特許第6738266号(P6738266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738266
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/14 20090101AFI20200730BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20200730BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20200730BHJP
   H04W 84/12 20090101ALN20200730BHJP
【FI】
   H04W16/14
   H04W72/04 132
   H04W88/08
   !H04W84/12
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-233112(P2016-233112)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-93289(P2018-93289A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西川 夕貴
【審査官】 阿部 圭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268380(JP,A)
【文献】 特開2011−146945(JP,A)
【文献】 特開2009−100210(JP,A)
【文献】 特開2003−259429(JP,A)
【文献】 特開2010−011397(JP,A)
【文献】 特開2015−144417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線親局を有し、各々の無線親局が相互に無線通信をおこなう無線通信システムであって、
前記無線親局は、少なくとも二つの無線インターフェースを有し、
前記無線親局は、それぞれの無線インターフェースの周波数チャネルを変更する手段を有し、
前記無線親局は、無線通信システム内の他の無線親局、無線端末に対して周波数チャネルの変更を指示する手段を有し、
前記無線インターフェースの第一の無線インターフェースは、第一の周波数チャネルで通信し、
前記無線インターフェースの第二の無線インターフェースは、第二の周波数チャネルで通信し、
前記第一の周波数チャネルと前記第二の周波数チャネルは、異なる周波数で通信するように設定され、
前記無線通信システムの第一の無線親局と第二の無線親局は、第一の周波数チャネルと第二の周波数チャネルにより通信し、
前記第一の無線親局の前記第一の無線インターフェースで周波数チャネルを変更する要因が生じたときに、
前記第一の無線親局は、第一の無線インターフェースの周波数チャネルを、前記第一の周波数チャネルの周波数、第二の周波数チャネルの周波数とは異なる周波数である第三の周波数チャネルに変更し、かつ、
前記第一の無線親局は、前記第二の無線親局に対して、前記第一の周波数チャネルを前記第三の周波数チャネル周波数切替をする指示をし、
前記第二の無線親局は、前記第一の無線周波数チャネルにより通信している他の無線親局、無線端末に対して、前記第一の周波数を前記第二の周波数へ周波数切替をする指示をすることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第一の無線インターフェースで周波数チャネルを変更する要因は、前記無線親局が、周波数チャネルで、レーダーを検出したとき、ユーザコマンドによる周波数変更指示をうけたとき、電波干渉が発生したときのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線親局は、周波数チャネルの変更を指示した他の無線親局、無線端末の全てから、その周波数チャネルの変更の指示のACKを受取ってから、周波数変更の処理を開始することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線親局に優先順位が定められ、前記無線親局は、複数の無線親局から周波数チャネルの変更の指示を受けたときに、優先順位の高い無線親局からの周波数チャネルの変更の指示に従って、周波数チャネルの変更をおこなうことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線親局の優先順位は、周波数チャネルの変更の指示の早いものを高くすること、あるいは周波数チャネルを変更する要因の生じた時刻の早いものを高くすることを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線親局は、第一の無線親局から周波数チャネルの変更の指示を受け、その後に、第二の無線親局から周波数チャネルの変更の指示を受けたときに、前記第二の周波数チャネルの変更のACKに、前記第一の無線親局から周波数チャネルの変更指示の情報を含めて、送信することを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線親局は、ビーコンパケットに、周波数チャネルの変更情報を含めて、発信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線親局は、前記ビーコンパケットを複数発信した後に、周波数変更の処理を開始することを特徴とする請求項記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、5GHz帯の無線LAN(Local Area Network)で複数のアクセスポイントと無線端末がマルチホップ構成で通信する場合に、通信の途絶を防止する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発展により、無線LANを介したインターネット通信が、家庭内のみならず、市街地、空港、駅などの公共の場においても普及している。