(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記モバイル電気機器等は、近年、更なる薄型化、軽量化が進められており、ここに搭載される蓄電デバイスとしても薄型化、軽量化を図ることが求められており、これを受けて、蓄電デバイス用の外装材の薄膜化、軽量化を図るべく開発が進められている。
【0009】
上記の薄膜化、軽量化の要請に応えるべく、外装材の厚さを薄く設計した場合には、張り出し成形や深絞り成形等の成形の際に、深い成形を行うと割れ等を生じるという問題があり、浅い深さでしか良好な成形を行うことができないという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、薄肉、軽量でありながら、深い成形を行っても優れた成形性を確保できると共に、高強度で耐衝撃性にも優れた蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]外側層としてのポリアミド樹脂層と、内側層としてのポリオレフィン樹脂層と、これら両層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記蓄電デバイス用外装材の厚さが90μm以下であり、前記蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さが110N/15mm幅以上であり、かつ前記蓄電デバイス用外装材の引張破壊伸びが90%以上であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[2]前記ポリアミド樹脂層の厚さを「X」とし、前記アルミニウム箔層の厚さを「Y」としたとき、
(X/Y)≧0.6
の関係式が成立する前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[3]前記蓄電デバイス用外装材の引張試験により得られる引張応力−ひずみ曲線から求められる破断ひずみエネルギーが60MJ/m
3以上である前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[4]前記アルミニウム箔層の厚さを「Y」とし、前記ポリオレフィン樹脂層の厚さを「V」としたとき、
(Y/V)≧0.6
の関係式が成立する前項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[5]蓄電デバイス本体部と、
前項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さが110N/15mm幅以上であり、かつ該外装材の引張破壊伸びが90%以上であるから、外装材の厚さが90μm以下の薄肉であっても、深い成形を行っても優れた成形性を確保できると共に、高強度で耐衝撃性にも優れた蓄電デバイス用外装材を提供できる。
【0018】
[2]の発明では、ポリアミド樹脂層の厚さを「X」とし、アルミニウム箔層の厚さを「Y」としたとき、(X/Y)≧0.6の関係式が成立する構成であるから、より深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、耐衝撃性も向上できる。
【0019】
[3]の発明では、蓄電デバイス用外装材の破断ひずみエネルギーが60MJ/m
3以上である構成であり、より深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、耐衝撃性を向上させることができる。
【0020】
[4]の発明では、アルミニウム箔層の厚さを「Y」とし、ポリオレフィン樹脂層の厚さを「V」としたとき、(Y/V)≧0.6の関係式が成立する構成であるから、さらに深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、より高強度にできて耐衝撃性をより向上させることができる。
【0021】
[5]の発明(蓄電デバイス)では、外装材を薄肉に設計した構成でありながら、割れ等を生じることなく問題なく深い成形がなされると共に高強度で耐衝撃性にも優れた外装材で外装された蓄電デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の一実施形態を
図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用として用いられるものである。即ち、前記蓄電デバイス用外装材1は、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて2次電池のケース等として用いられるものである。
【0024】
図1に示す蓄電デバイス用外装材1は、アルミニウム箔層4の一方の面に第1接着剤層5を介してポリアミド樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記アルミニウム箔層4の他方の面に第2接着剤層6を介してポリオレフィン樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。
【0025】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1は、蓄電デバイス用外装材1の厚さ(総厚)が90μm以下であり、蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さが110N/15mm幅以上であり、かつ蓄電デバイス用外装材の引張破壊伸びが90%以上である構成である。
【0026】
