(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記光学要素が、前記走査手段と前記対物レンズの瞳面との間に配置された第1光学要素部と、該第1光学要素部と光学的に共役な位置に配置され、前記第1光学要素部と光学的に相補的な性質を有し、光学系全系において前記第1光学要素部の光学パワーを打ち消す第2光学要素部とを備える請求項1に記載の走査光学系。
前記第1光学要素部が、一方が前記対物レンズの瞳面に近接して配置され、他方が前記対物レンズの瞳面から前記光軸方向に間隔をあけて配置された2つの第1光学要素を備え、
前記第2光学要素部が、前記第1光学要素部の各前記第1光学要素とそれぞれ光学的に共役な位置に配置され、かつそれぞれ光学的に相補的な性質を有する2つの第2光学要素を備える請求項5に記載の走査光学系。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の走査光学系は、走査方向のパワーの異なるレンズを中間像面に配置するために、同レンズ上の傷や異物がノイズ像になるという不都合がある。また、同レンズを中間像面から離れた位置に配置すれば傷や異物のノイズ像を除去できるが、非点収差が発生してしまうという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、2つのガルバノミラーを瞳共役な状態にすると同時に、レンズ上の傷や異物による画像劣化を防止しつつ、非点収差の発生を防止することができる走査光学系および観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、光軸方向に間隔をあけて近接して配置され、光源からの光線を2つの走査方向に走査する2つの1次元の走査手段と、該走査手段によって走査された前記光線を対象物に集光させる対物レンズと、中間像面から前記光軸方向に離れた位置に配置され
且つ等価的に前記中間像面上に配置された2つの前記走査方向の光学パワーが異なる複数の光学要素とを備え、各該光学要素の前記位置および前記光学パワーが、2つの前記走査手段の前記光軸方向の間隔を補償するように設定されている走査光学系である。
【0006】
本態様によれば、2つの走査方向の光学パワーが異なる、いわゆるアナモルフィック光学要素により、2つの走査手段の光軸方向の間隔が補償されるように瞳結像関係が調整され、光軸方向にずれた2つの走査手段を同時に対物レンズの瞳面と光学的に共役な位置に配置することができる。この場合において、アナモルフィック光学要素を中間像面から離して配置することにより、合成の光学パワーを有するアナモルフィック光学要素を中間像面上に配置するのと等価的に作用させることができる。
【0007】
すなわち、アナモルフィック光学要素を中間像面から光軸方向に離すことによって、アナモルフィック光学要素の表面の傷や異物によるノイズの発生をなくすことができる。また、等価的に中間像面上に配置することによって、非点収差の発生を抑制することができる。
【0008】
上記態様においては、複数の前記光学要素が、前記中間像面を挟んで前記光軸方向に間隔をあけて配置され、複数の該光学要素の合成光学パワーが、2つの前記走査方向において異なっていてもよい。
このようにすることで、中間像面を挟んで光軸方向に間隔をあけた複数の光学要素が、走査方向毎に異なる光学パワーを有することにより、これらの合成の光学パワーは、2つの光学要素間に配置された1つの光学要素と等価になる。すなわち、2つの光学要素は、中間像面を挟んで、中間像面から離れた位置に配置されているにも関わらず、1つのアナモルフィック光学要素を中間像面上に置いたのと同等に作用する。これにより、非点収差を生ずることなく、2つの走査手段を両方とも、対物レンズの瞳面と光学的に共役な位置に配置することができる。そして、2つの光学要素を中間像面から離れた位置に配置しているので、光学要素上の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0009】
また、上記態様においては、複数の前記光学要素が、前記中間像面に対して一側に前記光軸方向に間隔をあけて配置された2つの光学要素であり、前記中間像面に近い側の前記光学要素と、前記中間像面から遠い側の前記光学要素とが互いに異なる符号の光学パワーを有していてもよい。
このようにすることで、2つの光学要素によってレトロフォーカス形レンズ系を構成することができる。これにより、2つの光学要素の外側に配置された1つのアナモルフィック光学要素と等価に機能させることができる。
【0010】
すなわち、等価な1つのアナモルフィック光学要素が中間像面上に位置するように、2つの光学要素を配置することにより、非点収差を生じさせることなく、2つの走査手段を対物レンズの瞳面と共役な状態に配置することができる。さらに、2つの光学要素は中間像面から離れているので、光学要素上の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0011】
また、上記態様においては、複数の前記光学要素が、アフォーカル光学系を構成し、前記走査手段と前記対物レンズの瞳面との間に配置されていてもよい。