また、工場内の機器間通信や、ドローンの制御、建設機械にも無線LANが利用され、産業用途においても活用事例が増加している。このような利用者の増加に伴い、従来から無線LAN向けの周波数帯域として利用されている2.4GHz帯の帯域が逼迫してきており、5GHz帯を利用するケースが増えてきている。5GHz帯の利用にあたっては、日本では、5.2GHz帯(W52:5150−5250MHz)、5.3GHz帯(W53:5250−5350)、5.6GHz帯(W56:5470−5725MHz)が利用可能となっている。
【0003】
5GHz帯を利用するにあたっては、W53とW56の帯域では、既存無線システムとの共存が必要となる。既存無線システムとしては、例えば、無線標定業務(位置決定や位置情報の送受信に関する業務)、地球探査衛星および宇宙研究業務等のレーダー(以下、単に「レーダー」と呼ぶ)が挙げられ、これらレーダーの方に通信の優先権があることから、無線LANがレーダー電波を検出した際は、その通信帯域を譲る必要がある。このため、W53とW56の帯域では、レーダーとの共存のためにアクセスポイント(以下、単に「AP」とも記述する)や無線端末(以下、単に「STA」とも記述する)などの無線LAN通信装置に対して、レーダーを回避するための動的電波周波数選択機能(DFS:Dynamic Frequency Selection)を備えることが義務付けられている。
【0004】
DFSが必要な帯域におけるアクセスポイントの動作について説明する。先ず、無線LANのアクセスポイントは、電波の送信に先立って、送信チャネルにおいてレーダーの有無を60秒間確認(利用チャネル確認、CAC:Channel Availability Check)し、レーダーが検出されなければ、当該チャネルを用いた運用ができる。また、無線LAN通信装置は、運用中のチャネルにおいてもレーダー送信電波の有無を監視(運用中チャネル監視、ISM:In-Service Monitoring)し続けなければならない。また、利用可能チャネル確認(CAC)または運用中チャネル監視(ISM)によりレーダーが送信する電波を検出した場合、無線LAN通信装置は、当該チャネルにおける電波の送信を、当該電波を検出後30分間(Non-Occupancy Period)は禁止しなければならない。
【0005】
また、運用チャネル変更時間の条件もあり、無線LAN通信装置は、運用中チャネル監視(ISM)によりレーダーが送信する電波を検出した場合、電波の送信を10秒以内に停止しなければならず、無線設備の送信時間の合計は、例えば、日本や米国では、260ms以下、欧州では1s以下と規定されている。このため、親局に相当するアクセスポイントでは、運用中のチャネルでレーダーの電波を検出した場合、通信チャネルを変更する。このときにおいても、アクセスポイントは、通信チャネル変更後、通信を再開する前に60秒間CACをおこない、レーダーの有無を確認する必要がある。このため、レーダーの電波を検出した場合、アクセスポイントと無線端末の通信は、少なくとも60秒間中断される。
【0006】
このような問題を解決する技術として、特許文献1がある。特許文献1に記載の無線通信装置は、アクセスポイントに通信用の系統とは別にモニタ用系統を設けておき、アクセスポイントが各種レーダーの電波を検出したとき、通信のチャネルをそれまでモニタしていたチャネルに切替えるようにし、レーダーの電波を検出した場合であっても、予備の系統により、端末との無線通信が切断されるのを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−278825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている無線通信装置では、二つの無線系統を有するにも関わらず、一つはモニタ用であり、端末との無線通信としては、一つの無線系統しか通信に利用することができないという問題点がある。また、複数のアクセスポイントを中継局として利用する場合、各アクセスポイントがそれぞれ異なる通信チャネルを予備チャネルとして準備すると、通信チャネルの切替えが生じた際にアクセスポイント間の通信が途切れてしまうという問題も発生する。さらに、複数のアクセスポイントで同時にレーダーが検出された場合、通信を途切れさせないためには各アクセスポイント間でチャネルを切替えるタイミングの調整が必要になるという問題もある。
【0009】
