(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738269
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】画像検査システムをチェックするための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20200730BHJP
G01N 21/93 20060101ALI20200730BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/93
B41F33/00 280
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-243354(P2016-243354)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-111149(P2017-111149A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】10 2015 225 252.3
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イマヌエル フェアゲン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ゾルトヴェーデル
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューマン
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−066628(JP,A)
【文献】
特開2010−217028(JP,A)
【文献】
特開2015−197928(JP,A)
【文献】
特開2015−090554(JP,A)
【文献】
特開平07−333170(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0069894(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0279410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
B41F 31/00−35/06
B41J 29/00−29/70
G06T 1/00−1/40、3/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像検査システム(2)をチェックするための方法であって、
前記画像検査システム(2)は、少なくとも1つのカメラからなるカメラシステム(5)と、被印刷物を所期のように照明するための照明装置と、画像処理コンピュータ(7)と、メインコンピュータ(3)と、から構成されており、前記メインコンピュータ(3)によって、被印刷物を処理する機械(4)の結果に対する品質コントロールを実施する
方法において、
・参照画像(15)をティーチングし、前記参照画像(15)を前記メインコンピュータ(3)に伝送するステップと、
・前記カメラシステム(5)によって実際の印刷画像(12)を撮影し、前記実際の印刷画像(12)を前記画像処理コンピュータ(7)に伝送するステップと、
・前記画像処理コンピュータ(7)において、前記実際の印刷画像(12)のうちの、通常の印刷画像データが印刷されていない適当な領域(8,9,10)内の少なくとも1つの部分画像(16)を選択するステップと、
・前記画像処理コンピュータ(7)において、前記参照画像(15)との比較により、前記少なくとも1つの部分画像(16)を分析するステップと、
・前記メインコンピュータ(3)によって、前記少なくとも1つの部分画像(16)の前記分析の結果(17)に基づいて前記画像検査システム(2)を評価し、前記画像検査システム(2)の発見された欠陥(18)を表示するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記画像検査システム(2)の前記評価を、前記少なくとも1つのカメラ(5)のアライメント、前記照明の状態、前記カメラのレンズの汚れ、及び、前記画像検査システム(2)のキャリブレーションを含む存在しうるエラー原因に関して実施する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発見された欠陥(18)を、前記メインコンピュータ(3)に接続された画像スクリーン(6)に表示する、及び/又は、前記メインコンピュータ(3)に接続されたメモリに保存されるログに記録する、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記メインコンピュータ(3)は、リモートデータ伝送用のネットワークに接続されており、前記ログは、前記メインコンピュータ(3)からリモートサービスコンピュータに転送される、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記適当な領域(8,9,10)として、印刷が施されたエリアであって、色測定用チャート(8,9)及び/又はレジスタマーク(10)を含む印刷画像データを含まないエリア、及び/又は、印刷が施されていないエリアを使用する、
請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記画像検査システム(2)は、インライン枚葉紙検査方法を実施するために、枚葉紙印刷機(4)、とりわけ枚葉紙オフセット印刷機、枚葉紙インクジェット印刷機、又は、枚葉紙トナー印刷機に組み込まれている、
