【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明に従い、請求項1の特徴を有する方法によっておよび請求項9の特徴を有する導体によって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。方法に関連して説明した効果および有利な実施形は導体にも同様に当てはまり、その逆もまたそのとおりである。
【0010】
この場合、方法は複数の個別ワイヤからなるワイヤ束と、絶縁シースとを備えたケーブルを製造する働きをする。シースは押出し機によって製造される。この場合そのために、長い個別ワイヤからなるワイヤ束が供給範囲において押出し機に連続的に供給される。ワイヤ束に横断面形状を付与するために、ワイヤ束は供給範囲において押出し機のすぐ手前で中心縦軸線に沿って成形要素を通って案内される。この場合、成形要素はその中心縦軸線回りにおよびワイヤ束回りに回転する。成形要素のすぐ後で、絶縁シースは押出し機によってワイヤ束上に被着される。すなわち、ワイヤ束回りに成形要素の相対回転運動が行われる。成形要素によって、ワイヤ束の所望な横断面形状が完成した芯線内で生じる。そのために、ワイヤ束の特にほどけた個別ワイヤが半径方向に集合させられる。
【0011】
それによって、ワイヤ束は供給範囲において押出し機の直ぐ手前で押出し機内での処理のための準備がなされる。それによって、特にワイヤ束上への絶縁ケースの被着が容易になる。その際、この形成は、撚り機械による高価な撚りを省略し、ワイヤ束を捩じらないかまたは少なくとも適切な撚りをせずに押出し機に供給するという基本思想から出発する。すなわち、成形要素は、ワイヤ束を例えば円形の所望な形状にするためにのみ役立つ。回転する成形要素と一緒にワイヤ束を回転することあるいは個別ワイヤを互いにねじることは、回転する成形要素によって行われない。成形要素によってワイヤ束に付与されるこの形状で、ワイヤ束が押出し機に直接供給されるので、押出し過程によって取付けられる絶縁物は、ワイヤ束を、付与された所望な形状に保持する。「すぐ後で」とは、成形要素によって付与された形状がまだ保持され、そして時間的にも空間的にもすぐ後の押出しステップで固定されることであると理解される。
【0012】
回転する成形要素の特別な意義は、成形要素がその中心縦軸線回りに、すなわち通常は個別ワイヤの供給方向回りに回転することである。それによって、個別ワイヤを成形要素に通して案内する際に個別ワイヤに作用する力が良好に分配される。というのは、成形要素がワイヤ束と相対的に回転するからである。それによって、個別ワイヤの負荷が低減され、成形要素を通して個別ワイヤを案内する間、ワイヤが切れる危険が低減される。
【0013】
この手段により、全体として撚りが不要である。この場合、撚りとは一般的に、ドラムから個別ワイヤを送り出した後で、個別ワイヤを中心縦軸線回りに相対的に適切にねじることまたは回転することであると理解される。これには、古典的な撚り合わせが含まれる。この撚り合わせの場合には、個別ワイヤが中央芯線回りに層をなして撚られ、対称的な同心構造を有する。本明細書において、撚りとは、他の意味でいわゆるひとまとめにすることであると理解される。ひとまとめにする場合、束内の個別ワイヤは中心縦軸線回りに回転させられる。この場合、ひとまとめにする際に、古典的な撚り合わせの場合のような、個別ワイヤの定められた位置は達成されない。
【0014】
このようにして製造された導体は連続的な方法で、一般形には数百メートルの長さのほぼ無端製品として製造される。導体はシースを取付けた後で一般的にドラムに巻き取られる。
【0015】
従って、有利な発展形態では、全体としてこのような適切な撚り合わせまたは撚りおよび特に撚り機械が完全に省略され、個別ワイヤがワイヤ束内にねじられないでまたは少なくとも十分にねじられないで存在する。従って、個別ワイヤは良好な近似において互いに平行に延在している。個別ワイヤは少なくともほぼ平行におよび好ましくは正確に平行に成形要素に供給され、この成形要素内で平行にさらに案内され、そして成形要素からねじ
