(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された車両用ワイパアームでは、例えばワイパアームの長さ寸法が長くなると、リテーナがアームヘッドに対して起立される際のトルクが大きくなる。その結果、リテーナの凸部がアームヘッドの突起に当接した際に凸部に作用する応力が増加するので、凸部の強度を確保することが困難になる。この点は、特許文献2に記載されたワイパアームにおいても同様であると考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、リテーナにおいてアームヘッドに対する回動を規制する部位の強度を容易に確保できるワイパアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイパアームは、基端部がワイパ軸に固定されるアームヘッドと、一対の側壁及び前記一対の側壁を繋いだ上壁が長手方向に延在し、長手方向一端部において前記一対の側壁が前記アームヘッドの先端部に回動可能に連結されたリテーナと、前記アームヘッドの先端部の上面に配設されたゴム弾性部材と、を備え、前記リテーナが前記アームヘッドに対して起立する方向へ回動されることで、前記上壁における前記アームヘッド側の端面が前記ゴム弾性部材を介して前記先端部の上面に突き当たる。
【0008】
上記構成によれば、リテーナがアームヘッドに対して起立する方向へ回動されると、リテーナの上壁におけるアームヘッド側の端面が、アームヘッドの先端部の上面に配設されたゴム弾性部材を介して上記上面に突き当る。これにより、それ以上の起立方向へのリテーナの回動が規制される。このリテーナでは、アームヘッドの先端部に回動可能に連結された一対の側壁が上壁によって繋がれている。このため、上記の突き当て時には、上壁に対してアームヘッドの先端部から加わる荷重が一対の側壁に分散されるので、上壁に応力が集中することを防止できる。これにより、リテーナにおいてアームヘッドに対する回動を規制するための部位である上壁の強度を容易に確保できる。しかも、上記のようにリテーナの上壁の端面がゴム弾性部材を介してアームヘッドの先端部の上面に突き当るので、意匠部品であるアームヘッドの当該上面が傷付くことを防止できる。
【0009】
また、本開示のワイパアームでは、前記アームヘッドは、前記基端部及び前記先端部を含むヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付けられて前記ヘッド本体を覆うと共に、前記リテーナ側の端部に形成された装着部に前記ゴム弾性部材が装着されたヘッドカバーと、を有している。
【0010】
上記構成によれば、基端部がワイパ軸に固定されると共に先端部にリテーナが連結されるヘッド本体は、例えばアルミダイキャストによって製造される。一方、ヘッド本体に取り付けられてヘッド本体を覆うヘッドカバーは、例えば樹脂の射出成形によって製造される。そして、ゴム弾性部材は、樹脂製のヘッドカバーにおけるリテーナ側の端部に形成された装着部に装着される。これにより、アルミダイキャスト製のヘッド本体に装着部が形成される場合と比較して、装着部の形状設定の自由度が高くなる。その結果、例えばゴム弾性部材を装着部に対して組み付け易くなる。
【0011】
また、本開示のワイパアームでは、前記ゴム弾性部材の一部が前記装着部と前記ヘッド本体との間に
配置されている。
【0012】
上記構成によれば、ヘッドカバーに形成された装着部とヘッド本体との間にゴム弾性部材の一部が
配置されている。これにより、アームヘッドの傷付きを防止するためのゴム弾性部材によって、ヘッド本体に対するヘッドカバーのガタつきを規制できる。
【0013】
また、本開示のワイパアームでは、前記ゴム弾性部材には、前記ヘッド本体の基端側へ開放されたスリットが形成され、前記装着部は、前記スリットに差込まれており、前記ゴム弾性部材における前記スリットを介した両側の部位のうちの一方が前記一部とされている。
【0014】
上記構成によれば、ゴム弾性部材には、ヘッド本体の基端側へ開放されたスリットが形成されている。このスリットには、ヘッドカバーの装着部が差込まれている。そして、ゴム弾性部材におけるスリットを介した両側の部位のうちの一方が、装着部とヘッド本体との間に
