特許第6738402号(P6738402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738402防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738402
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20200730BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   E04H17/16 104
   E04B1/94 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-241754(P2018-241754)
(22)【出願日】2018年12月25日
(65)【公開番号】特開2020-101067(P2020-101067A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2019年8月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599018952
【氏名又は名称】有限会社ナベ企画
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 保
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295510(JP,A)
【文献】 実公昭57−023639(JP,Y2)
【文献】 実開昭60−152761(JP,U)
【文献】 実公昭57−034286(JP,Y2)
【文献】 特開平08−060900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H17/00−17/26
E04B1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木質柱(10)と、
パネル状の不燃性木繊セメント板(20)と、
コンクリート製の基礎(30)と、
木質の土台(31)と、
木質の笠木(40)と、
から構成される木質塀の施工方法であって、
前記木質柱(10)及び前記笠木(40)の一面又は対向する両面に前記不燃性木繊セメント板(20)の縁部を嵌合されるための凹状嵌合溝、及び前記木質柱(10)の一端を前記土台(31)へ、挿入するためのホゾ(33)及びホゾ溝(32)の加工を行う木質部材加工工程(A)と、
前記凹状嵌合溝(11)に前記不燃性木繊セメント板(20)を落とし込む落とし込み工程(B)と、
前記笠木(40)を固定部材(41)で固定する笠木固定工程(C)と、
から構成され、
前記落とし込み工程(B)の際に、前記不燃性木繊セメント板(20)の裏面(U)を塀の表側(H)となるように配置することを特徴とする防火性を有する木質塀の施工方法(1)。
【請求項2】
前記落とし込み工程(B)において、前記基礎(30)と接触する最低部のみにコンクリートパネル(21)を用いることを特徴とする請求項1に記載の防火性を有する木質塀の施工方法(1)。
【請求項3】
前記笠木(40)より上方に突き出した木質柱(10)の凹部嵌合溝(11)にも、該凹部嵌合溝(11)を埋めるために前記不燃性木繊セメント板(20)から切り出した部材を嵌合させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防火性を有する木質塀の施工方法(1)。
【請求項4】
複数の木質柱(10)と、
パネル状の不燃性木繊セメント板(20)と、
コンクリート製の基礎(30)と、
笠木(40)と、
から構成される木質塀であって、
前記木質柱(10)には、一面又は対向する両面に前記不燃性木繊セメント板(20)を嵌合させるための凹状嵌合溝(11)が設けられ、
前記不燃性木繊セメント板(20)は裏面(U)が塀の表側(H)となるように配置されて前記凹状嵌合溝(11)に嵌合状態で前記木質柱(10)と一体を成し、
前記笠木(40)が固定部材(41)で固定され、
前記基礎(30)と接触する最低部のみにコンクリートパネル(21)を用いたことを特徴とする防火性を有する木質塀(2)。
【請求項5】
前記笠木(40)より上方に突き出した木質柱(10)の凹部嵌合溝(11)にも、該凹部嵌合溝(11)を埋めるために前記不燃性木繊セメント板(20)から切り出した部材を嵌合させたことを特徴とする請求項4に記載の防火性を有する木質塀(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質塀の施工技術に関し、より詳しくは、不燃性木繊セメント板の裏面に施されるモルタル金鏝仕上げ面を利用して、塗装可能で防火性を有する木質塀の施工方法及びその施工方法によって得られる防火性を有する木質塀の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による災害の発生が多発する中、建築構造物の倒壊による被害への対応が問題視されている。特に、子供達が表面に絵を描いた小学校のブロック塀が倒壊するという事故は記憶に新しく、このような事故の再発防止は地震の多い我が国にとって急務であるといえる。またブロック塀では所定の間隔で控え塀が必要となり、敷地の有効利用を阻害する要因ともなっている。そこで、軽量且つ倒壊しにくい木質塀が注目されることとなるが、木材を用いた塀では火災に対して延焼の問題もあり、建築基準法や消防法の規制を受けることとなる。また、屋外に設置される木質塀は、雨や風に直接当ると腐食や変形が激しく、数年で修繕や、場合によっては交換が必要となり、学校等の万年塀として、木材使用は敬遠されがちという問題がある。