本発明によれば、蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さが110N/15mm幅以上であり、かつ該外装材の引張破壊伸びが90%以上であるから、外装材の厚さが90μm以下の薄肉に設計されていても、深い成形を行っても優れた成形性を確保できると共に、高強度で耐衝撃性にも優れた蓄電デバイス用外装材を提供できる。
【0027】
前記蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さは「115N/15mm幅」以上であるのが好ましく、「120N/15mm幅」以上であるのがより好ましい。中でも、前記蓄電デバイス用外装材の引張破壊強さは、120N/15mm幅〜180N/15mm幅の範囲であるのが特に好ましい。
【0028】
前記蓄電デバイス用外装材の引張破壊伸びは120%以上であるのが好ましく、中でも、120%〜200%であるのがより好ましい。
【0029】
本発明において、前記ポリアミド樹脂層2の厚さを「X」とし、前記アルミニウム箔層4の厚さを「Y」としたとき、
(X/Y)≧0.6
の関係式が成立する構成であるのが好ましい。この場合には、より深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、耐衝撃性も向上できる。中でも、(X/Y)≧0.8の関係式が成立する構成であるのがより好ましく、(X/Y)≧1.0の関係式が成立する構成であるのが特に好ましい。
【0030】
また、前記アルミニウム箔層4の厚さを「Y」とし、前記ポリオレフィン樹脂層3の厚さを「V」としたとき、
(Y/V)≧0.6
の関係式が成立する構成であるのが好ましい。この場合には、さらに深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、より高強度にできて耐衝撃性をより向上させることができる。中でも、(Y/V)≧0.8の関係式が成立する構成であるのがより好ましく、(Y/V)≧1.0の関係式が成立する構成であるのが特に好ましい。
【0031】
また、X≧Y≧Vの関係式が成立する構成であるのが好ましい。この場合にはより一層深い成形を行っても優れた成形性を確保できる。
【0032】
更に、前記蓄電デバイス用外装材の引張試験により得られる引張応力−ひずみ曲線から求められる破断ひずみエネルギーが60MJ(メガジュール)/m
3以上である構成が好ましく、この場合にはより深い成形を行っても優れた成形性を確保できるし、耐衝撃性を向上させることができる。
【0033】
本発明において、前記ポリアミド樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記ポリアミド樹脂層(外側層)2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルムを用いるのが好ましい。さらには、同時二軸延伸ナイロンフィルム等の同時二軸延伸ポリアミドフィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。
【0034】
前記ポリアミド樹脂層2の厚さは、15μm〜40μmに設定されるのが好ましい。中でも、前記ポリアミド樹脂層2の厚さは、20μm〜40μmに設定されるのがより好ましい。
【0035】
前記ポリアミド樹脂層2に用いられるポリアミドフィルムの熱水収縮率は、2.5%〜10%であるのが好ましい。この場合には、より深い成形を行うことができるという効果を奏する。また、「T方向における熱水収縮率」に対する「M方向における熱水収縮率」の比(MD/TD)が0.8〜1.2の範囲にある二軸延伸ポリアミドフィルムを用いるのが好ましい。前記比(MD/TD)が0.8〜1.2の範囲にある構成を採用した場合には、特に良好な成形性を有した外装材を得ることができる。なお、前記「M方向」は、「機械流れ方向」を意味し、前記「T方向」は、「M方向(機械流れ方向)に対して直交する方向」を意味する。以下において同様である。
【0036】
なお、前記「熱水収縮率」とは、ポリアミド樹脂延伸フィルムの試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の延伸方向における寸法変化率であり、次式で求められる。
【0037】
熱水収縮率(%)={(E−F)/E}×100
E:浸漬処理前の延伸方向の寸法
F:浸漬処理後の延伸方向の寸法。
【0038】
なお、2軸延伸フィルムを採用する場合におけるその熱水収縮率は、2つの延伸方向における寸法変化率の平均値である。
【0039】
前記ポリアミド樹脂延伸フィルムの熱水収縮率は、例えば、延伸加工時の熱固定温度を調整することにより制御することができる。
【0040】
前記ポリアミド樹脂層2に用いられるポリアミドフィルムの引張破壊強さは、50N/15mm幅以上であるのが好ましく、60N/15mm幅以上であるのがさらに好ましく、90N/15mm幅以上であるのが特に好ましい。また、「ポリアミドフィルムのM方向での引張破壊強さ」/「ポリアミドフィルムのT方向での引張破壊強さ」=0.8〜1.2の範囲であるのが好ましく、この場合には、より深い成形を行うことができるという効果を奏する。
【0041】
前記ポリアミド樹脂層2に用いられるポリアミドフィルムの引張破壊伸びは、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがさらに好ましく、120%以上であるのが特に好ましい。また、「ポリアミドフィルムのM方向での引張破壊伸び」/「ポリアミドフィルムのT方向での引張破壊伸び」=0.8〜1.2の範囲であるのが好ましく、この場合には、高強度であり、より深い成形を行うことができるという効果を奏する。
【0042】
