(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項5に記載の方法により作製した2枚のラミネート材を熱融着性樹脂層同士を内側に向けて合わせ、縁部を熱封止することにより、内部に第一の剥離部による金属露出部が臨み、電池要素を収納する電池要素室を形成し、外面に第二の剥離部による金属露出部を配置することを特徴とする蓄電デバイス用外装体の製造方法。
請求項6に記載の蓄電デバイス用外装体の電池要素室に、正極要素、負極要素、セパレーターおよび電解液からなる電池要素を封入することを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された方法は金属箔と樹脂フィルムの貼り合わせの段階で金属露出部の寸法と形成位置を決定しなければならず、貼り合わせ後に変更することができない。従って、金属露出部の形状または位置が異なれば、それぞれに専用のラミネート材を準備しなければならない。また、金属露出部の形状、数および位置に応じて専用の接着剤塗布用ロールが必要になるので、作製コストを押し上げることになる。
【0008】
また、易剥離シートを貼り付けて樹脂フィルムと易剥離シートを切除する方法も、金属箔と樹脂フィルムの貼り合わせの段階で金属露出部の寸法と形成位置を決定しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、金属露出部の形状、数および位置の異なる複数種のラミネート材の製造工程の一部を共通化して効率良くラミネート材を製造することを目的とする。
【0010】
即ち、本発明は下記[1]〜[7]に記載の構成を有する。
【0011】
[1]金属箔の少なくとも一方の面に樹脂層が貼り合わされて積層されたラミネート素材の樹脂層側の面にレーザー光を照射し、樹脂層と金属箔を剥離させて剥離部を形成する剥離工程を行うことを特徴とするラミネート材の製造方法。
【0012】
[2]前記レーザーは、エキシマレーザー、YAGレーザー、YVO
4レーザーのうちのいずれかあり、かつ波長が150nm〜550nmであり、出力が3W以上である前項1に記載のラミネート材の製造方法。
【0013】
[3]前記剥離工程の後、剥離部上の樹脂層を切除して金属箔を露出させて金属露出部を形成する切除工程を行う前項1または2に記載のラミネート材の製造方法。
【0014】
[4]前記樹脂層の切除を物理刀またはレーザー刀によって行う前項3に記載のラミネート材の製造方法。
【0015】
[5]前記ラミネート素材は、金属箔の一方の面に耐熱性樹脂層が積層され、他方の面に熱融着性樹脂層が積層された両面ラミネート材であり、前記熱融着性樹脂層側の面に第一の剥離部を形成し、前記熱融着性樹脂層側の面または前記耐熱性樹脂層側の面に第二の剥離部を形成する前項1〜4のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の製造方法。
【0016】
[6]前項5に記載の方法により作製した2枚のラミネート材を熱融着性樹脂層同士を内側に向けて合わせ、縁部を熱封止することにより、内部に第一の剥離部による金属露出部が臨み、電池要素を収納する電池要素室を形成し、外面に第二の剥離部による金属露出部を配置することを特徴とする蓄電デバイス用外装体の製造方法。
【0017】
[7]前項6に記載の蓄電デバイス用外装体の電池要素室に、正極要素、負極要素、セパレーターおよび電解液からなる電池要素を封入することを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
上記[1]に記載のラミネート材の製造方法によれば、後に金属露出部となる剥離部の形状、寸法および位置はレーザー光の照射によって決定されるので、金属露出部の形状、寸法および位置の異なる複数種のラミネート材を1種類のラミネート素材から作製することができる。複数種のラミネート材の出発材料であるラミネート素材は共通であり、ラミネート素材の共通化によって材料の無駄を省きかつ製造効率を向上させることができる。
【0019】
上記[2]に記載のラミネート材の製造方法によれば、剥離工程において特定のレーザーを使用することにより剥離部を形成することができる。
【0020】
上記[3][4]に記載のラミネート材の製造方法によれば、切除工程において、剥離工程で形成した剥離部上の樹脂層を切除することにより金属露出部を形成できる。
【0021】
