(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
【0015】
[1.全体構成]
図1は、ビル(施設)に設置されたエレベーターと、エレベーターの制御装置及び監視装置、並びに保全計画作成装置の構成例を示す。
図1は、荷重センサー4の出力信号から検出した加重に基づいて制御する構成のみを示す。
エレベーターは、巻上機7にかけられた主ロープ6の一方の端に、内側に乗りかご1が配置されたかご枠2が取り付けられており、主ロープ6の他方の端に、カウンターウエイト10が取り付けられている。主ロープ6のカウンターウエイト10が取り付けられる位置は、そらせ車9によって乗りかご1が吊り下げられた位置からシフトされた位置になっている。
【0016】
乗りかご1とかご枠2は、防振ゴム3を介して結合されている。かご枠2には、荷重センサー4が設置されており、荷重センサー4は、乗りかご1の底部に設置された検出板5との距離に応じた信号を出力する。この荷重センサー4が出力する信号は、制御装置20に供給される。
【0017】
制御装置20は、インターフェース21、負荷検出部22、エレベーター制御部23、及びインバータ装置26を備える。
インターフェース21は、巻上機7に備えられたロータリーエンコーダ8の出力信号と、荷重センサー4の出力信号と、温度検出器11の出力信号とを取り込む。ロータリーエンコーダ8は、巻上機7の回転数に同期したパルスを出力し、このパルスからエレベーターの速度及び位置が検出される。温度検出器11は、乗りかご1が走行する塔内に設置され、塔内の温度を検出する。
【0018】
負荷検出部22は、インターフェース21を介して取得した荷重センサー4の出力信号より、乗りかご1の積載量を検出する。
エレベーター制御部23は、巻上機7を駆動するためのインバータ装置26を制御する。インバータ装置26は、エレベーター制御部23のトルク指令に基づいて、巻上機7に供給する駆動電力を生成し、生成された駆動電力を巻上機7に供給する。
【0019】
エレベーター制御部23は、負荷補償トルク算出部24と負荷セット値記録部25とを備える。
負荷セット値記録部25は、負荷検出部22から出力されるかご内が無積載時の検出値とかご内が定格積載時の検出値を記録する。負荷補償トルク算出部24は、エレベーターが通常サービス時にかご内の積載量に応じて、負荷セット値記録部25で記録した値と、負荷検出部22で検出した値とから起動時に必要なトルクを計算する。負荷補償トルク算出部24で計算した起動時のトルクは、インバータ装置26に指示し、該当するトルクを巻上機7で発生させる電源をインバータ装置26で生成させる。
【0020】
監視装置30は、制御装置20からのデータにより、エレベーター内の各機器の動作状態を監視するための装置であり、インターフェース31とデータ収集部32と通信部33とを備えている。
データ収集部32は、荷重センサーギャップ記録部321と、初期荷重センサーギャップ記録部322と、塔内温度記録部323とを備える。
荷重センサーギャップ記録部321は、無積載状態において、その時の荷重センサー4の出力値を荷重センサー4と検出板5の荷重センサーギャップとして記録する荷重センサーギャップ記録処理を行う。無積載状態の検出は、例えばエレベーターの乗りかご1が一定期間同じ階に停止し、休止状態となった時に行われる。
初期荷重センサーギャップ記録部322は、無積載時の荷重センサー4の出力値L
0と、定格積載時の荷重センサー4の出力値L
fをセットした時の、それぞれの荷重センサーギャップを初期値として記録する初期荷重センサーギャップ記録処理を行う。
塔内温度記録部323は、荷重センサーギャップ記録部321に荷重センサーギャップを記録した時の温度検出器11で検出した塔内温度を記録する。
【0021】
通信部33は、データ収集部32で記録したデータを予め定めた任意の周期で保全計画作成装置40内の通信部41と送受信を行う。ここで、任意の周期とは、分単位、時間単位、日単位等、システムに応じていずれの周期としてもよいことを意味している。あるいは、周期的に送受信を行う代わりに、記録したデータ等に何らかの変化があったときに送受信を行うことを任意の周期と呼ぶこともできる。
【0022】
保全計画作成装置40は、通信部41とデータベース42と診断部43と作業指示計画部44とを備える。この保全計画作成装置40は、例えばエレベーターを監視する監視センター等に設置される。
保全計画作成装置40のデータベース42には、監視装置30のデータ収集部32で収集したデータが保存される。
