【実施例1】
【0011】
<1>全体構成(
図1,2)
本実施例に係る足場板用固定具は、主として、仮設足場を構成する腕木Yに対し、該腕木Yに複数配列した足場板Xを位置決めするために用いる装置である。
図1に示すように、足場板用固定具は、足場板Xを上側から押さえる上部材Aと、腕木Yおよび足場板Xを下側から押さえる下部材Bと、上部材Aと下部材Bとを連結するボルトCと、を少なくとも有する。
本実施例では、上部材Aを、足場板Xの上面と接触する押さえ部10と、前記押さえ部10から下方に伸びて、隣りあう足場板Xの隙間X1に侵入する延伸部20と、前記延伸部20の下方に固定され、足場板Xの下側に位置するナット30と、を少なくとも具備して構成している。
また、本実施例では、下部材Bを、前記足場板Xの下側に位置する一対の側部40と、少なくとも前記一対の側部40間の上方を繋ぐ中間部50と、少なくとも前記一対の側部40間の下方を繋ぎ、上下に貫通する貫通孔61を備えた底部60と、を少なくとも具備して構成している。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>押さえ部(
図1,2)
押さえ部10は、足場板Xの上面と接し、後述する下部材Bとの上下方向での狭持によって足場板Xを腕木Yに対して固定するための装置である。
押さえ部10は、略水平方向を長手方向とした、鋼棒や鋼板などの長尺状の部材を用いることができる。
【0013】
<2.1>縦幅長(
図2)
押さえ部10の縦幅長Hは、隣りあう足場板X間の隙間T以下とする。
この隙間Tは、足場板の設置に係る安全基準を満たす範囲で許容される幅長を呈する。
これは、押さえ部10を足場板Xの下側から隙間に差し入れて使用することも可能とするためである。
【0014】
<2.2>横幅長(
図2)
押さえ部10の横幅長Lは、隣りあう足場板X間の隙間T以上とすることを前提とする。
これは、隣りあう足場板を一つの押さえ部10によって固定するためである。
よって、横幅長Lの最大長は、足場板Xの固定が達成される範囲で任意に設定することができる。
【0015】
<2.3>断面形状(
図2)
本発明において押さえ部10の縦断面形状は特段限定しないが、例えば押さえ部10による足場板Xの固定を行うために求められる剛性を確保するために、押さえ部10を所定以上の厚さとする場合には、縦断面形状における上面部分を円弧状に形成しておいてもよい。
当該形状とすることによって、足場板部分を作業員が通行する際の躓きを防止することができる。
また、縦断面形状における下面部分は平面形状に形成してもよい。
当該形状とすることによって、足場板Xとの接触面積を確保することができる。
上記の上面形状および下面形状を実現するために、鋼棒を切断して押さえ部10とする方法が考えられる。
【0016】
<3>延伸部(
図2)
延伸部20は、足場板Xの上側に位置させる押さえ部10と、足場板Xの下側に位置させるナット30とを連絡するための部材である。
延伸部20は、押さえ部10の長手方向の中間付近から、該長手方向と直交する方向である下方へと伸びる長尺部材を用いることができる。
延伸部20の上側部40分の最大幅は、前記した押さえ部10の縦幅長と同様、隣りあう足場板X間の隙間T以下とする。これは、足場板用固定具の設置時において当該上側部40分が足場板Xの隙間X1に介在した状態となるためである。
【0017】
<4>ナット(
図2)
ナット30は、足場板Xの下側で、後述するボルトCの螺合を受け入れる部材である。
ナット30は、ナット30が有するネジ孔の軸方向が、延伸部20の長手方向と略並行となるように、延伸部20の下端側側面に溶接などによって固定する。
【0018】
<5>一対の側部(
図2)
一対の側部40は、下部材Bの側面部分を構成する部材である。
一対の側部40は、前記足場板Xの幅方向に間隔を空けた状態で、足場板Xの長手方向へと延伸してなる平板状部材で形成する。
一対の側部40に囲まれた空間は、上部材Aのナット30を受け入れるべく、その上方を開口してある。
本実施例では、各側部40の上縁に、足場板Xの下面と接触する足場板接触部41と、腕木Yと接触する腕木接触部42と、を設けている。
【0019】
<5.1>足場板接触部(
図2)
足場板接触部41は、上部材Aと下部材Bとで足場板Xを狭持する際に、足場板Xの下面と接触するための部位である。
各側部40の上縁において足場板接触部41を設ける位置は、後述する腕木接触部42と干渉しない箇所であれば良いが、好ましくは、平面視して、上部材Aに設けたナット30と、後述するボルトCとの結合位置に近い位置とすることが好ましい。
【0020】
<5.2>腕木接触部(
図2)
腕木接触部42は、上部材Aと下部材Bとで足場板Xを狭持する際に、腕木Yの下面と接触するための部位である。
