(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
信号端子及びグランド端子の二種の端子を有する複数の端子と、上記信号端子及び上記グランド端子が混在した状態で上記複数の端子を配列保持する絶縁材製の保持体と、少なくとも二つのグランド端子に接触した状態で上記保持体の内側で該保持体に保持されるグランド部材とを備える電気コネクタの上記グランド端子と上記グランド部材との電気的導通状態を検出する該電気コネクタの検査方法において、
上記複数の端子は、相手接続部材との接続のための接続部を一端に有し、
上記端子の接続部と上記グランド部材の検出部とが同じ方向へ向けて保持体から突出しており、
上記保持体から露呈して上記グランド部材に形成された検出部および所定の上記グランド端子に電流を流すことにより上記グランド部材と上記所定のグランド端子との電気的導通状態を検出することを特徴とする電気コネクタの検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る電気コネクタを相手コネクタとともに下方から見て示した断面斜視図であり、コネクタ嵌合前の状態で示している。また、
図2は、
図1の両コネクタの嵌合接続後の状態を示す断面斜視図である。本実施形態に係る電気コネクタ1(以下、単に「コネクタ1」という)は、相手接続部材としての回路基板P1の実装面上に配される回路基板用電気コネクタであり、複数の相手コネクタ2が上方から接続される。また、該相手コネクタ2は、他の回路基板P2の実装面上に配される回路基板用電気コネクタである。本実施形態では、コネクタ1は後述する複数の接続体10を有しており、一つの接続体10に対して一つの相手コネクタ2が接続される。
図1,2には、上記複数の接続体10のうちの二つの接続体10と、該接続体10にそれぞれ接続される二つの相手コネクタ2とが示されている。
【0018】
コネクタ1は、相手コネクタ2に接続される複数の接続体10と、該複数の接続体10を配列し一括して支持する二つの支持体(図示せず)とを有している。該複数の接続体10は回路基板の面に対して平行な一方向で互いに近接して配列されている。
【0019】
図3(A)は
図1のコネクタ1の一つの接続体10の断面斜視図であり、
図3(B)は
図3(A)の接続体10からハウジング90を省略して示した断面斜視図である。
図3(A)に見られるように、接続体10は、互いに同形状をなし該接続体10の配列方向で対称となるように向かい合って配されて対をなす二つのブレード20と、該二つのブレード20の上半部を収容するとともに該ブレードを保持するハウジング90とを有している。接続体10の上部にてブレード20同士間で上方へ向けて開口する空間は、後述する相手コネクタ2の嵌合部を上方から受け入れるための受入部11として形成されている。
【0020】
図3(B)に見られるように、ブレード20は、接続体10の配列方向に対して直角なコネクタ幅方向(ブレード20の幅方向と一致する方向)に等間隔で配列された複数の帯板状の端子30と、該複数の端子30を保持する樹脂等の電気絶縁材製の二種の保持体40,50(後述する「上方保持体40」および「下方保持体50」)と、上記複数の端子30の一方の板面側(後述する「内側」に対応)あるいは他方の板面側(後述する「外側」に対応)に配され保持体40,50によって保持される三種のグランド部材としてのグランド板60,70,80(後述する「上方外側グランド板60」、「上方内側グランド板70」および「下方グランド板80」)を有している。以下、対をなす二つのブレード20において、互いに対面する面側を「内側」といい、その反対の面側を「外側」という。
【0021】
図3(B)に見られるように、複数の端子30は、信号端子30Sとグランド端子30Gとから成る。各ブレード20において、端子30は、互いに隣接する二つの信号端子30Sをグランド端子30Gが挟んで位置するように配列されている。本実施形態では、上記隣接する二つの信号端子30Sは、互いに対をなす高速差動信号を伝送するようになっている。以下、信号端子30Sとグランド端子30Gとを特に区別する必要がない場合には、「端子30」として説明する。
【0022】
端子30は、コネクタ嵌合方向、すなわち上下方向に延びる帯片状の金属部材を部分的に屈曲して作られており、接続体10の配列方向に対して板面が直角となるように配されている。該端子30は、後述する上方保持体40から上方に延出する弾性腕部31と後述する下方保持体50の下端から下方へ突出する接続部32と、上下方向に延び弾性腕部31と接続部32とを連結するとともに保持体40,50によって一体モールド成形により保持される被保持部33(
