特許第6738273号(P6738273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738273薬剤の手作業の調合を監視するため、記録に残すため、及び支援するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738273
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】薬剤の手作業の調合を監視するため、記録に残すため、及び支援するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20200730BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   A61J3/00 310K
   G06T1/00 290Z
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-537597(P2016-537597)
(86)(22)【出願日】2014年8月24日
(65)【公表番号】特表2016-529024(P2016-529024A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】IL2014050755
(87)【国際公開番号】WO2015029020
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年8月22日
【審判番号】不服2019-4606(P2019-4606/J1)
【審判請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】228122
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】517114333
【氏名又は名称】エクアシールド メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EQUASHIELD MEDICAL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリヘリ、マリノ
(72)【発明者】
【氏名】シェム − トブ、エリク
(72)【発明者】
【氏名】ダスカル、ゴネン
【合議体】
【審判長】 芦原 康裕
【審判官】 高木 彰
【審判官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0142406(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/112685(WO,A1)
【文献】 特許第5033267(JP,B1)
【文献】 特開2007−260390(JP,A)
【文献】 特開2006−296912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状で製造業者から供給された薬物を手作業で溶媒で戻すことを監視するため、記録に残すため、及び支援するためあって、処方箋に含まれる指示に従って患者に投与するために前記戻された薬物の量を調製するための方法であって、
a)少なくとも1つのデジタル・カメラを使用して、投与プロセスのための前記戻し及び調製の常時監視をもたらすステップと、
b)前記少なくとも1つのデジタル・カメラによって獲得された画像の画像処理を実行し、前記処理された画像から抽出されたデータを、患者、前記薬の薬物成分及び組成、並びに前記調製の際に必要とされた非薬物アイテムのうちの1つ又は複数と関係のある情報とリアルタイムで比較するように適応させられたソフトウェアを提供するステップであって、前記情報が、様々な源から自動的に、又は手作業で取得される、ステップと、
c)ディスプレイ画面及びプロセッサを備えるシステムを提供するステップであって、前記プロセッサは、特定の戻し及び調製プロセスの各工程を通して作製者を導き、且つ/又は監督する指示を前記ディスプレイ画面上に表示することによって、対話型アシスタントの役割をするように適応させられた専用のソフトウェア・アルゴリズムを備える、ステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記デジタルカメラ、画像処理ソフトウェア、ディスプレイ画面、及び前記プロセッサのソフトウェア・アルゴリズムは、
i) 前記システムが、前記ディスプレイ画面を介して、前記システムの前記カメラの1つの視野に薬物を含むバイアルを配置するように作製者に指示し、
ii) 前記カメラが前記薬物を含む前記バイアルを画像化し、前記画像処理ソフトウェアが前記画像を分析して、前記薬物が前記処方箋で要求されるものと一致するか否かを判断し、
iii) 前記システムが、ii)において前記薬物が前記処方箋で要求されるものと一致しない場合には、前記作製者に正しい薬物を含むバイアルを配置し、i)及びii)を繰り返すように指示し、
iv) 前記システムの前記ソフトウェアが、前記薬物のバイアルの前記画像を分析して、前記薬物が戻される必要があるか否かを判断し、前記システムが、前記作製者に戻しプロセスが実行される必要があることを確認するように指示し、
v) 前記作製者が戻しプロセスが実行される必要があることを確認した場合には、前記システムが、特定の希釈剤を選択し、前記システムの前記カメラの1つの視野に薬剤を含む前記バイアルを配置するように前記作製者に指示し、
vi) 前記カメラが前記希釈剤を含む容器を画像化し、前記画像処理ソフトウェアが前記容器の情報を読み取り、この情報を前記処方箋又は前記システムに接続されたデータベースのものと比較して、正しい希釈剤が選択されているか否かを判断し、
vii) 前記システムが、vi)において正しい希釈液が選択されていない場合には、異なる希釈液を選択するように前記作製者に指示し、v)及びvi)が繰り返され、
viii) 前記システムが、vi)において正しい希釈剤が選択された場合には、前記処方箋又は前記データベースで指定された希釈剤の量で特定のサイズの注射器を満たすように前記作製者に指示し、
ix) 前記システムが、前記注射器を前記希釈剤を含む前記容器から分離し、前記注射器を前記カメラの1つの視野に配置するように前記作製者に指示し、
x) 前記カメラが、前記希釈剤を含む前記注射器を画像化し、前記画像処理ソフトウェアが、前記注射器における液体内の気泡を検索し、液体の量を測定し、それをviii)において指定された量と比較し、
xi) 前記システムが、x)において気泡が検出された場合には、既知の手順に従って気泡を除去するように前記作製者に指示し、プロセスがx)に戻り、
xii) 前記システムが、x)において希釈剤の量が正しくない場合には、viii)に戻し、
xiii) 前記システムが、x)において気泡が検出されず、希釈剤の量が正しい場合には、前記希釈剤を含む前記注射器を前記薬物を含む前記バイアルに接続し、前記希釈剤を前記バイアルに注入するように前記作製者に指示し、
xiv) 前記システムが、前記カメラの1つの視野に前記注射器を配置するように前記作製者に指示し、
xv) 前記カメラが、前記バイアルに接続された状態の前記注射器を画像化し、前記画像処理ソフトウェアが、画像を分析して前記注射器が空になったことを確認し、
xvi) 前記システムが、前記バイアルから前記注射器を外して、前記バイアルにおいて前記粉末の薬物と希釈剤とを完全に混合し、それによって前記薬物を溶媒で戻すように前記作製者に指示し、
xvii) 前記システムが、前記戻された薬物を含む前記バイアルに注射器を接続し、前記処方箋又は前記データベースで指定された量の戻された薬物を引き出すように前記作製者に指示し、
xviii) 前記システムが、前記注射器を前記バイアルから分離し、前記注射器を前記カメラの1つの視野に配置するように前記作製者に指示し、
