特許第6738507号(P6738507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6738507
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】マイクカバー
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20200730BHJP
   H04R 1/08 20060101ALI20200730BHJP
   H04R 1/12 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   G10K15/04 302D
   H04R1/08
   H04R1/12
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-102966(P2020-102966)
(22)【出願日】2020年6月15日
【審査請求日】2020年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2020-101324(P2020-101324)
(32)【優先日】2020年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520034174
【氏名又は名称】高野 朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3110155(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3102143(JP,U)
【文献】 特開平06−327081(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3012661(JP,U)
【文献】 実開昭61−100097(JP,U)
【文献】 実開平03−128393(JP,U)
【文献】 特開2002−244665(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104284263(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0108453(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
H04R 1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクに取り付けて用いるマイクカバーであって、
人体の口部から飛散する飛沫がマイクヘッド周辺から前方に拡散するのを防御するための防御壁を有し、
前記防御壁は、前記飛沫を受け止めるための複数のシートを相互に剥離可能に重ね合わせた飛沫受止体を有していることを特徴とするマイクカバー。
【請求項2】
前記防御壁が前記飛沫受止体を支持する支持体を有する請求項1記載のマイクカバー。
【請求項3】
前記防御壁が、前記マイクヘッドの上端部よりも上方まで立ち上がり形成された立ち上がり部を有する請求項1又は2記載のマイクカバー。
【請求項4】
前記防御壁の下部に前記マイクを挿入するための挿入孔が開口形成されており、
前記前記立ち上がり部が前記挿入孔から上方に向けて拡開形成されている請求項2又は3記載のマイクカバー。
【請求項5】
前記飛沫受止体を形成する各シート間に隙間を有するように形成されている請求項1から4のいずれかに記載のマイクカバー。
【請求項6】
前のシートから後のシートに向けて、上縁部の高さ位置が順次低くなるように形成されている請求項1から5のいずれかに記載のマイクカバー。
【請求項7】
前記シートには、該シートを引き抜くための摘み部が設けられている請求項1から6のいずれかに記載のマイクカバー。
【請求項8】
前記シートは、折り畳み可能に形成されている請求項1から7のいずれかに記載のマイクカバー。
【請求項9】
前記シートがフィルム状の素材で形成されている請求項1から8のいずれかに記載のマイクカバー。
【請求項10】
前記シートが透光性を有する素材で形成されている請求項1から9のいずれかに記載のマイクカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カラオケなどで歌唱するとき、インタビューや演説を行うときなどには、声を拾うための装置としてマイクが広く用いられている。マイクは、声をよく拾おうとするために、通常は人の口に近づけて使用するため、人の口から唾液や食べ物のカスといった飛散物が飛散することがあり、不衛生な状態になりがちであった。一方で、近年は清潔志向の高まりにより、マイクについても衛生的な状態で使用することが望まれている。例えば、下記に示す特許文献1には、マイクヘッドに装着させるマイクカバーが開示されている。このマイクカバーは、不衛生になりがちなマイクヘッドを衛生的に保持することができるようにしており、マイクヘッドを覆うように装着することができるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−262295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されたマイクカバーでは、飛散物がマイクカバーによって遮られてマイクに飛散物が直接付着することを防ぐことができるので、マイク自体を衛生的な状態に維持することはできた。しかしながら、マイクを使用している周囲には人の口から出る飛沫などが周辺に飛散することまでを防ぐことができないといった問題があった。