このようにすることで、アフォーカル光学系によって、有限距離の物点に対して条件に応じた大きさの光軸方向の移動を伴って像点を結像させることができる。この性質を利用して、光軸方向に離れた2つの走査手段を対物レンズの瞳面と光学的に共役な状態に配置することができる。
【0012】
すなわち、対物レンズの瞳面近傍、あるいは、走査手段の近傍に、ガリレオ形のアフォーカル系をなす複数のアナモルフィック光学要素を配置すれば、2つの走査方向のいずれかに対応する瞳位置をもう1つの走査方向に対応する瞳位置に対してより近づけることもより遠ざけることも可能である。さらに、このようなアフォーカル光学系は中間像面から大きく離れているので、アナモルフィック光学要素上の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0013】
また、上記態様においては、複数の前記光学要素が、前記走査手段と前記対物レンズの瞳面との間に配置された第1光学要素部と、該第1光学要素部と光学的に共役な位置に配置され、前記第1光学要素部と光学的に相補的な性質を有し、光学系全系において前記第1光学要素部の光学パワーを打ち消す第2光学要素部とを備えていてもよい。
このようにすることで、アナモルフィック光学要素からなる第1光学要素部によって、光軸方向に間隔をあけた2つの走査手段を両方とも対物レンズの瞳面と光学的に共役な状態に配置することができる。そして、第1光学要素部と相補的な性質を有するアナモルフィック光学要素からなる第2光学要素部によって、第1光学要素部を中間像面から離したことによる非点収差を光学系全系として打ち消すことができる。
【0014】
これにより、第1光学要素部および第2光学要素部上の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
特に、2つのアナモルフィック光学要素を中間像面から大きく離す場合には、2つのアナモルフィック光学要素間では大きな非点収差が発生することになる。これにより、2つのアナモルフィック光学要素間にある他の光学要素と中間像面とが近接して位置する場合であっても、中間像自体が非点収差を有するため、他の光学要素上の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。その結果、インナーフォーカス等によって中間像面を大きく移動させても、他の光学要素上には、非点収差によって鮮明に結像することがなくなるため、中間像面が一致することを防止して、傷や異物によるノイズの発生を抑えることができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記第1光学要素部が、前記対物レンズの瞳面に近接し、前記光軸方向に間隔をあけて配置された2つの光学要素であり、前記瞳面に近い側の前記光学要素と、前記瞳面から遠い側の前記光学要素とが、互いに異なる符号の光学パワーを有していてもよい。
このようにすることで、第1の光学要素部がレトロフォーカス光学系を構成し、主点間距離を大きくして、対物レンズの瞳面と2つの走査手段とを光学的に共役な状態にすることができる。第1光学要素部および第2光学要素部を両方ともレトロフォーカス系により構成した場合、光源から対物レンズ側まで完全に瞳共役化することができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記第1光学要素部が、一方が前記対物レンズの瞳面に近接して配置され、他方が前記対物レンズの瞳面から前記光軸方向に間隔をあけて配置された2つの第1光学要素を備え、前記第2光学要素部が、前記第1光学要素部の各前記第1光学要素とそれぞれ光学的に共役な位置に配置され、かつそれぞれ光学的に相補的な性質を有する2つの第2光学要素を備えていてもよい。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記いずれかの走査光学系を有する観察装置である。
上記態様においては、インナーフォーカスを備えることにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2つのガルバノミラーを瞳共役な状態にすると同時に、レンズ上の傷や異物による画像劣化を防止しつつ、非点収差の発生を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る走査光学系1および観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置は、光源からの光線を被写体(対象物)Oに集光させて2次元的に走査させる走査光学系1を備えている。
【0021】
本実施形態に係る走査光学系1は、
図1(a)および
図1(b)に示されるように、光軸S方向に間隔をあけて近接して配置され、光源からの光線を2つの走査方向(x方向およびy方向)に走査する2つの1次元のガルバノミラー(走査手段)2,3と、該ガルバノミラー2,3によって走査された光線を、中間像を形成しつつリレーするリレーレンズ4,5と、該リレーレンズ4,5によってリレーされた光線を被写体Oに集光させる対物レンズ6と、中間像面Aから光軸S方向に離れた位置に配置された2つの走査方向の光学パワーが異なる、アナモルフィック光学要素としての2つのシリンドリカルレンズ(光学要素)7,8とを備えている。
【0022】