xix) 前記カメラが、前記戻された薬物を含む前記注射器を画像化し、前記画像処理ソフトウェアが、前記注射器における液体内の気泡を検索し、液体の量を測定し、それをxvii)において指定された量と比較し、
xx) 前記システムが、xix)において気泡が検出された場合には、既知の手順に従って気泡を除去するように前記作製者に指示し、プロセスがxix)に戻り、
xxi) 前記システムが、xix)において希釈剤の量が正しくない場合には、xvii)に戻し、
xxii) 前記システムが、正しい量の戻された薬物で満たされた前記注射器を、注射によって前記戻された薬物を患者に投与する責任者に渡すように前記作製者に指示し、又は
xxiii) 前記システムが、戻された薬物を含む前記注射器を患者に投与される前記IVバッグに接続し、前記戻された薬剤を前記IVバッグに注入するように前記作製者に指示し、
xxiv) 前記システムが、前記注射器を前記カメラの1つの視野を配置するように前記作製者に指示し、
xxv) 前記カメラが、前記IVバッグに接続された状態の前記注射器を画像化し、前記画像処理ソフトウェアが、画像を分析して前記注射器が空になったことを確認し、
xxvi) 前記システムが、正しい量の戻された薬物で満たされた前記IVバッグを、前記戻された薬物を患者に投与する責任者に渡すように前記作製者に指示する
ステップを実行するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記戻し及び調製プロセスにおけるすべての工程が記録に残され、索引付けされる、ビジュアル・アーカイブ及びデータ・アーカイブの形態で患者への投与のための薬物の前記戻し及び調製プロセスの完全なドキュメンテーションをまとめるように適応させられたソフトウェアを提供するステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
任意のタイプの処方箋を調合するためにたどられる一般的な工程から成る段階が先行し
前記ソフトウェア・アルゴリズムが、患者及び患者の病状に処方箋が正しく適合していることを検証し、前記処方された薬物、及び患者への投与のための薬物の前記戻し及び調製プロセスのために必要とされる機器を選択する際に作製者を監督する、又は導くように適応させられている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記戻し及び調製プロセスの任意の段階で誤りが検出された場合、視覚警告又は聴覚警告が前記作製者に警報する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ソフトウェアによって処理された前記画像及び前記データが、前記画像の中で目に見える被写体に関して前記ソフトウェアが推定した前記被写体のパラメータと一緒に保存される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
バーコード認識アルゴリズム、QRコード(登録商標)認識アルゴリズム、OCR(光学式文字認識)アルゴリズム、及び更なるパターン認識アルゴリズムが、前記画像からデータを供給するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
注射器の画像が解析されて、
a)前記注射器のタイプ及びサイズ、
b)前記注射器が空気で満たされているか、又は透明の液体で満たされているか、
c)前記注射器内の前記液体の中に気泡が存在するかどうか、
d)前記気泡の量を特定すること、及び
e)前記注射器のピストンと前記注射器のシリンダ上の基準線とを認識すること、並びに前記ピストンと前記基準線の間の距離を測定することによって、前記注射器内の液体の量を測定すること
のうちの少なくとも1つが特定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
粉末状で製造業者から供給された薬物を手作業で溶媒で戻すことを監視するため、記録に残すため、及び支援するためであって、処方箋に含まれる指示に従って患者に投与するために前記戻された薬物の量を調製するためのシステムであって
)投与プロセスのための前記戻し及び調製の常時監視をもたらすように適応させられた少なくとも1つのデジタル・カメラと、
b)作製者と前記システムのソフトウェアの間のインターフェースの役割をするように適応させられたディスプレイ画面と、
c)
i)前記少なくとも1つのデジタル・カメラによって獲得された画像の画像処理を実行し、前記処理された画像から抽出されたデータを、患者、前記薬の薬物成分及び組成、並びに前記戻された薬物を投与するために前記戻し及び調製の際に必要とされた非薬物アイテムのうちの1つ又は複数と関係のある情報とリアルタイムで比較するように適応させられたソフトウェアであって、前記情報が、様々な源から自動的に、又は手作業で取得されている、ソフトウェアと、
ii)特定の戻し及び調製プロセスの各工程を通して前記作製者を導き、且つ/又は監督する指示を前記ディスプレイ画面上に表示することによって、対話型アシスタントの役割をするように適応させられた専用のソフトウェア・アルゴリズムと
を備えるプロセッサ・ユニットと
を備えるシステム。
【請求項10】
前記プロセッサ・ユニットが、投与プロセスのための前記戻し及び調製におけるすべての工程が記録に残され、索引付けされている、投与プロセスのための前記戻し及び調製における工程のビジュアル・アーカイブ及びデータ・アーカイブの形態で投与プロセスのための前記戻し及び調製の完全なドキュメンテーションをまとめるように適応させられたソフトウェアを更に備える、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
与プロセスのための前記戻し及び調製の任意の段階で誤りが検出された場合、前記作製者に警報する視覚警告又は聴覚警告を生成するように適応させられた請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ソフトウェアが、バーコード認識アルゴリズム、QRコード(登録商標)認識アルゴリズム、OCR(光学式文字認識)アルゴリズム、及び更なるパターン認識アルゴリズムを使用して、前記画像からデータを供給するように適応させられている、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ソフトウェアが、前記少なくとも1つのデジタル・カメラによって撮影された注射器の画像を、
a)前記注射器のタイプ及びサイズ、
b)前記注射器が空気で満たされているか、又は透明の液体で満たされているか、
c)前記注射器内の液体の中に気泡が存在するかどうか、
d)前記気泡の量を特定すること、及び
e)前記注射器のピストンと前記注射器のシリンダ上の基準線とを認識すること、並びに前記ピストンと前記基準線の間の距離を測定することによって、前記注射器内の液体の量を測定すること
のうちの少なくとも1つを特定するために、処理するように適応させられている、
請求項に記載のシステム。
【請求項14】
