(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記曲率情報算出部は、前記複数の計測点の中から異なる複数の前記計測点群を抽出し、前記抽出された複数の計測点群のそれぞれについて前記曲率情報を算出する、請求項1、4または7に記載の曲率情報算出装置。
前記曲率情報算出部は、前記既定経路を前記起点から第2所定間隔で区切り、同一区間に属する前記計測点に関する前記曲率半径を平均して前記同一区間の前記曲率情報を算出する、請求項14に記載の曲率情報算出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の道路曲率検出装置では、道路の曲率を算出するためには、道路上の車両前方両側に描かれた案内線を撮像し、その案内線の接線を算出する必要があるので、案内線がない道路については、曲率を算出することはできない。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、道路上に描かれた案内線の有無に拘わらず既定経路の曲率情報を算出することができる、曲率情報算出装置およびそれを備える自動走行車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、既定経路における起点から複数の計測点の位置情報を記憶する記憶部と、複数の計測点の中から、第1所定間隔で3つの計測点からなる計測点群を抽出し、抽出された計測点群に含まれる3つの計測点の位置情報に基づいて、3つの計測点を通る円弧の曲率半径に関する曲率情報を算出する曲率情報算出部とを備える、曲率情報算出装置が提供される。
【0007】
この発明では、記憶部に記憶された複数の計測点の中から、第1所定間隔で3つの計測点からなる計測点群が抽出される。そして、抽出された計測点群に含まれる3つの計測点の位置情報に基づいて、3つの計測点を通る円弧の曲率半径に関する曲率情報が算出される。したがって、道路上に描かれた案内線の有無に拘わらず既定経路の曲率情報を算出することができる。
【0008】
好ましくは、曲率情報算出部は、複数の計測点の中から異なる複数の計測点群を抽出し、抽出された複数の計測点群のそれぞれについて曲率情報を算出する。この場合、既定経路の曲率情報を連続的に得ることができ、既定経路の形状の把握が容易になる。
【0009】
また好ましくは、曲率情報算出部は、既定経路を起点から第2所定間隔で区切り、同一区間に属する計測点に関する曲率半径を平均して同一区間の曲率情報を算出する。この場合、区間毎に曲率半径を平均することによって、区間毎に信頼性の高い曲率情報を得ることができる。
【0010】
さらに好ましくは、既定経路を自動走行可能に構成された自動走行車両であって、曲率情報算出装置を備える、自動走行車両が提供される。この場合、曲率情報算出装置で得られた曲率情報を自動走行車両の制御に利用できる。
【0011】
好ましくは、記憶部は、各計測点における起点からの距離に関する距離情報を、各計測点の位置情報に関連づけて記憶し、自動走行車両はさらに、起点から現在地点までの走行距離に関する走行距離情報を取得する走行距離取得部と、走行距離取得部によって取得された走行距離情報と記憶部から読み出された距離情報とを照合して現在地点の位置情報を検出する位置検出部とをさらに含み、曲率情報算出部は、現在地点から先の位置情報に基づいて、現在地点から先の走行領域について曲率情報を算出する。この場合、現在地点から先の走行領域についての曲率情報を走行時に算出できる。したがって、既定経路全域についての曲率情報を予め算出して記憶部に記憶しておく必要はないので、記憶すべき曲率情報のデータ量を少なくできる。
【0012】
また好ましくは、位置情報および距離情報は、事前に既定経路を走行することによって得られる。この場合、自動走行車両が事前に既定経路を走行することによって位置情報および距離情報を得ることができる。また、位置情報および距離情報は、自動走行車両と同種の他の車両を走行させることによって得ることもできる。
【0013】
さらに好ましくは、既定経路を走行中に各計測点で、自動走行車両から見て所定の方向を撮像する撮像部と、撮像部で撮像された複数の撮像データに基づいてビジュアルオドメトリの手法によって各計測点の位置情報を得る位置取得部とをさらに含む。この場合、各計測点の位置情報を容易かつ精度よく得ることができる。
【0014】
好ましくは、自動走行車両が移動するための車輪と、車輪の回転角度を検出するための角度検出部と、角度検出部の検出結果に基づいて各計測点の距離情報を得る距離取得部とをさらに備える。この場合、各計測点の距離情報を容易かつ精度よく得ることができる。
【0015】
また好ましくは、現在地点から先の走行領域について算出された曲率情報に基づいて、現在地点から先の走行領域について車速を制御する車速制御部をさらに含む。この場合、現在地点から先の走行領域について曲率情報に基づいて自動走行車両の車速を制御できる。したがって、前方にカーブがあれば、自動走行車両はカーブの曲がり具合に応じて減速してカーブを走行できるので、自動走行車両にかかる横Gを抑制でき、乗員にとって良好な乗り心地が得られる。
【0016】
さらに好ましくは、車速制御部は、自動走行車両への指示車速に基づいて自動走行車両の前方の第1範囲を決定する第1決定部と、第1範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第1目標車速を決定する第2決定部と、指示車速および第1目標車速のうち小さい方を指示車速として選択する選択部とを含む。この場合、自動走行車両への指示車速に基づいて自動走行車両の前方の第1範囲が決定される。たとえば指示車速が大きくなれば第1範囲も大きくなり、曲率情報の最小値の検索範囲を適切に設定できる。そして、第1範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第1目標車速が決定され、指示車速および第1目標車速のうち小さい方が目標となる車速として選択される。これにより、自動走行車両の車速が制御され、自動走行車両にかかる横Gを抑制できる。
【0017】
好ましくは、車速制御部は、第1範囲より前方の第2範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第2目標車速を決定する第3決定部をさらに含み、選択部は、指示車速と第1目標車速と第2目標車速との中で最小値を指示車速として選択する。この場合、第1範囲より前方の第2範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第2目標車速が決定され、指示車速と第1目標車速と第2目標車速との中で最小値が目標となる車速として選択される。このように、第1範囲の前方の第2範囲も考慮して目標となる車速を決定することによって、自動走行車両の車速が制御され、乗員にとってより快適な走行が可能となる。