本発明の目的は、二つの以上の無線系統を有する無線LANアクセスポイントを複数中継局として用いた通信システムにおいて、各無線系統での同時通信を可能にしつつ、同時に複数のアクセスポイントでレーダーが検出された場合でも無線通信が途切れない無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明の無線通信システムの構成は、複数の無線親局を有し、各々の無線親局が相互に無線通信をおこなう無線通信システムであって、無線親局は、少なくとも二つの無線インターフェースを有し、無線親局は、それぞれの無線インターフェースの周波数チャネルを変更する手段を有するものである。無線インターフェースの第一の無線インターフェースは、第一の周波数チャネルで通信し、無線インターフェースの第二の無線インターフェースは、第二の周波数チャネルで通信し、第一の周波数チャネルと第二の周波数チャネルは、異なる周波数で通信するように設定されとおり、無線通信システムの無線親局は、第一の周波数チャネルと第二の周波数チャネルのいずれかにより通信する。
【0011】
また、好ましくは、無線親局が、無線通信システム内の他の無線親局、無線端末に対して周波数チャネルの変更を指示する手段を有するものである。
【0012】
さらに、好ましくは、無線親局は、周波数チャネルで、レーダーを検出したとき、ユーザコマンドによる周波数変更指示をうけたとき、電波干渉が発生したとき、該当するそれぞれの無線インターフェースの周波数チャネルを変更するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二つの以上の無線系統を有する無線LANアクセスポイントを複数中継局として用いた通信システムにおいて、各無線系統での同時通信を可能にしつつ、同時に複数のアクセスポイントでレーダーが検出された場合でも無線通信が途切れない無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無線通信システムの構成を示す図である。
図2】アクセスポイントの機能構成図である。
図3】レーダーチャネル管理テーブルの一例を示す図である。
図4】チャネル状態の状態遷移図である。
図5A】アクセスポイント間の接続処理の様子を示すダイアグラムである(その一)。
図5B】アクセスポイント間の接続処理の様子を示すダイアグラムである(その二)。
図6】アクセスポイントの接続処理の手順を示すフローチャートである。
図7】アクセスポイントと無線端末間の接続処理を示すダイアグラムである。
図8】第一の実施形態におけるアクセスポイントがレーダーを検出したときに、そのチャネルに接続されているアクセスポイントおよび無線端末の接続チャネルを切り替える処理を示すダイアグラムである。
図9図8に示した各状態におけるアクセスポイントおよび無線端末の接続状況を示した図である。
図10A】アクセスポイントからアクセスポイントに送られるチャネル切替指示パケットのデータ構造を示した図である。
図10B】アクセスポイントから無線端末に送られるチャネル切替指示パケットのデータ構造を示した図である。
図11】アクセスポイントにおける周波数切替をおこなうときの処理を示すフローチャートである。
図12】第二の実施形態におけるアクセスポイントがレーダーを検出したときに、そのチャネルに接続されているアクセスポイントおよび無線端末の接続チャネルを切り替える処理を示すダイアグラムである。
図13図12に示した各状態におけるアクセスポイントおよび無線端末の接続状況を示した図である。
図14】第三の実施形態におけるアクセスポイントがレーダーを検出したときに、そのチャネルに接続されているアクセスポイントおよび無線端末の接続チャネルを切り替える処理を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図14を用いて説明する。
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の第一の実施形態を、図1ないし図11を用いて説明する。
【0017】
先ず、図1および図2を用いて無線通信システムの構成を説明する。
図1に示される無線通信システムでは、3台のアクセスポイント(無線親局)(AP)を中継局として、2台の無線端末(STA)が接続されている。STA102−1は、AP101−1、AP101−2、AP103−3を介してSTA102−2と通信可能な状態となっている。アクセスポイント間、無線端末とアクセスポイントは、例えば、広く普及している無線LAN関連規格のIEEE802.11の規格にしたがって動作する。特に、本発明は、5GHz帯をサポートするIEEE802.11a/n/acに有効である。
【0018】
各アクセスポイントは二つ以上のRF(Radio Frequency)部を有し、各RF部はそれぞれ別々の周波数チャネルで動作する。また、各アクセスポイントは、共通の周波数チャネルを利用して、他のアクセスポイントや無線端末と通信する。アクセスポイント間の接続や周波数チャネルの利用方法については後に詳述する。
【0019】
本発明は、無線端末がアクセスポイントを中継局として別の無線端末、またはアクセスポイントと通信するようなマルチホップ構成であれば、ネットワーク構成は図1に示す構成に限らず適用可能である。例えば、中継局となるアクセスポイントの台数や、各APに接続される無線端末の台数を自由に変更した構成でも、実施することができる。また、アクセスポイントは、インターネットなどの無線LAN以外の別種のネットワークに接続されているものであってもよい。
【0020】
