特許第6738487号(P6738487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738487自動車の安全装置を動作させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738487
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】自動車の安全装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20200730BHJP
   B60R 21/0132 20060101ALI20200730BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B60R21/00 310N
   B60R21/00 330
   B60R21/0132
   B60R21/0134 311
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-514762(P2019-514762)
(86)(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公表番号】特表2019-529223(P2019-529223A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017072256
(87)【国際公開番号】WO2018050495
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】102016217741.9
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター アントン フェント
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105035004(CN,A)
【文献】 特開2006−023862(JP,A)
【文献】 特開2000−118336(JP,A)
【文献】 特開2006−347345(JP,A)
【文献】 特開2006−256370(JP,A)
【文献】 特表2014−518177(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0370259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
E05F 15/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)の安全装置を動作させるための方法であって、
切迫している危険な状況を、前記自動車(1)の周囲監視装置(4)によって識別するステップと、
規定の危険閾値を上回っているか否かを検査するステップと、
前記規定の危険閾値を上回った場合に、窓ガラス(8)および/またはスライディングルーフの少なくとも1つの駆動部の操作を含むアクションを開始するステップと、
を含む方法において、
危険な状況として、水域(12)への走行または移動の危険が存在していることが、前記周囲監視装置(4)によって検出された場合には、前記少なくとも1つの窓ガラス(8)および/または前記スライディングルーフを開くための前記駆動部を操作し、
前記周囲監視装置(4)は、位置特定手段および地図データを用いて、
前記自動車(1)の求められた目下の位置が、前記水域(12)に接近していることを示すか否か、かつ/または
前記自動車(1)の前記求められた目下の位置が、前記地図データにマークされた車線の隣に位置しているか否か、
を求める
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、前記位置特定手段を用いて検知された、所定の時間内に所定の高さを上回った前記自動車(1)の高度変化を処理することを特徴とする、請求項1載の方法。
【請求項3】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、車道の境界を越えたことを処理し、
前記車道の境界を越えたことを、前記位置特定手段および/またはシャシセンサ系および/またはカメラを用いて検出することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、平坦な地面経過を処理し、
前記非平坦な地面経過を、前記位置特定手段および/またはシャシセンサ系および/または1つまたは複数のカメラを用いて検出することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、前記車道の境界を越えた後の、かつ/または前記自動車(1)が前記地図データにマークされた車道の隣にいる場合の非平坦な地面経過を処理することを特徴とする、請求項3を引用する請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、シャシセンサ系を用いて検知された、所定の期間にわたり最大のままである、リバウンド時の1つまたは複数のストラットのばねストロークを処理することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