診断部43は、データベース42に保存されたデータを基に、防振ゴム3の縮み量と温度変化による影響を診断する診断処理を行う。作業指示計画部44は、診断部43の診断結果を基に荷重センサー4の調整、及び無積載時の荷重センサー4の出力値L
0と、定格積載時の荷重センサー4の出力値L
fを実負荷で再セットする時期を計画する。
【0023】
顧客情報データベース50には、顧客のエレベーターの機種、建物用途、作業月、納入年月、保有台数、並列設置などの情報が格納されている。そして、作業指示計画部44が作業計画を行う際には、顧客情報データベース50から、同一顧客において、対象エレベーターの他に、機種、納入年月、作業月が同じエレベーターが複数並列設置されているかを判断する。同じエレベーターが複数並列設置されていると判断した場合には、作業指示計画部44は、その複数並列設置された他のエレベーターにおいても、同時に作業計画を立てることにより、実負荷の手配作業や運搬作業の軽減を図る。
【0024】
[2.ハードウェア構成例]
図2は、制御装置20、監視装置30、及び保全計画作成装置40のハードウェア構成例を示す。これらの装置20,30,40は、例えばコンピューター装置Cで構成される。
コンピューター装置Cは、バスC8に接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、及びRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピューター装置Cは、入力装置C6、表示装置C7、不揮発性ストレージC4、及びネットワークインターフェイスC5を備える。
【0025】
CPU C1は、本例の装置20,30又は40が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。例えば、制御装置20では、CPU C1がROM C2に記憶されているプログラムを読み出すことで、乗りかご1の起動時のトルク算出処理を行う。
【0026】
不揮発性ストレージC4としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC4には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピューター装置Cを制御装置20等として機能させるためのプログラムが記録されている。
【0027】
ネットワークインターフェイスC5には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを送受信することが可能である。例えば、制御装置20の場合、荷重センサー4の出力信号や温度検出器11で検出した塔内温度などを、ネットワークインターフェイスC5を介して取得する。また、ネットワークインターフェイスC5を介して、外部の機器と通信を行うこともできる。例えば、制御装置20を構成するコンピューター装置Cが、ネットワークインターフェイスC5を介して、監視装置30と通信を行う。
【0028】
表示装置C7や入力装置C6は、エレベーターの保守作業時などに使用する。例えば、表示装置C7は、エレベーターの作動状態などを表示し、入力装置C6は、操作モードなどを入力操作する。なお、装置20,30,40の構成によっては、表示装置C7や入力装置C6を備えない場合もある。
【0029】
[3.荷重センサーと防振ゴムの特性]
図3は、荷重センサー4の出力信号(電圧:縦軸)と、荷重センサー4と検出板5の距離(mm:横軸)との関係の例を示す特性図である。
荷重センサー4は、検出板5との距離に比例して電圧が出力される。かご内が無積載時の初期時の荷重センサー4と検出板5の距離(ギャップ)をL1とすると、その初期時の距離L1での荷重センサー4の出力電圧はV1になる。
かご内が定格積載になると、防振ゴム3が圧縮され荷重センサー4と検出板5の距離は、L1よりも短いL2となり、その時の荷重センサー4の出力電圧はV2となる。
【0030】
ここで、防振ゴム3が初期縮みと経年的な劣化で、無積載状態でも初期時の距離L1の位置に戻らなくなる場合が起こる。例えば、かご内が無積載時の荷重センサー4と検出板5の距離がL11となり、距離L1よりも短くなる。
【0031】
図4は、荷重センサー4の出力信号に基づいて、負荷検出部22が検出する負荷(積載量)の関係を示す特性図である。
図4において、縦軸は積載量(%)を示し、横軸は荷重センサー4の出力電圧(V)を示す。
図4に示す負荷検出部22で検出される積載量の値は、負荷セット値記録部25に記録される。
