(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738345
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】糖尿病の治療および分析に使用される修飾インシュリンに対する抗体
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20200730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20200730BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20200730BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
G01N33/53 N
A61K45/00
A61P3/10
A61K39/00 ZZNA
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-547121(P2017-547121)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公表番号】特表2018-511047(P2018-511047A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】GB2016050678
(87)【国際公開番号】WO2016146979
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】1504297.1
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512316611
【氏名又は名称】クイーン マリー ユニバーシティ オブ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】100101281
【弁理士】
【氏名又は名称】辻永 和徳
(72)【発明者】
【氏名】ニジム アフバ
(72)【発明者】
【氏名】ポジーリ パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ステロロ ロッキィ
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−090908(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0315904(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0129934(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101539579(CN,A)
【文献】
Peter Achenbach et al.,Mature high-affinity immune responses to (pro)insulin anticipate the autoimmune cascade that leads to type 1 diabetes,The Journal of Clinical Investigation,2004年,vol. 114, no. 4,589-597
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−3/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、被検者の1型糖尿病(T1D)を診断するための方法:
酸化的翻訳後修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
ここで、サンプル中の酸化的翻訳後修飾インシュリンに対する抗体の存在は被検者のT1Dを示す。
【請求項2】
該修飾インシュリンが非酵素グリケーション、または活性酸素種(ROS)によって修飾されたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ROSがスーパーオキシドラジカル(O2・−)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシル・ラジカル(・OH)、次亜塩素酸(HOCl)、一酸化窒素(NO・)およびペルオキシニトライト(ONOO−)から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該酸化的翻訳後修飾インシュリンが酸化的翻訳後修飾インシュリンのフラグメントである、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
インシュリン鎖Bが、21−30残基の1以上で酸化的翻訳後修飾されている、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
インシュリン鎖BのPhe24および/またはTyr26が酸化されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
サンプルが血液または血清であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在がELISA分析を使用して決定されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
被検者が糖尿病と診察されていないことを特徴とする請求項1から3、7または8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
T1Dが成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)である、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
被検者が2型糖尿病と診察されていることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
被検者がインシュリン自己抗体(IAA)、ICA、GADA、IA2Aおよび/またはZnT8Aを持っていないことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
以下を含む、T1DまたはLADAと診断された被検者の、T1DまたはLADAを治療する際に治療薬の治療有効性を決定するための方法:
i)被検者へ治療薬を適用する前に被検者から得られた第1のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;
ii)被験者へ治療薬を適用した後に被験者から得られた第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;および
iii)第1のサンプルと第2のサンプル中の、修飾インシュリンに対する抗体のレベルを比較すること;
ここで、第1のサンプルと比較された時に第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルの減少は、治療薬の治療有効性を示す。
【請求項14】
必要とされる被験者のT1Dの治療方法において使用するためのT1Dに対する治療薬であって、
酸化的翻訳後修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルがテストされており;
サンプル内の酸化的翻訳後修飾インシュリンに対する抗体の存在が識別されている。
【請求項15】
請求項1記載の被検者の1型糖尿病(T1D)を診断するための方法に使用されるキットであって、被検者からのサンプル中の酸化的翻訳後修飾インシュリンに対する抗体の存在を決定するための試薬を含むキット。
【請求項16】
被検者のT1DがLADAである、請求項15記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は1型糖尿病(T1D)のためのバイオマーカーに関する。本発明は、特にT1Dの診断、および薬へのT1Dを有する患者のレスポンスを予言する方法におけるそのようなバイオマーカーの使用に関する。
【0002】
発明の背景
1型糖尿病(T1D)は、膵臓中のインシュリンを生むβ細胞の破壊の結果としての、インシュリンの不足を特徴とする症状である。自己免疫は、β細胞をターゲットとする多くの自己抗体の産生に結びつく優勢なエフェクター機構であると考えられる。T1Dは、主として小児および40歳未満の成人に起こる。T1Dに利用可能な有効な療法は現在ない。
【0003】
酸化ストレスは、1型糖尿病(T1D)の病原論の重大なプレーヤーかもしれない。高血糖および炎症を起こした膵島に侵入する代謝的に活性な免疫細胞の大きな流入は、β−細胞微環境の内でのハイ・レベルの反応的なオキシダント種(ROS)の形成に帰着することがある。生産されることが知られている重要なROSとしては、スーパーオキシドラジカル(O
2・−)、過酸化水素(H
2O
2)、ヒドロキシル・ラジカル(・OH)、次亜塩素酸(HOCl)、一酸化窒素(NO・)、ペルオキシニトライト(ONOO−)、および高血糖の結果としてのグリケーション由来のオキシダントがある。ハイ・レベルのROSはβ−細胞自己タンパク質の酸化的翻訳後修飾(oxPTM)およびネオエピトープ、すなわち以前に免疫系に存在していないエピトープの形成を導くことが有り、したがって、免疫寛容を回避し、自己免疫を生成する。ベータ−細胞特異性抗原への自己免疫を引き起こすことにおけるROSの影響は、大部分は未知のままである。T1Dにおけるインシュリンに対する耐性のブレークダウンの理由は、ここまでミステリーのままだった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