光線をx方向に走査するガルバノミラー2は、
図1(a)に示されるように、対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置されている。一方、光線をy方向に走査するガルバノミラー3は、
図1(b)に示されるように、ガルバノミラー2に対して間隔Δzだけ対物レンズ6の瞳面Bに近い位置に配置されている。
【0023】
各シリンドリカルレンズ7,8は、x方向には光学パワーがゼロであり、y方向には2つのガルバノミラー2,3の間隔Δzを補償し得る大きさの正の光学パワーを備えている。すなわち、y方向の光学パワー成分は、x方向よりも短い距離で対物レンズ6の瞳面Bにおいて光学的に共役な位置関係を達成することができる、x方向よりも大きな正の合成光学パワーを有している。
【0024】
本実施形態に係る走査光学系1においては、2つのシリンドリカルレンズ7,8は、中間像面Aを挟む位置に、相互に光軸S方向に間隔をあけて配置されている。これにより、各シリンドリカルレンズ7,8は中間像面Aから光軸S方向に離れた位置に配置されている。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る走査光学系1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る走査光学系1によれば、光源から発せられた光束が、まずx方向のガルバノミラー2によってx方向に走査され、次いで、y方向のガルバノミラー3によってy方向に走査される。これにより、2つのガルバノミラー2,3によって、光束を光軸Sに交差する2次元方向の任意の方向に向けることができるようになっている。
【0026】
2つのガルバノミラー2,3によって走査された光束は、第1のリレーレンズ4によって集光され、中間像面Aに結像され、第2のリレーレンズ5によって略平行光にされて対物レンズ6に入射され、対物レンズ6によって被写体Oの各位置に集光される。
【0027】
x方向のガルバノミラー2は、対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置されており、かつ2つのリレーレンズ4,5が所謂4f光学系に配置されているので、2つのリレーレンズ4,5の間においては、光束の主光線は、x方向には光軸Sに平行に配置されている。中間像面Aを挟んで配置されている2つのシリンドリカルレンズ7,8は、x方向の光学パワーを有しないので、光束は、x方向には集光されることなく、主光線が光軸Sに平行に維持されたまま、2つのシリンドリカルレンズ7,8を透過する。そして、第2のリレーレンズ5から射出される光束は略平行光となって対物レンズ6の瞳面Bにおいて主光線が光軸Sに交差する。
【0028】
一方、y方向のガルバノミラー3は、シリンドリカルレンズ7,8のパワーを考慮しない場合における対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置から対物レンズ6側に距離Δzだけずれて配置されているので、第1のリレーレンズ4を通過した時点で、光束の主光線は光軸Sに対して傾斜している。2つのシリンドリカルレンズ7,8がy方向に光学パワーを有するので、光束はy方向に集光されて、2つのシリンドリカルレンズ7,8を通過した時点で主光線が光軸Sに平行となる。そして、第2のリレーレンズ5から射出される光束はy方向にも、x方向と同様に、略平行光となって対物レンズ6の瞳面Bにおいて主光線が光軸Sに交差するようになる。
【0029】
なお、以下の説明は、ガルバノミラー2,3と対物レンズ6の瞳面Bとの共役関係を論じる際に、特に明記しなければシリンドリカルレンズ7,8等を考慮しない場合である。
すなわち、本実施形態によれば、中間像面Aを挟む位置に2つのシリンドリカルレンズ7,8を光軸S方向に間隔をあけて配置しているので、
図2(a)および
図2(b)に示すように、2つのシリンドリカルレンズ7,8の合成光学パワーと同等の光学パワーを有する単一のシリンドリカルレンズ9を中間像面Aに一致する位置に配置したのと等価な走査光学系1となっている。
【0030】
その結果、本実施形態によれば、2つのシリンドリカルレンズ7,8の合成光学パワーによって、x方向のガルバノミラー2のみならずy方向のガルバノミラー3も対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置関係に配置されるようになる。これにより、対物レンズ6の瞳面Bにおける光線のケラレが防止され、周辺視野においても均一な明るさの光を被写体Oに照射することができる。そして、上述のように中間像面Aに一致する位置に単一のシリンドリカルレンズ9を配置したのと等価な走査光学系1が構成されるので、非点収差の発生を防止することができるという効果がある。
【0031】
さらに、本実施形態に係る走査光学系1によれば、
図2(a)および
図2(b)の走査光学系10とは異なり、中間像面Aから光軸S方向に離れた位置に各シリンドリカルレンズ7,8を配置しているので、各シリンドリカルレンズ7,8に傷や異物が存在しても、それらがノイズとなって検出されてしまうことをより確実に防止することができるという利点がある。
【0032】
