(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエポキシド(A)、ポリアミン(B)、および無機充填剤(C)を含有してなる組成物であって、該(B)がアミノ基を2個有し芳香環を有するポリアミン(B1)とアミノ基を3個〜7個有するポリアミン(B2)とを含有する鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物であって、前記(B1)と(B2)との重量比[(B1)/(B2)]が50/50〜90/10である鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物(X)。
前記(B2)が、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の組成物
さらに、ポリオールのアルキレンオキサイド付加物(D)を含有してなり、該アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドおよび/または炭素数3〜6のアルキレンオキサイドである請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリエポキシド(A)]
本発明におけるポリエポキシド(A)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するもので、硬化物の機械的強度およびグラウト材組成物のハンドリング性の観点から、エポキシ基の個数は好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜6個である。
【0008】
(A)の数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述の条件におけるゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、硬化物の機械的強度およびグラウト材組成物のハンドリング性の観点から好ましくは100〜10,000、さらに好ましくは160〜3,000である。
また、(A)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、硬化物の機械的強度およびグラウト材組成物のハンドリング性の観点から好ましくは50以上かつ1,000以下、さらに好ましくは80以上かつ500以下である。
【0009】
(A)としては、下記(A1)〜(A4)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
【0010】
(A1)ポリグリシジルエーテル:
(A11)2価フェノール[炭素数(以下Cと略記することがある)6〜30]のポリジグリシジルエーテル:
ビスフェノール(ビスフェノール−F、−A、−B、−ADおよび−S等)ジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールA(テトラクロロビスフェノールA等)ジグリシジルエーテル、単環2価フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)ジグリシジルエーテル、縮合多環2価フェノール[1,5−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等]ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等;
【0011】
(A12)多価(3価〜6価またはそれ以上)フェノールのポリグリシジルエーテル:
多価フェノール(C6以上かつMn5,000以下)のポリグリシジルエーテル、例えば3価フェノール[ピロガロール、ジヒドロキシナフチルクレゾール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジナフチルトリオール、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールA等]トリグリシジルエーテル、4価フェノール[テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾール、ビス(ジヒドロキシナフタレン)等]テトラグリシジルエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂(Mn400〜5,000)のポリグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂(Mn400〜5,000)のポリグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタルアルデヒド、またはホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400〜5,000)のポリグリシジルエーテル、およびレゾルシンとアセトンとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400〜5,000)のポリグリシジルエーテル;
【0012】
(A13)脂肪族ジオール(C2以上かつMn5,000以下)のジグリシジルエーテル:
脂肪族ジオール〔2価アルコール[例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール(以下それぞれEG、PG、TMG、NPG、1,6−HDと略記)、ポリアルキレングリコール[例えばポリエチレングリコール(以下PEGと略記。分子量106以上かつMn4,000以下。)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記。分子量134以上かつMn5,000以下。)、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記。分子量162以上かつMn5,000以下。)]等〕のジグリシジルエーテル;
【0013】
(A14)脂肪族ポリ(3価〜6価またはそれ以上)オール(C6以上かつMn10,000以下)のポリグリシジルエーテル:
脂肪族ポリオール〔多価(3〜6価)アルコール[トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれTMP、GR、PE、SOと略記)等]、多価アルコールの分子内もしくは分子間脱水物[ポリ(n=2〜5)GR]、およびこれら多価アルコールのアルキレンオキシド[以下AOと略記。C2〜6、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド(以下それぞれEO、POと略記)]付加物等〕のポリグリシジルエーテル等;
【0014】
(A15)脂環含有ポリ(2価〜4価またはそれ以上)オールのポリグリシジルエーテル:
C3以上かつMn5,000以下のもの、例えば1,2−シクロプロパンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、1,2,3−シクロプロパントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、スクロースおよびこれらのAO(1〜20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル;
【0015】
(A16)芳香環含有多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールのポリグリシジルエーテル:
C8以上かつMn5,000以下のもの、ビスフェノールAのAO(1〜20モル)付加物、m−およびp−キシリレングリコール、ベンゼンジエタノール、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオール、1,1,2,2,−テトラフェニルエタン−1,2−ジオールおよびこれらのAO(1〜20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル;
【0016】
(A2)ポリグリシジルエステル:
(A21)芳香族多価(2価〜6価またはそれ以上)カルボン酸のグリシジルエステル:
芳香族多価カルボン酸(C6〜C20またはそれ以上)のポリグリシジルエステル、例えば芳香族ジカルボン酸(オルト−、イソ−およびテレフタル酸等)ジグリシジルエステル、芳香族トリカルボン酸(トリメリット酸等)トリグリシジルエステル;
(A22)脂肪族もしくは脂環含有多価カルボン酸(C6〜C20またはそれ以上)のポリグリシジルエステル:
例えば脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等)ジグリシジルエステル、脂肪族トリカルボン酸(トリカルバリル酸等)トリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は2〜10)、脂環含有多価カルボン酸(ダイマー酸等)のポリグリシジルエステル、前記(A21)の核水添物;
【0017】
(A3)ポリグリシジルアミン(C6〜C20またはそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個〜10個またはそれ以上有するもの)のグリシジルアミン:
(A31)芳香族アミンのポリグリシジルアミン:
例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノエチルフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジルアミノフェノール;
(A32)脂肪族アミンのポリグリシジルアミン
例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン;
(A33)脂環含有もしくは複素環含有アミン(C6〜C20またはそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個〜10個またはそれ以上有するもの)のポリグリシジルアミン:
脂環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミンの水添物)、複素環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばトリスグリシジルメラミン);
【0018】
(A4)その他のポリエポキシド:
(A41)脂肪族ポリ(2価〜6価またはそれ以上)エポキシド:
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油;
(A42)脂環式ポリ(2価〜4価またはそれ以上)エポキシド:
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン。
【0019】