図6(A)参照)とを有している。以下、端子30の各部について、信号端子30Sとグランド端子30Gとを区別する必要がある場合には、各部の符号に「S」または「G」を付して説明する。
【0023】
弾性腕部31はその板厚方向に弾性変位可能となっている。該弾性腕部31の上端側には、上記板厚方向で内側へ向けて突出するように屈曲した接触部31Aとして形成されており、該接触部31Aが相手コネクタ2の端子110(後述する「相手端子110」)に弾性接触するようになっている。接続部32は、既述したように、下方保持体50の下端から下方へ突出しており、半田ボールB1(
図1,2参照)によって回路基板P1の対応回路部に半田接続されるようになっている。
【0024】
被保持部33は、
図6(B)によく見られるように、上端部が上方保持体40によって保持されるとともに、下半部が下方保持体50によって保持される。また、信号端子30Sの被保持部33Sは、上記上端部のみならず、後述する孔部33A(33AS)の直上に位置する範囲においても上方保持体40によって保持されている。該被保持部33には、上記上端部と上記下半部との間の範囲、すなわち上方保持体40および下方保持体50のいずれにも保持されていない範囲内に、端子幅方向中央域で上下方向に延びる孔部33Aが貫通形成されている。
【0025】
上方保持体40は、
図6(B)に見られるように、端子配列方向で端子配列範囲にわたって延びる主保持部41と、互いに隣接する信号端子30S同士間に対応する位置で上記主保持部41から下方へ突出する副保持部42と、主保持部41の端子配列方向端部で下方へ向けて突出する端突部43とを有している。
【0026】
主保持部41は、端子配列方向で端子配列範囲を含む範囲にわたって延びており、全ての端子30の被保持部33の上部の全周面を覆うようにして該上部を埋設保持している。副保持部42は、端子30の板面に対して平行な板面をもち上下方向に延びる板状をなし、端子配列方向にて、互いに隣接する二つの信号端子30Sの被保持部33Sの対向縁部(上下方向に延びる側縁部)を含む範囲に位置している。該副保持部42の板厚寸法は、端子30の板厚寸法よりも大きくなっており、上記二つの信号端子30Sの対向縁部の両板面および対向端面(板厚面)を覆うようにして該対向縁部を保持している。また、副保持部42は、両板面のそれぞれから突出する円筒状の保持突起42Aを有しており、後述するように該保持突起42Aによって二つのグランド板60,70を保持するようになっている。端突部43は、
図6(B)に見られるように、端子配列範囲外の位置で角柱状をなして下方へ延びている。
【0027】
下方保持体50は、端子配列方向で端子配列範囲を含む範囲で延びており、全ての端子30の被保持部33の下半部を埋設保持している。該下方保持体50には、
図3(A),(B)に見られるように、上下方向中間位置で端子配列範囲にわたって延びる凹部51が、該下方保持体50の外側面(
図3(A),(B)にて手前側の壁面)から没入して形成されている。該凹部51は、端子30の被保持部33の外側面(板面)の位置まで没入しており、該凹部51内で該被保持部33の外側面(板面)が露呈している。また、下方保持体50の内側面(
図4(A)にて手前側の壁面)には、端子配列方向での端部および中間部に、該内側面から突出する位置決め部52が形成されている。該位置決め部52は、
図3(A),(B)に見られるように、互いに対をなして対向するブレード20同士をその対向方向(接続体10の配列方向)で位置決めするようになっている。つまり、対をなすブレード20同士は、各ブレード20の下方保持体50の位置決め部52同士が突出頂面で当接することにより位置決めされる。また、位置決めされたブレード20の上部同士間には受入部11が形成される。
【0028】
下方保持体50の底面には、端子配列方向での信号端子30S同士間にて、ブレード20の対向方向での内側寄り位置に、上記底面から没入するとともに上記接続体10の配列方向での内方へ開放された底凹部53が形成されている。
図3(A),(B)によく見られるように、該底凹部53内には、後述する下方グランド板80の検出部84が収容されている。
【0029】
本実施形態のブレード20には、
図3(B)に見られるように、三種のグランド板、具体的には、一つの上方外側グランド板60、一つの上方内側グランド板70および複数の下方グランド板80が設けられている。上方外側グランド板60は、上下方向で上方保持体40の主保持部41と下方保持体50との間にわたる範囲で、全ての端子30の被保持部33の外側面に対面して設けられている。上方内側グランド板70は、上下方向で上方外側グランド板60と同じ範囲にて、全ての端子30の被保持部33の内側面に対面して設けられている(