上記[5]に記載のラミネート材の製造方法によれば、金属箔の両面に樹脂層が積層された両面ラミネート材に対して上記の効果を得ることができる。
【0022】
上記[6]に記載の蓄電デバイス用外装体の製造方法によれば、材料のラミネート材の製造効率が向上し、ひいては外装体の製造効率も向上させることができる。
【0023】
上記[7]に記載の蓄電デバイスの製造方法によれば、外装体の材料であるラミネート材の製造効率が向上し、ひいてはタブレスの蓄電デバイスの製造効率も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[ラミネート材の製造方法]
本発明のラミネート材の製造方法は、ラミネート素材にレーザー光を照射して照射部分の金属箔と樹脂層を剥離させて剥離部を形成する剥離工程と、剥離部上の樹脂層を切除して金属箔を露出させて金属露出部を形成する切除工程の2つの工程を行う。ラミネート材は剥離工程後で切除工程前の中間加工材に種々の加工を施すことがあり、切除工程前の中間加工材の製造も本発明に含まれる。以下に、ラミネート素材、剥離工程および切除工程について詳述する。
【0026】
(ラミネート素材)
ラミネート素材は金属箔の少なくとも一方の面に樹脂層が貼り合わされて積層されている。
図1に示すラミネート素材10は蓄電デバイスの外装体の材料として使用されるものであり、金属箔11の両面に樹脂層17、18が積層された両面ラミネート材である。
【0027】
前記ラミネート素材10は、金属箔11の一方の面に接着剤層12により耐熱性樹脂層13が貼り合わされて積層され、他方の面に接着剤層14により熱融着性樹脂層15が貼り合わされて積層されている。一方の面における樹脂層17は接着剤層12および耐熱性樹脂層13の2層であり、他方の面における樹脂層18は接着剤層14および熱融着性樹脂層15の2層である。
【0028】
前記ラミネート素材10の製造方法は限定されない。以下はラミネート素材の作製工程の一例である。
【0029】
金属箔11と耐熱性樹脂層13の合わせ面の少なくとも一方の全領域に接着剤を塗布して接着剤層12を形成し、金属箔11と耐熱性樹脂層13を貼り合わせる。同様に、金属箔11と熱融着性樹脂層15とを接着剤層14によって貼り合わせる。貼り合わせ方法は限定されずドライラミネート法等の周知の手法を適宜用いる。また、耐熱性樹脂層13と熱融着性樹脂層15の貼り合わせ順序は任意である。
【0030】
また、耐熱性樹脂層13自身が粘着性を有しており、所定の接着力が得られる場合は接着剤層12を介さずに耐熱性樹脂層13と金属箔11を直接貼り合わせることができる。同様に、熱融着性樹脂層15と金属箔11とを直接貼り合わせることもできる。また、耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15が単層があることにも限定されず、2層以上の複層が積層されたラミネート素材も本発明の方法を適用できる。
【0031】
(剥離工程)
図1に示すように、剥離工程において、ラミネート素材10にレーザー光Lを照射して樹脂層17、18を焼灼することなく樹脂層17、18と金属箔11を剥離させて剥離部21、22を形成する。前記剥離部21、22が形成されたラミネート素材を中間加工材20と称する。
【0032】
本工程においては、樹脂層17、18への吸収が少ない波長のレーザーを、金属箔11の表層から金属原子を脱離できる出力で使用する。このような条件のレーザー光をラミネート素材10に照射すると、樹脂層17、18に干渉することなく通り抜けて金属箔11表面に到達する。金属箔11の金属原子は隣接する金属原子と金属結合しており、かつ表面の金属原子は樹脂層17、18の接着剤層12、14に接着されている。レーザー光Lによるエネルギーは金属箔11の表面の金属原子に吸収されることで隣りの金属原子との金属結合を外すと推測される。金属結合が外れ金属箔11から脱離した金属原子は一部が樹脂層17,18(接着剤層12、14)にトラップされ、一部は再び金属結合により金属箔11あるいは脱離した金属原子同士で金属箔11とは分離した固体を作ることになる。なお、金属原子の脱離のメカニズムとして金属原子の昇華あるいは金属箔表面の局所的な溶融による分離などが考えられる。金属箔11から金属結合が外れた金属原子が樹脂層17、18(接着剤層12、14)にトラップされた状態あるいは離れた状態はレーザー照射後も維持される。