配置されている。このように、ゴム弾性部材に形成されたスリットにヘッドカバーの装着部を差込む構成であるため、装着部とヘッド本体との間に一部が挟まれるゴム弾性部材を、ヘッドカバーに対して容易に装着することができる。
【0015】
また、本開示のワイパアームでは、前記ヘッド本体には、前記ゴム弾性部材に対して前記ヘッド本体の先端側から当接
することで前記ゴム弾性部材の外れを防止する外れ防止部が形成されている。
【0016】
上記構成によれば、ヘッド本体の外れ防止部がゴム弾性部材と当接することにより、ゴム弾性部材のスリットからヘッドカバーの装着部が抜け出すことが防止される。これにより、ゴム弾性部材が装着部から外れることをヘッド本体によって防止できる。
【0017】
また、本開示のワイパアームでは、前記装着部には、前記ヘッド本体の先端側へ開放された切欠部が形成されており、前記ゴム弾性部材は、前記切欠部の内側に挿入された切欠挿入部を有し、前記スリットを介した両側の部位が前記切欠挿入部によって接続されている。
【0018】
上記構成によれば、ゴム弾性部材は、ヘッドカバーの装着部に形成された切欠部の内側に挿入された切欠挿入部を有している。この切欠挿入部は、ゴム弾性部材においてスリットを介した両側の部位を接続している。これにより、スリットが外力によって広がることを抑制できるので、ゴム弾性部材を装着部に良好に保持することができる。
【0019】
また、本開示のワイパアームでは、前記切欠挿入部は、前記切欠部の内側に嵌合している。
【0020】
上記構成によれば、ゴム弾性部材が有する切欠挿入部がヘッドカバーの装着部に形成された切欠部に嵌合している。この嵌合によってゴム弾性部材が装着部に保持される。これにより、例えばゴム弾性部材が装着されたヘッドカバーがヘッド本体に取り付けられる際などに、ゴム弾性部材が装着部から不用意に脱落し難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図9を用いて本発明の実施形態に係るワイパアーム10について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るワイパアーム10は、図示しない自動車のフロントウインドシールド12(
図1以外では図示省略)を払拭するための車両用ワイパ14に適用されている。ワイパアーム10の先端部には、ワイパブレード16が連結されている。ワイパアーム10及びワイパブレード16は、何れも長尺状に形成されている。
【0023】
ワイパアーム10は、図示しないワイパモータの回転力が伝達されて往復回動(揺動)する。このワイパアーム10の往復回動により、ワイパブレード16が往復回動し、フロントウインドシールド12の払拭面12Aを払拭する構成になっている。これらのワイパアーム10及びワイパブレード16は、ワイパモータの非作動時には、フロントウインドシールドの下端部に沿って車幅方向に延びる格納位置に配置される。
【0024】
なお、各図中に適宜示される矢印A、Bは、ワイパアーム10の長手方向の一方、長手方向の他方をそれぞれ示している。また、各図中に適宜示される矢印C、D、Rは、ワイパアーム10の上方向、ワイパアーム10の下方向、ワイパアーム10の回動方向(ワイパブレード16の払拭方向)をそれぞれ示している。以下、単に上下の方向を用いて説明する場合、ワイパアーム10の上下方向を示すものとする。
【0025】
図1に示されるように、ワイパアーム10は、ワイパアーム10の基端部分を構成するアームヘッド18と、ワイパアーム10の長手方向中間部を構成するリテーナ20と、ワイパアーム10の先端部分を構成するアームピース22と、を備えている。また、このワイパアーム10は、リテーナ20の先端部に取り付けられた第1ウォッシャノズル26と、アームピース22に取り付けられた第2ウォッシャノズル24と、ワイパアーム10に配設された2本のウォッシャホース28、30とを備えている。さらに、このワイパアーム10は、アームヘッド18に取り付けられた「ゴム弾性部材」としてのグロメット40を備えている。先ず、ワイパアーム10の全体構成の概略について説明し、その後に本実施形態の要部について説明する。
