特許第6738233号(P6738233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738233
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】蓄冷エバポレータ
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20200730BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20200730BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20200730BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   F28D20/02 Z
   B60H1/32 613C
   F28D1/053 A
   F25B39/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-153828(P2016-153828)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21725(P2018-21725A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩成 太照
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】山口 博志
(72)【発明者】
【氏名】北 加寿紀
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−035099(JP,A)
【文献】 特開2010−091250(JP,A)
【文献】 特開2010−261658(JP,A)
【文献】 特表2012−521534(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0204597(US,A1)
【文献】 特開2015−033994(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/098274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00−20/02
B60H 1/32
F25B 39/02
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通する複数の冷媒管と、外部空気が通過する複数のフィンと、蓄冷材が収容された複数の蓄冷材容器とが積層されたコアを備えた蓄冷エバポレータにおいて、
外部空気の通過方向と交差する方向に順に、上記フィン、上記冷媒管、上記蓄冷材容器、上記冷媒管が積層された熱交換ユニットを複数有し、
上記熱交換ユニットは、外部空気の通過方向と交差する方向に並ぶように配置されており、
上記蓄冷材容器は、積層方向一側を構成する一側プレートと、上記積層方向他側を構成する他側プレートとが組み合わされて構成され、
上記一側プレートの周縁部には、全周に亘って一側接合板部が上下方向に延びるように設けられ、
上記他側プレートの周縁部には、上記一側接合板部に接合される他側接合板部が全周に亘って上下方向に延びるように設けられ、
上記一側プレートにおける上記一側接合板部よりも内側部分は、上記積層方向一側へ膨出するように形成された一側膨出部とされ、
上記他側プレートにおける上記他側接合板部よりも内側部分は、上記積層方向他側へ膨出するように形成された他側膨出部とされ、
蓄冷材が収容される空間は、上記一側膨出部の内面と上記他側膨出部の内面との間に形成され、
上記一側膨出部には、上記蓄冷材容器の内方へ向けて窪む複数の一側凹部が形成され、
上記他側膨出部には、上記蓄冷材容器の内方へ向けて窪む複数の他側凹部が形成され、
上記蓄冷材容器の積層方向の寸法をAとし、上記フィンの積層方向の寸法をBとしたとき、A/Bが0.45以上0.75以下の範囲であり、上記Aが2.5mm以上4.5mm以下の範囲であり、
上記冷媒管の積層方向の寸法をCとしたとき、Cが1.5mm以上2.5mm以下の範囲であり、B/Cが2.0以上4.5以下の範囲であることを特徴とする蓄冷エバポレータ。
【請求項2】
請求項に記載の蓄冷エバポレータにおいて、
上記A/Bが0.65以下であることを特徴とする蓄冷エバポレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄冷エバポレータにおいて、
