(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一つ又はそれを超えるガード床における流速が、0.1床体積/時間(bed volumes per hour)から50床体積/時間である、請求項4に記載の方法。
前記低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、凝縮された流れを二相に分離し、重質液相と軽質液相とを形成することをさらに含み、当該軽質液相が、40〜80重量%の水と5重量%未満のヨウ化メチルを含む、請求項7に記載の方法。
該重質液相の一部、該軽質液相の一部、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させることをさらに含み、前記第1の塔が、0.05〜0.4の還流比で稼働される、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0018]先ず、当然のことながら、このような実際の態様を開発するにあたって、実施毎
に変わり得る、システム関連や業務関連の制約を順守すること等、数多くの実行に特有な
決断を行って開発者らの特定の目標を達成していく必要がある。更に、当業者には明らか
なように、本明細書に開示の方法は、引用又は具体的に言及された構成部分以外のものを
含んでもよい。
【0018】
[0019]発明の概要及び詳細な説明においては、文脈で特に明記されていない限り、各数
値は、(明確な修飾が既になされていない場合には)一旦は「約」という用語で修飾して
読み取った後、その修飾を外して再度読み取るべきである。また、発明の概要及び詳細な
説明においては、当然のことながら、有用な濃度範囲、適切な濃度範囲等と記載されてい
る場合には、その範囲内(終点を含む)のあらゆる濃度が記載されていると考えるべきで
ある。例えば、「1〜10」の範囲の場合には、約1と約10との間の連続体に沿ったあ
りとあらゆる可能な数値を示すものとして理解すべきである。従って、その範囲内で所定
のデータ点がごくわずかにしか示されていない場合やデータ点が明確に特定されていない
場合であっても、当然のことながら、発明者らは、その範囲内のありとあらゆるデータ点
が特定されているものとして考慮すべきであることを理解しており、発明者らは、範囲全
体及びその範囲内の全ての点に関する知見を有している。
【0019】
[0020]特に明記しない限り、本明細書全体(特許請求の範囲を含む)を通して、次の用
語は以下に記された意味を有する。
[0021]本明細書及び特許請求の範囲で用いる「(ある値や場所の)近傍」とは「(その
値や場所)自体」を含む。「及び/又は」という用語は、包含的な「及び」の場合と排他
的な「又は」の場合の両方を意味するが、本明細書では簡潔にするために用いている。例
えば、酢酸及び/又は酢酸メチルを含む混合物は、酢酸のみを含んでもよく、酢酸メチル
のみを含んでもよく、酢酸と酢酸メチルの両方を含んでもよい。
【0020】
[0022]特に明記しない限り、全ての割合は、特定の流れ、又はそこに存在する組成の全
重量に対する重量%で表す。特に明記しない限り、室温は25℃であり、大気圧は101
.325kPaである。
【0021】
[0023]本明細書では、
酢酸を「AcOH」と略記し、
アセトアルデヒドを「AcH」と略記し、
酢酸メチルを「MeAc」と略記し、
メタノールを「MeOH」と略記し、
ヨウ化メチルを「MeI」と略記し、
ヨウ化水素を「HI」と略記し、
一酸化炭素を「CO」と略記し、
ジメチルエーテルを「DME」と略記することがある。
【0022】
[0024]HIは、ヨウ化水素分子、又は極性媒体(通常は少なくとも多少の水を含む媒体
)中で少なくとも部分的にイオン化している解離ヨウ化水素酸を指す。特に明記しない限
り、この2つは区別しないで用いられる。特に明記しない限り、HI濃度は電位差滴定終
点を用いた酸−塩基滴定により求められる。特に、HI濃度は、標準酢酸リチウム溶液を
用いて電位差滴定終点まで滴定することにより求められる。当然のことながら、本明細書
では、HIの濃度は、腐食性金属や他の非H
+陽イオンの測定値に因ると思われるヨウ化
物の濃度を試料中に存在する全ヨウ化物イオンから差し引いて求めるものではない。
【0023】
[0025]当然のことながら、HI濃度はヨウ化物イオン濃度を指すものではない。HI濃
度は、具体的には電位差滴定により求めたHI濃度を指す。
[0026]この減算方法は、すべての非H
+陽イオン(Fe、Ni、Cr、Mo等の陽イオ
ン)がヨウ化物陰イオンとのみ結合することを想定しているため、比較的低いHI濃度(
すなわち5重量%又はそれを下回る量)を求めるためには信頼性を欠く不正確な方法であ
る。実際、この方法では金属陽イオンの大部分は酢酸陰イオンと結合し得る。また、これ
ら金属陽イオンの多くは、多価の状態であり、これらの金属に結合し得るヨウ化物陰イオ
ンの量に関わる仮定についての信頼性はますます低くなる。結局のところ、特にHI濃度
を直接表す簡単な滴定が可能であるとの観点に立てば、この方法で実際のHI濃度を求め
ることは低い信頼性に繋がる。
【0024】
[0027]本発明では、蒸留塔の「オーバーヘッド」又は「蒸留物」は、蒸留塔の頂部又は
その近傍(例えば頂付近)を出る、低沸点の凝縮性留分の少なくとも1つ及び/又はその
流や組成物の凝縮した形態を指す。すべての留分が最終的には凝縮性であることは明らか
であるが、当業者であれば容易に理解されるように本明細書では凝縮性留分は、本方法に
示される条件において凝縮性である。非凝縮性留分としては例えば、窒素、水素等が挙げ
られる。同様に、オーバーヘッド流は蒸留塔の最上部出口の直下から取り出すことができ
るが、当業者であれば容易に理解されるように、例えば最も沸点の低い留分は非凝縮性流
又は微少な流れである。
【0025】
[0028]蒸留塔の「底部流」又は「残渣」は、蒸留塔の底部又はその近傍を出る最も沸点
の高い留分の1つを指すと共に、本明細書では蒸留塔の底部貯留域から流出する留分も指
す。当然のことながら、残渣は蒸留塔の底部出口の直ぐ上から取り出すことができるが、
当業者であれば容易に理解できるように、例えば、蒸留塔で生成した最も底部の留分は塩
、利用できないタール、固形廃棄物、又は微少な流れである。
【0026】
[0029]本明細書では、蒸留塔は蒸留域と底部貯留域含む。蒸留域は、底部貯留域の上方
、すなわち底部貯留域と塔頂部の間のすべての領域を含む。本明細書では、底部貯留域は
、高沸点成分の液体貯留層が存在する蒸留塔の下部(例えば、蒸留塔の底部)を指し、そ
こから底部流や残渣流が流れて塔外に排出される。底部貯留域は、リボイラや制御装置等
を含んでいてもよい。
【0027】
[0030]当然のことながら、蒸留塔の内部構成部分に関連する「通路」、「流路」、「流
導管」等の用語は区別することなく用いられ、孔、管、溝、スリット、ドレーン等を指す
。これらは、内部構成部分の一方から他方へ液体及び/又は蒸気が移動する経路中に配置
される、かつ/又はその経路を形成する。蒸留塔の液体分配器等の構造体内に配置される
通路としては例えば、ドレーン孔、ドレーン管、ドレーンスリット等が挙げられる。これ
らにより、液体は構造体内を一方から他方へ流れることができる。
【0028】
[0031]平均滞留時間は、蒸留域内の所定相の全液体容積ホールドアップの総量を、蒸留
域を通る所定相の平均流速で割ったものと定義する。所定相のホールドアップ容積は、収
集器や分配器等を含む蒸留塔の様々な内部構成部分中に含まれる液体容積、並びに、トレ
イ上、下降管内、及び/又は構造化された床部又はランダムに充填された床部内に含有さ
れる液体も包含し得る。
【0029】
リサイクル率の制御
[0032]本発明は、酢酸の回収工程において2基の塔の間の側流中の水濃度を制御する方
法を提供する。側流は主にカルボニル化により生成した酢酸を含む。水濃度の制御する際
に、ヨウ化水素濃度もまた調整し、後に続く酢酸の回収に向けて軽質分留塔(すなわち第
1の塔)から乾燥塔(すなわち第2の塔)に送られるヨウ化水素の量を低下させてもよい
。こうすることで第1の塔から反応器に回収される軽質液相のリサイクル率により水濃度
を制御できるという利点が齎される。一態様では、低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し
て得られた総軽質液相の0〜20%をリサイクルし、残部を還流として軽質分留塔で用い
てもよく、あるいはアセトアルデヒド除去系に供給してもよい。軽質液相もまた第1の塔
に還流されるため、還流比が変化するとリサイクル率に影響を及ぼす場合がある。第2の
塔に供給されるヨウ化水素を低下させると、第2の塔中のみならず、最終的には精製酢酸
生成物中の総ヨウ化物濃度の低減が促進される。精製酢酸生成物中の総ヨウ化物濃度が例
えば、5重量ppm又はそれを下回る量又は1重量ppm又はそれを下回る量と低い場合
はガード床を用いてヨウ化物を除去することができる。これにより精製酢酸生成物の品質
が大きく向上する。
【0030】
[0033]一態様では、反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し液体リサ
イクル及び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し側流及び
5重量%又はそれを超える量の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、上記低
沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液
相を形成すること、上記反応器への軽質液相のリサイクル率を制御することによって側流
中の水濃度を1〜3重量%、例えば、好ましくは1.1〜2.5重量%に維持し、上記側
流中のヨウ化水素濃度を50重量ppm又はそれを下回る量、例えば、好ましくは0.1
〜50重量ppmに維持すること、及び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得
ることを含む、酢酸の製造方法が提供される。
【0031】
[0034]反応器内の水が少ない条件、例えば、水濃度が0.1〜4.1重量%である場合
、反応器内に少量の水を保ちながら蒸留塔を安定に稼働させることが困難な場合がある。
水濃度が低下すると、蒸溜塔に十分な水がない場合蒸留塔の安定した稼働が妨げられる場
合がある。蒸溜塔に水を添加することによりこの問題を克服できる場合があるが、1)こ
れにより排出する水が増加し、分離においてよりエネルギーが必要になる、かつ/又は2
)反応器へリサイクルされる水が増加し反応器条件が妨げられる場合があるため、望まし
くない。従って、一態様では、反応器内で形成した0.1〜4.1重量%の水を含む反応
媒体をフラッシュ容器内で分離し液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、上記
蒸気生成物流の一部を第1の塔で蒸溜し側流、5重量%又はそれを超える量の水を含む低
沸点オーバーヘッド蒸気流、並びに95重量%又はそれを超える量の酢酸及び5重量%又
はそれを下回る量の水を含む残渣流を得ること、上記低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮
し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液相を形成すること、上記反応器へ
の軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することによって上記側流の総重量に対して、
上記側流中の水濃度を1〜3重量%に維持し、上記側流中のヨウ化水素濃度を50重量p
pm又はそれを下回る量、例えば、好ましくは0.1〜50重量ppmに維持すること、
及び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法が提
供される。
【0032】
[0035]本発明においては、側流中のヨウ化水素濃度を測定し軽質液相のリサイクル率を
制御してもよい。他の態様では、反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離
し液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜
し側流及び低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、上記低沸点オーバーヘッド蒸気流を
蒸溜して得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液相を形成すること、上記側流
中のヨウ化水素濃度を測定すること、測定されたヨウ化水素濃度に応じて反応器への軽質
液相のリサイクル率を制御し、側流中のヨウ化水素濃度を50重量ppm又はそれを下回
る量に維持すること、及び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得ることを含む
、酢酸の製造方法が提供される。
【0033】
[0036]さらに他の態様では、反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し