【0026】
図1〜
図5に示されるように、アームヘッド18は、アームヘッド18の本体部を構成する金属製のヘッド本体32と、ヘッド本体32に被せられた樹脂製のヘッドカバー34とを備えている。ヘッド本体32は、アルミダイキャストによって製造されたものであり、ワイパアーム10の長手方向を長手とする長尺状に形成されている。ヘッド本体32の表面には、防眩及び防錆のための黒色の塗装が施されて塗膜層にて覆われている。ヘッド本体32の長手方向一方の端部である基端部32Aは、本発明に係る「アームヘッドの基端部」に相当し、ヘッド本体32の長手方向他方の端部である先端部32Bは、本発明に係る「アームヘッドの先端部」に相当する。
【0027】
ヘッド本体32の基端部32Aの中央部には、ワイパアーム10の上下方向を軸線方向とする図示しない締結孔が形成されている。この締結孔には、ワイパ軸としてのピボット軸38(
図1参照)が基端部32Aの下方側から挿入されている。このピボット軸38は、雄ねじが形成された先端部にナット39が螺合されることで、ヘッド本体32の基端部32Aがピボット軸38に締結固定されている。
【0028】
上記のピボット軸38は、フロントウインドシールド12の下端側において、自動車のフレーム等に固定された図示しないピボットホルダに回転自在に支持されており、ワイパモータの回転力が図示しないリンク機構を介して伝達されて往復回転する。これにより、ヘッド本体32すなわちアームヘッド18がピボット軸38と一体で往復回動(往復揺動)される構成になっている。なお、ワイパモータが出力軸を往復回転させる構成の場合には、当該ワイパモータの出力軸がワイパ軸とされた構成にしてもよい。
【0029】
ヘッドカバー34は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、
図1及び
図2に示されるように長尺状に形成されている。このヘッドカバー34は、長手方向から見てワイパアーム10の下方側(払拭面12A側)へ開放された開断面形状に形成されている。具体的には、ヘッドカバー34は、ワイパアーム10の回動方向(
図1〜
図4の矢印R方向)に対向した一対の前壁部34F及び後壁部34Rと、前壁部34F及び後壁部34Rの上端部(払拭面12Aとは反対側の端部)を繋いだ上壁部34Uとを有しており、長手方向から見て断面略逆U字形状をなしている。
【0030】
このヘッドカバー34は、ヘッド本体32に対して上方側(払拭面12Aとは反対側)から取り付けられており、上壁部34U、前壁部34F及び後壁部34Rによってヘッド本体32の上面及び両側面を覆っている。前壁部34F及び後壁部34Rの下端部(上壁部34Uと反対側の端部)には、図示しない複数の爪部が形成されている。これらの爪部がヘッド本体32の下面に引っ掛かることで、ヘッドカバー34がヘッド本体32に保持されている。このヘッドカバー34は、ヘッド本体32よりも長手方向の寸法が短く設定されており、ヘッド本体32の先端部32B及び基端部32Aを露出させた状態でヘッド本体32に被せられている。
【0031】
一方、リテーナ20は、例えば板金が曲げ加工されて形成されたものであり、長尺状に形成されている。このリテーナ20は、長手方向から見てワイパアーム10の下方側(払拭面12A側)へ開放された開断面形状に形成されている。具体的には、リテーナ20は、ワイパアーム10の回動方向に対向した前壁20F及び後壁20Rと、前壁20F及び後壁20Rの上端部(払拭面12Aとは反対側の端部)をワイパアーム10の回動方向に繋いだ上壁20Uとを有しており、長手方向から見て断面略逆U字形状をなしている。前壁20F及び後壁20Rは、本発明に係る「一対の側壁」に相当する。
【0032】
リテーナ20は、長手方向一方の端部である基端部20Aにおいて、前壁20F及び後壁20Rがヘッド本体32の先端部32Bに回動可能に連結されている。具体的には、前壁20F及び後壁20Rの間にアームヘッド18の先端部32Bが挿入状態で配置されると共に、前壁20F、先端部32B及び後壁20Rを貫通したヒンジ軸36が端部を加締められている。これにより、リテーナ20の基端部20Aがヒンジ軸36を介してヘッド本体32の先端部32Bに軸支されている。このリテーナ20は、払拭面12Aに沿って延びる通常位置(払拭姿勢位置)(