アクセスポイント(AP)101の機能構成を示すと、図2のようになる。AP101は、情報処理装置201と、情報処理装置201と接続される二つのRF部202−1、202−2とから構成され、RF部202−1、202−2にはそれぞれアンテナ203−1、203−2が接続されている。RF部202−1とRF部202−2は、それぞれ異なる周波数チャネルで動作し、アンテナ203−1およびアンテナ203−2を介して他のAPやSTAと通信をおこなう。
【0021】
情報処理装置201は、機能部として、デバイスI/F(Interface)部206と、制御部205と、データ保持部204とを有する。デバイスI/F部206は、RF部202を制御するための機能部である。制御部205は、各RF部202の通信を制御する機能部である。データ保持部204は、通信状態を管理するためのテーブルを保持する。
【0022】
デバイスI/F部206には、RF部202−1を制御するための無線LANドライバ2061−1とRF部202−2を制御するための無線LANドライバ2061−2があり、通常、ドライバ2061−1と2061−2は、それぞれ異なるメモリ領域(論理アドレスが別空間)で動作する。このため、例えば、RF部202−1に無線端末(STA)が接続された場合、無線LANドライバ2061−1に無線端末のアソシエーション情報(無線装置間の接続開始手続きに関連する情報)が登録されるが、無線LANドライバ2061−2には情報が登録されない。このため、運用中チャネル監視(ISM)により、RF部202−1にレーダー信号が検出された場合、RF部を切替えて通信しようとすると再アソシエーションの発生に伴う通信途切れが生じてしまう。そこで、例えば、RF部202−2をレーダー電波の監視専用として利用し、RF部202−2で利用可能チャネル確認(CAC)を実施しておき、RF部202−1がISMによってレーダー電波を検出した際、RF部202−2でCAC済みのチャネルに移行して通信を継続する方法が考えられる。しかしながら、この方法では二つのRF部を同時に利用することができない。
【0023】
そこで、本実施形態では、AP101内にアソシエーション管理テーブル2041を設け、通信制御部2051が無線LANドライバ2061の認証情報とアソシエーション情報を定期的に監視し、変更があった場合にアソシエーション管理テーブル2041に読み出すようにする。また、通信制御部2051は、各無線LANドライバ2061が共通のアソシエーション情報を持つように、それぞれの無線LANドライバ2061にアソシエーション管理テーブル2041に記載された認証情報とアソシエーション情報を書き戻す処理をおこなう。これにより、各RF部202が同じアソシエーション情報を参照できることから、RF部の切り替えによる再アソシエーションが発生しない。このため、通常運用時は、全てのRF部202を同時に利用し、レーダー信号検出時にはRF部を変更(異なる通信チャネルに移行)して通信を継続することで、途切れの無い通信が可能となる。本構成では、レーダー検出時に一時的に通信帯域が減少するものの、通常運用時においては、RF部の数だけシステム全体のスループットを向上させることができる。
【0024】
レーダー監視部2052は、全ての無線LANドライバ2061から各RF部が利用するチャネル状態を取得し、変化があった場合にレーダーチャネル管理テーブル2042にその情報を記録する。なお、チャネル状態の詳細とその推移について、次に、詳細に説明する。
【0025】
アクセスポイント(AP)101における情報処理装置の各機能は、各機能をOS上で動作するプログラムとして実装し、メモリに記憶されて汎用のCPUで実行されるようなソフトウェア的な実装でもよいし、各機能をFPGA(field-programmable gate array)のようなハードウェアロジックで実現してもよい。
【0026】
次に、図3および図4を用いてレーダーチャネル管理テーブルとチャネル状態について説明する。
図3に示されるように、レーダーチャネル管理テーブル2042は、チャネルごとに、そのチャネルの状態を管理するテーブルであり、チャネル番号2042a、チャネル状態2042bからなる。レーダーチャネル管理テーブル2042では、チャネル番号2042aに格納されたチャネル番号のチャネルが、チャネル状態2042bで示されるチャネル状態であることを示している。
【0027】
チャネル状態と発生するイベントの関係は、図4に示されるようになる。図4の中で、チャネル状態は、楕円の中に(状態を表す数値:状態の説明)として示し、矢印は、状態の遷移に関るイベントを示している。
【0028】
先ず、レーダーチャネル管理テーブル2042にはチャネル状態の初期値として、チャネルの利用確認が取れていないことを示す「0」が設定される。レーダー信号が検出されたチャネルでは、レーダー監視部2052が、レーダーチャネル管理テーブル2042の情報を、レーダー電波を検出したことを示す値「1」へと更新し、その後、レーダー電波が検出された直近の日時から第一の時間(30分間(NOP:Non-Occupancy Period))が経過した場合、初期値「0」へと値を変更する。また、チャネル状態が「0」のチャネルでは利用可能チャネル確認(CAC)が開始され、第二の時間(60秒間(CAC期間))が経過した場合に利用確認が取れたことを示す値「2」へと更新する。
【0029】