請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記適当な領域(8,9,10)として、くわえ爪竿及び/又は枚葉紙の後端における、前記実際の印刷画像のうちの、印刷が施されていないエリアを使用する、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記画像検査システム(2)は、インライン画像検査方法を実施するために、ロール紙印刷機(4)、とりわけロール紙オフセット印刷機、ロール紙インクジェット印刷機、又は、ロール紙トナー印刷機に組み込まれている、
請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、検査方法の一部として又は検査方法に並行して定期的な間隔で実施される自動化された方法である、
請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記画像処理コンピュータ(3)における前記少なくとも1つの部分画像(16)の前記分析を、コントラストの推移に関して統計的手法を使用することによって実施する、
請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査システムの機能性をチェックするための方法に関する。
【0002】
本発明は、テストの自動化の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
従前の従来技術によれば、印刷技術における画像検査方法は、製造された印刷結果の存在しうるエラーを、印刷ジョブを実施する枠内でチェックするために使用される。この場合には、印刷製造物がカメラによってスキャンされ、コンピュータに送信され、そこでデジタルの参照画像と比較される。参照画像は、印刷ジョブのプリプレスデータからデジタルに作成することも、ティーチングとも呼ばれるプロセスによって作成することも両方可能である。この場合には、印刷画像が印刷機において何度も印刷され、カメラによって撮影され、その後、このようにしてデジタルに作成されたデータから、プリプレスデータからの既知の目標印刷画像に最も近い参照画像であって、且つ、使用中の印刷機の技術的性能及び技術的制限を取り込んだ参照画像が作成される。その後、デジタルの参照画像と、本来の印刷方法で作成された実際の印刷画像との比較において、比較アルゴリズムのパラメータに応じて2つの画像の間の偏差がエラーとして識別され、表示される。
【0004】
この場合に問題なのは、印刷画像におけるこのような偏差が、必ずしも常に、印刷された印刷画像に実際に存在する画像エラーに起因するとは限らない可能性があることである。むしろ、画像検査システムの誤ったコンフィグレーション又は所定の状態が、実際に撮影されたデジタルの印刷画像において結果的に生じた偏差に対する責任を有していることがよくある。例えば、カメラのアライメント不良によって、印刷画像全体又は印刷画像の所期の部分を参照画像と比較することが不可能になる。このことは、最良のケースでは、参照画像とコントロールすべき実際の印刷画像とがもはや一致しないことを、画像検査システムが自発的に識別することを意味している。最悪のケースでは、とりわけ印刷画像の部分領域又は部分のみが比較される場合には、画像検査システムによって恣意的に多数の印刷エラーが表示される結果となる可能性がある。双方のケースにおいて、画像検査システムの規定通りの機能、ひいては作成された印刷製造物の品質コントロールが不可能になる。別のエラー原因は、例えば照明ユニットの欠陥であり、このような照明ユニットの欠陥は、撮影され検出された印刷画像のコントラスト、色値、及び、他の画像パラメータに対して影響を及ぼし、これによってデジタルの参照画像との比較を困難にする又は不可能にする。カメラレンズの汚れも、本来は存在しないエラーの識別を引き起こし、検査品質を大幅に悪化させる。
【0005】
従来技術ではこれまで、このようなエラーは、画像検査システムの自動化されたコントロールによって検出されてこなかった。たとえ検出されるとしても、画像検査システムの状態及びコンフィグレーションは、これまでは、新しい印刷ジョブの開始時に印刷機のユーザによって手動でチェックされていた。
【0006】
さらには、画像検査システムを含む印刷機の運転開始の枠内で、実地試験において、画像検査システムの撮影を、当該画像検査システムのカメラによって全体印刷画像の形態で検出し、評価のためにコントロール用のサービスにリモートで伝送することが公知である。しかしながらこのやり方は、高いコストと結びついており、さらには法律的な制限を受ける。すなわち、このようにして撮影された全体画像を伝送するためには、印刷を指示した顧客の同意と、印刷業者又は印刷機の操作者の同意の両方が必要となるのである。これによってもう、完全に自動化された定期的な評価は、データ保護法上の理由から不可能となっている。従って、画像検査システムの状態に対する確実な判断は、多くの場合、サービスに関する印刷機の操作者のクレームの後にしか実施されない。従って印刷機は、不確実な画像検査と、相応に多数の刷り損じとを伴ってのみ動作する。
【0007】