30年以上前に、インシュリン自己抗体(IAA)がT1Dを有する被検者の中にあるという証拠がサイエンス(Palmerら、科学222:1337、1983年)中で公表された。IAAはT1Dの確立しているマーカーで、この疾病の予測に使用されることができる。しかしながら、それらは、新しく診断されたT1Dを有する患者の半分のみ、成人して診断された場合には、より少数の患者においてのみ検知される。さらに、IAAタイターは疾病の進行中に変動することが知られている。したがって、T1Dを診断するために使用することができる他のバイオマーカーの必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
発明者は、未変性のインシュリンではなく、活性酸素種(ROS)によって修飾インシュリンに1型糖尿病(T1D)の免疫反応が向けられるかもしれないことを驚くべきことに発見した。発明者は、T1Dのためのバイオマーカーとして、修飾インシュリンの抗体を使用することができることをさらに見いだした。特には、患者の中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を、T1Dを診断するために使用することができる。
【0006】
第1の態様では、本発明は、以下を含む、1型糖尿病(T1D)の診断方法を提供する:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
ここで、サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在は被検者のT1Dを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な記述
第1の態様では、本発明はT1Dを診断する方法に関する。言いかえれば、本発明は、被検者がT1Dを持っているかどうか判断する方法、またはT1Dのための試験法に関する。本発明の方法は分析法と記述することもできる。
【0008】
発明者は、新しい発病したT1Dを持った患者を診断するために発明の第1の態様の方法を使用することができることを見いだした。したがって、方法は、T1Dを持っているとの疑いをかけられる被験者からのサンプルに対して典型的に実行される。被検者は、T1Dの1以上の徴候、たとえば多渇症(多渇)、多尿症(多尿、頻尿)、多食症(食欲亢進)、減量、疲労および糖尿病性ケトアシドーシス(吐き気、嘔吐、腹痛、迅速な深いため息(rapid deep sighing)、漸進的な鈍麻および意識消失)の1つ以上の徴候を示していてもよい。方法は、T1Dのためにインシュリンまたは他の治療薬(例えばワクチン(例えば経口インシュリン、吸入されたインシュリンなど)または免疫抑制剤として適用された免疫治療薬(immunotherapeutics)で以前に治療されていない被験者からのサンプルに対して典型的に実行される。
【0009】
本発明の第1の態様の方法は修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすることを含んでいる。ここに使用されるような「修飾インシュリン(modified insulin)」は酸化的翻訳後修飾インシュリン(oxidative post−translationally modified insulin: oxPTM insqulin)を指す。「修飾インシュリン」、「oxPTMインシュリン」という用語は交換可能に使用される。
【0010】
インシュリンは、非酵素的グリケーションにより、または活性酸素種(ROS)により、またはアルデヒドを含む反応、またはそれらの組み合わせによりoxPTMインシュリンに修飾されることができる。ROSによって修飾されたインシュリンは本明細書ではROS−INSと呼ばれる。グリケーションによって修飾されたインシュリンはGLY−INSまたはGlyc INSと呼ばれる。
【0011】
活性酸素種としては、例えばスーパーオキシドラジカル(O
2・−)、過酸化水素(H
2O
2)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)、遷移金属イオン(例えば第一鉄、第二鉄、第一銅または第二銅塩)と組み合わされた脂質ヒドロペルオキシド、ヒドロキシル・ラジカル(・OH)(これは遷移金属イオン(例えば第一鉄、第二鉄、第一銅または第二銅塩)と組み合わされた過酸化水素による生物系でしばしば生成される)、次亜塩素酸(HOCl)、次亜臭素酸(HOBr)、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO
2・)、ペルオキシニトリット(ONOO・)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。当該技術分野での何人かの研究者は用語「反応的な窒素種」(例えばNO・)および「反応的な塩素種」(たとえばHOCl)をROSのサブグループと区別するために使用する。しかし、この明細書では、我々はその最も広い意味で用語ROSを使用している。
【0012】
グリケーションは、グルコース、リボース、または他の糖によって典型的に引き起こされる。インシュリンも、アルデヒド(例えばマロンアルデヒドおよび/または4−ヒドロキシノネナールを)含む反応によって化学的に修飾することができる。典型的には、修飾インシュリンは、活性酸素種(ROS)によって翻訳後に修飾される。本発明の実施態様では、ROSは、典型的に次亜塩素酸(HOCl)またはヒドロキシル・ラジカル(・OH)である。好ましくは、ROSはヒドロキシル・ラジカル(・OH)である。
【0013】
いくつかの実施態様では、修飾インシュリンは酸化されたインシュリンである。
酸化されたインシュリンは活性酸素種(ROS)によって翻訳後に修飾されたインシュリンである。いくつかの実施態様では、酸化されたインシュリンはジオキシダイズドインシュリンまたはトリオキシダイズドインシュリンである。
【0014】
インシュリンはA鎖とB鎖のタンパク質二量体である(
図2Bを参照)。いくつかの実施態様では、インシュリンB鎖は酸化によって修飾される。インシュリンB鎖は、位置1〜30での少なくとも1つ以上の残基で修飾されることができる。インシュリンB鎖は、残基1−13(FVNQHLCGSHLVE)の1つ以上、残基14−21(ALYLVCGE)の1つ以上、および/または残基21−30(ERGFFYTPKT)の1つ以上で修飾されることができる。いくつかの実施態様では、インシュリンB鎖は残基1−13(FVNQHLCGSHLVE)の1つ以上で修飾されている。他の実施態様では、インシュリンB鎖は残基14−21(ALYLVCGE)の1つ以上で修飾されている。他の実施態様では、インシュリンB鎖は残基21−30(ERGFFYTPKT)の1つ以上で修飾されている。
【0015】
いくつかの実施態様では、修飾インシュリンは、B鎖のHis5、Cys7、Tyr16、Phe24および/またはTyr26でROSによって修飾される。いくつかの実施態様では、His5、Cys7および/またはPhe24が、・OHおよび/またはHOClで修飾される。いくつかの実施態様では、Tyr16および/またはTyr26がHOClによって修飾される。ある実施態様では、B鎖のHis5、Cys7、Tyr16、Phe24および/またはTyr26が酸化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンは、B鎖のHis5、Cys7、Tyr16、Phe24および/またはTyr26で酸化される。
【0016】
いくつかの実施態様では、修飾インシュリンは、B鎖のHis5、Cys7、Tyr16、Phe24 Tyr26の1つ以上で酸化する。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のHis5で酸化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のCys7で酸化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のTyr16で酸化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のPhe24で酸化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のTyr26で酸化される。
【0017】
いくつかの実施態様では、修飾インシュリンは酸化、塩素化、グリケーション、カルボキシメチレーション、ホルミル化および/またはリボシル化によって修飾される。修飾インシュリンは、酸化されたインシュリン、塩素化されたインシュリン、グリケート化インシュリン、カルボキシメチル化インシュリン、ホルミル化インシュリンおよび/またははリボシル化(ribosylated)インシュリンであることができる。
【0018】
修飾インシュリンは、適切にはグリケーションにより翻訳後修飾されてもよい。いくつかの実施態様では、グリケーションはリボシル化である。好ましくは、グリケーションは、リボース、好適にはD−リボースによって引き起こされる。
【0019】
