特許第6738239号(P6738239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738239
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】車両用シート部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/20 20060101AFI20200730BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20200730BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20200730BHJP
【FI】
   A47C7/20
   A47C27/14 A
   B60N2/90
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-165049(P2016-165049)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-29844(P2018-29844A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅光
(72)【発明者】
【氏名】榊原 有史
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−42541(JP,U)
【文献】 特開2014−69532(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/042759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00− 7/74
A47C 27/00−27/22
B60N 2/00− 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材の製造方法であって、
前記車両用シート部材の平面視において、前記車両用シート部材の輪郭に沿って前記フレーム材が配置されるように、前記フレーム材を成形型内に配置する配置工程と、
成形型内において、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設するとともに前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように前記枠状部から内側に延在する延在部と、を含む発泡樹脂成形体を成形する成形工程と、
を含み、
前記成形工程において、前記延在部が、前記枠状部のうち前記延在部と接続する接続部分以外の非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、前記発泡樹脂成形体を成形する
ことを特徴とする車両用シート部材の製造方法。
【請求項2】
前記フレーム材は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記成形工程において、前記延在部が前記対向部分の間に亘って延在するように、前記発泡樹脂成形体を成形する、請求項1に記載の車両用シート部材の製造方法。
【請求項3】
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記成形工程において、前記延在部は、前記枠状部の対向する部分に亘って、少なくとも前記長手方向に沿って延在した第1延在部分を含み、且つ、前記第1延在部分は、前記枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、前記発泡樹脂成形体を成形する、
請求項1又は2に記載の車両用シート部材の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程において、前記フレーム材の少なくとも一部を、車両用シート部材の輪郭に沿って周回させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用シート部材の製造方法。
【請求項5】
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材であって、
前記フレーム材は、前記車両用シート部材の平面視において、前記車両用シート部材の輪郭に沿って配置されており、
前記発泡樹脂成形体は、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設するとともに前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように前記枠状部から内側に延在する延在部とを含み、
前記発泡樹脂成形体において、前記延在部が、前記枠状部のうち前記延在部と接続する接続部分以外の非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む
ことを特徴とする車両用シート部材。
【請求項6】
前記フレーム材は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、前記延在部は、前記対向部分の間に亘って延在するように形成される、請求項5に記載の車両用シート部材。
【請求項7】
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記延在部は、前記枠状部の対向する部分に亘って、前記長手方向に沿った第1延在部分を含み、
前記第1延在部分は、前記枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む、請求項5又は6に記載の車両用シート部材。
【請求項8】
前記フレーム材は、車両用シート部材の輪郭に沿って周回している、請求項5〜7のいずれか1項に記載の車両用シート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用シートとして、たとえばフレーム材が発泡樹脂成形体に一体成形された車両用シート部材が知られている(たとえば特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献3では、車両への固定のための掛け止め具とそれを連結する連結部材をフレーム材として、これを発泡粒子成形体内に埋め込み一体成形する車両用シート部材の製造方法が開示されている。連結部材は車両用シート部材の長手方向に沿って発泡粒子成形体の前方側に埋設される。特許文献3では、掛け止め具の柱部が埋設されている発泡粒子成形体部分の、車両用シート部材の長手方向外方に、柱部から長手方向外方に向かう切り込みを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−161508号公報
【特許文献2】国際公開WO2015/159691号公報
【特許文献3】国際公開WO2016/042759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1〜3に記載される形態の車両用シートは、車両用シート部材を構成する発泡樹脂成形体の内部にフレーム材が一体成形されている。フレーム材と発泡樹脂成形体とは材料が異なるため熱膨張係数は異なる。このため、発泡樹脂成形体のうちフレーム材が存在しない発泡樹脂の部分と、フレーム材が埋設された発泡樹脂の部分とでは、熱膨張および熱収縮の程度が異なる。
【0006】
したがって、例えば、成形後の発泡樹脂成形体の脱型時の放熱、または車両用シート部材への入熱などにより、発泡樹脂成形体のうちフレーム材が存在しない発泡樹脂の部分が、所定の形状から僅かに変形することが想定される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく本明細書で開示する本発明に係る車両用シート部材の製造方法は、
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材の製造方法であって、
前記車両用シート部材の平面視において、前記車両用シート部材の輪郭に沿って前記フレーム材が配置されるように、前記フレーム材を成形型内に配置する配置工程と、
成形型内において、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設するとともに前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように前記枠状部から内側に延在する延在部と、を含む発泡樹脂成形体を成形する成形工程と、
を含み、
前記成形工程において、前記延在部が、前記枠状部のうち前記延在部と接続する接続部分以外の非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、前記発泡樹脂成形体を成形する
ことを特徴とする。
【0008】
車両用シート部材の製造方法において、発泡樹脂成形体のうちフレーム材の少なくとも一部が埋設された状態の枠状部と、枠状部の内部に延在してフレーム材が存在しない延在部とでは、見かけ上の熱収縮量が異なる。これにより、枠状部に囲まれた延在部には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部が変形し易いところ、本発明ではこの変形を抑えることができる。
【0009】
すなわち、本発明では、延在部が、枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体を成形することにより、延在部の剛性を、枠状部の前記非接続部分よりも高め、延在部に作用する応力による延在部の変形を抑える。これにより、成形時又は成形後に、枠状部及び延在部を備える発泡樹脂成形体が熱収縮しても、延在部の変形を抑えることができる。しかも発泡樹脂の曲げ最大点応力は、発泡倍数を変更する等の手段により容易に制御することができる。このため、寸法精度の高い車両用シート部材を容易に製造することができる。なお、延在部の変形を抑制する他の手段としては、延在部と枠状部とを含む発泡樹脂成形体の全体の曲げ最大点応力を大きくすること(「他の手段1」とする)、延在部の厚みを増すこと(「他の手段2」とする)等が考えられる。しかし、前記他の手段1によれば、発泡樹脂成形体の全体の重量増加、コスト増加等の可能性がある。前記他の手段2によれば、延在部のデザインが制約されるため用途が制約される可能性がある。本発明ではこれらの可能性が低いため、前記他の手段1及び2と比較して顕著に有利である。