独国特許出願公開第102014004556号明細書(DE 10 2014 00 455 6 A1)からはさらに、画像検査システムをチェックするためのシステム及び方法が公知であり、ここでは、画像検査システムの機能性が、該画像検査システムのエラー識別能力そのものに関してチェックされる。このことは、現実には存在しない人工的なエラーをデジタルの印刷画像の中に導入し、このようにして作成されたエラー画像を、その後、参照画像と比較する目的で画像検査システムに供給することによって実現される。この場合、画像検査システムが人工的に導入されたエラーを識別するかどうかがチェックされ、上記の比較に基づいて、テストされる画像検査システムの機能性及び性能が評価される。しかしながら上記の方法は、画像比較の機能性しかチェックしておらず、デジタルのエラー画像の供給によって、画像検査システムのカメラや照明等の形態のハードウェアによる画像検出プロセスを省略しているので、当該方法では、ハードウェア、とりわけカメラ、カメラのアライメント、レンズに存在しうる汚れ、キャリブレーション等に関して、画像検査システムの機能性に関する判断を下すことは不可能である。
【0008】
他方で、独国特許出願公開第102011100413号明細書(DE 10 20 11 100 413 A1)からは、枚葉紙印刷機におけるセッティングエラーを検出するための方法が公知であり、ここでは、連続する印刷枚葉紙の幾何形状が画像形成システムによって撮影され、評価のために目標幾何形状と比較される。この比較から、例えばくわえ爪竿のセッティングエラーに起因する枚葉紙の搬送エラー、又は、枚葉紙を案内するための噴射空気のセッティングエラーに起因する枚葉紙の剥離のような、印刷機に存在しうるセッティングエラーが推定される。従って、上記の方法からは、印刷機のハードウェアのセッティングを如何にして印刷画像の評価から推定することができるかが公知である。しかしながら、非常に特別なハードウェアを有する可能性のある画像検査システムを、このハードウェアのコンフィグレーションに関して如何にしてチェックすることができるのかは開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、被印刷物を処理する機械の結果に関して、画像検査システムの機能性におけるエラーを自動的に特定することができ、且つ、従来技術から従前公知の方法よりも効率的且つ低コストに実施することができる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る課題は、画像検査システムをチェックするための方法であって、前記画像検査システムは、少なくとも1つのカメラからなるカメラシステムと、被印刷物を所期のように照明するための照明装置と、画像処理コンピュータと、メインコンピュータとから構成されており、前記メインコンピュータによって、被印刷物を処理する機械の結果に対する品質コントロールを実施する方法において:
1.参照画像をティーチングし、前記参照画像を前記メインコンピュータに伝送するステップと、
2.前記カメラシステムによって実際の印刷画像を撮影し、前記実際の印刷画像を前記画像処理コンピュータに伝送するステップと、
3.前記画像処理コンピュータにおいて、前記実際の印刷画像のうちの、印刷画像データが印刷されていない適当な領域において、少なくとも1つの部分画像を選択するステップと、
4.前記画像処理コンピュータにおいて、前記参照画像との比較により、前記少なくとも1つの部分画像を分析するステップと、
5.前記メインコンピュータによって、前記少なくとも1つの部分画像の前記分析の結果に基づいて前記画像検査システムを評価し、当該画像検査システムの発見された欠陥を表示するステップと、
を有する方法によって解決される。
【0011】
本発明に係る方法の最も重要な点は、1つには、画像検査システムをチェックするための本方法を実施するために、実際に撮影された印刷画像のうちの、実際の印刷画像の画像データが印刷されていない画像領域だけが検出されることである。これによってデータ保護に関する法律的な問題が回避され、画像検査システムの機能の枠内での自動的な比較が可能となる。この場合には当然、選択される領域は、好ましくは、比較される参照画像にも存在する領域を含んでいる。そうすると、この撮影された画像領域から、参照画像の対応する領域との比較によって、画像検査システムが依然として規定通りの状態にあるかどうか、ひいては、当該画像検査システムによって達成された結果が本当に説得力のあるものであるかどうかが判定される。
【0012】
本方法の有利な、従って好ましい発展形態は、添付の従属請求項及び添付の図面に関する説明から明らかとなる。
【0013】
本発明に係る方法の1つの好ましい発展形態では、前記画像検査システムの前記評価は、前記少なくとも1つのカメラのアライメント、前記照明の状態、前記カメラのレンズの汚れ、及び、前記画像検査システムのキャリブレーションのような、存在しうるエラー原因に関して実施される。その後、実際の印刷画像のうちの選択された領域と、参照画像の対応する領域との比較から得られた分析の結果に基づいて、少なくとも1つのカメラのアライメント、及び、照明の状態が、依然として所期のパラメータ範囲内に存在するかどうかを推定することができる。カメラのレンズに存在しうる汚れも、分析の結果の評価によって検出することができる。画像検査システムそのものに存在しうるキャリブレーションエラーに関しても、同様のことが当てはまる。
【0014】
本発明に係る方法の別の1つの有利な発展形態では、前記発見された欠陥が、前記コンピュータに接続された画像スクリーンに表示され、及び/又は、前記コンピュータに接続されたメモリに保存されるログに記録される。画像検査システムの状態に関して発見された欠陥の出力は、印刷機のユーザのために、コンピュータに接続された画像スクリーンに表示される。これに加えて又はこれに代えて、それぞれの実施形態に応じて結果がログに記録され、その後このログが、コンピュータによってアクセス可能なメモリにデジタル形式で保存される。
