(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記復元回路は、順次出力されるAD変換された前記画素信号の少なくともN個を一時的に記憶するバッファメモリを有し、前記バッファメモリの読み出し順を変更することにより、AD変換された前記画素信号の前記並び順を復元する
請求項1〜10の何れか1項に記載の固体撮像装置。
前記復元回路は、順次出力されるAD変換された前記画素信号の少なくともN個を一時的に記憶するバッファメモリを有し、前記第1の制御信号群に基づいて前記バッファメモリの読み出し順を変更することにより、AD変換された前記画素信号の前記並び順を復元する
請求項8〜10の何れか1項に記載の固体撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施するための形態に係る固体撮像装置を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。
【0015】
例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は当業者が本開示を十分に理解するためのものであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態における固体撮像装置の概要について説明する。本実施形態における固体撮像装置は、行列状に配置された複数の画素回路(単位セル、単位画素セル)を有する画素アレイ部における画素回路の列と、垂直信号線毎に設けられたカラムAD回路の列との対応関係を切り替えることによって、縦線ノイズを低減するように構成されている。
【0017】
[固体撮像装置の構成例]
次に、図面を用いて第1の実施形態における固体撮像装置の構成について説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像装置1の構成例を示すブロック図である。同図に示す固体撮像装置1は、画素アレイ部10、水平走査回路12、垂直走査回路14、複数の垂直信号線19、制御部20、カラム処理部26、参照信号生成部27、出力回路28、複数のロード電流源30、列切替回路50、復元回路52、および複数のクリップトランジスタ54を備える。また、固体撮像装置1は、外部からマスタークロック信号の入力を受けるMCLK端子、外部との間でコマンドまたはデータを送受信するためのDATA端子、外部へ映像データを送信するためのD1端子等を備え、これ以外にも電源電圧、グラウンド電圧が供給される端子類を備える。
【0019】
画素アレイ部10は、行列状に配置された複数の画素回路3を有する。複数の画素回路3は、
図1ではn行m列に配置されている。
図2は、画素回路3の回路例を示す図である。
図2において画素回路3は、画素(受光部)であるフォトダイオードPD、浮遊拡散層FD、読み出しトランジスタT10、リセットトランジスタT11、増幅トランジスタT12および選択トランジスタT13を備える。
【0020】
フォトダイオードPDは、光電変換する受光素子であり、受光量に応じた電荷を生成する。
【0021】
浮遊拡散層FDは、フォトダイオードPDから読み出しトランジスタT10を介して読み出された電荷を一時的に保持する。
【0022】
読み出しトランジスタT10は、読み出し制御線φTRの読出し制御信号に従って、フォトダイオードPDから浮遊拡散層FDに電荷を読み出す(つまり転送する)。
【0023】
リセットトランジスタT11は、リセット制御線φRSのリセット制御信号に従って、浮遊拡散層FDの電荷をリセットする。
【0024】
増幅トランジスタT12は、浮遊拡散層FDの電荷を電圧に変換および増幅し、増幅した信号を画素信号として選択トランジスタT13を介して垂直信号線19に出力する。
【0025】
選択トランジスタT13は、選択制御線φSELの選択制御信号に従って、増幅トランジスタ
T12の画素信号を垂直信号線に出力するか否かを選択する。
【0026】
なお、図
2では、いわゆる1画素1セル構造の画素回路3の例を示したが、画素回路3は、いわゆる多画素1セル構造であってもよい。多画素1セル構造の画素回路3は、例えば、複数のフォトダイオードPDを有し、浮遊拡散層FD、リセットトランジスタT11、増幅トランジスタT12および選択トランジスタT13のいずれか、あるいは、すべてを単位セル内で共有する構造であってもよい。
【0027】
図1の水平走査回路12は、複数のカラムAD回路内のメモリ256を順に走査することにより、AD変換された画素信号を、水平信号線18を介して復元回路52に出力する。この走査は、カラムAD回路25の並び順と同じでよい。
【0028】
垂直走査回路14は、画素アレイ部10内の画素回路3の行毎に設けられた水平走査線群15(行制御線群とも呼ぶ)を行単位に走査する。これにより、垂直走査回路14は、画素回路3を行単位に選択し、選択した行に属する画素回路3から画素信号をm本の垂直信号線19に同時に出力させる。水平走査線群15は、画素回路3の行と同数設けられる。
図1では、n個の水平走査線群15(
図1ではV1、V2、・・・、Vn)が設けられている。水平走査線群15のそれぞれは、リセット制御線φRS、読み出し制御線φTR、選択制御線φSELを含む。
【0029】
垂直信号線19は、画素アレイ部10内の画素回路3の列毎に設けられ、選択された行に属する画素回路3からの画素信号をカラムAD回路25に伝播する。複数の垂直信号線19は、
図1では垂直信号線H0〜Hmのm本からなる。また、複数の垂直信号線19には列切替回路50が挿入されている。垂直信号線19のうち列切替回路50の下流側の部分、つまり列切替回路50とカラムAD回路25のマイナス入力端子とを接続する部分をADC入力線40と呼ぶ。複数のADC入力線40は、
図1ではADC入力線ADIN0〜ADINmのm本からなる。
【0030】
制御部20は、種々の制御信号群を生成することにより、固体撮像装置1の全体を制御する。種々の制御信号群には、制御信号群CN1、CN2、CN5、CN8、CN10、CN10、カウンタクロックCK0が含まれる。例えば、制御部20は、端子5aを介してマスタークロックMCLKを受け取り、種々の内部クロックを生成し水平走査回路12や垂直走査回路14などを制御する。また、制御部20は切替制御回路51を有する。切替制御回路51は、水平走査期間毎に、画素アレイ部10における画素回路3の列とカラムAD回路25との1対1の接続を切り替えさせるように列切替回路50を制御する。