【0003】
このような課題を解決すべく、従来からも種々の技術が提案されている。例えば、発明の名称を「繊維補強モルタル合成板住宅構法」とするもので、「在来の木造住宅における構造用木製合板あるいは構造用木製パネル等に替えて繊維補強モルタル合成板を採用することにより、耐用年数増加、耐震性向上、及び耐火性能の向上等を図ることができ、しかも、在来の木造住宅とほぼ同様に施工性も良好な繊維補強モルタル合成板住宅構法を提供する。」ことを課題とし、具体的には、「少なくともセメント及び水を含むモルタルに耐腐食性の繊維を混入した基材を板状に形成してなる繊維補強モルタル合成板を、木製合板やスレート材等に代わる住宅の壁や床等の構造耐力部材として用いる。例えば、木造在来軸組工法に用いる壁の筋交いに替えて、柱材の相互を繋ぐ中間水平材を配置し、繊維補強モルタル合成板を柱材相互間に差し渡し、コンクリートビスやスクリュー釘等の締結手段で柱材及び中間水平材に直接固定する。」という解決手段を採用した発明が公知技術となっている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、耐用年数増加、耐震性向上、及び耐火性能の向上等を図ることができる点はよいとして、締結手段にコンクリートビスやスクリュー釘等を用いていることから、作業が煩雑であり、労力負担を軽減できないという問題を残すものであり、本発明の課題を解決するには至っていないといえる。
【0004】
また、発明の名称を「組立塀用塀パネル」とするもので、「石塀としての色調風合いを備え,強度に優れ,更に現場での寸法適応性を有する組立て塀用塀パネルを提供する。」ことを課題とし、具体的には、「発泡合成樹脂の厚肉基材の表面に薄肉下地層と薄肉仕上層をそれぞれ接着積層して塀パネルとしたもので,薄肉下地層はアクリルモルタルのポリマーセメントモルタル層に合成繊維系メッシュ材を埋込み一体化してなり,また薄肉仕上層はアクリルバインダーにより天然石砕石を一体化したものとしてある。厚肉基材の強度不足を薄肉下地層が補完し,薄肉仕上層のクラック,剥落を防止して全体として強度に優れた石塀としての色調風合いを有する塀パネルを得られる一方,現場切断が可能であることによって現場寸法に適応できる。」という解決手段を採用した発明が公知技術となっている(特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の発明は、パネル同士をジョイントで繋いでいくだけで構成できるため作業性は高いものの、剛性に問題を残すものであり、本発明の課題を解決するには至っていないと考えられる。
【0005】
また、発明の名称を「住宅建物の塀構造」とするもので、「部外者に柔らかく暖かなイメージを与えることができる住宅建物の塀構造を提供する。」ことを課題とし、具体的には、「住宅建物の敷地を外方から囲む外構を設ける。この外構の道路側面北端側に、外構周囲方向に長い塀を立設する。この各塀の上端及び左右両側端にそれぞれ木製パネルを被覆する。」という解決手段を採用した発明が公知技術となっている(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に記載の発明は、塀の上端及び左右両側端にそれぞれ木製パネルを被覆することで、木材の有する柔らかく暖かなイメージを与えることはよいとして、木材の部分は、防腐剤を注意したものを用いたとしても、経年劣化は否めず、耐久性に問題を残すものであり、また、本発明のように書き換え可能な万年塀とする課題を解決するには至っていない。
【0006】
そこで、本発明者は、モルタル金鏝仕上げされた不燃性木繊セメント板の軽量・不燃性・裏面の表面性状といった特性に着目し、従来のブロック塀に代えて利用でき、また、学校や公共建築物の塀に子供達の絵や競技会等の成果を表示できる掲示板型のフェンスの施工を可能とする本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−107366号公報
【特許文献2】特開平5−93477号公報