れないで出る。
【0016】
合目的な実施形では、正確に平行な配向の代わりに、平行に延在する個別ワイヤの0.5mよりも大きな撚り長さおよび特に2mよりも大きな撚り長さから無限大の撚り長さまでの比較的に大きな撚り長さが設けられている。この場合、撚り長さは、ワイヤ束が固有の中心縦軸線回りに360°だけ1回転する長さを意味する。このような正確には平行でない供給は、特に定置されたドラムからのワイヤ束の送り出しによって生じる。ここでも、能動的な(回転する)撚り合わせ要素または撚り要素と、従来の撚り機械が省略される。
【0017】
基本的には、撚り合わせされた導線の場合にも、押出し機の直前に成形要素を配置することができる。この場合、成形要素がワイヤ束の回りに回転することがきわめて重要である。それによって、個別ワイヤの負荷が保持される。この場合、既に撚られたワイヤ束が成形要素に供給される。このワイヤ束は、回転する成形要素と一緒に回転しないで、この成形要素を通って案内される。この場合にも、所望な成形が行われるので、完成した導体は良好な円形であり、続いて被着されるシースはワイヤ束に対して高い同心性を有する。その際、ワイヤ束は撚り合わせの後でおよび例えば複数の方向変換の後で成形要素によって所望な形状になり、特に丸められる。
【0018】
撚り合わせされない変形実施形の場合には製造技術的に、個別ワイヤが多少ほどけた束として貯蔵体、特にドラムから送り出され、成形要素に供給される。必要時には、多数の個別ワイヤまたは個別ワイヤの束を、成形要素の手前で、複数の貯蔵体から先ず最初は集合させられ、そして成形要素内でワイヤ束にまとめることができる。
【0019】
その際、束が一緒に回転するドラムからではなく、定置されたドラムから送り出されると、これは一般的に、送り出しプロセスに起因する、ワイヤ束内での個別ワイヤの不適切なねじれ、正確にはひとまとめを生じることになる。従って、個別ワイヤは上述のように正確に平行に供給されない。この場合、少なくとも0.5m以上のおよび特に少なくとも2m以上の比較的に大きな撚り長さが生じる。これに対して、自動車分野の所定の用途のために適切に生じさせられるねじれの場合には、撚り長さは数ミリメートルから0.1mまでの範囲である。
【0020】
これによって全体として、コストのかかる撚り合わせを省略することにより、低コストの製造方法が達成される。同時に、個別ワイヤを使用することにより、導体の所望な高い柔軟性が維持される。
【0021】
無限大までの大きな撚り長さの特別な利点は、大きなまたは無限大の撚り長さに基づいて材料が節約され、重量が軽減されることになる。この材料節約と重量軽減は特に自動車分野の意図する用途にとってきわめて重要である。これだけで、従来の撚り導線と比べて、約1%の節約および軽減が達成可能である。
【0022】
この場合特に、ワイヤ束の準備が押出し機のすぐ手前で成形要素によって行われることが重要である。ワイヤ束の準備が行われる成形要素が、押出し機から、言わば押出し機入口から、2mよりも短い距離、特に0.5mよりも短い距離だけ離隔されて位置決めされていると有利である。
【0023】
合目的な方法変形ではさらに、個別ワイヤの縦方向に対して横向きに個別ワイヤを互いに接触させるために、成形要素が使用される。これにより、一般的には近似的に円筒外周表面を有するワイヤ束が形成される。このようにして、厚さができるだけ薄く、直径ができるだけ小さなワイヤ束が提供される。第1変形実施形では、この場合、個別ワイヤは変形されない。このように互いに接触する個別ワイヤはすぐ後で押出し機において、絶縁シース、一般的には合成樹脂で覆われる。従って、ワイヤ束は、成形要素によって付与されたその形状に、シースによって保持される。
【0024】