レーザー光Lの照射位置を移動させることで金属箔11表面から金属原子が順に脱離していき、その脱離した金属原子が樹脂層17,18(接着剤層12、14)にトラップされ、または分離することで、結果的に金属箔11の箔内、または樹脂層17、18(接着剤層12、14)と金属箔11の接合界面で剥離が起こり、樹脂層17、18(接着剤層12、14)と金属箔11間にある剥離部21、22が形成される。前記剥離部21、22において、金属箔11は表面の金属原子を失って表面が僅かに凹んだ状態となり、失われた金属原子は樹脂層17、18(接着剤層12、14)に付加され、あるいは樹脂層17、18(接着剤層12、14)に付加されることなく離れたままの状態で存在している。上述したレーザー光の照射による作用は短時間で局部的であり、金属原子が吸収したエネルギーにより発生した熱は速やかに金属箔11に放散されるので、樹脂層17、18が焼灼されることなく剥離部21、22が形成される。なお、前記剥離部21、22の形成によって金属箔11表面に凹みを生じるが、表面の金属原子が失われるに過ぎず、金属箔11のバリア性が損なわれることはない。
【0033】
なお、前記剥離部21、22において、金属層11と金属結合が切れることなく、樹脂層17、18の接着剤層12、14に接着したままの金属原子が極僅かに存在していたとしても、次工程の切除工程において支障なく樹脂層17、18を除去することができる。
【0034】
前記剥離部21、22が形成されると金属箔11の光沢が減じられる。光沢の変化は剥離部と樹脂層を通しても視認できる明らかな変化である。
【0035】
上述した作用を有するレーザーは、エキシマレーザー、YAGレーザー、YVO
4レーザーのいずれかで、かつ波長が150nm〜550nmで、出力が3W以上のレーザーを推奨できる。
【0036】
150〜550nmのレーザー光は樹脂層17、18による干渉が少ないために、樹脂層17、18を焼灼することなく剥離部21、22を形成する本工程に適している。エキシマレーザーとしては、157nmのF
2レーザー、193nmのArFレーザー、222nmのXeClレーザー、248nmのXeFレーザーを例示できる。YAGレーザーとしては、260nm付近の第4高調波、350nm付近の第3高調波、530nm付近の第2高調波を例示できる。また、YVO
4レーザーとしては、260nm付近の第4高調波、350nm付近の第3高調波、530nm付近の第2高調波を例示できる。上記レーザーのうち、特に緑色の波長域である530nm付近のレーザーはグリーンレーザーと称されている。
【0037】
また、金属箔11を構成する金属によって吸収率の高い波長が異なり、本工程では吸収率の高い波長のレーザーを用いることが好ましい。また、レーザー光は金属箔11の表面に作用させるので、めっき箔に対してはめっき金属に適した波長のレーザーを選定する。ただし、樹脂層17、18に干渉される波長は好ましくないので、その金属における最大吸収率を示す波長が最良の波長であるとは限らない。アルミニウムは900nm付近で高い吸収率を示すが、近赤外領域の光は樹脂層17、18の干渉を受けるので500〜550nmのグリーン領域のレーザーが適している。銅、ニッケル、金は500nm付近で高い吸収率を示すので500〜550nmのグリーン領域のレーザーが適している。Feは1000nm付近で高い吸収率を示すが、近赤外領域の光は樹脂層17、18の干渉を受けるので500〜550nmのグリーン領域のレーザーが適している。また、銀は300nm付近で高い吸収率を示すので紫外領域のレーザーが適している。上述したように、500〜550nmのグリーン領域のレーザーは多くの金属に適しており、しかも金属に対する加工性が良好である点で推奨できる。
【0038】
レーザーの出力は、金属箔11の種類、樹脂層17,18の樹脂の種類や厚さに応じて適宜設定するが、後述の切除工程で樹脂層17、18を容易に除去できるように剥離させるには、3W以上の出力が好ましい。3W未満では剥離能力が不足するおそれがある。特に好ましいレーザーの出力は3W〜100Wである。
【0039】
(切除工程)
図2に示すように、前記中間加工材20の剥離部21、22の輪郭に沿って樹脂層17、18を切断し、剥離部21、22上の樹脂層17a、18aを切除する。上述したように剥離部21、22は光沢が減じられて変色しているので、切断位置は肉眼で視認できる。樹脂層17a、18aの切除によって金属箔11が露出し、金属露出部23、24が形成されてラミネート材25が作製される。
【0040】
樹脂層17a、18aの切断は、トムソン刀やロータリーダイ等の物理刀や、CO
