(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材と支持部材との間に設けられて前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材に突部が設けられて、前記コイルを構成する導線が前記突部に巻き付けられて導線巻き部が形成され、
前記板ばねは、前記突部の基部側に向く内面と、前記突部の先部側に向く外面と、前記内面と前記外面とを連通する連通部と、前記導線巻き部に隣り合う接合縁部と、を有しており、
前記導線巻き部は、前記板ばねの前記内面から前記突部の基部側に位置している部分の高さ寸法が、前記外面から前記突部の先部側に位置している部分の高さ寸法よりも大きく、
前記接合縁部が前記導線巻き部に対向した状態で、半田が、前記連通部を介して前記内面と前記外面に設けられて、少なくとも前記内面と前記導線巻き部とが前記半田で接合されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材と支持部材との間に設けられて前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置の製造方法において、
前記コイルを構成する導線を、前記移動部材に設けられた突部に巻き付けて導線巻き部を形成し、
前記板ばねに、前記突部の基部側に向く内面と、前記突部の先部側に向く外面と、前記板ばねを貫通して前記内面と前記外面とを連通する穴から成る連通部と、接合縁部と、を形成して、前記接合縁部を前記導線巻き部に対向させ、
前記板ばねの前記外面で半田を溶融させて、前記半田を、前記外面から前記連通部を経て前記内面に至らせ、前記内面と前記導線巻き部とを前記半田で接合することを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたレンズ駆動装置では、板ばねが、突出部の基部側に向く内面と、突出部の先部側に向く外面を有しており、半田付け部において、板ばねの外面で半田が供給されて半田付けが行われている。
【0006】
そのため、突出部に巻かれたコイルの端部と板ばねとを確実に半田付けてして導通させるためには、コイルの端部が、板ばねの外面から離れる高い位置まで存在するように、コイルの端部を突出部に多く巻き付けることが必要になる。その結果、板ばねの外面から突出部が突出する高さ寸法が大きくなってしまい、レンズ駆動部材の光軸方向の厚さ寸法を薄型化するのを阻害することになる。
【0007】
さらに、半田が主に板ばねの外面にのみ設けられていると、コイルの端部と板ばねとの接合に寄与する半田の量を多くすることができず、コイルの端部と板ばねとの接合強度を十分に確保することが難しくなる。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、移動部材に設けられた突部の、板ばねの外面からの突出寸法を必要以上に大きくすることなく、コイルと板ばねとを確実に接合することができるレンズ駆動装置、前記レンズ駆動装置を使用したカメラモジュールおよびレンズ駆動装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材と支持部材との間に設けられて前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材に突部が設けられて、前記コイルを構成する導線が前記突部に巻き付けられて導線巻き部が形成され、
前記板ばねは、前記突部の基部側に向く内面と、前記突部の先部側に向く外面と
、前記内面と前記外面とを連通する連通部と、前記導線巻き部に隣り合う接合縁部
と、を有しており、
前記導線巻き部は、前記板ばねの前記内面から前記突部の基部側に位置している部分の高さ寸法が、前記外面から前記突部の先部側に位置している部分の高さ寸法よりも大きく、
前記接合縁部が前記導線巻き部に対向した状態で、
半田が、前記連通部を介して前記内面と前記外面に設けられて、少なくとも前記内面と前記導線巻き部とが
前記半田で接合されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のレンズ駆動装置は、前記板ばねの前記内面と前記外面の双方と、前記導線巻き部とが半田で接合されており、前記板ばねの前記内面に付着している前記半田の量が、前記外面に付着している前記半田の量よりも多いものとすることができる。
【0013】
また、本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材と支持部材との間に設けられて前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材に突部が設けられて、前記コイルを構成する導線が前記突部に巻き付けられて導線巻き部が形成され、