【特許文献3】特開2000−220327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不燃性木繊セメント板の軽量・不燃性・表面性状といった特性と、裏面に施される平滑なモルタル金鏝仕上げ面を利用して、塗装可能で防火性能を有する木質塀の施工方法及びその施工方法によって得られる塀の技術の提供。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の木質柱と、パネル状の不燃性木繊セメント板と、コンクリート製の基礎と、木質の土台と、木質の笠木と、から構成される木質塀の施工方法であって、前記木質柱及び前記笠木の一面又は対向する両面に前記不燃性木繊セメント板の縁部を嵌合されるための凹状嵌合溝、及び前記木質柱の一端を前記土台へ、挿入するためのホゾ及びホゾ溝の加工を行う木質部材加工工程と、前記凹状嵌合溝に前記不燃性木繊セメント板を落とし込む落とし込み工程と、前記笠木を固定部材で固定する笠木固定工程と、から構成され、前記落とし込み工程の際に、前記不燃性木繊セメント板の裏面を塀の表側となるように配置する手段を採用する。
【0010】
また、本発明は、前記落とし込み工程において、前記基礎と接触する最低部のみにコンクリートパネルを用いる構成を採用することもできる。
【0011】
また、本発明は、複数の木質柱と、パネル状の不燃性木繊セメント板と、コンクリート製の基礎と、笠木と、から構成される木質塀であって、前記木質柱には、一面又は対向する両面に前記不燃性木繊セメント板を嵌合されるための凹状嵌合溝が設けられ、前記不燃性木繊セメント板は裏面が塀の表側となるように配置されて前記凹状嵌合溝に嵌合状態で前記木質柱と一体を成し、前記笠木が固定部材で固定された構成手段を採用することもできる。
【0012】
また、本発明は、前記基礎と接触する最低部のみにコンクリートパネルを用いた構成手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀によれば、そのほとんどの構成部材に不燃性の木繊セメント板を利用しており、燃性物である木材は柱のみであり、その柱は木繊セメント板を介して所定の間隔で配置されるため、セメントの特性上、熱を伝えにくいことから、温度の上昇による自己発火もしにくくなり、優れた防火性を有し延焼の恐れが極めて少ない軽量な木質の壁を構築できるという優れた効果を発揮する。
【0014】
また、本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀によれば、塀の表面に木繊セメント版の裏面を用いていることから、小学校における子供たちの絵を描いたり、協議会等の成果を掲示できる掲示板型の塀として利用することができるという優れた効果を発揮する。
【0015】
また、本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀によれば、軽量で地震の際に倒壊しにくく、また、国内に豊富にある人工林(森林資源)の有効利用を促進することが可能となり、間伐材や小径木の利用の途を広げ森林環境の整備に資するという優れた効果を発揮する。
【0016】
また、本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法及び防火性を有する木質塀によれば、従来の木の塀では劣化という問題があり、本発明では劣化の問題となる木質柱、笠木、及び土台に防腐剤加圧注入処理を施すことで、長い耐候性を維持できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法の工程を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る防火性を有する木質塀の基本構成を示す基本構成立面図である。
図3】本発明に係る不燃性木繊セメント板の表面性状を示す構造説明図である。
図4】本発明に係る不燃性木繊セメント板を縦方向に分割した実施例を説明する実施例立面図である。
図5】本発明に係る不燃性木繊セメント板を縦方向に分割した別の実施例を説明する実施例平面図である。
図6】本発明に係る不燃性木繊セメント板を定尺のまま縦方向に用い、底部にコンクリートパネルを用いる実施例を説明する実施例立面図である。
図7】本発明に係る不燃性木繊セメント板を前記笠木より上方に突き出した木質柱の凹部嵌合溝に嵌合させる実施例を説明する実施例説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法は、複数の木質柱と、パネル状の不燃性木繊セメント板と、コンクリート製の基礎と、木質の笠木と、木質の土台から構成される木質塀の施工方法であって、木質柱の一面又は対向する両面に前記不燃性木繊セメント板を嵌合させるための凹状嵌合溝を設けるなど、木質部材を加工する木質部材加工工程と、前記凹状嵌合溝に前記不燃性木繊セメント板を落とし込む落とし込み工程と、前記笠木を固定部材で固定する笠木固定工程と、から構成され、前記落とし込み工程の際に、前記不燃性木繊セメント板の裏面を塀の表側となるように配置することを最大の特徴とするものである。
以下、図面に基づいて説明する。なお、本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法の全体形状及び各部の形状は、下記に述べる説明に限定さるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を奏する形状及び寸法の範囲内で変更することができるものである。
【0019】
図1は、本発明に係る防火性を有する木質塀の施工方法1の作業工程を示すフローチャートである。全体としては、木質部材加工工程Aと、落とし込み工程Bと、笠木固定工程Cによって、防火性を有する木質塀2を得る施工方法である。以下、各工程について説明する。