注射器が置かれ得る表面を備え、前記表面は、上から照光された表面又は下から照光された透明表面のうちの1つである請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記照光の源が、偏光させられている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬物及び薬剤を投与することの分野に関する。より詳細には、本発明は、薬剤を監視すること、調製すること、及び手作業で調合することの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な薬剤を調製する際、及び投与する際に、医療関係者は、正しい薬物、正確な投与量、及び適切な機器だけが使用されることを確実にすることを要求される。そのすべてが要求される最も単純な事例が、作製者、例えば、薬剤師又は調剤技師が、注射器を使用して、製造業者によって薬物が包含されている小瓶又はカプセルから要求される量の液状の薬物を抜き出し、次に、その抜き出された量の薬物を患者の静脈、又は輸液バッグに直接に注入するよう医師又は看護師にその注射器を渡すことである。より複雑な手順において、薬物は、小瓶内に収められた粉末状で入手されることが可能であり、注射器を用いてその小瓶に適切な希釈剤、例えば、蒸留水及び/又は脱イオン水又は生理食塩水を注入することによって戻され、完全に混ぜられなければならず、その後、要求される投与量が、同一の注射器又は異なる注射器を使用して抜き出されなければならない。
【0003】
病院環境において、各患者は、多くの形態で、例えば、錠剤、注射、及び点滴の形態で薬剤を受けることが可能である。各患者は、その患者の医師によって決定されたスケジュールに従ってその患者自らの個人的な処方箋を受け取る。病院の手順に依存して、薬剤師又は調剤技師が、様々な医療機器を利用して適切な成分を組み合わせること、及び/又は処理することによって薬剤を調合すること、各患者のための薬剤に適切なラベルを付けること、並びにその薬剤を、投与のために看護師に渡すことを含め、処方された薬剤を調製することを担う。
【0004】
病院薬局において実行されるより複雑で、潜在的に危険な手順の中には、エイズ及び癌などの病気の治療のための「カクテル」の調合がある。そのカクテルを構成する薬物の危険な性質、それらの薬物の調製の複雑さ、要求される正確な投与量、それらの薬物が患者に投与される頻度、及び患者の健康状態の理由で、多大な技能、及び細心の注意が、それらの薬物の調製の際に要求される。化学療法剤は、通常、腫瘍内科医又は血液病専門医によって処方される。化学療法レジメン(スケジュール)は、通常、所定の期間にわたって与えられる特定の数のサイクルから成る。患者は、1回につき1つの薬物を受けることも、異なる薬物の組合せを同時に受けることも可能である。患者のために化学療法剤が調製された後、患者は、その薬剤を受け、その薬剤は、静脈投与されること、経口投与されること、腕、脚、若しくは腹部の脂肪質の部分に対する注射として投与されること、動脈内投与されること、腹腔内投与されること、又は局所的に投与されることが可能である。
【0005】
明らかに、薬物を調合する際の誤りの患者に対する結果は、非常に深刻であり得るが、それらの薬物、又はそれらの薬物の気化ガスとの接触もまた、それらの薬剤を調製し、それらの薬剤を投与する担当者に潜在的に非常に危険であり得る。したがって、誤り及び事故を回避するように適切なプロトコルが「文字通りに」遵守されることも必要とされる。
【0006】
間違いを防止するのに、又は少なくとも間違いの数を最小限に抑えるのに、薬剤師/調剤技師の作業を監視し、間違いが生じた場合に警報する、コンピュータ化されたシステムを含む多くの方法及びシステムが、考案されている。
【0007】
医薬製品を調製するための自動化されたマシンを有する従来技術のシステムの実例が、特許文献1において開示される。この特許は、チャンバを規定する、ボックス・タイプの保持フレーム内に収められた装置について説明する。その装置は、複数の容器、例えば、注射器を包含するマガジンと、医薬製品が調製される、異なる直径及び長さを有する3つの注射器を受け取り、保持するように適応させられた、平坦なターンテーブルを備える調合ステーションとの間で容器を移す把持−搬送機構から成る。そのチャンバは、そのマガジンの開口部に対するアクセスを有する。空気循環を確実にするファン・ホイールを有する空気圧デバイスが、チャンバ全体を通る無菌の空気の流れを供給して、外部環境との空気の交換を防止するように適応させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,297,320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、患者に投与するための薬剤を調製するプロセスを導くため、監視するため、及び記録に残すための完全なシステムを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、薬剤の手作業の調製及び/又は投与を監視するため、記録に残すため、及び支援するための方法である。この方法は、
a)少なくとも1つのデジタル・カメラを使用して、調製/投与プロセスの常時監視をもたらすステップと、
b)その少なくとも1つのデジタル・カメラによって獲得された画像の画像処理を実行し、それらの処理された画像から抽出されたデータを、患者と関係のある情報、その薬剤の薬物成分及び組成、並びに調製の際に必要とされる非薬物アイテムのうちの1つ又は複数とリアルタイムで比較するように適応させられたソフトウェアを提供するステップであって、そのデータは、様々な源から自動的に、又は手作業で取得されるステップと、
c)特定の調製プロセスの各ステップを通して作製者を導き、且つ/又は監督する対話型アシスタントの役割をするように適応させられた専用のソフトウェア・アルゴリズムを提供するステップとを備える。
【0012】
本発明の方法の実施例は、調製プロセスにおけるすべてのステップが記録に残され、索引付けされる、調製ステップのビジュアル・アーカイブ及びデータ・アーカイブの形態で薬剤調製プロセスの完全なドキュメンテーションをまとめるように適応させられたソフトウェアを提供することを備える。
【0013】
本発明の方法の実施例は、任意のタイプの処方箋を調合するためにたどられる一般的なステップから成る段階を備える。この段階において、ソフトウェアにおけるアルゴリズムは、患者及び患者の病状に処方箋が正しく適合していることを検証し、処方された薬剤、及びその調製プロセスのために必要とされる機器を選択する際に作製者を監督する、又は導くように適応させられる。
【0014】
本発明の方法の実施例は、調製プロセス又は投与プロセスの任意の段階で誤りが検出された場合、作製者に警報する視覚警告又は聴覚警告を備える。
【0015】
本発明の方法の実施例において、ソフトウェアによって処理された画像及びデータは、それらの画像の中で目に見える被写体に関してソフトウェアが推定したパラメータと一緒に保存される。
【0016】
本発明の方法の実施例において、バーコード認識アルゴリズム、QRコード(登録商標)認識アルゴリズム、OCR(光学式文字認識)アルゴリズム、及び更なるパターン認識アルゴリズムが、それらの画像からデータを供給するのに使用される。
【0017】
本発明の方法の実施例において、注射器の画像が解析されて、以下、すなわち、
a)注射器のタイプ及びサイズ、
b)その注射器が空気で満たされているか、又は透明の液体で満たされているか、
c)その注射器内の液体の中に気泡が存在するかどうか、
d)それらの気泡の量を特定すること、並びに
e)その注射器のピストン、及びその注射器のシリンダ上の基準線を認識すること、及びそのピストンとその基準線の間の距離を測定することによって、その注射器内の液体の量を測定することのうちの少なくとも1つが特定される。
【0018】
第2の態様において、本発明は、薬剤の手作業の調製及び/又は投与を監視するため、記録に残すため、及び支援するためのシステムである。このシステムは、
a)調製/投与プロセスの常時監視をもたらすように適応させられた少なくとも1つのデジタル・カメラと、
b)
i)その少なくとも1つのデジタル・カメラによって獲得された画像の画像処理を実行し、それらの処理された画像から抽出されたデータを、患者、その薬剤の薬物成分及び組成、並びに調製の際に必要とされる非薬物アイテムのうちの1つ又は複数と関係のある情報とリアルタイムで比較するように適応させられたソフトウェアであって、そのデータは、様々な源から自動的に、又は手作業で取得されるソフトウェアと、