また、特に近年は、ウイルスや細菌に飛沫感染するリスクが問題となっており、このようなリスクを軽減することが非常に重要となっている。そのため、従来のようにマイクの衛生面のみを考慮するだけでなく、より広い範囲に飛沫が飛散することによる飛沫感染をいかに防ぐかが大きな課題となっている。
【0005】
例えば、カラオケ店等の施設は、様々な人が利用するのに加え、複数の人が頻繁に出入りするため、外部からウイルスや細菌が持ち込まれやすい。また、このような施設は一定の広さに仕切られた複数の小部屋が設けられていることが多く、この小部屋の中で複数人が集まって歌唱したり会話をしたりすると、飛沫感染の可能性が高まり、さらには室内に飛散した細菌やウイルスが残留するおそれもあった。また、インタビューや演説などは、屋内で行う場合の他に屋外で行うこともあるものの、このようなインタビューや演説を行う場合には、話し手の周囲近くに複数人の聞き手がいることが多い。そのため、やはり話し手の口から飛散する飛沫が聞き手に対しても飛び散りやすく、飛沫感染を引き起こしやすいといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、人体の口から飛散する飛沫による感染を大きく低減することができ、かつマイクにも容易に装着及び取り外しができ、さらには処分も簡単に行うことのできるマイクカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)マイクに取り付けて用いるマイクカバーであって、人体の口部から飛散する飛沫がマイクヘッド周辺から前方に拡散するのを防御するための防御壁を有し、前記防御壁は、前記飛沫を受け止めるための複数のシートを相互に剥離可能に重ね合わせた飛沫受止体を有していることを特徴とするマイクカバー、
(2)前記防御壁が前記飛沫受止体を支持する支持体を有する上記(1)記載のマイクカバー、
(3)前記防御壁が、前記マイクヘッドの上端部よりも上方まで立ち上がり形成された立ち上がり部を有する上記(1)又は(2)記載のマイクカバー、
(4)前記防御壁の下部に前記マイクを挿入するための挿入孔が開口形成されており、前記前記立ち上がり部が前記挿入孔から上方に向けて拡開形成されている上記(2)又は(3)記載のマイクカバー、
(5)前記飛沫受止体を形成する各シート間に隙間を有するように形成されている上記(1)から(4)のいずれかに記載のマイクカバー、
(6)前のシートから後のシートに向けて、上縁部の高さ位置が順次低くなるように形成されている上記(1)から(5)のいずれかに記載のマイクカバー、
(7)前記シートには、該シートを引き抜くための摘み部が設けられている上記(1)から(6)のいずれかに記載のマイクカバー、
(8)前記シートは、折り畳み可能に形成されている上記(1)から(7)のいずれかに記載のマイクカバー、
(9)前記シートがフィルム状の素材で形成されている上記(1)から(8)のいずれかに記載のマイクカバー、
(10)前記シートが透光性を有する素材で形成されている上記(1)から(9)のいずれかに記載のマイクカバーを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マイクに取り付けて用いるマイクカバーであって、人体の口部から飛散する飛沫がマイクヘッド周辺から前方に拡散するのを防御するための防御壁を有し、前記防御壁は、前記飛沫を受け止めるための複数のシートを相互に剥離可能に重ね合わせた飛沫受止体を有しており、飛沫受止体で人体の口から飛散する飛沫を受け止めることができる。飛沫受止体は、複数枚のシートを相互に剥離可能に重ね合わせて形成されているため、マイクを使用した後に飛沫受止体の表面側のシートを取り除くことにより、例えば次の使用者が安心してマイクを使用することができる。したがって、本発明によればウイルスや細菌の飛沫感染のリスクを大きく低減することが可能になる。また、本発明によれば、受け止めた飛沫に触れることなくマイクカバーを取り除くことができるので、処分が非常に簡単で、取り除く者の感染リスクを大きく低減することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のマイクカバーに係る実施の形態の正面図である。
図2】マイクに装着した状態のマイクカバーを表す説明図である。
図3】摘み部を設けたマイクカバーを表す説明図である。
図4】摘み部を設けたマイクカバーを表す説明図である。
