特許第6738511号(P6738511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738511電気的な導体の製造方法、電気的な導体並びにこの電気的な導体を備えた自動車電気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738511
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】電気的な導体の製造方法、電気的な導体並びにこの電気的な導体を備えた自動車電気システム
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/02 20060101AFI20200730BHJP
   H01B 5/08 20060101ALI20200730BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   H01B13/02 Z
   H01B5/08
   H01B13/00 523
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-503818(P2017-503818)
(86)(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公表番号】特表2017-522701(P2017-522701A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2015066800
(87)【国際公開番号】WO2016012519
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年3月22日
(31)【優先権主張番号】102014214461.2
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180370
【氏名又は名称】レオニ カーベル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン ケッペンデルファー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シル
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−009686(JP,A)
【文献】 実開平05−083933(JP,U)
【文献】 特開昭48−054227(JP,A)
【文献】 特開平05−128923(JP,A)
【文献】 特開平02−170314(JP,A)
【文献】 特開2011−044370(JP,A)
【文献】 特開2014−060061(JP,A)
【文献】 特開平05−101728(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/131779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
H01B 5/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別ワイヤ(10)からなるワイヤ束(6)と、このワイヤ束を取り囲む絶縁シース(8)とを備えた少なくとも1本の芯線(4)を有する電気的な導体(2)を製造するための方法において、前記ワイヤ束(6)が、供給範囲において押出し機(16)のすぐ手前で案内するためおよびその横断面形状を付与するために、中心縦軸線(20)に沿って成形要素(18)を通って案内され、この成形要素(18)が前記中心縦軸線(20)の回りと前記ワイヤ束(6)の回りに回転し且つ前記個別ワイヤをねじることなく前記ワイヤ束(6)に対して相対的に回転することと、続いて前記絶縁シース(8)が前記押出し機(16)によって前記ワイヤ束(6)に被着され、前記個別ワイヤ(10)がワイヤ束(6)内でねじれていないことあるいは前記ワイヤ束(6)が0.5mより大きい撚り長さを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記成形要素(18)が2mよりも小さな間隔(a)だけ前記押出し機(16)から離して位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成形要素(18)が0.5mよりも小さな間隔(a)だけ前記押出し機(16)から離して位置決めされていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記成形要素(18)が成形スリーブ(18)として形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記成形要素(18)が成形スリーブ(18)として形成されていることと、前記ワイヤ束(6)が前記成形スリーブ(18)によって圧縮されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤ束(6)の直径が少なくとも3%だけ小さくなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成形要素(18)が少なくとも500回転/分の速度で回転することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の個別ワイヤからなるワイヤ束と、このワイヤ束を取り囲む絶縁シースとを備えた少なくとも1本の芯線を有する電気的な導体を製造するための方法に関する。本発明はさらに、このような電気的な導体並びにこの電気的な導体を備えた自動車電気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法およびこのような電気的な導体は例えば米国特許第4,471,161号明細書から読み取ることができる。撚り芯線とその製造が記載され、この製造の場合多数の個別ワイヤが撚り機械によって互いに撚り合わせられて1本の撚り線になる。このようにして製造された撚りワイヤは芯線を形成するためにさらに押し出し被着されるシースによって取り囲まれている。撚り導線を有するこのような芯線は特に、導体の高い柔軟性が所望される用途のために使用される。撚り導線の多数の個別ワイヤに基づいて、例えば導線として1本の中実ワイヤを有する芯線と比較してこのような高い柔軟性が与えられる。
【0003】
さらに、例えば米国特許第4426837B号明細書から、逆向きの撚り(SZ撚り)を有する撚られた個別ワイヤを製造するための撚り合わせ機械を読み取ることができる。この場合、個別ワイヤは細長い管の中を案内されてこの管と共に回転させられる。管の回転によって、個別ワイヤは管から出るときに互いに撚られ、そこでシースを被着するための押出し機に供給される。
【0004】
撚り導線を製造する際に、撚り導線を固めること、すなわち個別ワイヤを互いに押圧することが、例えば独国特許出願公表第68915881T2号明細書、欧州特許出願公開第1191545A1号明細書または米国特許第5449861B号明細書から原理的に知られている。撚り合わせプロセスまたは撚りプロセスの際、個別ワイヤまたは個別ワイヤの束は先ず最初に、撚り合わせ要素、例えば撚り合わせニップルまたは撚り合わせディスクに規則的に供給される。固めることが所望されると、例えば撚り合わせニップルがそれに相応して形成されるので、撚り合わせニップルによって固められる。独国特許出願公表第68915881T2号明細書から穴あき鋼板の使用が知られている。すべての場合に、一緒に案内されるワイヤ束は撚り機械に供給され、この撚り機械の端部で、撚り合わせられたワイヤ束が巻き枠に巻かれる。絶縁シースは通常は後に別個の方法ステップで、撚られたワイヤ束の周りに取付けられる。
【0005】
しかし、このような撚り合わせプロセスまたは撚りプロセスは全体として非常に面倒である。これは例えば撚り導線の代わりに中実ワイヤを有する芯線と比較して、コストが高くつくことになる。
【0006】
撚り導線が自動車分野で使用されると、すなわち例えば自動車電気システムの一部として使用されると、撚り導線の形成はさらに、例えばJIS C3406−1987またはJASO D611−94から読み取ることができるような所定の標準規格に適合させられる。自動車分野の撚り導線は一般的に低い電圧に適合するように設計されている。撚り導線は通常、できるだけコンパクトにおよび軽量にすべきである。できるだけコンパクトな形成の観点から、例えばJASO D611−94から、撚り合わせ結合部を特に円形にプレスするために、撚り導線を固めることが知られている。重量低減のために、低減された薄壁状絶縁体を備えた導体、いわゆるFLRY導体が知られている。低い電圧および少量の電流のための自動車分野用撚り導線は一般的に、多数の個別ワイヤ、普通は7〜70本、特に7〜37本の個別ワイヤからなる撚り合わせ要素を備えている。この個別ワイヤはそれぞれ0.18〜0.32mmの範囲内の個別ワイヤ直径を有するので、撚り導線は約0.8〜2mmの範囲内の直径を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,471,161号明細書
