の第一の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理装置と、前記軟化処理装置で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解装置と、前記電解装置で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成装置とを備え、前記軟化処理装置は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理装置と、前記第1軟化処理装置の後にキレート吸着法でカルシウム濃度を低下させる第2軟化処理装置を含み、前記第1軟化処理装置は、脱塩濃縮水をpH11以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入する反応槽と、反応後に炭酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されている点にある。
【0026】
同第二の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第1軟化処理装置は、脱塩濃縮水をpH12以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の2〜10倍の炭酸ソーダを注入する反応槽と、反応後にカルシウム塩を沈殿させカルシウム濃度を10mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されている点にある。
【0027】
同第三の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理装置と、前記軟化処理装置で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解装置と、前記電解装置で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成装置とを備え、前記軟化処理装置は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理装置と、前記第1軟化処理装置の後にキレート吸着法でカルシウム濃度を低下させる第2軟化処理装置を含み、前記第1軟化処理装置は、カルシウム濃度250mg/L以下の脱塩濃縮水をpH10以上に調整するとともに、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して
モル比で理論値の1〜2倍のシュウ酸を注入する反応槽と、反応後にシュウ酸カルシウムとして沈殿除去してカルシウム濃度を20mg/L以下に調整する凝集沈殿機構を備えて構成されている点にある。
【0028】
同第四の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、第2軟化処理装置は、キレート吸着法でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させるキレート吸着機構を備えて構成されている点にある。
【0029】
同第五の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記軟化処理装置の前段に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理装置と脱塩処理装置をさらに備えている点にある。
【0030】
同第六の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記軟化処理装置の前段に、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を低下させる前置軟化処理装置と、生物処理装置と、凝集沈殿処理装置と、砂ろ過処理装置と、活性炭吸着処理装置と、キレート吸着処理装置とからなる群から選ばれる1以上の処理装置または2以上の処理装置の組合せからなる前処理装置を備えている点にある。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水からカルシウムやマグネシウム等のスケール原因物質を効果的に除去して、長時間連続して電解処理を可能にすることで、高濃度の次亜塩素酸ソーダを得ることができる次亜塩素酸ソーダの製造方法及び次亜塩素酸ソーダの製造装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)は高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水の処理プロセス及び本発明による次亜塩素酸ソーダの製造方法の説明図、(b)は軟化処理工程の説明図、(c)は別実施形態を示す軟化処理工程の説明図