2レーザー等の樹脂に対する吸収率の高いレーザーによるレーザー刀を用いて行う。
【0041】
本発明の方法に使用するラミネート素材10は金属箔11の全面に樹脂層17、18をベタ貼りにした素材である。剥離部21,22、即ち金属露出部23、24の形状および寸法、および形成位置は剥離工程を行う際に任意に設定できるので、金属露出部23、24の形状、寸法、数、形成位置が異なる複数種のラミネート材25を1種類のラミネート素材10から作製することができる。そして、出発材料であるラミネート素材10の共通化によって材料の無駄を省きかつ製造効率を向上させることができる。また、既存のラミネート材に対しても本発明の方法を適用できる。
【0042】
前記ラミネート素材は金属箔の少なくとも一方の面に樹脂層が積層され、本発明の方法はその樹脂層側の面に上記の剥離工程および切除工程を施すことが条件である。金属箔の他方の面の態様は(1)〜(3)のいずれかであり、いずれの場合も本発明の方法を適用できる。
(1)樹脂層が積層されている
(2)樹脂層以外の層が形成されている
(3)何も積層されていない。
【0043】
図示例のラミネート素材10は(1)に該当するが、金属箔11の両面に樹脂層17、18が積層されているラミネート素材10に対して、一方の面のみに剥離工程および切除工程を施す場合もある。これらのラミネート素材の積層態様および加工を施す面はラミネート材の用途によって異なる。
【0044】
また、切除工程は剥離工程に続いて行うことにも限定されず、2つの工程の間に他の工程を挿入することができる。(1)のラミネート材を包装材料として使用する場合は、フラットシートを被包装物を装填可能な形態のケースに加工し、ケース内に被包装物を装填した後に開口部の熱融着性樹脂層をヒートシールして被包装物を封入する。被包装物を装填可能な形態のケースへの加工とは、張り出し加工または絞り加工等によるプレス加工によりフラットシートを立体形状に塑性変形させる加工やフラットシートを袋状に加工する製袋加工である。前記剥離工程および切除工程は、加工可能である限りフラットシートからヒートシール後までの間の任意の時期に行うことができる。
【0045】
後述する蓄電デバイス100の外装体30の本体40はフラットシートをプレス加工して凹部41を形成するが、プレス加工は、剥離工程前、剥離工程と切除工程の間、切除工程後のいずれの時期でも行うこともできる。例えば、複数の剥離部21、22の形成はフラットシートのラミネート素材10に剥離工程を行うことで作業効率を高め、中間加工材20にプレス加工を行うことで剥離部21、22の金属箔11を樹脂層17、18で保護し、成形後に切除工程を行う、という順序を選択することもできる。また、電池要素室60内に臨む金属露出部24はヒートシール前に切除工程を行わなければならないが、外装体30外面の金属露出部23はヒートシール後であっても切除工程を行うことができる。
【0046】
上記の方法で剥離部21、22を形成し中間加工材20を作製すると、最終製品であるラミネート材25の金属露出部23、24の形状および寸法、金属露出部23、24の位置も決定されるが、中間加工材20では剥離部21、22の金属箔11は樹脂層17、18に覆われて保護されている。
【0047】
[蓄電デバイスとその外装体]
図3〜5に、上記の方法で作製したラミネート材で作製した蓄電デバイス用外装体30、35、およびこれらの外装体30、35を用いた蓄電デバイス100、101を示す。
【0048】
(第一の外装体と蓄電デバイス)
図3は、両面に金属露出部23、24を有するラミネート材25(
図2参照)で作製した蓄電デバイス用の外装体30であり、
図4は前記外装体30を用いた蓄電デバイス100である。なお、
図4はラミネート材25の接着剤層12、14の図示を省略し、金属箔11、耐熱性樹脂層13、熱融着性樹脂層15のみを図示している。
【0049】
前記本体30は、平面視長方形の凹部41を有する本体40と、フラットシートの蓋体50とからなり、
図1のラミネート素材10の所要箇所に剥離工程および切除工程を施して金属露出部23、24を形成したラミネート素材25で構成されている。前記外装体30は、本体40の凹部41に蓋体50を被せることにより閉鎖される空間が電池要素室60となる。
【0050】
