(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、車両の冷却装置1の構成を説明する図である。
図2は、エンジン2、ウォーターポンプ10、電子制御バルブ20、ラジエータ22、バイパス流路40gおよびヒータ24の位置関係を説明する図である。なお、
図1中、冷却流路40を実線の矢印で示し、信号の流れを破線で示す。また、
図2においては、後述する注水処理手順において特に関係のある部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
【0014】
図1に示すように、冷却装置1は、ウォーターポンプ10、エンジン2(オイルパンアッパー12、シリンダブロック14、シリンダヘッド16)、水渡しパイプ18、電子制御バルブ20、ラジエータ22、ヒータ24、EGRクーラ26、変速機28、水渡しパイプ30、サーモスタットバルブ32、ECU34(制御部)、温度センサT1〜T3が設けられる。そして、冷却装置1は、これら各部に、冷却流路40(40a〜40i)を介して冷却水が循環される。
【0015】
ウォーターポンプ10は、エンジン2の鉛直下方に設けられ(
図2)、ポンプ吐出流路40a、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40f、バイパス流路40gが接続されている。ウォーターポンプ10は、エンジン2の回転動力により駆動し、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40f、バイパス流路40gから流入した冷却水をポンプ吐出流路40aに吐出する。
【0016】
オイルパンアッパー12は、ポンプ吐出流路40aおよびブロック流入流路40bが接続されている。オイルパンアッパー12は、ポンプ吐出流路40aを介してウォーターポンプ10から流入された冷却水が一時的に流入し、流入した冷却水をブロック流入流路40bに排出する。
【0017】
エンジン2は、1対のシリンダブロック14、および、1対のシリンダヘッド16を備え、1対のシリンダブロック14が略水平方向に対向するようにして配置される所謂水平対向エンジンである。エンジン2の駆動トルクは、変速機28で変速されて車輪に伝達される。
【0018】
シリンダブロック14には、シリンダブロック14およびシリンダヘッド16に冷却水を分岐させる分岐室14aが設けられている。また、シリンダブロック14およびシリンダヘッド16には、冷却水が流通するウォータージャケットが形成されている。なお、
図1においては、1対のシリンダブロック14、および、1対のシリンダヘッド16は互いに離隔して図示されているが、実施には、1対のシリンダブロック14が対向するように連結されているとともに、シリンダブロック14に対してシリンダヘッド16がそれぞれ連結されている。
【0019】
シリンダブロック14は、分岐室14aよりも下流側であって、ウォータージャケットを流通した冷却水が排出されるブロック排出流路40cが接続されている。シリンダヘッド16は、ウォータージャケットが分岐室14aに接続されているとともに、下流側でシリンダブロック14に再接続されている。
【0020】
そして、分岐室14aに流入した冷却水は、シリンダブロック14のウォータージャケットを流通してブロック排出流路40cに排出されるとともに、シリンダヘッド16のウォータージャケットを流通してブロック排出流路40cに排出される。
【0021】
水渡しパイプ18は、ブロック排出流路40c、バルブ流入流路40dが接続されており、ブロック排出流路40cから流入した冷却水をバルブ流入流路40dに排出する。つまり、水渡しパイプ18は、エンジン2を流通してきた冷却水を電子制御バルブ20に流入させる。
【0022】
電子制御バルブ20は、エンジン2の鉛直上方に設けられ(
図2)、バルブ流入流路40d、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40f、バイパス流路40gが接続されたロータリー式のバルブである。電子制御バルブ20は、ロータリーが回転することで、詳しくは後述するように、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gそれぞれを開閉可能である。
【0023】
ラジエータ22は、エンジン2よりも前方側であって鉛直方向においてエンジン2と略同じ高さに設けられている(
図2)。また、ラジエータ22は、ラジエータ流路40eの途中に設けられ、冷却水の熱を外部に放熱することで、冷却水を冷却する。また、ラジエータ22には、冷却水を注水するための注水口を開閉するラジエータキャップが鉛直方向上端部に設けられているとともに、注水口に接する位置に、冷却流路40に残存している空気を貯蔵可能な空気貯留部が設けられている。
【0024】
ヒータ24は、エンジン2、電子制御バルブ20およびラジエータ22よりも鉛直上方に設けられている(
図2)。また、ヒータ24は、ヒータ流路40fの途中に設けられ、不図示のヒータスイッチがオンされることで、冷却水の熱を車内に放熱し、車内を暖める。
【0025】