【0031】
カラム処理部26は、列毎に設けられたカラムAD回路25を備える。各カラムAD回路25は、垂直信号線19からの画素信号をAD変換する。
【0032】
カラムAD回路25のそれぞれは、電圧比較器252、カウンタ部254、およびメモリ256を備える。
【0033】
電圧比較器252は、垂直信号線19からのアナログの画素信号と、参照信号生成部27で生成される、三角波を含む参照信号RAMPとを比較し、例えば、前者が後者より大きくなった時に比較結果を示す出力信号を反転する。
【0034】
カウンタ部254は、参照信号RAMP中の三角波の変化開始から電圧比較器252の出力信号が反転するまでの時間をカウントする。反転するまでの時間は、アナログ画素信号の値に応じて定まるので、カウント値はデジタル化された画素信号の値になる。
【0035】
メモリ256は、カウンタ部254のカウント値つまりデジタルの画素信号を保持する。
【0036】
参照信号生成部27は、三角波を含む参照信号RAMPを生成し、各カラムAD回路25内の電圧比較器252のプラス入力端子に参照信号RAMPを出力する。
【0037】
出力回路28は、復元回路52からデジタルの画素信号を映像データ端子D1に出力する。
【0038】
ロード電流源30は、垂直信号線19毎に設けられ、垂直信号線19に負荷電流を供給する負荷回路である。つまり、ロード電流源30は、選択された画素回路3内の増幅トランジスタ
T12に垂直信号線19を介して負荷電流を供給し、当該増幅トランジスタ
T12と共にソースフォロア回路を形成する。
【0039】
列切替回路50は、画素アレイ部10とカラムAD回路25との間の垂直信号線19に挿入され、画素アレイ部10における画素回路3の列とカラムAD回路25との1対1の接続を切り替える。この切り替えは、制御部20からの制御信号群CN10に従う。列切替回路50において画素アレイ部
10における画素回路
3の列と、カラムAD回路
25との対応関係を切り替えることによって、縦線ノイズを低減することができる。さらに、列切替回路50について
図3を用いて説明する。
【0040】
図3は、列切替回路50の構成例を示すブロック図である。
図3に示す列切替回路50は、複数の単位切替回路50aを備える。
【0041】
単位切替回路50aのそれぞれは、N(Nは4以上の整数)個の入力端子とN個の出力端子とを有する。複数の垂直信号線19(垂直信号線H0〜Hmのm本)はN本の垂直信号線19からなるグループに分割され、各グループは1つ単位切替回路50aに対応する。
【0042】
単位切替回路50aのN個の入力端子は、画素アレイ部10側のN本の垂直信号線19に接続される。
【0043】
単位切替回路50aのN個の出力端子は、複数のカラムAD回路25側のN本の垂直信号線19(つまりADC入力線40)に接続される。
【0044】
単位切替回路50aのそれぞれは、制御部20からの制御信号群CN10に従ってN個の入力端子とN個の出力端子との内部接続を切り替える。
【0045】
このように、複数の(m本の)垂直信号線19は、N本ずつのグループに分割されるので、N本に対応する単位切替回路
50aのそれぞれは、同じ制御信号群CN10を共用することができる。この共用により制御信号群CN10の本数が増大しすぎることを避けることができる。言い換えれば、Nを大きくすれば制御信号群CN10の制御信号線数が増大し、その配線面積も大きく増大する。つまり、Nの大きさ(縦線ノイズの低減効果)と、制御信号群CN10の配線面積を小さくすることとはトレードオフの関係にある。このトレードオフに対しては、固体撮像装置1が形成される半導体チップの面積、および画素回路の総数に応じてNを適切に設定すれば、縦線ノイズの低減効果を得ることができる。
【0046】
図1の復元回路52は、複数のカラムAD回路25によってAD変換された信号の並び順を、画素アレイ部10における複数の垂直信号線19の並び順に対応させるように復元する。この復元は、制御信号群CN10に従う。例えば、復元回路52は、制御部20内の切替制御回路51が出力する制御信号群CN10に基づいて、列切替回路50の入力と出力との関係を完全に反転して、AD変換された画素信号の並び順を復元するような回路構成とする。例えば、復元回路52は、水平走査回路12の走査によってメモリ256から水平信号線18上に順次出力される、AD変換された画素信号の少なくともN個を一時的に記憶するバッファメモリを有し、制御信号群CN10に基づいてバッファメモリの読み出し順を変更することにより、上記の並び順を復元する。
【0047】
クリップトランジスタ54は、複数の画素回路3の列毎に設けられ、列切替回路50とカラムAD回路25との間の垂直信号線19(つまりADC入力線40)に接続され、列切替回路50の切替の際にロード電流源30が瞬間的にオフしないように垂直信号線19にクリップ電位を与える。その結果、クリップトランジスタ54は、列切替回路50の切り替えによってロード電流源30に瞬間的に生じ得るオフおよびオンを防止し、もって電源電圧変動およびグラウンドレベルの変動を防止し、ノイズの発生を低減することができる。言い換えれば、クリップトランジスタ54は列切替回路50が切替った際にロード電流源30がオフしないようにクリップする。これはロード電流源30が瞬時的にもオフすると、画素アレイ部10の電源やGNDが過渡的に変動してしまいノイズ要因となってしまうからである。なお、ゲート電圧を制御するバイアス電圧は、適切に設定することによってロード電流源30をOFFしないように設定できる。
【0048】
[単位切替回路の構成例]
次に、単位切替回路50aの構成例についてより具体的に説明する。
【0049】
図4Aは、4入力4出力の単位切替回路50aの一例を示すブロック図である。同図は、
図3に示した単位切替回路50aにおいて垂直信号線19のグルーピング数Nが4である場合の単位切替回路50aの構成例を示す。
【0050】
図4Aにおいて、単位切替回路50aは、2入力端子と2出力端子とを有するセレクタをK×L個備える(