上記Cが2.25mm以下であることを特徴とする蓄冷エバポレータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄冷エバポレータにおいて、
上記B/Cが2.5以上4.0以下の範囲であることを特徴とする蓄冷エバポレータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄冷エバポレータにおいて、
上記Aが4.0mm以下であることを特徴とする蓄冷エバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の冷熱を蓄えることができる蓄冷機能付きの蓄冷エバポレータに関し、特に、蓄冷材を収容する蓄冷材容器を備えた構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば車両用空調装置には冷凍サイクル装置が搭載されている。すなわち、エンジンによって駆動される圧縮機から吐出された冷媒は、凝縮器によって凝縮された後、膨張弁を介してエバポレータに導入されてエバポレータを流通し、その間に外部を流れる空調用空気と熱交換する。これにより所望の冷房性能が得られるようになっている。
【0003】
ところで、近年、二酸化炭素の排出削減等を目的として、信号待ち等の停車時にエンジンのアイドリングを自動的に停止させるアイドリングストップ機能を搭載した車両が増えている。アイドリングストップ機能を搭載した車両では、アイドリングストップ時には冷凍サイクル装置の圧縮機も停止することから冷媒の循環も停止してしまう。このことで冷房性能の不足を招き、空調の要求によってエンジンの再始動が頻繁に行われてしまうという問題ある。そこで、エバポレータに蓄冷機能を付与した蓄冷機能付きのエバポレータが使用されることがある(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2のエバポレータは、冷媒が流通する複数の冷媒管、フィン及び蓄冷材容器が外部空気の流れ方向と交差する方向に積層されたコアを備えており、このコアの上端部及び下端部に冷媒管と連通するヘッダタンクが設けられている。冷媒管、フィン及び蓄冷材容器の並びは、フィンと冷媒管を2つずつ交互に配置した後、冷媒管の隣に蓄冷材容器、その蓄冷材容器の隣に冷媒管という並びになっている。そして、圧縮機が作動していて冷媒が循環している時には冷媒の冷熱が冷媒管の側面から蓄冷器の側面に伝達して蓄冷器内部の蓄冷材に蓄えられる。圧縮機が停止すると、しばらくの間は、蓄冷材の冷熱が放出されて外部空気が冷却される。
【0005】
また、特許文献2では、蓄冷材容器の積層方向の寸法が、フィンの積層方向の寸法よりも短く設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−91250号公報
【特許文献2】特開2016−35382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2ではコアに複数の蓄冷材容器を配置することができる構造になっているが、蓄冷材容器は、フィンと冷媒管を2つずつ交互に配置した後、その冷媒管の隣に配置するようにしているので、蓄冷材容器と蓄冷材容器との間には、少なくとも2つのフィンが介在しており、1つの冷媒管を介してフィンに隣接する蓄冷材容器がフィンの片側のみにしか配置できないため、圧縮機が停止したときの冷房性能を確保しにくい。
【0008】
また、特許文献2には、蓄冷材容器の積層方向の寸法をフィンの積層方向の寸法よりも短く設定することが開示されているが、特許文献2では、上述したようにフィンと冷媒管を2つずつ交互に配置した後、その冷媒管の隣に蓄冷材容器を配置するようにしているので、フィンの片側のみに1つの冷媒管を介して蓄冷材容器が配置されるのは避けられず、圧縮機が停止したときの冷房性能を確保しにくいと考えられる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機が停止したときの冷房性能を向上するとともに、蓄冷性能を高め、しかも、通気抵抗を抑制できるようにして高性能な蓄冷エバポレータにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、フィン、冷媒管、蓄冷材容器を順に並べるようにし、かつ、蓄冷材容器の積層方向の寸法をフィンの積層方向の寸法よりも短く設定ようにした。
【0011】