EGRクーラ26は、ポンプ吐出流路40aから分岐されたEGR流路40hの途中に設けられ、エンジン2から排出される排気ガスの一部がエンジン2の吸気流路に循環されるEGRの途中で、排気ガスを冷却する。
【0026】
変速機28は、例えば無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))であり、ポンプ吐出流路40aから分岐された変速機流路40iの途中に設けられ、エンジン2から伝達された伝達トルクを無段階で変速して車輪に伝達する。
【0027】
水渡しパイプ30は、バイパス流路40gの途中に設けられており、EGR流路40hが接続されるとともに、サーモスタットバルブ32を介して変速機流路40iが接続されている。水渡しパイプ30は、EGR流路40hおよび変速機流路40iから流入した冷却水をバイパス流路40gに排出する。
【0028】
サーモスタットバルブ32は、変速機流路40iが接続されているとともに、水渡しパイプ30に連結されている。サーモスタットバルブ32は、変速機流路40i内の冷却水の温度が予め設定された第1温度閾値(例えば、50℃)以上になると変速機流路40iと水渡しパイプ30とを連通させる開状態となり、変速機流路40i内の冷却水の温度が第1温度閾値未満である場合には変速機流路40iと水渡しパイプ30とを遮断する閉状態となる。
【0029】
ECU34は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積流路で構成されている。ECU34には、温度センサT1〜T3が接続されており、これら温度センサT1〜T3から送信される信号、および、エンジン2の運転状況(エンジン回転数およびエンジン負荷)に基づいて、電子制御バルブ20を制御する。なお、ECU34は、エンジン2のクランクシャフトに設けられた不図示のクランク角センサから送信されるクランク角が示される信号に基づいてエンジン回転数を導出し、また、スロットルの開度をエンジン負荷として導出する。
【0030】
温度センサT1は、ポンプ吐出流路40aに設けられ、ウォーターポンプ10から吐出される冷却水の温度(以下、ポンプ温度とも呼ぶ)を計測する。温度センサT2は、シリンダブロック14内に設けられ、シリンダブロック14のウォータージャケットを流通した冷却水の温度(以下、ブロック温度とも呼ぶ)を計測する。温度センサT3は、シリンダヘッド16内に設けられ、シリンダヘッド16のウォータージャケットを流通した冷却水の温度(以下、ヘッド温度とも呼ぶ)を計測する。
【0031】
また、ECU34は、有線または無線によって外部の携帯端末50と通信が可能である。携帯端末50は、半導体集積流路を含んでおり、液晶画面の他、キーボードなど入力装置を備える汎用の整備用ツールであり、整備時等に必要に応じて通信接続される。
【0032】
次に、ECU34による制御処理について説明する。ここでは、まず、電子制御バルブ20におけるロータリーの回転角度と開口率との関係について説明した後、ECU34による制御処理を説明する。
【0033】
図3は、電子制御バルブ20におけるロータリーの回転角度と開口率との関係を示す図である。なお、
図3において、ラジエータ流路40eに対する開口率を破線で示し、ヒータ流路40fに対する開口率を細線(実線)で示し、およびバイパス流路40gに対する開口率を太線(実線)で示す。
【0034】
図3に示すように、電子制御バルブ20は、ロータリーの回転角度が0°である状態を基準として、正方向および負方向にロータリーが回転可能である。電子制御バルブ20は、ロータリーの回転角度が0°である場合(図中「A」)には、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gに対する開口率が全て0%であり(閉じた状態であり)、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gのいずれにも冷却水を排出することはない。
【0035】
また、電子制御バルブ20は、ロータリーが正方向に回転され、図中「B」の回転角度になると、ヒータ流路40fに対する開口率が100%となり(開いた状態であり)、ヒータ流路40fにのみ最大流量の冷却水が排出される。そして、電子制御バルブ20は、ロータリーがさらに正方向に回転され、図中「C」の回転角度になると、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gに対する開口度が100%となり、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gに冷却水が排出される。つまり、図中「C」の回転角度では、ラジエータ流路40eに冷却水が流通せず、バイパス流路40gおよび水渡しパイプ30を介してバイパス流路40gに冷却水が流通することになるので、バイパス流路40gは、ラジエータ22を迂回して冷却水を流通させる流路であるとも言える。
【0036】
