(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示された地中熱利用システムでは、地中熱交換器の帯水層を通る部分と、帯水層でない地層を通る部分とが、共に直管状の構成とされている。このため、帯水層を通る部分と、帯水層でない地層を通る部分における熱媒体の流通速度が等しく、帯水層を通る部分で集中的に熱交換することができない。
【0005】
また、上記特許文献2に開示された地中熱交換器では、地中熱交換器の長手方向の全長に亘って熱媒管が螺旋状に配置されており、該地中熱交換器を、帯水層を有する地盤に設置した場合、地中熱交換器の帯水層を通る部分と、帯水層でない地層を通る部分とが同様の構成となる。このため、帯水層を通る部分と、帯水層でない地層を通る部分における熱媒体の流通速度が等しく、帯水層を通る部分で熱交換された熱媒体が、帯水層でない地層を通る部分で熱ロスが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、帯水層を通る部分で効率的に熱交換し、帯水層でない地層を通る部分で熱ロスを低減することができる地中熱交換機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る地中熱交換機構は、帯水層を有する地盤に設けられた縦孔の内部へ配置され、地上側から地中側へ送られた熱媒体を地中側から地上側へ還流させる循環管と、前記循環管と前記縦孔の間に充填され
て隙間を形成し、前記隙間に前記帯水層の地下水を浸透させる珪砂と、前記循環管の前記帯水層を通る部分に形成された熱交換部と、前記循環管の前記帯水層でない地層を通る部分に形成され、前記熱交換部よりも熱交換効率が小さい熱交換抑制部と、を有する。
【0008】
請求項1に係る地中熱交換機構によれば、熱媒体は循環管が帯水層を通る部分で集中的に熱交換し、例えば夏季において熱媒体は帯水層で集中的に冷却される。したがって、熱交換の効率を高めることができる。また、循環管が帯水層でない地層を通る部分では、帯水層を通る部分と比較して、熱交換が抑制される。したがって、例えば夏季において、帯水層を通る部分で冷却された熱媒体が暖められにくい。
【0009】
請求項2に係る地中熱交換機構は、請求項1の地中熱交換機構において、前記熱交換部は
前記循環管の往路に形成されたスパイラル管で、前記熱交換抑制部は
前記往路に形成され前記熱交換部よりも熱交換効率が小さくなるように断熱された直管で構成されている。
【0010】
請求項2に係る地中熱交換機構によれば、循環管が帯水層を通る部分で、熱媒体の縦孔軸方向への流速が遅くなる。また、循環管が帯水層でない地層を通る部分で、熱媒体の縦孔軸方向への流速が早くなる。このため、熱媒体が帯水層と熱交換できる時間が長くなり、熱媒体が帯水層でない地層で熱ロスする時間が短くなる。したがって、熱交換の効率を高めて、熱ロスを低減することができる。
【0011】
請求項3に係る地中熱交換機構は、請求項1の地中熱交換機構において、前記循環管は二重管とされると共に、
外管は、地上側から地中側へ熱媒体を送る往路管とされ、前記外管より断面積が小さい内管は、地中側から地上側へ熱媒体を還流させる復路管とされ、前記熱交換部は、前記外管において前記帯水層を通る部分に形成され、前記熱交換抑制部は、前記外管において前記帯水層でない地層を通る部分に形成され、前記熱交換部よりも熱交換効率が小さくなるように断熱されている。
【0012】
請求項3に係る地中熱交換機構によれば、熱媒体は、循環管の外管が帯水層を通る部分では帯水層と熱交換を行い、外管に覆われる内管部分では地盤との熱交換が抑制される。したがって、熱ロスを低減する効果を高めることができる。
【0013】
請求項4に係る地中熱交換機構は、請求項1〜請求項2の何れか1項の地中熱交換機構において、前記縦孔には、前記帯水層でない地層を通る部分に止水材が設けられている。
【0014】