液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し
低沸点オーバーヘッド蒸気流、並びに1〜3重量%の水、0.1〜6重量%の1種以上の
ヨウ化C
1〜C
14アルキル、及び50重量ppm又はそれを下回る量のヨウ化水素を含
む側流を得ること、上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得ること、及び上記精
製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る、例えば、1重量ppm
又はそれを下回る場合に精製酢酸生成物をガード床に接触させることを含む、酢酸の製造
方法が提供される。
【0034】
[0037]側流中のヨウ化水素濃度を低く維持することに加えて、第2の塔に安定量の他の
反応器成分及び不純物(ヨウ化C
1〜C
14アルキル(すなわちヨウ化メチル)及び酢酸
メチル等)を供給することにも利点がある。水と共にヨウ化C
1〜C
14アルキル及び酢
酸メチルを回収し、反応器に戻してもよい。また本発明では、側流中の水濃度を1〜3重
量%に制御することにより、水濃度に対して安定量のヨウ化C
1〜C
14アルキル及び酢
酸メチルを維持できる。「安定量」とは、1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキルの濃度
及び酢酸メチルの濃度が側流中の水濃度の±0.9%の範囲内、例えば、±0.7%、±
0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、又は±0.1%であるこ
とを意味する。例えば、水濃度が2.5重量%である場合、ヨウ化C
1〜C
14アルキル
の濃度は1.6〜3.4重量%であり、酢酸メチルの濃度は1.6〜3.4重量%である
。このような濃度は、反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することにより
得られる。いくつかの態様では、反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御する
ことにより、側流中のヨウ化メチルの濃度を、側流中の水濃度の±0.6%の範囲内、例
えば、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、又は±0.1%で安定させて
もよい。
【0035】
[0038]一態様では、反応器内で形成した0.1〜4.1重量%の水及び9重量%又はそ
れを下回る量の酢酸メチルを含む反応媒体をフラッシュ容器内で分離し液体リサイクル及
び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流の一部を第1の塔で蒸溜し酢酸、水、
ヨウ化水素、1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキル、及び酢酸メチルを含む側流、5重
量%又はそれを超える量の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流、並びに95重量%又は
それを超える量の酢酸及び5重量%又はそれを下回る量の水を含む残渣流を得ること、上
記低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽
質液相を形成すること、反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することによ
って側流の総重量に対して、側流中の水濃度を1〜3重量%に維持し、側流中のヨウ化水
素濃度を50重量ppm又はそれを下回る量に維持すること、ここで、当該側流は、上記
1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキル及び上記酢酸メチルをそれぞれ側流中の水濃度に
対し±0.9重量%の量で含み、及び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得る
ことを含む、酢酸の製造方法が提供される。
【0036】
[0039]軽質液体相のリサイクル率を制御することにより、2基の塔の間の側流中の成分
、特に水及びヨウ化水素の濃度を所定の限界範囲濃度内に維持してもよい。軽質液相のリ
サイクルにより、1〜3重量%、例えば1〜2.5重量%、より好ましくは1.1〜2.
1重量%の水を含む側流が得られる。いくつかの態様では、側流中の水濃度は1重量%又
はそれを超える量、1.1重量%又はそれを超える量、1.3重量%又はそれを超える量
、1.5重量%又はそれを超える量、又は2重量%又はそれを超える量に維持される、か
つ/又はいくつかの態様では、側流中の水の濃度は3重量%又はそれを下回る量、2.8
重量%又はそれを下回る量、2.5重量%又はそれを下回る量、又は2.1重量%又はそ
れを下回る量に維持される。水濃度がこの範囲内であれば、側流中のヨウ化水素は50重
量ppm又はそれを下回る量、例えば、0.1〜50重量ppm又は5〜30重量ppm
に維持される。いくつかの態様では、側流中のヨウ化水素濃度は50重量ppm又はそれ
を下回る量、45重量ppm又はそれを下回る量、40重量ppm又はそれを下回る量、
35重量ppm又はそれを下回る量、又は30重量ppm又はそれを下回る量に維持され
る、かつ/又はいくつかの態様では、側流中のヨウ化水素の濃度は0.1重量ppm又は
それを超える量、1重量ppm又はそれを超える量、5重量ppm又はそれを超える量、
又は10重量ppm又はそれを超える量に維持される。
【0037】
[0040]上述の通り、軽質液体相のリサイクル率を制御し側流中の水濃度を維持すること
により、第1の塔内のオーバーヘッド及び底部流中の水濃度が所定の値に維持される。い
くつかの態様では、オーバーヘッド中の水濃度は5重量%又はそれを超える量、10重量
%又はそれを超える量、15重量%又はそれを超える量、20重量%又はそれを超える量
、又は25重量%又はそれを超える量に維持される、かつ/又はいくつかの態様では、オ
ーバーヘッド中の水濃度を80重量%又はそれを下回る量、75重量%又はそれを下回る
量、70重量%又はそれを下回る量、又は60重量%又はそれを下回る量に維持される。
反応媒体中の水が少ない条件、例えば、水の量が0.1〜4.1重量%である場合、第1
の塔の底部流中の水を低い濃度に維持することが望ましい。水の量が5重量%を越えるこ
とは、本発明の精製系を安定して稼働させる上で望ましくない。従って、いくつかの態様
では、底部流の水濃度は5重量%又はそれを下回る量、4.5重量%又はそれを下回る量
、4重量%又はそれを下回る量、3.5重量%又はそれを下回る量、又は3重量%又はそ
れを超える量に維持される、かつ/又はいくつかの態様では、底部流の水濃度は0重量%
又はそれを超える量、0.5重量%又はそれを超える量、1重量%又はそれを超える量、
又は1.5重量%又はそれを超える量に維持される。
【0038】
[0041]ヨウ化水素は、3〜8重量%の水を含む酢酸−水混合物に可溶であり、水濃度が
低下するとヨウ化水素の溶解性も低下する。これによりヨウ化水素の揮発性が高まる。従
って、いくつかの態様では、ヨウ化水素を塔のオーバーヘッド中で回収してもよい。ヨウ
化水素が腐食性を有することが示されているが、ある量のヨウ化水素はいくつかの条件下
で触媒として有用に作用し得る。そのような触媒として、米国特許第7,223,883
号に記載されたジメチルエーテル生成触媒が挙げられるが、この特許の全内容は参照によ
り本明細書に組み込まれる。
【0039】
[0042]軽質液体相のリサイクルの制御は、例えば米国特許第9,006,483号に記
載の方法等、第1の塔に供給される蒸気生成物の濃度を維持する他の方法に対する改良と
なっている。本発明は、第1の塔に追加の成分を導入する、或いは蒸気生成物供給原料の
それぞれの濃度を維持する必要がなく、いかなる種類の供給原料の制御も改良できるとい
う利点がある。従って、いくつかの態様では、本発明は水又は酢酸メチルを第1の塔に供
給しない、あるいは供給源である蒸気流を第1の塔に供給しない。また、米国特許第9,
006,483号においては、反応器にリサイクルされる軽質液相の制御に失敗しており
、側流中の水濃度及びヨウ化水素濃度を個別に制御することはできない。
【0040】
[0043]軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することにより、主成分である酢酸を側
流中に濃縮することができる。従って、側流は、90重量%又はそれを超える量、例えば
、94重量%又はそれを超える量又は96重量%又はそれを超える量の酢酸を含む。範囲
に関しては、酢酸濃度は90〜99重量%、例えば、91〜98重量%であってもよい。
これにより第1の塔に供給される酢酸の大部分を、さらなる精製に向け側流中に取り出す
ことができる。酢酸は第1の塔のオーバーヘッド流又は底部流中では生成物として回収さ
れないことが好ましい。
【0041】
[0044]側流はまた、酢酸及び水の他に、1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキルを0.
1〜6重量%、例えば、0.5〜5重量%、0.6〜4重量%、0.7〜3.7重量%、
又は0.8〜3.6重量%含んでいてもよい。一態様では、この1種以上のヨウ化C
1〜
C
14アルキルは少なくともヨウ化メチルを含む。ヨウ化ヘキシル等、その他のヨウ化ア
ルキルがアセトアルデヒド等のカルボニル不純物から生成されてもよい。側流は0.5〜
3重量%の1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキルを含むことがより好ましい。水の存在
により、側流にはまた、0.1〜6重量%、例えば、0.5〜5重量%、0.6〜4重量
%、0.7〜3.7重量%、又は0.8〜3.6重量%の酢酸メチルが含まれていてもよ
い。本明細書で記載したように、いくつかの態様では、側流中に水濃度に対して安定量の
他の反応器成分及び不純物(例えばヨウ化C
1〜C
14アルキル(すなわちヨウ化メチル
)及び酢酸メチル等)が存在してもよい。
【0042】
[0045]他の開示では、ヨウ化水素含有量を計算により間接的に求めている。例えば米国
特許公開第2013/0310603号では、ヨウ化物塩形態(共触媒及び金属ヨウ化物
に由来するヨウ化物を含む)に由来するヨウ化物イオン濃度をヨウ化物イオン(I
−)の
総濃度から差し引くことによりヨウ化物イオン濃度を算出してもよいことが示されている
。このような間接計算技術は通常不正確であり、この元になるイオン測定法が不正確であ
るために実際のヨウ化水素濃度が十分な精度で得られない。また、この間接的計算技術で
は他のヨウ化物形態を考慮していない。その理由として金属陽イオンを測定して、これら
陽イオンがヨウ化物陰イオンとのみ結合することを前提としているが、これは誤りであり
、実際にはこれら金属陽イオンは酢酸陰イオンや触媒陰イオン等の他の陰イオンと結合す
る場合があるからである。これに対して、本発明によるヨウ化水素濃度の直接測定は、系
内の実際のヨウ化水素濃度を反映しており、0.01%という低い確度が得られるという
利点がある。一態様では、側流中のヨウ化水素濃度を滴定試薬として酢酸リチウムを用い
た電位差滴定により求めてもよい。
【0043】
[0046]側流中のヨウ化水素濃度を検出することにより、軽質液相のリサイクル率を制御
してもよい。例えば、ヨウ化水素濃度が所定の閾値である50重量ppmを越える場合は
、軽質液相のリサイクル率を増加させてもよい。一旦ヨウ化水素濃度が所定の閾値である
50重量ppmを下回ると、軽質液相のリサイクル率を維持する、かつ/又は望ましい方
向に低下させることにより、水濃度を1〜3重量%に維持してもよい。本明細書に記載す
るように、軽質液相のリサイクル率は、還流する軽質液相の量に対する、リサイクルされ
る軽質液相の量である。軽質液相は、カルボニル化反応器へ直接リサイクルしてもよく、
あるいは反応器へリサイクルする前にまずカルボニル化合物等の不純物を除去することに
より間接的にカルボニル化反応器にリサイクルしてもよい。
【0044】
反応工程
[0047]例示的な反応及び酢酸回収系100を
図1に示す。図のように、メタノール含有
供給流101及び一酸化炭素含有供給流102を液相カルボニル化反応器105に導入し
、反応器内でカルボニル化反応を行うことにより酢酸が生成する。
【0045】
[0048]メタノール含有供給流101は、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチ
ルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。メタノール含有供給流
101は、一部は新たな供給に由来するものであってもよく、あるいは系からリサイクル
されたものであってもよい。少なくともメタノール及び/又はその反応性誘導体の数種は
、酢酸とのエステル化により液体媒体中で酢酸メチルに変換されるため、この液体媒体中
において酢酸メチルとして存在する。
【0046】
[0049]カルボニル化の通常の反応温度は150〜250℃であり、180〜225℃の
温度範囲が好ましい範囲である。反応器内の一酸化炭素分圧は大きく変動することがある
が、通常2〜30atm、例えば3〜10atmである。反応器の水素分圧は、通常0.