ii)特定の調製プロセスの各ステップを通して作製者を導き、且つ/又は監督する対話型アシスタントの役割をするように適応させられた専用のソフトウェア・アルゴリズムと
を備えるプロセッサ・ユニットと、
c)作製者とシステムのソフトウェアの間のインターフェースの役割をするように適応させられたディスプレイ画面とを備える。
【0019】
本発明のシステムの実施例において、プロセッサ・ユニットは、調製プロセスにおけるすべてのステップが記録に残され、索引付けされる、調製ステップのビジュアル・アーカイブ及びデータ・アーカイブの形態で薬剤調製プロセスの完全なドキュメンテーションをまとめるように適応させられたソフトウェアを更に備える。
【0020】
本発明のシステムの実施例は、調製プロセス又は投与プロセスの任意の段階で誤りが検出された場合、作製者に警報する視覚警告又は聴覚警告を生成するように適応させられる。
【0021】
本発明のシステムの実施例において、画像処理ソフトウェアは、バーコード認識アルゴリズム、QRコード(登録商標)認識アルゴリズム、OCR(光学式文字認識)アルゴリズム、及び更なるパターン認識アルゴリズムを使用して、それらの画像からデータを供給するように適応させられる。
【0022】
本発明のシステムの実施例において、画像処理ソフトウェアは、その少なくとも1つのデジタル・カメラによって撮影された注射器の画像を、以下、すなわち、
a)注射器のタイプ及びサイズ、
b)その注射器が空気で満たされているか、又は透明の液体で満たされているか、
c)その注射器内の液体の中に気泡が存在するかどうか、
d)それらの気泡の量を特定すること、及び
e)その注射器のピストン、及びその注射器のシリンダ上の基準線を認識すること、及びそのピストンとその基準線の間の距離を測定することによって、その注射器内の液体の量を測定することのうちの少なくとも1つを特定するために、処理するように適応させられる。
【0023】
本発明のシステムの実施例は、注射器が置かれ得る照光された表面を備える。本発明のシステムのこれらの実施例において、照光の源は、偏光させられ得る。
【0024】
本発明のシステムの実施例は、ポータブルであるように適応させられる。
【0025】
本発明の前述したすべての及びその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の後段の例示的で、非限定的な実施例の説明を介して更に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】薬剤を調合するための作業スペースに関する実例を概略で示す図である。
図2】本発明のプロセスの第1の段階におけるステップを概略で示す流れ図である。
図3】処方箋を調合する単純なプロセスの第2の段階を概略で示す流れ図である。
図4A】はるかに複雑な調合手順の第2の段階を概略で示す流れ図である。
図4B】はるかに複雑な調合手順の第2の段階を概略で示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、薬剤の手作業の調製及び/又は投与を監視するため、記録に残すため、及び支援するための方法及びシステムである。本発明は、1つ又は複数のデジタル・カメラ、並びに画像を処理し、処理された画像からのデータを、システムが、様々な源、例えば、内部データ・バンク若しくは外部データ・バンクから、技師/薬剤師から、又は処方箋をスキャンすることによって自動的に、又は手作業で取得する、患者、薬剤の薬物成分及び組成、並びに調製の際に必要とされる非薬物アイテムと関係のある情報と比較するソフトウェア及びハードウェアを使用する調製/投与プロセスの常時監視を介して、これらの目的を実現する。
【0028】
本発明は、画像処理に基づき、調製プロセスを監視することは、画像処理技術を使用して行われる。薬剤調製プロセスの完全なドキュメンテーションは、調製プロセスにおけるすべてのステップが記録に残され、様々な方法で、例えば、患者の身元若しくは薬剤師の身元若しくは医師の身元、又は日付によって索引付けされ、システムのプロセッサの一部分であるローカル・メモリ・ユニットの中に最初に記憶される、調製ステップのビジュアル・アーカイブに基づく。例えば、そのドキュメンテーションは、患者が病院を退院するまで薬局において記憶され、その後、ワイヤレス技術又は有線技術によって、遠隔データ・メモリ・ユニットの中にアーカイブされるように送信される。この保存されたデータ/ドキュメンテーションは、タイムスタンプ、処方箋の詳細、患者ID及び患者情報、例えば、性別、年令、体重、身長、治療を受けている病気、調製段階詳細、例えば、コメント、確認、警報、ログ・メッセージ、例えば、誤り、警告、トレース、デバッグ、要求される場合、監督者の許可のID及び検証、処方箋を調製した技師の詳細、及び監督者の詳細、調製段階中に撮影された画像のビジュアル・アーカイブ、並びに供給段階に関する情報などの情報を備え得る。
【0029】
本発明のシステムは、管理者によって病院ガイドラインに従って手作業で、且つ/又は病院のデータベースから自動的に更新される内部データベースを備える。本発明の実施例において、システムは、通信ネットワークを介して、他の病院、保健機関(例えば、FDA=米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)及びNIH=米国国立衛生研究所(National Institute of Health))、及び製造業者の外部データベースに接続され得る。
【0030】
データベースの中に含められて、本発明のソフトウェアにおけるアルゴリズムによって使用されることが可能な多種多様な情報のうちで典型的であるのが、以下のものである。すなわち、
a)薬物の包含量、物理特性、戻すこと、希釈量、及び供給指示など。この情報は、FDA、NIH、及び医薬品企業などの源からの情報で、自動的に、又は手作業で絶えず更新され得る。
b)IVバッグの容量、カタログ番号、全米医薬品コード(NDC:National Drug Code)番号、バーコード、又は他の識別特徴。この情報は、FDA、NIH、及び作製企業からの情報で、自動的に、又は手作業で絶えず更新される。
c)注射器及びアダプタの容量、カタログ番号、寸法、又は他の識別特徴。この情報は、医薬品製造業者及び医薬品販売業者のカタログなどの源から、自動的に、又は手作業で絶えず更新される。
d)システム・カメラによって撮影された、生と処理済みの両方の画像及びビデオ・ストリーム。
【0031】
システムの一実施例において、システムは、誤り、及びもたらされる間違った投与量を回避するために、処方箋上の投与量及び希釈剤を、薬物マニュアル、又はシステムのデータベースに挿入された他のデータと自動的に比較し、その処方された投与量が、推奨される投与許容量に適合することを検証する。処方された投与量と推奨される投与量の間に差がある場合、システムは、インターフェースを介して作製者、すなわち、本発明のシステムを使用する薬剤師、薬剤技師、又は他の個人に警報を送信し、オプションとして、処方する医師、又は他の病院関係者に警報を送信する。
【0032】
一実施例において、本発明は、作製プロセスを通して作製者(薬剤師又は薬剤技師)を導く対話型アシスタントの役割をする、医師が規定する処方箋に基づくソフトウェア自動化ツールを有するワークフロー駆動型のシステムである。本発明のシステムは、薬剤の調合を含め、手作業の調製のすべてのステップを導き、監視し、記録に残すように設計される。誤りが検出された場合、作製者に警報するように視覚警告又は聴覚警告がシステムによって生成される。調製プロセスのすべてのステップは、後の参照のために記録されて、メモリの中に記憶される。
【0033】