本実施例では、腕木接触部42は、単管で構成する腕木Yの径と同径以上に形成した円弧面によって腕木Yの周面と接触するよう構成している。
各側部40の上縁において腕木接触部42を設ける位置は、平面視して、上部材Aに設けたナット30と、後述するボルトCとの結合位置と重ならない位置とする。
【0021】
<6>中間部(
図2)
中間部50は、前記一対の側部40間の一側面のうち少なくとも上方部分を繋ぐ部位である。
本実施例では、中間部50を一対の側部40の延伸方向の一端側を繋ぎつつ、その上面を、各側部40に設けた足場板接触部41の上面と同一高さとすることで、足場板接触部41とともに、足場板Xの下面を足場板Xの幅方向に連続して接触支持するよう構成している。
【0022】
<7>底部(
図2)
底部60は、前記一対の側部40間の下方部分を繋ぐ部位である。
本実施例では、底部60を、前記一対の側部40の下縁同士を繋ぐ平板部材で構成しており、一対の側部40と底部60とで略凹形状を呈している。
底部60には、上下に貫通する貫通孔61を形成する。
【0023】
<7.1>貫通孔(
図2)
貫通孔61は、下側からボルトCを挿入するための部位である。
貫通孔61は、ボルトC径よりも大きな内径を有する挿通タイプや、ボルトCを螺合するように孔壁にネジ溝を設けた螺合タイプの何れも含まれる
従って、前記した「挿入」の文言は、挿通および螺合の何れをも含む。
貫通孔61の位置は、当該ボルトCでもって上部材Aと下部材Bとを連結する際に、貫通孔61に下側から挿入したボルトCが、ナット30のネジ孔に螺合可能な位置に設ければ良い。
【0024】
<8>ボルト(
図2)
ボルトCは、上部材Aと下部材Bとを連結するための部材である。
ボルトCの頭部は、前記した貫通孔61よりも大きな径とし、ボルトCの呼び長は、上部材Aと下部材Bとで足場板を狭持するにあたって、上部材Aに設けたナット30と螺合可能な長さとする。
【0025】
<9>使用方法(
図3,4)
以下、上記した足場板用固定具の使用方法について説明する。
【0026】
(1)上部材の配置(
図3)
始めに、足場板間の所定の位置に、上部材Aを配置する。
まず、隣りあう足場板Xの間の隙間X1に対し、足場板Xの下方から、上部材Aの押さえ部10を差し入れる。
この「隣りあう足場板Xの間の隙間X1」とは、足場板の設置に係る安全基準を満たす範囲で許容される幅長を呈する隙間のことを指す。
押さえ部10の縦幅長は、前記した「隣りあう足場板Xの間の隙間X1」以下であるため、足場板Xの下方から押さえ部10を差し入れることに何ら支障はない。
【0027】
その後、延伸部20やナット30を把持した状態で上部材Aを略90°回転させることで、押さえ部10が隣りあう足場板Xを跨ぐように配置する。
この状態では、作業員が上部材Aから手を離しても足場板Xから上部材Aが外れて落下することなどは無い。
【0028】
(2)下部材の配置(
図4(a))
次に、上部材Aを配置した足場板の下側に、下部材Bを配置する。
具体的には、下部材Bを構成する一対の側部40に囲まれた空間に、上部材Aのナット30を受け入れる位置であって、当該ナット30のネジ孔と、下部材Bの底部60に設けた貫通孔61とが平面して重なりあうように、下部材Bの位置を合わせながら配置する。
この状態では、作業員は下部材Bを持った状態である。
なお、貫通孔61が螺合タイプである場合には、予め貫通孔61にボルトCの先端を螺合しておいた状態としても良い。
【0029】
(3)ボルトの螺合(
図4(b))
下部材Bを所定の位置に配置した状態で、ボルトCを、下部材Bの貫通孔61を経由して上部材Aのナット30に螺合し、締結作業を行う。
この時、作業員は片方の手で下部材Bを持った状態で、もう片方の手でボルトCの螺合を進める。
ボルトCがナット30に螺合し始めたあとは、作業員は下部材Bから手を離すことができる。
ボルトCおよびナット30の締結作業が完了すると、隣りあう足場板Xは、上部材Aと下部材Bによって狭持された状態となり、確実に位置決めされる。
また、足場板Xを載せる腕木Yは、足場板Xと下部材Bによって狭持された状態となる。
【0030】
(4)まとめ
このように、本手順によれば、足場板Xを上側から押さえるための上部材Aを含めた全ての部材の取付作業を、足場板Xの下側から完結できるため、足場板Xの上方に作業員を確保する必要がなく、作業効率の向上に寄与する。
また、足場板Xの上面では、上部材Aを構成する押さえ部10のみが露出した状態となるところ、縦断面視した押さえ部10の上面が略円弧状を呈しているため、足場板の上を歩く作業員が押さえ部10に躓く可能性を抑制でき、押さえ部10を踏みつけてしまう際の違和感の解消も期待できる。