05〜2atm、例えば0.25〜1.9atmである。いくつかの態様では、本発明は
、0.3〜2atm、例えば、0.3〜1.5atm、又は0.4〜1.5atmの水素
分圧で運転してもよい。副生成物の分圧及び含有される液体の蒸気圧により、反応器の全
圧は、15〜40atmの範囲である。酢酸の生成率は、5〜50モル/L・h、例えば
10〜40モル/L・h、好ましくは15〜35モル/L・hであってもよい。
【0047】
[0050]カルボニル化反応器105は、機械撹拌容器、攪拌機搭載又は非搭載のエダクタ
混合又はポンプ混合(an educted or pump-around mixing)を用いた容器、又は気泡塔式
容器であることが好ましい。この容器内では反応液体又はスラリーの含有量を自動的に所
定の値に維持することが好ましいが、通常運転時は実質的に一定であることが好ましい。
必要に応じ、新たなメタノール、一酸化炭素、及び十分な水をカルボニル化反応器105
に連続的に導入し反応媒体中における濃度を好適に維持する。
【0048】
[0051]金属触媒はVIII族金属を含んでいてもよい。好適なVIII族触媒としては
、ロジウム触媒及び/又はイリジウム触媒が挙げられる。ロジウム触媒を用いる場合、ロ
ジウムが触媒溶液中に[Rh(CO)
2I
2]
−陰イオンを含む平衡混合物として存在す
るように、ロジウム触媒を当該分野で周知の任意の好適な形態で添加してもよい。本明細
書に記載した方法の反応混合物中に存在してもよいヨウ化物塩は、アルカリ金属又はアル
カリ土類金属の可溶性塩、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、又はこれらの混合物の
形態である。ある態様では、触媒共促進剤はヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれら
の混合物である。この触媒共促進剤は、ヨウ化物塩を生成させる非ヨウ化物塩として添加
してもよい。触媒共促進剤を直接反応系に導入してもよい。あるいは、ヨウ化物塩をin
−situで生成してもよい。換言すれば、反応系の運転条件下においては、広範囲の非
ヨウ化物塩前駆体が反応媒体中のヨウ化メチル又はヨウ化水素酸と反応し対応する触媒共
促進剤が生成するからである。ロジウム触媒及びヨウ化物塩の生成についての詳細は、米
国特許第5,001,259号、5,026,908号、5,144,068号、及び7
,005,541号を参照されたい。これらの内容全体は参照により本明細書に組み込ま
れる。イリジウム触媒を用いたメタノールのカルボニル化がよく知られており、米国特許
第5,942,460号、5,932,764号、5,883,295号、5,877,
348号、5,877,347号、及び5,696,284号に一般的記述が見られる。
これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
[0052]触媒系のハロゲン含有触媒促進剤は、有機ハロゲン化物を含むハロゲン化合物か
らなる。従って、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化置換アルキル、
又はハロゲン化置換アリールを用いることができる。ハロゲン含有触媒促進剤はハロゲン
化アルキルの形態で存在することが好ましい。ハロゲン含有触媒促進剤は、アルキル基が
、カルボニル化されている供給アルコールのアルキル基と対応するような、ハロゲン化ア
ルキルの形態で存在することがより好ましい。従って、メタノールの酢酸へのカルボニル
化において、ハロゲン化物促進剤はハロゲン化メチル、より好ましくはヨウ化メチルを含
む。
【0050】
[0053]反応媒体の成分を規定限界範囲内に維持して十分な量の酢酸の生成を確実に行う
。反応媒体は、例えば、ロジウム触媒等の金属触媒を200〜3000重量ppm、例え
ば800〜3000重量ppm又は900〜1500重量ppmの濃度で含有する。反応
媒体中の水の濃度は14重量%又はそれを下回る量、例えば0.1重量%〜14重量%、
0.2重量%〜10重量%、又は0.25重量%〜5重量%に維持される。反応は水の少
ない条件下で行われ、反応媒体は水を0.1〜4.1重量%、例えば0.1〜3.1重量
%又は0.5〜2.8重量%の量で含むことが好まししい。反応媒体中のヨウ化メチル濃
度は1〜25重量%、例えば5〜20重量%、4〜13.9重量%に維持される。反応媒
体中のヨウ化物塩(例えば、ヨウ化リチウム等)の濃度は1〜25重量%、例えば2〜2
0重量%、3〜20重量%に維持される。反応媒体中の酢酸メチル濃度は0.5〜30重
量%、例えば0.3〜20重量%、0.6〜9重量%、又は0.6〜4.1重量%に維持
される。以下の量は反応媒体の総重量に基づく。
【0051】
[0054]反応媒体中の酢酸濃度は、一般に30重量%又はそれを超える量、例えば40重
量%又はそれを超える量又は50重量%又はそれを超える量である。
[0055]いくつかの態様では、上記酢酸の製造方法は、リチウム化合物を反応器に導入し
て反応媒体中の酢酸リチウム濃度を0.3〜0.7重量%に維持することをさらに含む。
いくつかの態様では、ある量のリチウム化合物を反応器に導入して反応媒体中のヨウ化水
素濃度を0.1〜1.3重量%に維持する。いくつかの態様では、カルボニル化反応器内
に存在する反応媒体の総重量に対して、反応媒体中のロジウム触媒の濃度は200〜30
00重量ppmに、反応媒体中の水の濃度を0.1〜4.1重量%、及び反応媒体中の酢
酸メチル濃度を0.6〜4.1重量%に維持される。
【0052】
[0056]いくつかの態様では、反応器に導入するリチウム化合物は、酢酸リチウム、カル
ボン酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、その他の有機リチウム塩、及びそれら
の混合物からなる群より選択される。いくつかの態様では、リチウム化合物は反応媒体に
可溶性である。一態様では、リチウム化合物源として酢酸リチウム二水和物を用いてもよ
い。
【0053】
[0057]以下の平衡反応(I)に従って酢酸リチウムをヨウ化水素と反応させヨウ化リチ
ウムと酢酸を生成する。
LiOAc+HI←→LiI+HOAc(I)
[0058]酢酸リチウムは酢酸メチル等、反応媒体中に存在するその他の酢酸塩に比べてヨ
ウ化水素濃度の制御を向上させると考えられる。特定の理論に縛られるものではないが、
酢酸リチウムは酢酸の共役塩基であるため、酸−塩基反応によりヨウ化水素に対して反応
性がある。この特性により、反応(I)の平衡は、対応する酢酸メチルとヨウ化水素の平
衡が生成させる以上の反応生成物をもたらすと考えられる。この改良された平衡は、反応
媒体中の水濃度が4.1重量%又はそれを下回る量である場合好都合である。また、酢酸
リチウムは酢酸メチルに比べ比較的揮発性が低いため、揮発により失われたり流れに含ま
れてわずかに蒸気粗生成物に流入する以外は、酢酸リチウムは反応媒体中に残留し易くな
る。これに対して、酢酸メチルは比較的揮発性が高いため蒸留され精製系に導入され易く
なり、酢酸メチルを制御することはより困難になる。酢酸リチウムは、本方法中でヨウ化
水素の濃度を一貫して低く保ちながら、これを維持・制御することがはるかに容易である
。従って、反応媒体中のヨウ化水素濃度を制御するために必要な酢酸メチルの量に対して
比較的少量の酢酸リチウムを用いることができる。さらに、ヨウ化メチルのロジウム[I
]錯体への酸化付加の促進において酢酸リチウムは酢酸メチルに比べて少なくとも3倍有
効であることがわかった。
【0054】
[0059]いくつかの態様では、反応媒体中の酢酸リチウム濃度は0.3重量%又はそれを
超える量、0.35重量%又はそれを超える量、0.4重量%又はそれを超える量、0.