前記板ばねは、前記突部の基部側に向く内面と、前記突部の先部側に向く外面と、前記板ばねを貫通
して前記内面と前記外面とを連通する穴
から成る連通部と、前記導線巻き部に隣り合う接合縁部と、を有しており、
前記接合縁部が前記導線巻き部に対向した状態で、半田が、前記連通部を介して前記内面と前記外面に設けられて、少なくとも前記内面と前記導線巻き部とが前記半田で接合されていることを特徴とするものである。
【0014】
この場合に、前記板ばねの前記接合縁部と前記穴との間に、連結部が形成されており、前記穴および前記連結部の内面および外面にかけて、前記半田が設けられているものとすることができる。
【0015】
次に、本発明のカメラモジュールは、前記いずれかのレンズ駆動装置と、前記レンズ駆動装置の前記移動部材に保持されたレンズ体と、前記レンズ体に対向する撮像素子と、を有することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材と支持部材との間に設けられて前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置の製造方法において、
前記コイルを構成する導線を、前記移動部材に設けられた突部に巻き付けて導線巻き部を形成し、
前記板ばねに、前記突部の基部側に向く内面と、前記突部の先部側に向く外面と
、前記板ばねを貫通して前記内面と前記外面とを連通する
穴から成る連通部と、接合縁部
と、を
形成して、前記接合縁部を前記導線巻き部に対向させ、
前記板ばねの前記外面で半田を溶融させて、前記半田を、前記外面から前記連通部を経て前記内面に至らせ、前記内面と前記導線巻き部とを前記半田で接合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、板ばねの突部の基部側に向く内面と、突部に形成された導線巻き部とが半田付けされているので、板ばねの外面を基準とした突部の突出寸法を短くできるようになる。その結果、移動部材を薄型化でき、レンズ駆動装置全体の薄型化が可能になる。
【0019】
また、板ばねに連通部を形成することで、板ばねの内面と外面の双方に設けられた半田によって、導線巻き部と板ばねとを接合することができるので、板ばねと導線巻き部との接合強度を高め、導通性も高められるようになる。その結果、突部の導線巻き部での導線のターン数を少なくでき、これによっても突部の高さ寸法を低くして、移動部材の薄型化に寄与できるようになる。
【0020】
本発明のレンズ駆動装置の製造方法では、板ばねに連通部を形成しておくことで、板ばねの外面から半田を供給したときに、溶融した半田が、連通部を通って板ばねの内面に及ぶようになり、板ばねの内面と導線巻き部とを確実に半田付けできるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1と
図2に、本発明の実施の形態のレンズ駆動装置1の全体構造が示されている。
レンズ駆動装置1は移動部材10を有している。移動部材10は筒状に形成されたレンズ保持部材である。移動部材10の中心穴11にレンズ体(レンズバレルまたは鏡筒)が装着される。レンズ体は、1枚のレンズまたは複数枚のレンズを組み合わせたレンズ組と、前記レンズまたは前記レンズ組を保持したレンズホルダとから構成される。中心穴11に雌ねじ部11aが形成され、レンジホルダの外周面に雄ねじ部が形成されており、雄ねじ部が雌ねじ部11aに螺着されることで、レンズ体が移動部材10に装着されて搭載される。なお、レンズ体が移動部材10に接着剤で固定されてもよい。
【0023】
図1と
図2におけるZ1−Z2方向は、上下方向であり、レンズ体の光軸Oと平行な方向(光軸方向)である。レンズ駆動装置1は、携帯電話などの携帯用電子機器に搭載される。レンズ駆動装置1よりもZ2側に、CCDなどの撮像素子が配置される。レンズ駆動装置1とレンズ体および撮像素子でカメラモジュールが構成される。カメラモジュールでは、移動部材10とこれに搭載されたレンズ体がZ1−Z2方向へ移動することによって、撮像素子に結像する像の自動焦点合わせが行われる。
【0024】
図1と
図2に示すように、レンズ駆動装置1には、支持基台2とカバー3とが設けられている。支持基台2とカバー3とを組み合わせることにより、内部に収納空間を有するケース(ハウジング)が構成される。支持基台2は、非磁性材料である合成樹脂材料で形成されている。カバー3は磁性を有するステンレス鋼板などで形成されて磁性ヨークとして機能している。支持基台2に光透過穴2bが開口しており、カバー3の天井部3aにも光透過穴3bが開口している。支持基台2とカバー3は平面形状が四角形である。この実施の形態では、支持基台2とカバー3とで支持部材(固定部材)が構成されている。