、基準面に対して両長手方向において検知されたピッチ角の超過および/または車両横断方向において検知されたロール角の超過を処理することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ピッチ角および/または前記ロール角の限界値は、車両速度に依存して変化することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ピッチ角速度および/またはロール角速度を評価することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、前記自動車(1)の目下の位置が実質的に一定のままでありながら、それと同時に前記自動車の車輪が回転していることを検出することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記周囲監視装置(4)は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、前記自動車(1)のブレーキを操作した際の、車輪回転数の0への急激な変化を検知することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
危険な状況として、水域(12)への走行または移動の前記危険が存在することが前記周囲監視装置(4)によって検出された場合には、アクションとして、自動的な緊急通報を停止することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の安全装置を動作させるための方法に関する。本方法は、以下のステップ、すなわち、切迫している危険な状況を、自動車の周囲監視装置によって識別するステップと、規定の危険閾値を上回っているか否かを検査するステップと、規定の危険閾値を上回っている場合には、窓ガラスおよび/またはスライディングルーフの少なくとも1つの駆動部を操作するステップと、を含む。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車には、いわゆるプリクラッシュシステムが装備されており、それらのプリクラッシュシステムは、他の交通関与者または物体と衝突する可能性がある、切迫している危険な状況を早期に識別するために、種々の周囲センサを有している。目下の周囲状況に応じて、安全装置を起動させることができる。例えば、衝突を回避するために、または少なくとも緩和させるために、自動的な制動プロセスまたはハンドル操作を開始することができる。状況に応じて、自動車の安全システム、特にエアバッグまたはシートベルトテンショナを起動させることもできる。
【0003】
規定の危険閾値を上回ると、通常の場合には、飛び散った破片または他の異物から車両乗員を保護するために、窓ガラス、また場合によってはスライディングルーフが閉じられる。それと同時に、側窓が閉じられることによって、衝突の際に生じた力でもって、四肢、例えば腕または頭部が、窓の開かれた部分から投げ出されることが阻止されるべきである。相応して、従来の安全システムでは、すべての窓ガラス、また場合によってはスライディングルーフが閉じられる。
【0004】
衝突時、回避操作時、またはドライバの不注意による車線からの逸脱時に、自動車のハンドルが切られて、または自動車が横滑りして、水域、例えば河川または湖などに入ると、外部から車両ドアに作用する大量の水に起因して、車両ドアをもはや開けることができなくなるという問題が生じる。上述の安全システムに基づいて、窓および/またはスライディングルーフは、乗員を保護するために閉じられるので、車内は車両外部から隔離される。自動車が水域に水没すると、通常の場合、水に起因する短絡の結果、搭載電子機器は機能しなくなるので、窓および/またはスライディングルーフをもはや開けることもできなくなる。何故ならば、窓および/またはスライディングルーフは、今日では通常の場合、電気的に制御されており、また搭載電源による給電が機能していることに依存しているからである。これによって、車両乗員が溺死する危険が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、車両乗員の改善された保護を実現する、自動車の安全装置を動作させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を備えた方法、ならびに請求項13の特徴を備えた、方法を実施するための自動車によって解決される。有利な構成は、従属請求項から明らかになる。
【0007】
この課題を解決するために、冒頭で述べたような自動車の安全装置を動作させるための方法において、本発明によれば、周囲監視装置によって、危険な状況として、水域への走行または移動(例えば転落)の危険が存在することが検出された場合には、少なくとも1つの窓ガラスおよび/またはスライディングルーフを開くための駆動部が操作される。
【0008】