【0010】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の好ましい態様では、
前記フレーム材は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、
前記成形工程において、前記延在部が前記対向部分の間に亘って延在するように、前記発泡樹脂成形体を成形する。
フレーム材が前記連続部分を有することにより、前記連続部分を埋設する枠状部の部分に、延在部の両側が拘束される。この構造において延在部は熱収縮により特に変形し易いところ、本発明のこの態様では、成形工程において、延在部が、前記連続構造の対向部分の間に亘って延在するように発泡樹脂成形体を成形することにより、延在部の変形を抑えることができる。
【0011】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の更に好ましい態様では、
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記成形工程において、前記延在部は、前記枠状部の対向する部分に亘って、少なくとも前記長手方向に沿って延在した第1延在部分を含み、且つ、前記第1延在部分は、前記枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、前記発泡樹脂成形体を成形する。
長手方向に沿って形成された第1延在部分は熱収縮により変形し易いところ、この態様では、第1延在部分が、枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように発泡樹脂成形体を成形することにより、第1延在部分の変形を抑えることができる。
本発明に係る車両用シート部材の製造方法の更に好ましい態様では、
前記配置工程において、前記フレーム材の少なくとも一部を、車両用シート部材の輪郭に沿って周回させる。
この態様によれば、フレーム材が車両用シート部材の輪郭に沿って周回するので、車両用シート部材の強度を高めることができる。しかも、フレーム材を車両用シート部材の輪郭に沿って周回させると、延在部の両側が拘束され、熱収縮により変形し易いところ、この態様によれば、延在部が、枠状部が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体を成形することにより、延在部の剛性を高めることができ、延在部に作用する応力による延在部の変形を抑えることができる。
【0012】
本発明は更に車両用シート部材に関する。
本発明に係る車両用シート部材は、
フレーム材と、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体と、を備えた車両用シート部材であって、
前記フレーム材は、前記車両用シート部材の平面視において、前記車両用シート部材の輪郭に沿って配置されており、
前記発泡樹脂成形体は、前記フレーム材の少なくとも一部を埋設するとともに前記車両用シート部材の輪郭を形成する枠状部と、前記枠状部の内側において前記枠状部をわたすように前記枠状部から内側に延在する延在部とを含み、
前記発泡樹脂成形体において、前記延在部が、前記枠状部のうち前記延在部と接続する接続部分以外の非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む
ことを特徴とする。
【0013】
車両用シート部材に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)、発泡樹脂成形体のうちフレーム材が埋設された状態の枠状部と、枠状部の内部に延在してフレーム材が存在しない延在部とでは、見かけ上の熱膨張量(熱収縮量)が異なる。これにより、枠状部に囲まれた延在部には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部が変形し易いところ、本発明ではこの変形を抑えることができる。
すなわち、本発明では、枠状部の内側に延在する延在部が、枠状部の前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むようにすることにより、延在部の剛性を枠状部よりも高め、延在部の変形を抑えることができ、車両用シート部材の寸法精度を確保することができる。なお、延在部の変形を抑制する他の手段としては、前記他の手段1、2等が考えられる。しかし、前記他の手段1によれば、発泡樹脂成形体の全体の重量増、コスト増等の可能性がある。前記他の手段2によれば、延在部のデザインが制約されるため用途が制約される可能性がある。本発明ではこれらの可能性が低いため、前記他の手段1及び2と比較して顕著に有利である。
【0014】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記フレーム材は、前記枠状部の内側の空間を挟んで対向する対向部分同士が連続した連続部分を有し、前記延在部は、前記対向部分の間に亘って延在するように形成される。
フレーム材が前記連続部分を有することにより、前記連続部分を埋設する枠状部の部分に、延在部の両側が拘束される。この構造の車両用シート部材に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)、延在部は熱収縮により特に変形し易いところ、本発明のこの態様では、延在部が、枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むため、延在部が変形し難い。
【0015】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記平面視における前記車両用シート部材の輪郭は、短手方向と長手方向を有した形状であり、
前記延在部は、前記枠状部の対向する部分に亘って、前記長手方向に沿った第1延在部分を含み、
前記第1延在部分は、前記枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。
長手方向に沿って形成された第1延在部分は熱収縮により変形し易いところ、この態様によれば、第1延在部分が、枠状部のうち前記非接続部分が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むため、第1延在部分が変形し難い。
【0016】
本発明に係る車両用シート部材のより好ましい態様では、
前記フレーム材は、車両用シート部材の輪郭に沿って周回している。
この態様によれば、フレーム材が車両用シート部材の輪郭に沿って周回するので、車両用シート部材の強度が高い。しかも、フレーム材を車両用シート部材の輪郭に沿って周回させると、延在部の両側が拘束され、熱収縮により変形し易いところ、この態様によれば、延在部が、枠状部が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むため、延在部の剛性が高く、延在部の変形が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用シート部材の製造方法によれば、寸法精度の高い車両用シート部材を得ることができる。また、本発明に係る車両用シート部材によれば、車両用シート部材に入熱された時または入熱された熱が放熱する時であっても、車両用シート部材の寸法精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、フレーム材の構造を説明するための模式的斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、発泡樹脂成形体の構造を説明するための模式的斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材の左側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材を上面から見たときの平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材の製造方法を説明するための、図4に示すI−I線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図である。(A)は、成形型内に予備発泡樹脂粒子を充填した状態の模式的断面図である。(B)は、(A)に示す状態から、予備発泡樹脂粒子を発泡させて、発泡樹脂成形体を成形した状態の模式的断面図である。(C)は、(B)に示す状態から、発泡樹脂成形体を成形型から脱型した状態を示す模式的断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る車両用シート部材の製造方法を説明するための、図4に示すII−II線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図である。(A)は、成形型内に予備発泡樹脂粒子を充填した状態の模式的断面図である。(B)は、(A)に示す状態から、予備発泡樹脂粒子を発泡させて、発泡樹脂成形体を成形した状態の模式的断面図である。(C)は、(B)に示す状態から、発泡樹脂成形体を成形型から脱型した状態を示す模式的断面図である。