第1の発明は、冷媒が流通する複数の冷媒管と、外部空気が通過する複数のフィンと、蓄冷材が収容された複数の蓄冷材容器とが積層されたコアを備えた蓄冷エバポレータにおいて、外部空気の通過方向と交差する方向に順に、上記フィン、上記冷媒管、上記蓄冷材容器、上記冷媒管が積層された熱交換ユニットを複数有し、上記熱交換ユニットは、外部空気の通過方向と交差する方向に並ぶように配置されており、上記蓄冷材容器は、積層方向一側を構成する一側プレートと、上記積層方向他側を構成する他側プレートとが組み合わされて構成され、上記一側プレートの周縁部には、全周に亘って一側接合板部が上下方向に延びるように設けられ、上記他側プレートの周縁部には、上記一側接合板部に接合される他側接合板部が全周に亘って上下方向に延びるように設けられ、上記一側プレートにおける上記一側接合板部よりも内側部分は、上記積層方向一側へ膨出するように形成された一側膨出部とされ、上記他側プレートにおける上記他側接合板部よりも内側部分は、上記積層方向他側へ膨出するように形成された他側膨出部とされ、蓄冷材が収容される空間は、上記一側膨出部の内面と上記他側膨出部の内面との間に形成され、上記一側膨出部には、上記蓄冷材容器の内方へ向けて窪む複数の一側凹部が形成され、上記他側膨出部には、上記蓄冷材容器の内方へ向けて窪む複数の他側凹部が形成され、上記蓄冷材容器の積層方向の寸法をAとし、上記フィンの積層方向の寸法をBとしたとき、A/Bが0.45以上0.75以下の範囲であり、上記Aが2.5mm以上4.5mm以下の範囲であり、上記冷媒管の積層方向の寸法をCとしたとき、Cが1.5mm以上2.5mm以下の範囲であり、B/Cが2.0以上4.5以下の範囲であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、コアを構成しているフィン、冷媒管及び蓄冷材容器が、フィン、冷媒管、蓄冷材容器、冷媒管、フィン、冷媒管、蓄冷材容器、…の順に積層されるので、蓄冷材容器と蓄冷材容器の間にフィンが2つ以上介在することはなく、蓄冷材容器同士の間隔が広くなり過ぎない。これにより、圧縮機が停止して蓄冷材から冷熱が放出されている時の冷房性能を高めることができる。
【0013】
また、蓄冷材容器の積層方向の寸法がフィンの積層方向の寸法よりも短いので、蓄冷材容器を設けたことによる通気抵抗の悪化が軽減される。また、蓄冷材容器の積層方向の寸法が短いので、コアの積層方向の寸法を長くすることなく、冷媒管の数を増やすことが可能になり、冷房性能が向上する。さらに、蓄冷材容器の積層方向の寸法が短いので、同様に蓄冷材容器の数も増やすことが可能になり、蓄冷性能も向上する。
【0014】
また、A/Bが0.45未満になると冷房性能が低下し、また、A/Bが0.75を超えると冷房性能が低下する。従って、A/Bが上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。
【0015】
また、冷媒管の積層方向の寸法が1.5mm未満になると冷房性能が低下し、また、2.5mmを超えると冷房性能が低下する。従って、冷媒管の積層方向の寸法が上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。
【0016】
また、すなわち、B/Cが2.0未満になると冷房性能が低下し、また、B/Cが4.5を超えると冷房性能が低下する。従って、B/Cが上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。
【0017】
また、蓄冷材容器の積層方向の寸法が2.5mm未満になると冷房性能が低下し、また、4.5mmを超えると冷房性能が低下する。従って、冷媒管の積層方向の寸法が上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。
【0018】
また、蓄冷材容器に収容されている蓄冷材の冷熱吸収速度及び冷熱放出速度が速まる。また、蓄冷材容器の積層方向の寸法がフィンの積層方向の寸法よりも短く設定されているので、蓄冷材容器の内部にインナーフィン等の別部材を設けることなく、凹部の形成のみであっても蓄冷材の冷熱吸収速度及び冷熱放出速度が十分に速まる。
【0019】
の発明は、第の発明において、上記A/Bが0.65以下であることを特徴とする
【0020】
の発明は、第1または2の発明において、上記Cが2.25mm以下であることを特徴とする
【0021】
の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記B/Cが2.5以上4.0以下の範囲であることを特徴とする