【0018】
また好ましくは、第2決定部は、第1範囲内の前記曲率情報の最小値を今回値と前回値とで重み付けし、重み付けされた最小値に基づいて前記第1目標車速を決定し、第3決定部は、第2範囲内の曲率情報の最小値を今回値と前回値とで重み付けし、重み付けされた最小値に基づいて第2目標車速を決定する。この場合、曲率情報の最小値のノイズを抑制でき、不所望な減速を防止できる。
【0019】
さらに好ましくは、既定経路に設けられた誘導線からの磁界を検出する磁界検出部と、車速を検出する車速検出部と、曲率情報と車速検出部によって検出された現在の車速とに基づいて走行継続時間を算出する時間算出部と、磁界検出部が検出する誘導線からの磁界が閾値未満のとき、走行継続時間が経過したか否かに基づいて、自動走行車両の走行を継続するか否かを判断する判断部とをさらに含む。この場合、曲率情報と現在の車速とに基づいて走行継続時間が算出される。そして、磁界検出部が検出する既定経路に設けられた誘導線からの磁界が閾値未満のとき、走行継続時間が経過するまで自動走行車両の走行が継続され、その後停止される。これにより、一時的な停電、誘導線の瞬間的な断線、誘導線の部分的な断線が発生した場合であっても、算出された走行継続時間の間は継続して走行でき、即時に走行を停止しなくてもよい。
【0020】
好ましくは、時間算出部は、前後の曲率情報に基づいて、磁界検出部が誘導線からの磁界を検出可能な範囲から逸脱するまでの走行可能距離を算出する第1算出部と、現在の車速に基づいて停止に必要な距離である停止距離を算出する第2算出部と、走行可能距離と停止距離とに基づいて走行継続距離を算出する第3算出部と、走行継続距離と現在の車速とに基づいて走行継続時間を算出する第4算出部とを含む。この場合、磁界検出部が検出する誘導線からの磁界が閾値未満となっても、走行を走行継続時間の間は継続し、その後、磁界検出部が誘導線からの磁界を検出可能な範囲から逸脱しないように走行を停止できる。したがって、その後の走行再開時に、磁界検出部が誘導線からの磁界を検出できるので、円滑に走行を再開できる。
【0021】
また好ましくは、走行継続時間は上限値を有する。この場合、磁界検出部が検出する誘導線からの磁界が閾値未満となっている状態で、自動走行車両が長時間走行することを抑制できる。直線路を走行している場合に効果的である。
【0022】
さらに好ましくは、他の車両からの電波を受信することによって他の車両の存在を検出する電波型の検出部と、撮像部の検出範囲を設定する範囲設定部と、曲率情報に基づいて検出部の感度を設定する感度設定部とをさらに含む。たとえば曲がりの小さなカーブや直線路などの見通しの良い経路では、撮像部の検出範囲を検出部の検出範囲より大きくでき、撮像部の方が他の車両を検出し易い。その一方、たとえば見通しの悪い曲がりの大きなカーブでは、経路上の他の車両が撮像部の有効視野に入りきらず、検出部の方が他の車両を検出し易い場合がある。したがって、曲率情報が曲がり具合が小さいことを示す場合には、撮像部の検出範囲を大きくすることによって、主として撮像部が他の車両の検出機能を担い、その一方、曲率情報が曲がり具合が大きいことを示す場合には、検出部の感度を適切に設定することによって、主として検出部が他の車両の検出機能を担う。これにより、曲率情報に拘わらず他の車両を良好に検出でき、良好な追突防止機能が得られる。
【0023】
好ましくは、感度設定部は、さらに自動走行車両への指示車速に基づいて検出部の感度を設定する。この場合、指示速度に応じて検出部の感度すなわち検出範囲を調整できる。
【0024】
また好ましくは、感度設定部は、さらに感度切替指示に基づいて検出部の感度を設定する。この場合、既定経路やその周辺環境の状況に応じて検出部の感度すなわち検出範囲を調整できる。
【0025】
さらに好ましくは、既定経路に設けられた発信部材が発信する感度切替指示を受信する受信部をさらに含む。この場合、感度切替指示を容易かつ確実に受信できる。
【0026】
この発明は、ゴルフカートに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、道路上に描かれた案内線の有無に拘わらず既定経路の曲率情報を算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。ここでは、この発明の一実施形態に係る自動走行車両10をゴルフカートに適用した場合について説明する。なお、以下の説明において前後、左右、上下とは、自動走行車両10の前シート部18に乗員がステアリングホイール22に向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。
【0030】
図1および
図2を参照して、自動走行車両10は、フレーム部12、一対の前輪14、一対の後輪16、前シート部18、後シート部20、ステアリングホイール22、フロントピラー24a,24b、リアピラー26a,26b、および屋根部28を含む。
【0031】
一対の前輪14はフレーム部12の前部に回転可能に支持され、一対の後輪16はフレーム部12の後部に回転可能に支持される。前シート部18および後シート部20は、図示しない連結部材等を介してフレーム部12に支持される。前シート部18の前方にステアリングホイール22が設けられる。ステアリングホイール22よりも前方にフロントピラー24a,24bが設けられ、後シート部20よりも後方にリアピラー26a,26bが設けられる。フロントピラー24a,24bの下端部およびリアピラー26a,26bの下端部は、フレーム部12に支持される。屋根部28は、前シート部18、後シート部20およびステアリングホイール22の上方を覆うようにフロントピラー24a,24bおよびリアピラー26a,26bによって支持される。
【0032】
さらに
図3を参照して、自動走行車両10は、誘導センサ30、定点センサ32、撮像部34、曲率情報算出装置36、回転角センサ38、受信アンテナ40、送信アンテナ42、追突防止センサ44、操舵ユニット46、駆動ユニット48、ブレーキユニット50、バッテリ52、制御部54および記憶部56を含む。
【0033】
誘導センサ30は、前輪14よりも前方に位置し、取付バー58を介してフレーム部12の前端部に取り付けられ、既定経路Pに設けられた誘導線L(後述)が発する磁界を検出可能に地面に対向するように車体の下部に設けられる。誘導センサ30は、センサ部30a,30bおよび30cを含む。センサ部30a,30bおよび30cはそれぞれ、取付バー58の下面において左右方向の中央、左側および右側に設けられる。
【0034】
定点センサ32は、前輪14よりもやや後方に位置し、フレーム部12に取り付けられ、既定経路Pに設けられた定点部材60(後述)からの信号を読取可能に地面に対向するように車体の下部に設けられる。定点センサ32は、左右に並ぶメインセンサ部32aとサブセンサ部32bとを含み、メインセンサ部32aが内側に、サブセンサ部32bが外側に設けられる。