本発明は、窓およびスライディングルーフが閉じられており、また水域に向かってハンドルが切られたか、または水域へと転落した自動車では、外部から車両ドアに作用する大量の水に起因して、車両ドアをもはや開けることができなくなるという認識に基づいている。この状況においては、窓およびスライディングルーフは電気的に操作されるという前提のもとで、搭載電源による給電が行われなければ、それらの窓およびスライディングルーフをもはや開けることができないので、車両乗員が実際の事故または転落からは軽度の負傷で生き延びることができるとしても、車両乗員にとっては溺死の危険が生じる。
【0009】
したがって、本発明によれば、例えば橋などからの落下の際のような、水域への制御不能な走行または移動の危険が存在する場合には、窓および/またはスライディングルーフのうちの少なくとも1つが、水に入る直前に自動的に開かれる。これによって、車両乗員が車両から抜け出せる確率が著しく高くなる。一方では、開かれた窓および/またはスライディングルーフを通って、乗員は安全な場所に移動することができる。他方では、外部から車両ドアに作用する水と、開かれた窓および/またはスライディングルーフから車両に流れ込む水との間で漸次的な力平衡が生じるので、車両ドアを開くことも容易になる。
【0010】
1つの好適な構成によれば、周囲監視装置が、位置特定手段および地図データを用いて、自動車の求められた目下の位置が、水域まで(危機的に)接近していることを示すか否か、かつ/または自動車の求められた目下の位置が、地図データにマークされている車線の隣に位置しているか否かを求める。水域まで(危機的に)接近している場合、水域まで所定の距離を下回っていると解することができる。この状況は橋の全体の走行も含まれるので、したがってこの状況単独では、切迫している状況を未だ確実に推定することはできないので、別の判定基準として、自動車が車線の隣に位置しているか否かを求めることが必要であるか、または有意義であると考えられる。いずれの判定基準も満たされている場合には、切迫している危険な状況が存在している確率は高い。これに対して、車両が地図データに存在する車道上を移動している場合には、橋を走行していることを推定することができる。
【0011】
1つの別の構成によれば、周囲監視装置が、危険な状況が切迫しているという判定基準として、位置特定手段を用いて検知された、現在の時間において所定の高さを上回った自動車の高度変化を処理する。このことは、例えば、橋から水域への転落、または急な斜面にわたる下降をシグナリングすることができる。
【0012】
周囲監視装置が危険な状況が切迫しているという判定基準として使用する別の判定基準として、車道の境界を越えたことが処理され、その際、車道の境界を越えたことが、位置特定手段および/またはシャシセンサ系および/またはカメラを用いて検出される。位置特定手段に基づいて、例えば、車両が目下、地図データに示された車道上に存在しているか、または車道から離れたかを求めることができる。シャシセンサ系によって、突然に予期せず発生した「蛇行」を、例えば縁石を乗り越えた際に生じるような蛇行を検出することができる。このことを、種々の加速度センサによって検出することができるが、しかしながらまた1つまたは複数のストラットの特性に基づいて検出することもできる。車両に設置されている1つまたは複数のカメラを用いて、車道の境界を越えたことを、直接的に検知および検出することができる。加えて、水域に接近しているという条件が満たされている場合には、切迫している危険な状況が推定される。
【0013】
1つの別の好適な構成によれば、周囲監視装置が、危険な状況が切迫しているという判定基準として、特に車道の境界を越えた後の、かつ/または自動車が地図データにマークされた車道の隣にいる場合の非平坦な地面経過を処理し、その際、非平坦な地面経過が、位置特定手段および/またはシャシセンサ系および/または1つまたは複数のカメラを用いて検出される。上記において説明したやり方で検出を行うことができる。
【0014】
別の好適な構成では、周囲監視装置が、危険な状況が切迫しているという判定基準として、シャシセンサ系を用いて検知された、所定の期間にわたり最大のままである、リバウンド時の1つまたは複数のストラットのばねストロークが処理される。通常ではない長い期間にわたる、1つまたは複数のストラットの最大のリバウンドは、例えば、車両が自由落下している場合に行われる。このことは、例えば、橋の欄干を突破し、その結果、転落している場合であると考えられる。
【0015】
別の構成では、周囲監視装置が、危険な状況が切迫しているという判定基準として、基準面に対して、特に水平線に対して、車両長手方向において検知されたピッチ角の超過および/または車両横断方向において検知されたロール角の超過が処理される。その種の状況は、例えば、車両が橋から転落する場合のように、比較的高い場所から下方へと落下する際の、飛行するような移動軌跡を辿る際に生じる。
【0016】
ピッチ角および/またはロール角の限界値は、車両速度に依存して変化すると考えられる。ここでは、例えば、車両ドライバが急な斜面を意識的に緩慢に下っており、何時でも所期のように停車させることができる場合には、窓および/またはスライディングルーフが不所望に開かれることを阻止することができる。これに対して、急な斜面を下っている際に車両が特定の速度を下回ると、場合によっては、所期のように停車させることがもはや不可能な場合もある。これによって、自動車が水域に接近していることが確認されたのと同時に、少なくとも1つの窓および/またはスライディングルーフが自動的に開かれる限りでは、ピッチ角の限界値は、速度が速くなるほど低くなる。