【
図2】本発明による次亜塩素酸ソーダの製造方法を実施するための製造装置の説明図
【
図13】別実施形態を示す第1軟化処理工程の実験条件の説明図
【
図14】別実施形態を示す第1軟化処理工程の実験結果の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の次亜塩素酸ソーダの製造方法及び次亜塩素酸ソーダの製造装置を説明する。
【0034】
図1(a)には、焼却残渣等を埋め立てた最終処分場で生じる高塩類含有浸出水から次亜塩素酸ソーダを生成するプロセスが示されている。
【0035】
埋立地で生じる浸出水は浸出水調整池に貯留され、前置軟化処理工程で例えばライムソーダ法等の沈殿法を用いて浸出水に含まれるマンガン、マグネシウム、カルシウム等の多価イオンが除去される。前置軟化処理工程では全カルシウム濃度が20mg/L以下に調整される。全カルシウム濃度とは、浸出水に含まれるカルシウムイオン、溶解して未解離のカルシウム塩等を含む全てのカルシウムの濃度である。
【0036】
ライムソーダ法とは、アルカリ領域となるようにpHを調整した浸出水に炭酸ソーダを注入し、浸出水に含まれるカルシウムイオンを炭酸カルシウムとして沈殿除去する方法である。
【0037】
前置軟化処理工程の後に接触酸化法による生物処理工程が実行され、生物処理された被処理水は凝集沈殿処理工程で凝集剤が添加された後に砂ろ過処理工程で砂ろ過されて固形分が除去される。生物処理工程は好気処理や嫌気処理を組み合わせた硝化脱窒プロセス等公知の生物処理が採用される。
【0038】
さらに活性炭吸着処理工程でCOD成分や着色成分等が除去され、キレート吸着処理工程で被処理水中の水銀や鉛等の重金属類が除去された後に、例えば電気透析装置を用いた脱塩処理工程が実行される。
【0039】
脱塩処理工程で脱塩された被処理水は河川等に放流され、脱塩処理工程で濃縮された脱塩濃縮水に本発明の次亜塩素酸ソーダの製造方法が適用されて次亜塩素酸ソーダが製造される。つまり、脱塩処理工程で濃縮された脱塩濃縮水が高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水となる。脱塩処理工程を経た脱塩濃縮水の全カルシウム濃度が、50mg/L〜300mg/Lの範囲となり、好ましくは250mg/L以下の範囲に入るように前置軟化処理工程で軟化処理が実行される。
【0040】
尚、本発明が適用される高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水は、必ずしも上述の処理と同じ処理を経たものである必要はなく、例えば脱塩処理工程で電気透析法以外でもよい。また、高塩類含有浸出水以外に、都市ごみ焼却炉や溶融炉に備えた湿式排ガス処理装置で生じる洗煙排水や、乾式二段バグフィルタの後段側のナトリウム系脱塩剤噴霧残渣等の高塩類含有廃水を濃縮処理した脱塩濃縮水にも本発明を適用可能である。
【0041】
本発明による次亜塩素酸ソーダの製造方法は、脱塩処理工程で得られた高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理工程と、軟化処理工程で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解工程と、電解工程で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成工程とを備えている。
【0042】
電解工程では、イオン交換膜が隔壁として配置された電解槽の一方に陽極が配置され他方に陰極が配置された電解装置に対して、陽極側に軟化処理された脱塩濃縮水が供給され陰極側に純水または軟化処理された水道水が供給されると、陽極側で塩素が生成され陰極側で苛性ソーダが生成される。
【0043】
電解工程で生成された塩素と苛性ソーダとを原料にして次亜塩素酸ソーダ合成工程で合成反応が促進されて次亜塩素酸ソーダが得られる。
【0044】
図1(b),(c)に示すように、軟化処理工程は、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理工程と、第1軟化処理工程の後にキレート吸着法でカルシウム濃度をさらに低下させる第2軟化処理工程を含む。
【0045】
図1(b)には、沈殿法としてライムソーダ法が採用された例が示されている。当該第1軟化処理工程では、脱塩濃縮水をpH10以上に調整するpH調整工程と、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して理論値より多い2〜10モルの炭酸ソーダを注入する炭酸ソーダ注入工程と、塩化第二鉄のような無機系の凝集剤を添加する無機系凝集剤添加工程と、さらに有機系凝集剤を助剤として添加する有機系凝集剤添加工程とが実行される。