いくつかの実施態様では、インシュリンB鎖はグリケーションによって修飾される。インシュリンB鎖は、残基1−13(FVNQHLCGSHLVE)の1つ以上、残基14−21(ALYLVCGE)の1つ以上、および/または残基21−30(ERGFFYTPKT)の1つ以上で修飾されることができる。いくつかの実施態様では、インシュリンB鎖は残基1−13(FVNQHLCGSHLVE)の1つ以上で修飾される。他の実施態様では、インシュリンB鎖は残基14−21(ALYLVCGE)の1つ以上で修飾される。他の実施態様では、インシュリンB鎖は残基21−30(ERGFFYTPKT)の1つ以上で修飾される。
【0020】
いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のPhe1および/またはLys29でグリケート化される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはN末端で糖化される。N末端はB鎖のN末端であることができる。B鎖のN末端はPhe1であることができる。
【0021】
いくつかの実施態様では、N末端はリボシル化によって修飾される。いくつかの実施態様では、修飾インシュリンはB鎖のリシン残基で糖化されている。B鎖のリシン残基はLys29であることができる。いくつかの実施態様では、N末端はリボシル化によって修飾される。
【0022】
ここに使用される用語「修飾インシュリン」は、修飾インシュリンのフラグメント、つまりROS、または非酵素のグリケーションまたは本明細書に記載された他の方法によって修飾されたインシュリンのフラグメントを含んでいる。ROSによって修飾されたそのようなフラグメントは、「ROS−fINS」として言及される。したがって、本発明は修飾インシュリンまたはそのフラグメントに対する、抗体の存在または不在のために被検者からのサンプルをテストすることを含んでいる。修飾インシュリンのフラグメントは、たとえばマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMPs)またはROSでのインシュリンの分裂によって生成することができ、さらに追加のROSによって修飾されることができる。
【0023】
方法は修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすることを含んでいる。テストされる抗体は被検者の中にある修飾インシュリンに対する自己抗体である。抗体は、典型的に免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプまたはIgMまたはIgAアイソタイプである。1つの実施態様では、抗体はIgGである。
【0024】
サンプルは、修飾インシュリンに対する自己抗体を含むことがある被検者からの任意のサンプルである。典型的には、サンプルは血液、血清または血漿のサンプルである。好ましい実施態様では、サンプルは血液または血清のサンプルである。
【0025】
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在は任意の適切な方法または分析によって決定することができる。サンプル中の自己抗体を測定するために使用することができる利用可能な広範囲の異なるタイプの免疫測定法がある。典型的には、そのような抗体の存在または不在は、ELISA分析またはウェスタンブロッティングのような抗体−抗原結合に基づいた分析を使用して決定される。典型的なELISA分析では、抗原は表面へ付着される。修飾インシュリンのフラグメントの例は、以下の表1に示される。したがって、本発明では、例えばROS−INSのような修飾インシュリン、または修飾インシュリンのフラグメント、たとえばROSによって修飾されたインシュリンのフラグメント(ROS−fINS)が表面へ付着される。その後、特異性抗体(第1の抗体)が表面に適用され、抗原に結合する。本発明では、抗体は患者から取られたサンプル内にある。したがって、サンプルは方法のこのステップで表面に適用される。二次抗体(第2の抗体)が加えられ、それは第1の抗体に結合する。第2の抗体は酵素に結合し、次いで酵素の基体を含んでいる物質が加えられる。後の反応は検知できる信号、典型的には基体の色変化を生成する。信号の強さは第一の抗体の量を示す。検知できる信号が色変化である場合、分光計は色の強度に対する定量値を与えるためにしばしば使用される。
【0026】
1つの実施態様では、本発明の第1の態様に従う分析は、次のものを含む:
修飾インシュリンと被検者からのサンプルとを接触させること;
抗修飾インシュリン抗体に結合する標識抗体を加え、複合体を形成すること;および
抗修飾インシュリン抗体と標識抗体の間の複合体の形成を検知する;
ここで、前記複合体の検知は被検者内のT1Dを示す。
【0027】
本発明で使用されるELISA分析のような抗体抗原結合分析は、修飾インシュリン(例えばROS−INS)を、被験者から得られたサンプル中の抗体の目標として使用して行うことができる。そのような分析では、修飾インシュリンは例えばROS、たとえばHOCl、ONOO−、・OHまたはリボースを使用して、化学的修飾によって修飾インシュリンを生成することにより、抗体目標として調製することができる。適切なELISA分析では、サンプル(例えば血液、血清サンプル)からの自己抗体に結合するために、ELISAプレートはベートとして修飾インシュリンで覆われる。その後、サンプルは任意に加えられたバッファーと共にELISAプレートに加えられる。その後、任意に、反応しないタンパク質を、修飾インシュリンで覆われていないELISAプレートの全ての表面をブロックするために加えることができる。その後、酵素(たとえばホースラディシュ・ペルオキシダーゼ)を加えることができる。酵素は、典型的にサンプルからの抗体に結合するための抗ヒトIgG抗体に結合される。最後に、基体(例えば色素形成基質、たとえば3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)が、加えられる。その後、活性は、たとえば光電密度(OD)の測定のような適切な方法を使用して決定することができる。あるいは、適切な方法として、蛍光発生または電気化学発光なリポーターを使用することができる。修飾インシュリンにふさわしいELISA分析は、実施例に述べられる。
【0028】
他の修飾インシュリンにふさわしい分析は以下を含む:MULTI−ARRAY(登録商標)技術に基づき、様々な抗原(例えば異なる修飾を受けたインシュリン)の同時分析を許容する、Meso Scale Discovery から利用可能な多重分析;
多重ビーズに基づいた流動細胞計測法(例えばBD(登録商標)の血球計算ビーズ・アレイ)(Cytometric Bead Array:CBA);およびたとえばBiacoreから利用可能な、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づいたシステム。
【0029】
本発明のいくつかの実施態様では、被検者からのサンプルはコントロールまたは対照試料と比較される。対照試料は、典型的にはT1Dに苦しんでいないと知られている被験者(例えば健康なコントロール被験者)から取られたサンプルである。しかしながら、対照試料は、さらにたとえばT1Dの徴候を示すがT1Dの臨床上の証拠を示されない個人からのものであることができる。対照試料は2型糖尿病の患者からのものでありえる。
【0030】
さらなる実施態様では、参照の陽性および/または陰性の対照試料が使用される。他の実施態様では、非変性のインシュリン(つまり修飾されていないインシュリン)がコントロールとして使用される。他の実施態様では、非変性のヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA)、またはROS修飾されたBSAまたはHSAが、コントロール抗原として使用される。別の実施態様では、コントロール抗原はめんどり卵リゾチーム(HEL)である。
【0031】
本明細書に記載された本発明の第1の態様の方法、および本発明の他の態様の方法では、修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在は、コントロールまたは対照試料、典型的には修飾インシュリンに対する抗体を含まないと知られている対照試料との比較によって決定することができる。被験者からのサンプルが、修飾インシュリンまたはそのフラグメントに対する抗体を対照試料と比較して著しく高いレベルで含む場合には、被験者中の修飾インシュリンに対する抗体の存在が確認される。反対に、被験者からのサンプルが、修飾インシュリンまたはそのフラグメントに対する抗体を対照試料と比較して著しく高いレベルで含まない場合には、被験者中の修飾インシュリンに対する抗体の不在が確認される。修飾インシュリンまたはそのフラグメントに対する抗体の存在は、たとえばサンプル対対照試料での抗体の量の有意差を見つけることにより決定することができる。
既知の統計的検定、たとえばWilcoxon順位和テスト(Wilcoxon signed rank sum)またはマン・ホイットニー検定(Mann−Whitney test)を使用することができる。
【0032】
被験者は典型的に人間の被験者である。しかしながら、本発明の方法は、さらに獣医学の分野に使用されることができる。したがって、動物の糖尿病を診断するために使用することができ、典型的に哺乳類、例えば、コンパニオン・アニマル(たとえば猫と犬)、農業的動物(たとえば馬、雌牛、ブタおよび羊)、あるいは他の哺乳動物(たとえばハツカネズミ、ネズミ、ウサギまたは猿)に使用することができる。
【0033】