【特許文献2】米国特許第4426837B号明細書
【特許文献3】独国特許出願公表第68915881T2号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1191545A1号明細書
【特許文献5】米国特許第5449861B号明細書
【特許文献6】独国特許出願公表第68915881T2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これから出発して、本発明の根底をなす課題は、フレキシブルな導体の低コスト製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明に従い、請求項1の特徴を有する方法によっておよび請求項9の特徴を有する導体によって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。方法に関連して説明した効果および有利な実施形は導体にも同様に当てはまり、その逆もまたそのとおりである。
【0010】
この場合、方法は複数の個別ワイヤからなるワイヤ束と、絶縁シースとを備えたケーブルを製造する働きをする。シースは押出し機によって製造される。この場合そのために、長い個別ワイヤからなるワイヤ束が供給範囲において押出し機に連続的に供給される。ワイヤ束に横断面形状を付与するために、ワイヤ束は供給範囲において押出し機のすぐ手前で中心縦軸線に沿って成形要素を通って案内される。この場合、成形要素はその中心縦軸線回りにおよびワイヤ束回りに回転する。成形要素のすぐ後で、絶縁シースは押出し機によってワイヤ束上に被着される。すなわち、ワイヤ束回りに成形要素の相対回転運動が行われる。成形要素によって、ワイヤ束の所望な横断面形状が完成した芯線内で生じる。そのために、ワイヤ束の特にほどけた個別ワイヤが半径方向に集合させられる。
【0011】
それによって、ワイヤ束は供給範囲において押出し機の直ぐ手前で押出し機内での処理のための準備がなされる。それによって、特にワイヤ束上への絶縁ケースの被着が容易になる。その際、この形成は、撚り機械による高価な撚りを省略し、ワイヤ束を捩じらないかまたは少なくとも適切な撚りをせずに押出し機に供給するという基本思想から出発する。すなわち、成形要素は、ワイヤ束を例えば円形の所望な形状にするためにのみ役立つ。回転する成形要素と一緒にワイヤ束を回転することあるいは個別ワイヤを互いにねじることは、回転する成形要素によって行われない。成形要素によってワイヤ束に付与されるこの形状で、ワイヤ束が押出し機に直接供給されるので、押出し過程によって取付けられる絶縁物は、ワイヤ束を、付与された所望な形状に保持する。「すぐ後で」とは、成形要素によって付与された形状がまだ保持され、そして時間的にも空間的にもすぐ後の押出しステップで固定されることであると理解される。
【0012】
回転する成形要素の特別な意義は、成形要素がその中心縦軸線回りに、すなわち通常は個別ワイヤの供給方向回りに回転することである。それによって、個別ワイヤを成形要素に通して案内する際に個別ワイヤに作用する力が良好に分配される。というのは、成形要素がワイヤ束と相対的に回転するからである。それによって、個別ワイヤの負荷が低減され、成形要素を通して個別ワイヤを案内する間、ワイヤが切れる危険が低減される。
【0013】
この手段により、全体として撚りが不要である。この場合、撚りとは一般的に、ドラムから個別ワイヤを送り出した後で、個別ワイヤを中心縦軸線回りに相対的に適切にねじることまたは回転することであると理解される。これには、古典的な撚り合わせが含まれる。この撚り合わせの場合には、個別ワイヤが中央芯線回りに層をなして撚られ、対称的な同心構造を有する。本明細書において、撚りとは、他の意味でいわゆるひとまとめにすることであると理解される。ひとまとめにする場合、束内の個別ワイヤは中心縦軸線回りに回転させられる。この場合、ひとまとめにする際に、古典的な撚り合わせの場合のような、個別ワイヤの定められた位置は達成されない。
【0014】
このようにして製造された導体は連続的な方法で、一般形には数百メートルの長さのほぼ無端製品として製造される。導体はシースを取付けた後で一般的にドラムに巻き取られる。
【0015】
