(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書で挙げられている各種物性は、特に断りのない限り、後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0013】
この明細書において「粘着剤」とは、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。ここに開示される技術における粘着剤は、粘着剤組成物の固形分(不揮発分)または粘着剤層の構成成分としても把握され得る。
【0014】
この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0015】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を50重量%より多く含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%より多く含むポリマーとして定義される。
【0016】
この明細書において「水分散型」とは、少なくとも一部の成分が水に分散している形態を意味する。例えば、「水分散型粘着剤組成物」とは、粘着剤組成物と水とを含有し、該粘着剤組成物の一部が水に分散した状態の組成物であることを意味する。なお、上記「分散」とは、成分の少なくとも一部が水に溶解していない状態を意味し、懸濁した状態や、乳化した状態も含まれる。
【0017】
この明細書における「マスキングテープ」の概念には、「マスキングシート」と称されるものが包含され得る。ここに開示されるマスキングテープは、典型的には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい形状の粘着シートとして構成され、好適には、幅方向の寸法に比べて長手方向の寸法が大きい帯状の粘着シートとして構成されている。
【0018】
<支持体>
[紙基材]
ここに開示される技術における紙基材は、クレープ紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等であり得る。なかでも好ましい紙基材として、マスキングテープの基材に通常使用され得るクレープ紙または和紙が挙げられる。和紙は、叩解された木材パルプ、あるいはこれに1種以上の合成短繊維を混抄したものであり得る。合成短繊維の材料としては、例えば、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0019】
紙基材の厚さは、例えば20μm〜800μm、通常は30μm〜450μmであり得る。より好ましい厚さは、紙基材の種類によっても異なり得る。例えば、紙基材がクレープ紙である場合の厚さは、例えば800μm以下、通常は300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下であり得る。クレープ紙の厚さは、例えば40μm以上、通常は50μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは100μm以上であり得る。また、例えば、紙基材が和紙である場合の厚さは、例えば300μm以下、通常は200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下であり得る。和紙の厚さは、例えば20μm以上、通常は30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり得る。
【0020】
紙基材の坪量は、例えば15g/m
2〜150g/m
2、好ましくは20g/m
2〜100g/m
2であり得る。紙基材がクレープ紙である場合の坪量は、好ましくは35g/m
2〜80g/m
2、より好ましくは50g/m
2〜70g/m
2であり得る。紙基材が和紙である場合の坪量は、例えば15g/m
2〜100g/m
2、好ましくは25g/m
2〜70g/m
2、より好ましくは35g/m
2〜60g/m
2であり得る。
【0021】
紙基材は、必要に応じて、粘着シートまたはマスキングテープの紙基材に使用され得る一般的な樹脂材料、充填材、着色剤等をさらに含んでいてもよい。
例えば、紙基材(例えばクレープ紙)には、天然ゴム、イソプレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム等の、クレープ紙の分野において一般的な含浸剤が含浸されていてもよい。含浸剤の使用量は特に限定されず、例えば、紙基材全体の重量の40〜60重量%、より好ましくは46〜52重量%であり得る。
【0022】
[透気度]
紙基材の透気度は特に限定されない。例えば、透気度が0.5〜100秒/100mLの範囲にある紙基材を好ましく使用することができる。より好ましい透気度は、紙基材の種類によっても異なり得る。例えば、紙基材がクレープ紙である場合の透気度は、典型的には5〜100秒/100mL、好ましくは10〜50秒/100mL、より好ましくは15〜35秒/100mLであり得る。紙基材が和紙である場合の透気度は、典型的には0.5〜20秒/100mL、好ましくは0.5〜10秒/100mL、より好ましくは0.5〜5秒/100mLであり得る。
上記透気度は、JIS P8117に準じて、ガーレー標準型デンソメーター(B型)を使用して測定される。
【0023】
[下塗り層]
ここに開示される技術における支持体は、紙基材の第一面と粘着剤層との間に下塗り層を有していてもよい。上記下塗り層は、例えば、支持体の第一面と粘着剤層との密着性向上等の目的で設けられるプライマー層であり得る。かかる下塗り層(例えばプライマー層)は、支持体の第一面を構成するように設けることが好ましい。このような下塗り層の形成には、公知の材料を用いることができる。例えば、アクリル系樹脂、ゴム系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系樹脂等の樹脂を用いることができる。下塗り層の坪量は、典型的には1〜15g/m
2、好ましくは2〜10g/m
2、例えば3〜6g/m
2とすることができる。
【0024】
[背面処理層]
上記支持体は、紙基材の第二面側(粘着剤層とは反対側)の表面を構成する背面処理層を有していてもよい。上記背面処理層は、例えば、マスキングテープの背面剥離強度(自背面に対する剥離強度)を調節する目的で使用され得る。背面処理層の形成には、例えば、長鎖アルキル系剥離剤やシリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理剤を用いることができる。背面処理層の坪量は、典型的には0.01〜2g/m
2、好ましくは0.05〜1g/m
2とすることができる。
【0025】
[バックサイズ層]
上記支持体は、紙基材の第二面側(粘着剤層とは反対側)にバックサイズ層を有してもよい。上記バックサイズ層の形成に使用されるバックサイズ剤としては、公知の材料を用いることができる。例えば、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等を用いることができる。バックサイズ層の坪量は、典型的には1〜20g/m
2、好ましくは2〜17g/m
2、より好ましくは5〜15g/m
2、例えば7〜11g/m
2とすることができる。なお、背面処理層を含む構成の支持体では、背面処理層と紙基材との間にバックサイズ層を配置することが好ましい。
【0026】
<粘着剤層>
ここに開示されるマスキングテープは、上記紙基材の第一面上に、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有する。このような粘着剤層は、例えば、対応するゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物を用いて好適に形成され得る。粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、溶剤型、水分散型(典型的には水性エマルション型)、水溶液型、活性エネルギー線硬化型(例えば、紫外線硬化型)、ホットメルト型等の種々の形態であり得る。環境負荷軽減等の観点から、水分散型の粘着剤組成物の使用が好ましい。以下、上記粘着剤組成物が水分散型である場合を主な例として粘着剤層に含まれ得る成分について説明するが、本発明を限定する意図ではない。
【0027】
[ゴム系ポリマー]