これらの(A)のうち、硬化物の機械的強度の観点から好ましいのは(A1)、(A2)、さらに好ましいのは(A11)、(A12)、とくに好ましいのはビスフェノールFおよびビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルである。
【0020】
[ポリアミン(B)]
本発明におけるポリアミン(B)は、アミノ基を2個有し芳香環を有するポリアミン(B1)とアミノ基を3個〜7個有するポリアミン(B2)とを含有してなる。
該ポリアミン(B)が(B1)だけの場合、高温時のハンドリング性に劣る。一方、該(B)が(B2)だけの場合、水存在下の施工時の機械的強度が劣る。
(B1)と(B2)との重量比[(B1)/(B2)]は高温時のハンドリング性およ
び水存在下の硬化性の観点から、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは55/45〜85/15、とくに好ましくは60/40〜80/20である。
【0021】
(B)のMnは、硬化物の機械的強度およびグラウト材組成物のハンドリング性の観点から好ましくは30〜25,000、さらに好ましくは45〜1,600である。
【0022】
(B)の活性水素当量(活性水素1個当たりの分子量)は、硬化物の機械的強度および工業上の観点から好ましくは15〜500、さらに好ましくは20〜200である。
【0023】
(B)は、下記に挙げる(B1)と(B2)とを含有してなり、(B1)、(B2)はそれぞれ単独でも2種以上を使用しても良い。
【0024】
(B1)アミノ基を2個有し芳香環を有するポリアミン:
(B1)としては、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミンのスチレン付加物等が挙げられる。
【0025】
(B2)アミノ基を3個〜7個有するポリアミン:
(B2)としては、脂肪族ポリ(3〜7価)アミン、C2以上かつMn500以下のもの、例えば、ポリアルキレン(C2〜10)ポリ(3価〜6価またはそれ以上)アミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等]が挙げられる。
【0026】
上記(B1)のうち、グラウト材組成物の水存在下の硬化性の観点から、好ましいのはキシリレンジアミン、キシリレンジアミンのスチレン付加物、さらに好ましいのはキシリレンジアミンのスチレン付加物である。
上記(B2)のうち、グラウト材組成物のハンドリング性、硬化物の機械的強度および工業上の観点から好ましいのはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、さらに好ましくはジエチレントリアミン、ペンタエチレンヘキサミンである。
【0027】
(B)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記(B1)、(B2)以外のポリアミン(B3)を含有してもよい。ポリアミン(B3)としては、例えば複素環含有ポリ(2〜3価)アミン、ポリエーテルポリアミン、ポリアミドポリアミン、エポキシ付加ポリアミン、シアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。(B)の重量に基づく(B3)の重量割合は、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、とくに好まし
くは3重量%以下である。
【0028】
[無機充填剤(C)]
本発明における無機充填剤(C)としては、例えば下記の(C1)〜(C7)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(C1)ケイ酸塩(例えばタルク、クレー、マイカ、ガラス);
(C2)酸化物(例えば酸化チタン、アルミナ、シリカ);
(C3)炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト);
(C4)水酸化物(例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム);
(C5)(亜)硫酸塩(例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム);
(C6)ホウ酸塩(例えばホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム);
(C7)窒化物(例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素)。
【0029】
これらの(C)のうち、硬化物の機械的強度および工業上の観点から、好ましいのは(C1)、(C2)、(C3)、(C4)、さらに好ましいのは(C1)、(C2)、(C3)、とくに好ましいのはシリカ、炭酸カルシウムである。
【0030】
(C)の形状は、グラウト材組成物のハンドリング性の観点から粉体であることが好ましい。また、(C)の体積平均粒子径はグラウト材組成物の粘度、流動性およびカプラーへの注入時のフィラー詰まり防止等の作業性の観点から好ましくは0.1〜800μm、さらに好ましくは0.5〜250μmである。
【0031】
[鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物(X)]
本発明の鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物(X)は、前記(A)、(B)、および(C)を含有してなる。
該組成物中の(A)〜(C)の各含有量は、(A)〜(C)の合計重量に基づいて、