従って、有利な発展形態では、全体としてこのような適切な撚り合わせまたは撚りおよび特に撚り機械が完全に省略され、個別ワイヤがワイヤ束内にねじられないでまたは少なくとも十分にねじられないで存在する。従って、個別ワイヤは良好な近似において互いに平行に延在している。個別ワイヤは少なくともほぼ平行におよび好ましくは正確に平行に成形要素に供給され、この成形要素内で平行にさらに案内され、そして成形要素からねじ
れないで出る。
【0016】
合目的な実施形では、正確に平行な配向の代わりに、平行に延在する個別ワイヤの0.5mよりも大きな撚り長さおよび特に2mよりも大きな撚り長さから無限大の撚り長さまでの比較的に大きな撚り長さが設けられている。この場合、撚り長さは、ワイヤ束が固有の中心縦軸線回りに360°だけ1回転する長さを意味する。このような正確には平行でない供給は、特に定置されたドラムからのワイヤ束の送り出しによって生じる。ここでも、能動的な(回転する)撚り合わせ要素または撚り要素と、従来の撚り機械が省略される。
【0017】
基本的には、撚り合わせされた導線の場合にも、押出し機の直前に成形要素を配置することができる。この場合、成形要素がワイヤ束の回りに回転することがきわめて重要である。それによって、個別ワイヤの負荷が保持される。この場合、既に撚られたワイヤ束が成形要素に供給される。このワイヤ束は、回転する成形要素と一緒に回転しないで、この成形要素を通って案内される。この場合にも、所望な成形が行われるので、完成した導体は良好な円形であり、続いて被着されるシースはワイヤ束に対して高い同心性を有する。その際、ワイヤ束は撚り合わせの後でおよび例えば複数の方向変換の後で成形要素によって所望な形状になり、特に丸められる。
【0018】
撚り合わせされない変形実施形の場合には製造技術的に、個別ワイヤが多少ほどけた束として貯蔵体、特にドラムから送り出され、成形要素に供給される。必要時には、多数の個別ワイヤまたは個別ワイヤの束を、成形要素の手前で、複数の貯蔵体から先ず最初は集合させられ、そして成形要素内でワイヤ束にまとめることができる。
【0019】
その際、束が一緒に回転するドラムからではなく、定置されたドラムから送り出されると、これは一般的に、送り出しプロセスに起因する、ワイヤ束内での個別ワイヤの不適切なねじれ、正確にはひとまとめを生じることになる。従って、個別ワイヤは上述のように正確に平行に供給されない。この場合、少なくとも0.5m以上のおよび特に少なくとも2m以上の比較的に大きな撚り長さが生じる。これに対して、自動車分野の所定の用途のために適切に生じさせられるねじれの場合には、撚り長さは数ミリメートルから0.1mまでの範囲である。
【0020】
これによって全体として、コストのかかる撚り合わせを省略することにより、低コストの製造方法が達成される。同時に、個別ワイヤを使用することにより、導体の所望な高い柔軟性が維持される。
【0021】
無限大までの大きな撚り長さの特別な利点は、大きなまたは無限大の撚り長さに基づいて材料が節約され、重量が軽減されることになる。この材料節約と重量軽減は特に自動車分野の意図する用途にとってきわめて重要である。これだけで、従来の撚り導線と比べて、約1%の節約および軽減が達成可能である。
【0022】
この場合特に、ワイヤ束の準備が押出し機のすぐ手前で成形要素によって行われることが重要である。ワイヤ束の準備が行われる成形要素が、押出し機から、言わば押出し機入口から、2mよりも短い距離、特に0.5mよりも短い距離だけ離隔されて位置決めされていると有利である。
【0023】
合目的な方法変形ではさらに、個別ワイヤの縦方向に対して横向きに個別ワイヤを互いに接触させるために、成形要素が使用される。これにより、一般的には近似的に円筒外周表面を有するワイヤ束が形成される。このようにして、厚さができるだけ薄く、直径ができるだけ小さなワイヤ束が提供される。第1変形実施形では、この場合、個別ワイヤは変形されない。このように互いに接触する個別ワイヤはすぐ後で押出し機において、絶縁シース、一般的には合成樹脂で覆われる。従って、ワイヤ束は、成形要素によって付与されたその形状に、シースによって保持される。
【0024】
そのために、成形要素は好ましくは成形スリーブとして、すなわち少なくとも部分的に中空円筒状および/または円錐台状の物体として形成されている。この物体によって、ワイヤ束は供給範囲内で押出し機のすぐ手前に案内される。成形スリーブの寸法は第1変形実施形では、ワイヤ束内の個別ワイヤが、ワイヤ束の縦軸線に対するその相対位置に影響を受けて幾何学的に変形することのないように選定されている。