【0020】
木質部材加工工程Aは、木質柱10、及び笠木40、への不燃性木繊セメント板20の縁部を嵌合によって結合するための嵌合用溝を加工する工程であり、ホゾ溝加工機や、トリマー等の加工機を用いて正確に加工することが望ましい。嵌め合い公差は隙間ばめとなるようにして一体的構成を成すようにすること、及び施工性を確保する。具体的には例えば、不燃性木繊セメント板20の厚みを30mmとした場合は溝部の寸法は32mm程度とする。なお、所定の間隔で配置される木質柱10の一端には、塀部を立設する布基礎等の基礎部に挿入するための差込部加工(ホゾ溝32の加工等)も含むものである。
【0021】
落とし込み工程Bは、木質部材加工工程Aで土台31、木質柱10に設けた凹状嵌合溝11へ不燃性木繊セメント板20を落とし込む工程である。
【0022】
笠木固定工程Cは、落とし込み工程Bで凹状嵌合溝11に落とし込まれた不燃性木繊セメント板20の上縁に設ける笠木40に込栓や螺合部材などの固定部材41によって固定する工程である。
【0023】
図2は、本発明に係る防火性を有する木質塀の基本構成を示す基本構成立面図であり、また、最も構成部材数を少なくし、掲示板としての掲示部の面積を広く取る構成である。なお、図面には、斜線で示した部分にコンクリートパネル50を取り入れた構成で示しているが、この部分については、不燃性木繊セメント板20を分割したものを用いてもよい。具体的には、係るコンクリートパネル50を分割したものを、底部パネルとして長手方向を横に配置し、その上に更に二枚の定尺(1820mm×910mm)な不燃性木繊セメント板20を、スパンが1860mmの木質柱10の凹部嵌合溝11に落とし込み、塀高さを約2000mmとする構成を示すものである。係る構成は、掲示板としての機能を最も発揮しやすい態様である。
【0024】
防火性を有する木質塀2は、木質柱10と、不燃性の木繊セメント板20と、木質の笠木40と、から構成され、全体として木材の利用率が高いが、不燃性の木繊セメント板20を介しているため類焼のおそれは極めて少ない木質の塀である。
【0025】
木質柱10は、スギや檜といった木材を垂直に立てて、建築物の支えとするもので、小径木や間伐材を利用することが望ましく更に、防腐剤加圧注入されたものを用いることがより望ましい。
【0026】
凹状嵌合溝11は、木質柱10の片側面又は両側面、笠木40の底面に不燃性木繊セメント板20を嵌め込むこみ、保持するための嵌合用溝である。
【0027】
不燃性木繊セメント板20は、不燃材料として認証を受けた(認証番号NM−1147)神戸不燃板工業株式会社(本社・工場:兵庫県三木市志染町三津田371)から提供されている不燃性の木繊セメント板(商品名:モクセンN片平板)が望ましい。係る不燃性木繊セメント板20は、木質系セメント板に独立多重(層)型空気層を内包させる事に成功して製品化されたもので、ランダムで巾の広い木削片と小さな木繊片の混合によってできる独立性の高い多層の空気室を内包したボードの片面にモルタル金鏝仕上げが施されている平滑な面を有し、従来の木毛セメント板と比較しても、軽量で、遮熱、防露、防腐、防蟻に優れ、外部からの影響を抑えることができ、塀自体の耐性向上に貢献するとともに、セメントの高い防音性を備えているので、防音フェンスとしての機能も発揮することができる。
【0028】
また、アスベストを一切使用していないので、人体への影響もなく安心して使用することができ、特に着目すべき点は、裏面にモルタル金鏝仕上げが施されている平滑な面には、通常の油性塗料で塗装ができるという点である。更に、係る不燃性木繊セメント板20は「グリーン購入法」での判断基準である国産間伐材を主原料として使用していることから、間伐材の有効利用と森林の環境保全という観点からも、有効な素材である。なお、同社から提供されている準不燃材として認証を受けた(認証番号QM−9056)の準不燃性の木繊セメント板(商品名:モクセンZ片平板)でもよい。
【0029】
裏面21は、不燃性木繊セメント板20のモルタル金鏝仕上げが施されている平らな面側であり、通常の油性塗料で塗装できる面であることから、本発明では、塀の表側Hに係る裏面21を配置することとしている。
【0030】
表面22は、細く裁断された目の粗い木材が不規則に積層された状態を露出している側の面である。本発明では、塀の裏側に配置することとしている。
【0031】
基礎30は、一般的な布基礎等であって、コンクリートの打設により成形される。
【0032】
土台31は、木質柱10を所定間隔で配置するためのホゾ溝32を有し、コンクリートの打設により基礎30と一体となる部材である。なお、防腐剤加圧注入されたものを用いることが望ましい。
【0033】