【0035】
撮像部34は、たとえば左右の画像センサ34a,34bを含むステレオカメラであり、屋根部28の上面の前端部かつ左右方向中央部に設けられる。画像センサ34a,34bは、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary MOS)等の一般的な可視光センサで構成される。撮像部34からの撮像データは曲率情報算出装置36に入力される。
【0036】
曲率情報算出装置36は、制御部36aおよび記憶部36bを含む。制御部36aは、たとえばCPUを含み、画像処理や前方の曲率情報の算出等を行う。記憶部36bは、たとえばメモリやハードディスク等によって構成される。記憶部36bには、後述する位置情報、距離情報および
図5(d)に示すテーブル等が記憶される。
【0037】
回転角センサ38は、車輪の回転角を検出するものであり、たとえばロータリーエンコーダからなり右の前輪14に設けられる。
【0038】
受信アンテナ40は、前方車両からの電波を受信できるように、フレーム部12ひいては車体の前端部に設けられる。送信アンテナ42は、後方車両に電波を送信できるように、フレーム部12ひいては車体の後端部に設けられる。追突防止センサ44は、電波型のセンサであり、受信アンテナ40からの電波に基づいて、前方に車両があるか否かを判断する。
【0039】
操舵ユニット46は、ステアリングホイール22を含み、一対の前輪14に接続され、一対の前輪
14を操舵する。駆動ユニット48は、たとえばエンジンからなり、一対の前輪14および/または一対の後輪16を駆動する。ブレーキユニット50は、一対の前輪14および/または一対の後輪16を制動する。バッテリ52は、たとえば12Vバッテリであり、曲率情報算出装置36および制御部54に電力を供給する。
【0040】
制御部54は、たとえばCPUを含み、記憶部56は、たとえばメモリやハードディスク等によって構成される。記憶部56には、
図7に示すグラフや、
図9、
図18および
図19に示すテーブルのデータや、
図6、
図13、
図20〜
図24に示す動作を行なうためのプログラム等が記憶される。制御部54には、誘導センサ30、定点センサ32、曲率情報算出装置36、回転角センサ38および追突防止センサ44からの信号や情報が入力される。制御部54は、これらの信号や情報に基づいて、操舵ユニット46、駆動ユニット48およびブレーキユニット50に指示し、自動走行車両10の操舵、車速、駆動、制動および停止等を制御し、撮像部34や追突防止センサ44の検出範囲を指示する。
【0041】
図4を参照して、このような自動走行車両10は、既定経路Pの中央に設けられた誘導線Lに沿って自動走行する。誘導線Lは既定経路Pの地中に埋め込まれており、誘導センサ30は、誘導線Lが発する磁界を受信して、制御部54に検出信号を出力する。制御部54は、誘導線Lがセンサ部30aの中央から左右方向の15cm以内に収まるように、操舵ユニット46を制御する。また、左のセンサ部30bおよび右のセンサ部30cによって、自動走行車両10が左右のいずれに偏っているかが検出され、制御部54は、その検出結果に基づいて、自動走行車両10のセンサ部30aが誘導線Lに近づくように、操舵ユニット46を制御する。これにより、自動走行車両10は既定経路P上を自動走行する。
【0042】
図4および
図16を参照して、誘導線Lに沿って、起点C0を含む予め定められた複数の位置に、定点部材60が埋設される。定点部材60は、たとえば複数の磁石の組み合わせで構成され、この実施形態では磁石60a〜60eのように5つの磁石からなる。定点センサ32は、定点部材60からの磁極情報を読取可能に構成され、たとえば磁極センサからなる。定点部材60は、たとえば、自動走行車両10への指示車速を指示する指示信号や、追突防止センサ44の感度切替を指示する指示信号を発信する。自動走行車両10が定点部材60上を通過すると、定点センサ32は、当該通過した定点部材60からの指示信号を受信し、当該指示信号を制御部54に対して出力する。制御部54は、指示信号に応じて、自動走行車両10の走行、停止、減速等や、追突防止センサ44の感度切替を制御する。
【0043】
また、定点センサ32は、自動走行車両10が定点部材60を通過した時点で、その旨の情報を制御部54に出力する。制御部54は、定点部材60を通過した時点を基準に、回転角センサ38から出力される車輪の回転角に関する情報に基づき、定点部材60を通過してから走行した距離を計測する。制御部54は、右の前輪14の径に関する情報を記憶部56に予め記憶しておけば、所定の時点からの当該前輪14の回転角(回転数)と径とに基づいて、所定の時点からの自動走行車両10の走行距離を算出することができる。したがって、起点C0を通過した時点を基準とすることで、制御部54は、起点C0から現在地点までの走行距離を計測することができる。
【0044】
記憶部36bに記憶される位置情報および距離情報は、事前に自動走行車両10が既定経路P上を走行することによって、曲率情報算出装置36の制御部36aで生成される。
【0045】
位置情報を作成するに際しては、まず自動走行車両10が既定経路P上を走行しながら、撮像部34が所定のフレームレートで連続的に自動走行車両10の前方を撮像する。これによって、複数の計測点毎に、撮像部34によって撮像データを得ることができる。
【0046】
次に、制御部36aは、撮像部34によって得られた複数の撮像データに基づいて、自動走行車両10の位置と車体の向きを算定する。この算定方法として、たとえばビジュアルオドメトリの手法を用いることができる。具体例としては、制御部36aが撮像データ上の複数の特徴点を抽出すると共に、各特徴点の、連続した2枚の撮像データ上における変位を検出することで行われる。これにより、2枚の撮像データ間での自動走行車両10の位置の変化量と向きの変化量が算出される。
【0047】
そして、起点C0を原点として、算出した変化量を起点C0から逐次加算することにより、自動走行車両10の位置と向きの計6成分(x座標、y座標、z座標、ロール角、ピッチ角、ヨー角)からなる計測点における位置情報が取得される。制御部36aは、このようにして、既定経路Pの全般にわたって自動走行車両10の位置情報を作成し、記憶部36bに記憶させる。
【0048】
また、制御部36aは、撮像部34によって自動走行車両10の前方が撮像された各地点すなわち各計測点における自動走行車両10の位置情報と、制御部54から送られた起点C0から当該各計測点までの自動走行車両10の走行距離に関する距離情報とを紐付けし、記憶部36bに記憶する。
【0049】
