(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記使用が、カソードと、リチウム導電性電解質・セパレータ系と、グラファイト含有アノードとを含むガルバニ電池において行われ、セル製造に際して(つまり、初回の充電サイクルの前に)前記アノードに非電気化学的方法で製造され、その後コーティングされたリチオ化グラファイトが添加されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
前記別の粉末状のリチウム挿入材料は、グラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物、リチウムと合金化可能な金属粉末、還元された形態で(つまり、酸化数がゼロの金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物、金属水素化物、リチウムアミド、リチウムイミド、テトラリチウム窒化水素化物、黒リン、ならびにリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
リチウムイオン電池のための電気化学セルは、標準的に放電状態で組み立てられる。これは、2つの電極が空気および水に対して安定した形態で存在していることが利点である。ここで、電気化学的に活性なリチウムは、もっぱらカソード材料の形態で導入される。カソード材料は、リチウム金属酸化物、例えば酸化リチウムコバルト(LiCoO
2)を電気化学的活性成分として含む。現在市販されている電池のアノード材料は、放電状態で活性材料として372Ah/kgの理論的な電気化学容量を有するグラファイト材料を含む。一般に、このグラファイト材料は、全くリチウムを含んでいない。将来的な構造では、比較的高い比容量を有する(同じくリチウムを含まない)材料、例えば合金アノード、しばしばケイ素またはスズをベースにする合金アノードも使用され得る。
【0002】
実際の電池系では、カソード材料によって導入されたリチウムの一部は、不可逆過程によって特に初回の充電・放電工程の間に失われる。さらに、リチウムを含まないグラファイトをアノードとして有する典型的なリチウムイオン電池構造は、リチウムを含まない潜在的なカソード材料(例えばMnO
2)が使用できないことが欠点である。
【0003】
グラファイトの場合、特に、酸素を含有する表面基が、初回の充電過程でリチウムと不可逆的に反応して安定した塩になることを出発点とする。リチウムのこの一部は、後続の電気化学的な充電/放電過程の間に失われる。それというのは、形成された塩は、電気化学的に不活性であるからである。合金アノード、例えばケイ素アノード材料またはスズアノード材料の場合でも同様である。酸化物の不純物は、リチウムを以下の通り消費する:
【化1】
【0004】
Li
2Oの形態で結合されているリチウムは、もはや電気化学的に活性ではない。約1.5Vより小さい電位を有するアノード材料を使用する場合、リチウムの別の一部は、負極上で不動態層(いわゆる
solid
electrolyte
interface、SEI)を形成するために不可逆的に消費される。グラファイトの場合、このようにして正極材料(つまり、カソード材料)によって導入されたリチウムの合計約7質量%から20質量%までが失われる。スズまたはケイ素アノードの場合、この損失は一般にさらに大きい。以下の方程式(2)により脱リチオ化された「残留している」遷移金属酸化物(例えばCoO
2)は、活性リチウムがないためガルバニ電池の可逆的な電池化学容量に寄与できない:
【化2】
【0005】
初回の充電/放電サイクルのこの不可逆的損失を最小限に抑えるか、または完全に補うことを目標とする研究は多い。この制約は、追加のリチウムを金属形態で、例えば安定化された金属粉末(「SLMP」)として電池セルに導入することによって乗り越えられる(例えばUS2008283155A1;B.Meyer、F.Cassel、M.Yakovleva、Y.Gao、G.Au、Proc.Power Sourc.Conf.2008、43rd、105〜108)。しかし、これは、リチウムイオン電池の電池電極を製造するための通常の方法を実施できないことが欠点である。例えば、先行技術によれば、不動態化されたリチウムは空気主成分の酸素および窒素と反応する。この反応の速度は、確かに安定化されていないリチウムと比べて非常に遅くなっているが、比較的長い間空気に曝露される場合、乾燥空間条件下でも表面の変化および金属含有率の減少は避けられない。さらに深刻な欠点としては、Li金属粉末と、多くの場合、電極準備に使用される溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)とのきわめて激しい反応が見られることである。確かに、安定化またはコーティングされたリチウム粉末を準備することによって安全な取り扱いに向けて重要な進歩を達成することができたが、先行技術により安定化されたリチウム粉末の安定性は、実際条件下で、NMPをベースにする電極製造法(懸濁法)の場合、不動態化されたリチウム粉末を危険なく使用することを保証するには不充分であることが多い。