45重量%又はそれを超える量、又は0.5重量%又はそれを超える量に維持され、かつ
/又はいくつかの態様では、反応媒体中の酢酸リチウム濃度は0.7重量%又はそれを下
回る量、0.65重量%又はそれを下回る量、0.6重量%又はそれを下回る量、又は0
.55重量%又はそれを下回る量に維持される。
【0055】
[0060]反応媒体中の酢酸リチウムが過剰になると、反応媒体中の他の化合物に悪影響を
及ぼし、生産性が低下し得ることがわかった。逆に、反応媒体中の酢酸リチウム濃度が0
.3重量%未満の場合は反応媒体中のヨウ化水素濃度を制御できないことがわかった。
【0056】
[0061]いくつかの態様では、リチウム化合物を連続的に、又は断続的に反応媒体に導入
してもよい。いくつかの態様では、リチウム化合物を反応器の起動時に導入する。いくつ
かの態様では、リチウム化合物を断続的に導入し、流れに含まれて失った分を補う。
【0057】
[0062]いくつかの態様では、反応媒体中に所望のカルボン酸とアルコール、望ましくは
カルボニル化に用いるアルコールのエステル、及びヨウ化水素として存在するヨウ化物イ
オンの他に別のヨウ化物イオンを維持することにより、水濃度が低い場合でも所望の反応
速度が得られる。望ましいエステルは酢酸メチルである。上記別のヨウ化物イオンはヨウ
化物塩であることが望ましく、ヨウ化リチウム(LiI)が好ましい。米国特許第5,0
01,259号に記載されているように、水濃度が低いと、酢酸メチル及びヨウ化リチウ
ムは、これらの成分がそれぞれ高濃度で存在するときのみ速度促進剤として作用すること
、またこれら成分の両方が同時に存在するときのみ促進がより高まることがわかった。
【0058】
[0063]メタノールの酢酸生成物へのカルボニル化反応は、カルボニル化生成物の生成に
好適な温度及び圧力条件において、供給メタノールと、ロジウム触媒,ヨウ化メチル促進
剤、酢酸メチル、及び他の可溶性ヨウ化物塩を含有する酢酸溶媒反応媒体中にバブリング
により供給される一酸化炭素ガスを接触させることにより行ってもよい。一般に、重要な
ことは触媒系中のヨウ化物イオン濃度であり、ヨウ化物と結合する陽イオンの濃度ではな
いことが認識されている。また、ヨウ化物が所定のモル濃度である場合、陽イオンの特性
はヨウ化物濃度の効果ほど重要ではないことが認識されている。塩の反応媒体中での可溶
性が所望量のヨウ化物を投入するに充分なレベルであれば、如何なるヨウ化金属塩も、又
は如何なる有機陽イオンの如何なるヨウ化物塩も、又は他の陽イオン、例えばアミン化合
物又はホスフィン化合物に基づく陽イオン(第3級又は第4級陽イオンであってもよい)
も反応媒体中に存在することができる。ヨウ化物が金属塩である場合、「Handbook of Ch
emistry and Physics(化学・物理学便覧)2002-03 (83rd edition)」(オハイオ州クリ
ーブランドCRC Pressから出版)に記載されているように、周期表のIA族金属及びII
A族金属からなる群から選択されたヨウ化物塩であることが好ましい。特に、アルカリ金
属のヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムが特に好適である。低水分カルボニル化工程
では、一般にヨウ化水素として存在するヨウ化物イオンの他に、別のヨウ化物イオンがヨ
ウ化物イオンの総濃度が1〜25重量%の範囲の量で触媒溶液中に存在する。一般に酢酸
メチルは0.5〜30重量%量存在し、ヨウ化メチルは一般に1〜25重量%量存在する
。ロジウム触媒は一般に200〜3000重量ppm存在する。
【0059】
[0064]また、反応媒体は、副生物の生成を回避するために制御しなければならない不純
物を含んでいる場合がある。反応媒体中の不純物の1つはヨウ化エチルである場合がある
。ヨウ化エチルはカルボニル化されてプロピオン酸になる。本発明者はさらに、ヨウ化エ
チルの生成は、反応媒体中のアセトアルデヒド、酢酸エチル、酢酸メチル、及びヨウ化メ
チルの濃度を含む多くの変動要素により影響され得ることを発見した。また、メタノール
源中のエタノール含有量、一酸化炭素源中の水素分圧及び水素含有量が、反応媒体中のヨ
ウ化エチル濃度、ひいては最終酢酸生成物中のプロピオン酸濃度に影響を及ぼすことがわ
かった。
【0060】
[0065]いくつかの態様では、酢酸生成物からプロピオン酸を除去することなく、反応媒
体中のヨウ化エチル濃度を750重量ppm又はそれを下回る量に維持することにより、
酢酸生成物中のプロピオン酸濃度をさらに250重量ppm未満に維持し得る。
【0061】
[0066]いくつかの態様では、反応媒体中のヨウ化エチルと酢酸生成物中のプロピオン酸
は重量比3:1〜1:2で存在してもよい。いくつかの態様では、反応媒体中のアセトア
ルデヒド濃度とヨウ化エチル濃度は、重量比2:1〜20:1に維持される。
【0062】
[0067]いくつかの態様では、水素分圧、反応媒体中の酢酸メチル濃度、ヨウ化メチル濃
度、及び/又はアセトアルデヒド濃度のうち、少なくとも1つを制御することにより反応
媒体中のヨウ化エチル濃度を維持してもよい。
【0063】
[0068]いくつかの態様では、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は750重量ppm又はそ
れを下回る量、例えば650重量ppm又はそれを下回る量、550重量ppm又はそれ
を下回る量、450重量ppm又はそれを下回る量、又は350重量ppm又はそれを下
回る量に維持/制御される。いくつかの態様では、反応媒体中のヨウ化エチル濃度は1重
量ppm又はそれを超える量、例えば5重量ppm、10重量ppm、20重量ppm、
又は25重量ppm、かつ650重量ppm又はそれを下回る量、例えば550重量pp
m、450重量ppm、又は350重量ppmに維持/制御される。
【0064】
[0069]いくつかの態様では、酢酸生成物中のプロピオン酸に対する反応媒体中のヨウ化
エチルの重量比は、3:1〜1:2の範囲であってもよく、例えば5:2〜1:2、2:
1〜1:2、又は3:2〜1:2の範囲であってもよい。
【0065】
[0070]いくつかの態様では、反応媒体中のヨウ化エチルに対するアセトアルデヒドの重
量比は、20:1〜2:1の範囲であってもよく、例えば15:1〜2:1又は9:1〜
2:1の範囲であってもよい。
【0066】
[0071]通常のカルボニル化工程では、一酸化炭素をカルボニル化反応器、望ましくは攪
拌機の下に連続的に導入し、攪拌機を用いて内容物を撹拌してもよい。ガス状供給原料を
この撹拌手段により反応液体全体に十分分散させることが好ましい。排気流106を反応
器105から放出してガス副生成物の蓄積を防止し、所定の反応器全圧下で設定された一
酸化炭素分圧を維持することが望ましい。一態様では、排気流106は1重量%又はそれ
を下回る量、例えば0.9重量%又はそれを下回る量、0.8重量%又はそれを下回る量
、0.7重量%又はそれを下回る量、0.5重量%又はそれを下回る量の少量のヨウ化水
素を含む。ヨウ化水素がこれらの量を越えると、ヨウ化水素の排出を防止するスクラバへ
の負荷が増加する。反応器の温度を制御してもよく、また所望の反応器全圧を維持するの
に十分な速度で一酸化炭素供給原料が導入される。液体反応媒体を含む流れ113が反応
器105から排出される。
【0067】
[0072]酢酸製造システムは、本工程内で酢酸を回収し、金属触媒、ヨウ化メチル、酢酸
メチル、及びその他の系の成分をリサイクルするために用いる分離系108を含むことが
好ましい。反応器に導入する前にリサイクル流の1つ以上を合流させてもよい。また、分
離系は、カルボニル化反応器内及び系全体の水並びに酢酸の含有量を制御し、過マンガン
酸還元性化合物(「PRC」)の除去を容易にすることが好ましい。PRCとしては、ア
セトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒ
ド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、及びこれらのアルド
ール縮合生成物が含まれ得る。一態様では、好適な過マンガン酸カリウム試験としてJI
S K1351(2007)が挙げられる。
【0068】
フラッシュ容器
[0073]カルボニル化反応器内において反応媒体を一定の水準に維持するために十分な速
度で反応媒体をカルボニル化反応器105から取り出し、流れ113を介してフラッシュ
容器110に供給する。フラッシュ分離を1〜10atmの絶対圧力の下、80℃から2
00℃の温度にて行ってもよい。フラッシュ容器110内において、反応媒体をフラッシ
ュ分離工程により分離し、酢酸を含む蒸気生成物流112と触媒含有溶液を含む液体リサ
イクル111を得る。蒸気生成物流112及び液体リサイクル111の各々の流速は異な
ってもよく、例示的な一態様では、フラッシュ容器110への流れの15%〜55%が蒸
気生成物流112として取り出され、この流れの45%〜85%が液体リサイクル111
として取り出される。触媒含有溶液は、大部分が酢酸であり、ロジウム及びヨウ化物塩を
含んでおり、それより少量の酢酸メチルとヨウ化メチルを含んでいてもよい。上述の通り
、水が反応器にリサイクルされる。液体リサイクルを反応器に戻す前に、米国特許第5,
731,252号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている
ように、スリップ流をイオン交換床等の腐食性金属除去床を通過させて流れに含まれる腐
食性金属(ニッケル、鉄、クロム、及びモリブデン等)があればそれらを除去してもよい
。また、米国特許第8,697,908号(その全内容が参照により本明細書に組み込ま
れる)に記載されているように、腐食性金属除去床を用いてアミン等の窒素化合物を除去
してもよい。
【0069】
[0074]一態様では、蒸気生成物流112は酢酸,ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセ
トアルデヒド、及びヨウ化水素を含む。一態様では、蒸気生成物流112は、蒸気生成物
流の総重量に対して45〜75重量%の酢酸、20〜50重量%のヨウ化メチル、9重量
%又はそれを下回る量の酢酸メチル、及び15重量%又はそれを下回る量の水を含む。他
の態様では、蒸気生成物流112は、蒸気生成物流の総重量に対して45〜75重量%の
酢酸、24〜36重量%のヨウ化メチル、9重量%又はそれを下回る量の酢酸メチル、及
び15重量%又はそれを下回る量の水を含む。蒸気生成物流112は、55〜75重量%
の酢酸、24〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜8重量%の酢酸メチル、及び0.5
〜14重量%の水を含むことがより好ましい。さらに好ましい態様では、蒸気生成物流1
12は、60〜70重量%の酢酸、25〜35重量%のヨウ化メチル、0.5〜6.5重
量%の酢酸メチル、及び1〜8重量%の水を含む。蒸気生成物流中のアセトアルデヒド濃
度は、蒸気生成物流の総重量に対して0.005〜1重量%、例えば、0.01〜0.8
重量%又は0.01〜0.7重量%であってもよい。いくつかの態様では、アセトアルデ
ヒドは0.01重量%又はそれを下回る量の量で存在してもよい。蒸気生成物流112は
、蒸気生成物流の総重量に対して1重量%又はそれを下回る量、例えば0.5重量%又は
それを下回る量又は0.1重量%又はそれを下回る量のヨウ化水素を含んでいてもよい。
蒸気生成物流112は実質的にプロピオン酸を含まない、すなわち含まれるプロピオン酸
が蒸気生成物流の総重量に対して0.0001重量%又はそれを下回る量であることが好
ましい。
【0070】