図4(B)参照)。また、下方グランド板80は、上方内側グランド板70より下方位置で、四つの端子30に対応する範囲で端子配列方向に延び、該端子30の被保持部33の下半部の内側面に対面して設けられている(
図4(B)参照)。
【0030】
上方外側グランド板60は、
図3(B)に見られるように、端子配列範囲全域にわたって端子配列方向に延びており、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られている。該上方外側グランド板60は、隣接する二つの信号端子30Sに対応して位置する四角板状の平板部61と、各グランド端子30Gに対応する位置で該グランド端子30Gの外側面(板面)に向けて突出するとともに上下方向に延びる突条部62が形成されている。
図5(A)に見られるように、突条部62は、平坦な突出頂部でグランド端子30Gの外側面に接触している。また、上方外側グランド板60は、既述した上方保持体40の外側の保持突起42Aに対応する位置に円形状の孔部(図示せず)が貫通形成されており、上記保持突起42Aが該孔部に挿通された状態で超音波溶着が施されることにより、上方保持体40に保持される。
図3(B)には、上記超音波溶着により保持突起42Aの先端が溶融して変形した状態が示されている。
【0031】
上方内側グランド板70は、上述の上方外側グランド板60と同じ形状をなしており、該上方外側グランド板60の反対側、すなわちブレード20の内側に配される。該上方内側グランド板70も、上方外側グランド板60と同様に、二つの信号端子30Sに対応して位置する平板部71と、グランド端子30Gに対応して位置し該グランド端子30Gの内側面(板面)に接触する突条部72(
図5(A)をも参照)とを有している。また、該上方内側グランド板70は、平板部71に形成された孔部71A(
図4(B)参照)に上方保持体40の内側の保持突起42B(
図6(B)参照)が挿通された状態で超音波溶着が施されることにより、ブレード20の内側で上方保持体40によって保持される。
【0032】
図5(A)に見られるように、互いに隣接する二つの信号端子30Sから成る各ペアは、上下方向に見て、グランド板60,70および二つのグランド端子30Gによって囲まれて、外部から遮蔽されている。この結果、各ペアについて、ペア同士間のクロストークを確実に防止できるとともに、外部からのノイズの影響を受けることなく確実に信号を伝送することができる。
【0033】
下方グランド板80は、
図4(B)や
図6(A)に見られるように、端子配列方向に複数配列されている。各下方グランド板80は、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られており、隣接する二つの信号端子30Sおよび該二つの信号端子30Sを挟んで位置する二つのグランド端子30Gの合計四つの端子30から成る端子群に対応して配されている。
【0034】
下方グランド板80は、二つの信号端子30Sに対応して位置する四角板状の平板部81と、該平板部81の一方の側縁(
図4(B)にて左側の側縁)の上部から左方に延出する上方接触片82と、該平板部81の他方の側縁(
図4(B)にて右側の側縁)の下部から延出する右方に下方接触片83と、平板部81の端子配列方向中央域で該平板部81の下縁から下方に延出する検出部84とを有している。該下方グランド板80は、下方保持体50によって端子30とともに一体モールド成形されて埋設されることにより該下方保持体50の内側で保持される。
【0035】
図6(A)に見られるように、上方接触片82および下方接触片83は、それぞれ平板部81の側縁で屈曲されて、対応するグランド端子30Gの内側面(
図6(A)にて手前側の板面)へ向けて近づくように傾斜して延びている。また、このように傾斜して延びる接触片82,83は、その先端部が端子配列方向へ向くように、すなわちグランド端子30Gの内側面に対して平行となるように屈曲されて、該先端部の平坦な板面で上記グランド端子30Gの被保持部33Gの内側面に接触している(
図5(B),(C)参照)。
図4(B)および