コーティングされていないか、または不充分にコーティングされた金属粉末は、すでに室温で短い誘導時間の後にすでにNMPと激しく(熱暴走(thermisches run away))反応しうる一方、このプロセスは、コーティングされたリチウム粉末の場合、高温(例えば30℃または80℃)で初めて行われる。例えば、US2008/0283155には、例1のリン酸でコーティングされたリチウム粉末が30℃で混合した直後にきわめて激しく(暴走)反応する一方、さらにワックスでコーティングされた粉末は、30℃ではNMP中で少なくとも24時間安定していることが記載されている。WO2012/052265に記載のコーティングされたリチウム粉末は、約80℃まではNMP中で反応速度が安定しているが、それをさらに超過する温度では発熱的に、多く場合、暴走のような現象下に分解する。主にこの理由から、リチウム粉末の、リチウムイオン電池のためのリチウムリザーバー(Lithiumreservoir)としての使用、もしくは電極材料のプレリチオ化(Praelithiierung)のための使用は、これまで商業的に定着できなかった。
【0006】
代替的に、グラファイト・リチウム層間化合物(LiC
x)をアノードに添加することによって、さらなる電気化学的に活性なリチウムを電気化学的なリチウムセルに導入することもできる。そのようなLi層間化合物は、電気化学的または化学的に製造することができる。
【0007】
電気化学的製造は、慣用のリチウムイオン電池の充電時に自動的に行われる。このプロセスによって、最大1:6.0のリチウム:炭素の化学量論を有する材料を得ることができる(例えばN.Imanishi、「Development of the Carbon Anode in Lithium Ion Batteries」:M.Wakihara and O.Yamamoto(ed).:Lithium Ion Batteries、Wiley−VCH、Weinheim 1998参照)。そのようにして製造された部分的または全体的にリチオ化された材料は、基本的に、充電されたリチウムイオン電池から保護ガス雰囲気(アルゴン)下に取り出すことができ、相応の条件調整(好適な溶媒による洗浄および乾燥)の後、新たな電池セルのために使用することができる。それに伴う費用が高いため、この工程は分析試験の目的のためにのみ選択される。この方法は、経済的な理由から実践的な重要性はない。
【0008】
さらに、グラファイト材料をリチオ化するための化学的調製方法がある。リチウム蒸気は、400℃の温度以上でグラファイトと反応してリチウム挿入化合物(Lithiumeinlagerungsverbindungen)(リチウムインターカレート(Lithiuminterkalaten))になることは公知である。しかし、450℃を超過すると、不所望の炭化リチウムLi
2C
2が形成される。この挿入反応は、高配向性グラファイト(HOPG=
Highly
Oriented
Pyrolytic
Graphite)によって良好に作用する。液体リチウムを使用する場合、すでに350℃の温度で充分である(R.Yazami、J.Power Sources 43〜44(1993)39〜46)。一般的に、高温の使用はエネルギー的な理由から不都合である。リチウムを使用する場合、アルカリ金属の高い反応性および腐食性がそれに加わる。したがって、この製造変法も同じく商業的に重要ではない。
【0009】
極端に高い圧力(2GPa、20,000atmに相当)を使用する場合、リチウムインターカレーションは、すでに室温で達成することができる(D.Guerard、A.Herold、C.R.Acad.Sci.Ser.C.、275(1972)571)。そのような高圧は、殊に特別な液圧プレスでしか達成することができず、これは最小の実験室量の製造にしか適していない。つまり、商業的な量のリチウム・グラファイト層間化合物を製造するための工業的・産業的に好適な方法ではない。
【0010】
最後に、ボールミルにおける高エネルギー粉砕を用いるリチオ化された天然グラファイト(セイロングラファイト)の製造が記載された。そのために、現在のスリランカ産の主に六方晶系構造の天然グラファイトとリチウム粉末(平均粒径170μm)が、1:6、1:4および1:2のLi:C比で反応させられた。モル比1:2によってしか目的のモル比LiC
6にするための完全なリチオ化を行うことができなかった(R.Janot、D.Guerard、Progr.Mat.Sci.50(2005)1〜92)。この合成変法も工業的・商業的に不都合である。一方では、充分または完全なリチオ化を達成するために、きわめて高いリチウム過剰量が必要とされる。リチウムの大部分は失われるか(ミル内で、およびミルボール上で)、もしくはリチウムの大部分は、インターカレートされない(つまり、依然として単体の形態で存在している)。他方、一般的に、リチウムイオン電池のアノードを製造する場合、条件調整されていない天然グラファイトは使用されない。それというのは、天然グラファイトの機械的完全性が、電池サイクル時の溶媒和されたリチウムイオンのインターカレーションによるいわゆる剥離(Exfoliierung)の結果、不可逆的に損なわれるからである(P.Kurzweil、K.Brandt、「Secondary Batteries−Lithium Rechargeable Systems」:Encyclopedia of Electrochemical Power Sources、J.Garche(ed.)、Elsevier Amsterdam 2009、Vol.5、1〜26ページ参照)。したがって、比較的安定した合成グラファイトが使用される。そのような合成グラファイトは、結晶性があまり高くなく、比較的低いグラファイト化度を有している。最後に、天然グラファイトに必要とされる好ましくは12時間の長い粉砕時間(29ページ)は不都合である。上記理由から、記載された方法は商業化されなかった。