前記アルミニウム箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記アルミニウム箔層4の材質は、Al−Fe系の焼鈍材が好ましい。前記アルミニウム箔層4の厚さは、10μm〜35μmであるのが好ましく、15μm〜35μmであるのがより好ましい。
【0043】
前記アルミニウム箔層4は、少なくとも内側の面(第2接着剤層6側の面;ポリオレフィン樹脂層3側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0044】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0045】
前記ポリオレフィン樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0046】
前記ポリオレフィン樹脂層3としては、特に限定されるものではないが、未延伸(非延伸)ポリオレフィン樹脂フィルム層であるのが好ましい。前記ポリオレフィン樹脂3としては、特に限定されるものではないが、例えばエチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂、エチレン−プロピレンブロック共重合体樹脂等が挙げられる。
【0047】
中でも、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分(オレフィン)を含有するランダム共重合体/共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分(オレフィン)を含有するブロック共重合体/共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分(オレフィン)を含有するランダム共重合体の3層積層体からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。さらには、前記ポリオレフィン樹脂層3としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂/エチレン−プロピレンブロック共重合体樹脂/エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂の3層積層体からなる未延伸フィルムにより構成されるのが特に好ましい。このように、前記ポリオレフィン樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0048】
前記ポリオレフィン樹脂層3の厚さは、10μm〜30μmに設定されるのが好ましい。中でも、15μm〜30μmに設定されるのがより好ましい。
【0049】
前記第1接着剤層5としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層、アクリル接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層5の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第1接着剤層5の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0050】
前記第2接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記第1接着剤層5として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ない酸変性ポリオレフィン系接着剤(硬化剤としては多官能イソシアネートを用いるのが好ましい)を使用するのが好ましい。前記第2接着剤層6の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第2接着剤層6の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0051】
前記蓄電デバイス用外装材1の厚さ(総厚さ)は、薄肉化のために、90μm以下に設定される。中でも、前記蓄電デバイス用外装材1の厚さは、40μm〜90μmに設定されるのが好ましく、45μm〜80μmに設定されるのが特に好ましい。
【0052】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、成形ケース(電池ケース等)を得ることができる。なお、本発明の外装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる。
【0053】
本発明の蓄電デバイス用外装材1を用いて構成された蓄電デバイス20の一実施形態を
図2に示す。この蓄電デバイス20は、リチウムイオン2次電池である。
【0054】
前記電池20は、電解質21と、タブリード22と、成形に供されていない平面状の前記外装材1と、前記外装材1が成形されて得られた収容凹部11bを有する成形ケース11とを備える(
図2参照)。前記電解質21および前記タブリード22により蓄電デバイス本体部19が構成されている。
【0055】
前記成形ケース11の収容凹部11b内に前記電解質21と前記タブリード22の一部が収容され、該成形ケース11の上に前記平面状の外装材1が配置され、該外装材1の周縁部(の内側層3)と前記成形ケース11の封止用周縁部11a(の内側層3)とが接合されて封止されることによって、前記電池20が構成されている。なお、前記タブリード22の先端部は、外部に導出されている(
図2参照)。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