図1〜
図4参照)と、払拭面12A及びアームヘッド18に対して起立するロックバック位置(起立姿勢位置)(
図9参照)との間でアームヘッド18に対して回動可能とされている。なお、
図2〜
図4、
図9に示される矢印Lは、アームヘッド18に対するリテーナ20の回動方向を示している。
【0033】
リテーナ20の内側には、図示しない付勢部材(例えば、引張コイルスプリング)が収容されている。この付勢部材は、リテーナ20又はアームピース22とアームヘッド18との間に架け渡されている。この付勢部材は、上述の通常位置とロックバック位置との中間に設定された節度点よりも通常位置側にリテーナ20が位置する状態では、リテーナ20を通常位置側(払拭面12A側)へ付勢する。一方、この付勢部材は、上記節度点よりもロックバック位置側にリテーナ20が位置する状態では、リテーナ20をロックバック位置側へ付勢するようになっている。
【0034】
アームピース22は、板金が曲げ加工されて形成されたものであり、長尺状に形成されている。このアームピース22の基端部(
図1の矢印A方向の端部)は、リテーナ20の先端部に巻き加締め、ビス止め、リベット止め等の手段によって固定されている。アームピース22の先端部(
図1の矢印B方向の端部)は、U字状に屈曲されており、ワイパブレード16の長手方向中間部に形成された連結孔50内に設けられた図示しない連結軸に取り付けられた連結部材(不図示)に着脱可能に装着されている。これにより、アームピース22の先端部すなわちワイパアーム10の先端部にワイパブレード16が連結されている。このワイパブレード16は、前述した付勢部材の付勢力によって払拭面12Aに押し付けられている。
【0035】
第1ウォッシャノズル26は、長尺な略角柱状に形成されており、ワイパアーム10の長手方向を長手としてリテーナ20の先端部に配設されている。この第1ウォッシャノズル26は、爪嵌合、凹凸嵌合、ビス止め等の手段によってリテーナ20の先端部に取り付けられている。第2ウォッシャノズル24は、長尺な略角柱状に形成されており、ワイパアーム10の長手方向を長手としてアームピース22の幅方向一側に配置されている。アームピース22の長手方向中間部には、ワイパアーム10の下方側へ延びるノズル連結片22Aが形成されており、第2ウォッシャノズル26は、爪嵌合、凹凸嵌合、ビス止め等の手段によってノズル連結片22Aに取り付けられている。
【0036】
2本のウォッシャホース28、30は、例えばゴムによってチューブ状に形成されており、ワイパアーム10の長手方向に沿ってワイパアーム10内に配設されている。一方のウォッシャホース28は、先端部が第1ウォッシャノズル26に接続されており、他方のウォッシャホース30は、先端部が第2ウォッシャノズル24に接続されている。これらのウォッシャホース28、30は、リテーナ20の内側に配索され、アームヘッド18側へ延びている。
【0037】
アームヘッド18のヘッド本体32とヘッドカバー34との間には、アームヘッド18の長手方向に延びる図示しないホース収容空間が形成されており、当該ホース収容空間内に2本のウォッシャホース28、30が配索されている。このホース収容空間は、アームヘッド18の基端側で開口しており、当該開口からウォッシャホース28、30がアームヘッド18の外側へ延びている。
【0038】
各ウォッシャホース28、30の基端部は、
図1に示されるホースジョイント52、及び車体側に配設された図示しない2本のウォッシャホースを介して車両のウォッシャタンク(図示省略)と接続されている。ウォッシャタンク内の洗浄液は、図示しないウォータポンプによって各ウォッシャホース28、30内へ圧送され、第1ウォッシャノズル26及び第2ウォッシャノズル24から払拭面12Aへ向けて噴出される構成になっている。
【0039】
(本実施形態の要部)
本実施形態では、アームヘッド18の先端部32Bの上面には、ゴム弾性部材としてのグロメット40が配設されている。このグロメット40は、ゴム弾性(ゴム若しくはゴムと類似の弾性特性)を有する材料にて形成されており、ヘッドカバー34の上壁部34Uにおけるリテーナ20側の端部(