請求項4に係る地中熱交換機構によれば、止水材によって、熱媒体と熱交換した帯水層の地下水が、縦孔の内部を通って、異なる帯水層へ流れ込むことが抑制される。これにより、例えば夏季において熱媒体と熱交換して暖められた帯水層の地下水が、縦孔の内部を通って流れる際に、下部の帯水層に流れることを抑制される。これにより、熱媒体と下部の帯水層との熱交換の効率を高くすることができる。また、異なる帯水層の地下水が混ざることによる環境負荷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の地中熱交換機構は、帯水層を通る部分で効率的に熱交換し、帯水層でない地層を通る部分で熱ロスを低減することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、
図1、
図2を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る地中熱交換機構の一例について説明する。
【0018】
(熱交換機構)
まず、本実施形態に係る熱交換機構10の全体構造について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る熱交換機構10は、地中熱交換部20、ヒートポンプ40、及び熱利用部60を含んで構成される。
【0019】
地中熱交換部20は、帯水層82と難透水層84とが層状に重なる地盤80に設けられた縦孔22と、一方の端部が縦孔22の孔底に配置され、他方の端部がヒートポンプ40を構成する凝縮器42の内部に配置される循環管24と、循環管24の内部に熱媒体26を還流させる動力源としてのポンプ28と、を備えている。
【0020】
ここで、帯水層とは、砂や礫等を含んで形成された透水性の地層が地下水を含んだ状態の地層のことを指し、難透水層とは、粘性土や固結岩盤等によって形成され、帯水層に比べて透水性の劣る地層のことを指す。帯水層の地下水は滞留していてもよいが、流れがあるほうがより好ましい。
【0021】
なお、本実施形態において熱媒体26は水を用いているが、本発明の実施形態はこれに限られず、例えば寒冷地などでは不凍液などを用いてもよい。
【0022】
ヒートポンプ40は、凝縮器42、膨張弁44、蒸発器46、圧縮機48から構成された循環流路内部を、熱媒体が液化及び気化を繰り返しながら循環する熱交換器であり、例えば空調設備の室外機に組み込まれている。
【0023】
熱利用部60は、例えば空調設備の室内機とされ、熱利用部60とヒートポンプ40の蒸発器46との間を循環管64を通じて熱媒体66が循環している。
【0024】
なお、本実施形態においては、熱利用部60の循環管64と地中熱交換部20の循環管24とを別に設け、ヒートポンプ40を利用して熱交換しているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えばヒートポンプ40、循環管64を用いずに、循環管24を直接熱利用部まで配設して熱交換させるものとしてもよい。
【0025】
(地中熱交換部)
次に、
図2を参照して、地中熱交換部20の構成について詳細に説明する。
【0026】
上述したように、地中熱交換部20は、帯水層82(82A、82B)と難透水層84(84A、84B、84C)とが層状に重なる地盤80に設けられており、縦孔22は、2つの帯水層82Aと帯水層82Bを貫通している。なお、帯水層82Aは地上側の層であり、帯水層82Bは地中側の層である。
【0027】
縦孔22の内部に配置された循環管24は樹脂製とされ、熱媒体26が地上側から地中側へ流れる往路部において、螺旋状に形成されたスパイラル管24Aと、直線状に形成され、断熱材30で被覆された往路直管24Bと、を備えている。スパイラル管24Aは帯水層82A、82Bを通る部分に形成され、往路直管24Bは難透水層84A、84B、84Cを通る部分に形成されている。本実施形態においては、スパイラル管24Aと往路直管24Bとは別部材とされ、図示しない継手部材によって接合されているが、本発明の実施形態はこれに限られず、例えばスパイラル管24Aと往路直管24Bとは一体的に形成されていてもよい。なお、スパイラル管24Aは本発明の熱交換部の一例であり、往路直管24Bは、本発明の熱交換抑制部の一例である。また、
図2において符号の無い矢印は、熱媒体26が流れる方向を示している(
図3、
図5(A)、(B)についても同様)。
【0028】
また循環管24は、熱媒体26が地中側から地上側へ流れる復路部においては、断熱材30によって被覆された復路直管24Cとされている。復路直管24Cは、縦孔22の底部では、断熱材30で被覆されたU字管24Dによって往路直管24Bと接合され、帯水層82A、82Bを通る部分ではスパイラル管24Aの螺旋の内部を通るように配置されている。