【0017】
別の構成では、ピッチ角速度および/またはロール角速度が評価される。
【0018】
さらに、周囲監視装置は、危険な状況が切迫しているという判定基準として、自動車の目下の位置が実質的に一定のままでありながら、それと同時に自動車の車輪が回転していることを検出することができる。このことは、例えば、橋の欄干を越えて転落する際の飛行するような移動軌跡を辿る場合であると考えられる。
【0019】
別の構成によれば、周囲監視装置が、危険な状況が切迫しているという判定基準として、自動車のブレーキを操作した際の、車輪回転数の0への急激な変化を検知する。この状況は、自動車が飛行するような移動軌跡を辿り、その際に、ドライバが、例えばブレーキの操作によって車両を減速させることを反射的に試みた場合に生じる。この状況では、車輪回転数が急激に0に変化し、このことは、自由落下または類似の状況の徴候である。車輪回転数が0に急激に変化することは、ロードホールディングが存在する場合には起こり得ない。
【0020】
別の構成によれば、危険な状況として、水域への走行または移動の危険が存在することが周囲監視装置によって検出された場合には、アクションとして、自動的な緊急通報が停止される。何故ならば、自動的な緊急通報を停止するためにも、電気的な駆動部の操作と同様に、機能している搭載電源が与えられていなければならないからである。
【0021】
本発明による自動車は、本発明によれば、上記のような方法を実施するように構成されている。
【0022】
以下では、図面を参照しながら、実施例に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による方法の重要なステップを示したフローチャートである。
図2】自動車が、回避操作の結果、飛行するような移動軌跡でもって橋から水域の方向へと転落する交通状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、フローチャートであり、自動車1の安全装置を動作させるための方法の重要なステップを示している。図2は、本発明による方法が使用される典型的な状況を示す。自動車1は、水域12の上に橋11が架けられている車道10を移動する。自動車1(いわゆる自車)の直ぐ前方において、2台の別の車両2,3が相互に衝突する。回避操作に起因して、自動車1のドライバは、車道10から逸脱する方向にハンドルを切る。その固有の速度に起因して、自動車1は、例えば橋の欄干を突破して、飛行するような移動軌跡で、橋11の下に流れる水域12の方向へと転落する。
【0025】
自動車1は、周囲監視装置4を有しており、この周囲監視装置4は、計算ユニットならびに種々のセンサを含んでいる。自動車1の周囲監視装置4は、センサ、例えば位置特定手段、1つまたは複数のカメラ、シャシセンサ系、ロール角センサおよび/またはピッチ角センサなどを用いて、自動車1周囲の領域、特に自動車1前方の車道10を監視する。図2においては、位置特定手段、例えばGPS受信器のアンテナが、参照番号5で表されており、またカメラが、参照番号6で表されている。別のセンサ、例えばシャシセンサ系、ロール角センサなどは、明示的には図示していない。
【0026】
本方法の開始後、周囲監視装置4は自動車1の周囲を監視する。周囲監視装置のセンサから供給される情報は、図2には図示していない計算ユニットによって評価される。周囲監視装置のセンサから供給される種々の情報を評価することによって、計算ユニットは、自動車1が水域へと走行または移動する危険が存在する危険な状況を識別することができる(ステップS1)。
【0027】
そのような危険な状況は、例えば、自車1が、図2に示したような事故に起因して、回避操作に基づいて、または例えば自車のドライバの不注意による車線からの逸脱に基づいて車線を外れ、その際に、近傍に存在する水域、例えば図2に示した河川12、小川などの手前で車両を静止させる制御がもはや不可能になる危険が存在する場合に生じる。
【0028】
位置特定手段および地図データを用いて、この実施例では、自動車1が目下、水域12、例えば河川の直ぐ近くに位置していることが確定される。この判定基準は、切迫している危険な状況を、本発明による方法の意味において、周囲監視装置4によって検出することができることを前提条件とする。図2に示した実施例の場合には、少なくとも1つの窓8および/またはスライディングルーフを開くことを必要とする危険な状況を、種々の判定基準に基づいて検出することができる。
【0029】
周囲監視装置の計算ユニットは、ステップS2において、水域への走行または制御不能な移動が行われている危険が存在する危険閾値を上回っているか否かが検査される。閾値を上回っていない場合には、方法はステップS1に戻る。これに対して、危険閾値を上回った場合(「Yes」)には、ステップS3に従い、少なくとも1つの窓ガラスおよび/またはスライディングルーフを開くための駆動が行われる。これによって、自動車内に存在する一人または複数人の乗員が水域への転落時または走行時に自動車内から抜け出せることが保証されるべきである。
【0030】