【0022】
の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記Aが4.0mm以下であることを特徴とする
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、フィン、冷媒管、蓄冷材容器、冷媒管の順に積層した複数の熱交換ユニットを外部空気の通過方向と交差する方向に並ぶように配置し、蓄冷材容器の積層方向の寸法をフィンの積層方向の寸法よりも短く設定したので、圧縮機が停止したときの冷房性能を高めることができるとともに、蓄冷性能を高めることができ、しかも、通気抵抗を抑制できる。
【0024】
また、蓄冷材容器の積層方向の寸法をAとし、フィンの積層方向の寸法をBとしたとき、A/Bが0.45以上0.75以下の範囲となるようにしたので、冷房性能を十分に高めることができる。
【0025】
また、冷媒管の積層方向の寸法が1.5mm以上2.5mm以下の範囲となるようにしたので、冷房性能を十分に高めることができる。
【0026】
また、フィンの積層方向の寸法をBとし、冷媒管の積層方向の寸法をCとしたとき、B/Cが2.0以上4.5以下の範囲となるようにしたので、冷房性能を十分に高めることができる。
【0027】
また、蓄冷材容器の積層方向の寸法が2.5mm以上4.5mm以下の範囲となるようにしたので、冷房性能を十分に高めることができる。
【0028】
また、蓄冷材容器に凹部を形成したので、インナーフィン等の別部材を設けることなく、蓄冷材の冷熱吸収速度及び冷熱放出速度を十分に速めることができ、蓄冷性能及び圧縮機が停止したときの冷房性能を高めることができる。
【0029】
の発明によれば、A/Bの上限を0.65以下としたので、冷房性能をより一層高めることができる
【0030】
の発明によれば、冷媒管の積層方向の寸法の上限を2.25mm以下としたので、冷房性能をより一層高めることができる
【0031】
の発明によれば、B/Cが2.5以上4.0以下の範囲となるようにしたので、冷房性能をより一層高めることができる
【0032】
の発明によれば、蓄冷材容器の積層方向の寸法の上限を4.0mm以下としたので、冷房性能をより一層高めることができる
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る蓄冷エバポレータを外部空気の流れ方向下流側から見た図である。
図2図1におけるII−II線断面図である。
図3図2におけるIII−III線断面図である。
図4】コアの上部の縦断面図である。
図5】蓄冷材容器の積層方向の寸法とフィンの積層方向の寸法との比と、冷房性能との関係を示すグラフである。
図6】フィンの積層方向の寸法と冷媒管の積層方向の寸法との比と、冷房性能との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、蓄冷エバポレータ1を外部空気の流れ方向下流側から見た斜視図である。図2における白抜きの矢印は外部空気の流れ方向を示している。この蓄冷エバポレータ1は、自動車に搭載される車両用空調装置(図示せず)が有する冷凍サイクル装置の蒸発器を構成するものである。冷凍サイクル装置は、蓄冷エバポレータ1の他、図示しないが、車両に搭載されているエンジンによって駆動される圧縮機と、凝縮器と、膨張弁とを備えており、これらが冷媒配管によって接続されてなるものである。圧縮機から吐出された冷媒は、凝縮器に流入して凝縮された後、膨張弁を経て膨張してから蓄冷エバポレータ1に流入し、外部空気と熱交換した後、蓄冷エバポレータ1から流出して圧縮機に吸入されるようになっている。
【0036】
この蓄冷エバポレータ1が搭載される車両は、アイドリングストップ機能を有している。アイドリングストップ機能は、従来から周知の構成のものであり、所定のアイドリングストップ条件を満たす場合、例えば、車速が0、かつ、ブレーキペダル踏み込み状態が検出された場合にはエンジンのアイドリングを自動停止し、所定のアイドリングストップ条件を満たさない場合、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれていない場合にはエンジンのアイドリングを自動停止させないように構成されている。また、車両側のアイドリングストップ条件(車速、ブレーキペダル踏み込み状態)を満たしていても、空調装置側のアイドリングストップ条件が優先されるように構成されており、空調装置側のアイドリングストップ条件を満たさない場合には、エンジンのアイドリングを自動停止させない。空調装置側のアイドリングストップ条件としては、例えば、冷房時で吹出空気温度が冷房性能を維持できる場合には空調装置側のアイドリングストップ条件を満たすと判定する一方、吹出空気温度が冷房性能を維持できない場合には空調装置側のアイドリングストップ条件を満たさないと判定する等を挙げることができる。
