【文献】
J. Pharmaceutical Sciences, 2010年,Vol.99, No.3,p.1152-1168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TREM−1に結合することができる抗体またはそのフラグメントであって、VLおよびVHを含む、ここで、該VLは、配列番号14の軽鎖のVLであり、該VHは、配列番号2および配列番号16からなる群から選択される重鎖のVHである、抗体またはそのフラグメント。
自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、ループス腎炎、および全身性エリテマトーデスからなる群から選択される、請求項21に記載の抗体またはそのフラグメントまたは医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
TREM−1は、単一の細胞外免疫グロブリンドメインと、明らかなシグナリングモチーフを持たない短い細胞質側末端を含む、234個のアミノ酸からなる、膜貫通蛋白質である。TREM−1は活性化されると、ITAM含有シグナリングアダプター蛋白質、DAP12と会合する。下流のシグナル伝達には、NFAT転写因子の活性化が含まれ得、炎症促進性のサイトカイン生産の増加を引き起こす。
【0031】
本発明は、TREM−1に特異的に結合し、その機能を遮断することができる抗体に関連する。本発明の抗体は、TREM−1の活性化および下流のシグナル伝達を減少させる/遮断することにより、TREM−1の機能を遮断し得る。
【0032】
本発明に従う抗体は、TREM−1を直接的または間接的に遮断する、いくつかの異なるメカニズムの1つ、またはその組み合わせを用いて、TREM−1を遮断し得る。例えば、本発明の抗体は、TREM−1の天然のリガンドであるペプチドグリカン認識蛋白質1(PGLYRP1)がTREM−1と機能複合体を形成することを妨げてもよく、および/または、本発明の抗体は、それぞれのTREM−1分子が二量体または多量体を形成することを妨げることによって、TREM−1を遮断してもよい。TREM−1の二量体化または多量体化は、TREM−1二量体ではその接触面に存在するTREM−1の一部に結合し、これによりそれぞれのTREM−1分子が互いに会合するのを妨げることができるTREM−1抗体によって、減少または妨げられ得る。
【0033】
TREM−1二量体化または多量体化は、TREM−1とそのリガンドとの相互作用に干渉するTREM−1抗体によって、減少され得る、あるいは妨げられ得る。本発明に従う抗体は、PGLYRP1により誘導されるTREM−1の活性化を妨げ得る。PGLYRP1は、高度に保存された、シグナルペプチドおよびペプチドグリカン結合ドメインからなる196個のアミノ酸の長い蛋白質であり、好中球で発現され、好中球の活性化の際に放出される。本発明に従う抗体は、骨髄系細胞からの炎症性サイトカインの放出を減少させる。本発明に従う抗体は、本明細書に記載されるように、マクロファージ、好中球、滑膜組織細胞および/またはレポーター細胞からのTNF、MIP−1β、MCP−1、IL−1β、GM−CSF、IL−6および/またはIL−8の放出を遮断し得る。
【0034】
本発明の抗体は、ヒトTREM−1および、ヒトとは異なる種由来のTREM−1の両方に結合することができる。本明細書で用いられる「TREM−1」という用語は、従って、任意の好適な生物に由来し得る、TREM−1のいずれの天然型も包含する。例えば、本明細書に記載される用いられるTREM−1は、脊椎動物のTREM−1であり得、例えば哺乳動物のTREM−1、例えば霊長類(例えばヒト、チンパンジー、カニクイザル、またはアカゲザル);げっ歯類(例えばマウスまたはラット);ウサギ類(例えばウサギ)、または偶蹄類(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、またはラクダ)由来のTREM−1であり得る。好ましくは、TREM−1は配列番号1(ヒトTREM−1)である。TREM−1は、例えば、好適な細胞内で翻訳後プロセシングを受けたTREM−1蛋白質などの、TREM−1の成熟型であってよい。このような成熟TREM−1蛋白質は、例えば、グリコシル化されていてもよい。TREM−1は、全長TREM−1蛋白質であってもよい。
【0035】
本発明の抗体は、Bリンパ球の単一クローンに、直接的にまたは間接的に由来するという意味で、モノクローナル抗体であり得る。TREM−1抗体は、例えば、WO2013/120553の実施例に記載される方法を用いて、生産、選別および精製され得る。手短に言えば、TREM−1またはTREM−1/TREM−3ノックアウト(KO)マウスなどの好適なマウスを、TREM−1、TREM−1発現細胞、またはその両方の組み合わせにより、免疫化すればよい。
【0036】
本発明の抗体は、本発明に従うモノクローナル抗体の混合物であるという意味において、ポリクローナル抗体であり得る。
【0037】
ハイブリドーマ上清の一次スクリーニングは、直接ELISAまたはFMATを用いて行われ得、二次スクリーニングは、フローサイトメトリーを用いて行われ得る。陽性のハイブリドーマ上清は、その後レポーター遺伝子アッセイで選別され得る。
【0038】
抗体は、原核細胞または真核細胞で組換え発現され得る。原核細胞は、大腸菌(E.coli)であり得る。真核細胞は、酵母、昆虫、哺乳類細胞であり得、例えば、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、またはアカゲザル)、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、ウサギ類(例えばウサギ)、または偶蹄類(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、またはラクダ)である生物に由来する細胞であり得る。好適な哺乳動物細胞株には、HEK293細胞、CHO細胞およびHELA細胞が含まれるが、これらに限定されない。TREM−1抗体はまた、当業者に知られる他の方法、例えばファージディスプレイまたは酵母ディスプレイによって、生産されてもよい。
【0039】
抗体は、生産されると、例えば全長TREM−1またはその変異体への結合に関して、WO2013/120553の実施例に記載される方法を用いて選別することができる。
【0040】
本発明の機能性TREM−1抗体は、特異的にTREM−1に結合できる抗体で、TREM−1の遮断または刺激のいずれかにより、TREM−1の活性化および下流のシグナル伝達に影響を与える抗体であり、本明細書において、それらは「機能性TREM−1抗体」と呼ばれる。機能性TREM−1抗体を同定する方法には、(a)TREM−1、シグナル伝達蛋白質およびレポーター構築物を発現する第一の細胞を培養すること;(b)第一の細胞をTREM−1調節物質(modifying agent)と培養した際に、当該細胞の活性を測定すること;(c)(b)の共培養をTREM−1抗体と接触させること;および(d)第一の細胞の活性が、(b)で測定された活性より小さい、あるいは大きいことを測定することが、含まれる。
【0041】
(a)の「第一の細胞」は、造血起源の細胞であってよく、例えば骨髄系細胞、例えばT細胞であってよい。(a)のシグナル伝達蛋白質は、TREM−1と複合体を形成することができる任意のシグナル伝達蛋白質であってよい。好適なシグナル伝達蛋白質には、DAP10、DAP12、TCRζ、FcγRIIIおよびFc受容体、またはそれらの一部が含まれる。(a)のレポーター構築物は、シグナル伝達蛋白質経由で活性化され、認識可能なシグナルを産生できる、任意の構築物であってよい。好適なレポーター構築物には、転写因子およびレポーター遺伝子が含まれる。シグナル伝達蛋白質は、NFATおよびNFkBからなる群から選択される転写因子を経由して伝達することができる。レポーター遺伝子は、当該第一の細胞において天然に発現されていない遺伝子であり、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)またはクロラムフェニコール転移酵素をコードする遺伝子であり得るが、これらに限定されない。当該第一の細胞は、当業界でよく知られる方法を用いて、転写因子およびレポーター遺伝子で形質導入され得る。
【0042】
実施例に記載された「BWZ/hTREM−1レポーター細胞」および「TE426.27レポーター細胞」は、「第一の細胞」の一例である。
【0043】
(b)の調節物質は、TREM−1リガンドまたは活性化好中球であってよい。(c)の「TREM−1抗体」は、TREM−1特異的ハイブリドーマ上清または精製抗体であってよい。(d)で測定される活性は、レポーター構築物によって生産されるシグナルである。これらのシグナル伝達の例は、NFAT駆動LacZ(β−ラクタマーゼルシフェラーゼ)生産によって引き起こされる発光である。
【0044】
本方法は、TREM−1遮断抗体の同定のために調整され得る。TREM−1遮断抗体を同定する方法には、(a)TREM−1、シグナル伝達蛋白質およびレポーター構築物を発現する第一の細胞を培養すること;(b)第一の細胞が活性化された好中球と培養された際に、当該細胞の活性を測定すること;(c)第一の細胞と活性化された好中球の共培養を、TREM−1抗体と接触させること;(d)第一の細胞の活性が、(b)で測定された活性よりも小さいことを測定すること、が含まれる。
【0045】
本方法はまた、TREM−1刺激抗体を同定するように調整され得る。TREM−1刺激抗体を同定する方法には、(a)TREM−1、シグナル伝達蛋白質およびレポーター構築物を発現する第一の細胞を培養すること;(b)第一の細胞の活性を測定すること;(c)当該細胞とTREM−1抗体とを接触/培養させること;および(d)第一の細胞の活性が、(b)で測定された活性よりも大きいことを測定すること、が含まれる。
【0046】
本発明は、本明細書に開示される、遮断抗体を同定する方法によって同定され得るTREM−1遮断抗体に関する。上記および実施例に記載される方法を用いて試験する場合、本発明に従う抗体は、50μg/mlより低い濃度、例えば40μg/mlより低い濃度、例えば30μg/mlより低い濃度、例えば20μg/mlより低い濃度、例えば10μg/mlより低い濃度、例えば5μg/mlより低い濃度、例えば1μg/mlより低い濃度で、第一の細胞の活性を、50%、例えば60%、例えば70%、例えば80%、例えば90%、例えば95%、例えば100%減少させることができる。本発明に従う抗体は、第一の細胞の活性を完全に消失させることができるものであってもよい。上記および実施例に記載される方法を用いて試験する場合、本発明に従う抗体は、1μg/mlより低い濃度、例えば0.9μg/mlより低い濃度、例えば0.8μg/mlより低い濃度、例えば0.7μg/mlより低い濃度、例えば0.6μg/mlより低い濃度、例えば0.5μg/mlより低い濃度、例えば0.4μg/mlより低い濃度、例えば0.3μg/mlより低い濃度、例えば0.2μg/mlより低い濃度で、第一の細胞の活性を消失させることができる。
【0047】
本発明はまた、本明細書で開示された方法以外の手段によって同定され得るTREM−1遮断抗体に関する。
【0048】