【0011】
JanotおよびGuerardによる上記文献には、リチオ化されたセイロングラファイトの適用特性も記載されている(第7章)。電極製造は、グラファイトを銅メッシュに単純に押し付けることによって行われる。対向電極および参照電極としてリチウムリボン(Lithiumbaender)、電解質としてEC/DMC中のLiClO
4溶液1Mが使用される。単純に押し付けることによって電極を準備する方法は、商業的な電池の電極製造において適用される先行技術に相応しない。結合剤を使用せずに単純にプレスし、場合によって導電性添加剤を添加することは、安定した電極をもたらさない。それというのは、充電/放電時に起こる体積変化は不可避に電極を粉々にするに違いなく、それによって電池セルの機能性が損なわれるからである。
【0012】
本発明の基礎をなす課題は、リチウム電池セルのための部分的または全体的にリチオ化されたアノードグラファイトを示すこと、ならびにそれを用いて組み立てられたリチウムセルであって、その容量が、追加のリチウムリザーバーによって先行技術と比べて高められているリチウムセルを提供することである。
【0013】
さらに、この目的を達成するための方法が示される。この方法は、
1.廉価で、市場で入手できる材料、特に合成グラファイトを出発点として、
2.リチウムを高い収率で利用し、かつ
3.通常の製造法、つまり、特に、溶媒をベースにする分散液流し込み法もしくは分散液被覆法を使用してアノード製造を可能にすることが望ましく、
ここで、アノード製造における通常の溶媒、例えばNMPは、危険なく使用可能であることが望ましい。
【0014】
本願の課題は、アノードにおいて初回の充電サイクルの前に、粉末状の、熱力学的に安定した化学量論限界LiC
6まで部分的または全体的にリチオ化された(以下において簡潔に「(部分)リチオ化」と表される)合成グラファイトを含むか、または(つまり、そのアノードが)その合成グラファイトからなるリチウム電池セルが使用されることによって解決され、ここで、その合成グラファイトのリチオ化は、非電気化学的方法で標準圧または約10bar未満のわずかな正圧下にもたらされた。
【0015】
合成アノードグラファイトは、多数の製造者によって提供されており、特にSGL Carbon、HitachiおよびTimcalによって提供される。これらの製品は、リチウムイオン電池のアノード材料として使用する場合に特に重要である。例えば、Timcal社の合成グラファイトSLP30は、31.5μmの平均粒径を有する粒子からなり、43mAh/gの不可逆的容量(365mAh/gの可逆的容量を基準として約12%に相当)を有している(C.Decauxら、Electrochim.Acta 86(2012)282)。
【0016】
本発明による(部分)リチオ化合成グラファイト粉末は、粉末状の合成グラファイトをリチウム金属粉末と混合して、撹拌、粉砕および/またはプレスにより10bar未満の圧力で反応させて、組成LiC
x(式中、x=6〜600)のLi・グラファイトインターカレートを形成させることによって製造される。所望の最終化学量論に応じて、挙げられた2つの原材料は、1:少なくとも3〜1:最大600、好ましくは1:少なくとも5且つ1:最大600のLi:Cのモル比で使用される。化学量論限界のLiC
6を上回って導入されたリチウムは、グラファイト表面に微細に分布した形態で存在していると推測される。
【0017】
前述の反応は、0℃〜180℃、好ましくは20℃〜150℃の温度範囲で、真空で、または成分が金属リチウムおよび/またはリチウム・グラファイト層間化合物と反応しないか、または受け入れられるほどゆっくりとしか反応しない雰囲気下に行われる。これは、好ましくは乾燥空気または希ガスであり、特に好ましくはアルゴンである。リチオ化工程は、標準的なまたは適度にしか高められていない周囲圧力(最大10bar)で行われる。
【0018】
リチウムは、約5μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmの平均粒径を有する粒子からなる粉末形態で使用される。コーティングされた粉末、例えばFMC社によって提供される、少なくとも97質量%のリチウム含有率を有する安定化された金属粉末(Lectromax powder 100、SLMP)も、例えば合金を形成する元素で被覆された少なくとも95質量%の金属含有率を有する粉末(WO2013/104787A1)も使用されてよい。99質量%以上の金属含有率を有する、コーティングされていないリチウム粉末が使用されるのが特に好ましい。電池分野で使用する場合、その純度は、金属の不純物という点では、きわめて高くなければならない。特に、ナトリウム含有率は、200ppm超であってはならない。Na含有率は、100ppm以下であるのが好ましく、80ppm以下であるのが特に好ましい。