【0025】
有利な第2の代替実施形では、成形要素によって、ワイヤ束内での個別ワイヤの一種の配向または位置変えだけでなく、ワイヤ束の圧縮が行われる。この圧縮の際、ワイヤ束内の個別ワイヤは、成形要素を通って引き抜くときに、ワイヤ束の太さまたはワイヤ束の直径をさらに低減するために、互いに押し付けられる。その際、成形要素は円錐形の入口範囲を有し、端部直径の方へ縮小している。この端部直径は、所望な圧縮が行われるように採寸されている。この場合、圧縮とは、個別ワイヤ自体を変形せずに個別ワイヤの最も密集した配置のときの直径に関連して、例えば1〜3%のワイヤ束の直径の低減であると理解される。圧縮によって特に、良好な丸み付けが達成されるという特別な利点が得られる。それによって、ワイヤ束の表面は円筒外周面にさらに近似させられる。従って、押出しとシースのために必要なシース材料が少なくて済む。さらに、圧縮によってワイヤ束がばらばらにならないように互いに保持されるので、個別ワイヤは押出し機までの経路で互いに離れて走行しない。
【0026】
さらに、前述のように、成形要素は中心縦軸線回りに回転する。特に圧縮過程の際に、外側にある個別ワイヤは縦方向に大きな応力を受ける。これは事情によっては個別ワイヤの切断をもたらす。成形要素の回転によって、発生する縦方向の力が側方に逃がされるので、個別ワイヤの負荷が低減される。これを達成するために、回転速度は好ましくは数百回転/分であり、特に500回転/分よりも大きい。成形要素は通常は積極的に駆動される。
【0027】
このようなワイヤ切断の危険は特に、非常に小さな個別ワイヤ横断面の結果として生じる。通常は銅または銅合金からなる個別ワイヤは一般的に、1mmよりも小さな直径、特に0.5mmよりも小さな直径を有する。
【0028】
興味のある用途、すなわち特に自動車分野での用途のために、例えば冒頭に述べた標準規格に従って、特に比較的に小さな導体が製造される。この導体の場合、芯線内のワイヤ束全体の直径は最大で2〜4mmの範囲内にある。その際相応して、制限された数の個別ワイヤ、一般的には60本よりも少ない個別ワイヤ、好ましくは20本よりも少ない個別ワイヤが設けられる。その際、個別ワイヤは一般的に、0.11〜0.40mmまたは0.11〜0.60mmの範囲内の直径を有する。
【0029】
これにより製造される芯線は全体として、個別ワイヤが互いにねじられる古典的な撚り導線に匹敵する破壊安全性を有する。勿論、製作費用は古典的な撚り導線よりも少なくて済み、従って製造コストも少ないという結果になる。それによって、このようなケーブルは、種々の用途にとって有利である、中実ワイヤ導線と古典的な撚り導線の間の中間解決策である。従って、ここで提案した方法により、ねじられていない複数の個別ワイヤからなるワイヤ束を備えた少なくとも1本のこのような芯線を有する導体が有利に製造される。このような芯線は特に単一芯線の導体のためにおよび複数芯線の導体のために使用される。複数芯線の導体の場合、単一芯線は好ましくは共通のケーブル外周部によってまとめられている。その代わり、個々の芯線は(格子−)ウェブ付き導体のように互いに連結されている。このような特に単一芯線または複数芯線の導体は特に自動車の分野で使用される。成形要素を押出しプロセスのすぐ手前に直接配置したここで説明した方法は特に、撚られていない、すなわちねじられていないワイヤ束の場合に使用される。基本的には、この方法は撚られた、すなわちねじられたワイヤ束および特にひとまとめにされたワイヤ束の場合にも使用される。特に変形実施形の場合、ワイヤ束が圧縮要素、すなわち特に成形スリーブによって圧縮される。
【0030】
次に、概略的な図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】単芯導体の横断面図である。
図2図1のA−A線に沿った縦断面図である。
図3】導体のための製造設備を示す図である。
図4】単芯導体の代替的な実施の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
すべての図において、互いに一致する部分には同じ参照符号が付けてある。
【0033】
図1の縮尺どおりではない横断面図に示した、次に例示的に説明する単芯の導体2は、1本の芯線4によって形成されている。
【0034】
この芯線は合成樹脂製の絶縁シース8によって包囲されたワイヤ束6を備えている。その際、各ワイヤ束6は本実施の形態では、1mmよりも小さな直径d1を有する6本の個別ワイヤ10を備えている。6本の個別ワイヤ10は中央の個別ワイヤ10の外周側に接触している。