本明細書の「抗体」という用語は、特異的に抗原(TREM−1)またはその一部に結合することができる、生殖系列免疫グロブリン配列に由来する、蛋白質のことを指す。当該用語には、任意のクラスまたはアイソタイプの全長抗体(すなわち、IgA、IgE、IgG、IgMおよび/またはIgY)、およびその任意の単鎖またはフラグメントが含まれる。抗原、またはその一部に特異的に結合する抗体は、その抗原、またはその一部に排他的に結合してもよく、あるいは、限られた数の相同な抗原、またはその一部に結合してもよい。全長抗体はたいてい、少なくとも4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合により相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。医薬上特別に関心のある免疫グロブリンサブクラスの1つは、IgGファミリーである。ヒトにおいて、IgGクラスは、その重鎖定常領域の配列に基づき、4つのサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に細分され得る。軽鎖は、その配列組成の違いに基づき、κおよびλの2つのタイプに分けることができる。IgG分子は、2つ以上のジスルフィド結合により連結した2つの重鎖と、1つのジスルフィド結合により1つの重鎖にそれぞれ結合した2つの軽鎖から成る。重鎖は、1つの重鎖可変領域(VH)と、最大3つの重鎖定常(CH)領域:CH1、CH2およびCH3を含んでよい。軽鎖は、1つの軽鎖可変領域(VL)と1つの軽鎖定常領域(CL)を含んでよい。VHおよびVL領域は、さらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分することができ、CDRは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域の間に散在している。VHおよびVL領域は、一般的に、3つのCDRと4つのFRから成り、N末端からC末端へ以下の順番で並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の超可変領域は、抗原と相互作用できる[結合]ドメインを形成し、一方、抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞)、Fc受容体および古典的補体システムの第一成分(C1q)を含むが、これらに限定されない、宿主組織または因子への結合を媒介し得る。
【0049】
本発明の抗体は、単離されていてもよい。「単離された抗体」という用語は、抗体が生産された環境中の他の成分から分離および/または回収された、および/または、抗体が生産された環境中に存在する成分の混合物から精製された抗体のことを指す。
【0050】
抗体の抗原結合機能が全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されているように、抗体の特定の抗原結合フラグメントは、本発明の文脈において好適であり得る。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書に記載される、TREM−1などの抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗原結合フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)S、Fv(一般的に、抗体のシングルアームのVLおよびVHドメイン)、単鎖Fv(scFv; 例えば、Bird et al., Science 1988; 242:42S-426;および Huston et al. PNAS 1988; 85:5879-5883参照)、dsFv、Fd(一般的にVHおよびCHIドメイン)、およびdAb(一般的にVHドメイン)フラグメント;VH、VL、VhH、およびV−NARドメイン;単鎖VHおよび単鎖VLを含む一価の分子;ミニボディ(minibodies)、ダイアボディ(diabodies)、トライアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、およびカッパーボディ(kappa bodies)(例えば、Ill et al., Protein Eng 1997;10:949-57参照);ラクダIgG;IgNAR;並びに1つ以上の単離されたCDRまたは機能性パラトープ(単離されたCDRもしくは抗原結合残基またはポリペプチドが会合または共に連結されて機能性抗体フラグメントを形成し得る)が含まれる。様々なタイプの抗体フラグメントが、例えばHolliger and Hudson, Nat Biotechnol 2005;2S:1126-1136; WO2005040219、並びに公開されたU.S. Patent Applications 20050238646および20020161201において記載または概説されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる従来技術を用いて獲得され得、当該フラグメントは、完全な抗体と同じ方法での有用性について選別され得る。
【0051】
本発明の抗体は、ヒト抗体あるいはヒト化抗体であってよい。本明細書で用いられる「ヒト抗体」の用語は、フレームワーク領域の少なくとも一部および/またはCDR領域の少なくとも一部がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。(例えば、ヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有してもよい。)さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来してもよい。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、インビトロのランダム変異もしくは部位特異的変異により導入された、あるいはインビボの体細胞変異により導入された変異)。
【0052】
このようなヒト抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってよい。このようなヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから獲得されたB細胞を不死化細胞に融合した細胞などの、ハイブリドーマによって生産され得る。
【0053】
ヒト抗体は、ヒト生殖系列配列の選択に基づき構築された配列ライブラリーから単離され得、さらに天然および合成の配列多様性を有して多様化され得る。
【0054】
ヒト抗体は、インビトロのヒトリンパ球の免疫化と、それに続くリンパ球のエプスタイン・バーウイルスによる形質転換によって調製され得る。
【0055】
「ヒト抗体誘導体」という用語は、ヒト抗体の任意の修飾型を指し、例えばヒト抗体と、別の物質または抗体との複合体である。
【0056】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する1つ以上の配列(CDR配列またはその一部)を含むヒト/非ヒトキメラ抗体を指す。ヒト化抗体は、従って、少なくともレシピエントの超可変領域の残基が、例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種由来抗体(ドナー抗体)であって、所望の特異性、親和性、配列組成および機能性を有する抗体の、超可変領域の残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。これらの修飾の一例は、1つ以上のいわゆる逆突然変異の導入であり、これらは一般的にドナー抗体に由来するアミノ酸残基である。抗体のヒト化は、当業者に知られる組換え技術を用いて実行され得る(例えば、Benny K. C. Loによって編集されたAntibody Engineering, Methods in Molecular Biology, vol. 248参照)。軽鎖および重鎖可変ドメイン両方に対する好適なヒトレシピエントフレームワークは、例えば、配列または構造相同性により同定され得る。あるいは、定型的なレシピエントフレームワークが、例えば、構造、生物物理学的、および生化学的特性の知識に基づき、用いられてもよい。レシピエントフレームワークは、生殖系列由来、あるいは成熟抗体配列由来であり得る。ドナー抗体由来のCDR領域は、CDR移植により移植され得る。CDRを移植したヒト化抗体は、ドナー抗体由来のアミノ酸残基の再導入(逆突然変異)がヒト化抗体の特性に有益な影響を有する、決定的なフレームワーク位置の同定により、例えば親和性、機能性および生物物理学的特性について、さらに最適化され得る。ドナー抗体に由来する逆突然変異に加えて、ヒト化抗体は、CDRまたはフレームワーク領域における生殖系列残基の導入、免疫原性エピトープの除去、部位特異的変異誘発、親和性成熟などによって、改変され得る。
【0057】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改善するように行われる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインを含むであろうし、そのCDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に一致し、かつ、そのFR残基の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFR残基である。ヒト化抗体はまた、場合により、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を含み得る。
【0058】
「ヒト化抗体誘導体」という用語は、ヒト化抗体の任意の修飾型を指し、例えば、ヒト化抗体と、別の物質または抗体との複合体である。
【0059】
本明細書で用いられる「キメラ抗体」という用語は、軽鎖および重鎖の遺伝子が、一般的に遺伝子操作により、異なる種を起源とする免疫グロブリン可変領域および定常領域から、構築された抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントは、ヒト定常セグメントとつながり得る。
【0060】
抗体のフラグメント結晶化可能領域(「Fc領域」/「Fcドメイン」)は、抗体のN末端領域であり、定常CH2およびCH3ドメインを含む。Fcドメインは、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体、並びにいくつかの補体系蛋白質と相互作用し得る。Fc領域は、抗体が免疫系と相互作用できるようにする。本発明のある局面において、抗体は、FC領域内に修飾を含むように改変されてよく、一般的に、例えば、数ある中で、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、蛋白質安定性および/または抗原依存性細胞傷害活性、またはその欠如などの、1つ以上の機能特性を変化させる。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾されてもよく(例えば、1つ以上の化学的部分が抗体に取り付けられ得る)、またはそのグリコシル化を変化させるように、修飾されてよく、再び抗体の1つ以上の機能性特性を変化させるように修飾されてよい。IgG1抗体は、特定のFc受容体の親和性の減少をもたらす変異(L234A、L235E、およびG237A)および、C1q媒介補体結合の減少をもたらす変異(A330SおよびP331S)(EUインデックスに従った残基番号)の1つ以上、場合により全てを含む、修飾Fcドメインを保有してもよい。
【0061】