図1は、本発明による処方箋を調合するため、又は薬剤を調合するための作業スペースを概略で示す。図1に示される本発明のシステムのハードウェア構成要素は、作業スペース・テーブルの上方に、そのテーブルの隣に、又は作製者の身体に取り付けられて配置され、関心領域を覆うのに十分大きい視野を有する1つ又は複数のデジタル・カメラ(30)と、作製者とシステムの間のインターフェースの役割をするディスプレイ画面(31)と、作業表面(32)自体とを含む。その画面は、プロセッサの一部であること、すなわち、単一ユニットであることも、有線技術又はワイヤレス技術(図示せず)によってプロセッサと通信することも可能である。プロセッサは、例えば、セルラ電話機又はノートパッドなどのPC又はモバイル・デバイスであり得る。プロセッサは、カメラ又は複数のカメラ30から受け取られた画像を処理するため、及び解釈するための専用のソフトウェアと、例えば、インターネット又は病院のローカル・エリア・ネットワークを介して、処方箋を調合するプロセス中に収集された画像及びデータを記憶するための外部データベース及びメモリ・ユニットに接続するための通信手段と、使用され、収集されるデータの少なくともいくらかを一時的に、又は永久に記憶するためのオプションの内部データベース及びメモリ・ユニットと、作製者を導き、監督するように適応させられたアルゴリズムを備える専用のソフトウェアとを備える。本発明のシステムの実施例において、システムは、他の機器、例えば、ラベル・プリンタ、ラベル・ディスペンサ、及び/又は滅菌ユニット(図示せず)を更に備えることが可能である。やはり図1に示されるのが、薬剤の調合に通常、関与するアイテムのうちのいくつかの例である。これらのアイテムには、IVバッグ(33)、注射器(34)、及び薬物小瓶(35)が含まれる。
【0034】
本発明の実施例は、以下の2つのタイプのカメラを使用する。すなわち、
1)高解像度カメラが、薬物供給プロセスの監督のために使用される。これらのカメラは、スチル・カメラ又はビデオ・カメラであり得る。スチル・カメラは、いくつかの異なる手段、例えば、フット・ペダル、音声コマンド、ディスプレイ画面上のアイコンを押すこと、光変化、近傍センサからの距離によってトリガされ得る。ビデオ・カメラは、画像を映像処理アルゴリズムに送る。そのアルゴリズムが、解釈可能な画像を認識すると、そのアルゴリズムは、その画像を処理して、システムの操作者にフィードバックを送る。
2)作業領域全体を範囲に含む広視野ビデオ・カメラ。このカメラからのファイルは、ドキュメンテーションだけのために使用される。
【0035】
システムが実施され得る2つの方法が存在する。「フリー・スタイル」法である第1の方法において、ビデオ・カメラは、作業領域全体を範囲に含み、技師は、カメラの動作とは無関係に自由に作業する。この方法において、ビデオ系列全体、及び/又は調製手順における特定の段階を示す選択されたフレームだけが、将来のドキュメンテーションのためにデータベースの中に記憶される。第2の方法において、作製者は、機器、例えば、小瓶、注射器、又はバッグを、スチル・カメラ又はビデオ・カメラの視野内の特定の場所に置かなければならず、スチル・カメラ又はビデオ・カメラは、その後、作製者によって、又はソフトウェアによって活性化されて、画像をキャプチャして、処理する。
【0036】
ソフトウェアによって処理された画像は、それらの画像の中で目に見える被写体、すなわち、注射器容積、NDC番号、薬物名などに関してソフトウェアが推定したパラメータと一緒に保存される。薬剤調製プロセスにおいて使用されるアイテムの識別は、処理された画像をデータベースから引き出された情報と比較する、プロセッサにおけるソフトウェアのアルゴリズムによって自動的に実行される。そのソフトウェアは、バーコード認識アルゴリズム、QRコード(登録商標)(Quick Response Code)認識アルゴリズム、OCR(光学式文字認識)アルゴリズム、及び更なるパターン認識アルゴリズムを使用して、それらの画像から以下のデータを推定して、解釈するように適応させられる。すなわち、
1)注射器:
a.コードを認識すること、若しくはラベル上に書き込むことによる、又は注射器を測定して、それらの測定をシステムのデータベースの中の値と比較することによる注射器サイズ(例えば、20cc、30cc、60cc)。
b.コードを認識すること、若しくはラベル上に書き込むことによる、又は注射器を測定して、それらの測定をシステムのデータベースの中の値と比較することによる注射器ブランド。
c.注射器上の目盛線と比較されたピストンの位置を認識することによる、又は注射器ピストンと、シリンダ上の目盛若しくは注射器シリンダの終端との間の距離を測定すること、及び注射器の形状から容積を計算することによる、又はシステム・データベースの中のデータによる補間による注射器内の薬物の量。
d.注射器ID。システムの実施例において、注射器には、システムにおける使用のためにラベルが付けられる。各注射器には、ID、例えば、バーコード、他の文字、又は色が与えられる。このラベルは、注射器の画像の中で認識されて、OCR又は他の手段を使用してソフトウェアによって読み取られる。
e.パターン認識による注射器内の液体の中の気泡の存在、及びその気泡のサイズの推定。
2)薬物及びボトル(小瓶):
a.形状解釈及びラベル読取りによる小瓶サイズ。
b.薬物情報、例えば、タイプ(一般名)、量、状態(粉末又は液体)、濃度、特別な特性、例えば、光に対する感度、及び濾過する必要性、推奨される投与量、並びに推奨される希釈剤。この情報は、OCRを使用して、ボトル上のNDC又は商品名を認識し、その情報をシステムのデータベースと比較することによって獲得される。
c.薬物容器上のラベルからOCRによる薬物有効期限日及びロット番号。
d.OCRによる製造業者の#LOT番号
3)輸液バッグ:バーコードを読み取ること、又はOCRによるQRコード(登録商標)認識及び/若しくはNDC番号によるバッグ材料、液体タイプ、量、有効期限日、ロット番号。
4)ステッカ上の印刷の文字認識(OCR)による、輸液バッグ又は他の被写体に付けられたステッカ上に現れるとおりの、又は被写体、例えば、注射器に付けられる前に単独でスキャンされたとおりの処方箋の詳細。
【0037】
デジタル・カメラの使用は、本発明のシステムに、1つのタイプだけのセンサ(すなわち、カメラ)を使用してパターン、文字、バーコード、及びQRコード(登録商標)を解釈する柔軟性を与える。このことは、例えば、バーコード、及び被写体の輪郭を認識するが、被写体の内部に現れ得る文字又はパターン、例えば、注射器シリンダ内の注射器ピストンの位置は認識しない可能性があるレーザ・スキャナと対照的である。
【0038】
薬物調製制御のための技術の現状は、重量計の使用に基づく。このことは、量に直接に変換され得る、薬物及び注入液の重量の非常に正確な制御を可能にするが、薬物タイプ、注入液タイプ、ロット番号、有効期限日、及び気泡認識のような重量を計ることが可能でない情報の評価は可能にしない。重量を計る方法と比べたカメラの使用の別の利点は、システムの使用の柔軟性及び容易さである。いずれの段階でも、作製者は、作業者の作業の流れを止めて、又は被写体に触れることなしに重量計の上に被写体を置いて、重量計が安定するのを待ってから、読取り値を読み取る必要がない。作製者が行う必要があるのは、被写体、例えば、薬物小瓶、注射器、ラベル、IVバッグを、特定の時点でカメラに提示することだけである。
【0039】
本発明のシステムのプロセッサのソフトウェアにおけるアルゴリズムは、調製プロセスを通して作製者を導く対話型アシスタントの役割をするように適応させられ得る。このプロセスは、処方箋に従った調製のために正しい薬物及び機器を選択することを含み、オプションとして、処方箋を患者の病歴と比較することによって、患者に処方箋が正しく適合していることを検証することを含む。
【0040】