【0019】
合成グラファイトとして、工業的に製造された、天然(鉱山)から得られないあらゆる粉末状のグラファイト品種が考慮に入れられる。合成グラファイトの出発材料は、グラファイト化可能な炭素担体、例えば石油コークス、ニードルコークス、カーボンブラック(Industrieruss)、植物廃棄物など、ならびにグラファイト化可能な結合剤、特にコールタールピッチまたは熱硬化性合成樹脂である。使用される合成グラファイトは、約1μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μmの範囲の平均粒径であることを特徴としている。一般に、使用される合成グラファイトは、典型的な天然グラファイト、例えばスリランカ/セイロン産グラファイトよりも低いグラファイト化度または配向度(および低い結晶化度)を有している。グラファイト材料のグラファイト化度は、X線撮影または(比較的単純な)ラマン分光法による測定による相関性の高いドメイン径L
a(つまり、平面結晶子径)の正確な測定によって特性化することができる。グラファイトは、約1575cm
-1〜1581cm
-1(「Gバンド」)で典型的なラマン吸収を示す。この吸収は、損なわれていない格子のsp
2結合した炭素の平面での振動数(E
2g Gモード)に起因する。多結晶性または無秩序なグラファイトの場合、ラマンピークは、典型的に1355cm
-1(A
1g)ならびに(強度が比較的小さい場合)1620cm
-1、1500cm
-1および1550cm
-1が加わる(いわゆる「Dバンド」、D=Defekt(欠陥))。DバンドとGバンドの強度の信号比I
D:I
Gから、ドメイン径L
aを計算することができ、この径は、結晶化の程度およびそれによってグラファイト化度を表すものである(A.C.Ferrari and J.Robertson、Phys.Rev.B、61(2000)14095〜107;Y.−R.Rhimら、Carbon 48(2010)1012〜1024)。高配向性結晶グラファイト(HOPG)および規則正しい天然グラファイトは、0〜約0.3のI
D:I
G比を有している(W.Guopingら、Solid State Ionics 176(2005)905〜909)。スリランカ/セイロン産の天然グラファイトは、約0.1のI
D:I
G比を有している(約40nmのドメイン径L
aに相当、M.R.Ammar、Carbon−Amer.Carbon Soc−print ed.611〜2、2000参照)。それに対して、T<1000℃の場合、温度処理された合成グラファイトは、典型的に1の明らかにより高いI
D:I
G比を有している(L
a=約4nmに相当、S.Bhardwajら、Carbon Lett.8(2007)285〜291)。高温温度処理によって、確かにドメイン径L
aを上げることができるが、このプロセスによって初回の充電/放電サイクルの不可逆的損失は、アノード材料として使用する場合増大する。したがって、合成アノードグラファイトは、電気化学的特性を改善する表面処理を必要とする。例えばWO2013/149807には、L
a=40nm(I
D:I
G=約0.15)の合成グラファイトは、酸素による後処理によってL
a径が15nm(I
D:I
G=約0.39)に減少することが記載される。ここで、不可逆的損失は、27%から11.5%に低下する。
【0020】
本発明によれば、I
D:I
G比が少なくとも0.2、特に好ましくは少なくとも0.5(最大29nm、特に好ましくは最大12nmのドメイン径L
aに相当)である合成グラファイトが好ましい。
【0021】
前述の反応(つまり、(部分)リチオ化)は、リチウム粉末とグラファイト粉末の2つの成分の混合または粉砕の間に行われる。実験室では、粉砕は、乳鉢および乳棒を用いて行われてよい。反応は、ミル、例えばロッドミル、振動ミルまたはボールミルで行われるのが好ましい。反応が遊星ボールミルで行われるのが特に有利である。その場合、実験室規模では、例えばFritsch社の遊星ボールミルPulverisette 7 premium lineが使用されてよい。遊星ボールミルを使用する場合、驚くべきことに、10時間未満、多くの場合それどころか1時間未満のきわめて有利に短い反応時間を実現することができる。
【0022】
リチウム粉末とグラファイト粉末からなる混合物は、好ましくは乾燥状態で粉砕される。しかし、それらの2つの物質に対して不活性の流体が、最大1:1(Li+Cの合計:流体)の質量比まで添加されてもよい。不活性の流体は、無水炭化水素溶媒、例えば液体のアルカンまたはアルカン混合物または芳香族溶媒であるのが好ましい。溶媒を添加することによって、粉砕工程の強度が弱められて、グラファイト粒子はあまり激しく粉砕されない。
【0023】
粉砕時間は、種々の要求およびプロセスパラメーターによる:
・ミルボール対生成物混合物の質量比
・ミルボールの種類(例えば硬さおよび密度)
・粉砕強度(ミルボールの回転数)
・リチウム粉末の反応性(例えばコーティングの種類)
・Li:Cの質量比
・生成物に特異的な材料特性
・所望の粒度など。
【0024】