本発明の抗体のアイソタイプは、IgGであってよく、例えばIgG1、例えばIgG2、例えばIgG4であってよい。必要に応じて、抗体のクラスは既知の技術により、「スイッチ」されてよい。例えば、元々IgM分子として生産された抗体が、IgG抗体にクラススイッチされてよい。クラススイッチ技術はまた、あるIgGサブクラスを、別のIgGサブクラスへ変換するために用いられ得る:IgG1からIgG2もしくはIgG4;IgG2からIgG1もしくはIgG4;またはIgG4からIgG1もしくはIgG2。異なるIgGサブクラス由来の領域の組み合わせによる、定常領域キメラ分子の作成のための抗体改変もまた、実行され得る。
【0062】
ある実施形態において、CH1のヒンジ領域が修飾され、ヒンジ領域のシステイン残基の数が変わり、例えば、増加または減少する。本手法は、例えばBodmer et al により、U.S. Patent No. 5,677,425に、さらに記載されている。
【0063】
定常領域は、抗体を安定化させるため、例えば二価抗体が2つの一価のVH−VLフラグメントに分かれるリスクを減らすために、修飾され得る。例えば、IgG4定常領域において、重鎖間のヒンジ部でのジスルフィド結合形成を安定化させるために、残基S228(EUインデックスに従う残基番号)はプロリン(P)残基に変異され得る(例えば、Angal et al., Mol Immunol. 1995; 30: 105-8参照)。
【0064】
抗体またはそのフラグメントはまた、その相互性決定領域(CDR)に関して規定されてもよい。本明細書で用いられる場合、「相補性決定領域」または「超可変領域」という用語は、抗原結合に関連するアミノ酸残基が存在する抗体の領域を指す。超可変性またはCDRの領域は、抗体可変ドメインのアミノ酸アライメントにおいて最も可変性が高い領域として同定され得る。CDR同定には、Kabatデータベースなどのデータベースを用いることができ、CDRは、例えば、軽鎖可変ドメインのアミノ酸残基24−34(L1)、50−59(L2)および89−97(L3)と、重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3)とを含むと規定される; (Kabat et al. 1991;Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)、あるいは、CDRは、「超可変ループ」由来の残基(軽鎖可変ドメインの残基26−33(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)および重鎖可変ドメインの26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol 1987; 196: 901-917)と規定され得る。一般的に、本領域のアミノ酸残基の番号付けは、上記のKabat et al.に記載された方法によって行われる。本明細書の「Kabat位置」、「Kabat残基」および「Kabatに従った」なとのフレーズは、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに対するこの番号付けシステムのことを指す。Kabat番号付けシステムを用いて、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのフレームワーク(FR)またはCDRに対する短縮、または挿入に対応する、より少ない、またはさらなるアミノ酸を含んでよい。例えば、重鎖可変ドメインは、CDRH2の残基52の後にアミノ酸の挿入(Kabatに従った残基52a、52bおよび52c)を含んでよく、重鎖FR残基82の後に、挿入された残基(例えば、Kabatに従った、残基82a、82b、および82cなど)を含んでもよい。所与の抗体に対して、「標準的な」Kabat番号付けがされた配列を用いて、抗体の配列相同性領域でのアライメントにより、残基のKabat番号付けを行うことができる。
【0065】
「フレームワーク領域」または「FR」残基という用語は、本明細書で規定されるCDR内に存在しないVHまたはVLアミノ酸残基のことを指す。
【0066】
mAb0170抗体は、配列番号2に示す可変重鎖配列と、配列番号3に示す可変軽鎖配列を有する。本発明の抗体は、当該可変重鎖配列および/または当該可変軽鎖配列を含み得る。mAb0170抗体は、配列番号2のアミノ酸31−35、50−68、および101−110と、配列番号3のアミノ酸24−38、54−60および93−101で示されるCDR配列を有する。
【0067】
本発明に従った抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸31−35(TYAMH)のCDR1配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0068】
本発明に従った抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸50−68(RIRTKSSNYATYYADSVKD)のCDR2配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0069】
本発明に従った抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸101−110(DMGQRRQFAY)のCDR3配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0070】
本発明に従った抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸24−38(RASESVDTFDYSFLH)のCDR1配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0071】
本発明に従った抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸54−60(RASNLES)のCDR2配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つまたは2つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0072】
本発明に従った抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸93−101(QQSNEDPYT)のCDR3配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つまたは2つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0073】
mAb0170抗体は、配列番号2に示した重鎖配列と、配列番号3に示した軽鎖配列とを有する。本発明の抗体は、当該重鎖配列または当該軽鎖配列を含んでもよい。本発明の抗体の重鎖または軽鎖のいずれか、あるいは両方が、mAb1070の変異体であってよい。mAb0170抗体は、配列番号2のアミノ酸31−35、50−68、および101−110、および配列番号3のアミノ酸24−38、54−60、および93−101で示されるCDR配列を有する。本発明の抗体は、これらのCDR配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てを含んでもよい。
【0074】
本発明に従った抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸101−110(DMGIRRQFAY)のCDRH3配列を含んでよく、これらのアミノ酸の1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい。
【0075】
「抗原」(Ag)という用語は、Agを認識する抗体(Ab)を生産する免疫適格性の脊椎動物の免疫化に用いられる分子のことを指す。本明細書では、Agは、より広義に用いられ、Abにより特異的に認識される標的分子を含むように広く意図され、従って、免疫化プロセス、あるいは、例えばAb作成のために用いられるファージディスプレイなどの他のプロセスで用いられる、当該分子のフラグメントまたは模倣物を含む。
【0076】
本明細書で用いられる、「エピトープ」という用語は、抗体(Ab)などの「抗原結合ポリペプチド」とその対応する抗原(Ag)間の分子相互作用という文脈で、規定される。一般的に、「エピトープ」は、Abが特異的に結合するAg上の範囲または領域、すなわちAbと物理的接触をしている範囲または領域を指す。物理的接触は、AbおよびAg分子間の原子に対する様々な基準(例えば、2−6Åの、例えば3Åの、例えば4Åの、例えば5Åの距離によるカットオフ;または溶媒露出度)を通して規定され得る。蛋白質エピトープは、Abへの結合に直接関与しているAgのアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)と、Abへの結合に直接関与していない他のアミノ酸残基、例えば、Abにより効果的に遮断されたAgのアミノ酸残基、すなわちAbの「溶媒排除表面」および/または「フットプリント」内のアミノ酸残基とを含み得る。
【0077】
本明細書で用いられるエピトープという用語は、特異的にTREM−1抗体に結合する、TREM−1の任意の特定の領域の結合領域の両方のタイプを含む。TREM−1は、多くの異なるエピトープを含んでよく、成熟したTREM−1立体構造中で互いに近くに位置する、1つ以上の非隣接アミノ酸から成る立体構造エピトープと、TREM−1に共有結合する分子構造から、全体あるいは一部が成る翻訳後エピトープ、例えば炭水化物群を含んでよいが、これらに限定されない。
【0078】
所与の抗体(Ab)/抗原(Ag)ペアのエピトープは、様々な実験的および計算的エピトープマッピング法を用いて、様々なレベルの詳細さで、記載および特徴付けされ得る。実験的方法には、当業界で知られる方法である、変異誘発、X線結晶構造解析、核磁気共鳴(NMR)分光法、水素重水素交換質量分析法(HX−MS)および様々な競合結合方法が含まれる。それぞれの方法は独自の原則に依存しているため、エピトープの記述は、決定された方法と密接に繋がっている。従って、用いられたエピトープマッピング法によって、所与のAb/Agペアのエピトープは、異なって記載され得る。
【0079】
最も詳細なレベルにおいて、AgとAb間の相互作用のエピトープは、Ag−Ab相互作用に存在する原始的接触を規定する空間的座標、並びにそれらの結合熱力学への相対的寄与についての情報により記載され得る。より詳細でないレベルにおいて、エピトープは、AgとAb間の原始的接触を規定する空間的座標により特徴づけられ得る。さらに詳細でないレベルにおいて、エピトープは、例えばAb:Ag複合体における原子間の距離、または原子の溶媒露出度などの特定の基準により規定される、エピトープが含むアミノ酸残基によって規定され得る。よりさらに詳細でないレベルにおいて、エピトープは、例えば他のAbとの競合結合により、機能を通じて特徴付けられ得る。エピトープはまた、他のアミノ酸による置換が、AbとAg間の相互作用の特徴を変化させるであろうアミノ酸残基を含むものとして、より一般的に規定され得る。
【0080】
FabフラグメントなどのAbと、そのAgとの複合体の空間的座標により規定されるX線由来結晶構造の文脈において、エピトープという用語は、特記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書において、Abの重原子(すなわち非水素原子)から、例えば4Åの距離内に重原子を有することにより特徴付けられるTREM−1残基として、具体的に規定される。