図4AではKは2、Lは2、グルーピング数Nは4)。K×L個のセレクタは、N並列かつL段に配置される。
【0051】
第1段のK個のセレクタの入力端子には、画素アレイ部10側のN本(ここでは4本)の垂直信号線19に接続される。
【0052】
最終段(つまり第L段)のK個のセレクタの出力端子には、カラムAD回路25側のN本の垂直信号線19(つまりADC入力線40)に接続される。
【0053】
第2段以降のセレクタのそれぞれの2つの入力端子は、前段の異なるセレクタの出力端子に接続される。
【0054】
K×L個のセレクタは、K×L個(ここでは4個)の制御信号C0〜C3に従って2入力端子と2出力端子との間の内部接続を切り替える。単位切替回路50aに入力される制御信号群CN10は、制御信号C0〜C3を含む。
【0055】
図4Bは、
図4Aに示す4入力4出力の単位切替回路50aの切替論理を示す図である。同図のように制御信号C0〜C3の論理値の組み合わせは16通りある。単位切替回路50aの出力側のN(ここでは4)本のADC入力線40に接続される垂直信号線19の並び順は、同図に示すように、16通りある。つまり、この単位切替回路50aは、制御信号C0〜C3の論理値の組み合わせに応じて16通りの接続を切り替えることができる。
【0056】
理論上4入力の垂直信号線H0〜H3を並べる順列は4!=24通り存在するが、
図4Aの単位切替回路50aでは24通りのうちの
図4Bに示した16通りの接続を切り替えることができる。
【0057】
さらに、セレクタ55の詳細な回路例について説明する。
【0058】
図5Aは、2入力2出力のセレクタ55を示すブロック図である。セレクタ55は、
図4AのセレクタS0〜S3のそれぞれの例である。
【0059】
図5Bは、2入力2出力のセレクタ55の入出力論理を示す図である。制御信号Cmが0のときセレクタ55の出力OUT1、OUT2にはIN1、IN2が接続される(ストレート接続と呼ぶ)、制御信号Cmが1のときセレクタ55の出力OUT1、OUT2にはIN2、IN1が接続される(クロス接続と呼ぶ)。
【0060】
図5Cは、2入力2出力のセレクタの具体例を示す回路図である。
図5Cのようにセレクタ55は、4つのトランジスタ対とインバータとを備える。PMOS型のトランジスタT1pとNMOS型のトランジスタT1nとからなるトランジスタ対を第1のトランジスタ対と呼ぶ。同様に、第2のトランジスタ対は、トランジスタT2p、T2nとからなる。第3のトランジスタ対は、トランジスタT3p、T3nとからなる。第4のトランジスタ対は、トランジスタT4p、T4nとからなる。
【0061】
各トランジスタ対を構成する2つのトランジスタは同時にオン状態またはオフ状態になる。第1のトランジスタ対は、第2のトランジスタ対に対して排他的にオン状態またはオフ状態になる。第3のトランジスタ対も第4のトランジスタ対に対して排他的にオン状態またはオフ状態になる。
【0062】
このようなセレクタ55をn×m個を組み合わせることによって単位切替回路50aの設計および製造を容易にすることができる。
【0063】
[単位切替回路の他の構成例]
次に、単位切替回路50aの他の構成例について説明する。
【0064】
図6Aは、8入力8出力の単位切替回路の一例を示すブロック図である。
【0065】
図6Aにおいて、単位切替回路50aは、2入力端子と2出力端子とを有するセレクタをK×L個備える(
図6AではKは4、Lは3、グルーピング数Nは8)。K×L個のセレクタは、K並列かつL段に配置される。
【0066】
第1段のK個のセレクタの入力端子には、画素アレイ部10側のN(ここでは8)本の垂直信号線に接続される。
【0067】
最終段(つまり第L段)のK個のセレクタの出力端子には、カラムAD回路25側のN本の垂直信号線19(つまりADC入力線40)に接続される。
【0068】
第2段以降のセレクタのそれぞれの2つの入力端子は、前段の異なるセレクタの出力端子に接続される。
【0069】
K×L個のセレクタは、K×L個(ここでは12個)の制御信号C0〜C11に従って2入力端子と2出力端子との間の内部接続を切り替える。単位切替回路50aに入力される制御信号群CN10は、制御信号C0〜C11を含む。
【0070】
図6Bは、
図6Aに示す8入力8出力の単位切替回路50aの切替論理を示す図である。同図のように制御信号C0〜C11の論理値の組み合わせは2048通りある。単位切替回路50aの出力側のN(ここでは8)本のADC入力線40に接続される垂直信号線19の並び順は、2048通りある。つまり、この単位切替回路50aは、制御信号C0〜C11の論理値の組み合わせに応じて2048通りの接続を切り替えることができる。
【0071】
理論上8入力の垂直信号線H0〜H7を並べる順列は8!=40320通り存在するが、
図6Aの単位切替回路50aでは40320通りのうちの2048通りの接続を切り替えることができる。
【0072】
図3に示した単位切替回路50aのグルーピング数Nは、列の相関性を完全に除去するためにNを増やして広範囲としたいが、広範囲にすると制御信号群CN10の配線面積の増加にもつながる。このため両立するNを選ぶ必要がある。
【0073】
単位切替回路50aの一例として、例えば、
図5A、
図5B、
図5CではPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとを複数個組み合わせたアナログスイッチから成るセレクタ55を示した。このセレクタ55のK×L個の組み合わせによって、
図4A、
図4BではN=4のグルーピング例を示し、
図6A、
図6BではN=8のグルーピング例を示した。このようにセレクタ55をK×L個を組み合わせることによって単位切替回路50aの設計および製造を容易にすることができる。
【0074】
[固体撮像装置の動作]
以上のように構成された固体撮像装置1について、以下その動作を説明する。
【0075】
図7は、固体撮像装置1の複数フレーム期間の動作例を示すタイムチャートである。同図のでは、第kフレームから第k+2フレームにおける参照信号RAMPの波形を模式的に表している。1フレームは、画素回路3の第1行から第n行に対応するn個の水平走査期間(同図中の1Hの期間)からなる。また、
図8は、固体撮像装置の1水平走査期間の動作例を示すタイムチャートである。
【0076】