(A)は、組成物のハンドリング性および硬化物の機械的強度の観点から好ましくは5〜60%、さらに好ましくは10〜55%、とくに好ましくは15〜50%;(B)は、同様の観点から好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜35%、とくに好ましくは7〜30%;(C)は、硬化物の機械的強度およびハンドリング性の観点から好ましくは20〜70%、さらに好ましくは25〜65%、とくに好ましくは30〜60%である。
【0032】
(A)と(B)の当量比[エポキシ基/活性水素数]は、硬化物の機械的強度の観点から好ましくは0.4〜2.5、さらに好ましくは0.5〜2.0、とくに好ましくは0.6〜1.5である。
【0033】
本発明のグラウト材組成物には、さらに、ポリオールのアルキレンオキサイド付加物(D)を含有させることができる。該アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド(EO)および/または炭素数3〜6のアルキレンオキサイド(AO)である。
前記(D)を含有させることで、グラウト材組成物のチクソトロピー性を高めることができ、前記の鉄筋継手用カプラーに注入後のグラウト材組成物のたれ防止を図ることができる。
該ポリオールとしては、2価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(C2〜30)、2価〜8価またはそれ以上の多価フェノール(C6〜40)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
該多価アルコールとしては、2価アルコール[例えばEG、PG、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−HD、3−メチルペンタンジオール、ジEG、NPG、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、3価アルコール[例えばGR、TMP]、4〜8価アルコール[例えばPE、ジGR、α−メチルグ
ルコシド、SO、キシリット、マンニット、ジPE、グルコース、フルクトース、ショ糖]等が挙げられる。
該多価フェノールとしては、2価のもの[例えばヒドロキノン、カテコール、ビスフェ
ノール−A、−Fおよび−S、ナフタレンジオール、アントラセンジオール]、3価〜8
価またはそれ以上のもの〔例えばヒドロキシキノール、ピロガロール、トリスヒドロキシフェニルイソプロピルベンゼン[商品名「トリスフェノールPA」、三井石油化学(株)製]、フェノールノボラック、クレゾールノボラック〕等が挙げられる。
【0035】
これらのポリオールのうち、グラウト材組成物のチクソトロピー性の観点から好ましいのは多価アルコール、さらに好ましいのは2〜4価でC2〜10の多価アルコール、とくに好ましいのは2〜3価でC3〜6の多価アルコールである。
前記AOとしては、PO、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド等が挙げられ、グラウト材組成物のチクソトロピー性の観点から好ましいのはPOである。
【0036】
上記(D)のうち、チクソトロピー性の観点から好ましいのは前記ポリオールへのEOおよびAO(C3〜6)をともに付加させたものである。EOおよびAO(C3〜6)をともに付加させる場合の付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよいが、チクソトロピー性の観点からランダム付加が好ましい。
ポリオールに対するEOおよびAO(C3〜6)の合計の平均付加モル数は、グラウト材組成物のチクソトロピー性およびハンドリング性の観点から、好ましくは3〜150、さらに好ましくは15〜130である。
EOとAO(C3〜6)の付加モル数比は、組成物のチクソトロピー性および硬化物の耐水性の観点から好ましくは0.2〜10、さらに好ましくは0.3〜8、とくに好ましくは0.5〜7である。
【0037】
(D)のMnは、グラウト材組成物のチクソトロピー性およびハンドリング性の観点から好ましくは200〜10,000、さらに好ましくは1,000〜8,000である。
【0038】
また、(D)の製造は、公知の方法で行うことができ、触媒(アルカリ触媒、アミン触媒、酸触媒)の存在下、常圧または加圧下で1段階または多段階で行われる。
【0039】
本発明におけるMnのGPC測定条件は下記のとおりである。
装置 : 東ソー(株)製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0040】
(D)の使用量は、前記(A)〜(C)の合計重量に基づいて、グラウト材組成物のチクソトロピー性および硬化物の機械的強度の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.2〜3%、とくに好ましくは0.5〜2%である。
【0041】