負荷検出部22は、無積載時の荷重センサー4の出力電圧V1を、かご内積載量0%とし、定格積載時の荷重センサー4の出力電圧V2を、かご内積載量100%とする。この0%から増加する積載量の値が、負荷セット値記録部25に記録される。
【0032】
この
図4に示すような荷重センサー4の出力電圧と積載量との直線的な関係を利用して、負荷補償トルク算出部24は、エレベーター起動時に予め必要なトルクを計算し、この計算したトルクを、ブレーキ(不図示)を開く前にインバータ装置26に必要なトルク指令として送信する。
【0033】
ところで、
図3のL11で示すように、防振ゴム3の初期縮みにより、無積載時の荷重センサー4と検出板5の距離が短くなると、かご内が無積載にも関わらず荷重センサー4の出力電圧はV11となり、
図4に示すように、かご内にK%の積載量があると判断してしまう。このため、初期縮み量が大きくなるとエレベーター起動時のトルクが適正でなくなり、エレベーターの乗り心地に影響を与える。
【0034】
図5及び
図6は、かご内無負荷時の荷重センサー出力値の経年変化量を示す。
図5及び
図6において、縦軸は荷重センサー4のギャップの変位ΔL
xを示し、横軸はエレベーターを設置してからの経過日数を示す。ここでの変位ΔL
xは、L11−L1(
図3参照)で示される。
図5は、塔内の温度変化が比較的大きいエレベーターの例であり、
図6は、塔内の温度変化が比較的小さいエレベーターの例である。例えば、外気温の上昇に連動して塔内の温度が上昇するような環境に設置されたエレベーターの場合には、
図5に示すように塔内の温度変化が比較的大きい状態になる。一方、エレベーターが設置された施設内で冷暖房が24時間稼動している場合には、
図6に示すように塔内の温度変化が比較的小さい状態になる。
【0035】
エレベーターを施設に設置した後、防振ゴム3は初期縮み量ΔLsが発生する。また、防振ゴム3は、季節により伸縮を繰り返し、年間の変化量はΔLseとなる。
年間の変化量ΔLseは、
図5に示すように、1年間での変位ΔL
xの最小値ΔLmin1と、変位ΔL
xの最大値ΔLmax1との差である。この年間の変化量ΔLseを有しながら、防振ゴム3の劣化により徐々に変位ΔL
xが大きくなって行く。
【0036】
図5と
図6を比較すると分かるように、防振ゴム3の初期縮み量ΔLsと季節による変化量ΔLseは、エレベーターの設置環境によって異なる。このため、実負荷を用いた負荷セット値記録部25の再セットを行う計画を、一律に定めた保全計画ではなく、防振ゴム3の初期縮み量と、経年的な縮み量と、季節による伸縮とを考慮して作成する。
【0037】
[4.防振ゴムの初期縮みの判定処理]
図7は、保全計画作成装置40の診断部43で実施する防振ゴム初期縮みの判定処理例を示すフローチャートである。
まず、診断部43は、ステップS401にて、データベース42から1日ごとの荷重センサーギャップが最小となる値を抽出する(ステップS401)。ここでの荷重センサーギャップは、無積載時に荷重センサー4が検出するギャップである。そして、診断部43は、負荷セット値記録部25に初期設定後、所定の期間(ここでは6ヶ月)データを収集したか否かを判定する(ステップS402)。ここで、所定の期間に収集データがない場合(ステップS402のNO)、診断部43は、ステップS401の処理に移行し、荷重センサーギャップの抽出処理に戻る。
【0038】
また、所定の期間に収集データがある場合(ステップS402のYES)、診断部43は、所定期間(ここでは10日毎)での荷重センサーギャップ変化量の傾きKsを算出する(ステップS403)。そして、診断部43は、算出した傾きKsが、Ks>=0か否かを判断する(ステップS404)。Ks>=0とは、傾きKsが0と等しい状態か、又は傾きKsが0よりも大きい状態を示す。
ここで、Ks>=0でないと判断したとき、つまり傾きKsが0よりも小さい値であるとき(ステップS404のNO)、荷重センサーギャップが継続的に短くなっている状態であり、診断部43は、防振ゴム3の初期縮みが継続していると判定してステップS403に移行する。
【0039】
そして、傾きKsがKs>=0であると判断したとき(ステップS404のYES)、診断部43は、防振ゴム3の特性が初期縮みよりも、季節(温度)による熱膨張での伸び量が多くなって、荷重センサーギャップを変化させたと判定し、ステップS405に移行する。すなわち、診断部43は、荷重センサーギャップ変化量の傾きKsがKs<0からKs>=0に変化した時の荷重センサーギャップの変化量の最大値|ΔLs|と、最大値を計測した日を記録する(ステップS405)。
【0040】