【0037】
蓄冷エバポレータ1は、図示しない空調ケーシングに収容される。空調ケーシングには、車室外の空気と車室内の空気の一方が選択されて導入される。この導入空気が蓄冷エバポレータ1に向けて送風機によって送風される。また、空調ケーシングの内部には、ヒータコア等からなる加熱用熱交換器及びエアミックスダンパも収容されており、蓄冷エバポレータ1を通過した空気のうち、加熱用熱交換器を通過する空気量をエアミックスダンパで調整することによって所望温度の空調風を得るようにしている。得られた空調風は、車室の各部、例えばフロントウインド内面、乗員の上半身、足下等に供給される。
【0038】
蓄冷エバポレータ1は、コア2と上側ヘッダタンク3と下側ヘッダタンク4とを備えている。コア2は、冷媒が流通する複数の冷媒管5と、外部空気が通過する複数のフィン6と、蓄冷材が収容された複数の蓄冷材容器7とが外部空気の流れ方向と交差する方向に積層されてなるものであり、外部空気を冷却するための部分である。コア2の積層方向両側には、それぞれエンドプレート8が設けられている。
【0039】
冷媒管5は、外部空気の通過方向に長い断面を有する扁平チューブからなるものであり、上下方向に延びている。図2に示すように、冷媒管5における上記積層方向一側に位置する一側壁部5aと、冷媒管5における上記積層方向他側に位置する他側壁部5bとは互いに略平行に延びている。冷媒管5における外部空気流れ方向上流側に位置する上流側壁部5cは、一側壁部5aにおける外部空気流れ方向上流側の端部と、他側壁部5bにおける外部空気流れ方向上流側の端部とを繋ぐように延びており、上流側へ向けて湾曲するように形成されている。冷媒管5における外部空気流れ方向下流側に位置する下流側壁部5dは、一側壁部5aにおける外部空気流れ方向下流側の端部と、他側壁部5bにおける外部空気流れ方向下流側の端部とを繋ぐように延びており、下流側へ向けて湾曲するように形成されている。
【0040】
冷媒管5の内部には冷媒が上下方向に流通する冷媒通路Rが形成されている。さらに、冷媒管5の内部には、複数の中間壁部5eが設けられている。中間壁部5eは、一側壁部5aの内面から他側壁部5bの内面まで延びており、一側壁部5aと他側壁部5bとを連結する連結部である。中間壁部5eは、外部空気の流れ方向に互いに間隔をあけて配置されている。これにより、冷媒通路Rが複数に区画されるとともに、一側壁部5aと他側壁部5bとの複数箇所同士が連結されることになり、冷媒管5の耐圧性が向上する。中間壁部5eは省略してもよい。
【0041】
図4に示すように、冷媒管5の上端部は、フィン6及び蓄冷材容器7の上端部よりも上方へ突出している。また、図示しないが、冷媒管5の下端部は、フィン6及び蓄冷材容器7の下端部よりも下方へ突出している。これは、冷媒管5の上端部及び下端部をそれぞれ上側ヘッダタンク3及び下側ヘッダタンク4に挿入するためである。
【0042】
また、図2に示すように、冷媒管5は、外部空気の流れ方向に2つ並ぶように、コア2の上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。上流側の冷媒管5は、コア2における外部空気の流れ方向中央部よりも上流側に配置され、下流側の冷媒管5は、コア2における外部空気の流れ方向中央部よりも下流側に配置されており、上流側の冷媒管5と下流側の冷媒管5との間には所定の間隔が設けられている。この実施形態では、上流側の冷媒管5と下流側の冷媒管5とが同じである場合について説明するが、上流側の冷媒管5と下流側の冷媒管5とで形状や構造を変えてもよい。
【0043】
尚、冷媒管5は、例えばアルミニウム合金等で形成されているが、これに限られるものではなく、伝熱性の良好な各種材料で形成することができる。また、冷媒管5の製造方法としては、例えば押出成形法を挙げることができるが、これに限られるものではなく、材料として板材を用意してロール成形法で製造するようにしてもよい。
【0044】