本発明の方法は、先に被検者から得られたサンプルに対して典型的に実行される。このように、サンプル採取は典型的には本発明の方法の一部を形成しない。また、本発明の方法は、被検者から得られたサンプルに対して実行される。本発明のいくつかの実施態様では、しかしながら、方法はさらにサンプルを採取することを含み、たとえば血液サンプルの採取、または任意の引き続く血液サンプルからの血清サンプルの調製を含む。
【0034】
T1Dに関連した主な自己抗体としては、インシュリン自己抗体(IAA)、膵島細胞抗体(ICA)、グルタミン酸脱炭酸酵素自己抗体(GADA)およびインシュリノーマ−関連−2自己抗体(IA−2A)を含んでいる。IAAは、T1Dの中の重要な診断・予後のツールになっていたが、IAAの診断鋭敏度は高くない(約50%)。ICAは、およそ70%の新しく発病したT1Dのコーカサス人の患者で検知された。診断に続いて、ICA度数は減少し、患者の10%未満は、10年後でも依然ICAを発現する。T1Dの発病者の約60%はGADAを発現する。IA−2AおよびIA−2BAは1型糖尿病の新しい発病者の60%以上で観察される。亜鉛輸送体−8(ZnT8)は、T1Dにおける新規の自己抗原であると最近確認された。ZnT8(ZnT8a)への自己抗体はT1Dの新しい発病者の最大80%で検知された。
【0035】
発明者は、インシュリンとの自動反応性が一部分、β−細胞微環境の中にあるオキシダントによるインシュリンの酸化的翻訳後修飾(oxPTM)に起因する新抗原によることを示した。
【0036】
したがって、IAA、ICA、GADA、IA2AまたはZnT8Aには陰性のテスト結果が出る患者を診断するためにそれを使用することができるので、本発明はT1Dの改善された診断のための新たな方法を提供する。
【0037】
従って、1つの実施態様では、本発明は、被検者が検知できるレベルのIAA、ICA、GADA、IA2Aおよび/またはZnT8Aを発現しない場合における、T1Dを診断する方法を提供する。
【0038】
自己抗体の存在または不在を決定するテストは当該技術技術で知られている。
これらはラジオバインディングアッセイ(RBA)、放射免疫定量法(RIA)、電気的化学発光(electrochemiluminescent)分析(ECL−IAA)およびELISAを含んでいる。
【0039】
本発明の第1の態様の方法は、被検者のT1Dの診断方法を与える。したがって、本発明の方法は、T1Dを治療する方法と共に使用することができる。
【0040】
従って、本発明の第1の態様は、さらに以下を含む、必要のある被検者において1型糖尿病(T1D)を治療する方法まで及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
被検者へのT1Dのための治療薬を適用すること。
【0041】
治療薬は、典型的にインシュリン、ワクチンとして適用される免疫治療薬(例えば経口インシュリン、吸入インシュリンなど)、または免疫抑制剤である。最も典型的には、治療薬はインシュリンである。
【0042】
本発明のこの実施態様は、さらに以下を含む、必要とする患者における1型糖尿病(T1D)の治療方法において使用される治療薬まで及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
患者へT1Dのための治療薬を適用すること。
【0043】
本発明のこの実施態様はさらに、以下を含む方法により、その必要のある被検者のT1Dの治療のための医薬品の製造における、1型糖尿病(T1D)の治療薬の使用に及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
患者へT1Dのための治療薬を適用すること。
【0044】
2型糖尿病(T2D)は通常成人で診断される代謝異常であり、不十分な量のインシュリンを生産するか、身体が高い血糖レベルに帰着するインシュリン抵抗性を発現することを特徴とする。T2Dに対する治療法はない。しかし、症状は運動と薬剤を通じて管理することができる。外因性のインシュリンをとる必要は通常ない。
【0045】
T2D薬剤の例としては、ビグアニド(たとえばメトホルミン)、酵素抑制因子(たとえばアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびアルファ−グルコシダーゼ阻害剤)、スルホニル尿素(たとえばグリブライド、グリピジド、グリメピリド、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミドおよびトラザミド)、メグリチニド(meglitinides)(たとえばレパグリニド(repaglinide))、チアゾリジンジオン(たとえばトログリタゾロン(troglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazone)およびロジグリタゾン(rosiglitazone))およびインシュリンとインシュリンのアナログ(たとえばリスプロ(lispro))がある。
【0046】
自己免疫は典型的にT2Dに関係していないが、T2Dと診断された人々の最大25%は高いレベルの自己抗体を有する。T2Dの幾分かの人々は、糖尿病薬剤に無反応になり、糖尿病をコントロールするためにT1D患者の場合でのようにインシュリンを必要とする。症状が1型糖尿病になる前に2型糖尿病として始まるので、糖尿病のこの形式は、成年期の潜伏した自己免疫糖尿病(LADA)またはタイプ1.5糖尿病として知られている。第2の態様では、本発明は、以下を含む、被検者の成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)を診断する方法を提供する:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
ここで、サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在は被検者のLADAを示す。
【0047】
本発明の第2の態様の方法は、T2Dを持つことが知られている被験者からのサンプルに対して典型的に実行される。従って、本発明の第2の態様の1つの実施態様では、被検者はT2Dを持っているか、またはT2Dを持っていたと診断される。別の実施態様では、被検者は、たとえば多渇症(多渇)、多尿症(頻尿)、多食症(食欲亢進)、減量および疲労の1つ以上の徴候を示すので、T2Dを持っているとの疑いをかけられる。
【0048】
第2の態様の実施態様では、サンプルは血液または血清のサンプルである。別の実施態様では、インシュリンは、ROSよって翻訳後に修飾される。ROSは、典型的に次亜塩素酸(HOCl)またはヒドロキシル・ラジカル(・OH)である。好ましくは、ROSはヒドロキシル・ラジカル(・OH)である。
【0049】
別の実施態様では、インシュリンはグリケーションによって修飾される。好ましくは、グリケーションはリボースによって引き起こされる。
【0050】
本発明の第2の態様の方法は、被検者のLADAの診断を与える。したがって、方法はLADAを治療する方法と共に使用することができる。
【0051】
従って、本発明の第2の態様は、さらに以下を含む、必要のある被検者において成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)を治療する方法まで及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
被検者へLADAのための治療薬を適用すること。
【0052】
治療薬は典型的にインシュリン、ワクチンとしての免疫療法薬剤(例えば経口インシュリン、吸入されたインシュリンなど)または免疫抑制剤として適用される。
最も典型的には、治療薬はインシュリンである。
【0053】
本発明のこの実施態様は、さらに必要とする患者で成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)を治療する以下を含む方法において使用されるための、LADAの治療薬に及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
被検者へLADAのための治療薬を適用すること。
【0054】
本発明のこの実施態様はさらに、以下を含む方法により必要のある被検者のLADAの治療のための医薬品の製造における、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)の治療薬の使用に及ぶ:
修飾インシュリンに対する抗体の存在または不在に関して被検者からのサンプルをテストすること;
サンプル中の修飾インシュリンに対する抗体の存在を識別すること;および
被検者へLADAのための治療薬を適用すること。
【0055】
第3の態様では、本発明は、oxPTMインシュリンに関連した疾病を治療するための治療薬の治療の効能を決定する方法を提供する。
【0056】
第3の態様の実施態様では、その病気はT1Dである。別の実施態様では、その病気はLADAである。
【0057】
第3の態様によれば、T1DまたはLADAを治療する治療薬の治療有効性は、以下のように決定される:
i)被検者へ治療薬を適用する前に被検者から得られた、第1のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;
ii)被検者へ治療薬を適用した後に被検者から得られた、第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;および
iii)1番目と2番目サンプル間の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを比較すること;