[0075]液体リサイクル流111は、酢酸、金属触媒、腐食性金属、及びその他の様々な
化合物を含む。一態様では、液体リサイクル流は、60〜90重量%の酢酸、0.01〜
0.5重量%の金属触媒、合計で10〜2500重量ppmの腐食性金属(例えば、ニッ
ケル、鉄、及びクロム等、5〜20重量%のヨウ化リチウム、0.5〜5重量%のヨウ化
メチル、0.1〜5重量%の酢酸メチル、0.1〜8重量%の水、1重量%又はそれを下
回る量のアセトアルデヒド(例えば、0.0001〜1重量%のアセトアルデヒド)、及
び0.5重量%又はそれを下回る量のヨウ化水素(例えば、0.0001〜0.5重量%
のヨウ化水素)を含む。
【0071】
[0076]酢酸の他に、蒸気生成物流112はまた、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、及び
PRC(例えば、アセトアルデヒド及びクロトンアルデヒド)を含む。反応器105から
送り出されてフラッシュ容器110に供給される溶解ガスは、一酸化炭素の一部を含んで
いるが、メタン、水素、及び二酸化炭素等のガス状副生成物を含んでいてもよい。このよ
うな溶解ガスを蒸気生成物流112の一部としてフラッシュ容器110から送り出す。一
態様では、排気流106中の一酸化炭素をフラッシュ容器110の底部に供給しロジウム
の安定性を高めてもよい。
【0072】
酢酸の回収
[0077]酢酸の蒸留及び回収は本発明の目的のために特に限定されるものでない。
第1の塔
[0078]
図1に示すように、蒸気生成物流112を第1の塔120(軽質分留塔とも言う
)に導入する。一態様では、蒸気生成物流112は、酢酸、酢酸メチル、水,ヨウ化メチ
ル、及びアセトアルデヒドに加えて他の不純物(ヨウ化水素及びクロトンアルデヒド等)
、及び副生物(プロピオン酸等)を含んでいてもよい。蒸留により低沸点オーバーヘッド
蒸気流122、好ましくは側流123を経由して取り出される精製酢酸生成物、及び高沸
点残渣流121が得られる。酢酸の大部分は側流123中にて取り出されるが、高沸点残
渣流121から回収される酢酸はわずかであるか、もしくは全くないことが好ましい。高
沸点残渣流121中の酢酸濃度は比較的高いこともあるが、側流123に比べて高沸点残
渣流121の質量流量は非常に低い。いくつかの態様では、高沸点残渣流121の質量流
量は側流123の0.75%又はそれを下回る量、例えば、0.55%又はそれを下回る
量又は0.45%又はそれを下回る量である。
【0073】
[0079]一態様では、低沸点オーバーヘッド蒸気流122は、水を5重量%又はそれを超
える量、例えば10重量%又はそれを超える量又は25重量%又はそれを超える量含む。
水の量は、80重量%以下であってもよい。範囲に関しては、オーバーヘッド中の水濃度
は、5重量%から80重量%、例えば、10重量%から70重量%、又は25重量%から
60重量%であってもよい。水濃度が5重量%未満に低下すると、反応系に戻される酢酸
リサイクルが増加し、精製系全体のリサイクルが増加するため、有益ではない。水の他に
、低沸点オーバーヘッド蒸気流122はまた、酢酸メチル,ヨウ化メチル、及びカルボニ
ル不純物を含む場合があるが、これらをオーバーヘッド中に濃縮して側流123中の酢酸
から除去することが好ましい。本明細書ではこれらのカルボニル不純物はPRCとも言う
場合がある。
【0074】
[0080]図示するように、低沸点オーバーヘッド蒸気流122を凝縮し、オーバーヘッド
デカンタ124として示すオーバーヘッド相分離ユニットに導入することが好ましい。一
旦デカンタ124で凝縮した低沸点オーバーヘッド蒸気流122を分離し軽質液相133
と重質液相134を形成するような条件を維持することが望ましい。相分離は、これら2
つの相の間に第3の相、すなわちエマルジョンが形成されないように2つの分離相を保持
しなければならない。オフガス成分をライン132経由でデカンタ124から放出しても
よい。いくつかの態様では、オーバーヘッドデカンタ124内での凝縮低沸点オーバーヘ
ッド蒸気流122の平均滞留時間は、1分又はそれを超える時間、例えば、3分又はそれ
を超える時間、5分又はそれを超える時間、又は10分又はそれを超える時間であり、か
つ/又は平均滞留時間は60分又はそれを下回る時間、例えば、45分又はそれを下回る
時間、30分又はそれを下回る時間、又は25分又はそれを下回る時間である。
【0075】
[0081]軽質液相133の具体的な組成は大きく変動し得るが、いくつかの例示的な組成
を以下の表1に示す。
【0077】
[0082]一態様では、オーバーヘッドデカンタ124は界面水準を低く維持してヨウ化メ
チルの過剰なホールドアップを防止するように構成されている。重質液相134の具体的
な組成は大きく変動し得るが、いくつかの例示的な組成を以下の表2に示す。
【0079】
[0083]重質液相134の密度は、1.3〜2、例えば、1.5〜1.8、1.5〜1.
75、又は1.55〜1.7であってもよい。米国特許第6,677,480号に記載さ
れているように、重質液相134の測定密度は、反応媒体中の酢酸メチル濃度と相関する
場合がある。密度が低下すると、反応媒体中の酢酸メチル濃度は上昇する。本発明の一態
様では、重質液相134は反応器にリサイクルされる。また、軽質液相133は、同じポ
ンプでリサイクルされるように制御される。ポンプの妨げにならない一部分の軽質液相1
33をリサイクルし、軽質液相133と重質液相を合わせた密度が1.3又はそれを超え
る値、例えば、1.4又はそれを超える値、1.5又はそれを超える値、又は1.7又は
それを超える値であるように維持することが望ましい。本明細書に記載するように、重質
液相134の一部分を処理しアセトアルデヒド等の不純物を除去してもよい。
【0080】
[0084]表1及び表2に示すように、軽質液相133中の水濃度は、重質液相134中よ
りも高い。従って、本発明では、軽質液相のリサイクルにより側流中の水濃度を制御する
ことができる。ライン136経由で軽質液相133を反応器105にリサイクルする際の
リサイクル率により、水及びヨウ化水素の濃度を側流123中で制御する。ライン135
経由で軽質液相133の第1の塔への還流比(本明細書では、重質液相134(すべてリ
サイクルしてもよい)と軽質液相133の両方を含む、塔120の頂部から送り出される
総質量流量で除した還流の質量流量を意味する)は、0.05〜0.4、例えば、0.1
〜0.35又は0.15〜0.3であることが好ましい。一態様では、還流比を低下させ
るため、側流と第1の塔の塔頂との間の理論段数は5以上、例えば、好ましくは10以上
であってもよい。他の態様では、ライン136中の軽質液相を反応器105に戻すリサイ
クル率は、塔オーバーヘッド(還流及びリサイクル)から凝縮された総軽質液相133の
20%以下、例えば、10%以下である。範囲に関しては、ライン136中の軽質液相の
リサイクル率は、低沸点オーバーヘッド蒸気流(還流及びリサイクル)から凝縮された総
軽質液相133の0〜20%、例えば、0.1〜20%、0.5〜20%、1〜15%、
又は1〜10%である。残った部分を還流として軽質分留塔で用いてもよく、あるいはア
セトアルデヒド除去系に供給してもよい。
図1に示すように、ライン136中のリサイク
ルは液体リサイクル111と合流させ、反応器105に間接的に戻してもよい。一態様で
は、ライン136中のリサイクルを、リサイクルされている他の流れと合わせ反応器10
5に間接的にリサイクルしてもよく、あるいは反応器105に直接リサイクルしてもよい
。乾燥塔125からの凝縮オーバーヘッド流138を相分離し水相と有機相を形成させる
場合、ライン136中のリサイクルを好ましくは水相と混合してもよい。あるいは、ライ
ン136中のリサイクルを少なくとも部分的に重質液相134及び/又はオーバーヘッド
流138からの有機相と合流させてもよい。
【0081】
[0085]本発明の態様においては、反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分
離し液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸
溜し側流及び5重量%又はそれを超える量の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得る
こと、上記低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液
相及び軽質液相を形成すること、上記反応器へリサイクルされる軽質液相を上記塔オーバ
ーヘッドを凝縮して得た総軽質相133に対し0.5%〜20%に維持し、側流中の水濃
度を1〜3重量%に維持し、ヨウ化水素濃度を50重量ppm又はそれを下回る量に維持
すること、及び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製
造方法が提供される。
【0082】
[0086]本発明においては、流量バルブ(図示されていない)及び/又は流量モニター(
図示されていない)を用いてライン135中の還流及びライン136中のリサイクルを制
御してもよい。一態様では、試料流141をオンライン分析計142に供給することによ
り、側流123中のヨウ化水素濃度を求めてもよい。一態様では、ライン135中の還流
及びライン136中のリサイクルを、オンライン分析計142と通信しながら制御しても
よく、オンライン分析計がフィードバック情報を送り反応器への還流比及びリサイクル率
をそれぞれ制御してもよい。還流比を変化させると、反応器にリサイクルされる水の量に
影響を及ぼす場合がある。いくつかの態様では、軽質液相133が反応器へ全くリサイク
ルされないように水の量を変化させてもよい。還流を減少させ(かつ反応器へのリサイク
ルを増加させる)と、側流中の水の含有量も減少する。還流を増加させると、側流中の水
濃度も増加し、反応器にリサイクルされる水は減少する。還流比が0.4を越えると、側
流中の水濃度も増加して3重量%を越え、第2の塔で酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ
化メチルを除去するための分離が困難になる。従って、このような酢酸を乾燥塔の底部又
は底部近傍の側部から回収したとしても、含まれるヨウ化物の総濃度が高くなり過ぎてガ
ード床で効果的に取り扱えなくなる場合がある。
【0083】
PRC除去系
[0087]図には示されていないが、軽質液相133及び/又は重質液相134の一部を分
離し、アセトアルデヒド又はPRC除去系に導入し、アセトアルデヒド除去工程中でヨウ
化メチルと酢酸メチルを回収してもよい。表1及び表2に示すように、軽質液相133及
び/又は重質液相134はそれぞれPRCを含んでおり、本発明の方法は、酢酸生成物の
品質を損なうアセトアルデヒド等のカルボニル不純物を除去することを含み得る。このよ
うなカルボニル不純物は、米国特許第6,143,930号、6,339,171号、7
,223,883号、7,223,886号、7,855,306号、7,884,23
7号、8,889,904号、及び米国特許公開第2006/0011462号に記載さ
れた好適な不純物除去塔や不純物吸収装置により除去してもよい。これらの内容全体は参
照により本明細書に組み込まれる。アセトアルデヒド等のカルボニル不純物をヨウ化物触
媒促進剤と反応させて、例えば、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化
ペンチル、ヨウ化ヘキシル等のヨウ化アルキルを生成させてもよい。不純物の多くはアセ
トアルデヒドに由来するため、軽質液相からカルボニル不純物を除去することが望ましい
。
【0084】
[0088]軽質液相133及び/又は重質液相134のうちアセトアルデヒド又はPRC除