本発明の方法は、多くの異なる方法で実行されることが可能であり、それらの方法の代表的な実例が、以下の実例において説明される。他の多くのシナリオが可能であること、並びに調合されるべき処方箋及び/又は調合されるべき薬物の厳密な性質に依存して、ステップのうちのいくつかが、省かれても、他のステップが追加されてもよく、ステップの順序が変更されてもよいことを理解されたい。
【0041】
本発明の方法の実施例は、2つの段階から成る。図2に示される第1の段階は、任意のタイプの処方箋を調合するためにたどられる一般的なステップを備える。この段階において、本発明のソフトウェアにおけるアルゴリズムは、患者及び患者の病状に処方箋が正しく適合していることを検証し、その調製のための正しい薬物及び機器を選択する際に作製者を監督する、又は導くように適応させられる。第2の段階において、本発明のシステムのソフトウェアにおけるアルゴリズムは、調製プロセスを通して作製者を導き、監督する対話型アシスタントの役割をするように適応させられる。プロセスの第2の段階の厳密なステップは、調合されている処方箋に非常に特有である。いくつかの典型的な実例について、図3図4A、及び図4Bにおいて説明される。
【0042】
図2は、本発明のプロセスの第1の段階におけるステップを概略で示す流れ図である。図示されるプロセスは、本発明のシステムの能力を例示することだけを意図している。実際には、第1の段階は、説明されるとおりに厳密に実行されることも、それらのステップが実行される順序が変更され、且つ/又はそれらのステップのうちのいくつかが全く実行されない多くの異なる変形において実行されることも可能である。
【0043】
プロセスのこの段階は、調合されるべき処方箋を包含するラベルの画像が、システムのカメラのうちの1つによって撮影され、そのラベル上の情報が、システム・プロセッサにおけるOCRソフトウェアを使用して読み取れると、開始される(101)。このラベルは、医師の指示に従って記入され、患者の個人識別情報に加えて、患者に投与するための薬物を調製するために作製者によって必要とされるすべての情報を備える。処方箋ラベルは、調製された薬物が患者に投与される手段、例えば、IVバッグ又は注射器に通常、付けられる。処方箋ラベル上の情報の実例が、投与されるべき薬物の一般名及びブランド名、投与の方法、例えば、点滴静脈注射又は注射、希釈剤のタイプ、及び計算された希釈率である。画像から読み取られた処方箋は、作製者が正しい処方箋により作業していることを確実にするため、及びOCRソフトウェアが、ラベル上の書込みを正確に読み取っていることを確かにするためにも、病院データ・ネットワークにおける処方箋と比較される。
【0044】
本発明の実施例において、システムは、薬局における調製の流れを管理し、複数の作製者の間に異なる調製を分割するように適応させられる。このオプションは、ほとんどの病院薬局において、病院のデータ・ネットワークから来る、調製される必要のある処方箋の絶え間ない流れが存在するため、有用である。これらの処方箋のうちのいくつかは、緊急である一方で、他のいくつかは、取り消される、又は遅延される必要が有り得る(例えば、治療を待っている間に患者の状態が急に悪化するため)。
【0045】
本発明のシステムの実施例において、ディスプレイ画面は、調製室の外に、例えば、薬局オフィスの中に、又は病院管理者のオフィス、若しくは病院マネージャのオフィスの中に配置される。この画面は、システムが設置されたすべてのキャビネットからのビデオを表示する、又は任意の時点でシステムで作業している作製者の各々のGUIからの実際の画面画像を表示することができる分割された画面であることが可能である。
【0046】
ステップ101で、システムは、患者に薬物を投与するために正しいIVバッグ又は正しい注射器が選択されていることの検証も行う。このステップにおいて、システムは、薬物例外、すなわち、その薬物が、非PVC機器で扱われること、光若しくは日光からの保護などを要求するかどうかの検証も行う。ステップ102で、システム・プロセッサにおけるアルゴリズムが、病院データベースから患者の病歴を読み取り、外部データベース、例えば、病院、国の保健省、薬物製造業者及び医療機器製造業者、FDA若しくはNIHのデータベースからの最新の情報で絶えず更新される、システムの内部データベースを調べて、処方された薬物又は薬物の組合せが、その患者の状態に適切であるかどうかを判定する。答えが「いいえ」である場合、システムは、例えば、電子メール又はSMSによって、処方する医師と連絡をとるよう作製者に指示して、又は処方する医師と直接に連絡をとり、その医師の指示を検証する。答えが「はい」である場合、プロセスは、ステップ103に進む。このステップにおいて、システムは、ディスプレイ画面31を介して、薬局ストレージ・ユニットから、処方された有効成分を有する薬物、及び希釈剤を包含する容器を獲得するよう作製者に指示する。作製者は、推奨される薬物容器を獲得して、それらの容器を作業表面32上に置く。ステップ105において、薬物容器の画像が、システムによって記録され、画像処理ソフトウェアが、ステップ106において、システムの内部データベースの中の類似したデータ、及び読み取られたばかりの処方箋と比較される、例えば、ラベル上の印刷、バーコード、内容物の色、NDC番号などからの識別データを生成して、正しい薬物、及び容器内の正しい量の薬物が作業表面上に置かれていることを検証する。ステップ106において、誤りが検出された場合、可聴の警報若しくは視覚的警報(又はその両方)が、システムによって生成される。手順の他のすべての画像収集ステップの場合と同様に、このステップにおいても、システムが、十分に識別するデータを画像化することができない場合、システムは、薬物容器を動かすよう、又は回転させるよう作製者に指示することが可能である。薬物容器を動かすこと、又は回転させることが、誤りの原因を除去しない場合、プロセスは、ステップ104に戻り、又はシステムは、作製者、又は作製者の監督者が、データを手作業で挿入することを可能にすることができる。その目的で、特別な許可、例えば、パスワード又は磁気カードが必要とされる。誤りが全く検出されなかった場合、プロセスは、処方箋において要求される薬剤を調製するのに必要とされる非薬物アイテム、例えば、或るサイズの注射器、及び戻すプロセスが要求される場合、要求される希釈剤を有する容器を選択するよう作製者が指示されるステップ107に進む。ステップ108において、作業スペース上のアイテムの画像が、システムによって記録され、ステップ109で、画像処理ソフトウェアが、それらのアイテムの識別特徴、例えば、製造業者カタログ番号、そのアイテム上に印刷された量の目盛を、システムの内部データベースからの類似した特徴と比較し、処方箋と比較された際に正しいアイテムが選択されているかどうかを判定する。ステップ109において誤りが検出された場合、可聴の警報若しくは視覚的警報(又はその両方)が、システムによって生成され、プロセスは、ステップ107に戻る。誤りが全く検出されなかった場合、プロセスは、段階2に進む。
【0047】
図2は、オプションである多くのステップを示すこと、及び異なる実施例において、本発明のシステムのプロセッサのソフトウェアにおけるアルゴリズムは、これらの特徴を伴って機能するようにも、伴わずに機能するようにも構成され得ることが、再び強調される。例えば、いくつかの実施例において、ステップ102及び103は、実行されず、アルゴリズムは、医師によって書かれ、ステップ101において読み取られた処方箋が正しいものと想定する。別の実例として、ステップ107において、システムは、いずれの非薬物成分が薬剤を調製するのに必要であるかを特定するように適応させられなくてもよい。作製者が、作製者の知識及び経験に基づいて、又は学術文献若しくは専用のデータベースを参照して、成分を選択することが可能である。