【0025】
図2に示すように、支持基台(支持部材)2の4箇所の角部の上に、ばね固定部2aが形成されている。支持基台2の上に、互いに分離された一対の下部板ばね20が取り付けられている。それぞれの下部板ばね20は、固定側支持片21と、その内側の可動側支持片22、および固定側支持片21と可動側支持片22とを繋ぐ弾性腕部23が、板ばね金属材料で一体に形成されている。
【0026】
それぞれの下部板ばね20の固定側支持片21には、Y1側とY2側の2箇所に取付け穴21aが形成されており、それぞれの取付け穴21aが、支持基台2のばね固定部2aに形成された突起に嵌合し、前記突起が熱かしめされることで固定されている。それぞれの下部板ばね20の可動側支持片22には、3か所に取付け穴22aが形成されている。
【0027】
図3に、移動部材10が下面10aを上向きとした姿勢で示されている。
図3は、
図2に示す移動部材10が、X1−X2軸を中心として180度回転させた姿勢で示されている。
図3では、移動部材10に、下部板ばね20と後述するコイルCとが取り付けられた状態が示されている。移動部材10の下面10aには合計6か所にばね固定部12となる突起が設けられている。下部板ばね20の可動側支持片22に形成されたそれぞれの取付け穴22aは、移動部材10の下面10aに設けられたばね固定部12の突起に嵌合し、前記突起を熱かしめすることで固定されている。
【0028】
図2に示すように、レンズ駆動装置1には4個の磁石Mが設けられている。それぞれの磁石Mは、ヨークとして機能するカバー3の内部における4か所の角部の近傍に位置し、カバー3の内面に接着剤などで固定されている。
【0029】
図2に示すように、前記移動部材10の上方(Z1方向)に上部板ばね30が設けられている。上部板ばね30は、四角形の枠形状の固定側支持片31と、その内側の可動側支持片32、および固定側支持片31と可動側支持片32とを繋ぐ弾性腕部33とが、板ばね金属材料で一体に形成されている。固定側支持片31の4箇所の角部が取付け部31aとなっており、それぞれの取付け部31aが、磁石MのZ1側の上面に接着剤などで固定されている。また、それぞれの取付け部31aは、カバー3の天井部3aの内面と磁石Mの上面との間に挟持されている。
図2に示すように、移動部材10のZ1側に向く上面10bでは、X1側とX2側にばね固定部13が設けられている。上部板ばね30の可動側支持片32は、ばね固定部13に、かしめ構造や接着構造により固定されている。
【0030】
移動部材10は、磁石Mの下方に位置して支持基台2のばね固定部2aに固定された下部板ばね20と、磁石Mの上に固定された上部板ばね30とで挟まれて、4箇所の磁石Mで囲まれた動作空間内に収められている。下部板ばね20に設けられた弾性腕部23は、細い湾曲形状すなわち蛇行形状に成形されており、上部板ばね30に設けられた弾性腕部33も、細い湾曲形状すなわち蛇行形状に成形されている。移動部材10は、上下の弾性腕部23,33の弾性変形によって、光軸方向であるZ1−Z2方向へ移動自在に支持されている。
【0031】
移動部材10の外周に被覆導線41が巻かれたコイルCが設けられている。支持部材の一部となるカバー3の内面に固定されている前記磁石Mは、移動部材10の周方向に間隔を空けた4箇所において、前記コイルCに離間して外側から対向している。
【0032】
図2に示すように、支持基台2に、3つに分割された金属板が埋設されており、そのうちの2つの金属板のそれぞれの一部が接続端子4bとして支持基台2の側方から下向きに突出している(接続端子4bは
図2に現れている)。支持基台2の4箇所のばね固定部2aのうちのY1側に設けられた2箇所に、前記2つの金属板の一部が露出した露出部4aが形成されている。2つの下部板ばね20のそれぞれが露出部4aに個別に密着して溶接などで接合されており、前記2つの接続端子4bが、2つの下部板ばね20に、1対1で導通させられている。
【0033】
また、3つに分割された金属板のうちの前記露出部4aが形成されていない他の1つの金属板は、平面視でU字形状に形成されており、
図1と
図2に示すように、その一部が支持基台2の角部に接地用端子4cとして外方に突出している。この接地用端子4cがカバー3に接合されて、カバー3が接地電位に設定される。
【0034】
図3に示すように、移動部材10のZ2側に向く下面10aでは、2箇所に半田接合部40が設けられている。それぞれの半田接合部40において、2つに分割されている一方の下部板ばね20とコイルCを形成している被覆導線41の一方の端末部とが半田付けされて接合され、他方の下部板ばね20と被覆導線41の他方の端末部とが半田付けされて接合されている。なお、被覆導線41の一方の端末部と他方の端末部は、絶縁被覆が除去されて半田付けされている。