去系に供給される量は、軽質液相133及び/又は重質液相134の質量流量の1%から
99%の範囲、例えば、1〜50%、2〜45%、5〜40%、5〜30%、又は5〜2
0%の範囲で変動してもよい。また、いくつかの態様では、軽質液相133及び重質液相
134共に、その一部をアセトアルデヒド又はPRC除去系に供給してもよい。本明細書
で記載したように、アセトアルデヒド又はPRC除去系に供給されない軽質液相133の
一部分を第1の塔に還流してもよく、あるいは反応器にリサイクルしてもよい。アセトア
ルデヒド又はPRC除去系に供給されない重質液相134の一部分を反応器にリサイクル
してもよい。重質液相134の一部分を第1の塔に還流してもよいが、ヨウ化メチルが濃
縮された重質液相134は反応器に戻す方がより望ましい。
【0085】
[0089]一態様では、軽質液相133及び/又は重質液相134の一部が蒸留塔に供給さ
れ、蒸留塔のオーバーヘッドにおいてアセトアルデヒドとヨウ化メチルが濃縮される。構
成にもよるが、2基に分かれた蒸留塔があってもよく、第2の塔のオーバーヘッドにおい
てアセトアルデヒド及びヨウ化メチルが濃縮されていてもよい。ジメチルエーテルは、i
n−situで生成し得るが、オーバーヘッドに存在していてもよい。オーバーヘッドに
対して1段以上の抽出操作を行い、ヨウ化メチルが濃縮された抽残液(raffinate)及び
抽出剤を除去してもよい。抽残液の一部を蒸留塔、第1の塔、オーバーヘッドデカンタ、
及び/又は反応器に戻してもよい。例えば、重質液相134をPRC除去系で処理する場
合、抽残液の一部を蒸留塔又は反応器に戻すことが望ましい場合がある。また、例えば、
軽質液相133をPRC除去系で処理する場合、抽残液の一部を第1の塔、オーバーヘッ
ドデカンタ、又は反応器に戻すことが望ましい場合がある。いくつかの態様では、抽出剤
をさらに蒸留して水を除去してもよく、抽出剤は1段以上の抽出操作に戻される。塔の底
部流は、軽質液相133より多くの酢酸メチル及びヨウ化メチルを含み、これもまた反応
器105にリサイクルする、かつ/又は第1の塔120に還流してもよい。
【0086】
[0090]一態様では、反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器で分離し液体リサイ
クル及び蒸気生成物流を形成すること、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸留し側流及び5
重量%又はそれを超える量の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、低沸点オ
ーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液相を形
成すること、上記重質液相の一部を分離しアセトアルデヒド又はその他のPRCを除去す
ること、上記反応器への軽質液相のリサイクル率を制御することにより側流中の水濃度を
1〜3重量%、例えば、好ましくは1.1〜2.5重量%に維持し、側流中のヨウ化水素
濃度を50重量ppm又はそれを下回る量、例えば、好ましくは0.1〜50重量ppm
に維持すること、及び側流を第2の塔で蒸留し精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の
製造方法が提供される。
【0087】
[0091]反応器内の水が少ない条件下において、反応器内で形成した0.1〜4.1重量
%の水を含む反応媒体をフラッシュ容器内で分離し液体リサイクル及び蒸気生成物流を形
成すること、上記蒸気生成物流の一部を第1の塔で蒸溜し側流、5重量%又はそれを超え
る量の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流、並びに95重量%又はそれを超える量の酢
酸及び5重量%又はそれを下回る量の水を含む残渣流を得ること、上記低沸点オーバーヘ
ッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液相を形成するこ
と、上記重質液相の一部を分離しアセトアルデヒド又は他のPRCを除去すること、上記
反応器への軽質液相のリサイクル率を制御することにより側流中の水濃度を1〜3重量%
、例えば、好ましくは1.1〜2.5重量%に、側流中のヨウ化水素濃度を50重量pp
m又はそれを下回る量、例えば、好ましくは0.1〜50重量ppmに維持すること、及
び上記側流を第2の塔で蒸溜し精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法が提供
される。
【0088】
第2の塔
[0092]側流123経由で回収する酢酸を第2の塔125(乾燥塔とも言う)等でさらに
精製することが好ましい。また、第2の塔において側流123を分離し主に水を含む水性
オーバーヘッド流126、及び主に酢酸を含む生成物流127を形成する。側流由来の水
は水性オーバーヘッド流において濃縮される。この水性オーバーヘッドは第2の塔に供給
された側流中の水の90%又はそれを超える水、例えば、95%又はそれを超える水、9
7%又はそれを超える水、又は99%又はそれを超える水を含む。水性オーバーヘッド流
126は水を50〜75重量%を含んでいてもよい。いくつかの態様では、水性オーバー
ヘッド流は水を75重量%又はそれを下回る量、例えば、70重量%又はそれを下回る量
又は65重量%又はそれを下回る量含んでいてもよい。また酢酸メチル及びヨウ化メチル
は側流から除去され、オーバーヘッド流にて濃縮される。生成物流127は、本質的に酢
酸を含む、又は酢酸からなり、第2の塔125の底部又は底部近傍の側流から取り出され
ることが好ましい。底部近傍の側流として取り出される場合、側流は液体であってもよく
、あるいは蒸気流であってもよい。好ましい態様では、生成物流127は90重量%又は
それを超える量、例えば、95重量%又はそれを超える量又は98重量%又はそれを超え
る量の酢酸を含む。生成物流127はさらに、商業利用のために貯蔵又は輸送される前に
、例えばイオン交換樹脂を通過させる等の処理をしてもよい。
【0089】
[0093]同様に、第2の塔125から得られる水性オーバーヘッド流126は、ヨウ化メ
チル、酢酸メチル、及び水等の反応成分を含み、これら反応成分を工程内で保持すること
が好ましい。水性オーバーヘッド流126は熱交換器により凝縮されて流れ138となり
、反応器105にリサイクルされる、かつ/又は第2の塔125に還流される。オフガス
成分はライン137経由で凝縮水性オーバーヘッド流126から放出されてもよい。第1
の塔120から得られる凝縮低沸点オーバーヘッド蒸気流と同様に、凝縮オーバーヘッド
流138もまた水相と有機相に分離し、これらの相を必要に応じリサイクル又は還流し、
反応媒体中の濃度を維持してもよい。
【0090】
[0094]一態様では、側流中の水濃度は第1の塔及び第2の塔の両方でバランスを取るべ
く制御される。反応媒体中で用いる水の量が14重量%又はそれを下回る量、より好まし
くは4.1重量%又はそれを下回る量である場合、第2の塔の水の量が十分ではなくなり
、第2の塔を安定して稼働させることができないことがある。側流中の水濃度を1重量%
又はそれを下回る量に低下させることが可能な場合もあるが、それにより第2の塔内で水
の不均衡が生じることがある。これにより酢酸の回収がより困難になり、規格外製品とな
る場合がある。さらに、側流中に水が存在することにより、第2の塔において水性オーバ
ーヘッド中の水の除去が可能になる。第1の塔から得られた軽質液相と第2の塔から得ら
れた水性オーバーヘッドのリサイクル比は、第1の蒸溜塔及び第2の蒸留塔の安定した稼
働を維持しながら反応器内の水を所望の濃度に維持することを容易にする。一態様では、
反応器へリサイクルされる水性オーバーヘッドの質量流量に対する反応器へリサイクルさ
れる軽質液相の質量流量のリサイクル比は2であるか又はそれを下回り、例えば、1.8
であるか又はそれを下回り、1.5であるか又はそれを下回り、1であるか又はそれを下
回り、0.7であるか又はそれを下回り、0.5であるか又はそれを下回り、0.35で
あるか又はそれを下回り、0.25であるか又はそれを下回り、かつ/又は反応器へリサ
イクルされる水性オーバーヘッドの質量流量に対する反応器へリサイクルされる軽質液相
の質量流量のリサイクル比は0であるか又はそれを超え、例えば、0.05であるか又は
それを超え、0.1であるか又はそれを超え、0.15であるか又はそれを超え、又は0
.2であるか又はそれを超えである。一態様では、反応器へリサイクルされる水性オーバ
ーヘッドの質量流量に対する反応器へリサイクルされる軽質液相の質量流量のリサイクル
比は0〜2、例えば、0〜1.5、0〜1.3、0〜1、0〜0.9、0〜0.7、0〜
0.5、0〜0.35、又は0〜0.25である。従って一態様では、反応器内で形成し
た反応媒体をフラッシュ容器内で分離し液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること
、上記蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し1〜3重量%の水を含む側流及び第1の低沸点オ
ーバーヘッド蒸気流を得ること、上記第1の低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得ら
れた凝縮流を二相に分離し重質液相及び軽質液相を形成すること、上記側流を第2の塔で
蒸溜し精製酢酸生成物及び第2の低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、上記第2の低
沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し75重量%又はそれを下回る量の水を含む水性リサイ
クル流を得ること、及び上記第2の低沸点オーバーヘッド蒸気流を上記反応器にリサイク
ルすることを含み、反応器にリサイクルされる水性リサイクル流の質量流量に対する反応
器へリサイクルされる軽質液相の質量流量のリサイクル比が2であるか又はそれを下回り
、例えば、0〜2である、酢酸の製造方法が提供される。
【0091】
[0095]放出流、特にライン106、132、及び137からの残渣液体を回収するため
に、これらラインをスクラバに供給してもよい。スクラバは冷却メタノール及び/又は酢
酸を用いて運転し、酢酸メチル及びヨウ化メチルを除去する。米国特許第8,318,9
77号に好適なスクラバが記載されており、その全内容が参照により本明細書に組み込ま
れる。
【0092】
[0096]本発明の蒸留塔は、従来の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔、及びその他の塔で
あってもよい。棚段塔としては、多孔板塔、泡鐘塔、キッテルトレイ塔、ユニフラックス
トレイ又はリップルトレイ塔を挙げることができる。棚段塔の場合、理論段数は特に限定
されず、分離される成分の種類に依存しており、80段以下、例えば、2〜80段、5〜
60段、5〜50段、より好ましくは7〜35段とすることができる。蒸留塔は様々な蒸
留装置の組み合わせを備えていてもよい。例えば、泡鐘塔と多孔板塔の組み合わせ、ある
いは多孔板塔と充填塔の組み合わせを用いてもよい。
【0093】
[0097]蒸留系の蒸留温度及び圧力は、目的とするカルボン酸の種類、蒸留塔の種類、又
は供給流の組成に従い低沸点不純物及び高沸点不純物から選択される除去対象物等の条件
に応じて好適に選択することができる。例えば、酢酸を蒸留塔で精製する場合、蒸留塔の
内圧(通常は塔頂部の圧力)はゲージ圧で0.01〜1MPa、例えば、0.02〜0.