【0029】
縦孔22の内壁と循環管24との間には、充填材として珪砂32が充填されている。すなわち、地中熱交換部20は、砂杭(サンドパイル)の内部に循環管24が埋設された構成となっている。これにより、帯水層82A、82Bの地下水は、珪砂32の間の隙間に浸透し、循環管24に直接接触することができる。
【0030】
縦孔22の内部で帯水層82Aと82Bに挟まれた難透水層84Bの部分には、縦孔22を塞ぐ止水材としてのセメント層34が設けられており、帯水層82Aの地下水が縦孔22を通って帯水層82Bに流れ込むことを抑制している。なお、本実施形態においては止水材としてセメント層34を用いているが本発明の実施形態はこれに限られず、例えば粘性土や不透水シートなどを用いてもよい。あるいは、充填材としてセメントを用いて、止水材としての機能を兼用させてもよい。この場合、帯水層82A、82Bの地下水は、循環管24接触することができないが、硬化したセメントの熱伝導により熱交換することができる。
【0031】
[作用及び効果]
次に、第1実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0032】
本実施形態においては、帯水層82を通る部分の循環管24が、スパイラル管24Aとされている。このため、熱媒体26は縦孔22の軸方向(
図2の矢印Dで示した方向)を軸として巻回する螺旋状に流れるため、該軸方向への流速が、往路直管24B及び復路直管24Cと比較して遅くなる。したがって、熱媒体26は帯水層82A、82Bを流れる地下水と熱交換する時間が長くなり、熱交換の効率が高められる。
【0033】
また、往路直管24B及び復路直管24Cはスパイラル管24Aと比較して縦孔22の軸方向への流速が早く、また断熱材で被覆されているため、地盤80との熱交換や往路直管24Bと復路直管24Cの間の熱交換、すなわち熱ロスが低減される。
【0034】
具体的には、外気温と比較して帯水層82を流れる地下水の温度が低い季節や地域では、熱媒体26は帯水層82をゆっくり通過することで集中的に冷され、一旦冷された熱媒体26は、帯水層82以外の部分を速く通過し、また断熱材で被覆されることで暖められにくい。
【0035】
さらに、外気温と比較して帯水層82を流れる地下水の温度が高い季節や地域では、熱媒体26は帯水層82をゆっくり通過することで集中的に暖められ、一旦暖められた熱媒体26は、帯水層82以外の部分を速く通過し、また断熱材30で被覆されることで冷めにくい。
【0036】
なお、本実施形態においては往路直管24B及び復路直管24Cは断熱材30で被覆されているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば断熱材30で被覆しなくてもよい。断熱材30で被覆しなくても、スパイラル管24Aと比較して縦孔22の軸方向への流速が早いため、熱ロスが低減される。
【0037】
このように、外気温が高い季節や地域では熱媒体26が外気よりも低い温度に効率よく冷され、外気温が低い季節や地域では熱媒体26が外気よりも高い温度に効率よく暖められる。このように冷され、あるいは暖められた熱媒体26をヒートポンプ40との熱交換に用いることで、外気をヒートポンプ40との熱交換に用いる場合と比較して、空調設備のエネルギー負荷を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、止水材としてのセメント層34によって、帯水層82Aの地下水が縦孔22を通って帯水層82Bに流れ込むことが抑制されている。
【0039】
このため、スパイラル管24Aを通る熱媒体26と熱交換した帯水層82Aの地下水、例えば夏季においては暖かい熱媒体26と熱交換して暖められた地下水が、縦孔22を通って帯水層82Bに流れ込み、帯水層82Bの地下水の温度を上げることが抑制される。したがって、縦孔22に止水材を設けない場合と比較して、帯水層82Bと熱媒体26との熱交換の効率が高められている。
【0040】
さらに、異なる帯水層の地下水が混ざり合うと、成分濃度や水圧等が変化して本来の自然環境に影響を与えることが考えられるが、止水材を設けることによりそのような影響を抑制することができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、