なお、本実施形態においては、ガルバノミラー2を対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置したので、シリンドリカルレンズ7,8のx方向の光学パワーをゼロに設定したが、ガルバノミラー3を対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置して、シリンドリカルレンズ7,8のx方向の光学パワーを負に設定し、y方向の光学パワーをゼロに設定してもよい。
【0033】
また、両方のガルバノミラー2,3を対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置からずらし、両走査方向x,yの光学パワーをゼロ以外の値に設定した任意のアナモルフィック光学要素を採用することにしてもよい。
また、2つのシリンドリカルレンズ7,8は同符号の光学パワーを有していればよく、同一の光学パワーを有している必要はない。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る走査光学系11について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る走査光学系1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る走査光学系11は、
図3(a)および
図3(b)に示されるように、シリンドリカルレンズ12,13の配置および構成において、第1の実施形態に係る走査光学系1と相違している。
第1の実施形態に係る走査光学系1においては、y方向に同符号の光学パワーを有する2つのシリンドリカルレンズ7,8を、中間像面Aを挟んで光軸方向に間隔をあけた位置に配置したが、これに代えて、走査光学系11は、
図3(b)に示されるように、y方向の縦断面が、両凸および両凹となる2つのシリンドリカルレンズ(光学要素)12,13を光軸S方向に並べて配置している点において、第1の実施形態に係る走査光学系1と相違している。
【0036】
y方向の縦断面が両凸となって正の光学パワーを有する一方のシリンドリカルレンズ12は、x方向の縦断面は平行平板であって光学パワーを有していない。また、y方向の縦断面が両凹となって負の光学パワーを有する他方のシリンドリカルレンズ13も、x方向の縦断面は平行平板であって光学パワーを有していない。
【0037】
y方向の縦断面が両凹レンズからなるシリンドリカルレンズ13は、y方向の縦断面が両凸レンズからなるシリンドリカルレンズ12よりも中間像面Aから離れた位置に配置されている。これにより、レトロフォーカス形のレンズ系が構成されている。2つのシリンドリカルレンズ12,13の組み合わせによって構成されたレトロフォーカス形のレンズ系は、2つのシリンドリカルレンズ12,13の外側に単一のシリンドリカルレンズを配置したのと等価に機能させることができる。
【0038】
すなわち、2つのシリンドリカルレンズ12,13の位置および光学パワーを調節することにより、1つのアナモルフィック光学要素としてのシリンドリカルレンズを中間像面Aに一致する位置に配置したのと等価なレトロフォーカス形のレンズ系を構成することができる。
その結果、2つのガルバノミラー2,3を両方とも対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置関係に配置することができ、対物レンズ6の瞳面Bにおける光線のケラレが防止され、周辺視野においても均一な明るさの光を被写体Oに照射することができる。そして、中間像面Aに一致する位置に単一のシリンドリカルレンズ9を配置した
図2の走査光学系10と等価な走査光学系11が構成されるので、非点収差の発生を防止することができる。
【0039】
さらに、各シリンドリカルレンズ12,13を中間像面Aから光軸S方向に離れた位置に配置しているので、各シリンドリカルレンズ12,13に傷や異物が存在しても、それらがノイズとなって検出されてしまうことをより確実に防止することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、レトロフォーカス形のレンズ系として、y方向に正の合成パワーを有するような2つのシリンドリカルレンズ12,13の組み合わせを用いたが、これに代えて、y方向に負の合成パワーを有するような2つのシリンドリカルレンズ12,13の組み合わせを用いてもよい。
【0041】
この場合、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、光学パワーを有していないx方向においては、x方向のガルバノミラー2と対物レンズ6の瞳面Bが光学的に共役な位置に配置されるようになっている。y方向においては、x方向のガルバノミラー2よりも瞳面Bから離れているy方向のガルバノミラー3が対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置されるようになっている。また、近接ガルバノミラー3を瞳面B,B′と共役な位置に配置したが一方の近接ガルバノミラー3を被写体O側に移動させ、移動させた近接ガルバノミラー3と対応するレンズも移動させるようになっている。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る走査光学系14について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る走査光学系11と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る走査光学系14は、