その後、診断部43は、傾きKsがプラスとなる状態が、任意に設定可能な所定回数を連続で超えたか否かを判定し(ステップS406)、条件が成立しなければ(ステップS406のNO)、ステップS403の処理に戻る。そして、この条件が成立した場合には(ステップS406のYES)、診断部43は、防振ゴム初期縮み完了フラグを立てる(ステップS407)。さらに、診断部43は、防振ゴム3の初期縮み量ΔLsの絶対値(|ΔLs|)が、任意のしきい値Δthの絶対値(|Δth|)より大きいか否かを判定する(ステップS408)。ここで、任意のしきい値Δthは、積載荷重変化量がエレベーターの積載荷重の検出に影響が出る値とする。
【0041】
診断部43は、ステップS408にて、|ΔLs|>|Δth|の条件が成立した時は(ステップS408のYES)、診断部43は、作業計画指示フラグを立て、保全計画作成装置40に送信する(ステップS410)。一方、ステップS408で、|ΔLs|>|Δth|の条件が成立しない時は(ステップS408のNO)、診断部43は、防振ゴム3の季節による影響判定処理へ移行する(ステップS409)。
【0042】
[5.防振ゴムの季節による影響の判定処理]
図8は、保全計画作成装置40の診断部43で実施する、防振ゴム3の季節による影響判定処理例を示すフローチャートである。
まず、診断部43は、防振ゴム3の初期縮み完了フラグが立っているか否かを判定する(ステップS501)。ここで、初期縮み完了フラグが立っていない場合には(ステップS501のNO)、診断部43は、初期縮み完了フラグが立つまで待機する。そして、初期縮み完了フラグが立っている場合には(ステップS501のYES)、診断部43は、季節変動フラグFh=1を立てると共に、初期設定を行う(ステップS502)。
【0043】
さらに、診断部43は、所定期間(ここでは10日毎)での荷重センサーギャップ変化量の傾きKsを算出する(ステップS503)。その後、診断部43は、季節変動フラグFh=1が立っているか否かを判定する(ステップS504)。
ここで、季節変動フラグFh=1が立っている場合には(ステップS504のYES)、診断部43は、ステップS503で算出した傾きKsがKs<0か否かを判断する(ステップS505)。この判断で、傾きKsがKs<0でない場合には(ステップS505のNO)、防振ゴム3が季節(温度)による熱膨張での伸び量が多くなり、荷重センサーギャップが広くなっている状態が継続していると判定し、ステップS503の処理に戻る。
【0044】
そして、ステップS505で傾きKsがKs<0と判断した場合には(ステップS505のYES)、診断部43は、Ks>=0からKs<0となった時の荷重センサーギャップ変化量の最小値ΔLmin1と塔内温度と計測日を記録する(ステップS506)。このステップS506での処理は、季節(温度)による熱膨張での伸び量が小さくなり、これ以上温度による影響は受けないと判断して実行される。
その後、診断部43は、KsがKs<0となる状態が任意に設定可能な所定回数を連続で超えたか否かを判定する(ステップS507)。ここで、この条件が成立しなければ(ステップS507のNO)、診断部43は、ステップS503の処理に戻る。そして、ステップS507の条件が成立した場合(ステップS507のYES)、診断部43は、季節変動フラグFh=0とし、ステップS503の処理に戻る。
【0045】
また、ステップS504の判断で、季節変動フラグFh=0の場合には(ステップS504のNO)、診断部43は、傾きKsがKs>=0か否かを判断する(ステップS509)。この判断で、傾きKsがKs>=0でない場合(つまりKs<0の場合)には(ステップS509のNO)、診断部43は、ステップS503の処理に戻る。
そして、ステップS509の判断で、傾きKsがKs>=0の場合には(ステップS509のYES)、Ks<0からKs>=0となった時の荷重センサーギャップ変化量の最大値|ΔLmax1|と塔内温度と計測日を記録する(ステップS510)。このステップS510での処理は、季節(温度)による熱膨張での伸び量が多くなり、再度センサーギャップが広くなると判断して実行される。
【0046】
ステップS510で記録した後、診断部43は、傾きKsがKs>=0となる状態が任意に設定可能な所定回数を連続で超えたか否かを判定する(ステップS511)。この判定で、所定回数を連続で超えていない場合(ステップS511のNO)、診断部43は、ステップS503の処理に戻る。
そして、ステップS511の判定で、所定回数を連続で超えたと判定した場合には(ステップS511のYES)、診断部43は、季節変動幅ΔLse=|ΔLmax1|−|ΔLmin1|を記録する(ステップS512)。