たとえば、自動走行車両10が既定経路P上を走行し、撮像部34が既定経路Pの起点C0から先の走行領域において1秒間に30回のフレームレートで自動走行車両10の前方を撮像する。この場合、隣り合う計測点間の距離は、自動走行車両10の車速によって異なり、既定経路Pに沿って計測点毎に、撮像データひいては位置情報が得られるとともに、走行距離に関する距離情報が得られる。そして、計測点毎の位置情報と距離情報とが紐付けされ、記憶部36bに記憶される。このようにして、記憶部36bには、既定経路Pにおける起点C0から複数の計測点の位置情報と距離情報とが記憶される。
【0050】
上述のような事前処理が行なわれたのち、実際の走行時には、次のようにして自動走行車両10の前方の既定経路Pの曲率情報が曲率情報算出装置10によって得られる。
【0051】
まず、制御部54は、自動走行車両10が既定経路P上を走行中、回転角センサ38からの出力に基づいて、起点C0から現在地点までの走行距離に関する走行距離情報を算出し、曲率情報算出装置36の制御部36aへ出力する。
【0052】
制御部36aは、この走行距離情報と、記憶部36bから読み出された距離情報とを照合し、距離情報に紐付けされている自動走行車両10の現在地点の位置情報を検出する。このとき、走行距離情報が最も近い距離情報の計測点を自動走行車両10の現在地点として、その位置情報が検出される。
【0053】
制御部36aは、現在地点から先の位置情報に基づいて、現在地点から先の走行領域について曲率情報を算出する。このとき、制御部36aは、複数の計測点の中から、第1所定間隔で3つの計測点からなる計測点群を抽出する。たとえば、2.5m間隔で3つの計測点からなる計測点群が抽出される。この場合、第1所定間隔は、2.5m間隔となる。
【0054】
そして、制御部36aは、抽出された計測点群に含まれる3つの計測点の位置情報に基づいて、3つの計測点を通る円弧の曲率半径を算出する。
図5(a)を参照して、隣り合う計測点を結ぶ線分A1,A2のそれぞれについて垂直二等分線B1,B2を引き、交点Oを求める。交点Oが3つの計測点を通る円の中心となり、交点Oと各計測点との距離rが円の半径すなわち曲率半径となる。曲率半径は、計測点の位置情報のうち2次元の平面座標(x座標,y座標)を用いて算出できる。
【0055】
図5(a)を参照して、このような曲率半径の計算は、まず、自動走行車両10の現在地点の計測点を1フレーム目の計測点とし、当該1フレーム目の計測点と、2.5m先の計測点と、5m先の計測点とからなる計測点群について行なわれる。そして、
図5(b)を参照して、計測点を1フレームずつずらしていき、5m先の計測点が1024フレーム目に達するまで、合計1022個の各計測点群について行なわれる。
【0056】
そして、
図5(c)を参照して、既定経路Pを1フレーム目の計測点から20m先まで2m間隔で区切り、各区間に属する曲率半径を平均して、2m間隔で平均曲率半径を得る。なお、3つの計測点のうち起点C0に最も近い計測点が属する区分を、当該3つの計測点から得られた曲率半径が属する区分とする。制御部36aは、得られた平均曲率半径を
図5(d)に示すテーブルに基づいて、16段階のCAN送信用曲率情報に変換して、記憶部36bに記憶する。この例では、2m間隔が第2所定間隔に相当する。自動走行車両10は、既定経路Pを走行しながら上述の処理を繰り返し、曲率情報を得る。
【0057】
このようにして、制御部36aは、複数の計測点の中から異なる複数の計測点群を抽出し、抽出された複数の計測点群のそれぞれについて曲率情報としての曲率半径を算出する。そして、制御部36aは、既定経路Pを第2所定間隔で区切り、同一区間に属する計測点に関する曲率半径を平均して同一区間の曲率情報としての平均曲率半径を算出する。
【0058】
このような曲率情報算出装置36を含む自動走行車両10によれば、記憶部36bに記憶された複数の計測点の中から、第1所定間隔で3つの計測点からなる計測点群が抽出される。そして、抽出された計測点群に含まれる3つの計測点の位置情報に基づいて、3つの計測点を通る円弧の曲率半径に関する曲率情報が算出される。したがって、道路上に描かれた案内線の有無に拘わらず既定経路Pの曲率情報を算出することができる。
【0059】
抽出された複数の計測点群のそれぞれについて曲率情報が算出される。したがって、既定経路Pの曲率情報を連続的に得ることができ、既定経路Pの形状の把握が容易になる。
【0060】
区間毎に曲率半径を平均することによって、区間毎に信頼性の高い曲率情報を得ることができる。
【0061】
現在地点から先の走行領域についての曲率情報を走行時に算出できる。したがって、既定経路P全域についての曲率情報を予め算出して記憶部36bに記憶しておく必要はないので、記憶すべき曲率情報のデータ量を少なくできる。
【0062】
自動走行車両10が事前に既定経路Pを走行することによって位置情報および距離情報を得ることができる。また、位置情報および距離情報は、自動走行車両10と同種の他の車両を走行させることによって得ることもできる。
【0063】
撮像部34で撮像された複数の撮像データに基づいてビジュアルオドメトリの手法によって各計測点の位置情報を得る。したがって、各計測点の位置情報を容易かつ精度よく得ることができる。
【0064】
回転角センサ38の検出結果に基づいて各計測点の距離情報を得る。したがって、各計測点の距離情報を容易かつ精度よく得ることができる。
【0065】
このようにして得られた曲率情報は、自動走行車両10の車速、瞬断発生時の停止動作、および追突防止協調機能の動作など、自動走行車両10の制御に利用できる。
【0066】
この実施形態では、制御部36aが、曲率情報算出部、位置検出部および位置取得部に相当する。回転角センサ38が、角度検出部に相当する。制御部54が、距離取得部、車速制御部、第1決定部、第2決定部、第3決定部、選択部、時間算出部、判断部、第1算出部と、第2算出部、第3算出部、第4算出部、範囲設定部および感度設定部に相当する。誘導センサ30が、磁界検出部に相当する。追突防止センサ44が、検出部に相当する。定点部材60が、発信部材に相当する。定点センサ32が、受信部に相当する。走行距離取得部は、回転角センサ38および制御部54を含む。車速検出部は、回転角センサ38および制御部54を含む。
【0067】
図6を参照して、曲率情報に基づいて、自動走行車両10の車速を制御する動作について説明する。なお、
図6に示す動作は、20msecのサイクルで繰り返し行なわれる。
【0068】
まず、制御部54は、指示車速に基づいて自動走行車両10の前方の第1範囲を取得する(ステップS1)。第1範囲は、
図7に示す指示車速と第1範囲との関係を示すデータに基づいて決定される。
【0069】
制御部54は、制御部36aからCAN通信によって送信された20m先までの曲率情報の中から、第1範囲内の曲率情報の最小値(平均曲率半径も最小値となる)を検索し、選択する(ステップS3〜S7)。ここでは、