図1〜
図5の矢印B方向側の端部)に形成された装着部35に装着されている。装着部35は、平板状に形成されており、ヘッド本体32の先端側(
図1〜
図5の矢印B方向側)へ向かうほどワイパアーム10の下方側(
図2〜
図5の矢印D方向側)へ向かうように緩やかに傾斜している。この装着部35は、ヘッド本体32の先端部32Bの上面に形成された支持面33に対してアームヘッド18の上方側から対向している。支持面33は平面状に形成されており、装着部35は支持面33に対して平行に配置されている。
【0040】
上記の装着部35には、
図2及び
図4に示されるように、一対の切欠部42が形成されている。一対の切欠部42は、装着部35の一部がリテーナ20側から切り欠かれたものであり、ヒンジ軸36の軸線方向に並んでいる。これらの切欠部42は、ワイパアーム10の上下方向から見て円形状に形成された幅広部42Aと、幅広部42Aよりもリテーナ20側に形成された幅狭部42Bとによって構成されている。幅狭部42Bは、幅広部42Aよりもアームヘッド18の回動方向の寸法が小さく形成されている。また、装着部35には、一対の切欠部42に対してワイパアーム10の回動方向の両外側に、それぞれ外側切欠部44が形成されている。これら一対の外側切欠部44は、装着部35の一部がリテーナ20側から切り欠かれて形成されたものであり、一対の切欠部42よりも小さく形成されている。
【0041】
グロメット40は、
図1〜
図8に示されるように、ゴム等のゴム弾性材料によって長尺な板状に形成されている。このグロメット40は、長手方向がヒンジ軸36の軸線方向に沿い且つ板厚方向がワイパアーム10の上下方向に沿う姿勢でヘッド本体32の先端部32Bの上面に配置されている。このグロメット40は、ワイパアーム10の上下方向に対向した外側部40A及び内側部40Bと、外側部40A及び内側部40Bを接続した接続部40Cとを一体に有している。外側部40A及び内側部40Bは、何れも板状に形成されており、厚さ方向がワイパアーム10の上下方向に沿う姿勢で配置されている。
【0042】
図6、
図7(a)、
図7(c)等に示されるように、グロメット40の板厚方向の中央部には、スリット(隙間)41が形成されている。このスリット41は、ヘッド本体32の基端側(
図1〜
図5の矢印A方向側)、及びワイパアーム10の回動方向両側(
図1〜
図5の矢印R方向側)へ開放されている。このスリット41には、ヘッドカバー34の装着部35が差込まれている。これにより、外側部40Aが装着部35に対してヘッド本体32とは反対側(すなわち装着部35の上面側)に配置される一方、内側部40Bが装着部35に対してヘッド本体32側(すなわち装着部35の下面側)に配置されている。外側部40Aは装着部35の上面に接触しており、内側部40Bは装着部35の下面及びヘッド本体32の支持面33に接触している。
【0043】
接続部40Cは、装着部35よりもアームヘッド18の先端側で外側部40Aと内側部40Bとを連結した接続部本体40C1と、グロメット40の長手方向中央側において外側部40Aと内側部40Bとの間に形成された一対の切欠挿入部40C2と、グロメット40の長手方向両端部において外側部40Aと内側部40Bとの間に形成された一対の外側切欠挿入部40C3と、を有している。一対の切欠挿入部40C2及び一対の外側切欠挿入部40C3は、ワイパアーム10の回動方向に並んでいる。
【0044】
一対の切欠挿入部40C2は、一対の切欠部42に嵌合しており、一対の外側切欠挿入部40C3は、一対の外側切欠部44に嵌合している。切欠挿入部40C2は、切欠部42の幅広部42Aに嵌合した幅広部C21と、切欠部42の幅狭部42Bに嵌合すると共に幅広部C21と接続部本体40C1とを接続した幅狭部C22と、によって構成されている。幅広部C21は、グロメット40の厚さ方向から見て円環状に形成されており、幅広部C21の中央部には、円形の孔43が形成されている。この孔43は、内側部40Bを貫通して内側部40Bの下面で開口している。幅広部C21は、アームヘッド18の回動方向の寸法が、幅狭部C22及び幅狭部42Bよりも大きく且つ幅広部42Aよりも若干小さく設定されている。
