(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図12〜
図14に示すように、本実施の形態にかかる折戸1は、浴室折戸であり、枠体3と、扉体(扉)5とを備えている。
枠体3は、上枠7と、下枠9と、戸先側縦枠11と、吊元側縦枠13とを枠組みしてあり、上枠7には上レール15が設けてあり、下枠9には下レール17が設けてある。
扉体5は、吊元側扉19と戸先側扉21とを備え、吊元側扉19と戸先側扉21は中間框23により折り畳み自在に連結されている。
戸先側扉21には、浴室側に取手18が取付けてある。扉体5は、左開き仕様及び右開き仕様のいずれの使用にも対応できるものであり、施工現場で仕様に合わせて取手18を左右いずれかの扉19、21に取り付けるようになっている。本実施の形態では、
図13及び
図14に示すように、浴室側から見て右側を吊元側扉19とし、左側を戸先側扉21としている。
図5に示すように、吊元側扉19の吊元框19aの上端には、上レール15に係合する吊元側ピボットヒンジ25が取付けてあり、戸先側扉21の戸先框21aの上端には上レール15に係合する戸先側ピボットヒンジ27が取付けてある。
図1(1a)(1b)及び
図10(1a)(1b)に示すように、上レール15は、左右端を切除して、吊元側のレール端部15aと戸先側のレール端部15bが形成してある。
【0010】
図5に示すように、吊元側ピボットヒンジ25と、戸先側ピボットヒンジ27とは、後述するストッパー29が装着してあるか否かの相違以外には、略同じ構成であるから、吊元側ピボットヒンジ25の構成について説明し、戸先側ピボットヒンジ27には同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付して、その部分の説明を省略する。
図5及び
図8に示すように、吊元側ピボットヒンジ25は、ピボット31と、受け33とばね34から構成されている。
ピボット31には、基部35と、基部35の上部に設けたレール係合部37と、ストッパー当接部39が一体に形成されている。基部35は、ばね34と共に受け33内に収納されており、受け33内で垂直軸回りに回転自在である。
ばね35は、圧縮ばねであり、受け33に対してピボット31を上下動自在に支持している。
レール係合部37は、受け33から上方に突出しており、基部35と共にばね35の付勢力に抗して下方に移動自在である。
レール係合部37には、上レール15の端部に位置決めするレール端部呑込溝37aとレール摺動溝37bとが形成されている。
レール端部呑込溝37aとレール摺動溝37bとは、レール係合部37の上面において互いに交差して形成してあり、本実施の形態では直交している。
レール摺動溝37bはレール係合部37の上面において一端から他端に亘って連続して開いた溝であり、レール端部呑込み溝37aはレール係合部39の上面において一端から他端の途中まで形成されており、閉鎖部36で閉じた溝としてある。尚、閉鎖部36は各図の平面視においてはハッチで示す。
ストッパー当接部39は、レール係合部37の外周側に突設しており、本実施の形態では受け33より外周側に略180度に亘って突出している。
【0011】
図5、
図6(b)及び
図8に示すように、受け33は、ピボット31の基部35を収納する収納部33aと、位置決め部33bと、ストッパー装着部33cと、緊急操作部33dとが設けてある。
収納部33aは円筒状を成しており、胴部に緊急操作部33dの装着孔41が形成されている。
位置決め部33bは、戸先框21a又は吊元框19aに取付けるときの向きを決めるものであり、上框22に向けて突設してあり、戸先框21aに装着され受け33と、吊元框19aに装着される受け33とは、互いに対向する向きに位置決め部33bを配置して位置決めするものである。
ストッパー装着部33cは、収納部33aの上面に設けてあり、ストッパー29の輪郭形状の凹部が形成されている。
緊急操作部33dは装着孔41を介してピボット31の基部35に取り付けてある。緊急操作部33dは収納部33aに対して上下動自在であり、緊急時にピボット31を下動操作するものである。
【0012】
図6及び
図7に示すように、ストッパー29は、受け33の上面に設けたストッパー装着部33c(
図8参照)に離脱自在に取り付けてある。ストッパー29は所定の厚みHを有し、ピボット31のストッパー当接部39が当たることで、ピボット31の下動を阻止するものである。
ストッパー29には、その一側に受け33に取り付ける取付け部42が設けられている。
ストッパー29は、
図5に示すように、吊元側ピボットヒンジ25にのみ装着するものであり、戸先側ピボットヒンジ27には装着しない。
【0013】
図3(b)及び
図11に示すように、吊元框19aの下端には吊元下ピボット45が取付けてあり、戸先框21aの下端には戸先下ピボット47が取付けてある。各下ピボット45、47は、対応する框19a、21aに対して回転自在に取り付けてある。吊元下ピボット45には、下レール17を呑込む下レール係合溝43aが形成されており、戸先下ピボット47には下レール17を走行する下レール係合溝43bが形成されている。尚、下レール係合溝43bに戸車44が配置されている。