図3図4に示すように、フィン6は、冷媒管5に沿って上下方向に延びており、外部空気の流れ方向から見たときに上下方向に連続する波形に近い形状を持ったコルゲートフィンである。図2に示すように、フィン6は、コア2の外部空気流れ方向上流側から下流側まで連続しており、上記積層方向に並ぶ冷媒管5、5の間に設けられている。また、フィン6には、該フィン6を構成する板材を切り起こしてなる切り起こし部6a(図3及び図4にのみ示す)が設けられている。尚、フィン6は、例えばアルミニウム合金製の薄板材を成形して得ることができる。また、フィン6は、冷媒管5の外面にろう付けにより接合することができる。
【0045】
蓄冷材容器7は、全体として上下方向に延びており、図2に示すように該蓄冷材容器7の上記積層方向一側を構成する一側プレート70と、該蓄冷材容器7の上記積層方向他側を構成する他側プレート71とを組み合わせることによって形成されている。蓄冷材容器7の水平断面は、外部空気の流れ方向に長い断面となっている。蓄冷材容器7は、フィン6と同様にコア2の外部空気流れ方向上流側から下流側まで連続している。そして、蓄冷材容器7は、上記積層方向に並ぶ冷媒管5、5の間に設けられている。
【0046】
一側プレート70と他側プレート71との間に蓄冷材を収容するための蓄冷材収容空間Sが形成されている。蓄冷材収容空間Sに収容される蓄冷材は、例えば流動性を有する蓄冷材を使用することができる。蓄冷材は従来から周知のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
一側プレート70及び他側プレート71は、例えばアルミニウム合金製の板材を成形してなるものである。一側プレート70の周縁部には、全周に亘って一側接合板部70aが上下方向に延びるように設けられている。他側プレート71の周縁部には、一側接合板部70aに接合される他側接合板部71aが全周に亘って上下方向に延びるように設けられている。一側接合板部70aと他側接合板部71aとは例えばろう付けによって接合することができる。
【0048】
一側プレート70における一側接合板部70aよりも内側部分は、上記積層方向一側へ膨出するように形成された一側膨出部70bとされている。一側膨出部70bの膨出方向先端面が冷媒管5の外面にろう付けによって接合されるようになっている。また、他側プレート71における他側接合板部71aよりも内側部分は、上記積層方向他側へ膨出するように形成された他側膨出部71bとされている。他側膨出部71bの膨出方向先端面が冷媒管5の外面にろう付けによって接合されるようになっている。
【0049】
蓄冷材収容空間Sは、一側膨出部70bの内面と他側膨出部71bの内面との間に形成される。また、一側膨出部70bには、蓄冷材容器7の内方、即ち上記積層方向他側へ向けて窪む複数の一側凹部70cが形成されている。複数の一側凹部70cは、外部空気の流れ方向に互いに間隔をあけて配置され、また、上下方向にも互いに間隔をあけて配置されている。また、他側膨出部71bには、蓄冷材容器7の内方、即ち上記積層方向一側へ向けて窪む複数の他側凹部71cが形成されている。他側凹部71cも外部空気の流れ方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、上下方向にも互いに間隔をあけて配置されている。
【0050】
この実施形態では、一側凹部70c及び他側凹部71cは、互いに対向する部分に形成されている。従って、蓄冷材容器7の水平断面において一側凹部70c及び他側凹部71cが形成された部分の上記積層方向の寸法は短くなっている。一側凹部70c及び他側凹部71cは、ディンプル形状であってもよいし、上下方向や外部空気の流れ方向に延びる溝状であってもよく、ディンプル形状と溝状とを組み合わせてもよい。
【0051】
図2に示すように、コア2は、複数の熱交換ユニットU1、U2、U3、…からなり、これら熱交換ユニットU1、U2、U3、…は外部空気の通過方向と交差する方向に並ぶように配置されてろう付けによって接合され、一体化されている。熱交換ユニットU1、U2、U3、…は全て同じものであるため、以下、熱交換ユニットU1の構成について説明する。
【0052】
熱交換ユニットU1は、4つの冷媒管5と、1つのフィン6と、1つの蓄冷材容器7とで構成されている。すなわち、フィン6は、熱交換ユニットU1の上記積層方向他側に配置されている。そのフィン6の上記積層方向一側には、2つの冷媒管5が外部空気の流れ方向に並ぶように配置されている。これら2つの冷媒管5の他側壁部5bがフィン6に接合されている。これら冷媒管5の上記積層方向一側には、蓄冷材容器7が配置されている。この蓄冷材容器7の他側膨出部71bの膨出方向先端面が冷媒管5の一側壁部5aに接合されている。この蓄冷材容器7の上記積層方向一側には、2つの冷媒管5が外部空気の流れ方向に並ぶように配置されている。これら2つの冷媒管5の他側壁部5bが蓄冷材容器7の一側膨出部70bの膨出方向先端面に接合されている。つまり、熱交換ユニットU1は、外部空気の通過方向と交差する方向に順に、フィン6、冷媒管5、蓄冷材容器7、冷媒管5が積層されてなるものである。