図6(A)に見られるように、端子配列範囲での中間位置に配された各グランド端子30G(最外位置のグランド端子30G以外のグランド端子30G)には、互いに隣接する二つの下方グランド板80のうち一方の下方グランド板80の上方接触片82および他方の下方グランド板80の下方接触片83が接触している。また、上記最外位置のグランド端子30Gには、グランド端子30Gの上方接触片82および下方接触片83のいずれかが接触している。
【0036】
検出部84は、互いに隣接する二つの信号端子30S同士間に対応する位置で下方へ向けて延びており、
図4(A)に見られるように、該検出部84の下端は上下方向で下方保持体50の底面とほぼ同位置にある。
図4(A)によく見られるように、検出部84の下端部は、下方保持体50の底凹部53の上側内壁面から突出して露呈しており、該底凹部53内に位置している。
【0037】
本実施形態では、下方グランド板80は、二つのグランド端子30Gに接触した状態で下方保持体50の内側に位置することで該下方保持体50により強固に保持されているので、上記グランド端子30Gと確実に接触することができる。また、このように下方保持体50に強固に保持された下方グランド板80は変位しにくくなるので、この結果、該下方グランド板80とグランド端子30Gとの当初の接触状態が維持される。
【0038】
さらに、本実施形態では、四つの端子30の配列範囲にわたって延びる下方グランド板80が複数設けられており、端子配列範囲全域にわたって延びる一つの下方グランド板80を設ける場合と比べて、各下方グランド板80が端子配列方向で小さくなるので、下方グランド板80の保持がさらに確実になる。また、コネクタの設計変更により端子30の総数ひいてはグランド端子30Gの数が増減したとしても、これに合わせて下方グランド板80の数を増減させることにより容易に対応することができる。
【0039】
ハウジング90は、樹脂等の電気絶縁材料で作られており、端子配列方向を長手方向とする直方体外形をもつ四角筒状部材である。該ハウジング90は、
図3(A)に見られるように、上下方向に貫通した空間内に一対のブレード20を収容するようになっており、該ハウジング90の下部にはブレード20同士間を端子配列方向に延びる中間壁91を有している(
図4(A)をも参照)。該ハウジング90は、一対のブレード20に対して上方から取り付けられており、
図3(A)に見られるように、該ブレード20の上半部を収容する。
【0040】
次に、コネクタ1の製造工程について説明する。また、該製造工程とともに行われる、端子30と下方グランド板80との電気的導通状態を検出するための検査要領についても併せて説明する。
【0041】
まず、
図6(A)に見られるように、保持体40,50を同時に成形するための一つの金型(図示せず)内に、複数の端子30を所定間隔で配列するとともに、複数のグランド板80を、各下方グランド板80の上方接触片82および下方接触片83が、それぞれ対応するグランド端子30Gの板面に接触するように配列する。このとき、端子30の弾性腕部31と接続部32は金型外に位置することとなる。また、複数の端子30そして複数の下方グランド板80はそれぞれキャリアに連結された状態であってもよい。
【0042】
次に、保持体40,50をモールド成形することにより該保持体40,50で端子30の被保持部33および下方グランド板80を一体的に保持する(
図6(B)参照)。具体的には、溶融した樹脂を金型内に注入してから固化させることにより、上方保持体40によって端子30の被保持部33の上端部が保持されるとともに、下方保持体50によって端子30の被保持部33の下半部および下方グランド板80(検出部84を除く)が保持され、
図6(B)に見られるようなブレード20の半製品20’が得られる。
【0043】
本実施形態では、保持体40,50が一つの金型で同時に成形されることとしたが、これに代えて、保持体40,50が別個の金型で成形されることとしてもよい。このように別個の金型で成形する場合、後述する検査を行うために、下方保持体50の成形工程が、上方保持体40の成形工程よりも先にあるいは同時に行われる必要がある。
【0044】
次に、上記半製品20’に上方外側グランド板60および上方内側グランド板70を取り付ける前に、下方グランド板80とグランド端子30Gとの電気導通状態を確認するための検査(以下、「導通検査」という)を行う。
図7は、この検査について説明する図であり、ブレード20の半製品20’から保持体40,50の図示を省略して、端子30および下方グランド板80のみを示している。この
図7では、隣接して対をなす二つの信号端子30Sおよびこれらの信号端子30Sの両側にそれぞれ位置する二つのグランド端子30Gの合計四つの端子30から成る三つの端子群(第一端子群30−1、第二端子群30−2および第三端子群30−3)が示されている。また、