「2」の利用可能状態に遷移すると、運用中チャネル監視(ISM)が開始され、レーダー電波を検出すると、「1」のレーダー信号検出に推移する。レーダー電波を検出せずに、チャネル変更の指示がされた場合、あるいは、電波干渉がおこったときには、その変更される元のチャネルのチャネル状態の値、あるいは、電波干渉か起こったチャネル状態を「2」から「0」に変更する。
【0030】
またレーダーチャネル管理テーブル2042の情報はRF部が新しいチャネルを選択する際にも参照される。例えば、RF部202−1でチャネル変更をおこなう場合、管理テーブル2042でチャネル状態が「0」となっているチャネルを選択する。それ以外の、例えばチャネル状態が「1」となっているチャネルは最大30分の間は利用不可能であり、またチャネル状態が「2」となっているチャネルは他のRF部が利用中であるため、新しいチャネルはチャネル状態が「0」のチャネルの中から選択される。
【0031】
次に、図5Aないし図6を用いてアクセスポイント間の接続処理について説明する。
図5Aに示すダイアグラムは、アクセスポイント間の接続処理の第一のタイプの接続の処理の仕方を示したものである。DFSが必要な帯域において、アクセスポイントはチャネル利用前にレーダーの有無を確認するため、CACが必要となる。各APは二つのRF部(以下、図2におけるRF部1とRF部2を、「RF1」、「RF2」と略記する)を有しており、例えば、AP1の電源が投入されたとき、AP1は、周囲のAPから送信されるビーコン(APが自らの存在を知らしめるために発するパケット、ビーコンパケット)があるか否かを探査し、周囲に接続可能なAPが検出されない場合、AP1が自身でRF1、RF2のチャネルを設定し、CACを開始する。図Eの例では、RF1にチャネル108、RF2にチャネル124が設定されている。それぞれのチャネルで60秒のCACがおこなわれ、レーダーが検出されなければ、各RF部は電波を送信可能な状態となり、AP1は、RF1、RF2からビーコンの送信を開始する。また、チャネルの利用が可能と判断された後のレーダー監視は運用中チャネル監視(ISM)によりおこなわれる。
【0032】
次に、AP2の電源が投入されると、AP2も同様に周囲のAPからビーコンが送信されていないか探査をおこなう。チャネル108とチャネル124でAP1のビーコンが検出されると、AP2は、自身のRF部のチャネルがAP1のチャネルと同じになるよう、RF部のチャネルを108と124に設定する。図5Aでは、AP2のRF1がチャネル108、RF2がチャネル124に設定されているが、チャネルの設定は、逆になってもよい。AP2の各RF部でチャネルが設定されると、それぞれのRF部でCACが実施され、レーダーが検出されなければ電波を送信可能な状態となり、ビーコンの送信を開始する。また、AP2は、電波が送信可能になった段階で、AP1に対して、無線LANの規格(代表的なものは、802.11規格)に沿った認証要求、およびアソシエーション要求を送信することにより、AP1とAP2の接続が確立される。
【0033】
続いて、AP3の電源が投入されると、AP3はAP2のビーコンを検出して通信チャネルが同じになるよう、RF1、RF2の通信チャネルをそれぞれ108、124に設定する。AP3の各RF部でも同様にCACが実施され、60秒後、レーダーが検出されなければ電波を送信可能な状態となる。AP3もAP2と同様にAP2に対して認証要求、およびアソシエーション要求を送信し、AP2との接続を確立する。これを繰り返すことにより全てのアクセスポイントを共通がチャネルで接続される。
【0034】
いずれかのアクセスポイントにおいて、あるRF部のCAC中にレーダーが検出された場合、当該RF部はチャネルを変更する必要がある。この場合、30分の間は片方のRF部だけを用いて接続を保ち、30分後に再度CACをおこなって各アクセスポイントのチャネルの共通化を図ってもよい。
【0035】
また、アクセスポイント間の接続処理の仕方の今一つの例を示すと、図5Bに示されるようになる。図5Bに示した例では、各アクセスポイントに予めチャネルを設定した上でアクセスポイントを起動する。各アクセスポイントでCACが終了すると、周囲のアクセスポイントと認証、アソシエーション処理をおこない、リンクを確立する。予め動作するチャネルを設定しておくことにより、各アクセスポイントの起動順によらず共通のチャネルでリンクを確立できる。
【0036】
アクセスポイントが起動して通信可能になるまでの手順を示すと、図6のようになる。先ず、AP起動後、チャネルが事前に設定されていない場合は(S501:N)、周囲にAPが確認できるか否かを判定し、周囲にAPが確認される場合には(S502:Y)、周囲のAPに合わせてチャネルを設定し(S504)、周囲にAPが確認されない場合には(S502:N)、レーダーチャネル管理テーブルを参照して利用可能な任意のチャネルを設定する(S503)。
【0037】
また、S501の判定で、チャネルが事前に設定されている場合には(S501:Y)、そのチャネルをRF部に設定する。
【0038】
S501、S503、S504のいずれの場合であっても、各RF部は、設定されたチャネルでCACを実施する(S505)。そして、CAC中にレーダー電波が検出された場合は(S506:Y)、S503に戻り、新たに別の周波数チャネルを設定し、レーダー電波が検出されなければ(S506:N)、ビーコンの送信を開始するとともに周囲のAP、STAとの接続処理をおこなう(S507)。
【0039】
次に、図7を用いてアクセスポイントと無線端末間の接続処理について説明する。