その後、診断部43は、季節変動幅ΔLseを積載荷重変化幅に換算し、温度変化によりかご内無積載状態での積載荷重の変動幅を計算する(ステップS513)。ここでの換算は、
図3及び
図4に示す特性に基づいて行われる。
【0047】
積載荷重変化幅に換算した後、診断部43は、ステップS513で換算した積載荷重変化幅が定格積載量の任意に設定できるしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS514)。ここで、しきい値以上である場合には(ステップS514のYES)、診断部43は、最大値|ΔLmax1|と最小値|ΔLmin1|を計測した月の内で、中間となる月(中間月)を記録し、季節変動幅大のフラグを立てる(ステップS515)。
【0048】
そして、ステップS515で季節変動幅大のフラグを立てた後と、ステップS514でしきい値以上でないと判断した場合(ステップS514のNO)には、診断部43は、荷重センサーギャップの変化量|ΔLmax1|が、しきい値|Δth|より大きいか否かを判定する(ステップS516)。ここで、荷重センサーギャップの変化量|ΔLmax1|がしきい値|Δth|より大きい場合は(ステップS516のYES)、診断部43は、作業計画指示フラグを立て、保全計画作成装置40に作業計画指示フラグを送信する(ステップS517)。一方、荷重センサーギャップの変化量|ΔLmax1|がしきい値|Δth|より小さい場合(ステップS516のNO)は、診断部43は、ステップS501の判断に戻り(ステップS518)、継続して防振ゴムの縮み量と季節(温度)による影響を監視する。
【0049】
[6.作業指示計画の作成処理]
図9は、診断部43が実負荷にて補正作業が必要と判断した場合における、作業指示計画部44で、現場の作業指示計画を行う処理例を示すフローチャートである。
まず、作業指示計画部44は、診断部43からの作業計画指示フラグを受信すると(ステップS601)、季節変動幅大のフラグが立っているか否かを判定する(ステップS602)。ここで、季節変動幅大のフラグが立っている場合には(ステップS602のYES)、診断部43から送られてきた季節変動幅が中間となる月(中間月)を計画指示月に設定する(ステップS603)。
【0050】
そして、ステップS603で計画指示月を設定した後と、ステップS602で季節変動幅大のフラグが立っていないと判定した場合には、作業指示計画部44は、顧客情報データベース50より、同一顧客の保有台数、機種、納入年月、作業月の情報を収集する(ステップS604)。そして、作業指示計画部44は、ステップS604で収集した情報から、他に同一機種のエレベーターが同じ施設(ビル)内に設置されているか否かを判定する(ステップS605)。
【0051】
この判定で、同じ施設内に同一機種のエレベーターが設置されている場合には(ステップS605のYES)、作業指示計画部44は、同一機種のエレベーターが並列設置されているか否かを判定する(ステップS606)。さらに、同一機種のエレベーターが並列設置されている場合には(ステップS606のYES)、作業指示計画部44は、同一機種のエレベーターについて、保守作業月が同一か否かを判定する(ステップS607)。さらにまた、保守作業月が同一の場合には(ステップS607のYES)、作業指示計画部44は、年間を通して、温度変化が中間となる計画指定月が設定されているか否かを判定する(ステップS608)。このステップS608での判定は、防振ゴム3の伸縮が温度により大きく影響の受ける現場において判定される処理である。
【0052】
そして、ステップS608での判定で、温度変化が中間となる計画指定月が設定されていると判定した時(ステップS608のYES)、作業指示計画部44は、計画指定月に最も近い保全作業月に、実負荷を用いた調整作業を行うように、該当するエレベーターについての調整作業計画を行う(ステップS610)。このときには、作業指示計画部44は、作業計画指示エレベーター以外の同一機種で、並列設置されているエレベーターにおいても、同様に劣化していると判断して、同時に作業計画をすることにより、実負荷による調整の段取り作業を低減することができる。
【0053】
また、ステップS608での判定で、温度変化が中間となる計画指定月が設定されていないと判定した時(ステップS608のNO)、作業指示計画部44は、防振ゴムの温度による影響が小さいため、次回点検月に実負荷を用いた調整作業計画を行う(ステップS611)。このときにも、ステップS610での処理と同様に、他の並列に設置されたエレベーターに対しても作業計画を行う。