7MPa、より好ましくは0.05〜0.5MPaであってもよい。さらに、塔の内圧を
調整することにより、蒸留塔の蒸留温度、すなわち塔頂部の温度により塔の内部温度を制
御することができる。例えば、塔の内部温度は20〜200℃、例えば、50〜180℃
、より好ましくは100〜160℃であってもよい。
【0094】
[0098]塔、バルブ、凝縮器、受器、ポンプ、リボイラ、内部構造物及び各種ライン(こ
れらはそれぞれ蒸留系に繋がっている)を含む蒸留系に関連した各部位又はユニットの材
料は、ガラス、金属、セラミックス、又はこれらの組み合わせ等、好適な材料から成り、
特に特定の材料に限定されない。本発明によれば、上述の蒸留系及び各種ラインの材料は
、遷移金属又は鉄合金等の遷移金属基合金、例えば、ステンレス鋼、ニッケル又はニッケ
ル合金、ジルコニウム又はジルコニウム合金、チタン又はチタン合金、又はアルミニウム
合金等である。好ましい鉄基合金としては、主成分として鉄を含む合金、例えば、クロム
、ニッケル、モリブテン及びその他の金属も含むステンレス鋼等が挙げられる。好ましい
合金としては、主成分としてニッケル並びに、クロム、鉄、コバルト、モリブテン、タン
グステン、マンガン、及びその他の金属の1種以上を含む合金、例えば、HASTELL
OY(商標)やINCONEL(商標)等が挙げられる。蒸留系及び各種ラインの材料と
して耐腐食性金属が特に好適な場合がある。
【0095】
ガード床(Guard bed)
[0099]例えば、酢酸流等のカルボン酸流は、ハロゲン化物及び/又は腐食性金属で汚染
されているが、広範囲の運転条件の下でイオン交換樹脂組成物と接触させてもよい。イオ
ン交換樹脂組成物をガード床中に設けることが好まししい。ガード床を用いて汚染カルボ
ン酸を精製することは、例えば米国特許第4,615,806号、5,653,853号
、5,731,252号、及び6,225,498号等(これらの全内容は参照により本
明細書に組み込まれる)、当該分野ではよく知られている。一般に、汚染された液体カル
ボン酸流をイオン交換樹脂組成物と接触させるが、このイオン交換樹脂組成物はガード床
中に設けられていることが好ましい。例えば、ヨウ化物汚染物質等のハロゲン化物汚染物
質を金属と反応させて金属ヨウ化物を生成させる。態様によっては、ヨウ化物と結合し得
る炭化水素部位(例えば、メチル基等)はカルボン酸をエステル化させることがある。例
えば、ヨウ化メチルで汚染された酢酸の場合、酢酸メチルがヨウ化物除去の副生物として
生成される。このエステル化物の生成は、通常は処理済みのカルボン酸流に有害な効果を
及ぼすことはない。
【0096】
[0100]一態様では、イオン交換樹脂は金属交換イオン交換樹脂であり、銀、水銀、パラ
ジウム、及びロジウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含んでいてもよ
い。一態様では、この金属交換樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%を銀が占める。他の
態様では、この金属交換樹脂の強酸交換部位の少なくとも1%を水銀が占める。本発明の
方法は、カチオン性交換樹脂で精製酢酸生成物を処理し銀、水銀、パラジウム、ロジウム
のいずれかを回収することをさらに含んでいてもよい。
【0097】
[0101]接触工程時の圧力は、樹脂の物理的強度によってのみ制限される。一態様では、
0.1MPa〜1MPa、例えば、0.1MPa〜0.8MPa又は0.1MPa〜0.
5MPaの範囲の圧力で接触を行う。しかしながら、便宜上、圧力と温度の両方を規定し
て、汚染カルボン酸流を液体として処理することが好ましい場合がある。従って、例えば
、一般に経済的観点から好ましいとされる大気圧での運転では、温度は17℃(酢酸の凝
固点)から118℃(酢酸の沸点)の範囲であってもよい。他のカルボン酸化合物を含む
生成物流に対して同様の範囲を定めることは当業者の理解の範囲内である。接触工程の温
度を比較的低く保ち樹脂の劣化を最小限にすることが好ましい。一態様では、25℃〜1
20℃、例えば、25℃〜100℃又は50℃〜100℃の範囲の温度で接触を行う。数
種の陽イオン性マクロ網状樹脂は、通常150℃の温度で劣化し始める(酸触媒の芳香族
脱スルホン化の機構による)。炭素数が5以下、例えば、3以下のカルボン酸はこの範囲
の温度で液体の状態を保つ。従って、接触時の温度を、用いられる樹脂の劣化温度未満に
維持しなければならない。いくつかの態様では、運転温度を樹脂の限界温度より低く保ち
、ハロゲン化物除去のための所望の反応速度及び液相操作との整合性をとる。
【0098】
[0102]酢酸精製系内のガード床の構成は大きく異なっていてもよい。例えば、ガード床
を乾燥塔の後に設けてもよい。それに加えて、あるいはそれに代えて、ガード床を重質留
分除去塔又は仕上げ塔の後に設けてもよい。酢酸生成物流の温度が低い位置、例えば、1
20℃又はそれを下回る温度又は100℃又はそれを下回る温度の位置にガード床を設け
ることが好ましい。上述した利点に加え、運転温度が低い場合、運転温度が高い場合に比
べて金属の腐食が少ない。また運転温度が低い場合、上述したように樹脂の総合寿命を低
下させるおそれがある腐食性金属汚染物質の生成が抑制される。また、運転温度が低い場
合、腐食が抑制されるため、容器を高価な耐腐食性金属ではなく、一般的なステンレス鋼
で作製してもよいというさらなる利点がある。
【0099】
[0103]一態様では、ガード床における流速は0.1床体積/時間(bed volumes per ho
ur)(BV/hr)から50BV/hrの範囲、例えば、1BV/hrから20BV/h
r又は6BV/hrから10BV/hrの範囲である。有機媒体の床体積は、樹脂床が占
める体積に等しい媒体の体積である。流速が1BV/hrであるとは、樹脂床が占める体
積に等しい量の有機液体が1時間で樹脂床を通過することを意味する。
【0100】
[0104]一態様では、総ヨウ化物濃度が高い精製酢酸生成物で樹脂が消耗されることを回
避するため、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る量、例え
ば、好ましくは1重量ppm又はそれを下回る量である場合、底部流127中の精製酢酸
生成物をガード床に接触させる。総ヨウ化物濃度には、ヨウ化C
1〜C
14アルキル等の
有機物及びヨウ化水素等の無機物の両方に由来するヨウ化物が含まれる。ガード床で処理
した結果、精製酢酸組成物が得られる。一態様では、精製酢酸組成物は、100wppb
(重量ppb)又はそれを下回る量、例えば、90wppb又はそれを下回る量、50w
ppb又はそれを下回る量、又は25wppb又はそれを下回る量のヨウ化物を含む。一
態様では、精製酢酸組成物は1000wppb又はそれを下回る量、例えば、750wp
pb又はそれを下回る量、500wppb又はそれを下回る量、又は250wppb又は
それを下回る量の腐食性金属を含む。本発明においては、腐食性金属は、ニッケル、鉄、
クロム、モリブテン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される金属を含む。範
囲に関しては、精製酢酸組成物は0〜100wppb、例えば、1〜50wppbのヨウ
化物及び/又は0〜1000wppb、例えば、1〜500wppbの腐食性金属を含ん
でいてもよい。他の態様では、ガード床によって、粗酢酸生成物からヨウ化物の少なくと
も25重量%、例えば、少なくとも50重量%又は少なくとも75重量%が除去される。
一態様では、ガード床によって、粗酢酸生成物から腐食性金属の少なくとも25重量%、
例えば、少なくとも50重量%又は少なくとも75重量%が除去される。
【0101】
[0105]他の態様では、生成物流を陽イオン交換体に接触させてリチウム化合物を除去し
てもよい。酸型の陽イオン交換体は、酸型の強酸陽イオン交換マクロ網状樹脂、マクロ多
孔質樹脂、又はメソ多孔質樹脂を含む。特定の理論には縛られないが、10重量ppm又
はそれを超える量のリチウム化合物を含むイオン交換樹脂に生成物流を供給すると、処理
生成物中の金属が置換される。イオン交換樹脂の上流に陽イオン交換体を用いることによ
りこの問題を克服できるという利点がある。陽イオン交換体と接触させた後、生成物流は
リチウムイオンを50重量ppb又はそれを下回る量、例えば、10wppb又はそれを
下回る量、又は5wppb又はそれを下回る量の濃度で含んでいてもよい。
【0102】
[0106]生成物流をイオン交換樹脂に接触させヨウ化物を除去してもよいが、生成物流を
フラッシュすること、あるいは生成物流を、活性炭を含む吸着系に接触させることは好ま
しくない。生成物流のフラッシュは、生成物流から酢酸の50%超を回収するのに十分な
圧力低下が生じないため、効率的ではない。従って、一態様では、生成物流の内、フラッ
シュしない部分をイオン交換床に供給してヨウ化物を除去する。
【0103】
[0107]上述の図面や説明から明らかなように、様々な態様が意図されている。
E1.反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び蒸
気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、側流と、5重量%又はそれを超える量の水を含む
低沸点オーバーヘッド蒸気流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び
軽質液相を形成すること、
該反応器への軽質液相のリサイクル率を制御することにより、該側流の総重量に対して
、該側流中の水濃度を1〜3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50重量pp
m又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
E2.反応器内で形成した、0.1〜4.1重量%の水を含む反応媒体を、フラッシュ容
器内で分離し、液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流の一部を第1の塔で蒸溜し、側流と、5重量%又はそれを超える量の水
を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、95重量%又はそれを超える量の酢酸及び5重量
%又はそれを下回る量の水を含む残渣流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び
軽質液相を形成すること、
該反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することにより、該側流の総重量
に対し、側流中の水濃度を1〜3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50重量
ppm又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
E3.該反応媒体はさらに、酢酸メチル、金属触媒、ヨウ化物塩、及びヨウ化メチルを含
む、態様E1−E2のいずれかに記載の方法。
E4.該反応媒体が0.5〜30重量%の酢酸メチル、200〜3000重量ppmの金
属触媒、1〜25重量%のヨウ化物塩、及び1〜25重量%のヨウ化メチルを含む、態様
E1−E3のいずれか1態様に記載の方法。
E5.該重質液相の一部分が処理され、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケト
ン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチ
ルブチルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合生成物からなる群より選択される少な
くとも1種の過マンガン酸還元性化合物が除去される、態様E1−E4のいずれか1態様
に記載の方法。
E6.該側流中の水濃度が1.1〜2.5重量%に維持される、態様E1−E5のいずれ
か1態様に記載の方法。
E7.該側流中のヨウ化水素濃度が0.1〜50重量ppmに維持される、態様E1−E
6のいずれか1態様に記載の方法。
E8.該側流がさらに、1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキルを0.1〜6重量%の濃
度で含み、該側流がさらに酢酸メチルを0.1〜6重量%の濃度で含む、態様E1−E7
のいずれか1態様に記載の方法。
E9.該側流が、該1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキル及び該酢酸メチルをそれぞれ
、該側流中の水濃度の±0.9重量%の量含む、態様E1−E8のいずれか1態様に記載
の方法。
E10.該第1の塔が、0.05〜0.4の還流比で稼働される、態様E1−E9のいず
れか1態様に記載の方法。
E11.該重質液相、該軽質液相、またはこれらの混合物を該第1の塔へ還流させること
をさらに含む、態様E1−E10のいずれか1態様に記載の方法。
E12.該軽質液相が40〜80重量%の水を含む、態様E1−E11のいずれか1態様
に記載の方法。
E13.該重質液相が1重量%又はそれを下回る量の水を含む、態様E1−E12のいず
れか1態様に記載の方法。
E14.該精製酢酸生成物が、該第2の塔の底部またはその近傍から取り出される、態様
E1−E13のいずれか1態様に記載の方法。
E15.水性オーバーヘッドが該第2の塔から取り出される、態様E1−E14のいずれ
か1態様に記載の方法。
E16.該水性オーバーヘッドが、該第2の塔に供給される側流中の水の90%又はそれ
を超える水を含む、態様E1−E15のいずれか1態様に記載の方法。
E17.該水性オーバーヘッド又はその凝縮された一部を該反応器にリサイクルすること
をさらに含み、該反応器へリサイクルされる水性オーバーヘッドの質量流量に対する該反
応器へリサイクルされる軽質液相の質量流量のリサイクル比が2であるか又はそれを下回
る、態様E1−E16のいずれか1態様に記載の方法。
E18.水、酢酸メチル、又はこれらの組み合わせが、該蒸気流に導入されない、態様E
1−E17のいずれか1態様に記載の方法。
E19.水、酢酸メチル、又はこれらの組み合わせが、該第1の塔に導入されない、態様
E1−E18のいずれか1態様に記載の方法。
E20.該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る場合に該精
製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む、態様E1−E19のいずれか1
態様に記載の方法。
E21.該軽質液相のリサイクル率が、該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮して得た総