【0014】
次に、扉体5の建て込みについて説明する。
図8に示すように、吊元側ピボットヒンジ25と戸先側ピボットヒンジ27を組み立てるが、いずれも同種の受け33と、ばね34と、ピボット31を用いて、受け33の収納部33aにピボット31の基部35をばね34と共に収納する。各ピボットヒンジ25、27は共通の構成であるから、いずれが吊元側か戸先側かは問わない。
そして、これらのピボットヒンジ25、27をそれぞれ吊元側扉19の吊元框19aと、戸先側扉21の戸先框21aに装着する。
その後、扉体5の吊元側と戸先側とを確認し、
図3(a)に示すように、吊元側ピボットヒンジ25にはストッパー29を取り付ける。ストッパー29は受け33の上面において上框22側に取り付ける。吊元側ピボットヒンジ25のレール係合部37では、ストッパー当接部39がストッパー29と反対側に位置するように、レール係合部37の位置を決める。このレール係合部37の位置では、レール呑込溝37aが上框22の長手方向に沿う位置にある。
【0015】
一方、戸先側ピボットヒンジ27では、
図10(1a)及び(1b)に示すように、ストッパー当接部39が戸先側扉21の見付面側(
図10(1a)(1b)では浴室側見付面側)に位置するように、レール係合部37の位置を決める。このレール係合部37の位置では、レール摺動溝37bが扉体5の見付面に沿う方向に位置する。
次に、
図3(b)に示すように、扉体5について吊元側扉19と戸先側扉21を重ねるように畳んだ状態にして、上枠7及び下枠9の長手方向略中央で、枠体3内に浴室側から下側を挿入し、吊元框19aの吊元下ピボット45と戸先框21aの戸先下ピボット47の対応する下レール係合溝43a、43bを下レール17に係合する。
次に、扉体5を立てて、
図4(a)に矢印Kで示すように、吊元框19a及び戸先框21aが離れるように、各々下レール17を走行させて、扉体5を広げて、吊元側扉19と戸先側扉21を閉じ状態にする。
尚、この状態では、扉体5の上側では各ピボット31が受け33から上に飛び出した状態にあり、各レール係合部37は上レール15の浴室側にある。
【0016】
図1(1a)(1b)に示すように、吊元側ピボットヒンジ25では、上レール15のレール端部15aにおいて、ストッパー当接部39をばね34の付勢力に抗して手で押下げ、レール係合部37を上レール15の下に配置した後、ストッパー当接部39を押下げている手を放す。これにより、
図2(a)(b)に示すように、ばね34が復帰してレール係合部37が上昇し、レール端部呑込み溝37aが上レール15のレール端部15aを呑込む。
図10(1a)(1b)に示すように、戸先側ピボットヒンジ27においても、吊元側ピボットヒンジ25と同様に、ストッパー当接部39をばね34の付勢力に抗して手で押下げ、レール係合部37を上レール15の下に配置して、ストッパー当接部39を押下げている手を放すことで、レール係合部37が上昇し、レール摺動溝37bが上レール15を呑込む。
これにより扉体5の建て込みが完了する。
【0017】
浴室側から閉じ状態にある折戸1を開くときには、取手18を手前に引く。これにより吊元側ピボットヒンジ25では、レール端部呑込み溝37aが上レール15のレール端部15aを呑み込んで係止した状態にあるから、上レール15を走行することなく、ピボット31が回転のみを行う。一方、戸先側ピボットヒンジ27ではレール摺動溝37bが上レール15を摺動して、戸先框21aが上レール15を走行して、吊元側扉19に戸先側扉21が重なるようにして折畳まれる。
【0018】
次に、吊元側ピボットヒンジ25について、誤取付けの防止について説明する。
図1(2a)(2b)に示すように、レール係合部37の向きが正しくないため、上レール15のレール端部15aの下にレール端部呑込溝37aでなく、レール摺動溝37bが位置する場合には、ストッパー当接部39を押し下げようとすると、ストッパー当接部39がストッパー29に当接して、ストッパー29がピボット31を下動させない。
これにより、ピボット31が下がらないので、上レール15にレール摺動溝37bを嵌めることができない。ピボット31を上レール15に呑み込ませることができないから、作業者はピボット31のレール係合部37の向きが誤りであることに気が付く。
そして、作業者は、レール係合部37の向きを
図1の(1a)に示す正しい向きに直して、再度、
図1の(1b)に示すように、レール係合部37を押し下げて、
図2に示すように上レール15に嵌め込む。
【0019】
ここで、
図9をレール係合部37の各種の向きとストッパー29との関係について説明する。
図9のA列(a)〜(d)は、吊元側ピボットヒンジ25を示している。
図9(a)に示す状態では、ストッパー29に対してストッパー当接部39が反対側に位置しており、
図1(a)と同じ状態にあるから、正しい取付け位置にある。
図9(b)は、
図9(a)に示す位置からストッパー係合部37を浴室側に90度回動した状態であるが、