図5】折り畳んだ状態のフィルムの平面図である。
図6】折り畳んだ状態の支持部の正面図である。
図7】マイクカバーの作用効果を説明するための説明図である。
図8】本発明のマイクカバーの別の態様の斜視図である。
図9】マイクカバーの分解斜視図である。
図10】マイクカバーの更に別の態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るマイクカバーの実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1に示すように、マイクカバー1は、マイクM1に取り付けて用いられる。このマイクカバー1は、マイクM1の把持部M2に取り付けられており、把持部M2の上方に位置するマイクヘッドM3の周囲を囲むように配置されている。
【0011】
マイクカバー1は、防御壁2を備えており、この防御壁2は、人の口から飛散する飛沫を受け止めるための飛沫受止体3と、飛沫受止体3を支持するための支持体11とを有している。防御壁2は人体の口部から飛散する飛沫がマイクヘッドM3から前方に拡散するのを防御するためのものである。飛沫受止体3は複数のシート4を有しており、これら複数のシート4が相互に剥離可能に重ね合わせて構成されるとともに、使用後にはマイクM1から容易に除去することができるように構成されている。本実施の形態のマイクカバー1は、複数のシート4を重ね合わせて形成した飛沫受止体3と支持体11とを防御壁2として構成している。
【0012】
防御壁2は、マイクヘッドM3の上端部よりも上方まで立ち上がり形成された立ち上がり部5を有している。なお、この防御壁2は、図1に示すように立ち上がり部5のみにより形成されていてもよい。なお、図1においては、立ち上がり部5はマイクヘッドM3の上端部よりも上方まで立ち上がり形成されている例を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば立ち上がり部5の立ち上がり高さがマイクヘッドM3の上端部と同じ高さでもよいし、また立ち上がり部5の立ち上がり高さがマイクヘッドM3の上端部より低くてもよく、立ち上がり部5を有することにより、マイク使用者が使用する際、口から飛散する飛沫を立ち上がり部5において受け止めることができればその立ち上がり高さは任意に決定することができる。
【0013】
図2に示すように、シート4の下部には挿入孔6が開口形成され、支持体11の下部には、挿入孔16が開口形成されている。これら挿入孔6,16はマイクM1にマイクカバー1を取り付ける際、把持部M2を挿入するための孔である。マイクカバー1は、挿入孔6の開口縁の長さと、把持部M2の円周長さとが同じとなる位置で、マイクM1に固定されるようになっており、その地点が把持部M2のマイクヘッドM3寄りの位置になるように形成している。上記した立ち上がり部5は、挿入孔6,16から上方に向けて拡開形成されている。また、このように形成された立ち上がり部5は、マイクヘッドM3とは接触せず、該マイクヘッドM3との間に間隔が設けられるようになっている。このようにマイクヘッドM3と立ち上がり部5とを接触させず、間隔を設けることにより、マイク使用時における音の反響を防ぐことが可能になる。また、このように、立ち上がり部5が挿入孔6,16から上方に向けて拡開形成されているので、マイクM1を立ち上がり部5の上方から挿入孔6,16に挿入して取り付けることで、把持部M2を傷つけることなくマイクM1にマイクカバー1を取り付けることができる。
【0014】
なお、マイクカバー1において、防御壁2の形状はマイクM1の使用時に人の口から飛散する飛沫を受け止めることができればよく、その大きさや形状は任意に決定してよい。例えば、マイクカバー1を折り畳み状態から開いた展開状態のときに防御壁2の形状がハート形状となるようにしてもよいし、防御壁2の上壁部をギザギザの形状や波型形状その他の任意な形状にしてもよい。また、防御壁2には印刷等によって種々の模様や図柄を描いてもよい。例えば、防御壁2に唇の図柄を描くことによって、使用者があたかもキスをしているかのような気持ちを持たせながら使用させることができたり、所定のキャラクターを任意に選択して印刷等によって描くことによって、より気持ちを高揚させつつ使用させたりすることも可能になる。なお、このような防御壁2の形状や模様等は従来から知られているものを任意に選択して適宜用いればよく、その範囲は上記したものに限定されない。
【0015】
図5に示すように、シート4は、折り畳み可能に形成されており、接合ライン7,8に沿って接合されたり、該接合ライン7,8が形成されている箇所において折り畳み形成されて形成されている。したがって、図5に示す状態においては、シート4は接合ライン7,8において折り返されているため、図1等に示している状態の半分のみが示されている。挿入孔16には、切り込み等による脆弱部12が形成されている。脆弱部12は、シート4を引き抜く際に加わる力によってシート4を挿入孔16から破けやすくするためのものである。この脆弱部12は、図5においては切り込み状に形成されている例を示したが、シート4を引き抜く際に引き抜きやすくすることができる構成であれば他の形状であっても良い。なお、シート4を引き抜く際は、接合ライン7,8が裂けるように構成しても良いし、また脆弱部12から裂けはじめて接合ライン7,8とは別の箇所が裂けるように構成してもよい。また、接合ライン7,8と脆弱部12の両方が裂けるように構成しても良い。