【0054】
また、ステップS605で設置されていないと判定した場合(ステップS608のNO)と、ステップS609で並列設置されていないと判定した場合(ステップS609のNO)と、ステップS610で保守作業月が同一でないと判定した場合(ステップS610のNO)、ステップS609の判定処理に移る。
ステップS609では、作業指示計画部44は、季節変動による計画指定月が設定されているか否かを判定する。ここで、指定月があると判定した場合(ステップS609のYES)、作業指示計画部44は、作業計画指示エレベーターのみに対して、計画指示月に最も近い保全作業月に、実負荷を用いた調整作業を行うように、調整作業計画を行う(ステップS612)。
一方、ステップS609において、指定月がないと判定した場合(ステップS609のNO)、作業指示計画部44は、作業計画指示エレベーターのみに対して、次回保全作業月に実負荷を用いた調整作業計画を行うように、調整作業計画を行う(ステップS613)。
【0055】
以上の流れで、エレベーター毎に荷重センサーギャップの変化を監視することにより、防振ゴムの初期縮みと経年による縮みおよび温度による影響を監視して所定のしきい値まで初期値から変化した時に、実負荷による調整を指示する事により適切な周期での作業指示が可能となる。
また、並列されたエレベーターにおいても同時に作業計画することにより、一度に1つの施設内の複数のエレベーターが同時に作業できるようになり、補正作業のために実負荷を運搬する回数を少なくすることができ、効率良く補正作業が行えるようになる。
【0056】
[7.変形例]
なお、上述した実施の形態例では、作業計画を立てる際に、季節変動がある月の中の中間の月に、作業を行う計画を立てるようにした。このように月単位で判定して計画を立てるのは一例であり、週や日付などのその他の情報で、季節の影響を受けない時期を判断して、作業計画を立てるようにしてもよい。
例えば、作業指示計画部44は、季節変動の最大値を検出した日と、季節変動の最小値を検出した日の中間となる日付を判定し、その中間となる日付の近傍で作業を行う作業指示計画を立てるようにしてもよい。あるいは、1週間単位で、適切な週を判断して、作業を行う作業指示計画を立てるようにしてもよい。日付や週単位で計画を立てるようにしたことで、より適切な時期に作業を行うように計画を立案できるようになる。
【0057】
また、補正作業を行う際には、温度検出器11が検出した温度を使って、温度による変化分を補正した補正量としてもよい。すなわち、防振ゴム3は、温度によって伸び縮みするため、その温度変化分を考慮したより正確な補正を行うようにしてもよい。
なお、上述した実施の形態では、温度検出器11は、乗りかご1が走行する塔内に設置するようにした。このように温度検出器11は塔内に設置するのが好ましいが、少なくともエレベーターが設置された施設内に温度計を設置すればよい。また、温度検出器11が検出した温度の記録は省略して、温度による補正は行わないようにしてもよい。
【0058】
また、
図9のフローチャートにおいては、同一施設内で同一機種のエレベーターが並列設置され、かつ保守作業月が同一である場合に、並列設置された同一機種のエレベーターを同時に作業するように作業計画を立てるようにした。これに対して、並列設置ではなく、同一施設内の離れた場所に設置された同一機種のエレベーターがある場合にも、同じような状態である可能性が高いと判断して、同時に作業するように作業計画を立てるようにしてもよい。この場合には、例えば同一施設内の離れた場所に設置された同一機種のエレベーターであっても、それぞれの温度検出器11が検出した温度が類似した傾向の温度である場合にだけ、同時に作業するように作業計画を立てるようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態例では、保全計画作成装置40はエレベーターの監視センターに設置するようにしたが、その他の場所に保全計画作成装置40を設置してもよい。例えば、個々のエレベーターの監視装置30内に、診断部43と作業指示計画部44を設置するようにしてもよい。あるいは、監視装置30には、診断部43のみを設置して、その監視装置30での診断結果を、監視センター側が取得して、作業指示計画を立てるようにしてもよい。
【0060】
さらに、本発明は上記した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0061】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。