図7】比較例となる車両用シート部材の製造方法を説明するための模式的断面図である。(A)は、予備発泡粒子を発泡させて、発泡樹脂成形体を成形した状態の模式的断面図である。(B)は、(A)に示す状態から、発泡樹脂成形体を成形型から脱型した状態を示した模式的断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、フレーム材の構造を説明するための模式的斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材を下方から見た、発泡樹脂成形体の構造を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、はじめに、本発明における発泡樹脂成形体を調製するための材料について説明し、その後に、本発明による車両用シート部材および車両用シートのいくつかの実施形態を、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明の範囲は個別の実施形態には限定されない。
【0020】
<発泡樹脂成形体を調製するための材料>
本発明において「発泡樹脂成形体」とは、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し、前記予備発泡樹脂粒子を前記成形型内で再発泡させて型内発泡成形した成形体を指す。
発泡樹脂成形体の各部分を構成する材料を本発明では「発泡樹脂」と呼ぶ。
「樹脂」、「発泡剤」、「発泡性樹脂粒子」、「予備発泡樹脂粒子」について具体的に説明する。
【0021】
(樹脂)
樹脂としては特に限定されないが、通常は熱可塑性樹脂が用いられ、例えば、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が使用できる。
発泡性樹脂粒子は、樹脂粒子に発泡剤を含浸させたものであり、樹脂の重合による形成と同時に発泡剤を含浸させてもよいし、樹脂の重合後に発泡剤を含浸させてもよい。
以下に、本発明に好適に用いることができる樹脂粒子、並びに、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子について詳述する。
【0022】
(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)
該複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂とを含んでいる。
複合樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状であることが好ましい。
また、平均粒径には、格別の制限はないが、0.3〜7mmが例示できる。
更に、複合樹脂粒子の最大径Lと最小径Dの比(L/D)にも、格別の制限はないが、1〜1.6であることが好ましい。
【0023】
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の炭素数2〜10のオレフィンモノマー由来の単位を含む樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマーの単独重合体でもよく、オレフィンモノマーと共重合しうる他のモノマーとの共重合体であってもよい。更に、ポリオレフィン系樹脂は、架橋していてもよい。共重合体としては、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体(EVA)が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、18〜50万の平均質量分子量を有する樹脂を使用できる。
【0024】
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、置換スチレン(置換基は、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等)のスチレン系モノマーに由来する樹脂が挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンブロモスチレン等が挙げられる。更に、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
他のモノマーを使用する場合、スチレン系モノマー100質量部に対して、30質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
ポリスチレン系樹脂は、スチレンのみに由来する樹脂であることがより好ましい。
【0025】
(3)ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との含有量
ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば120〜400質量部、好ましくは150〜250質量部である。
【0026】
(4)他の添加剤
複合樹脂粒子には、他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、鱗片状珪酸塩等が挙げられる。
【0027】
(5)複合樹脂粒子の製造方法
複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを粒子中に含ませることができさえすれば、どのような方法で製造してもよい。例えば、両樹脂を押出機中で混練し、混練物をカットする方法、ポリオレフィン系樹脂を含む種粒子に、水性媒体中で、スチレン系モノマーを含浸させ、次いでそのモノマーを重合させる方法等が挙げられる。この内、後者の方法は、より均一に両樹脂を混合でき、かつより球形に近い粒子が得られる観点から好ましい。ここで、後者の方法により得られた複合樹脂粒子をポリオレフィン改質ポリスチレン系樹脂粒子と、また単に改質樹脂粒子とも称する。
【0028】
(6)市販の複合樹脂粒子
ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子としては市販品を購入して用いることもできる。ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子の市販品としては積水化成品工業株式会社製のピオセラン(登録商標):OP−30EU、OP−30ELV等が例示できる。
【0029】
(ポリスチレン系樹脂粒子)
(1)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらのモノマーのうち2種以上の共重合体等が挙げられ、スチレン成分を50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0030】
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレン系モノマーを主成分とし、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0031】
また、前記ポリスチレン系樹脂には、上記の(ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子)の(4)で挙げたような他の添加剤が含まれてもよい。
本発明に使用するポリスチレン系樹脂粒子としては、形状は特に限定されないが、球状が好ましく、粒子径は、後述するポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の成形型内への充填容易性の点から、0.3〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.4mmが好ましい。また、形状が柱状となる場合は前記の好ましい粒径に相当する体積とすることが好ましい。更に、ポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量(Mw)は12万〜60万の範囲とすることができる。
【0032】
(2)ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の材料となるポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、ポリスチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して冷却してから所定長さ毎に切断してポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法(ストランドカット法)、押出機の先に取り付けた口金の孔から水中に押し出すと同時に切断し冷却してポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法(水中ホットカット法)などが挙げられる。また、この押出機内の樹脂に鱗片状珪酸塩や金属酸化物を分散させた後、所定長さ毎に切断してポリスチレン系樹脂粒子としても良い。また、前記にて得られたポリスチレン系樹脂粒子を種粒子として水中懸濁液中にてスチレン系モノマーをポリスチレン系樹脂種粒子中に含浸させてシード重合させるシード重合法にてポリスチレン系樹脂粒子を製造し、続いて作製したポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を添加する方法を採用しても良い。
【0033】
(3)市販のポリスチレン系樹脂粒子
ポリスチレン系樹脂粒子としては市販品を購入して用いることもできる。ポリスチレン系樹脂粒子の市販品としては積水化成品工業株式会社製のエスレンビーズ:FDK−40LV、ESDK等が例示できる。
【0034】
(他の樹脂粒子)
他の樹脂粒子についても、上記で詳述したポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子、又は、ポリスチレン系樹脂粒子と同様の形状の樹脂粒子を用いることができ、同様の他の添加物を適宜含有することができる。
【0035】