【0016】
複数のシート4は、相互に剥離可能であれば、各シート4間は非固定状態でも固定されていてもよい。また、シート4と支持体11も、非固定状態でも固定されていてもよい。シート4相互間を固定する場合、シート4と支持体11とを固定する場合には、例えばヒートシールによる接着、超音波融着、高周波接合、低周波接合、ホットメルト接着剤等のような各種接着剤による接着など、従来から公知の方法を用いて部分接着する等の方法が挙げられる。シート4同士の接着及びシート4と支持体11との接着は、使用者が引き上げたシート4のみが他のシート4等とはがれて取り除かれる程度の力で接着されたり、接着されている箇所以外のところから引き裂かれて取り除くことができる程度の力で接着されていることが好ましい。シート4同士の接合及びシート4と支持体11との接合は、点接合、線接合、面接合のいずれであってもよく、また、これら以外の接合の態様であっても良い。また、シート4が引き上げれたときに他のシート4等と分離する態様としては、上記した接着等されている箇所から分離するようにしてもよいし、またシート4同士やシート4と支持体11とが接着されている箇所とは異なる場所にミシン目等の脆弱部12を形成しておき、引き抜く力が加わったときにその脆弱部12から分離するようにしてもよい。また、これら以外の方法によりシート4が他のシート4等から分離するようにしてもよい。この場合、取り除かれるシート4は、一枚ずつ取り除くことができるようにすることが好ましい。また、シート4の厚さは、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、また5μm〜90μmの範囲内であることがより好ましい。さらに好ましくは、5μm〜80μmであることがさらに好ましい。なお、各シート4の厚さはそれぞれ異ならせてもよいし、同じ厚さにしてもよい。
【0017】
飛沫受止体3は、各シート4の間に隙間を有するように形成することが好ましい。隙間が形成されることによって、シート4を他のシート4から剥離する際に摘みやすくすることができ、かつ使用したシート4を引っ張り上げる際に飛沫が付着した面に指を触れさせることなく剥離することができるので、非常に衛生的である。
【0018】
また、飛沫受止体3には、各シート4を引き抜くための摘み部13を設けておくことが好ましい。摘み部13は、例えば図3に示すようなシール14を設けたり、図4に示すような摘み片15を形成すればよい。ここで、摘み部13としてシール14を設ける場合には、シート4の裏面側、各シート4間に位置するように設けることが好ましい。このようにシール14を設けることによって各シート4間に隙間を容易に形成することができ、シート4を引き抜く時に、シール14を摘みやすくすることができる。また、シール14をシート4の裏面側に設けることによって、飛沫がシール14に付着するのを防ぐことができ、衛生的な状態を保った状態を維持することができ、使用者がシール14を摘むときにも指を飛沫等によって汚すことを防止することができる。また、このシール14は、それぞれのシート4に設けることが好ましく、その際には、シール14に、このシールを摘んでシート4を引き出す旨のサインとして「PICKUPシール」という文言を表示したり、シートの番号などを印刷等によって表示しておくことによって、使用者の目に留まりやすくすることができ、まだ使用していないシート4までをも引き出してしまうおそれを軽減することができる。このシール14は、複数枚のシート4の同じ位置に設けることが好ましい。シート4の同じ位置にシール14を設けることによって、よりシート4間の隙間を形成しやすくすることによりシート4同士やシート4と支持体11とが貼り付き合うのを防止することができ、シート4を摘みやすくすることができる。
【0019】
また、図4に示すような摘み片15を形成する場合には、使用者が摘みやすくするために各シート4で摘み片15を形成する位置を変更してもよい。このように異なる位置に摘み片15を形成することによって、使用者にどの摘み片15を摘んで引き出せばよいのかを視覚的に知らせることができる。また、この摘み片15にも印刷等によってこの摘み片15を摘んでシート4を引き出す旨や、シートの番号などを表示しておくことによって、より使用者の目に留まりやすくすることができるようにしてもよい。また、摘み片15を所定の色に着色印刷して確実に視認させることができるようにしてもよい。
【0020】
