特許第6738382号(P6738382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一建設工業株式会社の特許一覧

特許6738382橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体
<>
  • 特許6738382-橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体 図000002
  • 特許6738382-橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738382
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20200730BHJP
   E02D 19/04 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   E01D22/00 A
   E02D19/04
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-158111(P2018-158111)
(22)【出願日】2018年8月27日
(65)【公開番号】特開2020-33696(P2020-33696A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】595135671
【氏名又は名称】第一建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(74)【代理人】
【識別番号】100201237
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 久人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】春日 秀文
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4625532(JP,B1)
【文献】 特開平09−302329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E02D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割壁材、止水材を介して橋脚の周方向および高さ方向に連結することにより橋脚の外周を囲む筒状体に構成した橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体であって、隣接する前記分割壁材間に介在される前記止水材は、水に浸けても吸水せず膨張しない合成ゴム製のパッキンの表裏面に、水に浸けると吸水し膨張する水膨張性シールが付設された三層構造材に構成されていることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体。
【請求項2】
請求項1記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記パッキンはエチレンプロピレンジエンゴム製であることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記水膨張性シールは熱可塑性エラストマーと高吸水性ポリマーからなるものであることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記分割壁材は、外周部に連結用フランジ部が設けられており、隣接するこの分割壁材の連結用フランジ部間に前記止水材が介在されていることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海などの水域に設けられている橋脚の補修・補強工事に用いる仮締切り構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や海などに架けられた橋は、その橋脚に経年劣化や地震などにより損傷を生じると、補修・補強工事を行う。
【0003】
具体的には、橋脚の周囲に筒状の仮締切り構造体を構築し、この仮締切り構造体によって水がその内側に入らないようにして作業スペース(ドライエリア)を確保する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この仮締切り構造体について説明すると、複数の分割壁材が、止水用のパッキンを介して橋脚の周方向および高さ方向に連結されることにより橋脚の外周を囲む筒状体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6273328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仮締切り構造体は、上記したように複数の分割壁材間に例えば合成ゴム製のパッキンを介在させることによって内側に水が入り込まないようにしているが、このような止水構造では、特に水深が深いところに仮締切り構造体を設置した際には、水圧の影響でパッキンに変形を生じて水漏れ(仮締切り構造体内へ浸水)しまうことがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点に注目し、これを解決しようとするもので、内部に水が浸入しない完全止水を実現できる橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
複数の分割壁材2、止水材4を介して橋脚1の周方向および高さ方向に連結することにより橋脚1の外周を囲む筒状体に構成した橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体Aであって、隣接する前記分割壁材2間に介在される前記止水材4は、水に浸けても吸水せず膨張しない合成ゴム製のパッキン5の表裏面に、水に浸けると吸水し膨張する水膨張性シール6が付設された三層構造材に構成されていることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記パッキン5はエチレンプロピレンジエンゴム製であることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記水膨張性シール6は熱可塑性エラストマーと高吸水性ポリマーからなるものであることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体に係るものである。