【0053】
尚、この実施形態では、冷媒管5が外部空気の流れ方向に2つ設けられている場合について説明しているが、冷媒管5は外部空気の流れ方向に1つだけ設けられていてもよく、また、3つ以上設けられていてもよい。
【0054】
図1に示す上側ヘッダタンク3は、該ヘッダタンク3の下側部分を構成するヘッダプレート3aと、該ヘッダタンク3の上側部分を構成するタンクプレート3bと、両端部にそれぞれ設けられるキャップ部材3cとを有している。ヘッダプレート3aには冷媒管5の上端部が挿入される挿入孔(図示せず)が形成されており、挿入孔に挿入された冷媒管5の上端部は上側ヘッダタンク3の内部に連通している。ヘッダプレート3aとタンクプレート3bとで上記積層方向に延びる筒体が構成され、この筒体の両端部がキャップ部材3cで閉塞されている。積層方向他側に位置するキャップ部材3cには、上側ヘッダタンク3に連通する冷媒給排管Pが取り付けられている。冷媒給排管Pにより上側ヘッダタンク3に冷媒が供給され、また、上側ヘッダタンク3から冷媒が排出されるようになっている。尚、図1に示す冷媒給排管Pは冷媒供給用のものであり、その向こう側に冷媒排出用の管が設けられている。
【0055】
下側ヘッダタンク4もヘッダプレート4aとタンクプレート4bとキャップ部材4cとを有している。ヘッダプレート4aには冷媒管5の下端部が挿入される挿入孔(図示せず)が形成されており、挿入孔に挿入された冷媒管5の下端部は下側ヘッダタンク4の内部に連通している。
【0056】
上側ヘッダタンク3及び下側ヘッダタンク4の内部構造によって冷媒管5を複数のパスに分けることができ、この内部構造については従来から周知のものであることから詳細な説明は省略するが、例えば、仕切板や連通孔等を組み合わせることで冷媒管5を複数のパスに分けることができる。この実施形態では、上側ヘッダタンク3における外部空気の流れ方向上流側に流入した冷媒を、外部空気の流れ方向上流側の冷媒管5に流入させて下方へ流通させて下側ヘッダタンク4まで流し、その後、外部空気の流れ方向下流側の冷媒管5に流入させて上方へ流通させて上側ヘッダタンク3まで流し、外部に排出するようにしている。尚、冷媒の流れはこれに限られるものではない。
【0057】
次に、フィン6、冷媒管5、蓄冷材容器7の寸法について説明する。図4に示すように、蓄冷材容器7の上記積層方向の寸法を「A」とする。Aは、蓄冷材容器7の上記積層方向一側の外面と他側の外面との離間寸法である。フィン6の上記積層方向の寸法を「B」とする。Bは、フィン6の上記積層方向一側の面と他側の面との離間寸法である。冷媒管5の上記積層方向の寸法を「C」とする。Cは、冷媒管5の上記積層方向一側の外面と他側の外面との離間寸法である。
【0058】
AはBよりも短く設定されている。具体的には、A/Bが0.45以上0.75以下の範囲に設定されており、より好ましくは、A/Bが0.45以上0.65以下である。また、BはCよりも長く設定されている。具体的には、B/Cが2.0以上4.5以下の範囲に設定されており、より好ましくは、B/Cが2.5以上4.0以下である。CはAよりも短く設定されている。
【0059】
また、Cは例えば1.5mm以上2.5mm以下の範囲にするのが好ましく、より好ましくは、2.25mm以下である。また、Aは、2.5mm以上4.5mm以下の範囲にするのが好ましく、より好ましくは、4.0mm以下である。
【0060】
次に、上記のように構成された蓄冷エバポレータ1によって外部空気を冷却する場合について説明する。エンジンの運転中には冷凍サイクル装置の圧縮機が作動しているので、蓄冷エバポレータ1には冷媒が流入して冷媒管5を流通する。冷媒管5を流通する冷媒は、主にフィン6を介して外部空気と熱交換して外部空気を冷却する。また、冷媒の冷熱は、蓄冷材容器7に収容されている蓄冷材に伝達して蓄冷材に冷熱が蓄えられる。このとき、蓄冷材容器7には一側凹部70c及び他側凹部71cが形成されているので、冷媒の冷熱を蓄冷材に伝達するための伝熱面積が十分に広く確保されている。よって、冷媒の冷熱が効率よく蓄冷材に伝達する。
【0061】
一方、エンジンのアイドリングが停止すると圧縮機も停止するので、蓄冷エバポレータ1には冷媒が流入しなくなる。この状態で冷房を行う必要がある場合には、蓄冷エバポレータ1に外部空気が送風され、この外部空気は蓄冷材の冷熱によって冷却される。