他の樹脂粒子としては、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子が例示できる。ポリオレフィン系樹脂粒子としては、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子に含まれる成分として上記のポリオレフィン系樹脂の粒子が例示できる。ポリエステル系樹脂粒子を構成するポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレートが例示できる。
【0036】
これらの他の樹脂を含む粒子を製造する方法としては、上記で詳述したポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂粒子又はポリスチレン系樹脂粒子と同様に一般的な方法が用いられる。
他の樹脂を含む粒子についても市販品を購入して使用してもよい。
【0037】
(発泡性樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子に含まれる発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点が使用樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。発泡剤としては、炭素水素が好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0038】
発泡性樹脂粒子中における発泡剤の含有量は特に限定されないが、典型的には、発泡性樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部である。なお、発泡性樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、製造直後に13℃の恒温室内に5日間放置した上で測定されたものである。
【0039】
(発泡性樹脂粒子の製造方法)
樹脂粒子への発泡剤の含浸は、樹脂の重合後の粒子に行ってもよく、重合途中の粒子に行ってもよい。重合の途中での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。また、重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。重合後期は、構成モノマーの70質量%が重合してから後であることが好ましい。また、構成モノマーの99質量%が重合してから発泡剤を重合に続けて含浸させることも可能である。
発泡剤の含浸温度は、50〜140℃とすることができる。
【0040】
発泡剤の含浸を、発泡助剤の存在下で行ってもよい。発泡助剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の溶剤や、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)等が挙げられる。発泡助剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して、0.2〜2.5質量部であることが好ましい。
【0041】
必要に応じて、表面処理剤(例えば、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等)を発泡剤含浸時の系内に添加してもよい。これら表面処理剤の添加量(合計値)としては、樹脂粒子100質量部に対して、0.01〜2質量部が例示できる。
【0042】
(予備発泡樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子は、発泡機(予備発泡機)で水蒸気等を用いて発泡(予備発泡)されて多数の小孔を有する予備発泡樹脂粒子(単に発泡樹脂粒子ともいう)とされる。
予備発泡樹脂粒子の嵩倍数は、目的とする発泡樹脂の発泡倍数に応じて調節することができる。
【0043】
(型内発泡成形)
型内発泡成形の条件等については下記の第1実施形態の説明のなかで説明する。
【0044】
<第1実施形態>
1.車両用シート部材10について
図1〜6に基づいて車両用シート部材及びその製造方法の第1実施形態を説明する。
図1および図2に示すように、車両用シート部材10は、基本構成として、フレーム材20と、フレーム材20の少なくとも一部を埋設する発泡樹脂成形体30とを備えている。
【0045】
車両用シート部材10の全体形状に特に制限はないが、図4に示すように、平面視で矩形である形状が一般的である。本明細書において矩形とは長方形、正方形等の四角形を指し、長方形及び正方形に限らず、台形や、平行四辺形の形状であってもよい。本明細書において矩形は概略矩形である場合も含み、例えば、隅部が丸みを帯びていてもよいし、矩形を構成する辺の一部又は全部が曲がった辺であってもよい。
【0046】
本実施形態では、図4に示すように、車両用シート部材10の平面視における輪郭Sは、短辺および長辺を有した矩形であり、短手方向と長手方向とを有した形状である。輪郭Sは、4つの辺として、短辺を構成する右方縁部sRおよび左方縁部sLと、長辺を構成する前方縁部sFおよび後方縁部sBと、4隅を構成する隅部sCと、を含んでいる。なお、本実施形態でいう、前後左右とは、車両内に搭乗者が着座した状態で、車両から車両の進行(前方)方向を見たときの方向のことをいう。
【0047】
本実施形態の車両用シート部材10は、例えば、図3に示すように、車両用シート部材10(発泡樹脂成形体30)の上面11(上面31)の側から適宜クッション材等の上部シート部材50を積層配置して、車両用シート1とすることができる。また、適当な外装材により、車両用シート部材10をクッション材等とともに被覆して車両用シート1としてもよい。
【0048】
2.フレーム材20について
図1〜4に示すように、フレーム材20は、発泡樹脂成形体30に所要の保形性と強度を付与するために埋め込まれるものである。フレーム材20は、発泡樹脂成形体30を成形する条件下において発泡樹脂成形体30と比較して寸法が実質的に変化しない材料、例えば鋼、アルミニウム等の金属材料、により構成することが通常である。
【0049】
フレーム材20は、車両用シート部材10の平面視における輪郭Sに沿って、発泡樹脂成形体30の内部に延在した第1および第2骨組み部21,22と、第1および第2骨組み部21,22の端部に連結された一対の台座部23,23を備えている。第2骨組み部22は、対向する一対の対向部分22a,22a同士が連続した構造を有し、本明細書では、第2骨組み部22を、フレーム材20の「連続部分」と呼ぶ場合がある。
【0050】
フレーム材20は、各台座部23に取付けられた前方係止部24と、第2骨組み部22に取付けられた後方係止部25をさらに備えている。本実施形態では、第1および第2骨組み部21,22、前方および後方係止部24,25としては、例えば直径が3〜6mm程度の鋼またはアルミニウム製の線材(ワイヤー)等が用いられるが、例えば金属製の帯状または管状の鋼材であってもよい。さらに、フレーム材20を、鋼板から打ち抜き成形およびプレス成形により、製造してもよい。
【0051】
フレーム材20の第1骨組み部21は、前方縁部sFの中央の一部に沿ってその近傍に配置されており、第2骨組み部22は、前方縁部sFの両側の一部と、右方縁部sR、左方縁部sL、後方縁部sB、および各隅部sCに沿って、これらの近傍に配置されている。フレーム材20は、車両用シート部材10の輪郭Sに沿うように、輪郭Sを形成する発泡樹脂成形体30の外周面33から少し内側に入った個所に埋設されている。
【0052】
このようにして、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22は、これらを連結する一対の台座部23,23とともに、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回している。なお、本実施形態では、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22を含む部分は、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回しているが、例えば、フレーム材20の第1および第2骨組み部21,22が、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って断続的に周回していてもよい。すなわち、この形態には限らず、輪郭Sに沿う一部の部分のみに骨組み部が配置されていてもよい。例えば、第2骨組み部22が、台座部23,23に連結されず、後方縁部sBに沿って配置されてもよい。また、フレーム材20を構成する骨組み部の個数も2つに限定されるものではなく、その個数は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0053】
フレーム材20を構成する前方係止部24と後方係止部25は、車両用シート部材10を車両に係止する部分である。前方係止部24は、例えば溶接または接着等により、台座部23に連結されており、台座部23から下方に突出している。前方係止部24の先端部分24aは、略U字状の湾曲しており、発泡樹脂成形体30から露出し、基端部分24bは、台座部23と共に発泡樹脂成形体30に埋設されている。より具体的には、基端部分24bは、その周囲の全体が発泡樹脂成形体30に包埋される。これにより、本実施形態の車両用シート部材10を前方係止部24の先端部分24aを介して車両に係止する際に引き抜き方向の力が加わった場合であっても、前方係止部24は発泡樹脂成形体30に保持され、引き抜き方向の力に対する耐性を高めることができる。
【0054】
さらに、後方係止部25は、第2骨組み部22のうち、後方縁部sBに沿った部分22bの中央から、後方に突出している。後方係止部25の先端部分25aは、略U字状に湾曲しており、発泡樹脂成形体30から露出し、基端部分25bは、発泡樹脂成形体30に埋設されている。
【0055】
本実施形態では、前方係止部24及び後方係止部25の先端部分24a,25aはそれぞれ線材を略U字状に曲げて形成しているが、この構造には限定されず、車両側の構造に応じて係止が可能な構造とすればよい。