図7に示すダイアグラムは、アクセスポイントと無線端末の接続処理の様子を示したものである。STA1の電源を投入すると、STA1は周囲のAPを探索する。STA1はAP1を見つけると、AP1に対して認証要求、アソシエーション要求を送信し、AP1とのリンクを確立する。このとき、STA1がAP1のどのRF部に接続されるかは、STA1がどのチャネルでAP1を見つけたかに依存する。図7に示した例では、STA1は、AP1のRF1(Ch.108)との接続を確立しているが、RF2(Ch.124)であってもよい。STA2が起動した場合も同様である。STA2は周囲のAPを探索し、AP3を見つけると認証要求、アソシエーション要求を送信してリンクを確立する。STA1−AP1間の接続とSTA2−AP3間の接続処理は独立の事象であり、同時に発生してもよい。また、図7に示した例では、アクセスポイント間、すなわち、AP1〜3のリンクが確立された後の図を示しているが、AP1〜AP3がリンクしていない状態であっても、STAと各APのリンク確立は実施可能である。
【0040】
次に、図8ないし図11を用いてアクセスポイントがレーダーを検出したときの動作について説明する。
図8に示した例は、図1に示す状態で各AP、STAが接続されているときに、AP2でレーダーが検出された際の動作を示している。便宜上、状態をSTATE701〜STATE705に区切って説明するが、これは説明のために設けた区切りであって、パケットの送信時間やNAV(Network Allocation Vector:送信禁止期間)の長さ等を制約するものではない。また、図9は、STATE701〜STATE705の状態の終了時における各AP、STAの接続状態を示したものであり、矢印はデータ通信が可能であることを示している。
【0041】
図8において、初期状態(STATE701)では、STA1とAP1のRF1が第一のチャネル(Ch.108)でアソシエーションされた状態になっている。また、AP1のRF1とAP2のRF1が第一のチャネル(Ch.108)、AP1のRF2とAP2のRF2が第二のチャネル(Ch.124)で接続され、AP2のRF1とAP3のRF1が第一のチャネル(Ch.108)、AP2のRF2とAP3のRF2が第二のチャネル(Ch.124)でそれぞれ接続されている。
【0042】
ここで、AP2のRF1(Ch.108)でレーダーが検出されたとする。このとき、レーダーを検出したAP2のRF1はレーダー検出後、規格に従って少なくとも10秒以内に電波の送信を停止しなければならない。このため、STATE702以降、AP2のRF1は、自身にアソシエーションされている無線端末やアクセスポイントに対して順次チャネル変更を指示するように動作する。
【0043】
STATE702において、AP2はチャネル変更指示を送信する。図8の例では、AP2のRF1がAP3のRF1に対してRTS(Request to Send:送信許可の要求)パケットを送信し、AP3がAP2に対してCTS(Clear to Send:送信許可)を送信している。このとき、AP2のRF1が送信したRTSをAP1のRF1が受信し、AP3が送信したCTSをSTA2が受信することになるが、自分宛てでないRTS、CTSを受信した無線局は一定期間、データの送信を停止する(NAV)。これは、他のAPが自分宛てのRTS、CTSが送信して、無線通信の状況が変化されることが予期されることから、むだな通信をおこなわないようにし、通信の輻輳を避けるためである。
【0044】
AP2は、AP3からのCTSを受信した後、AP2からAP3に対してチャネル切替指示パケットを送信する。チャネル切替指示パケットによる切替え指示を受取ったAP3は、送信設定を変更し、AP3からAP2にパケットを送信する際の送信インターフェースをRF2(Ch.124)のみとする。また、切替指示には、(規格に従って、RF1をレーダー検出から少なくとも10秒以内に)第三のチャネル(Ch.100)に変更するという情報が含まれる。切替指示を受けるということは、レーダーを検知したRF経由の通信路を第二のチャネル(Ch.124)で動作するRF2に一時的に切替えるということも意味する。アクセスポイントからアクセスポイントに送られるチャネル切替指示パケットは、図10Aに示されるようになる。チャネル切替指示パケット500は、パケットヘッダ500a、コマンド種別500b、切替原因500c、切替元チャネル番号500d、切替先チャネル番号500eの各格納領域を有する。パケットヘッダ500aには、無線規格に従ったヘッダ情報が格納される。コマンド種別500bには、パケットのコマンド種別(切替指示)が格納される。切替原因500cには、チャネル切替指示の原因(レーダー検出、ユーザコマンド、電波干渉)を示すコードが格納される。この例では、チャネル切替指示の原因は、レーダー検出である。切替元チャネル番号500dには、チャネルを切替えようとする元のチャネル番号が格納される。この例では、Ch.108である。切替先チャネル番号500eには、チャネルの切替えようとする切替先のチャネル番号が格納される。この例では、Ch.100である。
【0045】
また、各APでレーダーの情報を共有するため、チャネル切替指示パケット500には、自身のレーダーチャネル管理テーブル2042の情報が含まれてもよい。
【0046】
