(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738372
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】コイルスプリングを用いたクッション体、コイルスプリングシート、マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/06 20060101AFI20200730BHJP
【FI】
A47C27/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-101197(P2018-101197)
(22)【出願日】2018年5月28日
(65)【公開番号】特開2019-205507(P2019-205507A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】507358642
【氏名又は名称】株式会社ルービックJP
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】日野 淳一
【審査官】
國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第107518675(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第107518674(CN,A)
【文献】
特開2010−252937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/04 − 27/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮する複数のコイルスプリングを収容したクッション体において、
コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が湾曲するように形成され、複数のコイルスプリングを中心線が湾曲する向きを合せて並べていることを特徴とするクッション体。
【請求項2】
袋体に複数のコイル室を左右に並べて形成するとともに、各コイル室にワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリングを収容したコイルスプリングシートにおいて、
コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が湾曲するように形成され、中心線が湾曲する向きを合せて左右に並べていることを特徴とするコイルスプリングシート。
【請求項3】
袋体に複数のコイル室を左右に並べて形成するとともに、各コイル室にワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリングを収容してコイルスプリングシートを形成し、外装体に複数のコイルスプリングシートを並べて収容したマットレスにおいて、
コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が湾曲するように形成され、中心線が湾曲する向きを合せて左右に並べていることを特徴とするマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルスプリングを用いたクッション体、コイルスプリングシート、マットレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション体(たとえば、マットレス)においては、袋状の外装体の内部に複数のコイルスプリング(たとえば、ポケットコイル)が前後方向及び左右方向に水平に隙間なく密接させた状態で並べて収容されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来のクッション体で用いられているコイルスプリングは、金属製のワイヤを上下方向に向けて螺旋形状に成形して、上下方向に向けて伸縮するように形成されている。
【0004】
そして、従来のコイルスプリングは、螺旋形状を成すワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した線(これを、コイルスプリングの中心線という。)が伸縮方向と同一方向(上下方向)に向かって伸延する直線となっている。
【0005】
従来のクッション体においては、上記の中心線が直線状のコイルスプリングが前後方向及び左右方向に向けて密接させた状態で収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−213657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のクッション体では、中心線が伸縮方向と同一の上下方向に向かって直線状に伸延しているコイルスプリングを用いており、コイルスプリングの側部同士を近接させた状態で前後方向及び左右方向に並べて収容している。
【0008】
そのため、上記従来のクッション体では、コイルスプリングを前後方向及び左右方向に密接させた状態で収容されることになり、コイルスプリングの使用個数が多くなって、クッション体の重量が重くてコストが高いものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、ワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮する