そして、電子制御バルブ20は、図中「C」からロータリーがさらに正方向に回転されると、図中「D」の範囲において、バイパス流路40gに対する開口率が100%から0%に減少するとともに、ラジエータ流路40eに対する開口率が0%から100%に増加する。なお、電子制御バルブ20は、図中「D」の範囲において、ヒータ流路40fに対する開口度が100%のまま維持される。したがって、電子制御バルブ20は、図中「D」の範囲において、ヒータ流路40fに冷却水を排出するとともに、バイパス流路40gおよびラジエータ流路40eに対して中間開度で(開口率に応じて)冷却水を排出することになる。つまり、電子制御バルブ20は、図中「D」の範囲において、ラジエータ22およびバイパス流路40gに流通させる冷却水の流量を中間開度によって調整可能である。
【0037】
また、電子制御バルブ20は、図中「D」の範囲の回転角度から、さらにロータリーが正方向に回転され、図中「E」の回転角度になると、ヒータ流路40fおよびラジエータ流路40eに対する開口率が100%となり、ヒータ流路40fおよびラジエータ流路40eに冷却水が排出される。つまり、図中「E」の回転角度では、バイパス流路40gに冷却水が流通せず、ラジエータ流路40e(ラジエータ22)に冷却水が流通することになるので、ラジエータ22に冷却水が最も流通することになる。
【0038】
一方、電子制御バルブ20は、ロータリーが負方向に回転された場合、ヒータ流路40fに対する開口度は常に0%となる。また、電子制御バルブ20は、図中「F」の回転角度になると、バイパス流路40gに対する開口度が100%となり、バイパス流路40gにのみ冷却水が排出される。
【0039】
そして、電子制御バルブ20は、図中「F」からロータリーがさらに負方向に回転されると、図中「G」の範囲において、バイパス流路40gに対する開口率が100%から0%に減少するとともに、ラジエータ流路40eに対する開口率が0%から100%に増加する。したがって、電子制御バルブ20は、図中「G」の範囲において、ラジエータ22およびバイパス流路40gに流通させる冷却水の流量を中間開度によって調整可能である。
【0040】
また、電子制御バルブ20は、図中「G」の範囲の回転角度から、さらにロータリーが負方向に回転され、図中「H」の回転角度になると、ラジエータ流路40eに対する開口率が100%となり、ラジエータ流路40eにのみ冷却水が排出される。
【0041】
このように、電子制御バルブ20は、ロータリーが正方向または負方向のどちらに回転されるかによって、ヒータ流路40fに冷却水を排出するか否かを調整することが可能である。また、電子制御バルブ20は、ロータリーが正方向および負方向のどちらに回転される場合であっても、回転角度によって、バイパス流路40gおよびラジエータ流路40eに対する開口率を調整することが可能である。つまり、電子制御バルブ20は、回転角度によって、バイパス流路40gおよびラジエータ22に流通させる冷却水の流量を調整することが可能である。
【0042】
続いて、ECU34による制御処理について説明する。ECU34は、温度センサT1〜T3によって計測される冷却水の温度、エンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて、電子制御バルブ20のロータリーの回転角度を制御する。
【0043】
具体的には、ECU34は、温度センサT3によって計測されるヘッド温度に基づいて、複数の目標温度マップのいずれかを取得する。そして、ECU34は、エンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて、取得した目標温度マップを参照して、エンジン2を流通した冷却水の目標温度を設定する。なお、これら複数の目標温度マップは、エンジン回転数およびエンジン負荷に目標温度が対応付けられており、エンジン負荷が高くなるに連れて目標温度が低くなるように設定されている。
【0044】
ECU34は、目標温度を設定すると、ヒータスイッチのオンオフ、および、設定した目標温度に応じて、電子制御バルブ20のロータリーの回転角度を決定し、決定した回転角度となるように電子制御バルブ20(ロータリー)を
図3中「A」〜「H」のいずれかの状態に制御する。なお、ここでは、ECU34は、目標温度が高くなるに連れてラジエータ22に冷却水を流通させないようにして、冷却水の温度を上昇させるように制御し、目標温度が低くなるに連れてラジエータ22に冷却水を流通させるようにして、冷却水の温度を低下させるように制御する。
【0045】
また、ECU34は、目標温度とヘッド温度との温度差に基づいて、電子制御バルブ20のロータリーの回転角度を補正する。具体的には、ECU34は、目標温度からヘッド温度を減算した温度差が0よりも大きい場合には、温度差が大きくなるに連れてロータリーの回転角度を0°に近づくように補正する。つまり、ECU34は、ヘッド温度が目標温度よりも低い場合には、ラジエータ22に冷却水を流通させないようにして、冷却水の温度を上昇させるように制御する。
【0046】
また、ECU34は、目標温度からヘッド温度を減算した温度差が0よりも小さい場合には、温度差が小さくなるに連れてロータリーの回転角度を0°から遠ざかるように補正する。つまり、ECU34は、ヘッド温度が目標温度よりも高い場合には、ラジエータ22に冷却水を流通させるようにして、冷却水の温度を低下させるように制御する。