厚さ25μmのアルミニウム箔(JIS H4160に規定されるA8021の焼鈍したアルミニウム箔)4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m
2であった。
【0058】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のポリエステルウレタン系接着剤(主剤:ポリエステルポリウレタン樹脂、硬化剤:多官能イソシアネート)5を介して、同時2軸延伸法で延伸して得られた厚さ25μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)2をドライラミネートした(貼り合わせた)。前記同時二軸延伸6ナイロンフィルムのMD方向の熱水収縮率は4.3%であり、前記同時二軸延伸6ナイロンフィルムは、「T方向における熱水収縮率」に対する「M方向における熱水収縮率」の比(MD/TD)が1.0である。
【0059】
次に、エチレン−プロピレンランダム共重合体からなる厚さ4μmの第1樹脂層、エチレン−プロピレンブロック共重合体樹脂からなる厚さ17μmの第2樹脂層、エチレン−プロピレンランダム共重合体からなる厚さ4μmの第1樹脂層がこの順で3層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら3層が積層されてなる厚さ25μmのシーラントフィルム(第1樹脂層/第2樹脂層/第1樹脂層)3を得た後、該シーラントフィルム(内側層)3の一方の第1樹脂層面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図1に示す構成の厚さ81μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0060】
なお、前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤として、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液を用い、該接着剤溶液を固形分塗布量が2g/m
2になるように、前記アルミニウム箔4の他方の面に塗布し、加熱乾燥させた後、前記シーラントフィルム3の一方の第1樹脂層面に重ね合わせた。
【0061】
<実施例2>
厚さ25μmのシーラントフィルム(厚さ4μmの第1樹脂層/厚さ17μmの第2樹脂層/厚さ4μmの第1樹脂層)に代えて、厚さ20μmのシーラントフィルム(厚さ3μmの第1樹脂層/厚さ14μmの第2樹脂層/厚さ3μmの第1樹脂層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の厚さ76μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。なお、実施例2で用いた第1樹脂は、実施例1で用いた第1樹脂と同一の樹脂であり、実施例2で用いた第2樹脂は、実施例1で用いた第2樹脂と同一の樹脂である。以下の各実施例および各比較例においても同様である。
【0062】
<実施例3>
同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)として、一方の面に(アルミニウム箔層側に)厚さ2μmの黒インキ印刷層が積層されると共に他方の面に二液硬化型ポリウレタン樹脂(平均粒径4μmのシリカ12質量%、平均粒径3μmのアクリル樹脂ビーズ8質量%を含有)からなる厚さ2μmの表面コート層が積層された同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ75μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0063】
<実施例4>
厚さ25μmのアルミニウム箔に代えて、厚さ20μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例2と同様にして、
図1に示す構成の厚さ71μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0064】
<比較例1>
厚さ25μmのアルミニウム箔に代えて、厚さ40μmのアルミニウム箔を用い、厚さ25μmのシーラントフィルム(厚さ4μmの第1樹脂層/厚さ17μmの第2樹脂層/厚さ4μmの第1樹脂層)に代えて、厚さ40μmのシーラントフィルム(厚さ6μmの第1樹脂層/厚さ28μmの第2樹脂層/厚さ6μmの第1樹脂層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ111μmの蓄電デバイス用外装材を得た。
【0065】
<比較例2>
厚さ25μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)に代えて、厚さ15μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)を用い、厚さ25μmのアルミニウム箔に代えて、厚さ35μmのアルミニウム箔を用い、厚さ25μmのシーラントフィルム(厚さ4μmの第1樹脂層/厚さ17μmの第2樹脂層/厚さ4μmの第1樹脂層)に代えて、厚さ30μmのシーラントフィルム(厚さ6μmの第1樹脂層/厚さ18μmの第2樹脂層/厚さ6μmの第1樹脂層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材を得た。
【0066】
<比較例3>