【0046】
図1(c)には、沈殿法としてシュウ酸法が採用された例が示されている。当該第1軟化処理工程は、同様に脱塩濃縮水をpH10以上に調整するpH調整工程と、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して1〜2モルのシュウ酸を注入するシュウ酸注入工程と、さらに有機系凝集剤を助剤として添加する有機系凝集剤添加工程とが実行される。
【0047】
沈殿法としてシュウ酸法が採用されると、無機系凝集剤の添加が不要となり、有機系の凝集助剤の添加のみでカルシウムを沈殿除去できるので、脱塩濃縮水の全カルシウム濃度が所定濃度より低い場合には、沈殿汚泥の量が低減できるという利点がある。
【0048】
この様な構成を採用すると、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水に対して、先ず沈殿法でカルシウム濃度を低下させた後に、キレート吸着法でさらにカルシウム濃度を低下させることができるので、高価なキレートを長期に渡り機能させることができ、長時間にわたって電解工程を継続させることができ、安価で高濃度の次亜塩素酸ソーダを得ることができるようになる。
【0049】
脱塩濃縮水のpHを高アルカリ状態に調整して炭酸ソーダを過剰気味に注入することによって、効果的に脱塩濃縮水中のカルシウム濃度を低下させることができるようになるという本願発明者らの新知見に基づき、第1軟化処理工程では、脱塩濃縮水をpH10以上に調整し、炭酸ソーダを脱塩濃縮水のカルシウム濃度に対して2〜10モル、理論値(1モル)より過剰気味に注入することにより、前置軟化処理工程の後の脱塩濃縮水に主にイオンとして含有されるカルシウムと炭酸ソーダとの反応を促進させることができるようになる。
【0050】
脱塩濃縮水をpH10以上に調整し、シュウ酸を脱塩濃縮水のカルシウム濃度に対して1〜2モル注入することにより、脱塩濃縮水にイオンとして含有されるカルシウムとシュウ酸との反応を促進させることができるようになる。
【0051】
上述したように、沈殿法にシュウ酸を用いると、炭酸ソーダを用いる場合に必要となる無機系の凝集剤が不要になり、ランニングコストを低減できるようになる。また、軟化処理工程の前に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理工程が実行されていると、ライムソーダ法を採用する場合よりも沈殿汚泥の発生量を低減でき、或いは同等の発生量で抑えることができるようになる。
【0052】
図2には、上述した次亜塩素酸ソーダの製造方法を実施するための製造装置が示されている。
高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水を軟化処理してカルシウム濃度を低下させる軟化処理装置A(5,6,7,8,12,13)と、軟化処理装置A(5,6,7,8,12,13)で軟化処理された脱塩濃縮水から、イオン交換膜法を用いて苛性ソーダと塩素ガスを生成する電解装置B(17,18)と、電解装置B(17,18)で生成された苛性ソーダと塩素ガスとから次亜塩素酸ソーダを合成する次亜塩素酸ソーダ合成装置C(24)とを備え、軟化処理装置Aは(5,6,7,8,12,13)、脱塩濃縮水に対して沈殿法でカルシウム濃度を低下させる第1軟化処理装置A1(5,6,7,8)と、第1軟化処理装置A1の後にキレート吸着法でカルシウム濃度を1mg/L以下に低下させる第2軟化処理装置A2(12,13)を含む。
【0053】
以下詳述する。
脱塩処理工程で排出された脱塩濃縮水は、脱塩濃縮水貯留槽1に貯留され、原料塩溶解槽に定量供給されて原料塩が投入されて飽和処理される。
【0054】
飽和処理された脱塩濃縮水が原水槽3に貯留され、分配槽4を介して反応槽5に定量供給される。反応槽5で苛性ソーダが添加されてpH調整され、所定のpH値に維持された状態で炭酸ソーダが添加され、撹拌機で撹拌処理される。更に混和槽6で無機系凝集剤が添加され、凝集槽7で有機系凝集助剤が添加された脱塩濃縮水はセンターウェル式の凝集沈殿槽8で固液分離され、カルシウムが除去された脱塩濃縮水が後段の砂ろ過原水槽9に投入される。
【0055】
砂ろ過原水槽9に投入された脱塩濃縮水は砂ろ過塔11で砂ろ過されて固形異物が除去され、キレート吸着原水槽10に貯留され、所謂メリーゴーランド方式のキレート吸着塔12,13に投入されてキレート吸着処理される。
【0056】
キレート処理された脱塩濃縮水は電解原水槽14に貯留されて、イオン交換膜法を用いた隔膜電解装置17の陽極側に定量供給される。