1水平走査期間のそれぞれにおいて参照信号RAMPは、
図7、
図8のダウンカウント期間およびアップカウント期間のそれぞれにおいて三角波となる。
【0077】
ダウンカウント期間は、増幅トランジスタT12から出力されるリセット成分Vrstのレベルを示す第1の画素信号をAD変換するための期間である。ダウンカウント期間の開始(三角波の変化開始)から電圧比較器252の出力が反転するまでの時間がカウンタ部254によりダウンカウントされる。このカウント値はアナログのリセット成分VrstのAD変換結果そのものである。
【0078】
アップカウント期間は、増幅トランジスタT12から出力される、データ成分(信号成分Vsig+リセット成分Vrst)のレベルを示す第2の画素信号をAD変換するための期間である。アップカウント期間の開始(三角波の変化開始)から電圧比較器252の出力が反転するまでの時間がカウンタ部254によりアップカウントされる。このアップカウントは、アナログのデータ成分(Vsig+Vrst)をデジタル値に変換する。このアップカウントは、リセット成分Vrstを示すダウンカウント値を初期値とするので、アップカウント期間の終了時のカウント値は、データ成分からリセット成分を減算するCDS(Correlated Double Sampling:相関二重検出)の結果を表す。つまり、アップカウント期間の終了時のカウント値は、信号成分Vsigを表すデジタル値そのものである。このように、カラムAD回路25は、誤差となる各列のクロックスキューやカウンタディレイ等のばらつきを排除して、真の信号成分Vsigのみを取り出す、つまり、デジタルCDSを行う。
【0079】
このような1水平走査期間の動作をn行に対して順次行うことにより1フレームの画像が得られる。
【0080】
図8において、制御信号群CN10は、水平走査期間毎に変更される。より詳しくは、制御信号群CN10は、水平走査期間それぞれの開始時(時刻t4)に変更され、1水平期間内では同じ論理値を維持する。なお、制御信号群CN10の変更は、1水平期間内のAD変換の前であればよい。
【0081】
制御信号群CN10の変更により、垂直走査回路14によって走査される行毎に、画素アレイ部10における画素回路3の列とカラムAD回路25の列との1対1の接続を切り替えることができ、列相関性をもつノイズおよびバラツキを低減することができる。また、制御信号群CN10の論理値は、1水平走査期間内では維持されるのでCDSにおける1回目の第1画素信号の検出および2回目の第2画素信号の検出に切り替えによる影響を与えない。
【0082】
ここで、列切替回路50の切り替えによる、列相関性をもつノイズおよびバラツキの低減についてより詳しく説明する。
【0083】
上記の縦線ノイズが発生する主要因である1点目は、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきであり、2点目は垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきである。
【0084】
主要因である1点目の電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきに関しては、列切替回路50により、画素アレイ部10内の画素回路3の列と、対応するカラムAD回路25との接続をAD変換前につど切り替える。
【0085】
この結果、同一列の画素信号には同じノイズが重畳されることはなく、異なる列の画素信号に重畳されるようになる。この結果、列相関性はなくなりAD変換結果の画像に現われる縦線ノイズは軽減されることになる。
【0086】
2点目の垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきに関しては、主に、ロード電流源30の電流値のばらつきによって発生する。つまり、このため、列切替回路50により、画素アレイ部10内の画素回路3の列と、対応するロード電流源30との接続をAD変換前につど切り替える。
【0087】
これは、
図8の1水平走査期間が短く、このため、垂直信号線19の応答時間を示すダウンカウント前のタイミングt4〜t10までの時間と、アップカウント前のタイミングt16〜t20までの時間が短く、2点目の課題である垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきが課題になるときに有効である。
【0088】
この結果、同一列の画素信号には同じノイズが重畳されることはなく、異なる列の画素信号に重畳されるようになる。この結果、列相関性はなくなりAD変換結果の画像に現われる縦線ノイズは軽減されることになる。
【0089】
また、特許文献1に関する課題である行相関性は無くなりランダム横線ノイズが発生することもなくなる。
【0090】
また、列切替回路50の制御は、制御部20内の切替制御回路51に基づいて実施している。AD変換結果の画像において、いかなる固定パターンも排除するためには、列切替回路50の切り替えを乱数的に制御することが好ましい。実際には、この乱数の周期性は、数フレーム×行数であれば、画像印象としては違和感のないものになる。
【0091】
列切替回路50は、水平走査期間毎にAD変換する前に、例えば制御信号群CN10によってタイミングt4で接続を切り替える。そして、水平期間毎にAD変換した後に、制御信号群CN10によってタイミングt28で列切替回路50を解除してもよい。このようにして、列切替回路50は水平走査期間ごとに接続を切り替えていく。
【0092】
このような列切替回路50の切り替えによる縦線ノイズの低減について
図9A、
図9Bを用いて説明する。
【0093】
図9Aは、比較例に係る画像を示す模式図である。同図は、列切替回路50による接続の切り替えをしない場合に、明るさおよび色が一様な被写体を撮像した画像を模式的に示している。列切替回路50による切り替えをしない場合には、カウンタ部254においてアップカウントでAD変換された値とダウンカウントでAD変換された値とは、列相関性をもち、信号成分であるアップカウント値からダウンカウント値を減算した値もまた、列相関性をもつことになる。その結果、
図9Aのように縦線ノイズが生じ得る。
【0094】