【0015】
本発明に係る方法の別の1つの好ましい実施形態では、前記コンピュータは、リモートデータ伝送用のネットワークに接続されており、前記ログは、前記コンピュータからリモートサービスコンピュータに転送される。
【0016】
本発明に係る方法の枠内では、画像検査システムの発見された欠陥を印刷機のユーザ自身によって解決できないことがよくあるので、有利には、ログに記録された欠陥が、印刷機のサービス事業者のサーバに直接伝送される。そこで、発見された欠陥を評価して、顧客に対して、すなわち印刷機のユーザに対して、発見された欠陥を解決するための相応のサポートを実施することができる。
【0017】
本発明に係る方法の別の1つの好ましい実施形態では、前記適当な領域(8,9,10)として、色測定用チャート(8,9)及び/又はレジスタマーク(10)のような、印刷画像データを含まない、印刷が施されたエリア、及び/又は、印刷が施されていないエリアが使用される。本方法にとって適当なのは、とりわけ完成した印刷画像のうちの、印刷が施されていない領域である。印刷データが決して存在してはならない場所に構造物が出現した場合には、このことは、機能エラーに対する明確な指標となる。印刷が施されていない紙の輝度の推移も、評価することができる。しかしながら、既存のレジスタマーク又は色測定用チャートを有する領域も適当である。なぜならこれらの領域は、印刷されはするが、データ保護を受ける画像データを含んでいないからである。
【0018】
本発明に係る方法の別の1つの好ましい実施形態では、前記画像検査システムは、インライン枚葉紙検査方法を実施するために、枚葉紙印刷機に組み込まれている。大抵の画像検査システムは、効率的な理由から、対応する印刷機の中に直接組み込まれている。枚葉紙印刷機の場合には、画像検査システムが、印刷機の最後の印刷ユニット又は塗布ユニットに、又はその下流に取り付けられていることがよくある。これにより、排出装置の後にようやく実施される、下流での枚葉紙の画像検査よりも、格段に効率的なインライン枚葉紙検査が可能となる。本発明に係る方法は、このようなインライン画像検査の要求を相応に考慮しなければならない。
【0019】
本発明に係る方法の別の1つの実施形態では、前記適当な領域として、くわえ爪竿及び/又は枚葉紙後端における、前記実際の印刷画像のうちの、印刷が施されていないエリアが使用される。枚葉紙印刷機の、印刷が施された枚葉紙の場合には、実際に撮影された印刷画像のうちの、印刷画像データが印刷されていない特に適当な領域は、とりわけくわえ爪竿及び枚葉紙後端における画像領域である。くわえ爪竿と被印刷物との間の画像コントラストを撮影することによって、例えば少なくとも1つのカメラのセッティングエラーを非常に効率的に検出することが可能となる。
【0020】
本発明に係る方法の特に1つの好ましい実施形態では、前記画像検査システム(2)は、インライン画像検査方法を実施するために、ロール紙印刷機(4)、とりわけロール紙オフセット印刷機、ロール紙インクジェット印刷機、又は、ロール紙トナー印刷機に組み込まれている。ロール紙印刷機の場合にも、大抵の画像検査システムは、効率的な理由から、対応する印刷機の中に直接的に組み込まれている。ここでも本発明に係る方法は、このようなインライン画像検査の要求を相応に考慮しなければならない。
【0021】
本発明に係る方法の別の1つの好ましい実施形態では、前記方法は、検査方法の一部として又は検査方法に並行して定期的な間隔で実施される自動化された方法である。本方法は自動的に実施され、この際、画像検査システムは、印刷品質をコントロールするための本来の画像検査と、画像検査システムのステータスをチェックするための本発明に係る方法の双方を並行して実施する。本来の画像検査に並行して本発明に係る方法が実施される間隔は、印刷機のユーザによって設定することができ、及び/又は、画像検査システムの稼働率に依存させることもできる。
【0022】
本発明に係る方法の別の1つの好ましい実施形態では、前記コンピュータにおける前記少なくとも1つの部分画像の前記分析は、コントラストの推移に関して統計的手法を使用することによって実施される。この統計的手法は、例えば印刷画像のうちの選択された領域にわたる輝度値の標準偏差及び/又は中央値の使用を含む。カメラレンズが汚れている場合には、例えば印刷が施されていない被印刷紙上において明確な輝度の偏差を確認することができるだろう。この輝度の偏差は、標準偏差の分析によって検出することができる。別の統計的な分析手法も考えられる。
【0023】
以下、本方法及び本方法の機能的に有利な発展形態について、添付の図面を参照しながら少なくとも1つの好ましい実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0024】
図面では、互いに対応する要素同士にはそれぞれ同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】画像検査システムの構造的な構成を示す図である。
【