図7には、端子群30−1,30−2,30−3のそれぞれに対応して下方グランド板80−1,80−2,80−3が位置した状態が示されている。
【0045】
図7に見られるように、第一端子群30−1は、左から順に配列されたグランド端子30G−1A、信号端子30S−1A、信号端子30S−1B、グランド端子30G−1Bを有している。第二端子群30−2は、左から順に配列されたグランド端子30G−2A、信号端子30S−2A、信号端子30S−2B、グランド端子30G−2Bを有している。第三端子群30−3は、左から順に配列されたグランド端子30G−3A、信号端子30S−3A、信号端子30S−3B、グランド端子30G−3Bを有している。ここで、グランド端子30Gは、端子配列範囲の最外端に位置するグランド端子30Gを除き、互いに隣接する二つの端子群の両方に属している。つまり、
図7では、第一端子群30−1の右側のグランド端子30G−1Bと第二端子群30−2の左側のグランド端子30G−2Aとが同一のグランド端子30Gであり、第二端子群30−2の右側のグランド端子30G−2Bと第三端子群30−3の左側のグランド端子30G−3Aとが同一のグランド端子30Gである。
【0046】
以下、導通検査の手順を説明する。まず、第一端子群30−1のグランド端子30G−1Aと下方グランド板80−1の検出部84−1とに電圧を印加して、電流の有無を検出する。この結果、電流が検出される場合には、グランド端子30G−1Aと下方グランド板80−1の接触片82−1とが接触して電気的に導通した状態にあることが確認される。一方、電流が検出されない場合には、グランド端子30G−1Aと下方グランド板80−1の接触片82−1とが電気的に導通していないこと、換言すると、両者が接触不良にあることが認識される。
【0047】
次に、上述したグランド端子30Gと下方グランド板80−1との導通検査と同様の手順で、第一端子群30−1のグランド端子30G−1Bと下方グランド板80−1の検出部84−1とに電圧を印加することにより、両者間の電気的導通状態を検査する。このように二回の導通検査を行うことにより、第一端子群30−1のグランド端子30G−1A,30G−1Bと下方グランド板80−1との導通検査が完了する。
【0048】
上述した第一端子群30−1についての導通検査と同様に、第二端子群30−2ついて、該第二端子群30−2のグランド端子30G−2A,30G−2Bと下方グランド板80−2との導通検査を行い、さらに、第三端子群30−3について、該第三端子群30−3のグランド端子30G−3A,30G−3Bと下方グランド板80−3との導通検査を行う。ここでは、
図7に示される三つの端子群についての導通検査について説明したが、実際には、図示されていない端子群も含め、全ての端子群についての導通検査が行われる。
【0049】
本実施形態では、グランド端子30Gおよび下方グランド板80において下方保持体50から露呈している部分、すなわちグランド端子30Gの接続部32Gおよび下方グランド板80の検出部84に電流を流すことにより導通検査が行われるので、グランド端子30Gと下方グランド板80との電気的導通状態を容易に確認することができる。また、本実施形態では、上記接続部32Gと上記検出部84とが同じ方向へ向けて下方保持体50から突出しているので、導通検査がさらに容易となる。
【0050】
以上の導通検査を全ての端子群について行った結果、少なくとも一つの端子群においてグランド端子30Gと下方グランド板80との間の接触不良が検出された場合には、その半製品20’はコネクタ1が製造に使用されずに不良品と扱われ、あるいは、再度接触状態が改善される。
【0051】
一方、導通検査の結果、全ての端子群についてグランド端子30Gと下方グランド板80との電気的導通状態を検出できた半製品20’には、上方外側グランド板60および上方内側グランド板70が、既述した超音波溶着により上方保持体40に取り付けられた後、端子30そして下方グランド板がキャリアから切り離されてブレード20が完成する。
【0052】
次に、二つのブレード20を内側面同士が対面した状態でハウジング90内へ下方から圧入して取り付けることにより接続体10が完成する。さらに、複数の接続体10を支持体(図示せず)に取り付けることにより、該複数の接続体10が該支持体により一括して支持され、コネクタ1が完成する。この支持体は、例えば、端子配列方向での接続体10の両端位置で該接続体10の配列方向に延びる一対の金属板部材により構成することができる。
【0053】