上記ゴム系ポリマーは、天然ゴム系粘着剤や合成ゴム系粘着剤等のゴム系粘着剤の構成成分として用いられ得る公知のゴム系ポリマーであり得る。ここでいう天然ゴムの概念には、非変性の天然ゴムや解重合(depolymerized)した天然ゴムのほか、これらの天然ゴムを(メタ)アクリル酸アルキルエステル等でグラフト変性した天然ゴムや、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸のようなカルボキシル基含有型モノマーで変性した天然ゴム等の変性天然ゴムが含まれる。合成ゴムの具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレンランダム共重合体等のスチレン系エラストマー、等が挙げられる。ゴム系ポリマーの他の例として、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴムが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいゴム系ポリマーとして、天然ゴムおよびイソプレンゴムが挙げられる。天然ゴム(解重合した天然ゴムであり得る。)が特に好ましい。
【0028】
このようなゴム系ポリマーは、典型的には該ゴム系ポリマーが水に分散した水分散液の形態で、上記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(好ましくは水分散型粘着剤組成物)の構成成分として好ましく使用され得る。以下、ゴム系ポリマーの水分散液を「ゴム系ラテックス」ともいう。
【0029】
ゴム系ラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、合成ゴム系ラテックスが挙げられる。天然ゴムラテックスは、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル等をグラフトした変性天然ゴムの水分散体でもよい。合成ゴム系ラテックスは、合成高分子の水分散体である。上記合成高分子の種類としては、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン系重合体、ポリブタジエン系重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体(NBR)、ポリクロロプレン(CR)等が挙げられる。
【0030】
このようなゴム系ラテックスは市販のものを使用することができる。例えば、スチレンブタジエンゴムラテックスとしては、日本ゼオン(株)製(Nipolシリーズ)、JSR(株)製、旭化成ラテックス(株)製、DIC(株)製(ラックスターシリーズ)、日本A&L(株)製(ナルスタ−シリーズ)等の製品が挙げられる。スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスとしては、日本ゼオン(株)製(Nipolシリーズ)、日本A&L(株)製(ピラテックスシリーズ)等の製品が挙げられる。ポリブタジエンラテックスとしては、日本ゼオン(株)製(Nipolシリーズ)等の製品が挙げられる。メチルメタクリレート−ブタジエンラテックスとしては、日本A&L(株)製(ナルスターシリーズ)等の製品が挙げられる。アクリロニトリル−ブタジエンラテックスとしては、日本ゼオン(株)製(Nipolシリーズ)、日本A&L(株)製(サイアテックスシリーズ)、DIC(株)製(ラックスターシリーズ)等の製品が挙げられる。ポリクロロプレンラテックスとしては、昭和電工(株)製(ショウプレンシリーズ)、東ソー(株)製(スカイプレンシリーズ)等の製品が挙げられる。天然ゴムラテックスとしては、タイレヂテックス社製の製品等が挙げられる。
【0031】
[アクリル系ポリマー]
アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
ここで、上記式(1)中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
2がC
1−10の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、R
2がブチル基または2−エチルヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0033】
R
2がC
1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0034】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとしては、例えば以下のような官能基含有モノマー成分を、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシル基含有モノマー:例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)。
水酸基含有モノマー:例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類。
アミド基含有モノマー:例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル。
ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0035】
上記副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、凝集力と粘着性とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーのモノマー組成の20重量%以下が適当であり、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0036】
特に限定するものではないが、上記副モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、例えば全モノマー原料の0.1〜10重量%とすることができ、通常は0.2〜8重量%(典型的には0.5〜5重量%)とすることが適当である。
特に限定するものではないが、上記副モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、例えば全モノマー原料の0.001〜10重量%とすることができ、通常は0.01〜5重量%(典型的には0.02〜2重量%)とすることが適当である。
【0037】
また、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上述した副モノマー以外の他の共重合成分を用いることができる。かかる共重合成分としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。かかる他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー組成の10重量%以下とすることが好ましい。
【0038】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−75℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当であり、好ましくは−25℃以下(例えば−70℃以上−25℃以下)、より好ましくは−40℃以下(例えば−70℃以上−40℃以下)である。アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
【0039】
ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。
【0040】
上記ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。
上記文献にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(日本国特許出願公開2007−51271号公報参照)。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0041】
このようなアクリル系ポリマーは、典型的には該アクリル系ポリマーが水に分散した水分散液の形態で、上記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(好ましくは水分散型粘着剤組成物)の構成成分として好ましく使用され得る。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、エマルション重合法を好ましく用いることができる。
【0042】
エマルション重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマー原料を水性エマルションの形態で滴下してもよい。重合条件は特に限定されない。例えば、重合温度については20℃〜100℃(典型的には40℃〜90℃)程度とすることができる。
【0043】
重合に用いる開始剤は、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、例えば、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤等が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部程度の範囲から選択することができる。
【0045】