この摘み部13は、上記した態様に限定されず、これら以外の態様で形成しても良い。また、各シート4間で隙間を形成しやすくするという点では、上記した摘み片15を形成した後にその摘み片15を裏側に折り返すことによって摘み片15を各シート4間に位置させるようにして、隙間を形成しやすくするようにしてもよい。この場合は、より隙間を形成しやすくするために、摘み片15を形成する位置は、各シート4で同じ位置にすることが好ましい。また、摘み片15を各シート4で同じ位置に形成した場合、これら各シート4の摘み片15をまとめて裏面側に折り曲げ形成しておくことにより、飛沫の付着を防止することができるのみならず、シート4を取り除く際に摘み片15を摘みやすくし、シート4を取り除きやすくすることが可能になる。
【0021】
また、このように複数のシートが重ね合わされた状態でマイクM1に取り付けられている場合には、前のシート4から後側のシート4に向けて、該シート4の上縁部の高さ位置が順次低くなるように形成されていることが好ましい。つまり、最も前側に位置するシート4の上端縁の高さ位置が最も高く、そして最も後側に位置するシート4の上端縁の高さ位置が最も低くなるように形成され、これら最も前側のシート4と最も後側に位置するシート4との間に位置するシート4については、前側から後側へ行くにつれて、上端縁の高さ位置が順次低くなるように形成されている。このようにシート4を配置することによって、使用時には最も前側のシート4にのみ飛沫が付着させることができ、その後側に配置されているシート4は清潔な状態を維持することができる。
【0022】
図6に示すように、支持体11は、折り畳み可能に形成されており、接合ライン7,8に沿って接合されている。したがって、図6に示す状態においては、防御壁2は接合ライン7,8において折り返されているため、図6等に示している状態の半分のみが示されている。挿入孔16は、マイクカバー1の折り畳み時においては、これら接合ライン7,8が交わる点を含む箇所に開口形成している。図6において、挿入孔16は角丸の略四角形状に形成されており、接合ライン7と近接する箇所には補強部9が形成され、接合ライン8と近接する箇所には補強部10が形成されている。これら補強部9,10は、図1等に示すように折り畳み状態から広げた展開状態となってマイクM1を挿入孔6へ挿入したときに、接合ライン7,8において切断されないようにするためのものである。この補強部9,10は、マイクM1に取り付けたときに、図1等に示す前側に補強部9が位置し、後側に補強部10が位置するように配置される。また、支持体11の厚さは、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、また5μm〜90μmの範囲内であることがより好ましい。さらに好ましくは、5μm〜80μmであることがさらに好ましい。なお、支持体11の厚さは、シート4の厚さと同じにしても良いし、異ならせてもよい。
【0023】
シート4及び支持体11としては、紙系素材、不織布又は樹脂系素材等を用いることができる。また、シート4及び支持体11には、シート状の部材に限らず、フィルム状、薄板状の部材を用いることができる。なお、シート4及び支持体11には、それぞれ同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
シート4及び支持体11に紙系素材を用いる場合においては、パルプ系繊維原料のスラリーを網状に抄き取り、乾燥又は押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られる、いわゆる湿式抄造紙を用いることができる。
【0025】
パルプ系繊維原料としてのパルプは、赤松、トド松、エゾ松、ダグラスファー、ヘムロック、スプルース等の針葉樹パルプ、ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ、ポプラ、アルダー等の広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合物等の木材パルプ、ケナフ、バガスパルプ、タケパルプ、シリアルパルプ、ワラパルプ、アバカパルプ、木綿パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。また、粉砕パルプとしては、パルプ系繊維からなる原料シートを粉砕機で粉砕して得られるものが挙げられる。
【0026】
紙系素材を用いる場合、表面にコート剤を塗布してもよい。このときに塗布するコート剤としては、例えばエマルジョン塗料やインキを用いることができる。エマルジョン塗料やインキとしては、フッ素樹脂;アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、アクリル酸−マレイン酸樹脂、アクリル酸−スチレン−ウレタン樹脂等のアクリル酸系共重合体等のアクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂を水に溶解又は分散させたもの等を用いることができる。また、塗布するコート剤は疎水性を有するものが好ましく、通常アクリル系重合体の塗料やインキが用いられる。
【0027】