当業者は、好適な条件を簡単な最適化実験によって見いだすことができる。一般に、粉砕時間は、5分から24時間まで、好ましくは10分から10時間までの間で変化する。
【0025】
上記方法により(部分)リチオ化された合成グラファイト粉末は、環境条件(空気および水)ならびに多くの官能化された溶媒および液体電解質溶液に対して依然として「活性」である、つまり、比較的長い時間を過ぎると反応することがあるが、一般に、激しく反応しないか、または決して暴走現象下に反応することはない。標準空気中で貯蔵する場合、含まれているリチウムは、ゆっくりと反応して安定した塩、例えば水酸化リチウム、酸化リチウムおよび/または炭酸リチウムになる。この感受性(Anfaelligkeit)は、コーティング法によって排除するか、または少なくともさらに緩和することができる。そのために、(部分)リチオ化合成グラファイト粉末は、下流のプロセス工程において気体状または液体のコーティング剤と好適な方法で反応させられる(「不動態化される」)。好適なコーティング剤は、金属リチウムならびにリチウム・グラファイト層間化合物に対して反応性の官能基または分子成分を含んでおり、それゆえ、表面利用可能なリチウムと反応する。リチウムを含む表面帯域の反応が行われて、空気に反応しないか、またはあまり空気に反応しない(つまり、熱力学的に安定している)リチウム塩(例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム、水酸化リチウム、リチウムアルコラート、カルボン酸リチウムなど)が形成される。このコーティング工程では、粒子表面には存在していないリチウム(例えばインターカレートされた部分)の大部分は活性形態で、つまり、約1V(vs.Li/Li
+)以下の電気化学的電位で保たれている。そのようなコーティング剤は、リチウムイオン電池技術から、負極のためのin−situ塗膜形成剤(SEI形成剤とも呼ばれる)として公知であり、例えば以下の調査論文に記載されている:A.Lex−Balducci、W.Henderson、S.Passerini、Electrolytes for Lithium Ion Batteries:Lithium−Ion Batteries、Advanced Materials and Technologies、X.Yuan、H.Liu and J.Zhang(eds.)、CRC Press Boca Raton、2012、147〜196ページ。以下に好適なコーティング剤を例示的に記載する。気体として、N
2、CO
2、CO、O
2、N
2O、NO、NO
2、HF、F
2、PF
3、PF
5、POF
3などが好適である。好適な液体のコーティング剤は、例えば、炭酸エステル(例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC));リチウムキレートボレート溶液(例えばリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);リチウムビス(サリチラト)ボレート(LiBSB);リチウムビス(マロナト)ボレート(LiBMB);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)を好ましくは以下から選択される有機溶媒中の溶液として;酸素含有複素環式化合物、例えばテトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン(2−メチル−THF)、ジオキソラン、カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよび/またはエチルメチルカーボネート、ニトリル、例えばアセトニトリル、グルタロジニトリル、カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、ギ酸ブチルおよびケトン、例えばアセトン、ブタノン);硫黄有機化合物(例えば亜硫酸エステル(亜硫酸ビニルエチレン、亜硫酸エチレン)、スルホン、スルトンなど);N含有有機化合物(例えばピロール、ピリジン、ビニルピリジン、ピコリン、1−ビニル−2−ピロリジノン)、リン酸、有機リン含有化合物(例えばリン酸ビニル)、フッ素含有有機および無機化合物(例えば部分フッ化炭化水素、PF
3、PF
5、LiPF
6、LiBF
4、非プロトン性溶媒中に溶解した後者2つの化合物)、ケイ素含有化合物(例えばシリコーン油、アルキルシロキサン)などである。
【0026】
コーティングは、電極(一般にアノード)製造における取り扱い特性および安全性を改善するだけでなく、電気化学的電池セルの適用特性も改善する。つまり、あらかじめコーティングされたアノード材料を使用する場合、(部分)リチオ化グラファイトアノード材料と電池セルの液体電解質との接触におけるSEI(
Solid
Electrolyte
Interface)のin situ形成が省略される。電気化学セルの外部で形成された安定化コーティング層は、その特性においていわゆる人工的なSEIに相当する。理想的な場合、電気化学セルの必要な形成プロセスは省略されるか、または少なくとも簡略化される。
【0027】