図5(d)に示すテーブルに基づいて16段階の曲率情報に変換されたデータのうち、第1範囲内に含まれる最小値が選択される。
【0070】
制御部54は、選択された曲率情報の最小値を前回値によって重み付けする(ステップS9)。この実施形態では、
図8に示すIIRフィルタの処理が制御部54によって行なわれる。すなわち、今回選択された曲率情報の最小値が5%、前回の重み付けによって得られた(IIRフィルタ処理後)の値が95%の割合で加算され、重み付け後の曲率情報の最小値が得られる。
【0071】
ついで、制御部54は、第2範囲内の曲率情報の最小値を検索し、選択する(ステップS11〜S15)。ここでは、第1範囲の前方かつ自動走行車両10の20m先までが、第2範囲となり、
図5(d)に示すテーブルに基づいて16段階の曲率情報に変換されたデータのうち、第2範囲内に含まれる最小値が選択される。
【0072】
制御部54は、選択された曲率情報の最小値を前回値によって重み付けする(ステップS17)。この実施形態では、ステップS9と同様に、
図8に示すIIRフィルタの処理が制御部54によって行なわれる。すなわち、今回選択された曲率情報の最小値が5%、前回の重み付けによって得られた(IIRフィルタ処理後)の値が95%の割合で加算され、重み付け後の曲率情報の最小値が得られる。
【0073】
そして、制御部54は、ステップS9で得られた曲率情報の最小値に基づいて、第1範囲の第1目標車速を算出し(ステップS19)、ステップS17で得られた曲率情報の最小値に基づいて、第2範囲の第2目標車速を算出する(ステップS21)。ここでは、
図9(a)に示すテーブルに基づいて第1目標車速が得られ、
図9(b)に示すテーブルに基づいて第2目標車速が得られる。
【0074】
制御部54は、第1目標車速と第2目標車速とを比較し(ステップS23)、第2目標車速が小さければ第2目標車速を目標車速とし(ステップS25)、そうでなければ第1目標車速を目標車速とする(ステップS27)。さらに、制御部54は、指示車速と目標車速とを比較し(ステップS29)、目標車速が小さければ目標車速を指示車速とし(ステップS31)、そうでなければ指示車速を変更せず、終了する。制御部54は、ステップS29およびS31で得られた指示車速に基づいて自動走行車両10の車速を制御する。
【0075】
このような動作によれば、現在地点から先の走行領域について曲率情報に基づいて自動走行車両10の車速を制御できる。したがって、前方にカーブがあれば、自動走行車両10はカーブの曲がり具合に応じて減速してカーブを走行できるので、自動走行車両10にかかる横Gを抑制でき、乗員にとって良好な乗り心地が得られる。
【0076】
自動走行車両10への指示車速に基づいて自動走行車両10の前方の第1範囲が決定される。たとえば指示車速が大きくなれば第1範囲も大きくなり、曲率情報の最小値の検索範囲を適切に設定できる。そして、第1範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第1目標車速が決定され、第1範囲より前方の第2範囲内の曲率情報の最小値に基づいて第2目標車速が決定される。指示車速と第1目標車速と第2目標車速との中で最小値が目標となる車速として選択される。これにより、自動走行車両10にかかる横Gを抑制できる。
図10に示すように、既定経路Pの曲率半径が変化しても自動走行車両10にかかる横Gは安定する。また、第1範囲の前方の第2範囲も考慮して目標となる車速を決定することによって、自動走行車両10の車速が制御され、乗員にとってより快適な走行が可能となる。
【0077】
第1範囲内の重み付けされた曲率情報の最小値に基づいて前記第1目標車速を決定し、第2範囲内の重み付けされた曲率情報の最小値に基づいて第2目標車速を決定する。したがって、曲率情報の最小値のノイズを抑制でき、不所望な減速を防止できる。
【0078】
ついで、自動走行車両10の瞬断発生時の停止動作について説明する。
【0079】
誘導線が発する磁界を誘導センサで検出することで誘導線に沿って走行するよう操舵を制御する自動走行車両では、従来、瞬断によって誘導線からの磁界がなくなると、操舵を制御できなくなるため、操舵をオフにして(操舵角を維持して)停止モードに即時移行していた。
【0080】
図11を参照して、自動走行車両10では、誘導線Lからの磁界が検出できなくなった場合でも、誘導センサ30の中央のセンサ部30aと誘導線Lとの左右方向の距離が設定距離d(±15cm)になるまで走行を継続できる。
【0081】
ここで、走行継続距離および走行継続時間は、以下のようにして算出される。
【0082】
図12(a)を参照して、瞬断発生前の曲率半径と自動走行車両10の先0−2m区間の平均曲率半径とに基づいて、センサ部30aと誘導線Lとの左右方向の距離が設定距離dになるまでに走行できる走行可能距離Aが算出される。
【0083】
図12(a)において、Aは走行可能距離、dは設定距離、Rは瞬断発生前の曲率半径(車両が走行しようとしている経路)(破線)、R’は先0−2m区間の平均曲率半径(実線)、aはR−R’、θはR−dとなる角度を示す。
【0084】
余弦定理よりcosθは以下の式で算出され、したがって、走行可能距離Aは以下の式で算出される。
【0085】
cosθ=|(2aR−2dR+d
2)/2a(R−d)|
【0086】
θ=ArcCos{|(2aR−2dR+d
2)/2a(R−d)|}
【0088】
停止に必要な距離である停止距離Bは、
図12(b)に示すテーブルを参照して、現在の車速に基づいて算出される。
【0089】
走行継続距離は、(走行継続距離=走行可能距離A−停止距離B)により算出される。
【0090】
走行継続時間は、(走行継続時間=走行継続距離/現在の車速)により算出される。
【0091】
図13を参照して、自動走行車両10の瞬断発生時の停止動作について説明する。なお、
図13に示す動作は、20msecのサイクルで繰り返し行なわれる。
【0092】
まず、制御部54は、誘導センサ30の検出電圧が0.5V未満か否かを判断する(ステップS101)。これにより、誘導センサ30が検出する誘導線Lからの磁界が閾値未満か否かが判断される。検出電圧が0.5V以上であれば、瞬断が発生しておらず、制御部54は、瞬断発生前の曲率半径と先0−2m区間の平均曲率半径とに基づいて、走行可能距離を算出する(ステップS103)。ここでは、瞬断発生前の曲率半径として、後述するステップS119において得られた曲率半径が用いられ、先0−2m区間の平均曲率半径として、曲率情報算出装置36から送信された先0−2m区間の平均曲率半径が用いられ、走行可能距離は上述の式によって算出される。これにより、前後の曲率情報に基づいて、誘導センサ30が誘導線Lからの磁界を検出可能な範囲から逸脱するまでの走行可能距離が算出される。ついで、制御部54は、