図9Bは、本実施形態に係る画像を示す模式図である。同図は、列切替回路50による水平走査期間毎の接続の切り替えをした場合に、明るさおよび色が一様な被写体を撮像した画像を模式的に示している。本実施形態においては、垂直信号線19とカラムAD回路25との対応関係が、毎行異なる。この結果、
図9Bのように、AD変換結果後の画像には縦線ノイズが低減されることになる。
【0095】
以上の通り、第1の実施形態では、画素アレイ部10とカラムAD回路25の間の垂直信号線19に列切替回路50を設けることにより、縦線ノイズを低減することが可能になる。
【0096】
なお、復元回路52は、AD変換された画素信号の少なくともN個を一時的に記憶するバッファメモリを有する構成でなくてもよい。
【0097】
例えば、復元回路52は水平走査回路12と兼用することができる。この場合水平走査回路12は、制御信号群CN10に基づいてメモリ256の走査順を切り替えることにより、画素信号の並び順を復元してもよい。
【0098】
また例えば、復元回路52は、列切替回路50と同様の回路構成を有し、複数のメモリ256の出力線と、水平信号線18との間に挿入されてもよい。この場合、復元回路52は、制御信号群CN10に基づいて、列切替回路50による切り替えと逆の切り替えを行うようにすればよい。
【0099】
以上説明してきたように、第1の実施形態における固体撮像装置1は、行列状に配置された複数の画素回路3を有する画素アレイ部10と、複数の画素回路3から出力される画素信号を伝播する、列毎に設けられた垂直信号線19と、垂直信号線19からの画素信号をAD変換する、列毎に設けられたカラムAD回路25と、画素アレイ部10とカラムAD回路25との間の垂直信号線19に挿入され、画素アレイ部10における画素回路3の列とカラムAD回路25との接続を切り替える列切替回路50と、水平走査期間毎に列切替回路50に接続を切り替えさせる制御部20と、複数のカラムAD回路25によってAD変換された信号の並び順を、画素アレイ部10における複数の垂直信号線19の並び順に対応させるように復元する復元回路52とを備える。
【0100】
この構成によれば、画素アレイ部10における画素回路3の列と、カラムAD回路25との対応関係を切り替えることによって、縦線ノイズを低減することができる。
【0101】
ここで、固体撮像装置1は、列切替回路50とカラムAD回路25との間の垂直信号線19に接続され、垂直信号線19に負荷電流を供給する、列毎に設けられたロード電流源30を備えてもよい。
【0102】
この構成によれば、画素アレイ部10における画素回路3の列と、ロード電流源30およびカラムAD回路25との対応関係を切り替えることによって、縦線ノイズを低減することができる。
【0103】
ここで、固体撮像装置1は、列切替回路50とカラムAD回路25との間の垂直信号線19に接続され、列切替回路50の切替の際にロード電流源30がオフしないように垂直信号線にクリップ電流を与える、列毎に設けられたクリップトランジスタ54を備えてもよい。
【0104】
この構成によれば、列切替回路50の切り替えによって生じ得る電源電圧変動およびグラウンドレベルの変動を防止することにより、ノイズの発生を低減することができる。
【0105】
ここで、列切替回路50は、N(Nは4以上の整数)個の入力端子とN個の出力端子とを有する単位切替回路50aを複数備え、単位切替回路50aのN個の入力端子は、画素アレイ部10側のN本の垂直信号線19に接続され、単位切替回路50aのN個の出力端子は、複数のカラムAD回路25側のN本の垂直信号線19に接続され、複数の単位切替回路50aのそれぞれは、制御部20からの第1の制御信号群に従ってN個の入力端子とN個の出力端子との内部接続を切り換えるようにしてもよい。
【0106】
この構成によれば、複数の垂直信号線19は、N本ずつのグループに分割されるので、N本に対応する単位切替回路50aのそれぞれは、同じ第1の制御信号群を共用することができる。また、Nを大きくすれば第1の制御信号群の制御信号数が増大し、その配線面積も大きく増大し、Nの大きさ(縦線ノイズの低減効果)と配線面積を小さくすることとはトレードオフの関係にある。固体撮像装置1が形成される半導体チップの面積、および画素回路の総数に応じてNを適切に設定すれば、縦線ノイズの低減効果を十分に得ることができる。
【0107】
ここで、単位切替回路50aのそれぞれは、2入力端子と2出力端子とを有するセレクタをK×L個(Kは2以上の整数、Lは2以上の整数、Nは2×K)備え、K×L個のセレクタは、K並列かつL段に配置され、第1段のK個のセレクタの入力端子には、画素アレイ部10側のN本の垂直信号線19に接続され、最終段のK個のセレクタの出力端子には、複数のカラムAD回路25側のN本の垂直信号線19に接続され、第2段以降のセレクタのそれぞれの2つの入力端子は、前段の異なるセレクタの出力端子に接続され、K×L個のセレクタは、K×L個の制御信号に従って2入力端子と2出力端子との間の内部接続を切り替え、第1の制御信号群は、K×L個の制御信号を含むようにしてもよい。
【0108】
この構成によれば、K×L個のセレクタの組み合わせによって単位切替回路50aの設計および製造を容易にすることができる。
【0109】
ここで、制御部20は、疑似乱数によって第1の制御信号群を生成する疑似乱数発生回路53を備えてもよい。
【0110】
この構成によれば、縦線ノイズの低減効果を高めることができる。
【0111】
ここで、固体撮像装置1は、複数のカラムAD回路25を走査することにより、複数のカラムAD回路25からAD変換された画素信号を順次出力させる水平走査回路12を有し、復元回路52は、順次出力されるAD変換された画素信号の少なくともN個を一時的に記憶するバッファメモリを有し、第1の制御信号群に基づいてバッファメモリの読み出し順を変更することにより、並び順を復元してもよい。
【0112】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態に加えて、さらに、列間の相関性を低減する固体撮像装置について説明する。
【0113】
上記に記載の通り、縦線ノイズが発生する要因は、主要因である1点目は、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきであり、2点目は垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきである。