複数のコイルスプリングを収容したクッション体において、コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が
湾曲するように形成され
、複数のコイルスプリングを中心線が湾曲する向きを合せて並べていることにした。
【0012】
また、
請求項2に係る本発明では、袋体に複数のコイル室を左右に並べて形成するとともに、各コイル室にワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリングを収容したコイルスプリングシートにおいて、コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が
湾曲するように形成され
、中心線が湾曲する向きを合せて左右に並べていることにした。
【0013】
また、
請求項3に係る本発明では、袋体に複数のコイル室を左右に並べて形成するとともに、各コイル室にワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリングを収容してコイルスプリングシートを形成し、外装体に複数のコイルスプリングシートを並べて収容したマットレスにおいて、コイルスプリングは、ワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が
湾曲するように形成され
、中心線が湾曲する向きを合せて左右に並べていることにした。
【発明の効果】
【0014】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明では、ワイヤを螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリングのワイヤに沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線が湾曲又は屈曲するように形成されているために、複数のコイルスプリングを前後方向及び左右方向に並べて使用する際に従来よりもコイルスプリングの使用個数を低減することができ、それにより、コイルスプリングを使用したクッション体やコイルスプリングシートなどの重量を軽量なものとすることができるとともにコストを低廉化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るコイルスプリングを用いたクッション体、ポケットコイル、コイルスプリングシート、マットレスの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、クッション体1としてのマットレスは、袋状の外装体2の内部に複数個のポケットコイル3を前後方向及び左右方向に並べて収容している。各ポケットコイル3は、上下方向に単純に直線状に伸延した円柱形状とはなっておらず、側面視で湾曲した円柱形状となっている。
【0019】
本発明では、ポケットコイル3の形態、特に、ポケットコイル3を構成するコイルスプリングの形態に最も特徴を有している。
【0020】
図2(a)に示すように、従来のポケットコイル4は、上下方向に直線状に伸延する円柱状の袋体5の内部に上下に直線状に伸延する中空円柱状のコイル室6を形成し、そのコイル室6の内部にワイヤ7を上下方向に向けて螺旋状に巻回したコイルスプリング8を収容している。これにより、従来のポケットコイル4では、螺旋状に巻回したワイヤ7に沿って曲率中心を仮想的に連結した仮想線(これを、中心線9といい、図中に一点鎖線で示す。)が上下方向に直線状に伸延する単純な直線となっている。
【0021】
これに対して、
図2(b)に示すように、本発明に係るポケットコイル3は、上下方向に向けて側面視で湾曲しながら伸延する円柱状の袋体10を用いており、袋体10の内部には、同様に上下方向に向けて側面視で湾曲しながら伸延する中空円柱状のコイル室11が形成されている。そして、そのコイル室11の内部に、ワイヤ12を側面視で湾曲させながら上下方向に向けて螺旋状に巻回したコイルスプリング13を収容している。これにより、本発明に係るポケットコイル3は、螺旋状に巻回したワイヤ12に沿って曲率中心を仮想的に連結した仮想線(図中に一点鎖線で示す中心線14)が上下方向に湾曲する(下方から上方へ向けて側面視で左横側又は右横側に曲がっている)曲線となっている。
【0022】
本発明では、
図2(c)に示すポケットコイル15を用いることもできる。このポケットコイル15は、上下方向に向けて側面視で左右に屈曲(繰り返し湾曲)しながら伸延する円柱状の袋体16を用いており、袋体16の内部には、同様に上下方向に向けて側面視で左右に屈曲(繰り返し湾曲)しながら伸延する中空円柱状のコイル室17が形成されている。そして、そのコイル室17の内部に、ワイヤ18を側面視で左右に湾曲(繰り返し湾曲)させながら上下方向に向けて螺旋状に巻回したコイルスプリング19を収容している。これにより、本発明に係るポケットコイル15は、螺旋状に巻回したワイヤ18に沿って曲率中心を仮想的に連結した仮想線(図中に一点鎖線で示す中心線20)が上下方向に左右に屈曲(繰り返し湾曲)する(下方から上方へ向けて側面視で左横側及び右横側に曲がっている)曲線となっている。
【0023】
このように、本発明では、コイルスプリング13,19の中心線14,20が湾曲又は屈曲するように形成されている。そして、本発明に係るコイルスプリング13,19は、ワイヤ12,18を巻回して製造する際に中心線14,20を強制的に湾曲又は屈曲するようにしてもよく、また、コイルスプリング13,19を収容するコイル室11,17を