図4】本発明に係る方法のシーケンスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す画像検査システム2は、制御コンピュータ又はメインコンピュータ3を含み、この制御コンピュータ又はメインコンピュータ3は、ディスプレイ装置6に接続されており、ユーザ1は、このディスプレイ装置6を介してシステム2をコンフィグレーションすることが可能である。これに関して、組み込まれた画像検査システム2が印刷機4の一部である場合には、印刷機4の制御システムの画像スクリーン6を使用することも可能である。この場合には、印刷機4の内部にカメラ5が取り付けられており、より詳細には一般的に、最後の印刷ユニット又は塗布ユニットの下流に取り付けられている。カメラ5には、画像処理コンピュータ7が直接接続されており、従って、この画像処理コンピュータ7も印刷機4の一部である。画像処理コンピュータ7は、カメラ5から受信した画像12を即座に分析及び評価する。この分析の結果17は、その後、画像検査システム2の制御コンピュータ及びメインコンピュータ3に転送され、ここで、画像検査システム2のセッティングにおいて存在しうる欠陥に関して、分析の結果17が相応に評価18される。画像検査システム2の本来の機能、すなわち製造された印刷枚葉紙のチェックも、このようにして実施される。上述した構成は、
図1に概略的且つ構造的に図示されている。
【0027】
図2には、実際に撮影された印刷画像12の一例が図示されている。
図2では、汚れたカメラレンズを象徴的に表している縦長のエラー11が見て取れる。これに対して、ここでは分析用に選択される画像領域16として、通常の印刷画像データに属しない色測定用チャート8,9の領域と、レジスタマーク10の領域と、が選択される。参照画像15がティーチング及び分析された後、次の方法ステップとして実際の印刷画像12の撮影が実施される。このことも、画像検査システム2による、印刷が施された枚葉紙の通常の画像検査の枠内で実施される。さてここで、事前に選択された画像領域に基づいて、実際の印刷画像12から1つ又は複数の画像領域16が選択される。その後、これらの選択された画像領域16が、とりわけコントラスト推移の統計的な分析によって検査される。
【0028】
図3には、このような統計的な分析の推移の結果17が図示されている。本実施例では、事前に監視用に選択された色測定用チャートの2つの列が、より詳細に検査される。本実施例では、上側の色測定用チャート8が、円形に図示された部分13に強調されているようにグレー値に関して大きい偏差を示すことが、分析から判明した。この部分は、カメラへの反射13を表している。下側の列の色測定用チャート9の評価も、印刷画像12にわたる暗い垂直線14によって色値又はグレー値の大きい偏差を示している。これらの分析の結果17は、画像検査システム2のメインコンピュータ3において評価される。このようにして、選択された第1画像領域8におけるカメラ5への反射13は、カメラ5のアライメントが不十分であるということ、さらには照明のアライメントも不十分な可能性があるということを意味している。選択された第2画像領域9の分析の結果17自体は、暗い垂直線14の形態でグレー値における大きい偏差を示しており、このことは、カメラの汚れによって引き起こされた可能性が高く、従って、カメラレンズのクリーニングが必要であることを表している。検出されたエラーは、その後、画像検査システム2の接続されたディスプレイ6を介して、この場合には印刷機4の壁面スクリーンを介して表示される。これによってユーザ1は、このエラーを解決するために必要なステップを実施することができる。
【0029】
図4には、本発明に係る方法の基本的なシーケンスが再び概略的に図示されている。第1ステップとして、参照画像15がティーチングされる。この参照画像15は、その後、画像検査システム2の通常の機能のために、実際に撮影された印刷画像12の画素単位での比較のための比較基準として使用される。さてここで、画像検査システム2のステータス及びセッティングをチェックするための本発明に係る方法が開始される。データ保護に関連した印刷画像領域は使用すべきでないとの規定に従って、分析される参照画像15に基づいて、印刷画像のうちのどの画像領域8,9,10を分析用に使用すべきかが特定される。通常、画像検査システム2のメインコンピュータ3は、この要求に適合する一般的に考えられる全ての画像領域8,9,10が既に規定されているようにコンフィグレーションされる。その後、参照画像の分析に基づいて、これらの画像領域のうちいずれの画像領域が、実際に存在する当該参照画像15において最も分析に適しているかが決定される。
【0030】
別の1つの好ましい実施形態ではさらに、検出されたエラーに関するログが自動的にデジタル形式で作成され、このログが、ユーザ1の同意を得て、印刷機4に対する責任を有するリモートサービスにインターネットを介して転送される。その後、リモートサービスが、このエラーを解決するために必要なステップを開始することができる。このことは、印刷機4のローカルのユーザ1が画像検査システム2のエラーを解決するための訓練を受けていない場合、又はその許可がない場合にとりわけ有効である。
【符号の説明】
【0031】
1 ユーザ
2 画像検査システム
3 制御コンピュータ/メインコンピュータ
4 印刷機
5 カメラシステム
6 ディスプレイ
7 画像処理コンピュータ
8 上側の画像部分である色測定列
9 下側の画像部分である色測定列
10 画像部分であるレジスタマーク
11 カメラの汚れによる画像エラー
12 実際の印刷画像
13 誤ったカメラセッティングによる画像の反射
14 汚れによる色値の偏差
15 参照画像
16 実際の印刷画像からの画像部分
17 画像部分の分析の結果
18 画像検査システムの評価の結果