図12(b)に示すテーブルを参照して、現在の車速に基づいて停止距離を算出し(ステップS105)、走行可能距離から停止距離を減算して、走行継続距離を得る(ステップS107)。なお、制御部54は、回転角センサ38からの出力と所要時間とに基づいて、車速を算出する。
【0093】
そして、制御部54は、走行継続距離が0以下か否かを判断し(ステップS109)、走行継続距離が0以下であれば、走行継続距離を0にして(ステップS111)、ステップS113へ進む。ステップS109において、走行継続距離が0より大きければ、ステップS113へ進む、ステップS113では、制御部54は、(走行継続距離/現在の車速)を算出して、走行継続時間を算出する。そして、制御部54は、走行継続時間が500msecより大きいか否かを判断する(ステップS115)。走行継続時間が500msecより大きければ、制御部54は、走行継続時間を上限値の500msecに設定し(ステップS117)、ステップS119へ進む。瞬断発生前は走行継続距離と現在の車速とに基づいて走行継続時間を算出し、タイマを設定するが、たとえば直線路の場合、算出された走行継続距離ひいては走行継続時間は大きくなり、長時間走行可能な場合があるため、走行継続時間の上限値を500msecとする。ステップS115において、走行継続時間が500msec以下であれば、ステップS119へ進む。ステップS119では、制御部54は、先0−2m区間の曲率半径を瞬断発生前の曲率半径として、終了する。
【0094】
一方、ステップS101において、検出電圧が0.5V未満であれば、瞬断が発生したと判断され、制御部54は、瞬断発生前の曲率半径と先0−2m区間の平均曲率半径とに基づいて、走行可能距離を算出する(ステップS121)。走行可能距離は上述の式によって算出される。そして、制御部54は、算出された走行可能距離が前回値よりも小さいか否かを判断し(ステップS123)、走行可能距離が前回値よりも小さければ、制御部54は、走行可能距離を更新し(ステップS125)、ステップS127へ進む。このように、瞬断発生後、走行可能距離は小さい値に更新されていく。ステップS123において、走行可能距離が前回値以上であれば、ステップS127へ進む。ステップS127では、制御部54は、
図12(b)に示すテーブルを参照して、現在の車速に基づいて停止距離を算出する。そして、制御部54は、走行可能距離から停止距離を減算して、走行継続距離を得る(ステップS129)。
【0095】
そして、制御部54は、走行継続距離が0以下か否かを判断し(ステップS131)、走行継続距離が0以下であれば、制御部54は、走行継続距離を0にして(ステップS133)、ステップS135へ進む。ステップS131において、走行継続距離が0より大きければ、ステップS135へ進む、ステップS135では、制御部54は、走行継続時間が20msec以上か否かを判断する。走行継続時間が20msec以上であれば、制御部54は、走行継続時間を20sec減算し(ステップS137)、ステップS139へ進む。このように瞬断発生時には
図13に示す動作の1サイクル毎に20msecずつ減算される。ステップS135において、走行継続時間が20msec未満であれば、ステップS139へ進む。ステップS139において、制御部54は、走行継続時間が0以下か否かを判断する。走行継続時間が0以下であれば、誘導線Lと誘導センサ30のセンサ部30aとが設定距離dよりも離れないように、制御部54は、停止と判断して停止モードへ移行する(ステップS141)。一方、走行継続距離が0より大きければ、制御部54は、走行継続と判断して走行継続モードのまま(ステップS143)、終了する。
【0096】
このような動作によれば、曲率情報と現在の車速とに基づいて走行継続時間が算出される。そして、誘導センサ30が検出する既定経路Pに設けられた誘導線Lからの磁界が閾値未満のとき、走行継続時間が経過するまで自動走行車両10の走行が継続され、その後停止される。これにより、一時的な停電、誘導線の瞬間的な断線、誘導線の部分的な断線が発生した場合であっても、算出された走行継続時間の間は継続して走行でき、即時に走行を停止しなくてもよい。
【0097】
誘導センサ30が検出する誘導線Lからの磁界が閾値未満となっても、走行を走行継続時間の間は継続し、その後、誘導センサ30が誘導線Lからの磁界を検出可能な範囲から逸脱しないように走行を停止できる。したがって、その後の走行再開時に、誘導センサ30が誘導線Lからの磁界を検出できるので、円滑に走行を再開できる。
【0098】
走行継続時間は上限値を有するので、誘導センサ30が検出する誘導線Lからの磁界が閾値未満となっている状態で、自動走行車両10が長時間走行することを抑制できる。直線路を走行している場合に効果的である。
【0099】
たとえば、
図14(a)に示すように既定経路Pの直線路で瞬断したときには、操舵がオフされる(操舵角が維持される)ため、そのまま既定経路P上を直進し、走行継続時間が500msec経過すると停止モードに入り、その後自動走行車両10は停止する。
図14(b)に示すように既定経路Pの直線路でカーブ突入前に瞬断したときには、操舵がオフされるため、そのまま直進し、誘導線Lと誘導センサ30のセンサ部30aとが設定距離dよりも離れないように、自動走行車両10は停止する。
図14(c)に示すように既定経路Pにおいて曲率半径に変化のないカーブの途中で瞬断したときには、操舵がオフされるため、そのまま既定経路Pに沿って旋回し、走行継続時間が500msec経過すると停止モードに入り、その後自動走行車両10は停止する。
図14(d)に示すような既定経路Pにおいて曲率半径に変化のあるカーブ(瞬断発生前の曲率半径と先0−2m区間の平均曲率半径とが異なるカーブ)の途中で瞬断したときには、操舵がオフされるため、カーブとは異なる方向に旋回し、誘導線Lと誘導センサ30のセンサ部30aとが設定距離dよりも離れないように、自動走行車両10は停止する。
【0100】
さらに、自動走行車両10の追突防止協調機能について説明する。
【0101】
自動走行車両10は、追突防止センサ44を利用した追突防止機能を有する。
図15(a)および(b)を参照して、自動走行車両10では、前方の車両の送信アンテナから発信された所定周波数の電波を受信アンテナ40が受信すると、追突防止センサ44に与えられる。追突防止センサ44は、入力された電波と電圧閾値とを比較し、当該電波が電圧閾値より大きければ、前方に車両があることを検知する。
【0102】
追突防止センサ44は、低感度、中感度および高感度の3つの感度を有する。たとえば、低感度の検出範囲は1.8±0.15mであり、中感度の検出範囲は3.8±0.15mであり、高感度の検出範囲は4.2±0.15mである。感度ひいては検出範囲は、追突防止センサ44の電圧閾値を切り替えることで調整でき、電圧閾値が小さくなるほど感度が高くなる。この実施形態では、検出範囲とは、追突防止センサ44が前方の車両を検知可能な状態での、受信アンテナ40から前方の車両の送信アンテナまでの最大距離をいう。