コート剤は、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、スピンコート、スプレーコート、スクリーンコート等の各種塗工方法により塗布することができる。コート剤は、マイクカバー1を構成する紙系素材の表面に部分的に形成しても全面的に形成しても良い。
【0028】
また、コート剤には、抗菌性物質を添加したコート剤を塗布する等により抗菌性を付与することができる。抗菌性物質としては、天然抗菌性物質が好ましい。例えば、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ヒノキチオール、ε−ポリリジン、レンギョウ抽出物、イチジク葉抽出物、オレガノ抽出物、柑橘種子抽出物、桑抽出物、シソ抽出物、シナモン抽出物、ショウガ抽出物、タデ抽出物、緑茶抽出物、ブドウ果皮抽出物、紅麹抽出物、グレープフルーツ抽出物、ホッコシ抽出物、モウソウチク抽出物、モミガラ抽出物、リゾチーム、エタノール、ニンニク抽出物、ハッカ油、ホタテ貝粉末や牡蛎粉末等の貝殻粉末、焼成貝殻粉末、キチン、キトサン等や、金、銀、銅等の抗菌性を有する金属やこれらの金属化合物の粉末等が挙げられる。抗菌性物質は、コート剤に含有させる場合に限らず、抗菌性物質を含有する薬剤を紙系素材に塗布して抗菌性を有する層を形成したり、防御壁2の製造過程等において、紙系素材中に含浸させるようにしてもよい。
【0029】
シート4及び支持体11に不織布を用いる場合においては、用いる不織布としてはJIS L0222に不織布として定義されている、「繊維が一方向又はランダムに配向されており、交絡、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨フェルトを除く。」もので、例えば、スパンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、レジンボンド不織布、ナノファイバー不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。
【0030】
シート4及び支持体11に樹脂材料を用いる場合においては、用いられる樹脂材料及びフィルムとしては、例えばポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルシアノアクリレート、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂混合物;天然分解性バイオマス樹脂や天然分解性バイオマス樹脂の混合物;フッ素樹脂、シリコーン樹脂、紫外線硬化樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等、上記樹脂を構成するモノマーの共重合体、天然樹脂、パラフィン、ゼラチン、セロファン、ポリメチルペンテン等からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂、天然樹脂等の天然分解性樹脂フィルムが好ましく、疎水性の高い物がより好ましい。また、フィルム素材を用いる場合には、透光性のよいものが好ましく、透明性の高い一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが好ましく、特に二軸延伸プロピレン(OPP)フィルムが好ましい。半透明のフィルム素材の場合、乳白色のようなものであってもよいし、色つきのものであってもよい。透光性のよいフィルムを用いると、シート4を通して前方を見ることが容易となり、またシート4にシール14等が貼着されている際にはシール14を視認しやすくなる。
【0031】
また、塗工剤としては、上記した合成樹脂、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂、天然樹脂、さらには松ヤニ、漆、コハク、ゼラチン、カゼイン、鼈甲、キチン、キトサン、牡蠣、ガム等天然高分子類の溶液や分散液からなる塗料、例えば、水系インクをはじめとする各種のインク等が挙げられる。
【0032】
マイクカバー1の素材として天然分解性を有する素材を用いて形成することにより、近年重要視されている環境負荷への対応もすることができるとともに、リサイクル性も向上させることが可能になる。
【0033】
次に、本発明に係るマイクカバー1の作用効果について説明する。図7において示すのは、マイクカバー1を取り付けたマイクM1を用いて歌唱する人の例である。このように、人が歌唱するときはマイクM1を口に近づけて行う。このとき、人の口からは唾液や食べ物のカスなどが飛沫となって飛散する。しかし、マイクカバー1をマイクM1に取り付けた場合には、飛沫がマイクカバー1の防御壁2によって受け止められるため、マイクカバー1よりも遠方の周囲に飛散する量を大きく低減することが可能になる。そのため、例えば小部屋のような空間内において飛散する飛沫の量を大きく低減させることができるとともに、その飛沫によってウイルスや細菌に感染するリスクを大きく低減させることも可能になる。また、マイクカバー1は、使用後にマイクM1を挿入孔6から引き抜き折り畳むことができるので、飛沫を受け止めた面に触れることなく処分することもできる。そのため、使用者の衛生面にも配慮した構成とすることができ、より感染リスクを低くすることが可能になる。