【0057】
軟水原水槽19に貯留された水道水が軟水器20で軟水処理されて電解水槽21に投入され、隔膜電解装置17の陰極側に投入される。隔膜電解装置17の陽極及び陰極に整流器18から電解用の電圧が印加されて電解処理が促進される。
【0058】
隔膜電解装置17の陽極側で生成された塩素ガスが次亜塩素酸反応槽24に供給されるとともに、隔膜電解装置17の陰極側で生成された苛性ソーダが苛性ソーダ貯留槽22を経由して次亜塩素酸反応槽24に供給され、次亜塩素酸反応槽24で合成された次亜塩素酸ソーダが次亜塩素酸ソーダ貯留槽23に貯留される。
【0059】
つまり、反応槽5、混和槽6、凝集槽7、凝集沈殿槽8によって第1軟化処理装置A1が構成され、キレート吸着機構であるキレート吸着塔12,13によって第2軟化処理装置A2が構成されている。また、隔膜電解装置17及び整流器18によって電解装置Bが構成され、次亜塩素酸反応槽24によって次亜塩素酸ソーダ合成装置Cが構成される。尚、混和槽6、凝集槽7、凝集沈殿槽8によって凝集沈殿機構が構成されている。
【0060】
第1軟化処理装置A1は、脱塩濃縮水をpH10以上に調整して、脱塩濃縮水に含有するカルシウム濃度に対して理論値より多い2〜10モルの炭酸ソーダを注入してカルシウム塩を沈殿させるように各助剤の添加装置が設けられている。炭酸ソーダに替えてシュウ酸を用いることができるのは上述した通りである。
【0061】
図2には示されていないが、軟化処理装置の前段に高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を250mg/L以下に低下させる前置軟化処理装置がさらに備えられている。前置軟化処理装置もライムソーダ法等の沈殿法が採用される。
【0062】
本発明による次亜塩素酸ソーダの製造方法は、高塩類含有廃水由来の脱塩濃縮水のカルシウム濃度を低下させる前置軟化処理工程と、生物処理工程と、凝集沈殿処理工程と、砂ろ過処理工程と、活性炭吸着処理工程と、キレート吸着処理工程とからなる群から選ばれる1以上の処理工程または2以上の処理工程の組合せからなる前処理工程を備え、その後に軟化処理工程が実行されるように構成されていればよい。
【実施例】
【0063】
以下に本発明の実施例を説明する。
ある市の一般廃棄物最終処分場の脱塩濃縮水に同じ濃縮水の乾燥塩を溶解させた飽和塩水を原水に用いてライムソーダ法による第1軟化処理工程の実験を行なった。
図3に第1軟化処理工程の条件が示されているように、脱塩濃縮水のカルシウム濃度は210mg/Lである。
【0064】
ジャーテスターを用いて、ライムソーダ法によるカルシウム除去実験を行った。
図4に示すように、まず試料を1L採取しpH調整を行ない、これをジャーテスターにセットして、撹拌をスタートした。最初に炭酸ソーダを注入し10分間急速撹拌を行ない、炭酸カルシウムを析出させた。
【0065】
次に凝集剤を注入し10分間急速撹拌を行ない、炭酸カルシウムを凝集してフロック化した。次に、凝集助剤を注入して20分間緩速撹拌を行ない、大粒子化し、沈降分離後、ろ紙でろ過し固液分離を行なった。
【0066】
図5に実験結果を示すpHと炭酸ソーダ注入率の関係が示されている。
pH12では、炭酸ソーダ注入率モル比2で処理水Ca濃度を10mg/L以下にすることができた。pH11では、炭酸ソーダ注入率モル比2で処理水Caを20mg/L位下に、モル比5で10mg/L以下にすることができた。pH10では、炭酸ソーダ注入率モル比5で20mg/L以下に、モル比10で10mg/Lにすることができた。
【0067】
この実験によって、処理水のCa濃度を20mg/Lもしくは10mg/L以下にするには、pHを10以上にして炭酸ソーダを2〜10モル注入しなければならないことが分かった。
【0068】
次に、第2軟化処理工程の実験を行なった。
原水として、カルシウム濃度を10mg/L以下に処理したライムソーダ法処理水を用いた。
図6にライムソーダ法の実験条件が示されている。
【0069】
図7に示すように、直径15mm、高さ600mmのクロマトカラムにキレート樹脂を高さ50mm充填し、チューブポンプで原水を送液し、カルシウムの除去を行なった。SVは10で通水した。
実験条件は以下の通りである。
Ca 10mg/L,pH12,SV10
キレート樹脂として、官能基がアミノリン酸基(-NH-CH
2-PO
3Na)の樹脂を用いた。
【0070】
図8に実験結果が示されている。
SV=10で実験を行った結果、目標濃度である200ppb以下を達成することができた。この時の処理水Ca濃度は、130〜180ppbの範囲内であった。また、キレート樹脂量1L当たりの通液量が1,000Lを超えても200μg/L以下を維持することができることが確認された。この時のカルシウム吸着量は10g/L・R(Rはキレート樹脂を示す)であった。