【0047】
また、ECU34は、温度センサT1によって計測されるポンプ温度に基づいて、電子制御バルブ20のロータリーの回転角度を補正する。ここでは、エンジン回転数やエンジン負荷が急激に変化して目標水温が変化した場合に、水温の応答遅れが少なくなるように電子制御バルブ20のロータリーの回転角度を補正する。
【0048】
このように、ECU34が電子制御バルブ20の回転角度、つまり、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gの開閉を制御する。例えば、冷却水が冷えている場合には、ラジエータ22に冷却水を循環させないようにすることで、エンジン2の早期の暖機を図ることが可能となる。また、冷却水が温まっている場合には、ラジエータ22に冷却水を循環させるようにすることで、冷却水の冷却、つまり、エンジン2を冷却することが可能となる。
【0049】
ところで、冷却装置1では、製造時やメンテナンス時等に冷却流路40内に冷却水を注水する際、冷却流路40内に空気が残らないように冷却水を注水する必要がある。冷却流路40内に空気が残っている状態でエンジン2を駆動させると、空焚きによってエンジン2が破損するおそれがあるからである。
【0050】
一方で、電子制御バルブ20は、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gの3方向を切り替えて冷却水を排出させる。そのため、これらラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gが電子制御バルブ20によって閉鎖されてしまうと、注水時に閉鎖された冷却流路内の空気を抜くことができなくなってしまう。
【0051】
そこで、本実施形態の冷却装置1では、以下の注水処理手順によって、冷却流路40内に残存する空気を効率的に外部に排出する。
【0052】
図4は、注水処理手順の流れを示すシーケンスチャートであり、
図5は、バルブ制御処理の流れを示すフローチャートである。冷却水を冷却流路40に注水する際、
図4に示すように、作業者は、まず、ラジエータ22の注水口から冷却水を冷却流路40に初期注水する(S101)。このとき、ECU34は、電子制御バルブ20を
図3中「D」の回転角度に維持させる(S201)。
【0053】
これにより、電子制御バルブ20では、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gが全て開いた状態となり、作業者によって注水された冷却水がラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gに流れこむことになる。なお、ここでは、エンジン2が駆動されていないことから、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gに冷却水が流れ込むが、冷却流路40から完全に空気が取り除かれることはない。
【0054】
そして、作業者による初期注水作業が終了すると、携帯端末50は、作業者の操作に応じて、注水作業を行っていることを示す注水開始指示信号をECU34に送信する(S102)。その後、携帯端末50または作業者は、エンジン2を始動させた後(S103)、エンジン2を2000rpm〜3000rpmのレーシングモードで駆動させる(S104)。
【0055】
一方、ECU34は、注水開始指示信号を受信すると、エンジン2がレーシングモードで駆動されている間、電子制御バルブ20を周期的に切り替えるバルブ制御処理を実行する(S300)。
【0056】
ECU34は、バルブ制御処理(S300)を開始すると、
図5に示すように、電子制御バルブ20を2秒間に亘り
図3中「F」の回転角度に制御して、バイパス流路40gのみを開いた状態にする(S301)。そうすると、電子制御バルブ20からバイパス流路40gにのみ冷却水が排出されることになり、バイパス流路40gに残存する空気が冷却水の流れによって下流側に移動する。
【0057】
その後、ECU34は、電子制御バルブ20を2秒間に亘り
図3中「B」の回転角度に制御して、ヒータ流路40fのみを開状態にする(S302)。そうすると、電子制御バルブ20からヒータ流路40fにのみ冷却水が排出されることになり、ヒータ流路40fに残存する空気が冷却水の流れによって下流側に移動する。
【0058】
続いて、ECU34は、電子制御バルブ20を2秒間に亘り
図3中「H」の回転角度に制御して、ラジエータ流路40eのみを開状態にする(S303)。そうすると、電子制御バルブ20からラジエータ流路40eにのみ冷却水が排出されることになり、エンジン2やラジエータ流路40eに残存する空気が冷却水の流れによって下流側に移動する。このとき、ラジエータ22にまで到達した空気は、空気貯留部に留まることになり、再びラジエータ流路40eに戻されることはない。
【0059】
その後、ECU34は、電子制御バルブ20を2秒間に亘り
図3中「D」の回転角度に制御して、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gを全て開いた状態にし(S304)、再びS301の処理に戻る。