【0081】
使用するエピトープマッピングの方法に依存して、エピトープの記述および規定は様々なレベルの詳細さで得られることから、同じAg上の異なるAbに対するエピトープの比較は同様に、様々なレベルの詳細さで行われ得るということになる。
【0082】
例えばX線構造から規定される、アミノ酸レベルで記載されるエピトープは、同一のアミノ酸残基のセットを含む場合、同一であると言われる。少なくとも1つのアミノ酸をエピトープが共有している場合、エピトープは重複していると言われる。エピトープがアミノ酸残基を共有していない場合、エピトープは独立(特有)であると言われる。
【0083】
エピトープはまた、野生型ヒトTREM−1に対する抗体の結合動態を、予想されるエピトープ中にアラニン変異を有するヒトTREM−1変異体に対する結合動態と比較することによって、間接的に規定され得る。アミノ酸残基がアラニン残基で置換されているヒトTREM−1の変異体に対する抗体の親和性の減少、または結合の抑制は、変異したアミノ酸が、当該抗体と野生型ヒトTREM−1との相互作用に寄与していることを示す。本手法は、ネガティブなエピトープの同定を提供する。本方法は、蛋白質ミスホールディングまたはアンホールディングが相互作用の抑制と同様の結果を与え得ることから、エピトープを効果的に規定するという点で受け入れられる。本解析は、交差反応する抗体が存在する場合、オルソロガスな標的蛋白質(例えば、カニクイザルTREM−1)の機能獲得型突然変異の比較解析により、補完され得る。当該比較は、例えばカニクイザルTREM−1と交差反応しない抗体と、交差反応する抗体とのエピトープの違いを規定するだろう。
【0084】
エピトープの間接的な同定はまた、野生型抗原(TREM−1)の変異体への、抗体(または抗体フラグメント)の結合を測定することにより、提供され得る。抗体またはそのフラグメントが、例えばカニクイザルではなくヒトTREM−1に結合する場合、および当該抗体またはそのフラグメントが、カニクイザルTREM−1のヒト化変異体にある程度結合できる場合、当該再結合は、置換されたアミノ酸残基が抗体の、抗原との相互作用にとって重要であることを示す。同様に、ヒトTREM−1と比較してカニクイザルTREM−1に弱い結合を有する抗ヒトTREM−1抗体(またはそのFabフラグメント)の、カニクイザルTREM−1のヒト化変異体に対する親和性の増加は、結合エピトープを構成する残基の同定についての情報を提供し得る。
【0085】
任意の所与の交差反応する抗体の同一の変異の効果は、可能性のある蛋白質ミスホールディング(両抗体への結合の抑制)と、ヒトTREM−1の相互作用の損失(一方の抗体には結合し、他方の抗体への結合は抑制される)との区別を可能にし、交差反応しない抗体と、交差反応する抗体とのアミノ酸レベルでのエピトープの違いについての情報を明確に与える。
【0086】
本発明の抗体は、例えば表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、ヒトTREM−1の変異体に結合することができる。
【0087】
本発明の抗体は、例えば表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、カニクイザルTREM−1の変異体に結合することができる。
【0088】
本発明の抗体は、TREM−1に特異的に結合することができる抗体であって、ヒトTREM−1の(i)A21、T22、K23、L24、T25、E26からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基、および(ii)A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、I57、I58、R59、D60、G61、E62、M63、P64、K65、T66、L67、A68、C69、T70、E71、R72、P73、S74、K75、N76、S77、H78、P79、V80、Q81、V82、G83、R84、I85からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基、および(iii)C113、V114、I115、Y116、Q117、P118およびP119からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基と特異的に結合することができる抗体であってよい。
【0089】
本発明の抗体は、例えばHX−MSまたはX線回折を用いて決定されるように、配列番号1(ヒトTREM−1)のアミノ酸C38−F48を含むポリペプチドに特異的に結合することができる抗体であってよい。
【0090】
本発明の抗体は、例えばHX−MSまたはX線回折を用いて決定されるように、配列番号1(ヒトTREM−1)のアミノ酸残基D38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44およびL45の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または全て、および、配列番号1(ヒトTREM−1)のE46、K47およびF48からなる群から選択されるアミノ酸残基の1つ、2つ、または全てを含むエピトープを有してもよい。
【0091】
本発明の抗体は、例えばTREM−1の変異体および表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、配列番号1(ヒトTREM−1)のD42、E46、D92およびH93からなる群から選択されるアミノ酸残基の1つ、2つ、3つ、または全てを含むエピトープを有してもよい。
【0092】
本発明の抗体は、TREM−1の変異体および表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、配列番号1(ヒトTREM−1)のうち、少なくともアミノ酸残基E46および/またはD92を含むエピトープを有してもよい。
【0093】
本発明の抗体は、さらに、配列番号1(ヒトTREM−1)のL31、I86およびV101からなる群から選択されるアミノ酸残基の1つ、2つ、または全てを含んでもよい。
【0094】
本発明の抗体は、例えば、HX−MSまたはX線回折を用いて決定されるように、カニクイザルTREM−1(配列番号17)のアミノ酸残基E19−L26を含むポリペプチドに特異的に結合することができる抗体であってよい。
【0095】
本発明の抗体は、ヒトTREM−1に特異的に結合することができる抗体であって、当該抗体のエピトープが、配列番号1のV39、K40、C41、D42、Y43、L45、E46、K47、F48からなる群から選択されるアミノ酸残基の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または全てを含む抗体であってよい。
【0096】
本発明の抗体は、ヒトTREM−1に特異的に結合することができる抗体であって、当該抗体のエピトープが配列番号1のD42を含む抗体であってよい。本発明の抗体は、ヒトTREM−1に特異的に結合することができる抗体であって、当該抗体のエピトープが配列番号1のE46を含む抗体であってよい。当該抗体のエピトープは、配列番号1のV39、C41、D42、Y43、L45を含んでもよい。当該抗体のエピトープは、配列番号1のE46、K47およびA49を含んでもよい。当該抗体のエピトープはさらに、配列番号1のF48を含んでもよい。
【0097】
用語「パラトープ」の定義は、視点を反転させることにより、「エピトープ」の上述の定義に由来するものである。従って、「パラトープ」という用語は、抗原が特異的に結合する、すなわち、抗原と物理的接触を行う、抗体上の範囲または領域のことを指す。
【0098】
Fabフラグメントなどの抗体とその抗原との複合体の空間的座標により規定されるX線由来結晶構造の文脈において、、パラトープという用語は、特記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書において、TREM−1の重原子(すなわち非水素原子)から4Åの距離内に重原子を有することにより特徴付けられる抗体残基として、具体的に規定される。
【0099】
所与の抗体(Ab)/抗原(Ag)ペアのエピトープおよびパラトープは、通例の方法で同定され得る。例えば、エピトープの一般的な位置は、抗体が、TREM−1ポリペプチドの異なるフラグメントまたは変異体に結合する能力を評価することによって、決定され得る。抗体と接触するTREM−1内の特異的アミノ酸(エピトープ)および、TREM−1と接触する抗体内の特異的アミノ酸(パラトープ)はまた、通例の方法を用いて決定され得る。例えば、抗体および標的分子が組み合わされ得、Ab:Ag複合体が結晶化され得る。当該複合体の結晶構造が決定され、抗体とその標的の間の相互作用の特異的部位の同定に用いられ得る。
【0100】
同じ抗原に結合する抗体は、共通抗原に同時に結合する能力に関して特徴づけることができ、「競合結合」/「ビニング(binning)」に供し得る。本文脈において、「ビニング」という用語は、同じ抗原に結合する抗体をグループ分けする方法のことを指す。抗体の「ビニング」は、表面プラズモン共鳴(SPR)、ELISAまたはフローサイトメトリーなどの標準的技術に基づくアッセイにおいて、共通抗原への2つの抗体の競合結合に基づき得る。
【0101】
抗体の「ビン(bin)」は、参照抗体を用いて規定される。第二の抗体が参照抗体と同時に抗原に結合できない場合、当該第二の抗体は参照抗体と同じ「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体と第二の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合し、「競合抗体」となる。第二の抗体が参照抗体と同時に抗原に結合できる場合、当該第二の抗体は別の「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体と第二の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合せず、「非競合抗体」となる。
【0102】
抗体「ビニング」は、エピトープについて直接の情報を与えない。競合抗体、すなわち、同じ「ビン」に属する抗体は、同一のエピトープ、重複するエピトープ、または別々のエピトープさえ有し得る。後者は、抗原上のエピトープに結合する参照抗体が、第二の抗体が抗原上のエピトープに接触するのに必要な空間を占める場合である(立体障害)。非競合抗体は、一般的に、別々のエピトープを有する。
【0103】
本発明の抗体は、ヒトTREM−1への結合において、mAb0170と競合し得る。本発明の抗体は、カニクイザルTREM−1への結合において、mAb0170と競合し得る。言い換えれば、本発明の抗体は、mAb0170と同じ「ビン」に属し得る。
【0104】
本明細書の「結合親和性」という用語は、2つの分子間(例えば、抗体あるいはそのフラグメントと、抗原の間)の、非共有結合性の相互作用の強度の測定値のことを指す。「結合親和性」という用語は、一価の相互作用(固有活性)を述べるために用いられる。
【0105】
例えば、抗体またはそのフラグメントと抗原となどの、2つの分子間の一価の相互作用による結合親和性は、平衡解離定数(K
D)の決定により定量され得る。次に、K
Dは、例えばSPR法により、複合体の形成および解離の動態を測定することにより、決定され得る。一価の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ、会合速度定数k