【0114】
主要因である1点目である、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきに起因する縦線ノイズのさらなる低減に関して説明する。本実施形態に係る固体撮像装置は、電圧比較器252が、電流特性を切り替え可能なコンパレータ電流源を有している。これにより、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきを低減することができる。
【0115】
2点目である、垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきに起因する縦線ノイズのさらなる低減に関して説明する。本実施形態に係る固体撮像装置は、電流特性を切り替え可能なロード電流源30を有している。これにより、垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきを低減することができる。
【0116】
以下、図面を用いて第2の実施形態における固体撮像装置の構成について説明する。
【0117】
図10は、第2の実施形態に係る固体撮像装置1の構成例を示すブロック図である。同図の固体撮像装置1は、
図1と比べて、ロード電流源30の電流特性が切り替え可能な点と、電圧比較器252内のコンパレータ電流源の電流特性が切り替え可能な点と、制御部20に疑似乱数発生回路53が追加されている点とが異なっている。以下では異なる点を中心に説明する。
【0118】
[ロード電流源の構成例]
まず、電流特性が切り替え可能なロード電流源30について説明する。
【0119】
図11は、第2の実施形態に係る複数のロード電流源30の一例を示す回路図である。固体撮像装置1は、垂直信号線19と同数のm個のロード電流源30を有する。同図は、m個のロード電流源30のうちの一部分のロード電流源30と、ロード基準電流源30aとを示している。
【0120】
ロード基準電流源30aは、各ロード電流源30とカレントミラーを構成する基準となる電流源である。同図では、全てのロード電流源30に共通の1つのロード基準電流源30aを示しているが、ロード電流源30の何個かに共通するロード基準電流源30aを複数個設けてもよい。
【0121】
同図のように、複数の(m個の)ロード電流源30は、複数の電流源群30gに分割される。
【0122】
電流源群30gのそれぞれは、s+1個(sは1以上の整数)のロード電流源30からなる。
【0123】
ロード電流源(30)のそれぞれは、t+2個(tは0以上整数)のトランジスタと、t+1個のスイッチとを備える。
【0124】
t+2個のトランジスタは、垂直信号線19とグラウンド線との間でカスコード接続される。
【0125】
t+1個のスイッチは、t+2個のトランジスタのうちのt+1個のトランジスタのドレイン−ソース間に接続される。
【0126】
ロード電流源30のそれぞれは、t+1個のスイッチのオンまたはオフの組み合わせによりカレントミラーのミラー比が変更可能であり、つまり、電流特性(電流値を含む)を切り替えられる。
【0127】
複数の電流源群30gのそれぞれは、制御部20から、(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号からなる制御信号群CN11が入力される。(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号は、各電流源群30g内の(s+1)×(t+1)個のスイッチに供給される。制御信号群CN11は、疑似乱数発生回路53によって、水平走査期間毎にAD変換する前に変更される。このように、制御部20は、(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号の論理値をランダムに決定することにより、水平走査期間毎にロード電流源30の電流特性を切り替える。これにより、垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきを低減することができる。
【0128】
また、複数の(m個の)ロード電流源30は、s+1個ずつのロード電流源30からなる電流源群30gにグループ化されるので、電流源群30gのそれぞれは、同じ制御信号群CN11を共用することができる。この共用により制御信号群CN11の本数が増大しすぎることを避けることができる。より詳しく言うと、電流源群30g内のロード電流源30の個数(s+1)およびロード電流源30内のスイッチの個数(t+1)を大きくすれば制御信号群CN11の制御信号線数が増大し、その配線面積も大きく増大する。つまり、(s+1)および(t+1)の大きさ(垂直信号線19における応答スピードのバラツキの低減効果)と、制御信号群CN11の配線面積を小さくすることとはトレードオフの関係にある。このトレードオフに対しては、固体撮像装置1が形成される半導体チップの面積、および画素回路の総数に応じて(s+1)および(t+1)を適切に設定すれば、縦線ノイズの低減効果を得ることができる。
【0129】
[コンパレータ電流源の構成例]
次に、電流特性が切り替え可能なコンパレータ電流源を有する電圧比較器252について説明する。
【0130】
図12は、第2の実施形態に係る電圧比較器252の一例を示す回路図である。同図の電圧比較器252は、入力容量素子C1、C2、差動回路252a、出力回路252b、コンパレータ電流源253を備える。
【0131】
入力容量素子C1は、垂直信号線19からのアナログ画素信号が入力される。入力容量素子C2は、参照信号RAMPが入力される。
【0132】
差動回路252aは、4つのトランジスタT21〜T24を備える。垂直信号線19からのアナログ画素信号は、入力容量素子C1を介してトランジスタT21のゲート端子に入力される。参照信号RAMPは、入力容量素子C2を介してがトランジスタT22のゲート端子に入力される。さらに、差動回路252aには、入力容量素子C1、C2をリセットするためのスイッチSW1、SW2が付加されている。
【0133】
コンパレータ電流源253は、差動回路252aのトランジスタT21、T22のソース端子に接続される。コンパレータ電流源253は、電流特性を切り替え可能であり、制御部20によって、電流特性が水平走査期間毎にランダムに切り替える。