重合に用いる乳化剤は、特に制限されず、エマルション重合に通常使用される乳化剤が用いられ得る。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系乳化剤、等が挙げられる。また、これらアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(反応性基)が導入されたラジカル重合性(反応性)乳化剤(例えば、第一工業製薬(株)製の商品名「HS−10」)を用いてもよい。また、粘着剤組成物の保存安定性等の観点から、上記乳化剤として、ラジカル重合性官能基を有しない乳化剤のみを使用する態様を好ましく採用し得る。
【0046】
これら乳化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の配合割合は、単量体組成物の合計量100重量部に対して、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部であり得る。
【0047】
必要に応じて、アクリル系ポリマーの分子量を調節する連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、エマルション重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプトー1−プロパノール等のメルカプタン類等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、単量体組成物の合計量100重量部に対して、例えば、0.001〜0.5重量部であり得る。
【0048】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10
4〜500×10
4の範囲であり得る。ここで、アクリル系ポリマーのMwとは、該アクリル系ポリマーのトルエン可溶分(ゾル分)のMwを指す。上記アクリル系ポリマーのMwとは、具体的には、後述する実施例に記載の方法により得られる、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)に基づく標準ポリスチレン換算の値をいう。剥離強度の観点から、アクリル系ポリマーのMwとしては、150×10
4以下が好ましく、100×10
4以下がより好ましい。また、保持力(凝集力)や非糊残り性の観点から、アクリル系ポリマーのMwは、好ましくは20×10
4以上、より好ましくは30×10
4以上(例えば40×10
4以上)であり得る。
【0049】
[ブレンド比]
ここに開示される技術における粘着剤層は、上述のようなゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとを任意の重量比(すなわち、重量基準のブレンド比)で含有し得る。好ましい一態様に係る粘着剤層は、ゴム系ポリマーのアクリル系ポリマーに対する重量比(以下「ゴム/アクリル比」ともいう。)が40/60以上95/5以下の範囲にある。このような組成の粘着剤層は、ゴム/アクリル比が適切な範囲にあるので、マスク対象物に外観変化を生じにくく、かつマスク対象物に対する適度な剥離強度を安定して発揮するものとなり得るので好ましい。このことは、塗膜(例えば、ウレタン系塗膜、ニトロセルロース系塗膜など)や金属に貼り付けられ得るマスキングテープにおいて特に有意義である。
【0050】
上記ゴム/アクリル比は、通常、50/50超とすることが適当であり、好ましくは60/40超、より好ましくは65/35超、さらに好ましくは75/25超、特に好ましくは80/20超(例えば85/15超)である。ゴム/アクリル比が大きくなると、粘着剤層の凝集力がより向上する傾向にある。このことは非糊残り性向上の観点から好ましい。また、ゴム/アクリル比が大きくなると、よりマスク対象物の外観変化を起こしにくくなる傾向にある。ゴム/アクリル比の上限は、95/5未満とすることができ、例えば93/7以下としてもよい。
【0051】
[粘着付与樹脂]
好ましい一態様において、粘着剤層には粘着付与樹脂を含有させることができる。粘着付与樹脂としては、粘着剤に用いられ得る公知の粘着付与樹脂を用いることができる。粘着付与樹脂の使用により、マスク対象物に対する剥離強度を適切な範囲に調節することができる。
【0052】
粘着付与樹脂としては、未変性ロジン(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等)、安定化ロジン(例えば、上記未変性ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジン)、重合ロジン(例えば、上記ロジンの多量体、典型的には二量体)、変性ロジン(例えば、上記未変性ロジンがマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸により変性された不飽和酸変性ロジン等)等のロジン系樹脂;ロジンエステル、安定化ロジエステル(水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル等)、重合ロジンエステル等のロジンエステル系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂等のロジンフェノール系樹脂;クマロンインデン樹脂、水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂、エポキシ変性クマロンインデン樹脂等のクマロンインデン系樹脂;α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、ポリテルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族変性脂肪族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、これらの水素化物(水添石油樹脂)等の石油系樹脂;等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい粘着付与樹脂として、ロジンエステル系樹脂(安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル等)、ロジンフェノール系樹脂および石油系樹脂が挙げられる。
【0053】
好ましい一態様において、2種以上の粘着付与樹脂を組み合わせて使用することができる。2種の粘着付与樹脂A,Bを組み合わせて使用する態様において、それらの粘着付与樹脂の重量比は特に限定されない。粘着付与樹脂Aと粘着付与樹脂Bとの合計量に占める粘着付与樹脂Aの量は、典型的には10重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上(例えば50重量%超)である。上記粘着付与樹脂Aの割合は、典型的には、粘着付与樹脂Aと粘着付与樹脂Bとの合計量の95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下(例えば70重量%以下)である。上記粘着付与樹脂Aは、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、ロジンフェノール系樹脂(例えばロジン変性フェノール樹脂)およびテルペン系樹脂から選択され得る。上記粘着付与樹脂Bは、例えば石油系樹脂(例えば、水添石油樹脂)から選択され得る。
【0054】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されない。ここに開示される技術の一態様において、粘着付与樹脂の使用量は、例えば、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーの合計量100重量部に対して50重量部以下(典型的には50重量部未満)とすることができる。非糊残り性等の観点から、通常は、上記合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を30重量部以下とすることが適当であり、20重量部以下とすることが好ましい。上記合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を20重量部未満(例えば18重量部以下)とすることにより、より良好な結果が実現され得る。好ましい一態様において、上記合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を15重量部以下とすることができ、10重量部以下としてもよい。
【0055】
ここに開示される技術の他の一態様において、粘着付与樹脂の使用量は、例えば、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーの合計量100重量部に対して、100重量部以下(典型的には100重量部未満)とすることができる。貼付け作業性等の観点から、通常は、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーの合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を80重量部以下とすることが適当であり、70重量部未満とすることが好ましく、60重量部未満(例えば55重量部以下)とすることがより好ましい。