厚さ25μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)に代えて、厚さ15μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)を用い、厚さ25μmのアルミニウム箔に代えて、厚さ30μmのアルミニウム箔を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ76μmの蓄電デバイス用外装材を得た。
【0067】
<比較例4>
厚さ25μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)に代えて、厚さ15μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ71μmの蓄電デバイス用外装材を得た。
【0068】
<比較例5>
厚さ25μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)に代えて、厚さ12μmの同時二軸延伸6ナイロンフィルム(外側層)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ66μmの蓄電デバイス用外装材を得た。
【0069】
上記の各実施例、各比較例で得られた蓄電デバイス用外装材の諸特性を次のようにして求めた。各蓄電デバイス用外装材について、JIS K7127−1999(−引張特性の試験方法− 第3部:フィルムおよびシートの試験条件)に準拠して、タイプ2の試験片(試料幅15mm)を作成し、つかみ具間距離100mm、標線間距離50mm、引張速度100mm/分の条件で引張試験を行って引張応力−ひずみ曲線(SS曲線)を作成し、このSS曲線から、引張破壊強さ、引張破壊伸びおよび破断ひずみエネルギーを求めた。
【0070】
なお、上記「破断ひずみエネルギー」は、上記得られた引張応力−ひずみ曲線図(SS曲線図)における曲線(引張開始から破断に至るまでの曲線)の下側の面積を計算して求められる破断ひずみエネルギー(単位体積あたりのエネルギー)である。
【0071】
実施例1〜4の蓄電デバイス用外装材の引張試験により得られた引張応力−ひずみ曲線(SS曲線)を
図3に示す。また、比較例1〜5の外装材の引張試験により得られた引張応力−ひずみ曲線(SS曲線)を
図4に示す。これらの
図3、
図4において、縦軸は引張応力(単位:N/15mm)であり、横軸はひずみ(伸び)(単位:%)である。
【0072】
【表1】
【0073】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材に対して下記評価法に基づいて性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、「アルミ箔層」は、「アルミニウム箔層」の意味である(略語である)。
【0074】
<薄さの評価>
蓄電デバイス用外装材の厚さ(総厚さ)が90μm以下であるものを「○」(合格)とし、90μmを超えるものを「×」(不合格)とした。
【0075】
<成形性評価法>
株式会社アマダ製の張り出し成形機(品番:TP−25C−X2)を用いて外装材に対して縦54mm×横34mmの略直方体形状に張り出し成形を行い、即ち成形深さを変えて張り出し成形を行い、得られた成形体におけるコーナー部におけるピンホール及び割れの有無を調べ、このようなピンホール及び割れが発生しない「最大成形深さ(mm)」を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…最大成形深さが7mm以上である
「△」…最大成形深さが5mm以上7mm未満である
「×」…最大成形深さが5mm未満である。
【0076】
<耐衝撃性評価法>
各実施例、比較例ごとにそれぞれ矩形状の外装体を2枚作成し、内側層が内側に(内部側)なるようにして、2枚の外装体を重ね合わせた後、1箇所を残して周縁の3辺をヒートシール接合する。次いで、未封止箇所から電解液5mLを中に注入し、空気を入れた状態で前記未封止箇所をヒートシール接合して封止を完了して、模擬電池を得た。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)が濃度1モル/Lで溶解された電解質を用いた。各実施例、比較例ごとに10個の模擬電池を作成した。
【0077】
次に、模擬電池の上面(平面)の上に直径15mmの丸棒を安定状態に載置した後、9kgの球形の金属製錘を丸棒の上に落下させて、下記判定基準に基づいて外装材の耐衝撃性を評価した。
(判定基準)
「○」…10個の模擬電池のうち錘の落下により外装材が破損したものが3個以下である
「△」…10個の模擬電池のうち錘の落下により外装材が破損したものが4個〜7個である
「×」…10個の模擬電池のうち錘の落下により外装材が破損したものが8個〜10個である。
【0078】
<総合判定>
上記薄さの評価、成形性評価および耐衝撃性評価のいずれの評価結果も「○」であるものを「○」(優れている)とし、いずれか1つでも「×」又は「△」の評価結果があるものを「×」(良好でない)とした。
【0079】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜4の蓄電デバイス用外装材は、外装材の厚さが90μm以下の薄肉でありながら、最大成形深さが大きく、深い成形を行っても優れた成形性を確保することができると共に、耐衝撃性にも優れている。
【0080】
これに対し、外装材の厚さが111μmに設定された比較例1の外装材は、成形性に優れると共に耐衝撃性にも優れているが、外装材の厚さが111μmであり薄肉化の要請に応えることができない。また、本発明の規定範囲を逸脱する比較例2〜5では、深い成形を行うと成形不良となるし、耐衝撃性も不十分であった。