【0134】
図13は、第2の実施形態に係るコンパレータ電流源の一例を示す回路図である。固体撮像装置1は、垂直信号線19と同数のm個のコンパレータ電流源253を有する。同図は、m個のコンパレータ電流源253のうちの一部分のコンパレータ電流源253と、コンパレータ基準電流源253aとを示している。
【0135】
コンパレータ基準電流源253aは、各コンパレータ電流源253とカレントミラーを構成する基準となる電流源である。同図では、全てのコンパレータ電流源253に共通の1つのコンパレータ基準電流源253aを示しているが、コンパレータ電流源253の何個か共通するコンパレータ基準電流源253aを複数個設けてもよい。
【0136】
同図のように、複数の(m個の)コンパレータ電流源253は、複数の電流源群253gに分割される。
【0137】
電流源群253gのそれぞれは、u+1個(uは1以上の整数)のコンパレータ電流源253からなる。
【0138】
コンパレータ電流源253のぞれぞれは、v+2個(vは0以上整数)のトランジスタと、v+1個のスイッチとを備える。
【0139】
v+2個のトランジスタは、差動回路252aとグラウンド線との間でカスコード接続される。
【0140】
v+1個のスイッチは、v+2個のトランジスタのうちのv+1個のトランジスタのドレイン−ソース間に接続される。このv+1個のスイッチは、制御部20から出力される(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号からなる制御信号群CN12により制御される。
【0141】
このような構成により、
コンパレータ電流源253のそれぞれは、v+1個のスイッチのオンまたはオフの組み合わせによりカレントミラーのミラー比が変更可能、つまり、電流特性(電流値を含む)を切り替え可能である。
【0142】
(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号は、各電流源群253g内の(u+1)×(v+1)個のスイッチに供給される。制御部20は、(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号の論理値をランダムに決定することにより、水平走査期間毎に電流特性を切り替える。
【0143】
上記のように、第2の実施形態における固体撮像装置1は、第1の実施形態に対して、さらに、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきを低減することができる。また、垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきを低減することができる。
【0144】
また、複数の(m個の)コンパレータ電流源253は、u+1個ずつのコンパレータ電流源253からなる電流源群253gにグループ化されるので、電流源群253gのそれぞれは、同じ制御信号群CN12を共用することができる。この共用により制御信号群CN12の本数が増大しすぎることを避けることができる。より詳しく言うと、電流源群253g内のコンパレータ電流源253の個数(u+1)およびコンパレータ電流源253内のスイッチの個数(v+1)を大きくすれば制御信号群CN12の制御信号線数が増大し、その配線面積も大きく増大する。つまり、(u+1)および(v+1)の大きさ(電圧比較器252における応答スピードのバラツキの低減効果)と、制御信号群CN12の配線面積を小さくすることとは、トレードオフの関係にある。このトレードオフに対しては、固体撮像装置1が形成される半導体チップの面積、および画素回路の総数に応じて(u+1)および(v+1)を適切に設定すれば、縦線ノイズの低減効果を得ることができる。
【0145】
以上説明してきたように、本実施形態における固体撮像装置において、カラムAD回路25は、垂直信号線19からの画素信号と、三角波を有する参照信号RAMPとを比較する電圧比較器252と、電圧比較器252の出力反転に従って、垂直信号線19からの画素信号をデジタル値に変換するカウンタ部254とを含み、電圧比較器252は、画素信号と参照信号RAMPとが入力される差動回路252aと、差動回路に接続されたコンパレータ電流源253とを含み、コンパレータ電流源253は、電流特性を切替可能であり、制御部20は、複数のカラムAD回路25における複数のコンパレータ電流源253の電流特性を、水平走査期間毎にランダムに切り替えことができる。
【0146】
この構成によれば、コンパレータ電流源の電流特性のランダムな切り替えによって、さらに列間の相関性を低減することができる。
【0147】
ここで、コンパレータ電流源253は、差動回路252aとグラウンド線との間でカスコード接続されたv+2個(vは0以上整数)のトランジスタと、v+2個のトランジスタのうちのv+1個のトランジスタのドレイン−ソース間に接続されたv+1個のスイッチとを含み、複数のコンパレータ電流源253は、複数の電流源群253gに分割され、複数の電流源群253gのそれぞれは、u+1個(uは1以上の整数)のコンパレータ電流源253からなり、制御部20は、複数の電流源群253gのそれぞれに、(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号からなる制御信号群CN12を出力し、(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号は、各電流源群253g内の(u+1)×(v+1)個のスイッチに供給され、制御部20は、(u+1)×(v+1)個のスイッチ制御信号の論理値をランダムに決定することにより、水平走査期間毎に電流特性を切り替えるようにしてもよい。
【0148】
この構成によれば、電流特性を切り替え可能なコンパレータ電流源の設計および製造を容易にすることができる。
【0149】
ここで、複数のロード電流源30は、電流特性を切り替え可能であり、制御部20は、複数のロード電流源の電流特性を、水平走査期間毎にランダムに切り替えてもよい。
【0150】
この構成によれば、ロード電流源の電流特性のランダムな切り替えによって、さらに列間の相関性を低減することができる。