前記本体40は、フラットシートのラミネート材に張り出し成形や絞り成形等の加工を施すことにより、熱融着性樹脂層15側の面が凹む凹部41を成形し、凹部41の開口縁から外方にほぼ水平に延びるフランジ42、43、44、45を有している。前記凹部41の底壁の内側、熱融着性樹脂層15側の面に形成された金属露出部24が第一内側導通部48となされている。また、一方の短辺側の一方のフランジ42の耐熱性樹脂層13側の面に形成された金属露出部23が第一外側導通部47となされている。
【0051】
前記蓋体50は本体40の平面寸法と同寸であり、本体40に向けられた熱融着性樹脂層15側の面において、本体40の第一内側導通部48に対向する位置に形成された金属露出部24が第二内側導通部53となされている。また、前記蓋体50の一方の短辺側の端部51の耐熱性樹脂層13側の面に形成された金属露出部23が第二外側導通部52となされている。
【0052】
前本体40と蓋体50を組み立てると、第一内側導通部48および第二内側導通部53が電池要素室60内に臨み、外装体30の外面に第一外側導通部47および第二外側導通部52が露出する。
【0053】
前記電池要素70は、金属箔に正極活物質を塗工した正極71と金属箔に負極活物質を塗工した負極72との間にセパレーター73を配置して捲回して積層した積層体である。前記正極71は本発明における正極要素であり、同様に負極72は負極要素である。
【0054】
蓄電デバイス100は、前記本体40の第一内側導通部48に導電性バインダー74を介して電池要素70の正極71の端部を接続するとともに、蓋体50の第二内側導通部53に導電性バインダー74を介して負極72の端部を接続し、電解質を注入して電池要素室60の周囲を熱封止して熱封止部61を形成することにより作製される。
【0055】
前記蓄電デバイス100は、電池要素室60内においては正極箔71が第一内側導通部48で本体40の金属箔11に導通し、外装体30の外面においては第一外側導通部47で外部との導通を得る。同様に、電池要素室60内においては負極箔72が第二内側導通部53で蓋体50の金属箔11に導通し、外装体30の外面においては第二外側導通部52で外部との導通を得る。そして、前記蓄電デバイス100は外装体30の外面に設けられた第一外側導通部47および第二外側導通部52を通じて電気の授受を行う。
【0056】
(第二の外装体と蓄電デバイス)
蓄電デバイスの外装体において、外部と電気の授受を行う外側導通部はラミネート材の耐熱性樹脂層13側の面に設けることに限定されず、熱融着性樹脂層15側の面に設けることもできる。また、電池要素が正極用金属箔と負極用金属箔の積層体であることにも限定されない。
【0057】
図5の蓄電デバイス101は、外装体35をフラットな2枚のラミネート材で構成するとともに、ラミネート材の金属箔を正極または負極として利用する薄型デバイスである。
【0058】
金属箔11を正極として用いる第一ラミネート材110は、熱融着性樹脂層15側の面に2つの金属露出部24が形成され、これらが第一内側導通部111および第一外側導通部112となされている。金属箔11を負極として用いる第二ラミネート材120は熱融着性樹脂層15側の面に2つの金属露出部24が形成され、これらが第二内側導通部121および第二外側導通部122となされている。
【0059】
前記蓄電デバイス101は、第一ラミネート材110の第一内側導通部111に正極活物質層76を塗工し、第二ラミネート材120の第二内側導通部121に負極活物質層77を塗工し、2つのラミネート材110、120の間にセパレーター73を挟み、第一外側導通部112および第二外側導通部122が露出するように端部をずらして重ね、電解液とともに第一内側導通部111および第二内側導通部121周囲を熱封止することにより作製されている。前記正極活物質層76および負極活物質層77が本発明における正極要素および負極要素に対応し、正極活物質層76、負極活物質層77、セパレーター73および電解液が電池要素75であり、前記電池要素75が存在する空間が電池要素室(符号なし)である。
【0060】
[ラミネート材の他の用途]
本発明の方法で作製するラミネート材の用途は蓄電デバイスの外装体に限定されず、また外装体は
図3および
図5に示した形態にも限定されない。剥離部を設ける面、位置や数はラミネート材の用途によって異なる。また2つの外装体30、35については、蓄電デバイスの外装体の外側導通部(金属露出部)が耐熱性樹脂層13側の面に設けられていることにも限定されない。