チャネル変更指示を受け取ったAP3は、AP2に対して第一のチャネル(Ch.108)でACK(ACKnowledgement)を返し、AP2に対する通信インターフェースとしてRF2のみを利用するよう通信設定を変更する。また、ACKを受信したAP2は、AP3に対して通信するためのインターフェースとして、第二のチャネル(CH.124)で動作するRF2を利用するよう設定を変更する。両者が通信設定を変更することにより、図9のSTATE702の状態図に示したように、AP2とAP3の間は第二のチャネル(Ch.124)で動作するそれぞれのRF2によって接続され、通信経路が切替わり、パケットのロスも通信の途絶もない。一方で、AP2のRF1はAP1のRF1と接続されており、すぐに第三のチャネル(Ch.100)に変更することはできない。また、AP3のRF1もSTA2とも接続されているため、AP3は、すぐにRF1のチャネル(Ch.108)を指示された第三のチャネル(Ch.100)に変更することができない。
【0047】
そこで、STATE703では、AP2のRF1(Ch.108)からAP1のRF1(Ch.108)に対してチャネル変更指示が送られる。これにより、AP2とAP3の関係と同様に、AP1とAP2もそれぞれRF2による通信に切替わる(図9:STATE703)。これにより、AP2のRF1に接続されている全ての無線機がRF2側に切替わったことから、第一のチャネル(Ch.108)で動作していたRF1を第三のチャネル(Ch.100)に変更することが可能な状態となる。
【0048】
STATE704では、AP2がRF1のチャネルを第三のチャネル(CH.100)に切替えている。AP2のRF1はチャネル切替え後、チャネル利用前に60秒間の利用可能チャネル確認(CAC)を開始する。CAC実施中は、RF1(Ch.100)を通信に利用することはできず、RF2のみで通信を継続する。
【0049】
また、AP1のRF1にはSTA1が接続されており、STA1に対してチャネル切替指示パケットを送信している。STA1は、切替指示パケットを受信することにより、通信チャネルが第二のチャネル(Ch.124)に切替わることを知ることができる。アクセスポイントから無線端末に送られるチャネル切替指示パケットは、図10Bに示されるようになる。チャネル切替指示パケット510は、パケットヘッダ510a、コマンド種別510b、切替先チャネル番号510cの各格納領域を有する。パケットヘッダ510aには、無線規格に従ったヘッダ情報が格納される。コマンド種別510bには、パケットのコマンド種別(切替指示)が格納される。切替先チャネル番号510cには、チャネルの切替えようとする切替先のチャネル番号が格納される。この例では、Ch.124である。
【0050】
STA1は、切替指示受信後、AP1のRF1に対してCh.108でACKを返信する。
【0051】
AP3も同様にRF1にSTA2が接続されており、STA2に対してチャネル切替指示パケットを送信する。STA2は、チャネル切替指示パケットを受信することにより、通信チャネルが第二のチャネル(Ch.124)に切替わることを知ることができる。STA2は、切替指示パケット受信後、AP3のRF1に対してCh.108でACKを返信する。
【0052】
STATE705において、STA側ではCACが不要なことから、STA1、STA2のRF部は即座に第二のチャネル(Ch.124)に切替わり、AP1のRF1、AP3のRF1は第三のチャネル(Ch.100)に変更され、AP2のRF1はCACを継続している状態となる。これによってシステム全体の通信チャネルが第二のチャネル(Ch.124)に変更され、さらにレーダーが検出された第一のチャネル(Ch.108)は第三のチャネル(Ch.100)に変更される。各APのRF1でCACが終了すると、各APのRF1同士が認証、アソシエーションされ、第二のチャネル(Ch.124)と第三のチャネル(Ch.100)で接続されたシステムが形成される。これにより、周波数チャネルは変更されるものの、二つのRF部202が同時に動作しているというSTATE701の状態が復元される。
【0053】
次に、図11を用いてアクセスポイントにおける周波数チャネルの切替えの処理について説明する。
図11では、各要因ごとの処理をまとめて示している。先ず、他のアクセスポイントからチャネル切替指示パケットを受信したときには、そのチャネル切替指示に対して、ACKを応答する(S601)。
【0054】
次に、そのアクセスポイントは、ACK送信済みの装置(アクセスポイント、無線端末)に対して、通信インターフェースを切替える(S602)。
【0055】
そして、自機に接続されている他の装置に対して、チャネル切替指示パケットを送信する(S603)。
【0056】
次に、そのアクセスポイントは、チャネル切替指示パケットを送った装置からACKを受信し(S604)、ACK受信済みの装置に対して、通信インターフェースを切替える(S605)。これをチャネル切替指示パケットを送信した全装置からACK応答があるまで繰り返し、全装置からACK応答があったときには(S606:Y)、S600のステップの他のアクセスポイントからチャネル切替指示パケットの指示にしたがい、通信のチャネルを変更する(S607)。
【0057】
そのアクセスポイントがレーダー検出をしたとき、チャネル変更のユーザコマンドを受信したとき、あるいは、閾値以上の電波干渉を検出したときには、図11に示されるように、S603〜S606の処理が実行される。