【0151】
ここで、ロード電流源30は、垂直信号線19とグラウンド線との間でカスコード接続されたt+2個(tは0以上整数)のトランジスタと、t+2個のトランジスタのうちのt+1個のトランジスタのドレイン−ソース間に接続されたt+1個のスイッチとを含み、複数のロード電流源30は、複数の電流源群30gに分割され、複数の電流源群30gのそれぞれは、s+1個(sは1以上の整数)のロード電流源30からなり、制御部20は、複数の電流源群30gのそれぞれに、(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号からなる制御信号群CN11を出力し、(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号は、各電流源群30g内の(s+1)×(t+1)個のスイッチに供給され、制御部(20)は、(s+1)×(t+1)個のスイッチ制御信号の論理値をランダムに決定することにより、水平走査期間毎に電流特性を切り替えてもよい。
【0152】
この構成によれば、電流特性を切り替え可能なロード電流源の設計および製造を容易にすることができる。
【0153】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態に対して、主要因の1点目である電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきを改善する固体撮像装置について説明する。
【0154】
以下、図面を用いて第3の実施形態における固体撮像装置の構成について説明する。
【0155】
図14は、第3の実施形態に係る固体撮像装置1の構成例を示すブロック図である。同図の固体撮像装置1は、
図1と比べて、垂直信号線19におけるロード電流源30の接続位置が、列切替回路50よりも上流側である点と、クリップトランジスタ54が削除されている点とが異なっている。以下では異なる点を中心に説明する。
【0156】
ロード電流源30は、列毎に設けられ、画素アレイ部10と列切替回路50との間の垂直信号線19に接続されている。
【0157】
また、クリップトランジスタ54は削除されている。これは、ロード電流源30が瞬時的にもオフすることはないので、画素アレイ部10の電源やGNDが過渡的に変動することは無くノイズ要因とはならないからである。
【0158】
この固体撮像装置1によれば、画素アレイ部10における画素回路3およびロード電流源30の列と、カラムAD回路25との対応関係を切り替えることによって、縦線ノイズを低減することができる。
【0159】
また、本実施形態における固体撮像装置1では図
8のタイムチャートにおいて1水平走査期間が比較的長い場合、垂直信号線19の応答時間を示すダウンカウント前のタイミングt4〜t10までの時間と、アップカウント前のタイミングt16〜t20までの時間が長く、2点目の課題である垂直信号線19の応答スピードの列間のばらつきが課題にならないときに有効である。
【0160】
これは、ロード電流源30の電流値のばらつきによって、垂直信号線19の収束時間にばらつきが多少発生しても、上記タイミングを十分に確保すれば、ばらつきが生じないと考えられるからである。
【0161】
以上説明してきたように、本実施形態における固体撮像装置1は、画素アレイ部10と列切替回路50との間の垂直信号線19に接続され、垂直信号線19に負荷電流を供給する、列毎に設けられたロード電流源30を備える。
【0162】
なお、第3の実施形態における固体撮像装置1において、電流特性を切り替え可能でないロード電流源30の代わりに、第2の実施形態における電流特性を切り替え可能なロード電流源30を備えてもよい。
【0163】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第3の実施形態に加えて、さらに、列間の相関性を低減する固体撮像装置について説明する。つまり、主要因の1点目である電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきを改善する固体撮像装置1について説明する。
【0164】
以下、図面を用いて第4の実施形態における固体撮像装置の構成について説明する。
【0165】
図15は、第4の実施形態に係る固体撮像装置1の構成例を示すブロック図である。同図の固体撮像装置1は、
図14と比べて、電圧比較器252内のコンパレータ電流源が電流特性を切り替え可能である点が異なっている。以下では異なる点を中心に説明する。
【0166】
図15における電圧比較器252は、
図12と同様の構成である。電圧比較器252内のコンパレータ電流源253は、
図13と同様の構成である。
【0167】
これによれば、第3の実施形態と比べて、主要因である1点目である、電圧比較器252の反転スピードの列間のばらつきのさらなる低減が可能である。また、
図15の固体撮像装置1では、第2の実施形態と比べて図
11に記載のロード電流源30の電流値の切り替えを要しないので、制御信号群CN11中の合計(s+1)×(t+1)個の制御信号L00〜Lstの配線スペース必要としない。
【0168】
なお、上記の各実施形態で説明した固体撮像装置1は、カメラに用いられる。
図16は、カメラの構成例を示すブロック図である。同図のカメラは、固体撮像装置1、レンズ61、信号処理部63、およびシステムコントローラ64を備える。
【0169】
また、固体撮像装置1において、画素回路3は半導体基板の表面、すなわち、トランジスタのゲート端子及び配線が形成された面と同じ面側に形成されているが、画素回路3が半導体基板の裏面、すなわちトランジスタのゲート端子及び配線が形成された面に対して裏面側に形成される、いわゆる、裏面照射型イメージセンサ(裏面照射型固体撮像装置)の構造を用いてもよい。
【0170】
以上、例示的な各実施形態について説明したが、本願の請求の範囲は、これらの実施形態に限定されるものではない。添付の請求の範囲に記載された主題の新規な教示および利点から逸脱することなく、上記各実施形態においてさまざまな変形を施してもよく、上記各実施形態の構成要素を任意に組み合わせて他の実施形態を得てもよいことを、当業者であれば容易に理解するであろう。したがって、そのような変形例や他の実施形態も本開示に含まれる。