本実施形態では、導通検査は、上方保持体40へのグランド板60,70の取付けに先立って、下方グランド板80についてのみ行われ、上記グランド板60,70については行われない。グランド板60,70について導通検査を行おうとしても、すでに下方グランド板80が取り付けられてグランド端子30Gに接触した状態にあるので、グランド板60,70と該グランド端子30Gとの二者間での電気的導通状態を確認することは不可能だからである。このように、ブレードに複数種のグランド部材を設ける場合であっても、導通検査を行えるグランド部材は一種のみである。したがって、導通検査は、良好な信号伝送特性を確保するという観点で最も重要な一種のグランド部材について行われることが好ましい。例えば、本実施形態に係るコネクタ1のグランド端子30Gでは、該コネクタ1で伝送する信号の周波数帯域との関係で、該グランド端子30Gの接続部32G付近に位置する被保持部33Gの下半部で下方グランド板80が確実に接触しているかどうかが信号伝送特性を大きく左右するので、三種のグランド板60,70,80のうち、下方グランド板80について導通検査が行われることとしている。
【0054】
他の例として、仮にコネクタ1を上記周波数帯域とは異なる他の周波数帯域の信号の伝送に使用する場合に、良好な信号伝送特性を確保するという観点で、端子30が被保持部33の上半部で例えば上方外側グランド板60と確実に接触していることが最重要になることもあり得る。その場合には、まず、グランド板70,80に先立って、上方外側グランド板60を上方保持体40に取り付けた後、該上方外側グランド板60の露呈する一部に形成された検出部とグランド端子30Gとの導通検査を行うことができる。また、上方内側グランド板70との接触が最重要である場合も同様に、グランド板60,80の取付けに先立って、上方内側グランド板70を取り付けた後、該上方内側グランド板70の露呈する一部に形成された検出部とグランド端子30Gとの導通検査を行うことができる。
【0055】
グランド板の数や形状等は種々の変更が可能である。本実施形態では、互いに直接接続されていない三つのグランド板60,70,80が設けられているが、これに代えて、例えば、グランド板60,70同士を直接接続してもよく、また、上方内側グランド板70と下方グランド板80とを直接接続してもよい。また、ブレード20の内側に設けられている下方グランド板80と同形状をなすグランド板をブレード20の外側で上方外側グランド板60の下方に設けてもよく、さらに、該グランド板を上方外側グランド板60や下方グランド板80と直接接続してもよい。
【0056】
次に、
図1および
図2に基づいて相手コネクタ2の構成について説明する。
図1に見られるように、本実施形態では、接続体10と同数の相手コネクタ2が該接続体10の配列方向と同じ方向に等間隔で配列されている。
図1に見られるように、相手コネクタ2は、コネクタ幅方向(コネクタ1のコネクタ幅方向と同じ方向)を長手方向として延びる樹脂等の電気絶縁材製のハウジング100と、該ハウジング100によってコネクタ幅方向に配列保持される複数の端子110(以下、「相手端子110」という)とを有している。
【0057】
相手端子110は、金属板部材を板厚方向に打ち抜いて作られており、全体形状が上下方向に延びた帯片状をなし、
図12に見られるように、ハウジング100によってコネクタ幅方向に配列された状態で圧入保持されている。ハウジング100による相手端子110の保持形態は、圧入保持に限らず、例えば一体モールド成形によって保持されていてもよい。複数の相手端子110は、信号端子110S(以下、「相手信号端子110S」という)またはグランド端子110G(以下、「相手グランド端子110G」という)として使用される。本実施形態では、相手端子110は、コネクタ1のブレード20に設けられた信号端子30Sおよびグランド端子30Gの配列に対応して配列されている。
【0058】
相手端子110は、ハウジング100の両方の壁面(相手コネクタ2の配列方向に対して直角な面)側に設けられており、該ハウジング100の壁厚方向(相手コネクタ2の配列方向)で該ハウジング100に対して対称な二列をなして設けられている。相手端子110は、ハウジング100の上記壁面に沿って延び露呈している相手接触部111と、上端側でハウジング100から突出する112とを有している。
【0059】
相手接触部111は、ハウジング100から露呈した板面で、コネクタ1の端子30の接触部31A(