鉄筋継手用グラウト材組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに必要に応じて(1)硬化促進剤(3級アミノ化合物、アルカリ化合物、ルイス塩基化合物等)、(2)接着性付与剤(シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)、(3)酸化防止剤(ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等)、(4)紫外線吸収剤(ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等)、(5)安定剤[金属石けん類、重金属(例えば亜鉛、錫、鉛、カドミウム等)の無機または有機塩類、有機錫化合物等]、(6)可塑剤(フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素等)、(7)ワックス類(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、重合ワックス、蜜ロウ、鯨ロウ、低分子量ポリオレフィン等)、(8)非反応性希釈剤(ベンジルアルコール、タール、ピチューメン等)、(9)反応性希釈剤(低分子脂肪族グリシジルエーテル、芳香族モノグリシジルエーテル等)、(10)有機充填剤[アラミド繊維粉、ナイロン繊維粉、アクリル繊維粉、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉等]、(11)脱臭剤[活性炭、シリカゾル、シリカゲル等]、(12)顔料または染料[カーボンブラック、赤色酸化鉄、鉛丹、パラレッド、紺青等]、(13)チクソ化剤[微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム等]、(14)溶剤(酢酸エチル、トルエン、アルコール、エーテル、ケトン、水等)、(15)発泡剤、(16)消泡剤、(17)帯電防止剤、(18)抗菌剤、(19)防かび剤、(20)粘度調整剤、(21)香料、(22)難燃剤、(23)膨張材等の添加剤(E)を含有させることができる。
【0042】
本発明のグラウト材組成物は、以下の(1)または(2)の方法で製造される。
(1)(A)〜(C)、必要により(D)、(E)を使用する直前に一括混合して組成物とする。
(2)2液[(A)を含有してなるA液、(B)を含有してなるB液]の形態で別々に製造しておき、使用時に混合して組成物とする。(C)は、あらかじめA液および/またはB液に混合しても、使用時に混合してもよいが、工業上の観点から、あらかじめA液および/またはB液に混合することが好ましい。 必要により含有させる(D)、(E)も同様の観点から、あらかじめA液および/またはB液に混合することが好ましい。
これらの組成物の形態のうち、工業上の観点から好ましいのは(2)の形態である。
【0043】
上記の(1)、(2)のいずれの場合も、(A)と(B)混合後は反応が進行するため、速やかに使用するのが望ましい。グラウト材組成物(X)の可使時間(ポットライフ)は、好ましくは20〜180分、さらに好ましくは30〜150分である。
なお、ここにおいて、可使時間(ポットライフ)とは、グラウト材組成物の粘度が200(Pa・s)に到達するまでの時間を意味するものとする。
【0044】
本発明における(A)〜(C)、および必要により含有させる(D)、(E)の混合方法としては、例えば万能混合機等の混合機を使用する方法および後述のミキサーを使用する方法が挙げられる。
また、グラウト材組成物の粘度(単位:Pa・s)は、カプラー等への注入後のたれ防止およびハンドリング性の観点から、好ましくは20〜200、さらに好ましくは25〜175、とくに好ましくは30〜150である。
【0045】
上記粘度の測定条件は、例えば下記のとおりである。
装置 :BH型粘度計[型番「TVB−22H」、東機産業(株)製]
回転数 :20rpm
スピンドルNo:7号
【0046】
本発明のグラウト材組成物(X)は、種々の施工条件で、硬化前のハンドリング性、硬化後の機械的強度に優れる。種々の施工条件とは、種々の温度での施工、降雨や鉄筋の結露時の施工(水存在下)を意味する。
【0047】
[連結鉄筋]
本発明の連結鉄筋は、鉄筋継ぎ手用グラウト材組成物(X)の硬化物で、複数(好ましくは2本)の鉄筋を連結してなる。すなわち、組成物(X)を、複数の鉄筋の端部固定用のカプラーに注入し、硬化させて鉄筋を連結してなる。具体的な手順は、例えば以下の方法が挙げられる。
本発明のグラウト材組成物のカプラー等への注入方法としては、種々の注入方法、例えば下記のものを採用することができる。
(1)グラウト材組成物をコーキングガンに充填し、組成物が硬化する前にカプラー中央付近の孔から注入する方法。
(2)特開平9−13675等に示される注入装置等を用いて、2液(A液およびB液)を別々の供給管に充填し、先端のミキサーで2液を混合しながら注入する方法。
グラウト材組成物を硬化させる温度条件は、グラウト材組成物の硬化性および機械的強度の観点から、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは15〜35℃である。
【実施例】
【0048】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0049】
[ポリオールのアルキレンオキサイド付加物(D)の製造]
<製造例1>
オートクレーブにPG147部、触媒として水酸化カリウム0.76部を仕込み、EO682部とPO171部を混合したものを吹き込み、110℃で反応させた。130℃で熟成後、酸化マグネシウム系吸着剤[商品名「キョーワード600」、協和化学工業(株)製]による吸着処理で触媒を除去してPGのEOおよびPO付加物(D−1)(Mn700、EOおよびPOの合計の平均付加モル数10、EO/PO付加モル比=5)988部を得た。
【0050】
<製造例2>