【0056】
本実施形態では、前方係止部24は、台座部23を介して第1および第2骨組み部21,22の双方に連結されている。しかしながら、前方係止部24は、この形態には限定されず、後方係止部25のように、台座部23を介さず直接に第1または第2骨組み部21,22の双方に連結されていてもよい。また、前方係止部24の数は特に限定されず、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。前方係止部24と後方係止部25のうち一方が存在していなくてもよい。
【0057】
3.発泡樹脂成形体30について
図1および図2に示すように、発泡樹脂成形体30は、発泡樹脂の型内発泡樹脂成形体である。発泡樹脂成形体30は、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を成形型内に充填し、前記予備発泡樹脂粒子を前記成形型内で再発泡させて型内発泡成形した成形体であり、樹脂、発泡剤、発泡性樹脂粒子、予備発泡樹脂粒子の具体的な態様については既述の通りである。
【0058】
発泡樹脂成形体30には、車両の搭乗者が座る側となる上面31と、車両に締結される側となる底面32が形成されている。発泡樹脂成形体30は、フレーム材20を埋設するとともに、車両用シート部材10の平面視において、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する枠状部35を備えている。枠状部35は、車両用シート部材10を取り付けた状態で、座席の前方に位置する前方部分35aと、前方部分35aと一体的に形成され、座席の左右側方に位置し、前方部分の両端部から35aから後方に延び、後方端の近傍が傾斜した一対の側方部分35c,35cと、側方部分35c,35cと一体的に形成され、一対の側方部分35c,35cの後方端を接続する後方部分35bと、から構成されている。車両用シート部材10が車両に組み込まれたとき、枠状部35のうち、前方部分35aは搭乗者の上腿部を支持し、後方部分35bは搭乗者の臀部を支持する。
【0059】
具体的には、図3に示すように、発泡樹脂成形体30の上面31は、下方に窪んだ曲面であることで、上部シート部材50を介し、搭乗者の上腿部及び臀部を保持するよう形成されている。ただし、発泡樹脂成形体30の形状および厚みは、車両用シート部材10が取り付けられる車両本体側の形状によって種々変化し得るものであり、図示する実施形態には限定されない。例えば発泡樹脂成形体30の上面31は概ね平坦な形状であってもよい。
【0060】
発泡樹脂成形体30は、枠状部35の内側において枠状部35をわたすように枠状部35からその内側に延在する延在部36を備えている。本発明では、延在部のなかで、所定の方向に沿って延在する部分を「延在部分」と呼ぶ。延在部は、1つの延在部分のみからなるものであってもよいし、複数の延在部分からなるものであってもよい。本実施形態では、延在部36は、長手方向に延在する第1延在部分36Aと、短手方向に延在する第2延在部分36Bとにより構成されている。第1延在部分36Aと第2延在部分36Bとは、連結部36Cにより連結されている。本実施形態では、延在部36は複数の延在部分36A,36Bから構成されているが、これには限定されず、1つの延在部分のみからなっていてもよい。例えば延在部36が、第1延在部分36Aのみから構成されていてもよいし、第2延在部分36Bのみから構成されていてもよい。延在部36が枠状部35をわたすように延在する複数の延在部分を含む場合、複数の延在部分の各々は任意の方向に沿って設けることができる。
【0061】
枠状部35のうち、延在部36と接続する部分を接続部分35’とし、接続部分35’以外の部分を非接続部分35’’とする。具体的には、枠状部35の接続部分35’は、延在部36の各延在部分36A,36Bの端と接続し支持する。
【0062】
本実施形態では、フレーム材20は、枠状部35の内側の空間を挟んで対向する対向部分22a,22a同士が連続した第2骨組み部22(連続部分)を有している。延在部36のうち第1延在部分36Aが、対向部分22a、22aの間に亘って延在するように形成されている。
【0063】
発泡樹脂成形体30において延在部36は車両用シート部材10の形状を補強し保持する部分である。発泡樹脂成形体30において枠状部35の内側の空間に延在部36を形成することにより、枠状部35と延在部36との間には肉抜き部38aが形成されている。肉抜き部38aは発泡樹脂成形体30を軽量化することや、車両用シートを構成する他の部材(例えば、発泡樹脂成形体30よりも弾性変形しやすいクッション材、コンソールボックスの部材等)を収容することを目的として設けられる。図示する本実施形態では発泡樹脂成形体30に肉抜き部38aは6か所形成されているが、肉抜き部38aの数は限定されない。
【0064】
発泡樹脂成形体30の延在部36は、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むことを特徴とする。図2〜4では、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を濃い色で示し、曲げ最大点応力が小さい発泡樹脂を薄い色で示す。より具体的には、延在部36のうち第1延在部分36Aの延在する延在方向Lは、車両用シート部材10の長手方向に一致しており、第1延在部分36Aの全体が、枠状部35の非接続部分35’’を形成する発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。図示する実施形態のように、延在部36に複数の延在部分が存在する場合は、少なくとも1つの延在部分が、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含んでいればよく、好ましくは、前記少なくとも1つの延在部分の全体が、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂により形成されている。
【0065】
発泡樹脂成形体30の各部分の剛性は、同一形状同一寸法であれば、該部分に含まれる発泡樹脂の曲げ最大点応力が大きいほど高い。本実施形態では、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように発泡樹脂成形体30を成形することにより、延在部36の剛性を選択的に高めることができる。
【0066】
本発明において、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂(以下「所定の発泡樹脂」言う場合がある)を「含む」とは、少なくとも1つの延在部分に十分な剛性が付与される程度に、延在部36が所定の発泡樹脂を含んでいればよく、延在部36は所定の発泡樹脂以外の他の発泡樹脂を更に含んでいてもよい。好ましくは、延在部36のうち少なくとも1つの延在部分が所定の発泡樹脂を含み、より好ましくは、前記少なくとも1つの延在部分が所定の発泡樹脂により形成される。
【0067】
本発明において発泡樹脂の曲げ最大点応力(kPa)は、ASTM D790 手順Aで規定する曲げ試験に準拠して測定する。曲げ試験の条件は具体的には以下の通りである。
試験装置:テンシロン万能試験機UCT−10T((株)オリエンテック製)
試験片:79.2W×380L×19.8T厚み(mm)(スキンなし)
試験数:5
試験速度:8.4mm/min
支点間距離:316.7(mm)
最大たわみ:64mm
先端治具:受け台くさび・・・5R、加圧くさび・・・5R
試験片状態調節・試験環境:温度:23±2℃、相対湿度(RH):50±10%、24時間以上
【0068】
本発明では、発泡樹脂成形体のうち枠状部の非接続部分に含まれる発泡樹脂の、上記条件で測定される曲げ最大点応力は、特に限定されないが、例えば10〜600kPa、典型的には100〜500kPaの範囲である。一方、発泡樹脂成形体のうち延在部の少なくとも一部に含まれる発泡樹脂の、上記条件で測定される曲げ最大点応力は、枠状部の非接続部分に含まれる発泡樹脂よりも高く、例えば枠状部の非接続部分に含まれる発泡樹脂の曲げ最大点応力の1.2〜5倍、典型的には1.5〜4倍である。発泡樹脂成形体のうち延在部の少なくとも一部に含まれる発泡樹脂の、上記条件で測定される曲げ最大点応力の絶対値としては、例えば150〜2,000kPa、典型的には250〜1,200kPaである。発泡樹脂成形体30において、各部分を構成する発泡樹脂における樹脂は、上記の種類の樹脂から選択することができ、同一系統の樹脂により形成されている必要はない。ただし、発泡樹脂成形体30の全体が、同一系統の樹脂の発泡体により構成されている場合には、発泡樹脂成形体30の各部分が強固に連結されるため好ましい。発泡樹脂成形体30の全体が、曲げ最大点応力が異なる以外は、同一の樹脂の発泡体により構成されている場合には、発泡樹脂成形体30の各部分がさらに強固に連結されるため好ましい。
【0069】
発泡樹脂の曲げ最大点応力の制御は、発泡樹脂の発泡倍数を制御することにより行うことが簡便であり好ましい。同じ樹脂材料により構成されている発泡樹脂は、発泡倍数が小さいものほど曲げ最大点応力が大きい。発泡樹脂の比重は発泡倍数が小さいものほど大きい。このため本発明において、発泡樹脂の発泡倍数を小さくすることで曲げ最大点応力を大きくする態様では、延在部が、枠状部の非接続部分が含む発泡樹脂よりも、発泡倍数が小さく曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように発泡樹脂成形体を成形することにより、延在部の剛性を選択的に高めつつ、発泡樹脂成形体の重量の増加を抑えることが可能となる。
【0070】