a(またはk
on)、および解離速度定数k
d(またはk
off)と呼ばれる。K
Dは、式K
D=k
d/k
aにより、k
aおよびk
dと関連している。
【0106】
上述の規定に従い、異なる分子相互作用に関連する結合親和性、例えば所与の抗原に対する異なる抗体の結合親和性の比較は、それぞれの抗体/抗原複合体に対するK
D値の比較により比較されてよい。
【0107】
本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、1×10
−7M以下、1×10
−8M以下、または1×10
−9M以下、または1×10
−10M以下、1×10
−11M以下、1×10
−12M以下または1×10
−13M以下の親和性(K
D)でヒトTREM−1と結合し得る。本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴を用いて決定されるように、1×10
−7M以下、1×10
−8M以下、または1×10
−9M以下、または1×10
−10M以下、1×10
−11M以下、1×10
−12M以下または1×10
−13M以下の親和性(K
D)で、カニクイザルTREM−1に結合し得る。
【0108】
本明細書における「結合特異性」という用語は、抗体またはそのフラグメントなどのある分子と、単一の排他的抗原との、あるいは限られた数の非常に相同な抗原(またはエピトープ)との相互作用を指す。対照的に、TREM−1に特異的に結合できる抗体は、類似しない分子に結合できない。本発明に従う抗体は、Nkp44、ナチュラルキラー細胞p44関連蛋白質に結合できない可能性がある。
【0109】
相互作用の特異性、および平衡結合定数の値は、よく知られている方法によって、直接的に決定され得る。リガンド(例えば抗体)が、その標的に結合する能力を評価するための標準的アッセイは、当業界で知られており、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー解析が含まれる。抗体の結合動態および結合親和性はまた、当業界で知られる標準的アッセイ、例えばSPRにより評価され得る。
【0110】
競合結合アッセイは、抗体の標的への結合を、当該標的の別のリガンド、例えば別の抗体による標的への結合と比較することで、行われ得る。
【0111】
別の局面において、本発明は、本発明の分子、例えば、本明細書に記載のTREM−1抗体、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞を含む、組成物および製剤を提供する。例えば、本発明は、本発明の1つ以上のTREM−1抗体を含み、医薬上許容される担体と共に処方される医薬組成物を提供する。
【0112】
従って、本発明の1つの目的は、0.25mg/mlから250mg/mlの濃度で、例えば10から200mg/mlの濃度で存在する当該TREM−1抗体を含む医薬製剤を提供することであり、当該製剤は、pH2.0から10.0、例えばpH4.0から8.0を有する。当該製剤は、さらに、緩衝系、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定剤および/または界面活性剤の1つ以上、並びにそれらの様々な組み合わせを含んでもよい。医薬組成物における防腐剤、等張剤、キレート剤、安定剤および界面活性剤の使用は、当業者によく知られている。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照することができる。
【0113】
ある実施形態において、医薬製剤は水性製剤である。当該製剤は、一般的に水溶液または懸濁液であるが、コロイド、分散、エマルジョン、および多相の物質もまた含んでよい。「水性製剤」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤として規定される。同様に、「水性水溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む水溶液として規定され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として規定される。
【0114】
別の実施形態において、医薬製剤は、凍結乾燥製剤であり、使用に先立ち、医師または患者が、これに溶剤および/または希釈液を添加する。
【0115】
さらなる局面において、医薬製剤は、抗体の水溶液とバッファーとを含み、抗体は、1mg/ml以上の濃度で存在し、当該製剤は約2.0から10.0のpH、例えば4.0から8.0のpHを有する。
【0116】
本発明のTREM−1抗体およびこれらの抗体を含む医薬組成物は、次のような炎症性疾患の治療に用いられてもよい:炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性強皮症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息および、急性または慢性炎症のいずれかの結果の他の自己免疫疾患。
【0117】
本発明のTREM−1抗体は、炎症性腸疾患を患う個体の治療に用いるのに好適であり得る。炎症性腸疾患(IBD)は、口から肛門までの消化管の任意の部分に影響を及ぼし、様々な症状を引き起こし得る。IBDは主に、腹痛、下痢(血性であってもよい)、嘔吐、または体重減少を引き起こすが、発疹、関節炎、目の炎症、疲労および集中力の欠如などの消化管の外側の合併症もまた引き起こし得る。IBDの患者は、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の、2つのクラスに分けることができる。CDは一般的に回腸と結腸に影響を与え、腸のあらゆる領域に影響を与え得るが、しばしば非連続的である(疾病の病巣は腸全体に広がる)。UCは、常に直腸(結腸の)に影響を与え、より連続的である。CDにおいて、炎症は貫膜性であり、膿瘍、瘻孔および狭窄をもたらすが、UCにおいて、炎症は一般的に粘膜に限定される。クローン病の薬学的または外科的治癒は知られていないが、UCを患っている一部の患者は、結腸の外科的除去により治癒できる。治療の選択肢は、症状を制御すること、寛解を維持すること、再発を防止することに制限されている。臨床における炎症性疾患の有効性は、臨床検査およびクオリティー・オブ・ライフアンケートに基づくスコアリングスケールである、CDのクローン病活性指数(CDAI)スコアの減少として測定され得る。動物モデルにおいて、有効性は、体重の増加、および便の硬さ、体重、および便中の血液の組み合わせである疾病活性指数(DAI)の増加によってもまた、主に測定される。
【0118】
本発明のTREM−1抗体は、関節リウマチを有する個体の治療における使用に好適であり得る。関節リウマチ(RA)は、全身とはいかないまでも、ほぼ全身に影響する全身性疾病であり、関節炎の最も一般的な形式の1つである。関節リウマチは、関節の炎症を特徴とし、痛み、硬直、温感、発赤および腫脹を引き起こす。この炎症は、炎症細胞が関節に浸潤した結果であり、これらの炎症細胞は骨や軟骨を分解し得る酵素を放出する。その結果、当該炎症は、生理的効果の中でも特に、重篤な骨および軟骨の損傷につながり、また関節の劣化や激しい痛みにつながり得る。影響を受けた関節は、その形や配置を失い、その結果痛みや運動の喪失に至り得る。
【0119】
当業界で知られる、関節リウマチの動物モデルがいくつか存在する。例えば、コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおいて、マウスはヒト関節リウマチに類似した炎症性関節炎を発症する。CIAは、RAと同様の免疫学的および病理学的な特徴を有するため、潜在的なヒト抗炎症化合物を選別する好適なモデルとなる。本モデルの有効性は、関節腫脹の減少により測定される。臨床でのRAにおける有効性は、関節腫脹、赤血球沈降速度、C反応性タンパク質レベルおよび、抗シトルリン化蛋白質抗体などの血清因子のレベルの組み合わせとして測定される、患者の症状を減少させる能力により測定される。
【0120】
本発明のTREM−1抗体は、乾癬を有する個体の治療における使用に好適であり得る。乾癬は、相当な不快感を引き起こし得る、皮膚のT細胞媒介炎症性疾患である。乾癬は、現在のところ治療法がない疾病であり、全ての年齢の人々に発症する。軽度の乾癬の個体はしばしば、外用薬でその疾病を制御し得るが、世界中の100万人を超える患者が、紫外線治療または全身性免疫抑制療法を必要としている。残念ながら、紫外線照射の不便さと危険性、および治療を繰り返すことによる毒性が、それらの長期間の使用を制限している。その上、患者はたいてい乾癬を再発し、いくつかの症例では免疫抑制療法中止後、すぐにリバウンドする。CD4+T細胞の移植に基づく、最近開発された乾癬のモデルは、ヒト乾癬の多くの点を模倣しており、従って乾癬の治療において使用するのに好適な化合物の同定に用いられ得る(Davenport et al., Internat. Immunopharmacol 2:653-672, 2002)。本モデルの有効性は、皮膚病変の減少により、採点システムを用いて測定される。同様に、患者における有効性は、皮膚病変の減少により測定される。
【0121】
本発明のTREM−1抗体は、乾癬性関節炎の個体の治療における使用に好適であり得る。乾癬性関節炎(PA)は、乾癬の患者のサブセットで生じる炎症性関節炎の一種である。これらの患者において、皮膚の病態/症状は、関節リウマチでみられるのと同様の関節腫脹が伴う。PAは、落屑を伴った、斑状の、膨らんだ、赤い、皮膚の炎症の領域を特徴とする。乾癬はしばしば、肘および膝の先端、頭皮、へそ、および生殖器部分または肛門の周辺に発症する。乾癬を有する患者のおよそ10%はまた、関節の随伴性の炎症を発症する。
【0122】
本明細書で用いられる「治療」という用語は、それを必要とする任意のヒトまたは他の動物対象の医学療法を指す。当該対象は、当該治療の使用が、当該ヒトまたは他の動物対象の健康に有益であることを示す、仮の診断または確定診断を下した医師または獣医師によって身体診察をうけると予想される。当該治療のタイミングと目的は、対象の健康の減少などの多くの因子に従い、個人によって異なってよい。従って、当該治療は、予防的、緩和的、対症的、および/または根治的であってよい。
【0123】
本発明に関して、予防的、緩和的、対症的および/または根治的治療は、本発明の別々の局面を表し得る。
【0124】
本発明の抗体は、例えば静脈内に、例えば筋肉内に、例えば皮下になど、非経口的(parenterally)に投与され得る。あるいは、本発明の抗体は、非経口的ではない経路(non-parenteral route)で、例えば経口的に、または局所的に投与され得る。本発明の抗体は予防的に投与されてもよい。本発明の抗体は治療的に投与されてもよい(要求に応じて)。
【0125】