【0034】
また、このマイクカバー1においては、マイクカバー1をマイクM1に取り付けて使用しているときは、飛沫受止体3における前側のシート4が飛沫を受け止める。その後、その前側のシート4を摘んで(摘み部13が形成されているときは摘み部13を摘んで)そのシートを引き抜く。このとき、各シート4間には隙間が形成されているので、使用者は引き抜くシート4を摘みやすいため、まだ未使用のシート4を余分に摘んだり、シート4を摘むときの煩わしさを軽減することができる。そして、シート4を引き抜く際は、シート4に形成された挿入孔6が支持体11の挿入孔6よりも大きく形成されるとともに脆弱部12が形成されているので、簡単にシート4を引き抜いて取り除くことができる。そして、引き抜いた後はまだ未使用のシート4が前側に位置するので、飛沫等が付着していない清潔な状態で再び使用することができる。また、引き抜いたシート4は、そのまま折り畳んで廃棄することができるため、飛沫等がついた面に触れる必要がなく、手を汚さずに処分することができる。さらに、このマイクカバー1は、シート4は引き抜きやすく、支持体11を容易に引き抜くことができないようにしているので、マイクM1に取り付けたときにも、不用意にシート4や支持体11を摘んで引っ張った場合でも、シート4が引き抜かれることを防止することができる。なお、この場合、最後のシート4を使用したときは、シート4を引き抜いて取り除いてもよいし、またシート4及び支持体11をまとめてマイクM1から取り外し、マイクカバー1ごと取り除いてもよい。
【0035】
このように、本発明のマイクカバー1によれば、飛沫が飛散するのを大きく低減することができるのみならず、飛沫受止体3の交換や廃棄なども簡単に行うことができるので、非常に衛生的であるのみならず、使用する際に抵抗感や煩わしさを感じさせずに使用させることが可能になる。
【0036】
図8及び図9に示すのは、本発明に係るマイクカバー1の別の実施の態様である。この態様のマイクカバー1は、複数(例えば5枚)のフィルム4と支持体11とが積層されている。また、このマイクカバー1には、折り畳み部17が形成されており、フィルム4が内側に位置し、支持体11が外側へ位置する態様で折り畳めるように構成されている。マイクカバー1は、図8(b)に示している折り畳んだ状態から展開すると、図8(a)に示すように略L字形となるように形成されている。また、図9に示すように、フィルム4には、折り畳み部17と交わる位置にマイクM1を挿入するための挿入孔18が開口形成されており、支持体11には、折り畳み部17と交わる位置にマイクM1を挿入するための挿入孔19が開口形成されている。また、フィルム4には、脆弱部12としての切り込み線、例えばミシン目線等が形成されており、フィルム4を引き抜いた時に脆弱部12から裂けて取り除くことができるように構成されている。挿入孔18は、挿入孔19よりも周縁の長さが長くなるように形成されており、開口する面積も挿入孔19の開口面積よりも大きくなるように形成されている。このように挿入孔18を開口形成することにより、マイクM1の把持部M2を挿入しやすくすることができるとともに、マイクM1からマイクカバー1を取り除きやすくすることもできる。
【0037】
なお、この態様のマイクカバー1は、図10に示すように両端部分を所定の方法で固定してもよい。このように構成しても、上記した本発明に係るマイクカバー1の効果を奏することが可能となる。
【0038】
以上、本発明に係るマイクカバーについて詳細に説明したが、上記したのは本発明に係るマイクカバーの例を示したに過ぎず、これに限定されるものではない。したがって、本
発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0039】
1 マイクカバー
2 防御壁
3 飛沫受止体
4 シート
5 立ち上がり部
6,16 挿入孔
7,8 接合ライン
9,10 補強部
11 支持体
12 脆弱部
13 摘み部
14 シール
15 摘み片
17 折り畳み部
M1 マイク
M2 把持部
M3 マイクヘッド

【要約】
【課題】人体の口から飛散する飛沫による感染を大きく低減することができ、かつマイクにも容易に装着及び取り外しができ、さらには処分も簡単に行うことのできるマイクカバーを提供する。
【解決手段】マイクに取り付けて用いるマイクカバー1であって、人体の口部から飛散する飛沫がマイクヘッドM3の周辺から前方に拡散するのを防御するための防御壁2を有し、この防御壁2は、飛沫を受け止めるための複数のシート4を相互に剥離可能に重ね合わせた飛沫受止体3を有している。
【選択図】 図1
図1
図2
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図7
図8
図9
図10