液体のコーティング剤を使用する場合、コーティングプロセスは、一般に不活性ガス雰囲気(例えばアルゴン保護雰囲気)下に0℃〜150℃までの温度で行われる。コーティング剤と(部分)リチオ化合成グラファイト粉末との接触を高めるために、混合および撹拌条件は有利である。コーティング剤と(部分)リチオ化合成グラファイト粉末との所要接触時間は、コーティング剤の反応性、その時の温度およびその他のプロセスパラメーターによる。一般に、1分〜24時間の時間が有効である。気体状のコーティング剤は、純粋な形態で使用されるか、または好ましくはキャリアガス、例えば希ガス、例えばアルゴンとの混合物として使用される。
【0028】
上記方法により(部分)リチオ化(且つ任意にあらかじめコーティングされた)合成グラファイト粉末は、電池の電極の製造のために使用することができる。そのために、合成グラファイト粉末は、不活性条件または乾燥空間条件下に少なくとも1つの結合剤材料と、任意に2V(vs.Li/Li
+)以下の電気化学的電位を有する1つまたは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、同じく任意に導電性改良添加剤(例えば、カーボンブラックまたはニッケル粉末)と、有機溶媒と混合され均質化されて、この分散液は被覆法(流し込み法、スピンコーティングまたはエアブラシ法)によって導電体に塗布され乾燥される。本発明による方法により製造された(部分)リチオ化グラファイト粉末は、驚くべきことに、N−メチルピロリドン(NMP)に対してほどほどにしか反応性がない。高反応性の溶媒、例えばNMPを使用する場合、少なくとも6、好ましくは少なくとも12の化学量論的なC:Liモル比を有するコーティングされていない(部分)リチオ化グラファイト粉末が使用される。コーティングによって安定化された(部分)リチオ化グラファイト粉末の場合、少なくとも3までの比較的低いC:Liモル比(つまり、比較的高いLi含有率)が使用されてもよい。この制約を維持する場合、(部分)リチオ化グラファイト粉末は、問題なくNMPおよび結合剤材料のPVdF(ポリビニリデンジフルオライド)と一緒に加工して流し込み可能または噴霧可能な分散液にすることができる。代替的に、溶媒であるN−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン)、ケトン(例えばアセトン、ブタノン)および/またはラクトン(例えばγ−ブチロラクトン)が使用されてもよい。好適な結合剤材料のさらなる例は、以下の通りである:カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸、ポリアクリレート、テフロンおよびポリイソブチレン(例えばBASF社のOppanol)。ポリイソブチレン結合剤を使用する場合、好ましくは炭化水素(芳香族化合物、例えばトルエンまたは飽和炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン)が使用される。
【0029】
任意に使用される別の粉末状のリチウム挿入材料は、グラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物(例えばLi
2.6Co
0.4N、LiMoN
2、Li
7MnN
4、Li
2.7Fe
0.3N)、リチウムと合金化可能な金属粉末(例えばSn、Si、Al、Mg、Ca、Znまたはそれらからなる混合物)、還元された形態で(つまり、金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物(例えばSnO
2、SiO
2、SiO、TiO
2)、金属水素化物(例えばMgH
2、LiH、TiNiH
x、AlH
3、LiAlH
4、LiBH
4、Li
3AlH
6、LiNiH
4、TiH
2、LaNi
4.25Mn
0.75H
5、Mg
2NiH
3.7)、リチウムアミド、リチウムイミド、テトラリチウム窒化水素化物、黒リン、ならびにリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物(例えばCo
3O
4、CoO、FeO、Fe
2O
3、Mn
2O
3、Mn
3O
4、MnO、MoO
3、MoO
2、CuO、Cu
2O)の群から選択されるのが好ましい。使用可能なアノード材料についての概要は、X.Zhangら、Energy & Environ.Sci.2011、4、2682の調査論文から読み取ることができる。非電気化学的方法で製造された(部分)リチオ化合成グラファイト粉末を含む本発明により製造されたアノード分散液は、好ましくは薄い銅板またはニッケル板からなる導電体シートに塗布され、乾燥されて好ましくはカレンダー処理される。そのようにして製造されたアノードシートは、リチウム導電性電解質・セパレータ系と、2V(vs Li/Li
+)より大きい電位を有するリチウム化合物(例えばリチウム金属酸化物、例えばLiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
2または硫化物、例えばLi
2S、FeS