【0056】
粘着付与樹脂の使用量の下限は特に限定されない。粘着付与樹脂の使用による効果を好適に発揮させる観点から、通常は、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーの合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量を1重量部以上とすることが適当であり、3重量部以上とすることが好ましく、5重量部以上とすることがより好ましい。
【0057】
一態様において、ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーの合計量100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、10重量部以上とすることができ、25重量部以上としてもよく、35重量部以上(例えば40重量部以上)としてもよい。粘着付与樹脂の使用量の増大により、剥離強度の向上、剥離強度変化率の低減等の効果がよりよく発揮される傾向にある。
【0058】
使用する粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。非糊残り性や凝集力等の観点から、軟化点の高い粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。軟化点の高い粘着付与樹脂は、マスク対象物の外観変化の抑制や、剥離強度の経時変化の抑制の観点からも好ましい。例えば、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂が好ましく、130℃以上のものがより好ましい。好ましい一態様において、140℃以上(例えば145℃以上)の粘着付与樹脂を用いることができる。上記軟化点の高い粘着付与樹脂の種類は特に限定されず、例えば、上述した粘着付与樹脂の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好適例として、ロジンエステル系樹脂(例えば、重合ロジンエステル)およびロジンフェノール系樹脂が挙げられる。
【0059】
ここに開示される粘着剤層は、上述のように軟化点の高い粘着付与樹脂(例えば、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂)と、より軟化点の低い粘着付与樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。上記軟化点の低い粘着付与樹脂としては、軟化点が110℃以下(好ましくは100℃以下、例えば80℃以下)のものを用いることができる。上記軟化点の低い粘着付与樹脂の種類は特に限定されず、例えば、上述した粘着付与樹脂の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好適例として、石油系樹脂、安定化ロジンおよび安定化ロジンエステルが挙げられる。
【0060】
軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂Cと、軟化点が120℃未満(例えば110℃以下)の粘着付与樹脂Dとを組み合わせて使用する態様において、それらの粘着付与樹脂の使用量の比(重量比)は特に限定されない。粘着付与樹脂Cと粘着付与樹脂Dとの合計量に占める粘着付与樹脂Cの割合は、典型的には10重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上(例えば50重量%超)である。上記粘着付与樹脂Cの割合は、典型的には95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下(例えば70重量%以下)である。上記粘着付与樹脂Cは、ロジンエステル系樹脂、ロジンフェノール系樹脂(例えばロジン変性フェノール樹脂)およびテルペン系樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)から選択され得る。上記粘着付与樹脂Dは、石油系樹脂(例えば、水添石油樹脂)および安定化ロジンエステルから選択され得る。
【0061】
なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0062】
[架橋剤]
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から適宜選択して用いることができる。かかる架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の使用量は特に限定されず、所望の特性を示す粘着剤が形成されるように適宜設定することができる。例えば、ポリマー成分(ゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとの合計量)100重量部に対する架橋剤含有量を10重量部以下とすることができ、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.015〜5重量部である。
【0063】
好ましい架橋剤の一例としてエポキシ系架橋剤が挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂が挙げられる。また、エポキシ系架橋剤として、例えば、三菱ガス化学(株)製の商品名「テトラッドC」や、綜研化学株式会社製の商品名「E50−C」等の市販品を用いることもできる。
【0064】
エポキシ系架橋剤の使用量は特に限定されない。ポリマー成分100重量部に対するエポキシ系架橋剤の含有量は、典型的には5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下(例えば0.1重量部以下)とすることができる。ポリマー成分100重量部に対するエポキシ系架橋剤の含有量は、典型的には0.005重量部以上であり、好ましくは0.01重量部以上(例えば0.015重量部以上)である。
【0065】
イソシアネート系架橋剤の例としては:トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。より具体的には、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等を例示することができる。水分散型の粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なイソシアネート系架橋剤の使用が好ましい。例えば、水溶性、水分散性または自己乳化型のイソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート基がブロックされた、いわゆるブロックドイソシアネート型のイソシアネート系架橋剤を好ましく使用し得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
イソシアネート系架橋剤の使用量は特に限定されない。例えば、ポリマー成分100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の含有量は、典型的には15重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下である。ポリマー成分100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の含有量は、典型的には0.1重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以上(例えば1.0重量部以上)である。
【0067】
カルボジイミド系架橋剤は、カルボジイミド基を有する化合物である。カルボジイミド基は、カルボジイミド(HN=C=NH)から水素原子が1つ引き抜かれた官能基(−N=C=NH)、または、水素原子が2つ引き抜かれた官能基(−N=C=N−)である。カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。カルボジイミド系架橋剤の市販品としては、例えば、日清紡社製の「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」等のカルボジライトVシリーズ(水溶液タイプ)や、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」等のカルボジライトEシリーズ(水分散タイプ)等のカルボジライトシリーズが挙げられる。
【0068】