【0012】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体において、前記分割壁材2は、外周部に連結用フランジ部3が設けられており、隣接するこの分割壁材2の連結用フランジ部3間に前記止水材4が介在されていることを特徴とする橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、仮締切り構造体が水に浸かると、止水材の二層の水膨張性シールが吸水し膨張してパッキンだけでは埋めきれなかった隣接する分割壁材間の隙間を埋めることになり、これにより分割壁材間が完全に止水されて、水深の深いところでの橋脚補修・補強工事であっても、仮締切り構造体内への水漏れを生じることなく仮締切り構造体内で良好に橋脚補修・補強作業を行うことができる極めて実用性に優れた橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体となる。
【0014】
また、請求項3記載の発明においては、前記作用効果を確実に発揮する止水材を簡易構成にして容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体となる。
【0015】
また、請求項4記載の発明においては、複数の分割壁材間が止水材(三層構造材)で確実に止水される構成を簡易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の使用状態を示す概略説明図である。
図2】本実施例の要部を示す説明拡大分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明の仮締切り構造体Aは、複数の分割壁材2が、止水材4を介して橋脚1の周方向および高さ方向に連結されることにより橋脚1の外周を囲む筒状体に構成されているが、隣接する前記分割壁材2間に介在される前記止水材4は、パッキン5の表裏面に水膨張性シール6が付設された三層構造材に構成されている。
【0019】
この仮締切り構造体Aを橋脚1に沿って水中へ降下させると、水に浸かった部分の前記止水材4は、そのうちの二層の水膨張性シール6が吸水し膨張してパッキン5だけでは埋めきれなかった隣接する分割壁材2間の隙間を埋めることになる。
【0020】
従って、止水材4によって分割壁材2間が完全に止水されることになり、たとえ水深の深いところでの橋脚補修・補強工事であっても、仮締切り構造体A内への水漏れを生じることなく仮締切り構造体A内で良好に橋脚補修・補強作業を行うことができる。
【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例の仮締切り構造体Aは、中心部に橋脚1を貫通配設する貫通孔部7が設けられている底板材8の外周縁に、円筒状の囲い壁9が立設状態に連結された有底円筒状に構成されている。尚、仮締切り構造体Aの形状は、本実施例に限らず、橋脚1の形状に応じて適宜設計変更可能である。
【0023】
また、この囲い壁9は、複数の分割壁材2が、止水材4を介して橋脚1の周方向および高さ方向に連結されることにより橋脚1の外周を囲む円筒状体に構成されている。
【0024】
更に詳しくは、前記分割壁材2として採用された平面視湾曲板状で正面視横長方形状のライナープレート2を、前記橋脚1の周方向および高さ方向に複数組み合せ連結して所要高さの前記円筒状囲い壁9が形成されている。
【0025】
また、ライナープレート2は、外周部に内向きに突出する連結用フランジ部3が設けられていて、隣接するライナープレート2のこの連結用フランジ部3同士を図示省略のボルト・ナットで連結し得るように構成されており、隣接するこの分割壁材2の外周全周の連結用フランジ部3間に帯状の前記止水材4が介在されている。
【0026】
本実施例の止水材4は、図1図2に示すように、薄厚シート状のパッキン5の表裏面に、薄厚シート状の水膨張性シール6が付設されたシート状の三層構造材に構成されている。
【0027】
また、パッキン5は、合成ゴム製(例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)スポンジゴム製)であって、前記接続用フランジ部3に沿って付設可能な帯状形態のものが採用されている。尚、天然ゴム製のパッキン5が採用されていても良い。
【0028】
また、水膨張性シール6は、熱可塑性エラストマーと高吸水性ポリマーからなるものであって、前記パッキン5をより薄厚で且つパッキン5と同等の帯状形態のもの採用されている。
【0029】
更に詳しくは、本実施例の水膨張性シール6は、日本化学塗料株式会社製のケミカシート(登録商標)が採用されており、このケミカシートに備わっている片面の粘着部を利用して、ケミカシートが前記パッキン5の表裏面に重合状態に付設されている。
【0030】
この三層構造の止水材4が、その表裏の水膨張性シール6が、隣接する分割壁材2の夫々の連結用フランジ部3に接するようにして複数の分割壁材2間に介在されており、図1に示すように、仮締切り構造体Aを橋脚1に沿って水中へ降下させると、水に浸かった部分の止水材4の外側二層の水膨張性シール6が吸水し膨張してパッキン5だけでは埋めきれなかった隣接する分割壁材2間の隙間を埋めることになり、これによって分割壁材2間が完全に止水されるように構成されている。
【0031】
出願人の試作実験によると、止水材4として、パッキン5一層だけのものや、水膨張性シール6一層だけのものや、パッキン5の片面にだけ水膨張性シール6が付設された二層構造のものを使用した場合には水漏れを生じてしまうことがあったが、本実施例の三層構造の止水材4によれば、完全止水を達成できることが確認されている。
【0032】
図中符号10は仮締切り構造体Aを水の浮力に抗して水中に止める浮上防止用ブラケットである。
【0033】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0034】
1 橋脚
2 分割壁材
3 連結用フランジ部
4 止水材
5 パッキン
6 水膨張性シール
A 仮締切り構造体
図1
図2