図5(a)および
図5(b)に示されるように、シリンドリカルレンズ15,16の配置および構成において、第2の実施形態に係る走査光学系11と相違している。
本実施形態に係る走査光学系14においては、第2の実施形態と同様に、
図5(b)に示されるように、y方向の縦断面が両凸と両凹の2種類のシリンドリカルレンズ15,16を用いているが、対物レンズ6の瞳面B近傍に配置されている点、および、瞳面Bから両凸、両凹の順に配列されて、ガリレオ形のアフォーカル系を構成している点で、第2の実施形態と相違している。
【0044】
このようにすることで、アフォーカル系が、有限距離の物点に対しては条件に応じた大きさの光軸S方向の移動を伴って像点を結像するという性質を利用して、ガルバノミラー3側からみたy方向の対物レンズ6の瞳位置を光軸S方向に移動させ、ガルバノミラー3を対物レンズ6の瞳面Bに光学的に共役な状態にすることができる。このようなアフォーカル光学系のレンズも中間像面Aからは離れているので、レンズの傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施形態に係る走査光学系17について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る走査光学系1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態に係る走査光学系17は、
図6(a)および
図6(b)に示されるように、シリンドリカルレンズ20の配置および構成において、第1の実施形態に係る走査光学系1と相違している。
本実施形態においては、2つのガルバノミラー2,3よりも光源側に複数のリレーレンズ18,19を備え、中間像面Aおよび瞳面Bがリレーレンズ4,5,18,19によってリレーされて、光学的に共役な位置A′,B′が形成されている。
【0047】
そして、第1の実施形態において中間像面Aの近傍に配置されていた一方のシリンドリカルレンズに代えて、シリンドリカルレンズ7,8の合成パワーと同等のパワーを有する1枚のシリンドリカルレンズ(第1光学要素部)28を配置し、中間像面Aを挟んで上記シリンドリカルレンズ8に光軸S方向に間隔をあけて配置されていた他方のシリンドリカルレンズ7に代えて、中間像面Aに共役な位置A′の近傍であって、上記一方のシリンドリカルレンズ28と光学的に共役な位置に、一方のシリンドリカルレンズ28と相補的な形状を有する他のシリンドリカルレンズ(第2光学要素部)20を配置している。
【0048】
このように構成された本実施形態に係る走査光学系17によれば、中間像面A近傍に配置された一方のシリンドリカルレンズ28によってy方向のガルバノミラー3の光軸S方向のズレが補償されて、ガルバノミラー3が対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置に配置される。また、一方のシリンドリカルレンズ28と光学的に共役な位置に相補的な他方のシリンドリカルレンズ20を配置することにより、非点収差を光学系全系として打ち消すことができる。さらに、これらのシリンドリカルレンズ20,28を中間像面A,A′から離すことで、傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、2つのシリンドリカルレンズ20,28を中間像面A,A′から間隔をあけて、比較的近接する位置に配置したが、これに代えて、
図7(a)および
図7(b)に示されるように、中間像面Aと瞳面Bとの間の中間像面Aから離れた位置およびこれと共役な位置に配置することにより、2つのシリンドリカルレンズ20,28間において大きな非点収差を発生させることにしてもよい。このようにすることで、観察装置がインナーフォーカス26を備える場合に、インナーフォーカス26の作動により中間像面Aが大きく変動して、いずれかの光学要素に一致しても、その光学要素の傷や異物によるノイズの発生を防止することができるという利点がある。図中、符号27はリレーレンズである。
【0050】
また、本実施形態においては、
図8(a)および
図8(b)に示されるように、対物レンズ6の瞳面Bの近傍にシリンドリカルレンズ(第1光学要素部、第1光学要素)28aを配置し、シリンドリカルレンズ28aから光軸S方向に間隔をあけてシリンドリカルレンズ(第1光学要素部、第1光学要素)28bを配置し、中間像面A,ガルバノミラー3,およびガルバノミラー2を挟んで、シリンドリカルレンズ28a,28bとそれぞれ光学的に共役な位置にシリンドリカルレンズ28a,28bと相補的な形状を有する他のシリンドリカルレンズ(第2光学要素部、第2光学要素)20a,20bを配置してもよい。
【0051】
この場合、シリンドリカルレンズ28a,28bが正の光学パワーを有し、シリンドリカルレンズ20a,20bが負の光学パワーを有している。そして、シリンドリカルレンズ20b,28bは、中間像面A,A′の近傍かつ光軸Sに沿ういずれかの方向にずれた位置に配置されている。