カルボジイミド系架橋剤の使用量は特に限定されない。ポリマー成分100重量部に対するカルボジイミド系架橋剤の含有量は、典型的には15重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下である。ポリマー成分100重量部に対するカルボジイミド系架橋剤の含有量は、典型的には0.1重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以上(例えば1.0重量部以上)である。
【0069】
[その他の成分]
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0070】
[粘着剤層の形成]
ゴム系ポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物は、典型的には、これらのポリマーと必要に応じて使用され得る他の成分(粘着付与樹脂など)とを混合することにより調製することができる。水分散型の粘着剤組成物の場合には、ゴム系ポリマー粒子の水分散液(ゴム系ラテックス)とアクリル系ポリマー粒子の水分散液(アクリル系ポリマーエマルション)とを混合して調製することが好ましい。このことによって、ゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとが所望の割合で良好にブレンドされた粘着剤組成物を容易に調製することができる。この場合、任意に使用され得る粘着付与樹脂も、該粘着付与樹脂が水に分散した水分散型粘着付与樹脂の形態で混合することが好ましい。
【0071】
このような粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適宜適用し得る。例えば、粘着剤組成物を支持体の第一面に直接付与(典型的には塗付)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、上記粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、剥離処理された支持体背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を支持体の第一面に転写する方法(転写法)を採用してもよい。
ここに開示されるマスキングテープは、通常の粘着テープの製造方法に従って製造できる。例えば、紙基材の第一面に下塗り処理、第二面にバックサイズ処理および/または背面処理を行って支持体を作製し、該支持体の上記下塗り処理面(第一面)に粘着剤層を形成し、必要に応じて適宜の大きさまたは幅に裁断することにより製造できる。
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
【0072】
特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、例えば3μm以上、通常は5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり得る。粘着剤層の厚さが大きくなると、粘着面(被着体すなわちマスク対象物に貼り付けられる表面)の平滑性を向上させやすくなる傾向にある。このことは、紙基材としてクレープ紙や和紙などの多孔質紙を用いる場合において特に効果的である。粘着面の平滑性が向上すると、被着体に対する密着性が向上し、マスキングテープの外縁からその貼付け範囲内に塗料などが浸入しにくくなるので好ましい。粘着面の平滑性が良いことは、非糊残り性や剥離強度安定性の観点からも好ましい。好ましい一態様(例えば、紙基材がクレープ紙である態様)において、粘着剤層の厚さを25μm以上としてもよく、30μm以上としてもよい。
粘着剤層の厚さの上限は特に限定されず、例えば200μm以下とすることができる。粘着剤層の厚さは、通常150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下(例えば40μm以下)である。
なお、ここに開示される技術における粘着剤層は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上の層を含む多層構造であってもよい。
【0073】
特に限定するものではないが、粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、重量基準で、例えば10〜90%程度であり得る。凝集力と剥離強度とを好適にバランスさせる観点から、上記ゲル分率は、20〜85%であることが好ましく、25〜80%であることがより好ましい。粘着剤のゲル分率は、例えば、アクリル系ポリマーの組成や分子量、架橋剤の使用の有無およびその種類ならびに使用量の選択等により調節することができる。なお、粘着剤のゲル分率は、以下の方法で測定される。ゲル分率の上限は、原理上、100重量%である。
【0074】
[ゲル分率]
粘着剤組成物を130℃で3分間乾燥させて、厚さ約35μmの粘着剤層を形成する。この粘着剤層から粘着剤サンプルを採取して、ゲル分率を測定する。
具体的には、約0.1gの粘着剤サンプル(重量Wg
1)を平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(重量Wg
2)で巾着状に包み、口をタコ糸(重量Wg
3)で縛る。上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工株式会社、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用する。この包みをトルエン50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間保持して粘着剤層中のゾル成分のみを上記膜外に溶出させる。次いで、上記包みを取り出し、外表面に付着している酢酸エチルを拭き取った後、該包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの重量(Wg
4)を測定する。各値を以下の式に代入することにより、粘着剤のゲル分率F
Gを算出することができる。
ゲル分率F
G(%)=[(Wg
4−Wg
2−Wg
3)/Wg
1]×100
【0075】
<マスキングテープ>
ここに開示されるマスキングテープは、総厚が1mm以下(例えば500μm以下)であり得る。ここで、マスキングテープの総厚とは、支持体と粘着剤層との合計厚さを指す。マスキングテープの総厚の下限は、例えば30μm以上とすることができ、通常は50μm以上とすることが好ましい。
【0076】
マスキングテープの総厚のより好ましい範囲は、紙基材の種類によっても異なり得る。
例えば紙基材がクレープ紙である場合、上記総厚は、例えば1mm以下、通常は500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。上記総厚は、例えば50μm以上、通常は70μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは120μm以上であり得る。
また、例えば紙基材が和紙である場合、上記総厚は、例えば500μm以下、通常は300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。上記総厚は、例えば30μm以上、通常は50μm以上、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上であり得る。
【0077】
マスキングテープの幅は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜設定し得る。好ましい一態様において、マスキングテープの幅は、例えば500mm以下、通常は300mm以下、好ましくは200mm以下であり得る。マスキングテープの幅を100mm以下としてもよく、70mm以下としてもよい。また、貼付け作業および剥離作業の容易性等の観点から、マスキングテープの幅は、例えば5mm以上、通常は10mm以上(典型的には15mm以上)であり得る。マスキングテープの幅は、20mm以上としてもよく、30mm以上としてもよい。
【0078】
ここに開示されるマスキングテープの断面構造の一例を、
図1に模式的に示す。このマスキングテープ1は、支持体10と、ここに開示されるいずれかの粘着剤層20とを備える。支持体10は、紙基材12と、その第一面12A上にある下塗り層14と、紙基材12の第二面12B上にある背面層(backside layer)16とを含む。下塗り層14の表面が支持体10の第一面10Aに該当し、背面層16の表面が支持体10の背面10Bに相当する。この支持体10の第一面10A上に粘着剤層20が配置されている。
【0079】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、