【0103】
追突防止センサ44の低感度への切替え指示は、たとえば以下のように行なわれる。
【0104】
図16を参照して、既定経路Pの誘導線Lに沿って、5つの磁石60a〜60eからなる定点部材60が地中に埋め込まれており、磁石60a〜60cはその表面がN極となるように設けられ、磁石60d,60eはその表面がS極となるように設けられる。磁石60a〜60dがメイン磁石となり、磁石60eがサブ磁石となる。そして、自動走行車両10が誘導線Lに沿って走行するときに、定点センサ32のメインセンサ部32aが磁石60a〜60dの磁極をこの順で検知し、サブセンサ部32bが磁石60eの磁極を検知することによって、自動走行車両10は低感度切替指示を受信し、追突防止センサ44の感度が低感度へ切り替えられる。
【0105】
また、
図17(a)を参照して、自動走行車両10は、撮像部34を利用した追突防止機能を有する。自動走行車両10では、屋根部28の前端部に設けられた撮像部34が自動走行車両10の前方を撮像し、既定経路P上の障害物(前方の車両)を検出できる。撮像部34によって必要とされる検出範囲は、曲率情報に基づいて決定され、たとえば自動走行車両10の前方、最大10mに設定される。また、
図17(b)に示すように、撮像部34によって既定経路Pの幅分を検出できる。
【0106】
図18(a)および(b)は、追突防止センサ44の検出範囲を設定するためのテーブルである。
図18(a)は撮像部機能オンの場合を示し、曲率情報と低感度切替フラグとに基づいて、追突防止センサ44の感度が低感度または中感度に設定され、検出範囲がそれに応じて設定される。撮像部機能オン時には、高感度は無効とされる。また、指示車速が3.6km/hのときには低感度となる。
図18(b)は撮像部機能オフの場合を示し、指示車速に基づいて追突防止センサ44の感度が低感度、中感度または高感度に設定される。
【0107】
図19は、撮像部34の検出範囲を設定するためのテーブルである。
図19には、曲率情報に対する指示車速、撮像部34の検出範囲および撮像部34の検出可能範囲が示される。ここで、検出範囲とは、撮像部34が検出する必要がある範囲をいい、検出可能範囲とは、撮像部34が検出することが可能な範囲をいう。曲率情報が2または3(曲率半径では6m超10m以下)では、撮像部34の検出可能範囲が検出範囲以下になるため、低感度切替フラグのオン/オフに拘わらず、追突防止センサ44を中感度に設定する(
図18参照)。また、曲率情報が1以下(曲率半径では6m以下)では、指示車速が3.6km/hになり、追突防止センサ44は低感度で十分に停止可能である。したがって、このとき、撮像部34において、検出可能範囲が検出範囲を下回っても支障はない。
【0108】
図20〜
図24を参照して、自動走行車両10の追突防止協調機能について説明する。なお、
図20〜
図24に示す動作は、20msecのサイクルで繰り返し行なわれる。
【0109】
図20を参照して、追突防止協調機能の全体動作について説明する。
【0110】
まず、制御部54は、曲率情報算出装置36からCAN情報により曲率情報を取得する(ステップS201)。受信できた場合には撮像部34による追突防止機能がオンになる。
【0111】
ついで、制御部54は、
図19に示す検出範囲切替テーブルを参照して、指示車速に基づいて、撮像部34の検出範囲を設定する(ステップS203)。言い換えれば、曲率半径ひいては曲率情報に基づいて、撮像部34の検出範囲を設定できる。制御部54は、曲率情報算出装置36を通して撮像部34の検出範囲を指示する。
【0112】
つぎに、制御部54は、定点センサ検出処理を行なう(ステップS205)。このとき、定点部材60によって追突防止センサ44の受信感度が指示される。動作の詳細については後述する。
【0113】
そして、制御部54は、
図6を参照して上述した車速制御処理により、指示車速を変更し、現時点での曲率情報を決定する(ステップS207)。現時点での曲率情報は、
図6に示す車速制御動作のステップS9によって得られる曲率情報である。
【0114】
さらに、制御部54は、曲率情報、指示車速および受信感度指示に基づいて、追突防止センサ44の受信感度設定処理を行なう(ステップS209)。動作の詳細については後述する。
【0115】
図21および
図22を参照して、定点センサ検出処理について説明する。
【0116】
まず、制御部54は、定点センサ32のメインセンサ部32aがメイン磁石を検出したか否かを判断し(ステップS301)、メイン磁石を検出すれば、制御部54は、メイン磁石の極性がS極か否かを判断する(ステップS303)。S極であれば、現定点情報をSとし(ステップS305)、一方、N極であれば、現定点情報をNとし(ステップS307)、ステップS309へ進む。ステップS301においてメイン磁石を検出していないときも、ステップS309へ進む。
【0117】
ステップS309では、制御部54は、定点センサ32のサブセンサ部32bがサブ磁石を検出したか否かを判断する。サブ磁石を検出すれば、制御部54は、サブ磁石の極性がS極か否かを判断する(ステップS311)。S極であれば、確定定点情報をSとし(ステップS313)、一方、N極であれば、確定定点情報をNとし(ステップS315)、ステップS317へ進む。ステップS309においてサブ磁石を検出していないときも、ステップS317へ進む。
【0118】
ステップS317では、制御部54は、低感度切替定点か否かを判断する。ここでは、確定定点情報=S、現定点情報=S、第3定点情報=N、第2定点情報=N、第1定点情報=Nであれば、低感度切替定点と判断し、解除距離=200mとして低感度切替指示を行なう。低感度切替定点であれば、制御部54は、低感度切替フラグをオンし(ステップS319)、徐行3.6km/h指示フラグをオンし(ステップS321)、解除距離をクリアし(ステップS323)、ステップS325へ進む。ステップS317において、低感度切替定点でなければ、ステップS325へ進む。
【0119】
ステップS325では、制御部54は、低感度切替フラグがオンか否かを判断する。低感度切替フラグがオンであれば、解除距離を200mに設定し(ステップS327)、ステップS329へ進む。一方、ステップS325において低感度切替フラグがオンでなければ、ステップS329へ進む。ステップS329において、制御部54は、走行距離が解除距離以上か否かを判断する。走行距離が解除距離以上であれば、制御部54は、低感度切替フラグをオフし(ステップS331)、徐行3.6km/h指示フラグをオフし(ステップS333)、ステップS335へ進む。ステップS329において、走行距離が解除距離以上でなければ、ステップS335へ進む。