【0048】
本明細書の後段で実例が説明される第2の段階は、第1の段階とは無関係に実行されることが可能であり、方法のいくつかの実施例において、第1の段階は、全く実行されないことに留意されたい。
【0049】
図3は、患者に血圧を下げる2つの錠剤、及び抗鬱剤カプセルを投与することを要求する処方箋を調合する単純なプロセスの段階2を概略で示す流れ図である。この手順の見掛けの単純さにもかかわらず、第1の段階のすべてのステップがたどられる。これらの薬物は、これらの薬物を比較的大量に包含する包装、例えば、ボトルにおいて通常、供給され、したがって、ステップ201において、作製者は、各包装から要求される数の錠剤を取り出し、それらの錠剤を作業表面上に置く。ステップ202において、作業表面の画像が、スキャンされ、画像処理ソフトウェアが、色、形、及び識別マークなどの錠剤の特徴を識別する。ステップ203において、それらのスキャンから識別された特徴が、薬物製造業者のデータベースなどのデータベースからの情報と比較される。このステップは、容器に誤ったラベルが付けられていないこと、又はより早期の調製手順において錠剤が不注意で誤ったボトルに戻されていないことを確認するように実行される。システムが、正しい錠剤が選択されていることを検証することができない場合、警報が、生成され、プロセスは、ステップ201に戻る。システムが、正しい錠剤が選択されていることを検証した場合、プロセスは、ステップ204に進む。ステップ204において、ソフトウェアが、画像を解析して、各タイプの正しい数の錠剤が容器から取り出されているかどうかを判定する。答えが「いいえ」である場合、プロセスは、ステップ201に戻される。答えが「はい」である場合、錠剤は、第1の段階のステップ107において作業表面上に置かれた容器、例えば、紙コップの中に入れられる。ステップ206において、患者の病棟番号及び部屋番号、患者の名前及び識別番号などの情報、並びにその薬剤が調製された日時、及び誰によって調製されたか、その薬剤がいつ投与されるべきか、処方する医師などのその他の情報が書かれたラベルが、作成され、錠剤を包含する容器上に付けられる。ステップ206は、図示されるとおりに実行されること、又はより早期に、例えば、ステップ109の後、若しくはステップ204の後に実行されることが可能であることに留意されたい。最後に、ステップ207において、ラベルが付けられた容器が、患者に薬物を投与することを担当する職員に届けられるように薬物カート上に置かれる。
【0050】
図4A及び図4Bは、はるかに複雑な調合手順の段階2を概略で示す流れ図の2つの部分である。この実例において、処方箋は、点滴静脈注射によって患者に2つの薬物から成る薬剤を投与することを要求する。薬物Aが、20ミリリットルのガラス小瓶内の2グラムの乾燥粉末として供給され、薬物Bが、20ミリリットルのガラス小瓶内の液体として供給される。処方箋は、処方箋ラベル(ステップ101参照)が付けられた輸液バッグに追加された1グラムの戻された薬物A及び10ミリリットルの薬物Bを要求する。
【0051】
ステップ301において、作製者が、システムのカメラのうちの1つの視野内に薬物Aを置くように指示され、そのカメラは、薬物Aを包含する小瓶を画像化する。プロセッサにおけるソフトウェアが、それらの画像を解析して、その薬物が、処方箋において要求される薬物と合致するかどうかを判定する。答えが「いいえ」である場合、警報が、生成され、作製者は、正しい薬物ボトルを見つけなければならない。答えが「はい」である場合、プロセスは、ステップ302に進む。
【0052】
ステップ302で、薬物ボトルの画像が解析され、NDC番号又はバーコードが読み取られて、薬物が戻されなければならないかどうかが判定される。ボトルに包含される薬物は、それまでに戻されている、例えば、以前の調製からの「残りもの」である可能性があるので、システムは、戻すプロセスが実行されなければならないことを、例えば、ディスプレイ画面上のアイコンを押すことによって、検証するよう作製者に求めて作製者に指示する。答えが「いいえ」である場合、プロセスは、ステップ308に飛ぶ。答えが「はい」である場合、プロセスは、ステップ303に進む。
【0053】
ステップ303で、システムが、特定の希釈剤を選択するよう作製者に指示する。容器、例えば、希釈剤を包含するIVバッグが、システム・カメラによって画像化され、ソフトウェアにおけるアルゴリズムが、容器上の情報を読み取り、その結果をデータベースと比較して、正しい希釈剤が選択されているかどうかを判定する。答えが「いいえ」である場合、警報が、生成され、システムは、異なる希釈剤を選択するよう作製者に指示する。正しい希釈剤が選択されている場合、プロセスは、ステップ304に進む。
【0054】
ステップ304において、システムが、或るサイズの注射器を、指定された量の希釈剤で満たすよう作製者に指示する。ステップ305において、注射器が、希釈剤を有する容器から分離され、満たされた注射器の画像が解析される。システムのソフトウェア・アルゴリズムが、注射器内の液体の中の気泡を探し、量を測定して、その量を、システム・データベースにおいて推奨される量と比較することも行う。気泡が検出され、且つ/又は希釈剤の量が間違っている場合、警報が、生成され、作製者は、それらの気泡を除去する知られている手順に従い、プロセスは、ステップ304に戻って、注射器内の希釈剤の量を調整する。気泡が全く存在せず、量が正しい場合、プロセスは、ステップ306に進む。
【0055】
ステップ306で、システムが、希釈剤を包含する注射器を、薬物Aを包含する小瓶につなげ、希釈剤を小瓶に注入するよう作製者に指示する。ステップ307において、注射器が、小瓶に依然としてつなげられている間に画像化され、それらの画像が解析されて、注射器が現時点で空であることが確認される、すなわち、要求される量の希釈剤が、小瓶内の粉末状の薬物Aに加えられていることが確認される。ステップ308において、小瓶の内容物を完全に混ぜた後、作製者は、小瓶から、要求される量の戻された薬物Aを注射器内に抜き出すよう指示される。
【0056】
ステップ309において、注射器が、戻された薬物Aを包含する小瓶から分離され、満たされた注射器の画像が解析される。システムのソフトウェア・アルゴリズムが、注射器内の液体の中の気泡を探し、量を測定して、その量を、処方箋において要求される量と比較することも行う。気泡が検出され、且つ/又は薬物Aの量が間違っている場合、警報が、生成され、作製者は、それらの気泡を除去する知られている手順に従い、プロセスは、ステップ308に戻って、注射器内の薬物Aの量を調整する。気泡が全く存在せず、量が正しい場合、プロセスは、ステップ310に進む。
【0057】
ステップ310において、システムが、戻された薬物Aを包含する注射器を、患者に投与されるIVバッグにつなげ、薬物AをIVバッグに注入するよう作製者に指示する。ステップ311において、注射器が、IVバッグに依然としてつなげられている間に画像化され、それらの画像が解析されて、注射器が現時点で空であることが確認される、すなわち、要求される量の薬物AがIVバッグに加えられていることが確認される。
【0058】
薬物Aに関する調製は、現時点で完了した。ステップ312において、作製者が、システムのカメラのうちの1つの視野に薬物Bを置くように指示され、そのカメラは、薬物Bを包含する小瓶を画像化する。プロセッサにおけるソフトウェアが、それらの画像を解析して、その薬物が、処方箋において要求される薬物と合致するかどうかを判定する。答えが「いいえ」である場合、警報が生成され、作製者は、正しい薬物ボトルを位置づけなければならない。答えが「はい」である場合、プロセスは、ステップ313に進む。
【0059】
ステップ313において、薬物ボトルの画像が解析され、NDC番号又はバーコードが読み取られて、薬物が戻されなければならないかどうかが判定される。薬物Bは、戻される必要がないので、プロセスは、ステップ314に進む。