ここで、第1のサンプルと比較された時に第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルの減少は、治療薬の治療有効性を示す。
【0058】
いくつかの実施態様では、方法は、さらに被検者から1番目および第2のサンプルを得て、被検者への治療薬を適用するステップを含んでいる。従って、本発明の第3の態様の1つの実施態様では、T1DまたはLADAを治療する治療薬の治療有効性は、以下により決定される:
i)被検者から第1のサンプルを得ること;
ii)第1のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;
iii)被検者への治療薬を適用すること;
iv)被検者から第2のサンプルを得ること;
v)第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを決定すること;および
vi)1番目と2番目サンプル間の修飾インシュリンに対する抗体のレベルを比較すること;
ここで、第1のサンプルと比較された時の第2のサンプル中の修飾インシュリンに対する抗体のレベルの減少は、治療薬の治療有効性を示す。
【0059】
ここに使用されるように、用語「治療薬」は被検者に適用された時に所望の生物学的または薬学的結果を提供する化合物を指す。
T1DまたはLADAを治療する治療薬の例としては、インシュリン、ワクチンとしての免疫療法薬剤(例えば経口インシュリン、吸入されたインシュリンなど)または免疫抑制剤として適用されるが、これらに制限されない。
【0060】
本発明の第3の態様の方法は、被検者がそのような糖尿病薬剤(つまりT1DまたはLADAを治療する治療薬)に応答するかどうかを識別するための方法である。「糖尿病薬剤に応答する」とは、糖尿病薬剤による治療に応答することをいう。言いかえれば、患者の中のT1Dの症状の重症度を低下させて、血糖、HbA1cおよびCペプチドによって測定されるようなグルコース制御を改善することをいう。糖尿病薬剤による治療に対する反応は、糖尿病薬剤による治療前後に血糖コントロールを評価することにより決定することができる。
【0061】
本発明の第3の態様の方法は、以前に治療されたか、現在1つ以上の糖尿病薬剤で治療されている被検者からのサンプルに対して典型的に実行される。この態様では、本発明は、患者が1つ以上の糖尿病薬剤(つまりT1DまたはLADAを治療する治療薬)による療法に応答するかどうかをモニターする方法に関する。
【0062】
本発明の第3の態様の方法は、T1DまたはLADAを治療するために患者が治療薬に応答するかどうかの指標を与える。したがって、本発明の第3の態様は、さらにT1DまたはLADAの治療(つまり、被検者へのT1DまたはLADAのための治療薬を適用すること)のために治療薬で患者を治療するステップを含む方法を包含する。治療薬は典型的にインシュリン、ワクチンとしての免疫療法薬、または免疫抑制剤である。
【0063】
本発明のすべての態様中で、治療法は人間または動物の被験者に行うことができる。また、人間用の医薬および獣医学における薬剤の使用に及ぶ。T1DまたはLADAを治療する治療薬は、「治療上有効な量」で被検者に好ましくは適用される。これは、T1DまたはLADAの1つ以上の徴候を改善するか、除去するか、防ぐか、および/または被検者に有益性を示すのに十分な量をいう。ここに使用されるように、「治療」は人間または非ヒト動物(好ましくは哺乳動物)に役立つことができるあらゆる処方を含んでいる。その治療は既存の症状に関してあるか、または予防的(予防的治療)であることができてもよい。治療は、典型的に、「その必要のある」、すなわちT1DまたはLADAに罹患している患者に適用される。
【0064】
この実施態様では、T1DまたはLADAを治療する治療薬がインシュリンである場合には静脈内投与されるが、T1DまたはLADAを治療する治療薬を患者に適切なルート、たとえば経口(バッカルまたは舌下腺を含む)、経鼻的、局所的(経皮的を含む)、非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内および皮内を含む)によって供される。T1DまたはLADAを治療する治療薬は、薬学の技術において既知の方法、たとえば医薬品組成物を形成するために無菌条件の下でキャリアーまたは補形薬と治療薬を混合することにより、調剤することができる。従って、1つの実施態様では、被検者は、T1DまたはLADAを治療するための治療薬および1つ以上のキャリアーおよび/または添加剤を含む医薬品組成物が投与される。
【0065】
T1DまたはLADAを治療する治療薬は、1つ以上の他の治療上活性な薬と共同して適用することができる。従って、本発明のこの実施態様に従う使用のための医薬品組成物は、T1DまたはLADAを治療するための治療薬に加えて、1つ以上の他の治療上活性な薬をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明での使用のためのT1DまたはLADAの治療薬および/または医薬品組成物の投与量は、たとえば使用される具体的な治療薬、年齢および患者の疾病段階に依存して広い範囲間に変わり、医師は最終的に使用される適切な量を決定するだろう。
【0067】
投与は適切な回数で繰り返すことができる。
副作用が発現する場合、投与量および/または投与頻度は通常の医療実績に従って低減することができる。
【0068】
第4の態様では、本発明は被検者のT1DまたはLADAを診断するためにキットを提供する。キットは修飾インシュリンに対する抗体の存在を決定するための1つ以上の試薬を含む。キットは、包装され、ラベルが貼られ、たとえばキットの必要な要素を含む箱または包装容器内に提供される。また診断キットの使用についての指示を含むことができる。
【0069】
いくつかの例では、本発明のキットはT1DまたはLADAを発現する被検者の危険を予言するのに役立つことができる。
【0070】
本発明は、例示のみのために提示される以下の例によりさらに記述される。例において、以下の図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】ゲル電気泳動法および3D蛍光による非変性および修飾インシュリンの分析。A: 反応的なオキシダントによって修飾されたインシュリン(INS)、リボースによるグリケーション(Glyc INS)、・OH(・OH−INS)、またはHOCl(HOCl−INS)の硫酸ドデシルナトリウム(SDS)および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)分析。分子量マーカー(kDa)の位置は左のパネルに示される。非変性PAGEは、より遅い可動性の2本のバンドの出現により、リボースによるグリケーション後のインシュリンの可動性の明瞭な低下を示した。HOClおよび・OH−ジェネレーティング・システムへのインシュリンの暴露は、追加のより遅い可動性バンドの出現、および切断を示唆するライン全体を通してのタンパク質のスメアを引き起こした。B: グリケーション、HOClおよび・OHによって修飾されたインシュリンおよび非変性のインシュリンの三次元蛍光プロフィール。HOClまたはリボースでのインシュリンの修飾は、図中の垂直および水平の線および図中の数字によって示されたEmmaxおよびExmax波長の本質的な変化に帰着した。・OHでの修飾は自然蛍光の損失に帰着し、非変性の分子の集合を示唆する光散乱の増加を示した。
【0072】
【
図2】質量分析による非変性および修飾インシュリンの分析A: 未変性のおよびROSにより修飾されたインシュリンのMALDI−TOF分析。非変性のインシュリンは、m/z 5,807.65daにピークを示した;リボースによるグリケーションの後、4つの追加のピークが132Daの質量差で現われ、これらはモノ−、ジ、トリ、およびテトラ−グリケート化インシュリンフォームに対応する。HOClへの暴露は、未変性のフォームと比較してより低いm/zで追加のピークを発現し、これは分解産物の形成がオキシダントとの反応によって引き起こされたことを示す。m/z 5,824(+16)のピークは・OHで修飾されたインシュリンについて示された。非変性のインシュリンと・OH−インシュリンの間の質量差は16Daであり、これは1つの酸化に相当する。B: ROS修飾インシュリンのMS/MSの分析は次のことを示した:・OHとHOClにより引き起こされた主な酸化的変化は、B鎖のHis5、Cys7およびPhe24を含んでいた(上および左側のボックス「未知の酸化+134 Da(C)」。さらに、HOClでの処理は、Tyr16およびTyr26上の塩素種の生成を引き起こした(右側ボックス、「3−クロロチロシン、3,5−ジクロロチロシン」)。一方、リボースによる主な修飾は、B鎖のN末端Phe1およびLys29を含む。斜線部分は免疫優勢のエピトープB9:23を示す(下側、左側ボックス「カルボキシメチル、ホルミル、リボース」)。
【0073】
【