【0120】
ステップS335では、制御部54は、徐行3.6km/h指示フラグがオンであるか否かを判断する。徐行3.6km/h指示フラグがオンであれば、制御部54は、目標速度を3.6km/hに設定し(ステップS337)、指示車速が目標車速より大きくかつ撮像部34の機能が無効か否かを判断する(ステップS339)。指示車速が目標車速より大きくかつ撮像部34の機能が無効であれば、指示車速を目標車速にして(ステップS341)、ステップS343へ進む。ステップS335およびS339がNOのときは、ステップS343へ進む。
【0121】
ステップS343では、第2定点情報を第1定点情報に移し、ステップS345では、第3定点情報を第2定点情報に移し、ステップS347では、現定点情報を第3定点情報に移し、終了する。
【0122】
ついで、
図23および
図24を参照して、追突防止センサ44の受信感度設定処理動作について説明する。
【0123】
まず、制御部54は、撮像部34の機能が有効か否かを判断する(ステップS401)。曲率情報算出装置36と制御部54とのCAN通信が成立している場合、撮像部34の機能が有効となる。撮像部34の機能が有効であれば、制御部54は、低感度切替フラグがオンか否かを判断する(ステップS403)。低感度切替フラグがオンであれば、制御部54は、指示車速が3.6km/h以下であるか、または現曲率情報が4以上(曲率半径が10mより大きい)か否かを判断する(ステップS405)。指示車速が3.6km/h以下であるか、または現曲率情報が4以上であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を低感度に設定する(ステップS407)。一方、指示車速が3.6km/hより大きくかつ現曲率情報が4未満であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を中感度に設定する(ステップS409)。
【0124】
ステップS403において低感度切替フラグがオンでなければ、制御部54は、指示車速が3.6km/h以下であるか否かを判断する(ステップS411)。指示車速が3.6km/h以下であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を低感度に設定し(ステップS413)、一方、指示車速が3.6km/h以下でなければ、制御部54は、現曲率情報が2以上(曲率半径が6mより大きい)か否かを判断する(ステップS415)。現曲率情報が2以上であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を中感度に設定し(ステップS417)、一方、現曲率情報が2未満であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を低感度に設定する(ステップS419)。
【0125】
ステップS401において、撮像部34の機能が無効であれば、制御部54は、指示車速が8km/h以下か否かを判断する(ステップS421)。指示車速が8km/h以下であれば、制御部54は、指示車速が3.6km/h以下か否かを判断する(ステップS423)。指示車速が3.6km/h以下であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を低感度に設定し(ステップS425)、一方、指示車速が3.6km/hより大きくかつ8km/h以下であれば、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を中感度に設定する(ステップS427)。ステップS421において、指示車速が8km/hより大きければ、制御部54は、追突防止センサ44の受信感度を高感度に設定する(ステップS429)。
【0126】
このような動作によれば、たとえば曲がりの小さなカーブや直線路などの見通しの良い経路では、撮像部34の検出範囲を追突防止センサ44の検出範囲より大きくでき、撮像部34の方が既定経路P上の前の車両を検出し易い。その一方、たとえば見通しの悪い曲がりの大きなカーブでは、既定経路P上の前の車両が撮像部34の有効視野に入りきらず、追突防止センサ44の方が前の車両を検出し易い場合がある。したがって、曲率情報が曲がり具合が小さいことを示す場合には、撮像部34の検出範囲を大きくすることによって、主として撮像部34が前の車両の検出機能を担い、その一方、曲率情報が曲がり具合が大きいことを示す場合には、追突防止センサ44の感度を適切に設定することによって、主として追突防止センサ44が前の車両の検出機能を担う。これにより、曲率情報に拘わらず前の車両を良好に検出でき、良好な追突防止機能が得られる。
【0127】
さらに自動走行車両10への指示車速に基づいて追突防止センサ44の感度を設定することによって、指示速度に応じて追突防止センサ44の感度すなわち検出範囲を調整できる。
【0128】
さらに感度切替指示に基づいて追突防止センサ44の感度を設定することによって、既定経路Pやその周辺環境の状況に応じて追突防止センサ44の感度すなわち検出範囲を調整できる。
【0129】
既定経路Pに設けられた定点部材60が発信する感度切替指示を定点センサ32が受信することによって、感度切替指示を容易かつ確実に受信できる。
【0130】
図25に示す例では、有効視野が大きい(曲率半径が24m超の)経路では、指示車速が14km/hと大きくなり、撮像部34の検出範囲が10.0mになり、追突防止センサ44は、低感度切替指示があれば低感度になる。一方、有効視野が小さい(曲率半径が6m超8m以下の)カーブでは、指示車速が6km/hと小さくなり、撮像部34の検出範囲が4.0m(検出可能範囲は3.7m)になり、追突防止センサ44は、中感度になる。
【0131】
このように遠方車両の検出が可能な撮像部34の機能を利用するとともに、曲率情報(曲率半径)に基づいて追突防止センサ44の感度を可変にすることによって、追突防止機能向上と走行速度アップとを両立できる。
【0132】
なお、距離情報は、起点C0からの自動走行車両10の走行距離に限定されず、起点C0からの自動走行車両10の右の前輪14の回転角に関する情報であってもよい。
【0133】
また、既定経路Pに設けられた定点部材60は、磁石に限定されず、RFID(Radio Frequency IDentification)タグであってもよい。
【0134】
この発明に係る自動走行車両は、ゴルフカートに好適に用いることができるが、これに限定されず、工場や果樹園などで使用される無人作業車両など、経路(走路)に沿って地中に埋設された誘導線上を自動走行する任意の無人車両に好適に用いられる。また、この発明に係る自動走行車両は、四輪車に限らず、三輪車でもよい。