【0060】
このように、ECU34は、電子制御バルブ20の回転角度を2秒ごとに周期的に切り替えるように制御して、バイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eの順に開かれる冷却流路を切り替えるバルブ制御処理(S300)を、レージングモードでエンジン2が駆動している間、繰り返し実行する。
【0061】
これにより、バイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40e内に残存する空気が徐々に下流側に移動するとともに、最終的にはラジエータ流路40eからラジエータ22の空気貯留部に移動することになり、冷却流路40内から効率よく空気を抜くことができる。
【0062】
このとき、電子制御バルブ20に接続されたバイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eのうち、冷却水が流れる冷却流路を1つに絞ることで冷却水が集中的に1つの冷却流路に流れ、空気の排出性を向上させることができる。
【0063】
また、ヒータ24はバイパス流路40gよりも鉛直上方に設けられているため、ヒータ流路40fをバイパス流路40gよりも先に開いた場合には、バイパス流路40gを開いた際にヒータ流路40fに空気が戻ってしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、バイパス流路40gをヒータ流路40fよりも先に開くことで、ヒータ流路40fに空気が戻ってしまうことを防止することができる。
【0064】
図4に戻り、作業者がレーシングモードでエンジン2を駆動させた後(S104)、エンジン2を停止させると(S105)、ECU34は、電子制御バルブ20を
図3中「D」の回転角度に維持させる(S202)。これにより、電子制御バルブ20では、ラジエータ流路40e、ヒータ流路40fおよびバイパス流路40gが全て開いた状態となる。
【0065】
そして、作業者によって、ラジエータ22の注水口から冷却水が再び注水され(S106)、このS103〜S106までの手順が2回終了していない場合には(S107におけるNO)、S103に処理を戻す。一方、S103〜S106までの手順が2回終了すると(S107におけるYES)、作業者は、エンジン2を再度始動させ(S108)、冷却流路40内を流れる冷却水の流水音を確認する(S109)。一方、エンジン2が再始動すると、ECU34は、再びバルブ制御処理(S300)を実行し、バイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eの順に周期的に開かせる。
【0066】
その後、作業者または携帯端末50は、冷却流路40に空気が残存しているか否かを判定する(S110)。ここで、冷却流路40に空気が残存しているか否かを判定する際、S109によって確認した冷却水の流水音に基づいて判定してもよく、また、温度センサT1〜T3の温度(一定温度以上であるか否か)、エンジン運転状態(車速が0km/hよりも高い)、冷却水の流水音を含めた複合的な情報で判定してもよい。そして、冷却流路40に空気が残存していない場合(S110におけるNO)、携帯端末50を介して注水作業が終了したこと示す注水終了指示信号をECU34に送信し、注水処理手順を終了する。ECU34は、注水終了指示信号を受信すると、電子制御バルブ20を通常制御に戻し(S203)、注水処理手順を終了する。
【0067】
一方、冷却流路40に空気が残存している場合(S110におけるYES)、作業者によってラジエータ22のリザーブタンクに冷却水を注水し(S111)、S108の処理に戻る。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、電子制御バルブ20に、3つの冷却水路が接続されている場合について説明したが、電子制御バルブ20に複数の冷却水路が接続されていれば、その数はいくつであってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、バルブ制御処理において、バイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eの順に開かれる冷却流路を周期的に切り替えるようにしたが、その順番はこれに限らず、任意の順番でよい。ただし、バイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eの順に開くことで、最も効率よく空気を抜くことができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、バルブ制御処理において、2秒毎に開かれるバイパス流路40g、ヒータ流路40f、ラジエータ流路40eを順に切り替えるようにしたが、それぞれの流路が開かれる時間は2秒に限らず、他の期間であってもよい。ただし、長時間にわたって1つの流路を開いたとしても、その流路内で空気が循環されるだけになってしまうので、ある程度短い時間で切り替えるとよい。