図1に示すように、粘着剤層20の表面(粘着面)20Aを支持体10の背面10Bに当接させて、典型的には芯材30の周囲に渦巻き状に巻かれているマスキングテープロール100の形態であり得る。このようなマスキングテープロール100は、例えば、マスキングテープ1の一端を被着体に貼り付け、その貼り付けられた部分とロール100との間にテンションをかけて該ロール100を巻き戻すことで(すなわち、ロール100からテープ1を繰り出すことで)マスキングテープ1を長い範囲に連続的に貼り付ける使用態様にも好ましく適用され得る。
【0080】
図1に示すマスキングテープ1は、変形例として、マスキングテープ1と、粘着剤層20の表面(粘着面)20A上に配置され少なくとも粘着剤層20A側の表面(前面)が剥離面となっている図示しない剥離ライナーとが重ね合わされ、これらが芯材30の周囲に巻きつけられているマスキングテープロールの形態であってもよい。
また、ここに開示されるマスキングテープは、巻回されていないシート状またはテープ状であって、粘着面が剥離ライナーで保護された形態であってもよい。
【0081】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の各種の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0082】
ここに開示されるマスキングテープは、大型のマスク対象物に連続して長く貼り付ける場合の作業性や、省資源化の観点から、剥離ライナーを有しないマスキングテープ(例えば、ロール形態のマスキングテープ、すなわちマスキングテープロール)の形態であることが好ましい。
【0083】
マスキングテープロールに含まれるマスキングテープの長さは特に限定されず、例えば5m以上とすることができ、通常は10m以上とすることが好ましい。一巻のマスキングテープロールに含まれるマスキングテープの長さが大きいことは、該マスキングテープを被着体に連続して長く貼り付ける用途において特に有利である。一方、貼付け作業を行う作業者の負担軽減の観点からは、マスキングテープロールが重すぎないことが好ましい。かかる観点から、一巻のマスキングテープロールに含まれるマスキングテープの長さは、例えば50m以下とすることができ、通常は30m以下とすることが好ましい。
【0084】
ここに開示されるマスキングテープは、流れ方向(MD)の引張強さが30N/18mm以上であることが好ましく、50N/18mm以上であることがより好ましい。MD引張強さが高いと、使用後のマスキングテープをマスク対象物から剥離するときに途中で千切れにくくなり、剥離作業性が向上する傾向にある。また、マスキングテープに十分なテンションをかけて(すなわち、弛みなく張った状態で)貼り付けることができるので、貼付け作業性や貼付け精度の観点からも好ましい。このことは、連続して長く貼り付ける用途が想定されるマスキングテープにおいて特に有利である。MD引張強さの上限は特に限定されず、例えば150N/18mm以下とすることができ、通常は120N/18mm以下とすることが適当である。
上記マスキングテープの幅方向(TD)の引張強さは特に限定されない。剥離時の千切れをよりよく防止する観点から、TD引張強さは、例えば10〜100N/18mmとすることができ、通常は15〜80N/18mmとすることが適当である。
上記引張強さは、JIS Z0237:2009に記載の「引張強さ」の測定方法に準拠して測定される。
【0085】
ここに開示されるマスキングテープは、カッピング(cupping)抑制の観点から、TDの破断時伸びが15.0%以下であることが好ましく、12.5%以下であることがより好ましい。上記カッピングとは、マスキングテープが幅方向に湾曲(典型的には、粘着面を内側にして湾曲)する現象をいう。カッピングを抑制することは、連続して長く貼り付ける用途が想定されるマスキングテープにおいて特に有意義である。TDの破断時伸びの下限は特に限定されないが、表面形状追従性等の観点から、通常は2.0%以上であることが好ましく、4.0%以上であることがより好ましい。
上記マスキングテープのMD破断時伸びは特に限定されず、例えば1.5〜20.0%とすることができ、通常は3.0〜15.0%とすることが適当である。
上記破断時伸びは、JIS Z0237:2009に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。
【0086】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、重ね貼り性や貼付け作業性の観点から、背面剥離強度が0.7N/18mm以上であることが好ましく、1.0N/18mm以上であることがより好ましい。
図1に示すように粘着面を背面に当接させて捲回されたマスキングテープロール(特に、連続して長く貼り付けられるマスキングテープロール)では、貼付け作業性等の観点から、該マスキングテープロールが自重で巻き戻らない程度の上記背面剥離強度を有することが好ましい。したがって、上記背面剥離強度を有することが特に有意義である。背面剥離強度の上限は特に限定されないが、通常は10.0N/18mm以下とすることが適当である。背面剥離強度は、後述する実施例に記載のSUS剥離強度測定において、SUS板の表面にマスキングテープを貼り付けたものを被着体として使用することにより測定される。
【0087】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、後述する実施例に記載の方法で測定される対SUS剥離強度が1.0N/18mm以上、より好ましくは1.5N/18mm以上、さらに好ましくは2.0N/18mm以上である。かかる特性を示すマスキングテープは、例えば未塗装の金属面を有するマスク対象物に対する貼付け作業性がよい。対SUS剥離強度の上限は特に限定されない。マスク対象物の外観変化の抑制や作業負担軽減の観点から、例えば10.0N/18mm以下、通常は7.0N/18mm以下、好ましくは5.0N/18mm以下、より好ましくは4.0N/18mm以下、さらに好ましくは3.5N/18mm以下(例えば3.0N/18mm以下)である。
【0088】
好ましい他の一態様に係るマスキングテープは、上記対SUS剥離強度が2.5N/18mm以上、より好ましくは4.0N/18mm以上、例えば5.0N/18mm以上である。かかる特性を示すマスキングテープは、例えば未塗装の金属面を有するマスク対象物に対する密着性がよい。対SUS剥離強度の上限は特に限定されないが、マスク対象物の外観変化を抑制する観点から、典型的には15.0N/18mm以下、通常は10.0N/18mm以下(例えば7.0N/18mm以下)である。
【0089】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、後述する実施例に記載の方法で測定される対塗装板2時間後剥離強度が0.5N/18mm以上、より好ましくは0.7N/18mm以上、さらに好ましくは1.0N/18mm以上である。かかる特性を示すマスキングテープは、塗膜(例えばウレタン系塗膜、ニトロセルロース系塗膜など)を有するマスク対象物に対する貼付け作業性がよい。対塗装板2時間後剥離強度の上限は特に限定されない。マスク対象物の外観変化の抑制や作業負担軽減の観点から、例えば7.0N/18mm以下、通常は5.0N/18mm以下、好ましくは4.0N/18mm以下、より好ましくは3.0N/18mm以下、さらに好ましくは2.5N/18mm以下(例えば2.0N/18mm以下)である。
【0090】
好ましい他の一態様に係るマスキングテープは、上記対塗装板2時間後剥離強度が3.0N/18mm以上、より好ましくは5.0N/18mm以上、例えば7.0N/18mm以上であり、8N/18mm以上であってもよい。かかる特性を示すマスキングテープは、塗膜を有するマスク対象物に対する密着性がよい。対塗装板2時間後剥離強度の上限は特に限定されないが、マスク対象物の外観変化を抑制する観点から、典型的には15.0N/18mm以下、通常は12.0N/18mm以下である。
【0091】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、後述する実施例に記載の方法で測定される対塗装板1日後剥離強度が0.5N/18mm以上、より好ましくは0.7N/18mm以上、さらに好ましくは1.0N/18mm以上である。かかる特性を示すマスキングテープは、塗膜(例えばウレタン系塗膜、ニトロセルロース系塗膜など)を有するマスク対象物の表面形状に沿って密着した状態を維持する性能(表面形状追従性)に優れる。対塗装板1日後剥離強度の上限は特に限定されず、例えば7.0N/18mm以下とすることができ、マスク対象物の外観変化の抑制や作業負担軽減の観点から、通常は5.0N/18mm以下、好ましくは4.0N/18mm、より好ましくは3.0N/18mm以下、さらに好ましくは2.5N/18mm以下(例えば2.0N/18mm以下)である。
【0092】