【0062】
コア2を構成しているフィン6、冷媒管5及び蓄冷材容器7が、フィン6、冷媒管5、蓄冷材容器7、冷媒管5、フィン6、冷媒管5、蓄冷材容器7、…の順に積層されるので、蓄冷材容器7と蓄冷材容器7の間にフィン6が2つ以上介在することはなく、蓄冷材容器7、7同士の間隔が広くなり過ぎない。これにより、圧縮機が停止して蓄冷材から冷熱が放出されている時の冷房性能を高めることができる。
【0063】
また、蓄冷材容器7の積層方向の寸法がフィン6の積層方向の寸法よりも短いので、蓄冷材容器7を設けたことによる通気抵抗の悪化が軽減される。また、蓄冷材容器7の積層方向の寸法が短いので、コア2の積層方向の寸法を長くすることなく、冷媒管5の数を増やすことが可能になり、冷房性能が向上する。さらに、蓄冷材容器7の積層方向の寸法が短いので、同様に蓄冷材容器7の数も増やすことが可能になり、蓄冷性能も向上する。
【0064】
次に、上記蓄冷エバポレータ1の冷房性能について図5図6に基づいて説明する。図5は、AとBの比(A/B)と冷房性能との関係を示しており、横軸がA/Bを表し、縦軸が冷房性能を表している。図6は、BとCの比(B/C)と冷房性能との関係を示しており、横軸がB/Cを表し、縦軸が冷房性能を表している。
【0065】
図5及び図6における冷房性能は、コンピュータソフトウェアによってシミュレーションした結果である。シミュレーションに用いたモデルは、上記実施形態で説明した図1に示す構造の蓄冷エバポレータ1である。コア2のサイズは、有効高さHを180mmとし、有効幅Wを232mmとし、有効厚さD(図2に示す)を35mmとした。有効高さHとは、上側ヘッダタンク3の下面から下側ヘッダタンク4の上面までの距離である。有効幅Wとは、左右のエンドプレート8、8間距離である。有効厚さDとは、コア2の外部空気の流れ方向の寸法である。シミュレーション時の風量は450m/時である。尚、有効高さH、有効幅W、有効厚さD、風量を、一般の自動車用空調装置に適用できる範囲で変更しても同様なシミュレーション結果が得られる。
【0066】
図5では、冷媒管5の上記積層方向の寸法Cが、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、2.75mmである蓄冷エバポレータ1を想定し、各々についてA/Bを変化させた結果を示している。フィン6のピッチ(フィン間の距離)はコア2の通気抵抗が一定となるように調整した。
【0067】
図5に示すシミュレーション結果より、A/Bが0.45未満になると冷房性能が低下し、また、A/Bが0.75を超えると冷房性能が低下することが分かる。従って、A/Bが上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。また、A/Bが0.65以下の場合には冷房性能がより一層高まる。また、Cが1.5mm以上2.5mm以下の範囲で冷房性能が高まり、Cが2.25mm以下の場合に冷房性能がより一層高まる。
【0068】
図6では、蓄冷材容器7の上記積層方向の寸法Aが、2.25mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mmである蓄冷エバポレータ1を想定し、各々についてB/Cを変化させた結果を示している。フィン6のピッチ(フィン間の距離)はコア2の通気抵抗が一定となるように調整した。
【0069】
図6に示すシミュレーション結果より、B/Cが2.0未満になると冷房性能が低下し、また、B/Cが4.5を超えると冷房性能が低下することが分かる。従って、B/Cが上記範囲内にあることで、冷房性能の低下が抑制される。また、B/Cが2.5以上4.0以下の場合には冷房性能がより一層高まる。また、Aが2.5mm以上4.5mm以下の範囲で冷房性能が高まり、Aが4.0mm以下の場合に冷房性能がより一層高まる。
【0070】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明に係る蓄冷エバポレータは、例えばアイドリングストップ機能を備えた車両用空調装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 蓄冷エバポレータ
2 コア
5 冷媒管
6 フィン
7 蓄冷材容器
70c、71c 凹部
U1、U2、U3、… 熱交換ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6