軽質液相の0〜20%である、態様E1−E20のいずれか1態様に記載の方法。
E22.該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750重量ppm又はそれを下回る量に制御
することをさらに含み、該酢酸生成物からプロピオン酸を直接除去せずに該酢酸生成物が
250重量ppm未満のプロピオン酸を含む、態様E1−E20のいずれか1態様に記載
の方法。
E23.該反応媒体中のヨウ化エチル及び該酢酸生成物中のプロピオン酸が3:1〜1:
2の重量比で存在する、態様E22に記載の方法。
E24.アセトアルデヒド及びヨウ化エチルが該反応媒体中に重量比2:1〜20:1で
存在する、態様E22に記載の方法。
E25.反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び
蒸気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、側流及び低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること
、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し重質液相及び
軽質液相を形成すること、
該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、
該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該反応器への軽質液相のリサイクル率を制御し、
該側流中のヨウ化水素濃度を50重量ppm又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
E26.該側流中のヨウ化水素濃度が、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定
により測定される、E25に記載の方法。
E27.反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び
蒸気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1〜3重量%の
水、0.1〜6重量%の1種以上のヨウ化C
1〜C
14アルキル、及び50重量ppm又
はそれを下回る量のヨウ化水素を含む側流とを得ること、
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ること、及び
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る場合に該精製酢酸
生成物をガード床に接触させることを含む、酢酸の製造方法。
【0104】
[0108]本発明を詳細に説明したが、当業者であれば本発明の精神及び範囲内での変更が
容易に自明であろう。上記の説明を考慮して、当該分野での関連する知見、背景技術及び
発明を実施するための形態に関連した上述の参考文献、開示内容はすべて参照により本明
細書に組み込まれる。また、当然のことながら、本発明の側面及び様々な態様の部分、以
下の記述及び/又は添付の特許請求の範囲で列挙した様々な特徴は、その全体又は一部を
組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。当業者であれば、様々な態様に関する上述の
説明において、他の態様に言及する態様は別の態様と適切に組み合わせてもよいことが理
解されよう。さらに、当業者であれば、上述の説明は単なる例示であって本発明を限定す
るものではないことが理解されよう。
【実施例】
【0105】
[0109]本発明は以下の非限定的な実施例によって十分に理解されよう。
比較例1 軽質液相をリサイクルしない場合
[0110]典型的な例として、0.2gの側流試料を0.01Mの酢酸リチウムのアセトン
(50ml)溶液で滴定することにより側流中のHI濃度を求めた。pH電極をMetrohm
716 DMS Titrinoと共に用いて、動的当量点滴定モードで終点を求めた。酢酸リチウム滴
定試薬の消費量に基づき、次式からHI濃度を重量%で算出した。
【0106】
【数1】
【0107】
このHI滴定法を用いて、約1.9重量%の水、約2.8重量%のヨウ化メチル、及び約
2.5重量%の酢酸メチルを含む側流組成物試料を試験した。HI濃度は50重量ppm
から300重量ppmまで変化した。オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相は全く反応
器にリサイクルされなかった。軽質液相をリサイクルしない場合はHI濃度が高くなる傾
向にある。
【0108】
実施例1 軽質液相をリサイクルする場合
[0111]オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相の一部を反応器に直接リサイクルし側流
中の水の含有量を低下させた。この側流は、約1.5重量%の水、約3.6重量%の酢酸
メチル、約2.1重量%のヨウ化メチル、及び25重量ppm又はそれを下回る量のHI
を含み、残部は酢酸、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを含んでいた。HI濃度は低すぎて
、直接滴定で測定することができなかった。HI濃度を直接測定することを困難にする他
の陽イオンが存在したためである。無機ヨウ化物の総量、すなわち可能な限り最大限のH
I総量を直接測定した。これら他の無機ヨウ化物は、ヨウ化リチウムに加えて腐食性金属
のヨウ化物を含んでいることがある。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び蒸気生
成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、側流と、5重量%又はそれを超える量の水を含む
低沸点オーバーヘッド蒸気流とを得ること、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し、重質液相及
び軽質液相を形成すること、
該反応器への軽質液相のリサイクル率を制御することにより、該側流の総重量に対して
、該側流中の水濃度を1重量%から3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50
重量ppm又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
[請求項2]
反応器内で形成した0.1重量%から4.1重量%の水を含む反応媒体をフラッシュ容
器内で分離し、液体リサイクル及び蒸気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流の一部を第1の塔で蒸溜し、側流と、5重量%又はそれを超える量の水
を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流と、95重量%又はそれを超える量の酢酸及び5重量
%又はそれを下回る量の水とを含む残渣流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し、重質液相及
び軽質液相を形成すること、
該反応器への軽質液相の一部分のリサイクル率を制御することにより、該側流の総重量
に対して、該側流中の水濃度を1重量%から3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃
度を50重量ppm又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
[請求項3]
該反応媒体がさらに、酢酸メチル、金属触媒、ヨウ化物塩、及びヨウ化メチルを含む、
請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
[請求項4]
該反応媒体が、0.5重量%から30重量%の酢酸メチル、200重量ppmから30
00重量ppmの金属触媒、1重量%から25重量%のヨウ化物塩、及び1重量%から2
5重量%のヨウ化メチルを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]
該重質液相の一部分を処理し、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブ
チルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチ
ルアルデヒド、及びこれらのアルドール縮合生成物からなる群より選択される少なくとも
1種の過マンガン酸還元性化合物を除去する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法
。
[請求項6]
該側流中の水濃度が1.1重量%から2.5重量%に維持される、請求項1〜5のいず
れか1項に記載の方法。
[請求項7]
該側流中のヨウ化水素濃度が0.1重量ppmから50重量ppmに維持される、請求
項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]
該側流がさらに、1種以上のヨウ化C1〜C14アルキルを0.1重量%から6重量%
の濃度で含み、さらに酢酸メチルを0.1重量%から6重量%の濃度で含む、請求項1〜
7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]
該側流が、該1種以上のヨウ化C1〜C14アルキル及び該酢酸メチルのそれぞれを該
側流中の水濃度の±0.9重量%の量含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
[請求項10]
該第1の塔が0.05から0.4の還流比で稼働される、請求項1〜9のいずれか1項
に記載の方法。
[請求項11]
該重質液相、該軽質液相、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させることをさら
に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
[請求項12]
該軽質液相が、40重量%から80重量%の水を含む、請求項1〜11のいずれか1項
に記載の方法。
[請求項13]
該重質液相が、1重量%又はそれを下回る量の水を含む、請求項1〜12のいずれか1
項に記載の方法。
[請求項14]
該精製酢酸生成物が、該第2の塔の底部またはその近傍から取り出される、請求項1〜
13のいずれか1項に記載の方法。
[請求項15]
水性オーバーヘッドが該第2の塔から取り出される、請求項1〜14のいずれか1項に
記載の方法。
[請求項16]
該水性オーバーヘッドが、該第2の塔に供給される側流中の水の90%又はそれを超え
る水を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
[請求項17]
該水性オーバーヘッド又はその凝縮された一部を該反応器にリサイクルすることをさら
に含み、該反応器への水性オーバーヘッドの質量流量に対する該反応器へリサイクルされ
る軽質液相の質量流量のリサイクル比が2であるか又はそれを下回る、請求項1〜16の
いずれか1項に記載の方法。
[請求項18]
水、酢酸メチル、又はこれらの組合せが、該蒸気流に導入されない、請求項1〜17の
いずれか1項に記載の方法。
[請求項19]
水、酢酸メチル、又はこれらの組合せが、該第1の塔に導入されない、請求項1〜18
のいずれか1項に記載の方法。
[請求項20]
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る場合に該精製酢酸
生成物をガード床に接触させることをさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載
の方法。
[請求項21]
該軽質液相のリサイクル率が、該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮して得た総軽質液
相の0%から20%である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
[請求項22]
該反応媒体中のヨウ化エチル濃度を750重量ppm又はそれを下回る量に制御するこ
とをさらに含み、該酢酸生成物からプロピオン酸を直接除去せずに該酢酸生成物が250
重量ppm未満のプロピオン酸を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
[請求項23]
該反応媒体中のヨウ化エチル及び該酢酸生成物中のプロピオン酸が3:1から1:2の
重量比で存在する、請求項22に記載の方法。
[請求項24]
アセトアルデヒド及びヨウ化エチルが該反応媒体中に2:1から20:1の重量比で存
在する、請求項22に記載の方法。
[請求項25]
反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び
蒸気生成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、側流及び低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること
、
該低沸点オーバーヘッド蒸気流を凝縮し、得られた凝縮流を二相に分離し、重質液相及
び軽質液相を形成すること、
該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、
該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該反応器への軽質液相のリサイクル率を制御し、
該側流中のヨウ化水素濃度を50重量ppm又はそれを下回る量に維持すること、及び
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸の製造方法。
[請求項26]
該側流中のヨウ化水素濃度が、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により
測定される、請求項25に記載の方法。
[請求項27]
反応器内で形成した反応媒体をフラッシュ容器内で分離し、液体リサイクル及び蒸気生
成物流を形成すること、
該蒸気生成物流を第1の塔で蒸溜し、低沸点オーバーヘッド蒸気流と、1〜3重量%の
水、0.1〜6重量%の1種以上のヨウ化C1〜C14アルキル、及び50重量ppm又
はそれを下回る量のヨウ化水素を含む側流とを得ること、
該側流を第2の塔で蒸溜し、精製酢酸生成物を得ること、及び
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5重量ppm又はそれを下回る場合に該精製酢酸
生成物をガード床に接触させることを含む、酢酸の製造方法。