【0060】
ステップ314において、作製者が、小瓶から、要求される量の薬物Bを注射器内に抜き出すよう指示される。
【0061】
ステップ315において、注射器が、薬物Bを包含する小瓶から分離され、満たされた注射器の画像が解析される。システムのソフトウェア・アルゴリズムが、注射器内の液体の中の気泡を探し、量を測定して、その量を、処方箋において要求される量と比較することも行う。気泡が検出され、且つ/又は薬物Bの量が間違っている場合、警報が生成され、作製者は、それらの気泡を除去する知られている手順に従い、プロセスは、ステップ314に戻って、注射器内の薬物Bの量を調整する。気泡が全く存在せず、量が正しい場合、プロセスは、ステップ316に進む。
【0062】
ステップ316において、システムが、薬物Bを包含する注射器を、患者に投与されるIVバッグにつなげ、薬物BをIVバッグに注入するよう作製者に指示する。ステップ317において、注射器が、IVバッグに依然としてつなげられている間に画像化され、それらの画像が解析されて、注射器が現時点で空であることが確認される、すなわち、要求される量の薬物BがIVバッグに加えられていることが確認される。
【0063】
薬物Aと薬物Bの両方に関する調製が、現時点で完了した(ステップ318)。ステップ319において、「終了」という語若しくは類似した語、又は他のデータが印刷されたラベルが、生成されて、薬物A及び薬物Bを包含するIVバッグに付けられる。患者の名前と、IVバッグの内容物とを含むすべての関係のある情報は、ステップ101においてそのバッグに付けられた処方箋ラベル上に既に存在する。
【0064】
最後に、ステップ320において、作製者が、使用されていない材料をどのように処分すべきかを指示され、例えば、作製者は、それぞれの小瓶内に残っている量の薬物B又は戻された薬物Aが、ストレージ・ユニットに戻されることが可能であるかどうかを告げられ、戻されることが可能である場合、どのような条件下で、例えば、冷蔵されて、又は室温で戻されることが可能であるかが告げられる。
【0065】
処方箋を調合するための手順のすべてにおいて、特に、毒性のある薬物、及び汚染による悪影響を受けやすい薬物を扱う際に、システムは、ディスプレイを介して、無菌状態及び安全性を維持する正しい手順を作製者に知らせる。
【0066】
本明細書で前述したとおり病院薬局に設置されることに加えて、システムのポータブルな実施例が、例えば、病棟において患者に薬剤を供給するのに使用されるカート上に備えられることが可能である。作業表面を除いて、システムの残りの部分は、スチル・カメラ又はビデオ・カメラと、ディスプレイ画面と、処理ユニットとを備えるハンドヘルド・ユニットとして提供され得る。ハンドヘルド・システムは、専用のユニットとして、又はセルラ電話機のアプリケーションとして実現され得る。この実施例において、カメラは、患者のベッド、又は患者のリスト・バンドに付けられたカルテを画像化することによって、患者の身元を検証するのに使用され得る。
【0067】
本発明の実施例は、このステップを実現する顔認識ソフトウェアを備え得る。患者の身元が確認されると、薬剤を投与する個人が、患者のために調製された容器をカートの上に置く。容器、例えば、注射器、IVバッグ、錠剤を包含するカップの上のラベルの画像が、カメラで撮影され、解析されて、患者が、医師によって患者のために処方された薬剤を受け取ることが検証される。カメラは、投与プロセスの画像を撮影することをつづけて、薬剤が適切に投与されていることのドキュメンテーションをもたらすことが可能である。
【0068】
注射器を扱う際、1つの一般的な問題は、注射器のシリンダ内に引き入れられる液体と一緒に気泡が存在することである。気泡は、投与量の精度に影響を及ぼし、患者の血管に注入された場合、深刻で、ときとして、命にかかわる問題を生じさせ得る。光学特性の違いのため、注射器内の空気と液体の間に視覚的に顕著な違いが存在する。画像処理アルゴリズムが、この違いを識別することができ、このため、満たされた注射器の画像の中で気泡が存在することを識別することができ、薬剤の作製者又は管理者に対して警告を生成することができる(図4A及び図4Bにおけるステップ305、309、及び315参照)。薬局においても、ポータブル・ユニットにおいても、本発明のシステムの実施例において使用されてきた気泡の存在を識別する1つの方法は、作業表面の少なくとも一部分を、水平面に対して或る角度で、例えば、5度〜90度、傾けることである。液体で満たされた後、注射器は、縦軸が表面の傾きと揃えられて先端を上にしてこの表面上に置かれる。この構成において、気泡(又は複数の気泡)は、液体の最上部に昇り、画像処理アルゴリズムは、その気泡を識別すること、及び/又はその気泡の実際の量を測定することが容易にできる。同時に、アルゴリズムは、製造業者によって注射器の壁の上に印刷された目盛を「数えること」、又は注射器ピストンと注射器のシリンダの終端の間の距離を測定すること、及びこの距離に、システムのデータベースからとられたシリンダ内径を掛けることによって量を計算することによって、注射器シリンダに引き入れられた液体の量を測定する。次に、アルゴリズムは、その量を承認し、又は気泡の存在について警告して、その液体量からその気泡量を引くことによって実際の液体量を計算する。システムのソフトウェアが注射器内の気泡の量を識別するのを支援する代替の方法は、照明された表面上、又は透明の表面上に注射器を置き、その表面の下に照光の源を備えることである。この実施例において、注射器に対する光の入射角は、注射器内の液体の臨界角未満であることが可能であり、光は、それらの気泡の可視性を高める光学効果を生じるように偏光されることが可能である。別の実施例において、注射器は、水平面に対して或る角度で保持されることが可能であり、注射器内の気泡及び/又は液体の量は、カメラ画像から特定されることが可能である。
【0069】
本発明のシステムの実施例は、有線通信接続又はワイヤレス通信接続によってシステムに接続されるラベル・プリンタを備える。ラベル・プリンタは、特定の患者のための調製プロセスを完成させる。調製プロセスが終えられた後(図4Bにおけるステップ319)、ラベルが、ラベル・プリンタから印刷され、患者に投与されるべき薬剤を包含するIVバッグ若しくは注射器(IVプッシュ)、又は他の容器に付けられる。それらのラベルには、その薬剤が患者に投与される調製ができていることを意味する情報、例えば、「終了」又は「調製完了」という語で明確に印が付けられ、システムのデータベースの中に記憶された、例えば、調製及び投与のタイムスタンプ、作製者の名前、システムのロゴ、及び/又は特定の調製についてのデータと照合され得るコードを含み得る情報が印刷されることが可能である。印刷されたラベルの代わりに、電子ラベル、例えば、RFIDチップが生成されて、IVバッグ又は注射器に付けられることも可能である。
【0070】
本発明のシステムの実施例は、他の構成要素、例えば、UV滅菌ユニット、オゾン滅菌ユニット、アルコール滅菌ユニット、又はクロロホルム滅菌ユニットを含むことも可能である。システムのプロセッサにおけるソフトウェアのアルゴリズムは、調製プロセスに関与するいずれのアイテムがこのユニットにおける滅菌を要求するか、調製プロセスにおけるいずれの段階においてアイテムがこのユニットの中に入れられるべきかをユーザに指示するとともに、最適の結果を実現するようこのユニットの動作を制御するよう適応させられる。
【0071】
本発明の実施例は、例示として説明されてきたものの、本発明は、特許請求の範囲を逸脱することなしに、多くの変更、変形、及び適応を伴って実行され得ることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4A
図4B