【0035】
これにより、支持基台2に2つに分割されて埋設されている接続端子4bが、それぞれの下部板ばね20を介して、被覆導線41の一方の端末部と他方の端末部に接続されて導通している。これにより、2つの接続端子4bからコイルCに通電可能となっている。この通電路でコイルCに駆動電流が与えられると、コイルCに流れる電流と、磁石Mから発生する磁界とによる電磁力で、移動部材10がZ1−Z2方向へ駆動される。この移動部材10の動作によって、レンズ体で撮像素子に結像される像の焦点が合わせられる。なお、4つの磁石Mのそれぞれは、コイルCに対向する対向内面と、カバー3の内面に向けられる外面とが、異なる磁極となるように着磁されている。
【0036】
図4は、
図3の一部を拡大した部分拡大斜視図であり、第1の実施の形態の半田接合部として、
図3に示すX1側の半田接合部40が拡大されて示されている。この半田接合部40では、X1側の下部板ばね20と、コイルCから延びる被覆導線41の一方の端末部41aとが半田付けされている。
図5は、
図4に示す半田接合部40の分解斜視図であり、
図6は
図4をVI−VI線で切断した断面図である。
図4と
図6には半田45が図示されているが、
図5では半田45の図示が省略されている。なお、X2側に位置する他方の下部板ばね20と被覆導線41の他方の端末部41aとを半田付けしている半田接合部40は、
図4ないし
図6に示すものとY1−Y2軸に対して線対称であるが、その構造は同じであるため、説明を省略する。
【0037】
図4ないし
図6に示されるように、また
図3にも示されているように、移動部材10の下面10aには下方(Z2方向:
図4ないし
図6では図示上方)に突出する突部15が一体に形成されている。突部15は角柱形状である。
図6に示すように、突部15は、移動部材10の下面10aとの境界部に基部15aを有しZ2側に先部15bを有している。すなわち、突部15は、移動部材10の光軸方向における一端部から光軸方向に沿って突出するものである。
【0038】
図5と
図6に示すように、コイルCを巻き形成している被覆導線41は、移動部材10の下面10aに引き出されている。被覆導線41は一方の端末部41aにおいて絶縁被覆が除去されている。すなわち、被覆導線41の端部のうちの絶縁被覆が除去されて導線(銅線)が露出している部分が端末部41aである。
図5と
図6では、被覆導線41の境界部Pが示されている。境界部Pから線端41bまでの間が、絶縁被覆が除去された端末部41aである。
【0039】
図5と
図6に示すように、被覆導線41の端末部41aが、突部15の周囲に螺旋状に巻かれて導線巻き部42となっている。
図6に示すように、突部15の周囲には、基部15aと先部15bとの間に段差部15cが形成されている。コイルCから延びる被覆導線41の端末部41aは、段差部15cと当たる位置を巻き始点として、突部15に対して先部15b方向に向けて順に巻き付けられて、導線巻き部42が形成されている。
図6の断面図に示すように、導線巻き部42での端末部41aの巻き数は、2ターンから3ターンである。
【0040】
図5と
図6に示すように、下部板ばね20は、突部15の基部15aに向く面、すなわち移動部材10の下面10aに対面するZ1側に向く面が内面20aであり、内面20aと逆側で、突部15の先部15bに向くZ2側に向く面が外面20bである。
【0041】
図5と
図6に示すように、下部板ばね20には、可動側支持片22のY方向に延びている中央部分のうちのY2側の端部に半田付け部25が設けられている。可動側支持片22には、区分凹部26が形成されており、下部板ばね20の接合縁部27と区分凹部26とで挟まれた領域が半田付け部25である。区分凹部26は、半田付け部25に付着した溶融半田が可動側支持片22を伝わってY1方向へ流れ出るのを防止するために形成されている。またレーザなどで、半田付け部25を加熱して半田を溶融させる際に、熱が可動側支持片22を伝わってY1方向へ伝搬するのを防止する機能も有している。
【0042】
接合縁部27は、下部板ばね20が移動部材10に固定された状態において導線巻き部42に隣り合って位置する可動側支持片22の縁部である。
【0043】
図5に示すように、半田付け部25には、下部板ばね20の内面20aと外面20bとを連通させる連通部28が形成されている。連通部28は、下部板ばね20を貫通する円形の穴である。
【0044】
可動側支持片22に形成された接合縁部27は、X1−X2方向へ直線状に延びている。下部板ばね20の可動側支持片22が、移動部材10の下面10aに固定されると、