【0045】
上記構成のグロメット40は、ヘッドカバー34の装着部35に対して
図2に矢印Eで示される方向に装着される。この装着の際には、グロメット40のスリット41内に装着部35が差込まれると共に、一対の切欠挿入部40C2が一対の切欠部42に挿入される。この挿入の際には、各切欠挿入部40C2の幅広部C21が各切欠部42の幅狭部42Bとの摺接によって弾性変形されると共に、幅広部42A内に挿入されることで弾性復帰するようになっている。
【0046】
装着部35にグロメット40が装着されたヘッドカバー34は、ヘッド本体32に対して
図2に矢印Fで示される方向に装着される。この装着の際には、前壁部34F及び後壁部34Rの下端部に形成された図示しない複数の爪部がヘッドカバー34と摺接する。これにより、前壁部34F及び後壁部34Rが互いに離れる方向にヘッドカバー34が弾性変形すると共に、上記複数の爪部がヘッド本体32の下面に引っ掛ることによりヘッドカバー34が弾性復帰する。
【0047】
ヘッドカバー34がヘッド本体32に取り付けられた状態では、
図5に示されるように、グロメット40の一部である内側部40Bが、ヘッドカバー34の装着部35とヘッド本体32の支持面33との間に挟まれるようになっている。またこの取付状態では、ヘッド本体32の先端部32Bに形成された外れ防止部37が、グロメット40に対してヘッド本体32の先端側(
図1〜
図5の矢印A方向側)から当接するように構成されている。詳細には、グロメット40は、接続部本体40C1からヘッド本体32の先端側へ向けて突出した一対の凸部40Dを有している。一対の凸部40Dは、グロメット40の長手方向に並んでおり、これら一対の凸部40Dが上記の外れ防止部37と当接するように構成されている。
【0048】
ここで、上記構成のワイパアーム10では、リテーナ20がアームヘッド18に対して起立する方向へ回動されてロックバック位置(
図9参照)に到達すると、リテーナ20の上壁20Uにおけるアームヘッド18側の端面20U1が、グロメット40を介してヘッド本体32の支持面33に突き当たる構成になっている。つまり、リテーナ20がアームヘッド18に対して起立するロックバック位置に位置する状態では、上記端面20U1がグロメット40を介してヘッド本体32の支持面33に突き当たった状態となるように構成されている。
【0049】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
上記構成のワイパアーム10では、リテーナ20がアームヘッド18に対して起立するロックバック位置へヒンジ軸36周りに回動されると、リテーナ20の上壁20Uにおけるアームヘッド18側の端面20U1が、アームヘッド18の先端部32Bの上面に配設されたグロメット40に突き当る。これにより、それ以上の起立方向へのリテーナ20の回動が規制される。
【0051】
このリテーナ20では、アームヘッド18の先端部32Bに回動可能に連結された前壁20F及び後壁20Rが上壁20Uによって繋がれている。このため、上記の突き当て時には、上壁20Uに対してアームヘッド18の先端部32Bから加わる荷重が前壁20F及び後壁20Rに分散されるので、リテーナ20の上壁20Uに応力が集中することを防止できる。これにより、リテーナ20においてアームヘッド18に対する回動を規制する部位である上壁20Uの強度を容易に確保できる。しかも、上壁20Uの端面20U1がグロメット40を介してアームヘッド18の先端部32Bに突き当るので、意匠部品であるアームヘッド18の先端部32B(特に上面)が傷付くことを防止できる。
【0052】
上記の効果について、
図10に示されるワイパアーム100(比較例)を用いて補足する。なお、
図10では、本実施形態と同様の構成に同符号を付している。このワイパアーム100は、本実施形態に係るヘッドカバー34及びグロメット40を備えていない。その代わりに、このワイパアーム100では、リテーナ20の前壁20F及び後壁20Rにおけるアームヘッド18側の端部に、それぞれ爪部102が形成されている(後壁20Rに形成された爪部102は図示省略)。これらの爪部102は、互いに接近する側へ突出している。このワイパアーム100では、リテーナ20がヘッド本体32に対して起立するロックバック位置へ回動されると、ヘッド本体32の先端部32Bに形成された図示しない段部に爪部102が当接する(