窓およびスライディングルーフが閉じられている場合、ドアを開けるために必要とされる力は非常に大きく、また水に起因する短絡に基づいて、窓またはスライディングルーフを開くことが通常の場合もはや不可能になるので、本発明によれば、自動車1が水域に入る前に、少なくとも1つの出口が開かれる。これによって、乗員は、選択的に、開かれた窓および/またはスライディングルーフを通って抜け出すことができる可能性が得られる。例えば開かれた窓の過度に小さい開放横断面に起因して、抜け出すことが不可能である場合でも、車両内部に浸入する水によって、外側にある水と内側にある水との間で漸次的な力均衡が生じ、その結果、車両乗員が過度の力を加えることがなくても、ドアを手動で開けることができるようになる。
【0031】
危険な状況の識別を、種々のやり方で、また自動車1のための周囲監視装置の種々のセンサを用いて行うことができる。自動車1の少なくとも1つの窓および/またはスライディングルーフを開くための駆動部の駆動制御は、一般的に、自車の「飛行するような移動軌跡」が診断されると常に行われる。このことを、例えば、自動車1内に設けられている加速度センサの加速度データの評価によって検出することができる。特に、このために、車両のロール角および/またはピッチ角、ならびに角度の変化率も考慮することができる。
【0032】
「飛行するような移動軌跡」という語句は、広範に解釈することができる。これは、自車両の軌跡経過であると解され、例えば、特に自由落下する際または急な斜面を滑り落ちる際に生じる。急な斜面を滑り落ちる場合には、斜面角度を基準にして、車両速度を設定することができる。その角度を超えると、飛行するような移動軌跡が識別され、したがって危険な状況が識別される角度は、車両速度に応じて変化すると考えられる。車両速度が遅くなるほど、周囲監視装置の計算ユニットが、少なくとも1つの窓および/またはスライディングルーフを開くための駆動部を駆動制御することなく、許容される斜面角度が大きくなると考えられる。
【0033】
さらに、種々の車両状態を、飛行するような移動軌跡、したがって危険な状況の存在に基づいて処理することができる。
【0034】
この実施例においては、自動車1が、橋11からの転落に基づいて、所定の時間内に顕著な高度変化を経験する。所定の時間内の高度変化が所定の値を超えると、これは自由落下と解釈することができる。この場合には、切迫している危険な状況の判定基準が満たされており、また水域12への転落の危険が実現のものとなっているので、少なくとも1つの窓ガラス8および/またはスライディングルーフを開くための駆動部が操作される。
【0035】
図2には示していない、車道10の境界を越えるかまたは突破すると、同様に詳細には図示していないシャシセンサ系によって、危険な状況を同様に示唆する特有の信号が検知される。代替的または付加的に、車道境界を越えたことは、位置特定手段および/またはカメラによっても検出することができる。
【0036】
車道境界を突破した後は、車輪負荷が即座に無くなるので、自動車のストラットのばねストロークは最大になる。ばねストロークが所定の期間にわたり最大のままであれば、このこともやはり、自動車1の自由落下を示唆する。
【0037】
場合によっては、自動車1は、車道境界を突破して、自由落下へと移行した後に、車両長手方向軸線および/または車両横断方向軸線および/または車両高さ方向軸線周りに回転する。相応のセンサによって提供されるそれらのデータも、危険な状況を確認するために使用することができる。例えば、ピッチ角および/またはロール角の急な変化は、自由落下または宙返りを示唆すると考えられる。
【0038】
さらに、自動車1のドライバによって、自由落下中に、ブレーキが操作されると、その慣性に基づいて差し当たり回転している車輪が急に止まることになる。回転数が0になる、そのような急な回転数変化は、通常通り車道を移動している車両においては通常の場合には生じないので、このことは自由落下についての別の示唆である。場合によっては、自動車の目下の位置が実質的に一定のままでありながら、それと同時に自動車の車輪が回転していれば、これはやはり危険な状況を示唆すると考えられる。
【0039】
したがって、図2に示した実施例においては、周囲検知装置の計算ユニットが、前述の危険状況に関する危険分析を実施し、水域への走行または移動の危険が存在することと組み合わせて、少なくとも1つの窓の自動的な開放を実施するための種々の可能性を有している。特に、危険の評価の妥当性検査を目的として、検出の種々の可能性を相互に組み合わせることは好適であると考えられる。
【0040】
最後に捕捉として、規定の危険閾値を超えた際に、少なくとも1つの窓ガラス8および/またはスライディングルーフを開くための駆動部を(単に)操作する代わりに、またはそのような操作に加えて、自動的な緊急通報を停止することができる。何故ならば、自動的な緊急通報を発するためにも、電気的な駆動部の操作と同様に、機能している搭載電源網が与えられていなければならないからである。したがって、そのような緊急通報は、自動車1が水域に入る直前にのみ停止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2,3 別の車両
4 周囲監視装置(位置特定手段、カメラ、車両センサ系)
5 アンテナ
6 カメラ
7 車輪
8 窓ガラス
10 車道
11 橋
12 水域
図1
図2