本発明の第一の局面において、配列番号3(mAb0170の可変軽鎖)のCDR1およびCDR3領域の負荷電残基の置換は、mAbの粘度に影響を与えることが観察された。本発明の当該第一の局面において、本発明のmAbは、重鎖および軽鎖を有するmAb0170の変異体であって、mAb0170の軽鎖、つまり配列番号3が、配列番号3のCDR1およびCDR3領域の負荷電残基が非荷電残基で置換される変異を含む変異体である。従って、本発明のある局面は、配列番号3の残基D1、D30、D33、D74、D98、E27、E97のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換することを含む、mAb0170の変異体に関する。言い換えれば、本発明の興味深い実施形態は、重鎖として配列番号2(またはその変異体)を含み、軽鎖として配列番号3の変異体を含む、抗体またはそのフラグメントであって、配列番号3の残基D1、D30、D33、D74、D98、E27、E97のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせが、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異している抗体またはそのフラグメントに関する。これらの変異は、「チャージパッチ」変異と呼べるであろう。好ましい実施形態において、配列番号3のCDR1およびCDR3領域のE27およびE97の少なくとも1つまたは両方が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸などの、非荷電アミノ酸残基で置換されている。好ましい実施形態において、配列番号3のCDR1およびCDR3領域のE27が、グルタミンに変異し、E97が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸、さらに好ましくはセリンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。さらなる実施形態において、E27は未変異のままであり、E97はグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸、さらに好ましくはセリンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸に変異している。別の実施形態において、残基E97は未変異のままであり、E27はグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸、さらに好ましくはセリンおよびグルタミンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0126】
本発明の別の局面は、Fab−Fab二量体が、パラトープ領域における相互作用に起因して形成されるという知見に基づいている。mAbは2つのFabを含むため、mAbは多量体化することができ、粘度特性に影響を与え得ると想定された。従って、本発明の別の局面は、配列番号2のFab−Fab相互作用領域(つまり、mAb0170の可変重鎖領域)の残基を変異させて、Fab−Fab二量体化を減らすことに関する。これらの変異は、「Fab−Fab相互作用」変異と呼ばれる。従って、本発明のある局面は、配列番号2の残基Y32、R52、S55、S56、N57、A59、M102、I104およびR106、または配列番号3の残基F32、D33、Y34、Y53、R54、D98のいずれか1つを、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換することに関する。言い換えれば、本発明の興味深い実施形態は、配列番号2の変異体を含む抗体またはそのフラグメントであって、配列番号2の残基Y32、R52、S55、S56、N57、A59、M102、I104およびR106、または配列番号3の残基F32、D33、Y34、Y53、R54、D98(「Fab−Fab相互作用」変異)のいずれか1つが、他のアミノ酸、例えば天然のアミノ酸、好ましくはグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている抗体またはそのフラグメントに関する。好ましくは、配列番号2の残基A59およびN57の少なくとも1つが、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基、さらに好ましくはセリンまたはチロシンに変異している。ある実施形態において、A59は未変異のままであり、N57はグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基、さらに好ましくはセリンまたはチロシンに変異している。別の実施形態において、N57は未変異のままであり、A59はグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異している。少なくとも1つの実施形態において、A59およびN57の両方がグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基、さらに好ましくはセリンまたはチロシンに変異している。
【0127】
興味深い実施形態において、i)配列番号3のCDR1およびCDR3領域の少なくとも1つの負荷電残基が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異しており、ii)配列番号2の残基Y32、R52、S55、S56、N57、A59、M102、I104およびR106、または配列番号3の残基F32、D33、Y34、Y53、R54、D98(「Fab−Fab相互作用」変異)の少なくとも1つの残基が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、およびトリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異している。
【0128】
好適な実施形態において、配列番号3のE27およびE97の1つまたは両方が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基に変異しており、配列番号2のA59およびN57の1つまたは両方が、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基、さらに好ましくはセリンまたはチロシンに変異している。
【0129】
本発明のさらなる局面は、TREM−1の配列番号1の位置Y90のAla置換が、配列番号3のTREM−1への親和性を改善したという知見に基づいている。Y90は、配列番号3のフェニルアラニン残基と相互作用することが見出された。Fab−TREM−1相互作用を改善するための配列番号3の変異は、Fab−TREM−1相互作用変異と呼ばれる。本発明の当該局面のある実施形態において、配列番号3の位置32のフェニルアラニンは、アミノ酸残基グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびメチオニンから選択される、好ましくはアラニン、グリシン、セリンバリンおよびロイシンから選択されるアミノ酸に変異している。興味深い実施形態において、配列番号3のF32は、アラニンまたはセリンに変異している。
【0130】
配列番号3のCDR1およびCDR3におけるチャージパッチ変異は、流体力学半径(Rh)を減少させたが、Fab−Fab相互作用領域の変異は、Rhを増加させた(
図6)。「Fab−TREM−1相互作用」部位の変異はRhに影響を与えず、粘度への効果はほとんどなかった(
図6および1、表3Cおよび3E)。
【表1】
【0131】
mAb0170変異体について、粘度をDLSまたはマイクロレオロジーにより決定し、「チャージパッチ」変異と「Fab−Fab相互作用」変異の両方が粘度を減少させることを示した。チャージパッチ変異E27QおよびE97Qを含むmAb変異体0318が、最低の粘度を有することが分かった。
【0132】
ヒトTREM−1−FcおよびカニクイザルTREM−1−Fcに対するmAb0170変異体の結合動態を、それぞれ決定した。mAb0170変異体は全て、ヒトTREM−1−Fcに対して同様の親和性を有することがわかった。興味深いことに、mAb変異体である「Fab−TREM−1相互作用」変異を含む配列番号9は、カニクイザルTREM−1−Fcに対し親和性が増加していることが分かった(表2)。
【表2】
【0133】
TREM−1に対する親和性の改善と低い粘度との両方を有する実施形態において、配列番号9由来の変異を、配列番号5の変異と組み合わせ、配列番号14由来の軽鎖を作成し、配列番号14由来の軽鎖の変異をさらに、配列番号16の重鎖の変異と組み合わせた。カニクイザルTREM−1−Fcに対する親和性の増加は、組み合わされた配列番号14の変異を含むmAb変異体で保持され、当該変異は、ヒトTREM−1−Fcに対する親和性に悪影響を与えなかった。従って、「チャージパッチ」変異および「Fab−TREM−1相互作用」変異の両方を含む実施形態、並びに「チャージパッチ」変異および「Fab−Fab相互作用」変異の両方を含む実施形態、並びに「Fab−Fab相互作用」変異および「Fab−TREM−1相互作用」変異の両方を含む実施形態、および「Fab−Fab相互作用」変異、「Fab−TREM−1相互作用」変異および「チャージパッチ」変異を含む実施形態が、本発明によって想定される。
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表3E】
【0134】
本発明の、非限定的な実施形態には、以下がさらに含まれる:
1.配列番号1のTREM−1に結合して遮断することができる抗体またはそのフラグメントであって、50mg/mLの濃度で、5cP未満の粘度、例えば4cP未満の粘度、好ましくは3cP未満の粘度を有することを特徴とする、抗体またはそのフラグメント(粘度対蛋白質濃度の条件を決定する方法は、従来の方法であるか、本明細書に記載された方法である。)
【0135】
2.TREM−1に結合して遮断することができる抗体またはそのフラグメントであって、80mg/mLの濃度で、5cP未満の粘度、好ましくは4cP未満の粘度を有することを特徴とする、抗体またはそのフラグメント(粘度対蛋白質濃度の条件を決定する方法は、従来の方法であるか、本明細書に記載された方法である。)
【0136】
3.配列番号1に対して、0.5nMより小さいKD、例えば0.4nMより小さいKD、好ましくは0.3nMより小さいKDを有し、TREM−1の機能を遮断する、実施形態1または2に従う抗体またはそのフラグメント。
【0137】
4.配列番号1への結合に対し、mAb0170と競合的に結合し、以下の粘度プロファイルを有する、抗体またはそのフラグメント:
(a)50mg/mLの濃度で、5cP未満の粘度、例えば4cP未満の粘度、好ましくは3cP未満の粘度を有する、抗体またはその抗体の抗体フラグメント:または
(b)80mg/mLの濃度で、5cP未満の粘度、好ましくは4cP未満の粘度を有する、抗体またはその抗体の抗体フラグメント。
【0138】
5.配列番号2の「Fab−Fab相互作用」変異を有し、TREM−1に特異的に結合して遮断することができる抗体またはそのフラグメント。
【0139】
6.「チャージパッチ」変異を有する、例えば配列番号3のCDR1およびCDR3の負荷電残基の少なくとも1つが非荷電残基で置換されている、配列番号1のTREM−1に特異的に結合して遮断することができる抗体またはそのフラグメント。
【0140】
7.負荷電アミノ酸が、水素結合パートナーを形成できるアミノ酸残基で置換されている、例えば、AspおよびGlu残基のAsn、Gln、SerおよびThrのいずれかへ変異している、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0141】
8.mAb0170と比較して低い粘度を有するが、尚0.5nMよりも小さい配列番号1に対するK
Dを有する、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0142】