図3(B)等を参照)と接触するようになっている。具体的には、相手信号端子110Sの相手接触部111Sは信号端子30Sの接触部31ASと接触し、相手グランド端子110Gの相手接触部111Gはグランド端子30Gの接触部31AGと接触する。また、接続部112は、
図1に見られるように、ハウジング100から上方へ突出しており、半田ボールB2が取り付けられている。該接続部112は、回路基板P2の対応回路部(図示せず)と半田接続可能となっている。
【0060】
次に、
図1,2にもとづいて、コネクタ1と相手コネクタ2とのコネクタ嵌合動作について説明する。まず、コネクタ1を回路基板P1に半田接続して実装するとともに、該コネクタ1の接続体10と同数のコネクタ2を回路基板P2に半田接続して実装する。次に、
図1に見られるように、相手コネクタ2を下方に向いた姿勢とし、各相手コネクタ2がそれぞれコネクタ1の接続体10の受入部11に対応するように、該相手コネクタ2をコネクタ1の上方に位置させる。
【0061】
次に、相手コネクタ2を下方へ移動させて、
図2に見られるように、該相手コネクタ2をそれぞれ対応する接続体10に上方から嵌合させることにより、コネクタ嵌合動作が完了する。このとき、相手コネクタ2の嵌合部が接続体10の受入部11へ進入する。コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合が完了すると、接続体10のブレード20に設けられた端子30の接触部31Aが、相手コネクタ2に設けられた相手端子110の相手接触部111と接圧をもって接触して電気的に導通する。具体的には、信号端子30Sの接触部31ASが相手信号端子110Sの相手接触部111Sと接触し、グランド端子30Gの接触部31AGが相手グランド端子110Gの相手接触部111Gと接触する。
【0062】
<第二実施形態>
第一実施形態では、下方グランド板80が複数設けられており、各下方グランド80が、対応する端子群の各グランド端子30Gと接触して電気的に導通するようになっていたが、本実施形態では、全ての端子群に対応する下方グランド板が一つ設けられている点で、第一実施形態と異なっている。本実施形態における下方グランド板以外の構成は、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
図8は、第二実施形態に係るコネクタの端子30および下方グランド板180を示す図である。本実施形態における下方グランド板180は、端子配列方向に延びる金属板部材を部分的に板厚方向で屈曲して作られている。具体的には、該下方グランド板180は、全ての端子30を含む範囲にわたって延びており、隣接する二つの信号端子30Sに対応して位置する四角板状の平板部181と、グランド端子30Gに対応する位置で該グランド端子30Gの被保持部33Gの板面へ向けて突出する接触突部185と、平板部181から下方(
図8にて手前側)へ延びる検出部184とを有している。上記接触突部185は、その突出頂面(平坦な板面)でグランド端子30Gの被保持部33Gの板面に接触している。また、端子30の被保持部33および下方グランド板180は、第一実施形態と同様に、下方保持体(図示せず)によって一体モールド成形により保持され、互いに接触した状態が維持される。また、各端子30の接続部32および下方グランド板180の検出部184は、下方保持体から突出する。
【0064】
本実施形態における導通検査は、一つのグランド端子30Gの接続部32Gと下方グランド板180の任意の一つの検出部184とに電圧を印加して、電流の有無を検出することにより行われる。この導通検査は全てのグランド端子30Gについて順次行われる。本実施形態によれば、下方グランド板180は全てのグランド端子30Gに接触している一部材として設けられているので、予め選択した特定の検出部184のみを用いて全てのグランド端子30Gとの導通検査を行うことができるので、導通検査が容易となる。ただし、全ての導通検査において同一の検出部184を用いることは必須ではなく、導通検査ごとに異なる検出部184を選択してもよいことはいうまでもない。
【0065】
第一および第二実施形態では、下方グランド板80,180の検出部84,184は下方保持体50から下方へ向けて突出する部分として形成されているが、検出部の形状はこれに限られず、種々の変更が可能である。例えば、下方グランド板80,180の平板部81,181の板面の一部を下方グランド板80,180の外壁面から露呈させて、その露呈した部分を検出部としてもよい。
【0066】
第一および第二実施形態では、検出部を有するグランド部材が金属板部材としてのグランド板であることとしたが、グランド部材が板状であることは必須ではない。