発泡倍数を制御することにより発泡樹脂の曲げ最大点応力を制御する態様において、発泡倍数の具体的な範囲は特に限定されないが、枠状部35の非接続部分35’’は、例えば21倍〜60倍又は11倍〜60倍の発泡倍数の発泡樹脂を含み、延在部36は、例えば2.5倍〜20倍又は2.5倍〜10倍の発泡倍数の発泡樹脂を含む。発泡倍率のこれらの範囲を満たし、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’に含まれる発泡樹脂の発泡倍数よりも、発泡倍数の小さい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体30を成形することが好ましい。
ここで発泡樹脂成形体30の各部分に含まれる発泡樹脂の発泡倍数は次の手順により求めることができる。
【0071】
発泡樹脂成形体30(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)の各部分(延在部36の延在部分36A,36B、枠状部35の非接続部分35’’、枠状部35の接続部分35’等の、発泡倍数を測定しようとする部分)から切り出した試験片(例:50mm×100mm×10mmの直方体片)の重量(c)と体積(d)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(c)/(d)により発泡成形体の密度(g/cm)を求める。密度の逆数、すなわち式(d)/(c)を、発泡倍数とする。
【0072】
また、延在部36に加えて、延在部36と接続する枠状部35の接続部分35’が、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むことが好ましい。延在部36に複数の延在部分36A,36Bが存在する場合は、延在部分36A,36Bの少なくとも1つ(例えば36A)と、該少なくとも1つの延在部分と接続する枠状部35の接続部分35’とが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも、曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むことが好ましい。
【0073】
ここで仮に、発泡樹脂成形体30のうち枠状部35にフレーム材20の第1及び第2の骨組み部21,22が埋設され、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段で補強しない場合には、車両用シート部材10に入熱された時(または入熱された熱が放熱する時)、発泡樹脂成形体30のうちフレーム材20の第1及び第2の骨組み部21,22が埋設された状態の枠状部35と、枠状部35の内部に延在してフレーム材20が存在しない延在部36とでは、見かけ上の熱膨張量(熱収縮量)が異なる。これにより、枠状部35に囲まれた延在部36には、熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部36の中央が例えば上側に湾曲するように変形し易い。特に、延在部36のうち、長手方向に沿って形成された第1延在部分36Aでは、このような現象が顕著である。
【0074】
本実施形態では、枠状部35の内側に延在する延在部36のうち長手方向に沿って延在する第1延在部分36A、及び、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’を、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂により形成することにより、延在部36を補強する。これにより、延在部36が熱膨張または熱収縮しても、熱応力による延在部36の変形を抑えることができ、車両用シート部材10の寸法精度を確保することができる。本実施形態によれば、延在部36の第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを選択的に補強し、枠状部35の非接続部分35’’は通常の発泡樹脂により構成することができるため、発泡樹脂成形体10の全体での重量増加、コスト増加の幅は小さい。また、本実施形態によれば、延在部36の第1延在部分36Aを厚く形成するなどの補強が必要ないため、デザインや用途が制約される可能性も低い。
【0075】
特に、本実施形態では、対向する一対の対向部分22a,22a同士が連続した構造を有する第2骨組み部22が枠状部35に埋設されており、延在部36の第1延在部分36Aは、対向部分22a、22aの間に亘って延在するように形成されている。この構成では、延在部36の第1延在部分36Aの両側が拘束されるため、仮に、第1延在部分36Aが、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、第1延在部分36Aを含む延在部36は熱膨張および熱収縮により特に変形し易い。本実施形態では、第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように成形することにより、第1延在部分36Aを含む延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態のように、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22を含む部分が、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回している場合は、枠状部35の全周にわたって、熱応力による変形が抑制される。このため、仮に、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、枠状部35の内側に形成される延在部36がさらに変形し易い。このような場合であっても、本実施形態では、上述したように、延在部36を、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように成形することにより、延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0077】
4.車両用シート部材10の製造方法について
以下に図5及び6を参照しながら車両用シート部材10の製造方法について説明する。図5では、製造方法の各工程を、図4に示すI−I線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図により説明する。図6では、製造方法の各工程を、図4に示すII−II線矢視断面図に対応した位置における模式的断面図により説明する。
【0078】
以下に説明する実施形態は、発泡樹脂成形体30の延在部36のうち第1延在部分36Aと、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分とを構成する発泡樹脂を、枠状部35の非接続部分35’’を構成する発泡樹脂よりも発泡倍数を小さくすることにより曲げ最大点応力を大きくする例である。
【0079】
本実施形態の車両用シート部材10の製造方法の概略は次の通りである。図5(A)及び図6(A)に示すように、フレーム材20を成形型7のキャビティ73に位置するように配置し、次に、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子30A,30Bを充填する。次に、図5(B)及び図6(B)に示すように、成形型7内に蒸気を供給することにより予備発泡樹脂粒子30Aを発泡させ、発泡樹脂成形体30を成形する。その後、図5(C)及び図6(C)に示すように、フレーム材20と共に発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型し、放冷等で冷却する。
【0080】
ところで、発泡樹脂成形体30は、通常、成形後、発泡成形時の残熱が放熱する際に、わずかに収縮する性質を有する。一方、金属等の材料により構成されたフレーム材20は、発泡樹脂成形体30の成形の前後で、発泡樹脂成形体30に比べて実質的な寸法変化がない。したがって、延在部36が、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、図7(A)に示すように、発泡樹脂成形体30を、第1型71および第2型72からなる成形型7で成形し、図7(B)に示すように、成形直後から成形型7から発泡樹脂成形体30を脱型して発泡樹脂成形体30が放熱するまでの間、発泡樹脂成形体30は熱収縮する。このとき、フレーム材20が存在しない延在部36の両側は、フレーム材20の第2骨組み部22が存在する枠状部35で拘束されているため、延在部36には熱応力として圧縮応力および引張応力が不均一に作用し、延在部36は中央から上側に湾曲するように変形し易い。
【0081】
このような点に鑑みて、本実施形態では、以下のようにして、車両用シート部材10を製造する。まず、フレーム材20を準備する。フレーム材20の構造および材質は、上述した通りである。次に、車両用シート部材10の平面視において、車両用シート部材10の輪郭Sに沿ってフレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22が配置されるように、フレーム材20を成形型7内に配置する(配置工程)。
成形型7としては、多数の小孔を有する閉鎖成形型を使用することができる。
【0082】
図5(A)及び図6(A)に示すように、成形型7は、第1型71および第2型72からなり、第1型71および第2型72を型締めした際に、成形型7内に、発泡樹脂成形体30に応じたキャビティ73が形成されるように構成されている。
【0083】
次に、図5(A)及び図6(A)に示すように、フレーム材20が内部に配置された第1型71および第2型72を仮型締め(クラッキング)した後に、予備発泡樹脂粒子30A,30Bを充填し、型締めする。
【0084】