図6に示すように、接合縁部27と、導線巻き部42を構成している端末部41aとが狭き隙間δを介してY1−Y2方向に対向する。あるいは、可動側支持片22が移動部材10の下面10aに固定された状態で、接合縁部27が導線巻き部42を構成する端末部41aに接触した状態で対向してもよい。すなわち、導線巻き部42に隣り合って配置される接合縁部27は、導線巻き部42とわずかな隙間を有した状態、あるいは導線巻き部42と接触した状態で、導線巻き部42と対向している。なお、接合縁部27は、可動側支持片22の外形の一部を構成する部分である。
【0045】
レンズ駆動装置1の組立方法(製造方法)としては、移動部材10の外周に被覆導線41を巻いてコイルCを形成した後に、被覆導線41を移動部材10の下面10aに引き出して、端末部41aを突部15の周囲に巻き付けて導線巻き部42を形成する。その後、下部板ばね20の可動側支持片22を、移動部材10の下面10aのばね固定部12に固定する。このとき、下部板ばね20の接合縁部27が、導線巻き部42を構成する端末部41aに対してわずかな隙間を空けた状態、または接触した状態で対向する。なお、ここで言う「対向」とは、2つの部材(部位)、すなわち対向縁部27と導線巻き部42(端末部41a)が接触した状態で対向する形態も含むものとなる。
【0046】
可動側支持片22に形成された半田付け部25において、下部板ばね20のZ2側に向く外面20bに溶融前の半田が設置される。溶融前の半田は、クリーム半田(ペースト半田)であり、下部板ばね20の可動側支持片22が移動部材10の下面10aに固定された後の工程で、クリーム半田が半田付け部25に塗布される。このとき、クリーム半田の一部が導線巻き部42にも接するように塗布されることが好ましい。なお、クリーム半田の半田付け部25への塗布は、可動側支持片22が移動部材10の下面10aに固定される前の工程で行われてもよい。あるいは、クリーム半田を使用する代わりに、ボール形状などの溶融前の半田の塊が、連通部28の上(Z2側)に設置されてもよい。
【0047】
次に、下部板ばね20の外面20b側、すなわちZ2側から、半田付け部25にレーザを照射し、半田付け部25を構成する金属板ばねをレーザのエネルギーで発熱させ、半田を溶融させる。このとき、レーザをクリーム半田に直接に照射せず、可動側支持片22の半田付け部25にのみ照射することが好ましい。溶融した半田は、半田付け部25において、下部板ばね20のZ2側の外面20bに付着したまま広がるため、クリーム半田が導電巻き部42に接していない場合であっても、導線巻き部42を形成している端末部41aに十分に付着させることができる。同時に、溶融した半田は、連通部28である穴をZ1方向へ通過し、半田付け部25において、Z1側の内面20aに付着しながら、導線巻き部42を構成している端末部41aに付着する。
【0048】
なお、
図6に示すように、半田を設置する前の状態で、被覆が除去された被覆導線41の端末部41aの一部が、連通部28に対向している。そのため、端末部41aのこの部分が、下部板ばね20の内面20aに達した半田に埋め込まれるようになる。
【0049】
図4と
図6に、冷却されて硬化された半田(半田フィレット)45が示されている。半田(半田フィレット)45は、連通部28を介して、下部板ばね20の内面20aと外面20bとに設けられる。そして、内面20aと外面20bの双方と、導線巻き部42(端末部41a)とが半田45によって接合される。
【0050】
図6には、下部板ばね20の可動側支持片22を板厚方向で二分した中心面Hoが示されている。半田付け部25へのレーザ照射は、
図6に示すように、Z1方向を重力方向に向けた状態で行われる。そのため、溶融した半田が、内面20a側へ多く回り込むことになり、硬化後の半田45は、中心面HoからZ1側に存在する量が、中心面HoよりもZ2側に存在する量よりも多くなる。すなわち、下部板ばね20の内面20aに付着している半田45の量が、外面20bに付着している半田45の量よりも多くなる。
【0051】
そのため、突部15の周囲の導線巻き部42では、中心面HoからZ1方向の高さ寸法W1を、中心面HoからZ2方向の高さ寸法W2よりも大きくしておくことが好ましい。すなわち、導線巻き部42は、下部板ばね20の内面20aから突部15の基部15a側に位置している部分の高さ寸法が、外面20bから突部15の先部15b側に位置している部分の高さ寸法よりも大きいことが好ましい。
【0052】
この半田接合部40では、中心面HoよりもZ1側で半田45の量が多く、さらに、導線巻き部42を形成する端末部41aが、中心面HoよりもZ1側に多く存在しているため、下部板ばね20の内面20aと導線巻き部42とを半田45によって確実に接続することが可能になる。
【0053】
また、
図6に示すように、コイルCから延びてくる被覆導線41の端末部41aの一部が、半田付け部25に形成された連通部28の真下側(Z1側であって移動部材10の下面10a側)を通過している。その結果、連通部28を通過してZ1側へ移動した溶融半田が、連通部28aの真下の端末部41aに接触し、