図10図示状態)。これにより、それ以上の起立方向へのリテーナ20の回動が規制される。
【0053】
しかしながら、上記の回動規制時には、片持ち構造の爪部102に応力が集中する。このため、例えばワイパアーム100の長さ寸法が長くなり、リテーナ20がアームヘッド18に対して起立される際のトルクが大きくなると、爪部102すなわちリテーナ20における回動規制部の強度を確保することが困難になる。この点、本実施形態では、前壁20F及び後壁20Rを繋いだ両持ち構造の上壁20Uの端面20U1が、グロメット40を介してアームヘッド18の先端部32Bの上面に突き当たるので、上記のワイパアーム100と比較してリテーナ20の回動規制部の強度が大幅に向上する。
【0054】
また、比較例に係るワイパアーム100では、爪部102がヘッド本体32の先端部32Bと直接当接するため、ヘッド本体32の先端部32Bが傷付く可能性がある。このため、車外側から視認され難い位置で爪部102をヘッド本体32の先端部32Bに当接させているものの、ヘッド本体32やリテーナ20の表面に防眩及び防錆の黒色の塗装が行われている場合には、塗膜層が損傷する場合がある(
図10においてドットを付した領域参照)。その結果、ヘッド本体32やリテーナ20の塗膜層の損傷部からの腐食などが懸念される。この点、本実施形態では、ヘッド本体32の先端部32Bがグロメット40によって保護されるので、上記のような傷付きを防止することができ、ひいては腐食をも防止することができる。これにより、意匠部品であるワイパアームの傷付きや腐食による見栄えの低下を防止できる。
【0055】
また、本実施形態では、基端部32Aがピボット軸38に固定されると共に先端部32Bにリテーナ20が連結されたヘッド本体32は、アルミダイキャストによって製造されている。一方、ヘッド本体32に取り付けられてヘッド本体32を覆ったヘッドカバー34は、樹脂の射出成形によって製造されている。そして、グロメット40は、樹脂製のヘッドカバー34におけるリテーナ20側の端部に形成された装着部35に装着されている。これにより、アルミダイキャスト製のヘッド本体32に装着部35が形成される場合と比較して、装着部35の形状設定の自由度が高くなる。その結果、グロメット40を装着部35に対して組み付け易くなる。また、装着部35に対するグロメット40の組み付け状態を目視により確認し易くなるので、組み付け不良の発生を抑制し易くなる。さらに、アルミダイキャスト用の金型を簡素化することができるので、当該金型の製造コストを低減できる。
【0056】
また、本実施形態では、ヘッドカバー34に形成された装着部35とヘッド本体32との間に、グロメット40の一部である内側部40Bが挟まれている。これにより、アームヘッド18の傷付を防止するためのグロメット40によって、ヘッド本体32に対するヘッドカバー34のガタつきを規制できる。その結果、例えばヘッド本体32とヘッドカバー34との固定における寸法精度を高精度に形成する必要がないので、ヘッド本体32及びヘッドカバー34の製造が容易になる。
【0057】
また、本実施形態では、グロメット40には、ヘッド本体32の基端側へ開放されたスリット41が形成されている。このスリット41には、ヘッドカバー34の装着部35が差込まれている。そして、グロメット40におけるスリット41を介した両側の部位(外側部40A及び内側部40B)のうちの一方である内側部40Bが、装着部35とヘッド本体32との間に挟まれている。このように、グロメット40に形成されたスリット41にヘッドカバー34の装着部35を差込む構成であるため、装着部35とヘッド本体32との間に一部が挟まれるグロメット40を、ヘッドカバー34に対して容易に装着することができる。
【0058】