2)を含む好適なカソードシートとを組み合わせることによって、先行技術と比べて容量が高められたリチウム電池にすることができる。そのようなガルバニ電池(しかし、本発明による(部分)リチオ化合成グラファイト粉末は使用しない)の工業的な製造は、充分に公知であり、例えばP.Kurzweil、K.Brandt、Secondary Batteries、Lithium Rechargeable Systems:Overview:Encyclopedia of Electrochemical Power Sources、ed.J.Garche、Elsevier、Amsterdam 2009、Vol.5、1〜26ページに記載されている。
【0030】
本発明は、詳細には以下に関する:
・粉末状の、無電解法で製造された(部分)リチオ化合成グラファイトを、不活性条件または乾燥空間条件下に、少なくとも1つの結合剤材料と、任意に2V(vs Li/Li
+)以下の電気化学的電位を有する1つまたは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、同じく任意に導電性改良添加剤と、溶媒と混合し且つ均質化して、この分散液を被覆法によって導電体シートに塗布し且つ乾燥する、リチウム電池のアノードを製造するための方法。
・合成グラファイトが、ラマン分光法によって測定される少なくとも0.2、特に好ましくは少なくとも0.5のI
D:I
G比を有する方法。
・任意に使用される別の粉末状のリチウム挿入材料が、好ましくはグラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物、リチウムと合金化可能な金属粉末;還元された形態(つまり、金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物;金属水素化物;リチウムアミド;リチウムイミド;テトラリチウム窒化水素化物;黒リン、ならびにリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物の群から選択されている方法。
・粉末状の合成グラファイトの無電解(部分)リチオ化が、粉末状のリチウム金属粉末との混合後に行われて、撹拌、粉砕および/またはプレスによって組成LiC
x(式中、x=6〜600)のLi・グラファイトインターカレートが形成される方法。
・2種類の原子のモル比Li:Cが、1:少なくとも3〜1:最大600、好ましくは1:少なくとも5〜1:最大600である方法。
・リチオ化プロセスが最大10barの周囲圧力で実施される方法。
・リチオ化プロセスが0℃〜180℃の温度範囲で実施される方法。
・5μm〜500μmの平均粒径を有するコーティングされたまたは好ましくはコーティングされていないリチウム粉末が使用される方法。
・コーティングされていないリチウム金属粉末が、少なくとも99質量%の純度(つまり、金属リチウムの含分)を有している方法。
・リチウム粉末を合成グラファイト粉末とともに乾燥状態で粉砕する方法。
・リチウム粉末を合成グラファイト粉末とともに不活性の流体の存在下に粉砕し、ここで、流体の質量割合は固形物の質量割合を超過しない(つまり、最大1質量%:1質量%)方法。
・Li粉末のNa含有率が、最大200ppm、好ましくは最大100ppm、特に好ましくは最大80ppmである方法。
・無電解で(部分)リチオ化された合成グラファイトが、下流工程において、取り扱い性の改善および不可逆的損失のさらなる低下のために、グラファイト表面で人工的なSEIを形成することができる物質でコーティングされる方法。
・コーティング剤が、N
2、CO
2、CO、O
2、N
2O、NO、NO
2、HF、F
2、PF
3、PF
5、POF
3、炭酸エステル、リチウムキレートボレート溶液、硫黄有機化合物、窒素含有有機化合物、リン酸、有機リン含有化合物、フッ素含有有機および無機化合物、ケイ素含有化合物から選択されている方法。
・本発明による方法により製造された(部分)リチオ化グラファイト粉末の、リチウム電池の電極の構成要素/活物質としての使用。
・カソードと、リチウム導電性電解質・セパレータ系と、合成グラファイトを含有するアノードとを含むガルバニ電池において、アノードが、セル製造の際に(つまり、初回の充電サイクルの前に)合成グラファイトとリチウム粉末から非電気化学的な方法で製造された(部分)リチオ化グラファイト粉末を含むか、またはそれからなるガルバニ電池。
・リチオ化に使用される合成グラファイトが、ラマン分光法によって測定される少なくとも0.2、特に好ましくは少なくとも0.5のI
D:I
G比を有しているガルバニ電池。
・グラファイト(C)対電気化学的に活性なリチウム(Li)のモル比が、少なくとも3:1且つ最大600:1であるガルバニ電池。
【0031】
実施例
例1:LiC
x(X=約6)を、合成グラファイトSLP30とコーティングされていないリチウムから遊星ボールミルで製造
保護ガス雰囲気下(アルゴン充填グローブボックス)で、酸化ジルコニウム製の乳鉢(50mL)にTimcal社の合成グラファイト粉末SLP30 5.00gと、D
50=123μm(測定方法:レーザー反射、Mettler Toledo社の機器Lasentec FBRM)の平均粒径を有するコーティングされていないリチウム粉末0.529gを入れてヘラで混合した。次に、酸化ジルコニウムミルボール(ボール直径3mm)約27gを入れた。この混合物を、遊星ボールミル(Fritsch社のPulverisette 7 premium line)で15分、回転数800rpmで粉砕した。
【0032】