図3】非変性および修飾インシュリンへのT1D血清の結合:A:T1DまたはT2Dに罹患した患者、および健全者のコントロールからの血清サンプルによってインシュリンに結合するELISA。非変性(NT−INS)およびリボース(GLY−INS)、HOCl(HOCl−INS)およびOH(・OH−INS)によって修飾されたROSインシュリン(ROS−INS)に対する反応性は、T2Dおよび健全なコントロールと比較して、T1Dにおいて著しくより高かった(p<0.001)。ROS−INSに対する結合は、T1Dにおいて非変性のINSによりも著しく高かった(p<0.0001);ROS−INSに対する結合は、インスリン療法の後でも非変性のものより高いままだった(P<0.001)。診断時、および診断後6−12か月の結合が示される。B:非変性およびROS−INSに対する結合がウエスタンブロットで調べられた。非変性のインシュリン、および・OH−INSおよびHOCl−INSのより小さな可動性フラグメントのスメアに結合するより強い強度が観察された。GLY−INSへの結合は見られなかった。C:ELISAによるヒドロキシル・ラジカル修飾されたインシュリンへの血清の結合血清結合は、ヒドロキシル・ラジカル・ジェネレーティング・システムの中で使用される二価金属によるインシュリン六量体化にものを除外するために、インシュリンは、H
2O
2がない状態でCuCl
2(4.5 mM)に暴露されて、H2O2(9 mMのみに暴露された場合と比較されたか、またはフェントン反応(CuCl
2+H
2O
2)によるヒドロキシル・ラジカル・ジェネレーティング・システムと比較された。Cu
2+の存在下でのインシュリンのインキュベーションは、H
2O
2が存在する状態でののみ反応を増加させ、増加したELISA結合へのフェントン反応の関与が確認された。
【0074】
【
図4】グルコース制御と年齢と、非変性および修飾インシュリンとの関係A:1型糖尿病患者からのサンプルの非変性および修飾インシュリンへの結合は、グルコース制御(たとえば空腹時血漿グルコースおよびHbA1cの指数と関係がなかった(0.07<ρ<0.16、P>0.132)。B:非変性およびグリケート化されたINSは、年齢と逆の関係を示した(それぞれρ=−0.20、P=0.031、P=0.029およびρ= −0.21);年齢による差は、2つの他のROS−INSでは見られなかった(−0.14<ρ<−0.08およびP>0.130)。
【0075】
【
図5】非変性のインシュリン(NT−INS)およびoxPTM−INSへの1型糖尿病血清の結合(A) 1型糖尿病の患者、2型糖尿病の患者および健全なコントロールからの血清サンプルによるインシュリンに結合するELISA 2型糖尿病および健全なコントロールと比較して、NT−INSおよびoxPTM−INSとの反応は、1型糖尿病の人々からのサンプルにおいて著しくより高かった(p<0.001)。1型糖尿病の患者からのサンプル中において、oxPTM−INSへの結合はNT−INSに対するよりも著しく高かった(p<0.0001)。(B) IAAのレベルは、1型糖尿病の患者および健康な生徒の同じグループの中のRBAによって評価された。(C−E)インスリン療法前後での、ELISAによる(C)NT−INS(p<0.0001)および(D)HOCl−INS(p=0.007)に結合する抗体の期間変化、および(E)RBA(p<0.0001)によって評価されたインスリン抗体の期間変化
【0076】
【
図6】oxPTM−INSへの血清結合特異性 非変性のインシュリン(NT−INS)の非存在下での、oxPTM−INSと1型糖尿病血清サンプルのプレインキュベーションは、oxPTM−INSへの結合が強く抑制され、oxPTM−INSに特異的な抗原結合部位の存在を示した。データはoxPTM−INSの例として、・OHにより修飾されたインシュリンについて示された。
【0077】
実施例
例1 − ROSによるインシュリンの修飾
発明者は、反応的なオキシダント(たとえばヒドロキシル・ラジカル(・OH)、(酸化塩素酸(HOCl)、およびリボースに暴露されたインシュリンおよび非変性のインシュリン両方への反応に関して、発病初期のT1D患者のコホートをテストした。その後、構造の修飾は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)、3D蛍光および質量分析(MS)によって分析された。SDS−PAGE分析では、ROSでの修飾インシュリン(ROS−INS)および非変性のインシュリンは、可動性の有意差は無く5kDaの領域に移動したが、5kDaメジャーバンドの上のスメア(smear)がROS−INSで観察された(
図1A、SDS−PAGE)。非変性PAGE(non−denaturing PAGE)では、非変性および修飾インシュリンの間の差が現われた。リボースによるグリケーションの後、2本の追加のバンドとインシュリン・バンドの位置の明瞭なシフトが現れ、これらはすべてより遅い可動性を示す。インシュリンの・OH−ジェネレーティング・システムおよびHOClへの暴露は、タンパク質のスメアと共に、追加のより遅い可動性バンドを発現した。これらの全体のラインは切断を示唆する(
図1A、非変性PAGE)。
【0078】
その後、ROS修飾のインシュリンの構造変化への影響を決定するために、発明者は、上で非変性およびROS−INSに関する3D蛍光プロフィール研究を行なった(
図1B)。ある自家蛍光(intrinsic fluorescence)は、最大励起 Exmax=279nmおよび最大放射Emmax=318nmで非変性のインシュリンにおいて検知できた。それはチロシン残基に帰することができる。リボースでのインシュリンの修飾は、326および452nmへのExmaxおよびEmmaxの本質的なシフトに帰着し、HOClでの修飾はExmax=336およびEmmax=431nmに帰着した。それは、インシュリン構造の変化を意味する。・OHでの修飾は、非変性の分子の集合を示唆する光散乱の増加および蛍光の損失に帰着した。
【0079】
その後、非変性および修飾インシュリンは高分解能質量分析(MS)によって分析された。非変性のインシュリンは、インシュリンの分子量に対応するm/z 5,807.65Daでピークを示した。リボースによるグリケーションの後、4つの追加のピークが、インシュリンへのリボース分子のモノ−、ジ−、トリおよびテトラグリシル化を示す132Daの質量差で現われた。HOClへの暴露は、非変性の形体に比較してより低いm/zで追加のピークの発現を引き起こした。これは分解産物の形成がオキシダントとの反応によって引き起こされたことを示す。m/z 5,824(+16)のピークは、・OHにより修飾されたインシュリンについて示された。非変性のインシュリンと・OH−インシュリンとの間の質量差は16Daだった。これは1つの酸化に相当する(
図2A)。
【0080】
MS/MS分析は、主な酸化的変化がB鎖において、Phe1およびLys29(グリケーション)、His5、Cys7、Phe24(・OHとHOCl)、Tyr16およびTyr26(HOCl)で起きていることを示唆した(
図2B、表1)。インシュリンのグリケーションがB鎖のN末端Phe1および Lys29を含んでいることを示す従来の研究と観察結果は相関する。同様により中央での酸化は、Try16と26、Phe24とCys19を変化の好ましい部位とする前の報告書とも相関する。
【0081】
表1:インシュリンB鎖のMS/MSの分析。表は、ペプチドB:1−13(FVNQHLCGSHLVE)、B:14−21(ALYLVCGE)およびB:21−30(ERGFFYTPKT)に関する主な酸化的翻訳後修飾(PTMs)を示す。変更はA鎖では検知されなかった。下線を付した残基は、関連する酸化PTMの位置を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
例2 − T1D患者からの血清中の非変性およびROS−INSに結合する抗体
T1D患者からの血清中の非変性とROS−INSに結合する抗体を比較するために、非変性およびROS−INSはELISAの目標として使用された。コントロールとして、2型糖尿病(T2D)患者と、健康な被験者からのサンプルが使用された。外因性のインシュリンに対する抗体による干渉を回避するために、インスリン療法が始められる前のT1D患者の平均年齢は13.90±0.77年とした(表2)。非変性とROS−INSとの反応性は、T1D患者のそれぞれ34%および79%であり、非変性のインシュリン、HOCl−INSおよび・OH−INSへの結合についての平均±SD ODはそれぞれ0.22±0.13、0.35±0.14および0.39±0.14であった(
図3A)。HOClおよび・OH−INSへの結合は、非変性のインシュリンへの結合と比較して著しく高かった(P<0.0001)。逆に、グリケート化されたインシュリンは、非変性のインシュリンと比較して結合の著しい減少を示した(P=0.018、0.22±0.13 vs 0.16±0.08)。HOClおよび・OH−INSの結合は、T2Dおよび健康な被験者よりT1D血清においてより高かった(P<0.0001)。T2Dでは、非変性のインシュリン、糖化されたINS、HOCl−INS、および・OH−INSに対して、それぞれ4%、0%、3%および28%を測定した。健康な個人では、3%の結合が非変性およびROS−INSの両方に観察された(表3)。T1Dを持った患者の中のHOCl−INSへの自己抗体結合の感度および特異性は、健全なコントロールと比較してそれぞれ79.31%および97.14%だった。またT2Dと比較してそれぞれ65.52%および96.34%だった。しかしながら、・OH−INSへの反応性はT1Dの患者ではT2D患者と比較して低い特異性を有し、76.72%および71.95%の感度および特異性を有していた。興味深いことには、外因性のインシュリンによる処理は、ROS−INSに結合する長期間での抗体中の有意差を引き起こさなかった(P>0.092)が、非変性のインシュリンへの結合はわずかに(OD 0.188±0.11対0.218±0.12;P=0.011)増加した。恐らく外因性のインシュリンに対する免疫反応が誘発されたのだろう。全体として、6−12か月の時間枠では、ROS−INSへの結合は、非変性のINSによりも著しく高いままだった(P<0.0001;