図6に示すように、端末部41aと硬化後の半田45との間に接触部46が形成される。接触部46を設けることで、半田45と端末部41aとの接触箇所が多くなり、下部板ばね20と被覆導線41との導通性を高めることが可能になる。
【0054】
上記のように、下部板ばね20の内面20a側に多くの半田45が存在し、この半田45と導線巻き部42との接触面積が多くなるため、導線巻き部42の中心面HoよりもZ2側の高さW2を低くしても、半田45と端末部41aとの接触状態を良好にすることができる。したがって、突部15の下部板ばね20の外面20bからの突出寸法hを短くでき、移動部材10のZ1−Z2の寸法を小さくでき、レンズ駆動装置1の全体を薄型化できるようになる。
【0055】
また、
図6に示すように、半田45が、下部板ばね20の内面20aと外面20bの双方に接触し、且つ導線巻き部42に接触しているため、半田付け部25の内外両面と導線巻き部42とを半田45で強固に固定できるようになり、下部板ばね20と端末部41aとの導通の信頼性を高めることが可能になる。半田付け部25において、下部板ばね20の内面20aならびに外面20bの双方と半田45との接触面積を広く確保できるようにするためには、連通部28の開口面積が、半田付け部25の開口面積の50%以下であることが好ましい。
【0056】
この半田接合部40では、半田付け部25の内外両面と導線巻き部42とが半田45で固定されるため、導線巻き部42を形成する端末部41aのターン数を少なくできる。これによっても、突部15の高さ寸法を低くすることが可能である。
【0057】
図5に示すように、半田付け部25では、接合縁部27と、連通部28の縁部との間に下部板ばね20の一部である連結部25aが残されている。
図6に示すように、半田45を内面20aと外面20bおよび導線巻き部42に確実に付着させるためには、連結部25aの最小寸法Waが、下部板ばね20を構成する板ばね材料の板厚の3倍以下であることが好ましい。ただし、下部板ばね20のプレス工程やエッチング工程での加工性を考慮すると、最小寸法Waを、下部板ばね20の板厚の1倍以上で2倍以下に設定することがさらに好ましい。
【0058】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
以下では、前記第1の実施の形態と同じ個所に同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0059】
図7に、本発明の第2の実施の形態の半田接合部40Aが示されている。この半田接合部40Aは、
図5に示した連通部28である円形の穴の中心が、接合縁部27寄りに形成され、接合縁部27に一部が開口する凹部が連通部28aとして形成されている。
【0060】
半田接合部40Aでは、接合縁部27の全長L0に対する凹部である連通部28aの開口部の幅寸法L1が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。この範囲に設定すると、導線巻き部42に対向する接合縁部27を長く確保できるようになり、半田付け部25と導線巻き部42との接合強度を高く維持できるようになる。
【0061】
図8に示す第3の実施の形態の半田接合部40Bでは、半田付け部25に複数の(2つの)穴が形成されて連通部28bとなっている。
図9に示す第4の実施の形態の半田接合部40Cでは、半田付け部25にX1側に開口する凹部が形成されて連通部28cとなっている。
図8と
図9において、連通部28bと連通部28cのそれぞれの面積は、半田付け部25の面積の50%以下とすることが好ましい。
【0062】
図10に示す第5の実施の形態の半田接合部40Dでは、半田付け部25に、それぞれが接合縁部27に開口する複数の凹部が形成されて、連通部28dが形成されている。この場合も、接合縁部27での連通部28dの開口寸法L2の合計L2×N(
図10ではN=3)が、接合縁部27の全長L0の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
なお、前述した各実施の形態においては、レンズ保持部材である移動部材10を光軸方向のみに駆動して自動焦点合わせを行うレンズ駆動装置について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、自動焦点合わせを行う可動ユニットを光軸方向と交差方向へ駆動していわゆる手振れ補正を行うことが可能なレンズ駆動装置に本発明を適用することができる。この場合には、一般的に、上部板ばねが2つに分割されており、それぞれの上部板ばねが導線巻き部と半田で接合されたものとなる。