このとき、製造しようとする発泡樹脂成形体30のうち曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂が求められる部分に対応する、キャビティ73内の位置には、嵩倍数の小さな予備発泡樹脂粒子30Aを充填し、製造しようとする発泡樹脂成形体30のうち曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂が求められる部分以外の部分に対応する、キャビティ73内の位置には、嵩倍数の大きな予備発泡樹脂粒子30Bを充填する。具体的には、本実施形態では、延在部36のうち第1延在部分36Aと、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分とに対応するキャビティ73内の位置に、予備発泡樹脂粒子30Aを充填し、延在部36の第1延在部分36A及び枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分以外の、延在部36及び枠状部35の部分に対応するキャビティ73内の位置に、嵩倍数が予備発泡樹脂粒子30Aよりも大きい予備発泡樹脂粒子30Bを充填する。
【0085】
次に、図5(B)に示すように、水蒸気等で成形型7のキャビティ73内を加熱して予備発泡樹脂粒子30A,30Bを二次発泡させ、予備発泡樹脂粒子30A,30B間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子30A,30Bを相互に融着させることにより一体化し、発泡樹脂成形体30を成形する(成形工程)。
発泡樹脂成形体30の、予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子間の融着率は特に限定されないが50〜100%、より好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%である。
【0086】
ここで前記融着率は、発泡樹脂成形体30を折り曲げて破断したときに断面上に現れる、予備発泡樹脂粒子に由来する発泡粒子の総数のうち、粒子の内部で破断している前記発泡粒子の数の割合を百分率で表したものである。前記融着率の測定は具体的には次の手順で行うことができる。発泡樹脂成形体の中心に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れる。この後、この切り込み線に沿って発泡樹脂成形体を手で二分割する。その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数える。結果を、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。
前記融着率は、例えば、加熱発泡に際しての熱量を制御する等して制御することができる。
【0087】
これにより、成形型7内において、枠状部35と、延在部36とを含む発泡樹脂成形体30を成形することができる。成形された延在部36は、第1延在部分36Aにおいて、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも発泡倍数が小さく曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。また、本実施形態では、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分も、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも発泡倍数が小さく曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。成形された枠状部35は、フレーム材20のうち第1骨組み部21及び第2骨組み部22を埋設するとともに、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する。成形された延在部36は、第1延在部分36Aが、枠状部35の一対の側方部分35c,35cの間をわたすように延在し、第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の前方部分35aと後方部分35bとの間をわたすように延在する。
【0088】
次に、発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型し、発泡樹脂成形体30とフレーム材20とが一体化された本実施形態の車両用シート部材10を得ることができる。ここで、発泡樹脂成形体30を成形型7から脱型する途中から脱型後に、成形時の残熱が放熱することにより、発泡樹脂成形体30が収縮する。
【0089】
実施形態では、第1延在部分36Aが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように構成されていることで、第1延在部分36Aの剛性が高められる。その結果、第1延在部分36Aを含む延在部36の熱応力による変形を抑えることができる。この結果、寸法精度の高い車両用シート部材10を製造することができる。本実施形態によれば、枠状部35の非接続部分35’’は発泡倍数の大きな発泡樹脂により構成することができるため、発泡樹脂成形体10の全体での重量増加、コスト増加の幅は小さい。また、本実施形態によれば、延在部36の第1延在部分36Aを厚く形成するなどの補強が必要ないため、デザインや用途が制約される可能性も低い。
【0090】
本実施形態では、フレーム材20は、第2骨組み部22を有しており、第2骨組み部22は、枠状部35の内側の空間を挟んで対向する対向部分22a,22a同士が連続した連続部分を有している。発泡樹脂成形体30を成形する際には、対向部分22a,22aの間に亘って延在する第1延在部分36Aを有するように延在部36を成形している。したがって、フレーム材20の第2骨組み部22の対向部分22a,22aが埋設された枠状部35の側方部分35c,35cに、延在部36の第1延在部分36Aの両側が拘束されるため、図7に示すように、第1延在部分36Aが、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、第1延在部分36Aを含む延在部36が、熱収縮により変形し易い。特に、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部21を含む部分を、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回させているため、このような変形は生じ易い。本実施形態では、成形工程時に、延在部36の延在部分の1つである第1延在部分36Aが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体30を成形することにより、第1延在部分36A及びそれを含む延在部36を補強し、上記の変形を抑制することができる。
【0091】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態に係る車両用シート部材10およびその製造方法を図8および図9を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係る車両用シート部材10が第1実施形態に係る車両用シート部材10と相違する点は、延在部36のうち、車両用シート部材10の輪郭Sの長手方向に延在する第1延在部分36Aに加えて、短手方向に延在する第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む点である。第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、延在部36のうち、第1延在部分36Aと、第2延在部分36B,36Bとが、それぞれ、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように発泡樹脂成形体30を成形することにより、延在部36を補強する。これにより、延在部36が熱膨張または熱収縮しても、熱応力による延在部36の変形を抑えることができ、車両用シート部材10の寸法精度を確保することができる。
【0093】
本実施形態では、更に、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分もまた、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体30を成形することにより、延在部36が変形することをより効率的に抑制することができる。
【0094】
本実施形態では、フレーム材20が、第1骨組み部21と、それに対向する、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとが連続した構造を有する。そして、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとが、枠状部35に埋設されており、延在部36の第2延在部分36B,36Bは、それぞれ、第1骨組み部21と、第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bとの間に亘って延在するように形成されている。この構成では、延在部36の第2延在部分36B,36Bの両側がそれぞれ拘束されるため、仮に、延在部36の第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、第2延在部分36B,36Bを含む延在部36は熱膨張および熱収縮により特に変形し易い。本実施形態では、第2延在部分36B,36Bを、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように成形することにより、第2延在部分36B,36Bを含む延在部36の変形をより効果的に抑えることができる。
【0095】
第2実施形態に係る車両用シート部材10の製造は、第1実施形態と同様と同様の手順で行うことができる。第2実施形態もまた、発泡樹脂成形体30の延在部36、及び、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分を構成する発泡樹脂を、枠状部35の非接続部分35’’を構成する発泡樹脂よりも発泡倍数を小さくすることにより曲げ最大点応力を大きくする例である。