図3A)。
【0084】
oxPTMによって引き起こされた構造のネオエピトープ(neo−epitopes)よりも修飾されたアミノ酸に結合する可能性を除去するために、コントロール抗原への反応のテストが行われた(表3)。従って、我々は、結合がCu
2+にインシュリンを暴露することによる・OH−ジェネレーティング・システムに使用される二価金属によるインシュリン六量体化による可能性を除外した。したがって、抗修飾インシュリンの免疫の認識は特異的で、oxPTMによって引き起こされたインシュリンネオエピトープに向けられた。その後、ウエスタンブロット解析が、ELISAで最も強い結合を示した一連の血清サンプルについて行なわれた。非変性のインシュリンについては、5kDaの領域中のフラグメントへの結合は明白だった。しかし、これはグリケーションの後に失われた。・OH−INSおよびHOCl−INSへの結合はより強く、非変性のINSより遅い可動性を有する拡散されたフラグメントに向けられた(
図3B)。ウエスタンブロット解析はELISA結果を確認し、異なるROSジェネレーティング・システムによって引き起こされた新エピトープの内因性の特異性(intrinsic specificities)の存在を示唆した。健全なコントロールからの血清サンプルはインシュリン・フォーマットのうちのどれにも結合しなかった(データは示されない)。
【0085】
表2:研究された個体群の臨床および生化学的特徴。1型糖尿病(T1D)、2型糖尿病(T2D)および健全なコントロールの性別、年齢および代謝パラメータ。データは平均値±標準誤差である。
【0086】
【表2】
【0087】
表3:未変性およびROS−INSへの結合
健康な被験者の97.5パーセンタイルより上のELISA ODレベルは、上がったと定義された。コントロール2型糖尿病(T2D)および健康な個人と比較して、非変性および反応的なオキシダント(ROS−INS)によって修飾されたインシュリンへの結合は、1型糖尿病(T1D)においてより高かった(P<0.001)。T2Dにおいては、・OH(・OH−IAA)により修飾されたインシュリンへの結合は、健康な被験者よりも高く、T1Dより低かった。血清中のROSインシュリンへの結合が、所定の修飾アミノ酸への特異的結合に帰することができた可能性を除去するために、我々は無関係の非変性およびROS修飾されためんどり卵リゾチーム(HEL)を結合用の目標抗原として使用してテストした。すべてのグループの中で、抗グリケート化された、および・OH−修飾HELの抗体は非変性のHEL抗体より低かった。一方、HOClで修飾されたHELへの結合だけが、非変性のHELより高い傾向があった。
【0088】
【表3】
【0089】
例3 − グルコース制御と年齢と、未変性およびROS−INSの関係
他のROS抗原に示されるように(Strollo、Diabetologica、2013年3月、Vayら、Diabetologica 2000年11月)、診断時の抗非変性−INS(anti−native−INS)およびROS−INSの両方のレベルは、血糖またはHbA1cと関連していなかった(0.07<ρ<0.16およびP>0.132;
図4A)。従って、Vardiら(Diabetes Care、1988年10月)によって実証されるように、抗非変性の−INSは、年齢と逆相関する(ρ= −0.20、P=0.031)が、抗−ROS−INSについては年齢とは相関が無かった(−0.14<ρ<−0.08およびP>0.130、
図4B)。興味深いことには、小標本サイズに限られるが、発明者はT1Dに関係していると知られていたDRB1*03またはDRB1*04とHLAとの明瞭な関連を見つけられなかった(表4)。HLA特異性が抗−ROS−CIIに関係していたとのこの結果は発明者の従来の研究(Strolloら、2013年3月)と反対である。
【0090】
表4:HLA−DRB1および抗−ROS−INS反応性。抗−ROS−INSは1型糖尿病の中のHLA−DRB1遺伝子型と関係がない。完全なDR分類は90タイプの1型糖尿病被検者に利用可能だった。DRB1
*Xは、DRB1
*04、DRB1
*03と等しくない。
【0091】
【表4】
【0092】
例4 − T1D患者とコントロールの個人におけるROS−INSへの抗体結合
T1D患者とコントロールの個人におけるROS−INSへの抗体結合
1型糖尿病の個人からの血清中の非変性のインシュリン対ROS−INSに結合する抗体を評価するために、非変性のインシュリンおよびROS−INSは、ELISAの目標として使用された。コントロールとして、健康な生徒および成人のグループからのサンプルが使用された。外因性のインシュリンに対する抗体に対する干渉を回避するために、患者がインスリン療法を始める前の、1型糖尿病(平均±SE年齢13.90±0.77年)の患者からのサンプルが、診断時に得られた(表4)。HOCl(HOCl−INS)および・OH−INSの修飾されたインシュリンへの結合は、非変性のインシュリンに結合するより著しく高かった。1型糖尿病の患者の非変性のインシュリンおよびROS−INSへの反応は30%および84%と測定された。非変性のインシュリン、HOCl−INS、・OH−INSへの結合についてのメジアン吸光度はそれぞれ、0.043±0.012、0.183±0.012および0.231±0.013だった(p<0.0001、
図5a)。グリケート化されたインシュリンへの結合は、非変性のインシュリンに比較して著しく低い(吸光度0.007±0.006、p<0.0001、データは示されない)。コントロール抗原HELおよびoxPTM−HELの抗体は、1型糖尿病患者の参加者のの5%および3.5%のみに存在していた(データは示されない)。HOCl−INSおよび・OH−INSへの結合は、2型糖尿病および健康な個人の参加者からの血清よりも1型糖尿病の参加者からの血清においてより高かった(p<0.0001)。1型糖尿病の患者の中のROS−INS反応の感度および特異性は、健康な生徒と比較してそれぞれ84%および99%であり、また2型糖尿病の患者と比較してそれぞれ66%および99%だった。
【0093】
血清反応が、糖尿病の臨床的発症の時の同化作用の変質(metabolic alteration)によった可能性を除外するため、1型糖尿病の69人の患者での結合がインスリン療法の後に長期間評価された(
図5c−e)。インスリン療法は、非変性のインシュリンへの結合のわずかな増加を引き起こした(メジアン吸光度、0.040±0.014、対、0.083±0.026;p<0.0001)、およびHOCl−INS(メジアン吸光度、0.187±0.019、対、0.262±0.024;p=0.007)への結合も増加したが、・OH−INSでは増加しなかった(データは示されない)。
全体として、ROS−INSへの結合は非変性のインシュリンに対するよりも著しく高いままだった(p<0.0001)。三回のイントラアッセイCVは、<8%(平均4%、n=10)だった。イントラアッセイCVは、非変性のインシュリンおよびROS−INS(n=12)についてそれぞれ<10%(平均6%)および<13%(平均6%)だった。
【0094】
表5:個体群の臨床・生化学的特徴。
1型糖尿病(T1D)、2型糖尿病(T2D)および健全なコントロールの性別、年齢および代謝パラメータ。データは平均±標準誤差である。
【0095】
【表5】
【0096】
ROS−INS ELISAとラジオバインディングアッセイ(RBA)の間の比較も行なわれた。診断時、ROS−INS(・OH−INSおよび/またはHOCl−INS)と、RBAでのIAAの反応は、1型糖尿病の参加者の84%および61%と測定された(
図5a−b)。ROS−INS抗体の感度は、特異性は両方の分析で99%だった一方、RBAによって測定されたIAAについては84%対61%だった(p=0.0001)。ELISAによるROS−INS抗体とRBAによるIAAは、1型糖尿病個人の50%で共存した。しかし、ROS−INS抗体は、IAAネガティブだった参加者のさらに34%で検知することができた。全体として、RBAポジティブの参加者の82.7%はさらにELISAでROS−INSポジティブだった。その一方でRBAポジティブだった17.3%はELISAでROSネガティブだった。RBAによるIAAおよびROS−INS抗体ELISAの組み合わせの測定は、新しい発病の1型糖尿病の参加者の95%までインシュリン自己免疫の検知を上げた。
【0097】
例5 − ELISAおよびウエスタンブロットの組み合わせによるROSへの抗体結合特異性
競争的置換分析(competitive displacement assay)は非変性のインシュリンまたはROS−INSのいずれかとプレインキュベートされた血清によって、ROS−INSへの血清結合特異性を評価するために行なわれた(