図1(2a)と同じ状態であり、誤取付けの位置にある。この状態では、既に説明したように、ストッパー当接部39を押し下げようとするとストッパー29に当接するから、ピボット31が下動しない。
図9(c)は、
図9(a)に示す位置からストッパー係合部37を脱衣室側に90度回動した状態であるが、
図1(2a)と同様にストッパー当接部39は平面視でストッパー29に重なる位置にある。この位置でも、誤取付け位置にあるから、ストッパー29はピボット31を下動させない。
図9(d)は、
図9(a)に示す位置からストッパー係合部37を180度回動した状態である。この状態でも、平面視においてストッパー当接部39はストッパー29に重なる位置にあるから、ストッパー29はピボット31を下動させない。
したがって、この実施の形態では、ストッパー当接部39の各回動位置において、正しい1つの位置のみ(
図9A列(a))であり、それ以外は誤取付け位置であるが、誤取付け位置ではピボット31は下動しないのでいずれも、上レール15を呑込むことができない。
【0020】
尚、レール係合部37が、
図9A列(b)(c)に示す位置にあるときに誤取付けとしているのは、レール摺動溝37bが上レール15を呑込んだ状態にすると、吊元框19aが摺動してしまい、折戸1を開いて吊元側扉19と戸先側扉21を重ねたときに、その重ねた状態で吊元側扉19と戸先側扉21とが上レール15を摺動して倒れるおそれがあるからである。
一方、
図9(d)では、ストッパー係合部39において、レール端部呑込溝37aの閉鎖部36が上レール15に当ってピボット31を装着できない位置だから、誤取付け位置としている。
【0021】
次に、戸先側ピボットヒンジ27のレール係合部37と上レール15との関係について説明する。
戸先側ピボットヒンジ27には、ストッパー29は取付けていないから、ピボット31は、
図9B列の(a)〜(d)のいずれの位置にあるときでも下動できる。しかし、
図9のB列(d)の場合には、レール端部呑込溝37aの閉鎖部36が上レール15の下に位置するから、この閉鎖部36が上レール15に当り、ピボット31は上レール15の呑込みができない。
これに対して、
図9のB列(a)(b)(c)は、レール端部呑込溝37aやレール摺動溝37bが上レール15の下にあるときには、いずれも呑込み可能な状態になる。B列(a)は、レール係合部37は
図10(1a)に示す正しい位置であり、レール摺動溝37bが上レール15を呑込む位置にある。同様に、B列(c)も正しい取付け位置にある。
一方、B列(b)の場合には、
図10(2a)(2b)に示すように、レール端部呑込溝37aが上レール15の戸先側端部15bを呑込む。この場合には、吊元側レール端部15aを吊元側ピボットヒンジ25が呑み込んで吊元框19aが係止されるのと同様に、戸先側レール端部15bを戸先側ピボットヒンジ27が呑み込んで戸先框21aも係止されてしまうから、扉体5は開くことができない。したがって、作業者は誤取付けであることに気が付くので、直ぐに正しい取付けに修正することができる。
【0022】
次に、本実施の形態にかかる折戸1の作用効果について説明する。
図1に示すように、本実施の形態にかかる折戸1によれば、吊元側扉19と決めたピボットヒンジ25の受け33にストッパー29を取り付けるだけで、吊元側が設定できるので、扉体(扉)5の建て込みが容易にできる。
また、吊元側扉19のピボット31の取り付け方によって、扉体5の建て込み時の誤取付けが防止できる。即ち、吊元側ピボットヒンジ25は、レール端部呑込溝37aがレール端部15aを呑み込む位置にあるときのみに、ピボット31が下動して上レール(レール)15を呑込むことができ、レール端部呑込溝37aがレール端部15aを呑み込む位置にないときには、ストッパー当接部39がストッパー29に当接して、ピボット31を下動させないから、レール端部15aを呑込むことができないので、誤取付けを防止できる。
【0023】
図5に示すように、いずれの扉を吊元側扉19にするかが決まってから、吊元側扉19の受け33にストッパー29を取り付ける構造としているので、ピボットヒンジ25、27を吊元側と戸先側とで兼用させることができ、製造コストを抑えることができる。
図9のA列で示すように、ストッパー当接部39は、ピボット31のレール係合部37に180度の角度に亘って設けているので、3つの位置でストッパー29に当接させことができ、4つの位置のうち正しい1の位置(
図9(a))のみで上レール15に装着できる。
ストッパー29は脱着自在であるから、例えば、誤って戸先側扉21に装着した場合でも直ぐに外して正しい吊元側扉19に装着し直すことができる。
【0024】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、ストッパー当接部39は、180度の範囲に亘って1つ形成することに限らず、90度毎に隣り合わせに2つ設けても良い。
ストッパー29は1つに限らず、2つに分割したものであっても良い。
折戸1は、浴室戸に限らず、間仕切りや建物の出入口に設けるものであっても良い。