また、本実施形態においては、シリンドリカルレンズ28aとシリンドリカルレンズ20aとが共役な位置にあり相補的な形状を有し、かつ、シリンドリカルレンズ28bとシリンドリカルレンズ20bとが共役な位置にあり相補的な形状を有するので、例えばシリンドリカルレンズ20a,28aの光学パワーの符号を入れ替えて、シリンドリカルレンズ20aが正の光学パワーを有し、シリンドリカルレンズ28aが負の光学パワーを有することとしてもよい。
【0052】
次に、本発明の第5の実施形態に係る走査光学系21について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第4の実施形態に係る走査光学系17と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係る走査光学系21は、
図9(a)および
図9(b)に示されるように、シリンドリカルレンズ22,23,24,25の配置および構成において、第4の実施形態に係る走査光学系17と相違している。
本実施形態においては、
図7(a)および
図7(b)に示される第4の実施形態の変形例において対物レンズ6の瞳面B近傍に配置されていた単一のシリンドリカルレンズ28に代えて、y方向の両凸および両凹の縦断面を有する2つのシリンドリカルレンズ(光学要素)22,23を並べて配置することにより、負の光学パワーを有するレトロフォーカス系の第1光学要素を構成している。また、対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置B′の近傍に、シリンドリカルレンズ20に代えてy方向の両凸および両凹の縦断面を有する2つのシリンドリカルレンズ(光学要素)24,25を並べて配置することにより、正の光学パワーを有するレトロフォーカス系の第2光学要素を構成している。負のパワーを有する第1光学要素22,23と正のパワーを有する第2光学要素24,25とは相互に相補的な性質を有している。
【0054】
レトロフォーカス系は、主点間距離を大きくすることができ、これを利用して、対物レンズ6の瞳面Bと光学的に共役な位置からずれて配置されているy方向のガルバノミラー3を、瞳面Bと光学的に共役な位置関係に配置することができる。本実施形態のように第1光学要素22,23および第2光学要素24,25の両方をレトロフォーカス系に構成することにより、光源側から対物レンズ6側までを完全に瞳共役な位置関係にすることができる。
【0055】
本実施形態においても、中間像面Aと瞳面Bとの間の中間像面Aから離れた位置およびこれと共役な位置に配置することにより、2つのシリンドリカルレンズ22,23,24,25間において大きな非点収差を発生させることができる。このようにすることで、インナーフォーカス26を備える観察装置において、中間像面Aが大きく変動して、いずれかの光学要素に一致しても、その光学要素の傷や異物によるノイズの発生を防止することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、2つのシリンドリカルレンズ22,23,24,25として、瞳面B側に負の合成パワーを有するシリンドリカルレンズ22,23、位置B′側に正の合成パワーを有するシリンドリカルレンズ24,25を配置するものを用いたが、これに代えて、瞳面B側に正の合成パワーを有するシリンドリカルレンズ24,25、位置B′側に負の合成パワーを有するシリンドリカルレンズ22,23を配置してもよい。
【0057】
この場合、
図10(a)および
図10(b)に示されるように、光学パワーを有していないx方向においては、x方向のガルバノミラー2、瞳面Bおよび位置B′が光学的に共役な位置に配置されるようになっている。y方向においては、2つのシリンドリカルレンズ22,23,24,25の主点間距離を利用してy方向のガルバノミラー3、瞳面Bおよび位置B′が光学的に共役な位置に調節されるようになっている。
【0058】
具体的には、位置B′のy方向における共役面をシリンドリカルレンズ22,23によってx方向のガルバノミラー2よりも光源側に移動させることにより、位置B′とy方向のガルバノミラー3とを光学的に共役にすることができる。また、y方向のガルバノミラー3のy方向における共役面をシリンドリカルレンズ24,25によって本来の共役面よりも対物レンズ6側に移動させることにより、y方向のガルバノミラー3と瞳面Bとを光学的に共役にすることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、走査光学系21として、インナーフォーカス26を用いるものを例示したが、これに代えて、波面変調素子を用いてもよい。
この場合、波面変調素子としては、例えば、LCOS素子、形状可変鏡(デフォーマブルミラー)、形状可変レンズ、またはKTN結晶等が使用可能であり、位置B′の近傍に配置されればよい。
【0060】
なお、本発明は、レトロフォーカス形のシリンドリカルレンズを用いる点において、特開2011−224037号公報の発明と類似している。しかしながら、本発明は、レトロフォーカス形における主点間距離を積極的に用いて近接ガルバノミラーの瞳共役化に役立てている点において上記先行例と異なっている。