そのために、成形要素は好ましくは成形スリーブとして、すなわち少なくとも部分的に中空円筒状および/または円錐台状の物体として形成されている。この物体によって、ワイヤ束は供給範囲内で押出し機のすぐ手前に案内される。成形スリーブの寸法は第1変形実施形では、ワイヤ束内の個別ワイヤが、ワイヤ束の縦軸線に対するその相対位置に影響を受けて幾何学的に変形することのないように選定されている。
【0025】
有利な第2の代替実施形では、成形要素によって、ワイヤ束内での個別ワイヤの一種の配向または位置変えだけでなく、ワイヤ束の圧縮が行われる。この圧縮の際、ワイヤ束内の個別ワイヤは、成形要素を通って引き抜くときに、ワイヤ束の太さまたはワイヤ束の直径をさらに低減するために、互いに押し付けられる。その際、成形要素は円錐形の入口範囲を有し、端部直径の方へ縮小している。この端部直径は、所望な圧縮が行われるように採寸されている。この場合、圧縮とは、個別ワイヤ自体を変形せずに個別ワイヤの最も密集した配置のときの直径に関連して、例えば1〜3%のワイヤ束の直径の低減であると理解される。圧縮によって特に、良好な丸み付けが達成されるという特別な利点が得られる。それによって、ワイヤ束の表面は円筒外周面にさらに近似させられる。従って、押出しとシースのために必要なシース材料が少なくて済む。さらに、圧縮によってワイヤ束がばらばらにならないように互いに保持されるので、個別ワイヤは押出し機までの経路で互いに離れて走行しない。
【0026】
さらに、前述のように、成形要素は中心縦軸線回りに回転する。特に圧縮過程の際に、外側にある個別ワイヤは縦方向に大きな応力を受ける。これは事情によっては個別ワイヤの切断をもたらす。成形要素の回転によって、発生する縦方向の力が側方に逃がされるので、個別ワイヤの負荷が低減される。これを達成するために、回転速度は好ましくは数百回転/分であり、特に500回転/分よりも大きい。成形要素は通常は積極的に駆動される。
【0027】
このようなワイヤ切断の危険は特に、非常に小さな個別ワイヤ横断面の結果として生じる。通常は銅または銅合金からなる個別ワイヤは一般的に、1mmよりも小さな直径、特に0.5mmよりも小さな直径を有する。
【0028】
興味のある用途、すなわち特に自動車分野での用途のために、例えば冒頭に述べた標準規格に従って、特に比較的に小さな導体が製造される。この導体の場合、芯線内のワイヤ束全体の直径は最大で2〜4mmの範囲内にある。その際相応して、制限された数の個別ワイヤ、一般的には60本よりも少ない個別ワイヤ、好ましくは20本よりも少ない個別ワイヤが設けられる。その際、個別ワイヤは一般的に、0.11〜0.40mmまたは0.11〜0.60mmの範囲内の直径を有する。
【0029】
これにより製造される芯線は全体として、個別ワイヤが互いにねじられる古典的な撚り導線に匹敵する破壊安全性を有する。勿論、製作費用は古典的な撚り導線よりも少なくて済み、従って製造コストも少ないという結果になる。それによって、このようなケーブルは、種々の用途にとって有利である、中実ワイヤ導線と古典的な撚り導線の間の中間解決策である。従って、ここで提案した方法により、ねじられていない複数の個別ワイヤからなるワイヤ束を備えた少なくとも1本のこのような芯線を有する導体が有利に製造される。このような芯線は特に単一芯線の導体のためにおよび複数芯線の導体のために使用される。複数芯線の導体の場合、単一芯線は好ましくは共通のケーブル外周部によってまとめられている。その代わり、個々の芯線は(格子−)ウェブ付き導体のように互いに連結されている。このような特に単一芯線または複数芯線の導体は特に自動車の分野で使用される。成形要素を押出しプロセスのすぐ手前に直接配置したここで説明した方法は特に、撚られていない、すなわちねじられていないワイヤ束の場合に使用される。基本的には、この方法は撚られた、すなわちねじられたワイヤ束および特にひとまとめにされたワイヤ束の場合にも使用される。特に変形実施形の場合、ワイヤ束が圧縮要素、すなわち特に成形スリーブによって圧縮される。
【0030】
次に、概略的な図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。