図5の外装体35のように2枚のラミネート材の端部をずらして重ねると熱融着性樹脂層15が外装体35の外面に露出するので、熱融着性樹脂層15側の面に外側導通部を設けることができる。また、外装体を構成する2枚のラミネート材において、一方のラミネート材は熱融着性樹脂層15側の面に形成した金属露出部を外側導通部として利用し、他方のラミネート材は耐熱性樹脂層13側の面に形成した金属露出部を外側導通部として利用することもできる。一方、電池要素室内に臨む内側導通部は熱融着性樹脂層15側の面に設けなければならない。従って、タブリードなしの蓄電デバイスの外装体に使用するラミネート材は、耐熱性樹脂層13側の面および熱融着性樹脂層15側の面の両方に金属露出部23、24が設けられているか、熱融着性樹脂15側の面に複数の金属露出部24が設けられていることが条件になる。即ち、中間加工材20において、外装体の内側導通部となる第一の剥離部が熱融着性樹脂層側の面に形成され、外側導通部となる第二の剥離部は熱融着性樹脂層側の面または熱融着性樹脂層側の面に形成されている。
【0061】
また、タブリード付の蓄電デバイスの外装体では熱融着性樹脂層側に金属露出部を設けないが、耐熱性樹脂層側に金属露出部を設けることにより、この金属露出部を漏電チェックに利用するができる。
【0062】
本発明の方法で作製するラミネート材は、畜電デバイスの外装体以外に食品や液体の包装材料としても用いることができる。金属露出部(剥離部)を形成する面、金属露出部(剥離部)の数および寸法は限定されず、ラミネート材の用途に応じて任意に設定することができる。食品や液体の包装材料のラミネート材の用途の一例として食品容器を挙げることができる。食品容器用ラミネート材では、容器の外面である耐熱性樹脂層側の面および内面である熱融着性樹脂層側の面の両方に金属露出部を形成し、この金属露出部に発熱体を接触させたり、内容物を介してジュール熱による加熱が行え、これらが可能な食品容器を作製できる。
【0063】
[ラミネート素材の構成材料]
本発明はラミネート素材10を構成する各層の材料を限定するものではないが、好ましい材料として以下の材料を例示することができる。
【0064】
金属箔11として、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔、チタン箔、これらの金属のクラッド箔を例示でき、さらにはこれらの金属箔にめっきを施しためっき箔を例示できる。また、これらの金属箔に化成皮膜を形成することも好ましい。金属箔11の厚さは7μm〜150μmが好ましい。
【0065】
耐熱性樹脂層13を構成する耐熱性樹脂としては、ラミネート材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層15を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂を用いるのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂を用いるのが特に好ましい。例えば、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、成形性および強度の点で、二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルム、あるいはこれらを含む複層フィルムが特に好ましく、さらに二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムとが貼り合わされた複層フィルムを用いることが好ましい。前記ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6−ポリアミドフィルム、6,6−ポリアミドフィルム、MXDポリアミドフィルム等が挙げられる。また、二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。また、耐熱性樹脂層13は、単層で形成されていても良いし、あるいは、例えばPETフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層で形成されていても良い。また、厚さは9μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0066】