製造例1において、PG147部を30部、水酸化カリウム0.76部を0.15部、EO682部を693部、PO171部を277部に変更した以外は製造例1と同様にして、PGのEOおよびPO付加物(D−2)(Mn3,000、EOおよびPOの平均付加モル数52、EO/PO付加モル比=3.3)992部を得た。
【0051】
<製造例3>
製造例1において、PG147部を100部、水酸化カリウム0.76部を0.5部、EO682部を800部、PO171部を0部に変更した以外は製造例1と同様にして、PGのEO付加物(D−3)(Mn1,000、EOの平均付加モル数16)995部を得た。
【0052】
<実施例1〜8、比較例1〜2>
万能混合機[商品名「万能混合機 5DMV−01−r」、ダルトン(株)製]を用いて表1に従って配合、減圧下で脱泡しながら混合(温度25℃、撹拌時間5分間、圧力4kPa)し、グラウト材組成物(X−1)〜(X−8)、(比X−1)〜(比X−2)を得た。
得られた各グラウト材組成物について下記の試験方法(1)〜(5)にしたがって、性能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0053】
<試験方法>
【0054】
(1)[粘度](単位:Pa・s、ハンドリング性の評価)
5℃または35℃に温度調整したグラウト材組成物の粘度をBH型粘度計[型番「TVB−22H」、東機産業(株)製、回転数20rpm、7号スピンドル]により、JIS K7117に準じて測定した。
【0055】
(2)[SVI値](チクソトロピー性、ハンドリング性の評価)
5℃または35℃に温度調整したグラウト材組成物の粘度をBH型粘度計(7号スピンドル、回転数2rpmおよび回転数20rpm)により、JIS K7117に準じて測定し、下記式(2)にて組成物のチクソトロピー性を評価した。次式で表されるSVI値が大きいほどチクソトロピー性が大、すなわち該組成物がたれ防止性に優れることを示す。
[SVI値]=η1/η2 (2)
η1:回転数2rpmにおける粘度
η2:回転数20rpmにおける粘度
【0056】
(3)[ポットライフ](単位:分、ハンドリング性の評価)
5℃または35℃に温度調整したグラウト材組成物の粘度をBH型粘度計(7号スピンドル、回転数20rpm)により、JIS K7117に準じて測定し、上記(1)の測定後の粘度が200(Pa・s)に到達するまでの時間をポットライフとした。
【0057】
(4)[圧縮降伏強さ、圧縮弾性係数](単位:いずれもN/mm
2、機械的強度)
グラウト材組成物を厚さ約10mmの板状に注型して、5℃または35℃で5日間養生する。養生後約10×10×30mmの直方体の試験片を切り出し、2mm/minの試験速度でJIS K7181に準じて測定した。
【0058】
(5)水存在下での施工性
容器に、得られたグラウト材組成物100部、水3部を仕込み、ガラス棒で20秒間混合を行った。この組成物について、上記(1)〜(4)にしたがって評価した。
【0059】
表中の各略号は以下の通りである。
<ポリエポキシド(A)>
A−1:ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル
[商品名「JER828」、三菱化学(株)製、
エポキシ当量190]
A−2:ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル
[商品名「JER807」、三菱化学(株)製、
エポキシ当量175]
A−3:フタル酸ジグリシジルエステル
[商品名「デナコール EX−721」、ナガセケムテックス(株)製、
エポキシ当量154]
A−4:ビニルシクロヘキサンジエポキシド
[商品名「ERL−4206」、ダウケミカル(株)製、
エポキシ当量75]
【0060】
<ポリアミン(B)>
B1−1:キシリレンジアミンのスチレン付加物
[商品名「ガスカミン240」、三菱ガス化学(株)製、
活性水素当量96、N原子に直結する活性水素数3個]
B1−2:キシリレンジアミン
[商品名「アンカミン2422」、エアープロダクツジャパン(株)製、
活性水素当量34、N原子に直結する活性水素数4個]
B2−1:ペンタエチレンヘキサミン
[商品名「PEHA」、東ソー(株)製、
活性水素当量30、N原子に直結する活性水素数8個]
B2−2:ジエチレントリアミン
[商品名「DETA」、東ソー(株)製、
活性水素当量21、N原子に直結する活性水素数5個]
B2−3:イミノビスプロピルアミン
[商品名「3,3’イミノビスプロピルアミン」、純正化学(株)製、
活性水素当量26、N原子に直結する活性水素数5個]
B3−1:1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
活性水素当量50、N原子に直結する活性水素数4個]
【0061】
<無機充填剤(C)>
C−1:炭酸カルシウム
[商品名「ライトンA」、白石カルシウム(株)製、
体積平均粒子径0.75μm、変性脂肪酸処理品]
C−2:シリカ
[商品名:「HS−106」、マイクロン(株)製、体積平均粒子径20μm]
C−3:酸化カルシウム
[商品名:「太平洋ハイパーエクスパンM(構造・水和熱抑制型)」、
太平洋マテリアル(株)製、体積平均粒子径50μm]
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から、本発明の鉄筋継手用グラウト材組成物は、比較のものに比べ、種々の温度において、ハンドリング性および硬化後の機械的強度に優れている。さらに、水存在下においても、ハンドリング性、硬化物の機械的強度に優れることがわかる。