9.特異的「Fab−Fab相互作用」に関連する、配列番号2および/または3の非荷電アミノ酸を、サイズまたは水素結合能が変更されたアミノ酸で置換することにより、mAb0170と比較して粘度が低く、0.5nMよりも小さい配列番号1に対するK
Dと、0.6nMよりも小さい配列番号17に対するK
Dとを有する、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0143】
10.配列番号1のTREM−1に特異的に結合して遮断することができ、かつ、配列番号2もしくは配列番号3の変異体、またはその両方を含み、当該変異体が、配列番号2または配列番号3の「Fab−Fab相互作用」変異、「Fab−TREM−1相互作用」変異および「チャージパッチ」変異からなる群から選択される、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0144】
11.「Fab−TREM−1相互作用」変異を含む、例えば配列番号3のPhe残基がAlaまたはSerで置換されている、、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0145】
12.配列番号1への結合に対して配列番号2または3と競合し、かつ、配列番号1のアミノ酸残基D38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44およびL45のうち、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは全て、およびアミノ酸残基E46、K47、F48のうち、1つ、2つまたは全てを含むエピトープを有する、本発明の実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0146】
13.結合に対して配列番号3と競合し、配列番号3の位置27および97のグルタミン酸(E)残基の1つまたは両方がセリン(S)またはグルタミン(Q)に変異している、例えばE27Q、E97Sを有する、例えばE27およびE97の両方がグルタミンに変異している、あるいはE27は未変異のままであり、E97はSに変異している(E27、E97S)、またはE27は未変異のままであり、E97はQに変異している(E27、E97Q)、またはE97は未変異のままであり、E27はQまたはSに、さらに好ましくはQに変異している(E27、E97Q)LCを含む、本発明の実施形態のいずれかに従う抗体またはそのフラグメント。
【0147】
14.配列番号3を含み、位置32のフェニルアラニン(F32)が、例えばA(mAb0322)またはS(mAb0323)に変異している、本発明の実施形態のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメント。
【0148】
15.配列番号2を含み、残基N57および残基A59の1つまたは両方が変異している、例えば残基A59がチロシンに変異している、あるいは残基N57がセリンに変異している、あるいは残基N57がセリンに変異し、かつ残基A59がチロシンに変異している、実施形態のいずれか1つに従う抗体またはそのフラグメント。
【0149】
16.特異的Fab−Fab相互作用に関連する非荷電アミノ酸が、サイズまたは水素結合能が変更されたアミノ酸で置換されている、例えば、アラニン(A)またはアスパラギン(N)が、Ser、Thr、Phe、TyrおよびTrpのいずれか1つで置換されている、配列番号2の変異体を含む抗体またはそのフラグメント。
【0150】
17.結合に対して配列番号3と競合し、配列番号3の位置27および97のグルタミン酸(E)残基の1つまたは両方がセリン(S)またはグルタミン(Q)に変異している、例えばE27およびE97の両方がグルタミンに変異している(318)、あるいはE27は未変異のままでありE97はSに変異している(E27、E97S)、あるいはE27は未変異のままでありE97はQに変異している(E27、E97Q)、あるいはE97は未変異のままでありE27はQまたはSに、さらに好ましくはQに変異している(E27、E97Q)、配列番号3の変異体を含む、抗体またはそのフラグメント。
【0151】
18.配列番号2と結合を競合し、残基N57および残基A59の1つまたは両方が変異している、例えば残基A59がチロシンに変異している、あるいは残基N57がセリンに変異している、あるいは残基N57がセリンに変異し、かつ残基A59がチロシンに変異している、配列番号2の変異体を含む、抗体またはそのフラグメント。
【0152】
19.配列番号4を含む抗体またはそのフラグメント。
【0153】
20.配列番号5を含む抗体またはそのフラグメント。
【0154】
21.配列番号6を含む抗体またはそのフラグメント。
【0155】
22.配列番号7を含む抗体またはそのフラグメント。
【0156】
23.配列番号8を含む抗体またはそのフラグメント。
【0157】
24.配列番号9を含む抗体またはそのフラグメント。
【0158】
25.配列番号10を含む抗体またはそのフラグメント。
【0159】
26.配列番号11を含む抗体またはそのフラグメント。
【0160】
27.配列番号12を含む抗体またはそのフラグメント。
【0161】
28.配列番号13を含む抗体またはそのフラグメント。
【0162】
29.配列番号14を含む抗体またはそのフラグメント。
【0163】
30.配列番号15を含む抗体またはそのフラグメント。
【0164】
31.配列番号16を含む抗体またはそのフラグメント。
【0165】
32.配列番号4−16のいずれか1つを含む抗体またはそのフラグメント。
【0166】
33.実施形態1−32のいずれかにおいて規定される抗体を含む、組成物。
【0167】
34.医薬として使用するための、例えば実施形態1−32に記載される、本発明の抗体。
【0168】
35.炎症性疾患または自己免疫疾患から選択される疾病の治療に用いるための、例えば実施形態1−32に記載される、本発明の抗体。
【0169】
36.疾病が、関節リウマチおよび炎症性腸疾患からなる群から選択される、実施形態35に記載の抗体。
【0170】
37.炎症性疾患または自己免疫疾患からなる群から選択される疾病の治療のための医薬を製造するための、例えば実施形態1−32のいずれかに記載される、本発明の抗体の使用。
【0171】
38.疾病が、関節リウマチおよび炎症性腸疾患からなる群から選択される、実施形態35に記載の使用。
【0172】
39.本発明の抗体(例えば実施形態1−32のいずれか1つの抗体)、本発明の抗体を含む組成物、または本発明の抗体を含む医薬を投与することを含む、炎症性疾患または自己免疫疾患から選択される疾病を治療する方法。
【実施例】
【0173】
実施例1:mAb0170変異体の流体力学半径および粘度
WO2013/120553のmAb0170の流体力学半径は、期待(5−6nm)よりも大きいことがわかった(9−10nm)。流体力学半径は、DynaProプレートリーダー(Wyatt Inc.)で、96穴プレート装置を用いて、動的光散乱分析により決定した。用いたプレートは、Corning3540アッセイプレート(Corning)だった。総サンプル量は、およそ20μLで、温度はmAb0170変異体に対しては25℃で維持した(
図6)。
【0174】
可変軽鎖のCDR1およびCDR3のチャージパッチ変異は、Rhを、単量体のmAbに対して期待されるレベルにまで減少させたが、Fab−Fab相互作用領域の変異は、Rhを増加させたように見えた。Fab−TREM−1相互作用部位の変異は、Rhに影響を与えなかった。
【0175】
mAb0170変異体0317、0318、0319、0320、0321、0322、0323、0324、0325、0326および0330について、DLSにより粘度を決定した。流体力学半径は、Corning 3540の底面が透明な、黒色未処理ポリスチレンマイクロプレート、およびPhosphorex Inc.の、平均直径206.5nm(カタログ番号106)の単純なポリスチレンナノ粒子を用いて、Wyatt DynaPro Platereaderで測定した。蛋白質サンプルをCorning 3540プレートに移し、上部のシールでカバーした。当該サンプルを遠心分離にかけ、蛋白質サンプルの流体力学半径をWyatt DynaPro DLSプレートリーダーで測定した。各ウェルに0.5μLポリスチレンビーズを加え、ピペッティングでゆっくり混合した。プレートを再度遠心分離にかけ、ビーズの流体力学半径をWyatt DynaPro DLSプレートリーダーで測定した。
【0176】
蛋白質サンプルの粘度は、以下のように計算した。
粘度(蛋白質)=(流体力学半径(ビーズ、測定値)×粘度(バッファー))/流体力学半径(ビーズ、実際)
粘度(蛋白質)は、計算された蛋白質溶液の粘度であり、流体力学半径(ビーズ、測定値)は、蛋白質溶液中のポリスチレンビーズの測定された流体力学半径であり、粘度(バッファー)は、バッファーの粘度であり、流体力学半径(ビーズ、実際)はビーズの実際の平均直径である[He et al., Anal Biochem, 399, 141-143, 2010]。
【0177】
mAb0170変異体0332および0333について、マイクロレオロジーによって粘度を決定した。レオロジー解析のため、30G Novofineニードルが接続された250μlのHamilton LT シリンジ (Hamilton-Bonaduz Inc)を用いた。シリンジは、プラットフォームに固定された特注のアルミニウムホルダー内に設置した。シリンジのプランジャーは、TAXTPlus Texture Analyzerによって動かされ、予め決定した注入スピードでのプランジャー上で得られた力を測定した。各サンプルを、異なる3つの注入スピードで試験した。クロスヘッドスピードおよび測定した力を用いて、それぞれ、ずり速度とずり応力を計算した。粘度は、ずり速度との関係で以下のように表現され得る:
η
蛋白質=τ
W/γ=(ΔPD/4L)/((32Q)/(πD
3))
η
蛋白質は、蛋白質溶液の粘度であり、γは見かけのずり速度であり、τ
Wはずり応力であり、Pはプランジャーを動かすことにより得られる圧力であり、Qはキャピラリーニードルを通過する流体の容積流量であり、DおよびLはそれぞれ、キャピラリーの内径および長さである(Allahham et al., 2004; Intl J Pharm 270, 139-148)。粘度、η
蛋白質を、既知のD、LおよびQの値、および測定したPの値から計算した。
【0178】
当該解析は、「チャージパッチ」変異および「Fab−Fab相互作用」変異が粘度を減少させることを示した(
図1)。チャージパッチ変異E27QおよびE97Qを含むmAb変異体配列番号5は、最低の粘度を有することが分かった。
【0179】
実施例2:mAb0170変異体の動態