好ましい他の一態様に係るマスキングテープは、上記対塗装板1日後剥離強度が3.0N/18mm以上、より好ましくは5.0N/18mm以上、例えば7.0N/18mm以上であり、8.0N/18mm以上であってもよい。かかる特性を示すマスキングテープは、塗膜を有するマスク対象物に対する表面形状追従性に優れる。対塗装板1日後剥離強度の上限は特に限定されないが、マスク対象物の外観変化を抑制する観点から、典型的には15.0N/18mm以下、通常は12.0N/18mm以下である。
【0093】
好ましい一態様に係るマスキングテープは、後述する実施例に記載の方法で測定される剥離強度変化率が−25%〜+25%(より好ましくは−20%〜+20%)の範囲内にあることが好ましい。このような特性を有するマスキングテープは、貼付け作業性や表面形状追従性と剥離作業性とを高レベルでバランスよく両立するものとなり得る。
【0094】
ここに開示されるマスキングテープは、非糊残り性や表面形状追従性の観点から、後述する実施例に記載の保持力試験において、23℃におけるズレ距離が0.15mm以下であることが好ましく、0.10mm以下であることがより好ましい。また、40℃におけるズレ距離が0.25mm以下であることが好ましく、0.20mm以下であることがより好ましく、0.15mm以下であることがさらに好ましい。
【0095】
ここに開示されるマスキングテープは、貼付け作業性の観点から、後述する実施例に記載の方法で測定されるプローブタックが、0.1N/φ5mm以上(例えば0.3N/φ5mm以上)であることが好ましく、また、2.0N/φ5mm以下(典型的には1.5N/φ5mm以下、例えば1.3N/φ5mm以下)であることが好ましい。
【0096】
ここに開示されるマスキングテープは、種々のマスク対象物をマスクする用途(典型的には、少なくとも塗装の際に上記マスク対象物をマスクする用途)に好適に利用され得る。例えば、金属面や塗装面に貼り付けて用いられるマスキングテープとして好適である。上記塗装面は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、ニトロセルロース系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料を用いた塗装処理により形成された塗膜の表面であり得る。
【0097】
好ましいマスク対象物の例としては、金属板(鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等);金属板の表面に塗膜が設けられた塗装金属板(例えば、住宅材料、建築材料、輸送機械の外装ボディやその部品等に用いられる塗装鋼板);合成樹脂板;上記金属板、塗装金属板または合成樹脂板の成形品;等が挙げられるが、これらに限定されない。上記輸送機械は、主に人を輸送するものに限定されず、主に人以外のものを輸送するためのものであってもよい。輸送機械の具体例には、航空機(飛行機、ヘリコプター、エアクッション艇等を包含する。)、船舶(大型船舶、小型船舶、水上スクーター等を包含する。)、鉄道車両(新幹線等の電車、ディーゼル車、リニアモーターカー、ケーブルカー、モノレール、トロリーバス等を包含する。)、自動車(乗用車、トラック、バス、オート三輪、トラクター、雪上車、ブルドーザー、水陸両用車等を包含する。)等の輸送機械が含まれる。ここに開示されるマスキングテープは、長い範囲にも貼り付けやすく、かつ剥離作業性に優れたものとなり得る。かかる特長を活かして、例えば飛行機、大型船舶、鉄道車両等の大型輸送機械を塗装時にマスクする用途に特に好ましく適用され得る。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0099】
[重量平均分子量(Mw)]
アクリル系ポリマーの水分散液を130℃で3分間乾燥させて、厚さ約35μmのアクリル系ポリマー層を形成した。このアクリル系ポリマー層からアクリル系ポリマーの試料を採取し、室温にて7日間トルエンに浸漬して可溶分を溶出させ、当該トルエン可溶分の抽出液を乾燥させて測定サンプルを得た。この測定サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に再溶解し、0.1重量%のTHF溶液を調製した。このTHF溶液を平均孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液(分子量測定用の試料溶液)につき、GPC測定装置により標準ポリスチレン基準のMwを求めた。GPC測定装置としては、東ソー株式会社製の機種名「HLC−8320GPC」を使用した。測定条件は以下のとおりとした。
[GPC測定条件]
カラム:TSKgel GMH−H(S)×2
カラムサイズ:7.8mmI.D.×300mm
検出器:示差屈折計
溶離液:THF
流速:0.6mL/分
測定温度:40℃
サンプル注入量:100μL
【0100】
[対SUS剥離強度]
粘着シートを幅18mmの帯状にカットして試験片を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、該試験片を被着体としてのステンレス鋼板(SUS板)に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、JIS Z0237に準じて、引張試験機を使用して引張速度300mm/分の条件で180度剥離強度[N/18mm]を測定した。
【0101】
[対塗装板剥離強度]
(2時間後剥離強度)
粘着シートを幅18mmの帯状にカットして試験片を作製した。被着体としては、変性ニトロセルロース樹脂をベースとするラッカー塗料(商品名「ANCHOR」、DPI SDN.BHD製)の層を表面に有する塗装板を使用した。上記塗装板は、23℃、50%RHの環境下において上記ラッカー塗料で塗装された後、2時間乾燥されたものである。この塗装板に上記試験片を、2kgのローラを1往復させて圧着した。上記塗装板に貼り付けられた上記試験片を23℃、50%RHの環境下に2時間放置した。その後、JIS Z0237に準じて、引張試験機を使用して引張速度300mm/分の条件で180度剥離強度[N/18mm]を測定した。
(1日後剥離強度)
塗装板に貼り付けた試験片を23℃、50%RHの環境下に放置する期間を1日(約24時間)とした他は同様にして180度剥離強度[N/18mm]を測定した。
(30分後剥離強度)
塗装板に貼り付けた試験片を23℃、50%RHの環境下に放置する期間を30分間とした他は同様にして180度剥離強度[N/18mm]を測定した。
【0102】
[剥離強度変化率]
上記対塗装板2時間後剥離強度(P1)[N/18mm]の測定値と上記対塗装板1日後剥離強度(P2)[N/18mm]の測定値から、以下の式により、塗装板に対する剥離強度変化率を算出した。
剥離強度変化率[%]=[(P2−P1)/P1]×100
【0103】
[プローブタック]
23℃、50%RHの環境下において、下記の条件によってプローブタック試験を行い、粘着力の最大値を測定した。
装置:プローブタックテスター(テスター産業株式会社製)
プローブ:SUS、直径5mm
接触荷重:0.20N
接触時間:1秒
剥離速度:1cm/秒
接触速度:1cm/秒
【0104】
[保持力試験]
(23℃保持力)
粘着シートを幅18mmの帯状に裁断して試験片を作製した。被着体としてのSUS板に上記試験片の一端を、幅18mm、長さ18mmの接着面積にて、ハンドローラーを用いて貼り付けた。これを23℃、50%RHの環境下に30分間保持した後、JIS Z0237に準じて、上記SUS板を23℃、50%RHの試験温度下に垂下し、上記試験片の自由端に500gの荷重を付与した。上記荷重が付与された状態で23℃、50%RHの試験温度下に1時間保持した後、最初の貼り付け位置からの試験片のズレ距離(mm)を測定した。
(40℃保持力)
上記と同様にしてSUS板に試験片を貼り付けて23℃、50%RHの環境下に30分間保持した後、JIS Z0237に準じて、上記SUS板を40℃の試験温度下に垂下し、上記試験片の自由端に500gの荷重を付与した。上記荷重が付与された状態で40℃の試験温度下に1時間保持した後、最初の貼り付け位置からの試験片のズレ距離(mm)を測定した。
【0105】
[塗装試験]
被着体としては、23℃、50%RHの環境下において鋼板を上記ラッカー塗料で塗装した後、2時間乾燥させたテストパネルを使用した。各粘着シートを幅18mmの帯状に裁断し、上記塗装面(上記ラッカー塗料で塗装された表面)にハンドローラーで貼り付けた。これによりマスクされた範囲を含む領域に上記ラッカー塗料をスプレーした。その結果物を23℃、50%RHの環境下で2時間乾燥させた後、上記粘着シートを手で剥離した。剥離後の塗膜表面における外観変化を目視で観察し、外観変化抑制の程度を以下の3水準で評価した。
○:糊残り(residue)、汚染(printing)、跡付き(emaciate)のいずれも認められなかった。
△:糊残りは認められなかったが、汚染または跡付きのいずれかが認められた。
×:糊残りが認められた。
【0106】