熱融着性樹脂層15を構成する熱可塑性樹脂としては、耐薬品性および熱封止性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーで構成されるのが好ましい。また、オレフィン系共重合体として、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン・アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン・メタアクリル酸共重合体)を例示できる。また、ポリアミドフィルム(例えば12ナイロン)やポリイミドフィルムも使用できる。また、厚さは20μm〜80μmの範囲が好ましい。
【0067】
耐熱性樹脂層13側の接着剤12としては、例えば、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステル−ウレタン系樹脂、あるいはポリエーテル−ウレタン系樹脂を含む接着剤を用いることが好ましい。一方、第一熱融着性樹脂層15側の接着剤14、24としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤が挙げられる。
【実施例】
【0068】
図1に示す積層構造のラミネート素材10の両面に剥離工程および切除工程を施して金属露出部23、24を形成した。
【0069】
使用したラミネート素材10の各層は以下のとおりである。前記ラミネート素材10は、ドライラミネート法により金属箔11の両面に樹脂フィルムを貼り合わせた。
【0070】
金属箔11:厚さ40μmのアルミニウム箔(JIS H4160、A8079H)
耐熱性樹脂層13:厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム
接着剤層12:二液硬化型ポリエステル−ウレタン系接着剤、塗布量4g/m
3
熱融着性樹脂層15:厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム
接着剤層14:二液硬化型酸変性ポリプロピレン系接着剤、塗布量3g/m
3
【0071】
[1]実施例1:熱融着性樹脂層15側の面
(剥離工程)
波長523nm、出力15W、スポット径2.2mmのYVO
4レーザーを用い、ラミネート素材10の熱融着性樹脂層15側の面の30mm×40mmの領域にレーザー光を走査速度400m/sで走査して照射した。
【0072】
図6に照射後のラミネート素材10、即ち中間加工材20の外観写真を示す。この写真の左上の濃色の長方形が照射部分であり、照射部分を肉眼で識別することができる。
【0073】
また、
図7に照射後の断面のSEM画像を示す。前記SEM画像において、中央の白い部分が金属箔11であり、金属箔11の上のグレーの層が熱融着性樹脂層15と接着剤層14の樹脂層層18であり、金属箔層11のグレーの層が耐熱性樹脂層13と接着剤層12の樹脂層17である。
図7に示すように、レーザー照射部は金属箔11と樹脂層18とが剥離しており、剥離部22が形成されていることを確認した。
【0074】
(切除工程)
剥離工程で形成した剥離部22の周縁をレーザー刀で切断し、剥離部21上の樹脂層18aを切除した。レーザー刀は、出力15W、スポット径2.2mmのCO
2レーザーであり、走査速度1000mm/で走査した。前記樹脂層18aの切除によって金属箔11が露出し、金属露出部24が形成されていることを確認した。
【0075】
[2]実施例2:耐熱性樹脂層側13の面
波長355nm、出力5W、スポット径2.2mmのYAGレーザーを用い、ラミネート素材10の耐熱性樹脂層13側の面の1mm×30mmの領域にレーザー光を走査速度300m/sで走査して照射した。
【0076】
図8に照射後のラミネート素材10、即ち中間加工材20の外観写真を示す。この写真の中央上部のライン状の部分が照射部分であり、照射部分を肉眼で識別することができる。
【0077】
また、
図9に照射後の断面のSEM画像、
図10に
図9の一部拡大画像を示す。
図9、10において、中央の白い部分が金属箔11であり、金属箔11の上のグレーの層が耐熱性樹脂層13と接着剤層12の樹脂層層17であり、金属箔層11の下のグレーの層が熱融着性樹脂層15と接着剤層14の樹脂層18である。
図9、10に示すように、レーザー照射部は金属箔11と樹脂層17とが剥離しており、剥離部21が形成されていることを確認した。
【0078】
(切除工程)
剥離工程で形成した剥離部21の周縁を実施例1と同じ方法で剥離部21上の樹脂層17a切除した。樹脂層17の切除によって金属箔11が露出し、金属露出部23が形成されていることを確認した。