【0035】
図1に示唆するように、ワイヤ束6は圧縮されたワイヤ束6として形成され、従って個別ワイヤ10は互いに押圧されている。その結果、各ワイヤ束6の太さまたは各ワイヤ束6の直径が小さくなり、各個別ワイヤ10の横断面形状が、ワイヤ束6の圧縮中の各個別ワイヤ10の変形に基づいて、丸い形から逸脱している。ワイヤ束6の全体直径d2は例えば2〜3mmの範囲である。
【0036】
この圧縮に基づいて、両ワイヤ束6の一部は絶縁シース8がなくてもその都度その形を保持する。個別ワイヤ10の間の相互保持作用は圧縮に基づいて一般的に、古典的な撚り導線の場合ほど強くはない。この撚り導線の場合には、撚りの形が特に、適切に行われる個別ワイヤ10のねじりに基づいて持続する。このような適切なねじりは個別ワイヤ10の場合には図2から明らかであるように行われない。従って、個別ワイヤ10は互いにおよび中心縦軸線に対して少なくともほぼ平行に延在している。すなわち個別ワイヤはねじれていない。
【0037】
その際、ケーブル2の製作は、図3に縮尺に従わずに示すような製造設備12で行われる。この場合、予め製作した個別ワイヤ10がワイヤドラム14から例えばほどけたワイヤ束6として送り出され、押出し機16に連続供給される。この押出し機ではワイヤ束は絶縁シース8を備える。その際、押出し機16の直前において、すなわち加工方向Aに見て押出し機入口の手前の供給範囲内において、個別ワイヤ10は圧縮ユニット、すなわち成形スリーブ18を通って案内される。この成形スリーブによって、個別ワイヤ10は束にされ、かつ圧縮されたワイヤ束6に成形される。その際、成形スリーブ18の出口は押出し機の入口から間隔aだけ離してある。この間隔aは好ましくは最大で数m、特に2m以下、好ましくは約0.5mである。
【0038】
加工速度、すなわちワイヤ束6が成形スリーブ18を通って引き出される速度は一般的に1000〜2000m/分である。
【0039】
圧縮時に発生する力を側方に逃がして、ワイヤ切断の危険を減らすために、成形スリーブ18はその間ワイヤ束6の中心軸線20の回りに回転する。成形スリーブは好ましくは500回転/分よりも高い回転数で、特に約1000回転/分の回転数で回転する。
【0040】
続いて、押出し機16内でシース8がワイヤ束上に押し出される。
【0041】
基本的には、上記の成形スリーブ18の代わりに、例えば束のスエージング処理のために使用されるような他の圧縮ユニットを使用することができる。この場合、ワイヤ束6の周囲に、可動の複数の成形用顎部が分配配置されている。この成形用顎部は調和した運動経過でワイヤ束6を押圧する。しかし、このスエージング処理は通常は、非常に大きな横断面の場合に使用される。
【0042】
さらに、束6の個別ワイヤ10は引き抜き硬化し、球状化焼きなましされない。すなわち、試験の結果、引き抜き硬化するワイヤだけが所望されるように圧縮可能であることが判った。すなわち、焼きなましされたワイヤ材料は好ましくは、個別ワイヤ10の所望な圧縮、すなわち半径方向の変形を行わずに、軸方向にのみ流動する。
【0043】
ケーブル2の製作時に束6が一緒に回転するワイヤドラム14からではなく固定されたワイヤドラム14から送り出されると一般的に、図4に示すように、送り出しプロセスに起因する、例えば2mの撚り長さsを有するワイヤ束6内の個別ワイヤ10の不適切な束を生じる。この場合、撚り長さsは、ワイヤ束が固有の中心縦軸線回りに360°だけ1回転するときに進む長さである。その際、送り出しプロセスに起因するねじれまたは一まとめの撚り長さsは実質的にワイヤドラム14の直径に左右され、従来技術の適切な撚り長さよりもはるかに大きい。
【0044】
本発明は、前述の実施の形態に限定されない。専門家は、本発明の対象から逸脱することなく、この実施の形態から本発明の他の変形を導き出すことができる。特に、実施の形態に関連して説明した個々の特徴は、本発明の対象から逸脱することなく、他の方法で互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
2 導体/ケーブル
4 芯線
6 ワイヤ束/束
8 シース
10 個別ワイヤ
12 製造設備
14 ワイヤドラム
16 押出し機
18 成形スリーブ
20 中心縦軸線
A 加工方向
a 間隔
d1 個別ワイヤの直径
d2 ワイヤ束の直径
s 撚り長さ
図1
図2
図3
図4