笠木40は、意匠的効果や塀を腐食から守る役割を持たせるのみならず、不燃性木繊セメント板20を木質柱10へ固定させることを主たる目的で用いる部材である。従って、最上部に位置にする不燃性木繊セメント板20の全体の上部縁に架け渡すのではなく、不燃性木繊セメント板20の一枚毎に対し、隣設する木質柱10間を繋ぐように設けることとなる。底面部には不燃性木繊セメント板20の上縁と嵌合する凹状嵌合溝11を有し、好ましくは木質柱10と当接する両端に凸部上の段差部を設け、木質柱10の凹状嵌合溝11に嵌合させる構成とする。なお、図面では、笠木40から木質柱10が、突出するように示されているが、係る構成は必須の要件ではなく、意匠的効果を狙ったものである。
【0034】
固定部材41は、込栓、又は釘やスクリューネジ或いはタッピングネジなどの係合部材であり、一般的に入手可能なものでよく、補強的に用いるものである。例えば、笠木40、不燃性木繊セメント板20、及び木質柱10との固定などである。
【0035】
コンクリートパネル50は、一般的に、コンクリートの型枠用合板を指し示すものであり、建築現場においては厚さ12mmの耐水ラワンベニヤを指し示すものであるが、本発明では不燃性木繊セメント板20と同じ厚み(25mm〜50mm)のコンクリート製の板条部材であることが必要である。係るコンクリートパネル50は、不燃性木繊セメント板20と同様に釘打ちでなく、ネジでも固定できるため、組み立てのみならず、解体も容易にできるというメリットがある。また、本発明の基本構成では、全体を通して全て不燃性木繊セメント板20としているが、基礎30と当接する最低部のみにこのコンクリートパネル50を用いる構成では、基礎30とともに地盤面32より低い土中に位置する塀部における耐腐食性を向上させることができる。
【0036】
塀の表側Hは、本発明に係る防火性を有する木質塀2の表側を意味し、人通りや敷地の外側から見る側である。即ち、本発明においては、ブロック塀の控壁のようなものは設定しないためどちらを表側にしても形状的には変化しないが、木繊セメント板20の裏面が係る表側Hとなるように配置しなければならないため、どちらを表とするか裏とするかを明確に定義付けたものである。
【0037】
地盤面GLは、図面上で地盤面を表す線であり、係る線は途中に埋没される部分を示すものである。
【0038】
図3は、本発明に係る木繊セメント板20の表面性状を示す構造説明図であり、図3(a)は不燃性木繊セメント板20の裏面21側の表面性状を示し、図3(b)は、表面22側の表面性状を示している。係る図面に表されている通り、表面21は平滑であり、裏面22ザラザラしており、中部層は独立多重層型の空気層となっている。
【0039】
図4は、本発明に係る防火性を有する木質塀2の基本構成を示す基本構成平面図であり、図4は、定尺である1820mm×910mmの不燃性木繊セメント板20を長手方向に三分割し、木質柱10のスパンを小さくしたものであり、塀としての剛性を確保する構成である。具体的には100mm角の木質柱10に深さ20mmの凹状嵌合溝11を加工することによって、柱のスパンが370mmとなる。
【0040】
図5は、本発明に係る不燃性木繊セメント板20を定尺の三分の二と三分の一に分割し、三分の一の方を更に三分割することによって、底部の不燃性木繊セメント板20と上部の不燃性木繊セメント板20と構成させ、約300mmの上に1820mmとを組み合わせる構成とし、高さ約2000mmの塀高さを確保することができるものである。
【0041】
図6は、本発明に係る不燃性木繊セメント板20を定尺のまま、縦方向に用い、底部にコンクリートパネル50を用いる実施例を説明する実施例立面図である。係る態様は可能な限り加工を少なくし、労力負担を軽減するとともに、腐食しやすい底部にコンクリートパネル50を用いることによって耐腐食性を考慮した構成である。具体的には、定尺(1820×910)のコンクリートパネル50を四等分し、約450mmの高さで幅が910mmをスパンが955mmとなる木質柱10の凹状嵌合溝11に落とし込み、その上に定尺(1820×910)の不燃性木繊セメント板20をそのまま長手方向を縦にして落とし込み約2000mmの塀高さを確保することができるものである。
【0042】
図7は、本発明に係る不燃性木繊セメント板を前記笠木より上方に突き出した木質柱の凹部嵌合溝に嵌合させる実施例を説明する実施例説明斜視図である。図面に示されている通り笠木40よりも上方に突き出した木質柱10の凹部嵌合溝11へ、溝部を埋めるように木繊セメント板20を配置することによって、火災の際に木繊セメント板20が熱を吸収し木質柱の燃焼を抑えることができる構成である。また、意匠的効果も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、学校や公共施設等の万年塀において、従来コンクリートブロックに変えて、軽量で安全な木質塀へと置き換えることが容易な万年塀を提供でき、産業上利用可能性は高いものと思慮いたします。
【符号の説明】
【0044】
1 防火性を有する木質塀の施工方法
2 防火性を有する木質塀
10 木質柱
11 凹状嵌合溝
20 不燃性木繊セメント板
21 裏面
22 表面
30 基礎
31 土台
32 ホゾ溝
33 ホゾ
40 笠木
41 固定部材
50 コンクリートパネル

A 木質部材加工工程
B 落とし込み工程
C 笠木固定工程
H 塀の表側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7