【0058】
以上説明してきたように、本実施形態では、二つの以上の無線系統を有する無線LANアクセスポイントを複数中継局として用いた通信システムにおいて、各無線系統での同時通信を可能にしつつ、同時に複数のアクセスポイントでレーダーが検出された場合でも途切れることがない。
【0059】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図12および図13を用いて説明する。
第一の実施形態では、相互に接続されているアクセスポイントによる通信システムで、あるアクセスポイントがレーダーを検出したときに、接続されている他のアクセスポイントに対して、チャネル切替の指示をし、チャネル切替の指示を受けたアクセスポイントも、接続されている他のアクセスポイントに対して、チャネル切替の指示を送る例について説明した。本実施形態では、同様の通信システムで、アクセスポイントのチャネルの切替えの優勢順位を定めた例について説明する。本実施形態の説明では、第一の実施形態の通信システムと異なった所を中心に説明する。
【0060】
複数のアクセスポイントで、ほぼ同時にレーダーが検出された場合、第三のチャネルに指定されるチャネルがAPごとにばらつく可能性がある。このため、チャネル切替指示の優先順位を定める必要がある。チャネル切替指示の優先順位は、APに予め定められた優先順位であってもよく、優先順位の高いAPの切替指示を伝達していく方法がある。例えば、AP1とAP2でレーダーがほぼ同時に検出された場合の様子は、図12に示されるようになる。図13は、図12の状態STATE901〜STATE905の終了時における各AP、STAの接続状態を示したものであり、矢印はデータ通信が可能であることを示している。
【0061】
AP1とAP2でレーダーが検出された場合、AP2には二つの異なるチャネル切替指示パケットが届く可能性がある。例えば、AP2に、AP1からチャネル切替指示パケット(チャネル切替指示1)が来て、その後に、AP3からチャネル切替指示パケット(チャネル切替指示2)が来たものとする。このときAPの優先順位を予めAP1>AP2>AP3と設定していた場合、AP2はAP1からのチャネル切替指示1を優先し、AP3のチャネル切替指示2に対するACKに、図12に示されるように、AP1から指定されたチャネル切替指示1の内容を付与して伝送することができる(STATE903)。先にAP3からAP2に対して切替指示2が届いた場合、AP2は、AP1が発行したチャネル切替指示1をRF2を介してAP3に伝達することができる。AP1、およびAP3のいずれの切替指示が先に届くかはAP1とAP3のどちらが先にRTSを送信するかに依存する。また、図12では、各アクセスポイントがCAC中に、他のアクセスポイントからチャネル切替指示パケットを受信する場合については示されていないが、その場合でも、同様に動作する。
【0062】
なお、チャネル切替指示の優先順位は、チャネル切替指示のタイムスタンプから生成されてもよく、タイムスタンプが最も早い時刻の切替指示を優先してもよい。また、レーダー検出時刻のタイムスタンプが最も早い時刻のAPから発行されたチャネル切替指示を優先するように設定してもよい。
【0063】
以上説明してきたように、切替えるチャネルに優勢順位を付けて、チャネル切替指示パケットに対するACKに、他のアクセスポイントからきた情報を付加して、送り返すことにより、通信システムとして、使用が望ましいチャネルを優先して使用するように制御することができる。
【0064】
〔実施形態3〕
以下、本発明に係る第三の実施形態を、図14を用いて説明する。
第一の実施形態では、アクセスポイントから無線端末に対して、チャネル切替指示をおこなう場合に、図10Bに示されるチャネル切替指示パケット510によりおこなっていた。本実施形態では、チャネル切替指示をビーコンパケットによりおこなう例について説明する。
【0065】
本実施形態においても、第一の実施形態と異なった所を中心に説明する。図1に示した通信システムの構成は、本実施形態でも同様とする。また、図8のダイアグラムのSTATE701〜STATE703の部分も同様である。
【0066】
本実施形態では、AP1からSTA1に対して、チャネル切替指示をおこなう場合に、ビーコンパケットの予備エリアに、次の切替先チャネル番号(Ch100)の情報を含めて送信する。ビーコンパケットは、既に説明したように、アクセスポイントが自らの存在を知らしめるために定期的に発せられるパケットであった。AP1では、例えば、そのビーコンパケットを3回送信したときに、チャネル切替指示は完了したと解釈して、チャネルを切り替えのためのチャネル番号(Ch100)でのCACを開始する。第一の実施形態で、AP1がSTA1からチャネル切替指示パケットのACKを受取ってから、チャネルを切り替えのためのCACを開始したが、本実施形態では、そのようなACKを待つフェーズはないことが特徴である。
【0067】
AP3とSTA2の場合のチャネル切替指示(切替先チャネル番号は、Ch124)も同様である。
【符号の説明】
【0068】
101…アクセスポイント(AP)
102…無線端末(STA)
201…情報処理装置
202…RF部
203…アンテナ
204…データ保持部
205…制御部
206…デバイスI/F部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14