<<実験例1>>
<実施例1>
[アクリル系ポリマー(A1)の合成]
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)92部、n−ブチルアクリレート(BA)5部、メチルメタクリレート(MMA)2部およびメタクリル酸(MAA)1部からなるモノマー成分と、上記モノマー成分100部に対して固形分で2部の乳化剤と、イオン交換水100部とを混合して乳化することにより、モノマー混合物の水性エマルション(モノマーエマルション)を調製した。乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムを使用した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に上記モノマーエマルションを入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、系を60℃に昇温し、この反応容器に2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社、商品名「VA−057」)0.1部を投入し、系を60℃に保ちつつ、上記モノマーエマルションを6時間反応させた。系を常温まで冷却した後、10%アンモニウム水の添加によりpHを7.5に調整して、アクリル系ポリマーA1の水分散液(A1e)を得た。このアクリル系ポリマーA1のトルエン可溶分(ゾル分)のMwは80×10
4であった。
【0107】
[粘着剤組成物(C1)の調製]
ゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとを90:10のブレンド比(重量基準)で含有する粘着剤組成物(C1)を調製した。
詳しくは、天然ゴムラテックス(商品名「TRDPL−51N」、タイレヂテックス社)を固形分で90部と、上記のアクリル系ポリマー水分散液(A1e)を固形分で10部と、上記天然ゴムラテックスの固形分と上記水分散液の固形分との合計量100部に対して固形分で9部の粘着付与樹脂および固形分で0.017部の架橋剤とを混合して、本例に係る粘着剤組成物(C1)を得た。粘着付与樹脂としては、軟化点150℃のロジンフェノール系樹脂の水性エマルション(商品名「タマノルE−200NT」、荒川化学工業株式会社)を使用した。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(商品名「E50−C」、綜研化学株式会社)を使用した。上記粘着剤組成物(C1)のゲル分率は74%であった。
【0108】
[粘着シート(D1)の作製]
坪量66g/m
2、厚さ116μm、透気度26秒/100mLのクレープ紙の第一面に、下塗り剤(primer)としてゴムエマルション(商品名「TRMG−40N」、タイレヂテックス社)を塗付し、130℃で2分間乾燥させて、坪量5g/m
2の下塗り層を形成した。次いで、上記クレープ紙の第二面(上記下塗り層とは反対側の面)にアクリル系樹脂エマルション(商品名「NIKASOL FX−494」、日本カーバイド株式会社)を塗付し、130℃で2分間乾燥させて、坪量9g/m
2の背面層(バックサイズ層)を形成した。このようにして本例に係るマスキングテープ用基材(基材(B1))を得た。
上記基材(B1)の下塗り層側に上記粘着剤組成物(C1)を塗付し、100℃で2分間乾燥させて、厚さが35μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係るマスキングテープ(粘着シートD1)を得た。
【0109】
<実施例2、3、比較例1>
ゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとのブレンド比がそれぞれ表1に示すとおりとなるように天然ゴムラテックスおよびアクリル系ポリマー水分散液(A1e)の使用量を変更した他は実施例1と同様にして、実施例2、3および比較例1の各例に係る粘着剤組成物(C2)、(C3)および(C4)をそれぞれ調製した。
【0110】
<比較例2>
固形分基準で90部の上記天然ゴムラテックスを固形分基準で90部の上記アクリル系ポリマー水分散液(A1e)に置き換えた他は実施例1と同様にして、ゴム系ポリマーを含まない粘着剤組成物(C5)を調製した。
【0111】
<比較例3>
固形分基準で10部の上記アクリル系ポリマー水分散液(A1e)を固形分基準で10部の上記天然ゴムラテックスに置き換えた他は実施例1と同様にして、アクリル系ポリマーを含まない粘着剤組成物(C6)を調製した。
【0112】
得られた粘着シート(マスキングテープ)を上述した方法により評価した。得られた結果を、各例に係る粘着シートの概略構成とともに表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示す結果から、ゴム/アクリル比が40/60〜95/5の範囲にある実施例1〜3は、アクリル系ポリマーのみを含む比較例2やゴム/アクリル比が小さい比較例1に比べて、塗装試験の結果が明らかに良好であったことがわかる。ゴム系ポリマーのみを含む比較例3は、塗装試験の結果は良好であったが、実施例1〜3に比べて対塗装板2時間後剥離強度が著しく低く、剥離強度変化率が極めて高かった。実施例1〜3は、比較例1、2と比べても剥離強度変化率が大幅に小さくなっており、剥離強度の経時安定性に優れることが確認された。また、実施例1〜3は、比較例1〜3に比べて対SUS剥離強度が高く、マスク対象物(特に、大型のマスク対象物)に対する貼り付け作業性に優れることが示唆された。
【0115】
<<実験例2>>
本実験例において使用した材料を以下に示す。
【0116】
[粘着付与樹脂]
T1:軟化点150℃のロジンフェノール系樹脂の水性エマルション、製品名「タマノルE−200NT」、荒川化学工業株式会社製品。
T2:軟化点100℃の水添石油樹脂の水性エマルション、製品名「AM−1000−NT」、荒川化学工業株式会社製品。
T3:軟化点160℃の重合ロジンエステルの水性エマルション、製品名「スーパーエステルE−865NT」、荒川化学工業株式会社製品。
T4:軟化点100℃の安定化ロジンエステルの水性エマルション、製品名「スーパーエステルE−720」、荒川化学工業株式会社製品。
【0117】
[架橋剤]
X2:イソシアネート系架橋剤(ブロックドイソシアネート、製品名「BL−400」、バイエル社)
X3:カルボジイミド系架橋剤(製品名「カルボジライトE−02」、日清紡社)
【0118】
<実施例4>
天然ゴムラテックス(商品名「TRNA−60D」、タイレヂテックス社)およびアクリル系ポリマー水分散液(A1e)とをゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとのブレンド比が67:33となる量で使用し、上記ゴム系ポリマーとアクリル系ポリマーとの合計量100部に対して50部の粘着付与樹脂T2を混合して、実施例4に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は実施例1と同様にして、実施例4に係る粘着シートを作製した。
【0119】
<実施例5〜9>
表2に示す種類および量の粘着付与樹脂を使用した他は実施例4と同様にして、実施例5〜9に係る粘着シートを作製した。
【0120】
<実施例10〜14>
粘着付与樹脂T1とT2とを、T1:T2=30:20の重量比で、T1とT2との合計量が表3に示す量となるように使用した他は実施例4と同様にして、実施例10〜14に係る粘着シートを作製した。
【0121】
<実施例15〜20>
表4に示す種類および量の粘着付与樹脂および架橋剤を使用した他は実施例4と同様にして、実施例15〜20に係る粘着シートを作製した。
【0122】
得られた粘着シート(マスキングテープ)を上述した方法により評価した。得られた結果を、各例に係る粘着シートの概略構成とともに表2〜4に示す。理解を容易にするため、表3には表1,2中の実施例2,7の結果を、表4には表2中の実施例4,9の結果を引用している。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表2〜4に示されるように、ゴム/アクリル比が40/60〜95/5の範囲にある実施例4〜20の粘着シートは塗装試験において良好な結果を示した。表2に示す結果から、2種以上の粘着付与樹脂を用いることにより、各粘着付与樹脂を単独で使用した場合に比べて対塗装板剥離強度を向上させ得ることがわかる。特に実施例7,8では良好な結果が得られた。表3に示す結果から、粘着付与樹脂の使用量の増大により剥離強度変化率が抑制され得ることがわかる。表4に示すように、粘着付与樹脂T1を用いた実施例9の粘着シートは、同程度の軟化点を有する粘着付与樹脂T3を用いた実施例15の粘着シートに比べて、より好適なプローブタックを示した。
【0127】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。