図6)。1型糖尿病血清が非変性のインシュリンの過剰量でプレインキュベートされた時、顕著な置換は生じなかった。また、直接結合ROS−INSと比較して、競合アッセイは25%低い吸光度を示した。対照的に、ROS−INS(・OH−INSまたはHOCl−INS)の過剰量で血清がプレインキュベートされた時、結合の大きな低下(平均で88%の吸光度の低下)を示し、抗体特異性が主としてROS−INSにあることを示した。その後、ウエスタンブロット解析は、ELISAで最も強い結合を示した一連の血清サンプルで行なわれた。非変性のインシュリンに対応するフラグメントへの弱い結合は明白だった。しかし、これはグリケーションの後に失われた。・OH−INSおよびHOCl−INSへの結合はより強く、非変性のインシュリンより遅い可動性を有する拡散されたフラグメントの方へ向けられた。健全なコントロールからの血清サンプルはインシュリン・フォーマットのうちのどれにも結合しなかった(データは示されない)。臨床徴候でROSインシュリンに結合する抗体の関係も評価された。非変性のインシュリンおよびROS−INSへの1型糖尿病の個人からのサンプルの結合は、代謝制御の指数(たとえば空腹時血漿グルコースおよびHbA1c)とは、診断時または代謝の代償の後に無関係だった(−0.03<ρ<0.16およびp>0.132)。また空腹時Cペプチド、インシュリン必要性または年齢にも無関係だった(−0.07<ρ<−0.01およびp>0.916)。表5を参照。
【0098】
材料と方法
生体外の化学的修飾:
PBSの中のヒト組み換えのインシュリン(1mg/ml)は、次のシステムで37℃で一晩インキュベートされた:
(1) 2mol/lのリボース(シグマ、Gillingham、英国);
(2) 9ミリモル/l HOCl(BDH、オックスフォード、英国);
(3) フェントン反応によりヒドロキシル・ラジカル(・OH)を生成するために、4.5ミリモル/lのCuCl
2(シグマ)、および9ミリモル/lのH
2O
2(シグマ)が使用された。
めんどり卵リゾチーム(HEL;シグマ)も上記のように修飾され、コントロール抗原として使用された。インシュリンの修飾は、20%還元ナトリウム・ドデシル硫酸塩−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(SDS−PAGE)、および20%の非変性のPAGEと、引き続くCoomassie(シグマ)での染色でモニターされた。
【0099】
3次元(3D)蛍光:
3−D走査蛍光スペクトルはHitachi F−4500分光蛍光計(Tokyo、日本)を使用して得られた。サンプルは、凝集物質を除去するために走査に先立って簡潔に遠心分離機にかけられた。同時励起(200−800nm)および放射(200−800nm)スペクトルが記録された。
【0100】
質量分析:
サンプルはStageTipC18で脱塩され、ポジティブの線形モードで、質量範囲m/z、2,000から25,000までの範囲で、MALDI−TOFによって分析された。サンプルのアリコートはDTTで還元され、Glu−C(Calbiochem、Merck、ダルムシュタット、Germany)で消化され、StageTipC18によって脱塩され、MALDI−TOF(MS)およびMALDI−TOF−TOF(MS/MS)分析およびナノ・エレクトロスプレイ・イオン化タンデム型質量分析(ナノ−ESI−MS/MS)に供された。
【0101】
血清サンプル:
血清サンプルは免疫療法糖尿病(IMDIAB)グループの参加センターから得られた。
1型糖尿病(T1D)の個人は、アメリカ糖尿病協会による基準により診断され、ほとんどの場合、診断はグルタミン酸脱炭酸酵素、インシュリンまたはチロシンホスファターゼ抗体への陽性によって確認された;他の主な慢性病の患者が除外された。インスリン療法が始められる前に、T1Dサンプルは診断時に集められた。2型糖尿病(n=82)および健康な個人(n=68)からの血清は、対照群として使用された。このプロジェクトは、IMDIAB調査の枠内のキャンパス大学・バイオ−メディコの倫理委員会によって承認された。患者または親によって署名された説明と同意を得て、タイプ1の糖尿病の研究をした。
【0102】
ELISA:
ELISAは目標として修飾インシュリン、非変性のインシュリンまたはHELを使用して行なわれた。簡潔には、ELISAプレート(Nunc、London、英国)は、4℃で一晩、0.05M炭酸塩/重炭酸塩バッファーpH 9.6中の修飾蛋白質または天然蛋白質の10μg/mlでコートされた。その後、プレートは、PBSで3回洗われた。0.5%のトゥイーンPBS中の5%のBSAで2時間ブロックした後に、0.5%のトゥイーンPBS中の5%のBSA中の1:200で薄められた血清サンプルの100μlが各ウエルに加えられ、室温で2時間インキュベーションされた。その後、プレートは、PBSと0.1%のトゥイーンで洗われ、次いでPBSで3回洗われた。抗ヒトIgGホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP) − 共役抗体(シグマ)は、0.5%のトゥイーンPBSの中の5%のBSAの中の1:1,000稀釈液に加えられ、さらに2時間インキュベーションされた。ELISAプレートは洗われ、100ミリモル/l酢酸ナトリウム(pH6.0)中の100μg/ml 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基体(シグマ)が加えられた。続いて、反応は1mol/lの硫酸で止められた。光電密度(OD)は、GENiosプレート・リーダおよびMagellanソフトウェア(Tecan、Reading、英国)を使用して、450nmで測定された。HELおよびoxPTM−HELについて得られたELISA吸光度は、非変性のインシュリンおよびoxPTM−INSの吸光度から引かれる背景コントロールとしてそれぞれ使用された。さらに、分析のフラクチュエーションを制御するため、同じプレート上の個々のサンプルに関し、インシュリン、oxPTM−INS、HELおよびoxPTM−HELへの結合がテストされた。分析はそれぞれ既知のポジティブまたはネガティブの対照試料を含んでいた。同じ個人(インスリン療法の前およびインスリン療法の後)から得られた長期間のサンプルは、同じプレート上でテストされた。健康な個人の第99パーセンタイル以上のoxPTM−INS抗体のレベルは、ELISAカットオフとして定義された。競合的なELISAはoxPTM−INSへの血清の結合特異性を評価するために行なわれた。競合的なELISAは、血清サンプルをコートされたELISAプレートに加える前に、10μg/mlの非変性のインシュリンまたは競合としてのoxPTM−INSを加えたか加えないで、2時間または一晩プレ−インキュベートしたことを除いて、上記と同じ方法で行われた。
【0103】
ラジオバインディングアッセイ(RBA):
IAAは改良された放射免疫沈降法分析を使用して、RBAによって測定された。簡潔には、20μlの血清がヒト125−Iインシュリンが存在する状態で4℃で2日間、インキュベートされた。その後、免疫複合体は50%のプロテインA/G−セファロースを使用して沈降された。何回かの洗浄の後、結合した125−Iインシュリンはベータ・カウンターで測定された。以下のように定義したインデックスにより、結果は示された:
(サンプルcpm − 陰性の標準コントロールcpm)/(陽性の標準コントロールcpm − 陰性の標準コントロールcpm)
インデックス>0.002の血清サンプルは、陽性であると考えられた。陽性の分析限界は、>150の健康なコントロール血清の99番目のパーセンタイル値により計算された。この分析は2012年に膵島自己抗体標準化熟達ワークショップ(Islet Autoantibody Standardization Proficiency Workshop)で46%の感度および100%の特異性を達成した。
【0104】
ウェスタンブロット:
PAGEは、上に記述されるように行われ、標準プロトコルによりニトロセルロースへ移された。薄膜は5%の粉乳粉末(Marvel)の中で2時間ブロックされ、次いで血清サンプルは5%のmervelで1:1000に希釈され、4℃で一晩インキュベーションされた。0.5%のトゥイーン−PBS中で5分間、2回洗った後に、薄膜は5%のMervel中の抗−IgG HRP(シグマ)の1:1000希釈液中で1時間インキュベートされた。その後、薄膜は0.5%のトゥイーン−PBS中で10分間、2回洗った後に、PBS中で10分間洗い、1mlのLuminata Forte Western HRP(シグマ)とインキュベートした。バンドはFluorChem Eシステム(Proteinsimple、Santa Clara、California、アメリカ)を使用して検知された。
【0105】
HLA遺伝子型決定:
HLA型判定はStrolloら(Diabetologia 2013年3月)に先に記載されたように、特異性プライマーを使用したPCRとシーケンス特異性オリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションを使用して行なわれた。
【0106】
統計分析:
統計分析は、プリズム・ソフトウェア(GraphPad、San Diego、CA、アメリカ)およびSPSS 19(IBM,アメリカ))を使用して行なわれた。グループ間の自己抗体のレベルの差はマン・ホイットニー検定によってテストされた。抗体結合の長期間での変化はペアードt−検定によってT1Dを持った54の患者で評価されたか、またはデータが通常分布しなかった場合、ペアードウィルコクソン検定によって評価された。抗非変性、ROS−INSおよびHEL抗体のレベルが健康な個人の97.5パーセンタイルより上の場合に、上がったと定義された。ピアソンの相関テストはROS−INSおよび非変性のINSとの反応と代謝制御の間の関連性を評価するために使用された。高いインシュリン自己抗体の存在と遺伝子型との間の関連性を評価するために、オッズ比(OR)が計算され、95%のCIsで報告された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]