【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは上記目的を達成すべく、水系の溶液法によるゼオライト様イミダゾレート構造体を含んでなる多孔性錯体の簡便な製造法を鋭意研究した結果、出発原料として金属塩または金属酸化物を水中で反応させ、反応混合物の水溶液を噴霧処理し、更に得られた非晶質状錯体複合体を有機溶媒で処理することにより、多孔性錯体複合体を簡便に効率よく(例えば、連続フロー式)製造することができることを見出した。また、本発明の製法においては、錯体形成反応が効率よく進行し、イミダゾール配位子の反応基質を過剰量に要することなく、定量的に反応が進行する利点を有する。また、予想外に該製法において、噴霧処理によって得られる中間体生成物が、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる新規な非晶質状錯体複合体であること、更に当該非晶質状錯体複合体を有機溶媒で処理することによって得られる生成物が、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる新規な中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体であることをも見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体)
[1]ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる、中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体であって、ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい、
該中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体。
[2]ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体および金属酸化物を含む複合粒子を含んでなる、中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体であって、
該金属酸化物が該複合粒子の外側表面部にあり、ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい、
該中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体。
[3]該金属が亜鉛であって、該ゼオライト様イミダゾレート構造体がZIF−8である、項[1]または[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体。
[3−1]該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の該金属と該イミダゾレート配位子の含有(構成)モル比が1:2である、項[1]または[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体。
【0012】
(非晶質状錯体複合体)
[4]ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる非晶質状錯体複合体であって、ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい、
該非晶質状錯体複合体。
[5]項[1]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体を製造するための中間体としての、項[4]記載の非晶質状錯体複合体。
[6]ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体および金属酸化物を含む複合粒子を含んでなる非晶質状錯体複合体であって、
該金属酸化物が該複合粒子の中心部にあり、そして該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体が該複合粒子の外殻部にあり、ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は適宜置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい、
該非晶質状錯体複合体。
[7]項[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体を製造するための中間体としての、項[6]記載の非晶質状錯体複合体。
[8]該金属酸化物が酸化亜鉛である、項[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体または項[6]記載の非晶質状錯体複合体。
[9]前記複合粒子中の該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体および該金属酸化物の含有重量比が1:9〜9:1である、項[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体または項[6]記載の非晶質状錯体複合体。
[9−1]前記複合粒子中の該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体および該金属酸化物の含有重量比が4:1である、項[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体または項[6]記載の非晶質状錯体複合体。
【0013】
(製造方法)
[10]以下の工程を含む、項[1]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体の製造方法;
1)金属塩と、イミダゾールまたはその誘導体とを水中で混合して反応させる;
2)反応混合物を噴霧乾燥して、項[4]記載の非晶質状錯体複合体を得る;
3)前記で得られた非晶質状錯体複合体を有機溶媒で処理する、
該製造方法。
[11]項[10]における工程1)における金属塩の代わりに金属酸化物を用いて、工程2)において項[6]記載の非晶質状錯体複合体を得る、ことを含む、項[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体の製造方法。
[12]該金属塩または金属酸化物とイミダゾールまたはその誘導体とをモル比が1:2の割合で反応させる、項[10]または[11]記載の製造方法。
[13]工程3)における有機溶媒が、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、または非プロトン性溶媒から選ばれる、項[10]または[11]記載の製造方法。
[14]連続フロー式である、項[10]または[11]記載の製造方法。
【0014】
(用途)
[15]項[1]または[2]記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体を含有する、吸着剤。
[15−1]気体、染料、または有機溶媒に対する、[15]記載の吸着剤。
[16]ガス貯蔵、ガス分離、ガスセンサーデバイス、または不均一反応触媒のための、項[1]または[2]のいずれか記載の中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体の使用。
【0015】
(プロダクト・バイ・プロセスクレーム)
[17−1]
以下の工程:
1)金属塩と、イミダゾールまたはその誘導体とを混合して反応させる;
2)反応混合物を噴霧乾燥して、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる非晶質状錯体複合体(ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)
を得る;および、
3)前記で得られた非晶質状錯体複合体を有機溶媒で処理する、
ことによって得られる、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる、中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体(ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)。
[17−2]
以下の工程:
1)金属酸化物と、イミダゾールまたはその誘導体とを混合して反応させる;
2)反応混合物を噴霧乾燥して、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体および金属酸化物を含む複合粒子を含んでなる非晶質状錯体複合体(ここで、
該金属酸化物が該複合粒子の中心部にあり、そして該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体が該複合粒子の外殻部にあり、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は適宜置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)を得る;および、
3)前記で得られた非晶質状錯体複合体を有機溶媒で処理する、
ことによって得られる、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体および金属酸化物を含む複合粒子を含んでなる、中空状の多結晶型の多孔性錯体複合体(ここで、
該金属酸化物が該複合粒子の外側表面部にあり、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)。
[18−1]
以下の工程:
1)金属塩と、イミダゾールまたはその誘導体とを混合して反応させる;および、
2)反応混合物を噴霧乾燥する、
によって得られる、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体を含んでなる非晶質状錯体複合体(ここで、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)。
[18−2]
以下の工程:
1)金属酸化物と、イミダゾールまたはその誘導体とを混合して反応させる;および、
2)反応混合物を噴霧乾燥する、
によって得られる、ゼオライト様イミダゾレート構造体の錯体および金属酸化物を含む複合粒子を含んでなる非晶質状錯体複合体(ここで、
該金属酸化物が該複合粒子の中心部にあり、そして該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体が該複合粒子の外殻部にあり、
該ゼオライト様イミダゾレート構造体錯体中の金属が亜鉛およびコバルトからなる群から選ばれる金属であり、そして、
該イミダゾレート配位子は適宜置換基を有していてもよいイミダゾールまたはその誘導体由来のイミダゾレート配位子であって、ここで、該置換基は、C
1〜6アルキル基、ハロゲン基及びニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基であるか、またはイミダゾレート配位子上の4および5位の隣接する置換基が一緒になって、置換基を有していてもよい縮合環式の5もしくは6員の芳香族炭素環もしくは芳香族ヘテロ環を形成していてもよい)。