まず、車両用シート部材10の平面視において、車両用シート部材10の輪郭Sに沿ってフレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22が配置されるように、フレーム材20を成形型内に配置する(配置工程)。ここで、成形型は第1型および第2型からなり、第1型および第2型を型締めした際に、成形型内に、発泡樹脂成形体30に応じたキャビティが形成されるように構成されている。
【0096】
次に、フレーム材20が内部に配置された第1型および第2型を仮型締め(クラッキング)した後に、樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡樹脂粒子を充填し、型締めする。このとき、延在部36のうち第1延在部分36A及び第2延在部分36B、並びに、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分に対応するキャビティ73内の位置に、比較的嵩倍数の小さい予備発泡樹脂粒子を充填し、延在部36及び枠状部35の他の部分に対応するキャビティ73内の位置に、嵩倍数が比較的大きい予備発泡樹脂粒子を充填する。
【0097】
次に、蒸気等で成形型のキャビティ内を加熱して予備発泡樹脂粒子を二次発泡させ、予備発泡樹脂粒子間の空隙を埋めるとともに、予備発泡樹脂粒子を相互に融着させることにより一体化し、発泡樹脂成形体30を成形する(成形工程)。
【0098】
これにより、成形型内において、枠状部35と延在部36とを含む発泡樹脂成形体30を成形することができる。成形された延在部36は、第1延在部分36A及び第2延在部分36Bにおいて、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。また、本実施形態では、枠状部35の接続部分35’のうち第1延在部分36Aと接続する部分も、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含む。成形された枠状部35は、フレーム材20のうち第1骨組み部21及び第2骨組み部22を埋設するとともに、車両用シート部材10の輪郭Sを形成する。成形された延在部36は、第1延在部分36Aが、枠状部35の一対の側方部分35c,35cの間をわたすように延在し、第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の前方部分35aと後方部分35bとの間をわたすように延在する。
【0099】
次に、発泡樹脂成形体30を成形型から脱型し、発泡樹脂成形体30とフレーム材20とが一体化された本実施形態の車両用シート部材10を得ることができる。ここで、発泡樹脂成形体30を成形型から脱型する途中から脱型後に、成形時の残熱が放熱することにより、発泡樹脂成形体30が収縮する。
【0100】
本実施形態では、延在部36が熱収縮しても、第1延在部分36A及び第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように構成されているため、第1延在部分36A及び第2延在部分36B,36B並びにこれらを含む延在部36の熱応力による変形を抑えることができる。この結果、寸法精度の高い車両用シート部材10を製造することができる。
【0101】
本実施形態では、延在部36の第2延在部分36B,36Bの一方の末端は、フレーム材20の第1骨組み部21が埋設された、枠状部35の前方部分35aに拘束され、延在部36の第2延在部分36B,36Bの他方の末端は、フレーム材20の第2骨組み部22のうち後方縁部sBに沿った部分22bが埋設された、枠状部35の後方部分35bに拘束される。同様に、第1実施形態に関して説明した通り、延在部36の第1延在部分36Aの両側もまた、フレーム材20の第2骨組み部22の対向部分22a,22aが埋設された枠状部35の側方部分35c,35cに拘束される。このため、仮に、第1延在部36A及び第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の非接続部分35’’と同じ曲げ最大点応力の発泡樹脂により形成されている場合であって、延在部36及び/又は枠状部35を他の手段により補強しない場合には、延在部36が、熱収縮により変形し易い。しかも本実施形態では、フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部21を含む部分を、車両用シート部材10の輪郭Sに沿って連続して周回させているため、このような変形が特に生じ易い。本実施形態では、成形工程時に、延在部36の第1延在部36A及び第2延在部分36B,36Bが、枠状部35の非接続部分35’’が含む発泡樹脂よりも曲げ最大点応力が大きい発泡樹脂を含むように、発泡樹脂成形体30を成形することにより、第1延在部分36A及びそれを含む延在部36を補強し、上記の変形を抑制する。
【0102】
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【実施例】
【0103】
[実施例1]
図1〜6に示す第1実施形態の車両用シート部材10を型内発泡成形により製造した。
使用した成形型7は、製造される車両用シート部材10の発泡樹脂成形体30の部分の寸法が、長手方向の幅が1260mm、短手方向の幅が550mm、厚さが160mmとなるように形成されている。
フレーム材20の第1骨組み部21及び第2骨組み部22は直径4.5mmの鉄線(SWM−B)を用いた。
発泡樹脂成形体30は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂により成形した。
発泡樹脂成形体30のうち、延在部36の第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを、発泡倍率が20倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が592kPaである発泡樹脂により成形した。
一方、発泡樹脂成形体30のうち、延在部36の第1延在部分36A、及び、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’以外の部分(枠状部35の非接続部分36’’を含む)を、発泡倍率が30倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が354kPaである発泡樹脂により成形した。
車両用シート部材10の製造は、第1実施形態に関して本明細書中に記載の手順で行った。
成形工程後に成形型7を脱型し、室温まで十分に放冷した。
放冷後、発泡樹脂成形体30の延在部36の第1延在部分36Aは、その中央部分が上側に湾曲して突出した(後述する比較例1の場合を図7(B)に示す)。第1延在部分36Aが全く湾曲しないと仮定したときの第1延在部分36Aの中央部分の位置から、どれだけ突出したか(最大変形量)を測定したところ、最大変形量は6.0mmであった。
車両用シート部材10の許容される最大変形量は6mmである。実施例1の車両用シート部材10は最大変形量(6.0mm)が許容の範囲内であった。
【0104】
[実施例2]
図1〜6に示す第1実施形態の車両用シート部材1を型内発泡成形により製造した。
発泡樹脂成形体30のうち、延在部36の第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを、発泡倍率が15倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が774kPaである発泡樹脂により成形した以外は、実施例1と同様の条件により実施例2の車両用シート部材1を製造した。
実施例2の車両用シート部材1の最大変形量は5.1mmであり、許容される範囲内であった。
【0105】
[実施例3]
図1〜6に示す第1実施形態の車両用シート部材1を型内発泡成形により製造した。
発泡樹脂成形体30のうち、延在部36の第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを、発泡倍率が10倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が873kPaである発泡樹脂により成形した以外は、実施例1と同様の条件により実施例3の車両用シート部材1を製造した。
実施例3の車両用シート部材1の最大変形量は3.9mmであり、許容される範囲内であった。
【0106】
[実施例4]
図1〜6に示す第1実施形態の車両用シート部材1を型内発泡成形により製造した。
発泡樹脂成形体30のうち、延在部36の第1延在部分36Aと、枠状部35のうち第1延在部分36Aと接続する接続部分35’とを、発泡倍率が5倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が1008kPaである発泡樹脂により成形した以外は、実施例1と同様の条件により実施例4の車両用シート部材1を製造した。
実施例4の車両用シート部材1の最大変形量は2.8mmであり、許容される範囲内であった。
【0107】
[比較例1]
発泡樹脂成形体30の全体を、発泡倍率が30倍であり、上記の条件で測定した曲げ最大点応力が354kPaである発泡樹脂により成形した以外は、実施例1と同様の条件により比較例1の車両用シート部材を製造した。
比較例1の車両用シート部材の最大変形量は8.5mmであり、許容される最大変形量である6mmを大きく上回った。
【符号の説明】
【0108】
1:車両用シート、7:成形型、10:車両用シート部材、20:フレーム材、21:第1骨組み部、22:第2骨組み部、30:発泡樹脂成形体、35:枠状部、36:延在部、36A:第1延在部分、36B:第2延在部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9