図2(b)又は(c)に示すように上下方向に向けて湾曲形状又は屈曲形状に形成しておき、その内部に従来の中心線9が上下方向に向けて直線状に伸延するコイルスプリング8を強制的に収容することで中心線14,20が強制的に湾曲又は屈曲するようにしたものであってもよい。
【0024】
そして、
図3(a)に示すように、従来のポケットコイル4(コイルスプリング8)は、上下方向に向けて直線状に伸延する円柱形状となっているために、外装体21の内部に前後方向及び左右方向に並べて収容した際に隣接するポケットコイル4の間に隙間があいていると、クッション性が低下してしまうとともにポケットコイル4が転倒してしまったり傾斜してしまい、クッション体22としての品質が損なわれるために、外装体21の内部に隙間を開けずに密着させた状態で前後方向及び左右方向に並べて収容する必要がある。そのため、従来のクッション体22では、非常に数多くのポケットコイル4(コイルスプリング8)が必要となって、重量やコストが増大していた。
【0025】
これに対して、
図3(b)に示すように、本発明に係るポケットコイル3(コイルスプリング13)では、上下方向に向けて湾曲状に伸延する円柱形状となっているために、外装体2の内部に前後方向及び左右方向に並べて収容した際に隣接するポケットコイル3の間に隙間があいていても、クッション性を著しく低下させることなくポケットコイル3が転倒したり傾斜することなく、クッション体1としての品質が損なわれることがない。そのため、本発明に係るクッション体1では、ポケットコイル3(コイルスプリング13)の使用個数を減らすことができ、重量やコストを低減することができる。なお、ポケットコイル3(コイルスプリング13)は、中心線14が湾曲する向きを合せて前後方向や左右方向に並べてもよく、
図3(b)に示すように、中心線14が湾曲する向きを互いに対向させて前後方向や左右方向に並べてもよい。特に、上端及び下端で隣接するポケットコイル3同士を密着させることによって、ポケットコイル3の前後又は左右へのずれを防止することができる。
【0026】
同様に、
図3(c)に示すように、本発明に係るポケットコイル15(コイルスプリング19)でも、上下方向に向けて左右に屈曲状に伸延する円柱形状となっているために、外装体23の内部に前後方向及び左右方向に並べて収容した際に隣接するポケットコイル15の間に隙間があいていても、クッション性を著しく低下させることなくポケットコイル15が転倒したり傾斜することなく、クッション体24としての品質が損なわれることがない。そのため、本発明に係るクッション体24では、ポケットコイル15(コイルスプリング19)の使用個数を減らすことができ、重量やコストを低減することができる。なお、ポケットコイル15(コイルスプリング19)も、中心線20が屈曲する向きを合せて前後方向や左右方向に並べてもよく、
図3(c)に示すように、中心線20が屈曲する向きを互いに対向させて前後方向や左右方向に並べてもよい。特に、上端又は下端で隣接するポケットコイル15同士を密着させることによって、ポケットコイル15の前後又は左右へのずれを防止することができる。
【0027】
本発明に係るコイルスプリング13,19は、1個ずつ袋体10,16に収容してポケットコイル3,15を形成する場合に限られず、
図4(a)に示すように、1個の袋体25(たとえば、前後2枚のシートを重ねて縫合又は接着したもの)に左右に並べて形成された複数の上下方向に湾曲するコイル室26に1個ずつ収容してコイルスプリングシート27を形成してもよく、また、
図4(b)に示すように、1個の袋体28(たとえば、前後2枚のシートを重ねて縫合又は接着したもの)に左右に並べて形成された複数の上下方向に屈曲するコイル室29に1個ずつ収容してコイルスプリングシート30を形成してもよい。この場合にも、コイルスプリング13,19は、ワイヤ12,18を巻回して製造する際に中心線14,20を強制的に湾曲又は屈曲するようにしてもよく、また、コイルスプリング13,19を収容するコイル室26,29を
図4(a)又は(b)に示すように上下方向に向けて湾曲形状又は屈曲形状に形成しておき、その内部に従来の中心線9が上下方向に向けて直線状に伸延するコイルスプリング8を強制的に収容することで中心線14,20が強制的に湾曲又は屈曲するようにしたものであってもよい。また、コイルスプリング13,19を中心線14,20が湾曲又は屈曲する向きを合せて左右に並べてもよく、コイルスプリング13,19を
図4(a)又は(b)に示すように、中心線14,20が湾曲又は屈曲する向きを互いに対向させて左右に並べてもよい。
【0028】
以上に説明したように、本発明では、ワイヤ12,18を螺旋状に巻回して上下に伸縮するコイルスプリング13,19のワイヤ12,18に沿って曲率中心を仮想的に連結した中心線14,20が湾曲又は屈曲するように形成している。
【0029】
そのため、本発明では、複数のコイルスプリング13,19を前後方向及び左右方向に並べて使用する際に従来よりもコイルスプリング13,19の使用個数を低減することができ、それにより、コイルスプリング13,19を使用したクッション体1,24やコイルスプリングシート27,30などの重量を軽量なものとすることができるとともにコストを低廉化することができる。
【符号の説明】
【0030】
1,22,24 クッション体 2,21,23 外装体
3,4,15 ポケットコイル 5,10,16,25,28 袋体
6,11,17,26,29 コイル室 7,12,18 ワイヤ
8,13,19 コイルスプリング 9,14,20 中心線
27,30 コイルスプリングシート