粉砕された生成物をグローブボックス内でふるいにかけ、黒色で、金色光沢のある流動性の粉末4.6gを得た。
【0033】
X線回折法によって、約12:1のC:インターカレートされたLiの化学量論を有する画一的な生成物が形成されたことを示すことができる。金属リチウムは、もう検出できなかった。
【0034】
例2:LiC
x(x=6〜12)を、合成グラファイトSLP30とコーティングされたリチウムから遊星ボールミルで製造
保護雰囲気下(アルゴン充填グローブボックス)で、酸化ジルコニウム製の乳鉢(50mL)にTimcal社の合成グラファイト粉末SLP30 5.00gと、D
50=56μm(測定方法:レーザー反射、Mettler Toledo社の機器Lasentec FBRM)の平均粒径を有するSiコーティングされたリチウム粉末(WO2013/104787A1により製造)0.529gを入れてヘラで混合した。次に、酸化ジルコニウムミルボール(ボール直径3mm)約27gを入れた。この混合物を、遊星ボールミル(Fritsch社のPulverisette 7 premium line)で15分、回転数800rpmで粉砕した。
【0035】
粉砕された生成物をグローブボックス内でふるいにかけて、黒色の流動性の粉末4.9gが得られた。
【0036】
X線回折法によって、リチウムインターカレーションが行われたことを示すことができたが、なおも変化していないグラファイトを認めることができる。それに対して、単体もしくは金属のリチウムはもう認められない。
【0037】
例3:例1のリチオ化合成グラファイトの、NMPならびにEC/EMCとの接触における安定性
熱安定性の試験は、Systag社(スイス)の機器Radex−Systemを使用して行った。試験する物質または物質混合物を、容量約3mlの鋼製オートクレーブに秤量し加熱する。炉および容器の温度測定から熱力学的データを導き出すことができる。
【0038】
この場合、Li/C混合物もしくはLi/C化合物0.1gをEC/EMC2gと一緒に不活性ガス条件下に秤量し、250℃の最終炉温に加熱した。約190℃を超過して初めて、本発明によるLiC
x材料とEC/EMCからなる混合物は分解し始める。
【0039】
例1のLi/C化合物とNMPを混合すると、自発的であるが弱い反応(暴走現象はない)が観察される。それに続くRadex実験では、250℃の最終温度まで著しい発熱効果は観察されない。熱分解された混合物は、依然として液体である。
【0040】
比較例1:コーティングされていない、およびコーティングされたリチウム金属粉末と合成グラファイトとからなる混合物(モル比1:5)のNMPならびにEC/EMCにおける安定性
例3の場合と同様に、グラファイト粉末SLP30 0.09gとリチウム粉末0.01gからなる混合物を、溶媒2gと一緒に鋼製オートクレーブ(3ml)に秤量して、熱事象について試験した。
【0041】
高反応性の溶媒であるNMPを有する2つの混合物の場合、110℃〜120℃のピーク温度を有する明らかな分解発熱(暴走)が認められる。コーティングされていない粉末を有する混合物は、コーティングされた粉末を有する混合物よりもすでに明らかに低い温度で反応する。
【0042】
熱分解された混合物は、主に固体であるか、もしくは重合されている。コーティングされていないリチウム粉末とEC/EMCの1:1混合物との類似の混合物も、約170℃を超過するときわめて激しく反応する。
【0043】
例4:EC/EMC中のLiBOB溶液による、本発明により製造された化学量論LiC
6のリチオ化合成グラファイト粉末のコーティング
例1により製造されたリチオ化合成グラファイト粉末4.5gを、アルゴン雰囲気下にガラスフラスコ内で、無水のEC/EMC(1質量%:1質量%)中の1%LiBOB溶液(LiBOB=リチウムビス(オキサラト)ボレート)10mlと混合して2時間室温で撹拌した。次に、この分散液を空気を排除してろ過して、ジメチルカーボネートで3回、およびジエチルエーテルおよびヘキサンでそれぞれ1回洗浄した。室温で3時間真空乾燥した後、金色光沢のある暗色の粉末4.3gが得られた。
【0044】
例6:例4のコーティングされた生成物の、EC/EMCおよびNMPにおける安定性
例5のコーティングされた材料ならびに処理されていないリチオ化グラファイト粉末(例1と同じように製造)の試料を、Radex装置で、熱安定性についてEC/EMC混合物の存在下に試験した。
【0045】
コーティングされていない材料は、すでに約130℃以上で分解し始める一方、コーティングされた粉末は、約170℃を超えて初めて発熱的に反応する。
【0046】
NMPと混合する場合、室温では反応はまったく観察されない。Radex実験では、きわめて弱い発熱が90℃超で初めて確認される。
【0047】
その混合物は液体のままである。
【0048】
例7:LiC
x(x=12)を、合成グラファイトSLP30とSiコーティングされたリチウムとから遊星ボールミルで製造、およびNMPにおけるその安定性
例1に記載のミルで、合成グラファイトSLP30 5.00gとコーティングされていないリチウム粉末0.26gを30分800rpmで粉砕した。黒色で流動性の粉末4.8gが得られた。NMPとの混合において、Radex装置を使用するDSC実験では、著しい事象は確認されない。