また、本実施形態では、ヘッド本体32は、グロメット40に対してヘッド本体32の先端側、すなわち装着部35がスリット41に対して差込まれた側とは反対側から当接した外れ防止部37を有している。この外れ防止部37がグロメット40と当接することにより、装着部35がスリット41から抜け出すことが防止される。これにより、グロメット40が装着部35から不用意に外れることをヘッド本体32すなわち既存の構成によって防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、装着部35には、ヘッド本体32の先端側へ開放された一対の切欠部42が形成されている。そして、グロメット40は、一対の切欠部42の内側に挿入された一対の切欠挿入部40C2を有しており、スリット41を介した両側の部位(外側部40A及び内側部40B)が切欠挿入部40C2によって接続されている。これにより、スリット41が外力によって広がることを抑制できるので、グロメット40を装着部35に良好に保持することができる。また、外側部40Aが外力によって捲れることを防止又は抑制できる。
【0060】
さらに、本実施形態では、ヘッドカバー34の装着部35がグロメット40のスリット41に差込まれると、グロメット40が有する切欠挿入部40C2が装着部35に形成された切欠部42に嵌合する。これにより、例えばグロメット40が装着されたヘッドカバー34がヘッド本体32に取り付けられる際などに、グロメット40が装着部35から不用意に脱落し難くなる。したがって、ヘッド本体32に対するヘッドカバー34の取付作業が容易になる。
【0061】
なお、本実施形態では、アームヘッド18がヘッドカバー34を備えた構成にしたが、本発明はこれに限らず、アームヘッド18がヘッドカバー34を備えていない構成にしてもよい。その場合、例えば
図11に示される変形例60のように、ゴム弾性部材としてのグロメット62が、ヘッド本体32の先端部32Bの上面に直接取り付けられる構成になる。この変形例60では、グロメット62は、板状に形成されてヘッド本体32の先端部32Bの上面に配設された本体部62Aと、本体部62Aの下面から突出した筒状の係止部62Bとを有している。また、ヘッド本体32の先端部32Bの上部には、上記の係止部62Bが嵌入された段付孔64が形成されている。この段付孔64は、下部側が上部側よりも拡径された段付状に形成されており、係止部62Bの先端部に形成された爪部102が段付孔64の段部に引っ掛っている。これにより、グロメット62がヘッド本体32の先端部32Bに係止されている。
【0062】
また、上記実施形態では、グロメット40(ゴム弾性部材)の一部である内側部40Bがヘッドカバー34の装着部35とヘッド本体32との間に挟まれた構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ヘッドカバーの装着部に装着されたゴム弾性部材とヘッド本体との間に、ヘッドカバーの一部が介在された構成にしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ヘッドカバー34の装着部35がグロメット40に形成されたスリット41に差込まれることで、グロメット40(ゴム弾性部材)がヘッドカバー34に装着された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、前述した変形例60に係るグロメット62の係止部62Bが、ヘッドカバーの装着部に形成された孔に嵌入係止されることで、当該グロメット62(ゴム弾性部材)がヘッドカバーに装着される構成にしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ヘッド本体32に形成された外れ防止部37が、グロメット40に対してヘッド本体32の先端側から当接することにより、ヘッドカバー34からグロメット40が外れることを防止する構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ヘッドカバー34からグロメット40が外れることを防止するための部材を、ヘッド本体に取り付ける構成にしてもよい。
【0065】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。