ヒトTREM−1−FcおよびカニクイザルTREM−1−Fcに対するmAb0170変異体の結合動態を、それぞれ決定した。結合研究は、表面プラズモン共鳴によりリアルタイムで分子間相互作用を測定するProteOn Analyzer (BioRad)で行われた。実験は25℃で行い、サンプルはサンプル室にて15℃で保管した。ProteOnにより報告されるシグナル(RU、応答ユニット)は、6つの平行なフローセル内の個々のセンサーチップ表面上の質量に直接相関している。BiacoreヒトまたはマウスFc捕捉キット由来の抗ヒトFcモノクローナルまたは抗マウスFcポリクローナル抗体は、製造業者の説明書に従い、GLMセンサーチップのフローセル上に水平方向に固定化した。捕捉抗体の最終的な固定化レベルは、各実験においておおよそ2600−6000RUであった。精製モノクローナルマウス抗hTREM−1抗体または組換発現抗hTREM−1抗体の捕捉を、抗体をランニングバッファー(10mM Hepes 0、15M NaCl、5mM EDTA、0.05%界面活性剤P20、pH7.4)に5−10nMになるように希釈し、その後60秒間、30μL/minで垂直方向に注入することによって行い、固定化された抗Fc抗体のみを有する全てのフローセルに隣接した参照インタースポット(interspot)を作成した。この結果、一般的に、試験抗体の最終捕捉レベルはおおよそ100−300RUとなり、分析物(抗原)のRmax値は30−90RUとなった。hTREM−1またはcTREM−1蛋白質の結合は、水平方向にフローセル全体に分析物(抗原)を注射することによって行い、参照インタースポットへの結合に対する異なる捕捉抗TREM−1抗体への結合の比較解析を可能にした。hTREM−1またはcTREM−1蛋白質は、1.2−100nMになるまでランニングバッファーに1:3に連続的に希釈し、250秒間100μL/minで注入し、600秒間で解離させた。GLM表面は、10mMグリシン、pH1.7および50mM NaOHの100μL/minでの2回の18秒間の注入により、分析物の各注入サイクルの後に再生させた。当該再生ステップは、固定化された捕捉抗体表面から抗TREM−1抗体およびあらゆる結合TREM−1蛋白質を除去し、次の相互作用サンプルペアのそれに続く結合を可能にした。再生手順は、チップ表面から、直接固定化された抗Fc捕捉抗体は除去しなかった。
【0180】
抗体および抗原間の結合親和性は、複合体の形成および解離の動態を測定することにより決定される、平衡解離定数(K
D)の決定により、定量した。ka(会合速度)およびkd(解離速度)などの、一価の複合体の会合および解離に対応する速度定数は、データ解析のためのProteOn評価ソフトウェアを用いて、1:1Langmuirモデルに適合したデータによって、検索した。K
Dは、式K
D=kd/kaによって、kaおよびkdと関係している。
【0181】
結合曲線は、データ解析の前に、ダブルリファレンス(捕捉抗TREM−1抗体に対する、参照表面シグナル、並びにブランクバッファー注入の減算)により処理した。これにより、装置ノイズ、バルクシフト、およびサンプル注入時のドリフトの補正が可能となった。
【0182】
mAb0170変異体は全て、ヒトTREM−1−Fcに対し、mAb0170と同様の親和性を有することが分かった。興味深いことに、mAb0322などの「Fab−TREM−1相互作用」変異を含むmAb変異体は、カニクイザルTREM−1−Fcに対する親和性が増加した(表2)。
【0183】
実施例3:mAb0330およびmAb0333の動態および粘度
カニクイザルTREM−1に対して改善された親和性を有し、かつ低い粘度を有するmAbを作成するために、配列番号9由来の変異を、mAb0170変異体の中で最も低い粘度を有することがわかっている配列番号5の変異、および粘度に対して適度な効果を有することが分かっている配列番号11と組み合わせた。カニクイザルTREM−1−Fcに対する親和性の増加は、変異の組み合わせを含むmAb変異体(mAb0330およびmAb0333)において保持され、当該変異は、ヒトTREM−1−Fcに対する親和性に影響を与えなかった。mAb0330およびmAb0333の粘度は、WO2013/120553のmAb0170と比較して著しく減少した(
図1)。
【0184】
実施例4:BWZ’36/hTREM−1安定細胞株の培養
BWZ/hTREM−1レポーター細胞を、10%FCS(Cat# 16140-071, Gibco, New York, USA)、1%Pen/Strep(Cat# 15070-06, Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Cat #11360, Gibco)、5μM−2ME(Cat# 31350-010, Gibco)および2mML−グルタミン(Cat # 25030, Gibco)を補った、フェノールレッドを含まないRPMI 1640(Cat# 11835, Gibco, Carlsbad CA, USA)で培養した。特別なプレートやコーティングは必要としなかった。10mlVersene(Cat # 15040, Gibco)を加えて細胞を剥がし、その後細胞をチューブに移して、5分間1200rpmで遠心分離し、フェノールレッドを含まない新鮮なRPMI 1640で洗浄した。これらの細胞は、その後、アッセイまたはさらなる増殖のための再培養において使用できる状態となった。
【0185】
実施例5:mAb0170変異体の機能性特徴解析
抗TREM−1mAb0170変異体がヒトTREM−1シグナル伝達を阻害する能力を、Bioxellにより提供されたレポーター細胞株(BWZ’36/hTREM−1)を用いて決定した。レポーター細胞株を、mAbと培養する前に、組換えタンパク質、または活性化好中球により発現された蛋白質のいずれかとして、PGNおよびTREM−1リガンドPGLYRP1で刺激した。変異体がTREM−1シグナル伝達を阻害する能力は、臨床的に意義のあることであり、WO2013/120553のmAb0170と同等であることが分かった(
図2AおよびB)。
【0186】
同様に、カニクイザルTREM−1シグナル伝達を阻害する能力を、最低の粘度を有する3つのmAb0170変異体について調べ、2つの変異体のカニクイザルTREM−1に対する親和性が増加していることが観察された。確立されたレポーター細胞株TE426.27を用いた本アッセイにおいて、mAb変異体とWO2013/120553のmAb0170について同様の能力が観察された(
図3)。
【0187】
また、当該mAb変異体の、健常ドナー由来の初代細胞からのTNFaの放出を遮断する能力を評価した。本アッセイでは、単球を低酸素状態下でM2マクロファージに分化させてTREM−1発現を増加させ、mAbと培養する前にPGNおよび組換えPGLYRP1で活性化させた。当該mAb変異体は、低酸素性M2マクロファージからのTREM−1媒介TNFα放出を阻害する上で、0170と同程度に強力であることが分かった(
図4)。
【0188】
実施例6:Fab0170−Fab0170複合体の結晶構造
mAb0170分子が特異的な自己相互作用により相互作用する能力を、Fab0170−Fab0170結晶構造の結晶解析により評価した。
材料:10mMリン酸塩、2.68mM KCl、140mM NaClからなり、蛋白質濃度8.5mg/mLでpH7.4のバッファー中のmAb0170のFab領域(配列番号18および配列番号19)。
方法:mAb0170のFab領域を、ハンギングドロップ蒸気拡散実験において、20%(w/v)PEG8000、200mM K
2HPO
4からなる0.5mLのリザーバーに対する、2μLのリザーバー溶液と混合した2μLの蛋白質溶液からなる液滴の平衡化により、結晶化した。結晶は、2μLの35%(w/v)PEG3350、200mM K
2HPO
4からなるドロップに移行され、直径0.2mmのリソループ(litholoop)(Molecular Dimensions Limited)にマウントし、液体窒素でフラッシュ冷却した。
【0189】
X線回折データを、100Kで操作したCryo-streamを用いて、MAXLAB 911-2, Lund University, Swedenにて収集した。生のデータ画像を、XDSプログラムパッケージを用いて、指数付けをし、積分して、スケーリングした(Kabsch, Acta Crystallogr. D66, 133-144 (2010))。結晶の空間群はP2(1)2(1)2(1)であり、単位格子パラメーターは、a=62.4Å、b=110.9Å、c=158.4Åであった。データは分解能2.40Åまで収集した。構造を、CCP4i program suite (Potterton et al., Acta Crystallogr. D59, 1131-1137 (2003))で実行されるように、Phenix software (Adams et al., Acta Crystallogr. D66, 213−221 (2010))を用いた分子置換により、解析した。検索モデルは、pdbエントリー1AD0.pdb由来の重鎖(85%同一性)と、pdbエントリー2QRG由来の軽鎖(94%同一性)の構造であった。構造の精密化は、CCP4i program suiteのRefmac5 (Murshudov et al., Acta Crystallogr. D53, 240-255 (1997))を用いて実行した。Coot version 7 (Emsley et al., Acta Crystallogr. D66, 486-501 (2010))を、手動による構造の再構築と検証に用いた。
【0190】
結果および考察
mAb170Fab領域の結晶構造は、非対称単位の4つのFab分子を含んでいた(重鎖はAおよびCと表示し、軽鎖はBおよびDと表示した)。Fab分子は、1つのFab分子の抗原結合領域が、別のFab分子の抗原結合領域と相互作用することにより、二量体としてひとまとめになっていた。配列番号19由来の最後のシステインは重鎖の配列番号18由来のCysとジスルフィド結合していることが期待されたが、結晶構造中にこれを含めて精密化することはできなかった。当該範囲に過度の2Fo−FcおよびFo−Fc電子密度の存在が示唆されたため、ジスルフィド結合はFab分子のサブセットに存在する可能性がある。非対称単位における鎖Aの配列番号18由来の残基G26、K78−N79、I104−R105およびS138−E141、および、非対称単位の他のFab分子の配列番号18の鎖C由来のE1、G26−F27、M102−R105、S136−E141、S195−K200には、有意なシグマa重み付け2Fo−Fc電子密度は存在しなかった。有意なシグマa重み付け2Fo−Fc電子密度はまた、鎖Dの配列番号19由来の残基D30−Y34でにも存在しなかった。これらの残基は、結晶構造に含まれなかったが、WO2013/120553に開示されたヒト化抗TREM−1 mAb0170結晶構造に由来するmAb0170フラグメント結晶構造との重ね合わせによる、Fab−Fab界面の分子間相互作用解析には含まれた。
【0191】
mAb0170Fabフラグメント構造の品質パラメーターは、構造全体のR−factor=24%およびFree R−factor=30%を示した。全体の相関係数は0.93であり、diffraction-component precision index、DPI=0.3Å(Cruickshank, Acta Crystallogr. D55, 583-601 (1999))であった。構造中の結合距離の、理想結合距離との平均二乗偏差=0.025Åである、理想結合角との平均二乗偏差=2.326°であった(Engh and Huber, Acta Crystallogr. A47, 392-400 (1991))。
【0192】
分子間距離の解析は、分子間距離のカットオフ値4Åにより、CCP4プログラム一式のプログラムNCONT(Potterton et al., Acta Crystallogr. D59, 1131-1137 (2003))を用いて、実行した(表4)。当該解析により、配列番号2由来のアミノ酸残基N57およびA59が、結晶構造のFab−Fab相互作用に関連するアミノ酸群に属することが示された。
【表4】