(10mg/L−0.15mg/L)×1,000L≒10g/L・R
以上より、目標である200μg/Lを達成することができ、隔膜電解実験の目途がついた。また、キレート樹脂剤のカルシウム吸着量もある程度把握することができた。
【0071】
次にイオン交換膜法を用いた電解工程の実験を行なった。
上述のキレート吸着実験でカルシウム濃度を200μg/L以下にすることができ、この処理水を用いて隔膜電解実験を行ない、連続して次亜塩素酸ソーダを生成できるか否かの確認を行なった。
【0072】
図9には、隔膜電解実験に用いた原水の前処理方法が示されている。第1軟化処理工程がライムソーダ法、第2軟化処理工程がキレート吸着処理法となる。軟化処理後のカルシウム濃度は130〜180μg/Lであった。
【0073】
図10に実験装置が示されている。隔膜電解装置は、電解槽と整流器から構成される。電解槽へ純水と原水が送水される。陰極側に純水が送水され、陽極側に原水が送水される。純水は、水道水を純水器(ミリポア製Milli・Q IntegralMT)で処理したものを用いた。
【0074】
陰極では、純水と陽極側から隔膜を通過したナトリウムイオンが反応して苛性ソーダと水素ガスが生成される。水素ガスは脱気槽で大気開放し苛性ソーダのみ収集した。陽極では、原水が電気分解され塩素ガスと淡塩水が生成される。収集した苛性ソーダと塩素ガスを反応槽で混合して次亜塩素酸ソーダを生成した。
【0075】
実験条件は、純水の送液量は180mL/hr、原水の送液量は120mL/hrとした。また、電極間の電流値は1.5kA/m
2で実験を行なった。
図11に隔膜電解法の実験条件が示されている。
【0076】
電解電圧はイオン交換膜のスケーリングの状況を示す指標である。イオン交換膜にスケールが付着すると、電流の通りが悪くなり電解電圧が上昇してくる。そのため、電解電圧を管理指標として隔膜電解の運転状況を把握した。
【0077】
図12に電解電圧の実験結果が示されている。
カルシウム濃度が1mg/Lと高い値であれば、イオン交換膜にスケールが析出するため、
図12中に破線で示したように、数十時間で電解電圧が8V程度に上昇して装置が停止するが、カルシウム濃度を低く200μg/Lに調整した結果、約1ヶ月間連続運転を行なっても電解電圧の上昇は殆どなく、安定して運転することが確認された。
【0078】
次に、シュウ酸を用いた第1軟化処理工程の実験を行なった。
実験手順は以下の通りである。
先ず飽和塩水を1L採水し、シュウ酸および苛性ソーダを注入し、300min
−1、30分の急速撹拌を行なった。シュウ酸の注入率及びpHを異ならせて3回の実験を行なった。それぞれに有機系凝集剤である凝集助剤を1mg/L注入し、60min
−1、20分の緩速撹拌を行ない、その後ろ紙でろ過した。
その結果、処理水Ca濃度を20mg/L以下にすることができた。
【0079】
次に、原水Ca濃度250mg/L、処理水Ca濃度10mg/Lとして、原水1m
3あたりの汚泥発生量を試算した。
図14に示すように、シュウ酸の汚泥量は769g-DS/m
3、炭酸ソーダは799g-DS/m
3となり、ほぼ同量となった。試算によれば、原水Ca濃度が250mg/Lまではシュウ酸の方が発生汚泥量を少なくできる。
【0080】
図14に示すシュウ酸を用いる場合のカルシウム汚泥の発生量は、Ca(COO)
2が40+(12+16+16)×2=128、Caが40、Ca(COO)
2/Caが128/40=3.2として算出され、薬品汚泥の発生量は、高分子凝集剤による値1gのみとなる。シュウ酸を用いる場合には無機凝集剤が不要となるからである。
【0081】
また、
図14に示す炭酸ソーダを用いる場合のカルシウム汚泥の発生量は、CaCO
3が40+(12+16+16)×2=128、CaCO
3/Caが100/40=2.5として算出され、薬品汚泥の発生量を示す値は、無機凝集剤である塩化第二鉄300mg/Lに鉄系の塩の発生量を示す比率107/162.5を掛けた値と、高分子凝集剤の値1g/Lが示されている。ここに、FeCl
3の分子量は、56+35.5×3=162.5であり、Fe(OH)
3の分子量は、56+(16+1)×3=107となる。
【0082】
上述した実施形態は本発明の一態様の説明に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、各プロセスに用いられる装置の構造や添加される試薬の種類や量は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
A:軟化処理装置
A1:第1軟化処理装置
A2:第2軟化処理装置
B:電解装置
C:次亜塩素酸ソーダ合成装置