図1、
図3を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る地中熱交換機構の一例について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
(熱交換機構)
図1に示すように、本実施形態に係る熱交換機構11は、地中熱交換部90、ヒートポンプ40、及び熱利用部60を含んで構成される。
【0043】
(地中熱交換部)
次に、
図3を参照して、地中熱交換部90の構成について詳細に説明する。地中熱交換部90は、縦孔22と、循環管94と、循環管94の内部に熱媒体26を還流させる動力源としてのポンプ28(
図1参照)と、を備えている。
【0044】
縦孔22の内部に配置された循環管94は、復路部(復路管)が往路部(往路管)の内部に挿入された二重管構造とされている。具体的には、熱媒体26が地上側から地中側へ流れる往路部においては、断熱材30によって被覆されない外管94Aと、断熱材30で被覆された外管94Bと、を備えている。外管94Aと外管94Bとは、同一部材、同一径とされ、外管94Aは帯水層82A、82Bを通る部分に配置され、外管94Bは難透水層84A、84B、84Cを通る部分に配置されている。外管94Bの端部は縦孔22の底部で塞がれており、熱媒体26が外部に漏れない構成とされている。なお、外管94Aは本発明の熱交換部の一例であり、断熱材30で被覆された外管94Bは、本発明の熱交換抑制部の一例である。
【0045】
循環管94は、熱媒体26が地中側から地上側へ流れる復路部においては、断熱材30によって被覆された内管94Cとされている。内管94Cは、外管94A、94Bの内部に挿入されており、内管94Cの底部が開口して、外管94Bから熱媒体26が流入する構成とされている。
【0046】
外管94Aの断面積から内管94Cの断面積を引いた面積、すなわち熱媒体26の往路部流路面積S1は、内管94Cの断面積、すなわち復路部流路面積S2よりも大きく形成されている。なお、内管94Cは、本発明の熱交換抑制部の一例である。
【0047】
[作用及び効果]
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0048】
本実施形態においては、
図3に示すように、内管94Cは断熱材30によって被覆され、さらに外管94A、94Bに覆われるので、内管94Cを通る熱媒体26が、地盤80と熱交換することが抑制される。例えば夏季において、往路部の外管94Aを通過する際に帯水層82A、82Bと熱交換して冷やされた熱媒体26が、復路部の内管94Cを通る際に、難透水層84A、84B、84Cによって暖められることが抑制される。したがって、熱ロスを低減することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、熱媒体26の往路部流路面積S1は、復路部流路面積S2よりも大きく形成されている。このため、熱媒体26が往路部の外管94Aを流れる速度は、復路部の内管94Cを流れる速度よりも遅い。したがって、熱媒体26は帯水層82A、82Bを流れる地下水と熱交換する時間が長くなり、熱交換の効率が高められる。
【0050】
[熱交換効率解析]
次に、第1実施形態の地中熱交換部20、及び第2実施形態の地中熱交換部90の熱交換効率について解析した結果について説明する。
【0051】
図4には、熱交換効率を解析するための解析モデル100が示されている。解析モデル100は、深さ50mの縦孔102を中心とした20m四方、深さが70mの直方体とされ、地表面GLからGL−10mまでが難透水層、GL−10mより低い部分は帯水層とされている。
【0052】
この縦孔102に、第1実施形態の循環管24、第2実施形態の循環管94、
図5(A)に示した第1比較例の循環管104、及び、
図5(B)に示した第2比較例の循環管124をそれぞれ挿入して熱交換杭を構成し、地表面深さと熱媒体温度との相関関係を解析した。
【0053】
なお、解析モデル100において、GL−10mより低い部分が帯水層とされているため、本解析に適用される第1実施形態の循環管24は、GL−10mからGL−50mまでがスパイラル管24Aとされている。
【0054】
なお、第2実施形態の循環管94の内管94Cの管径は、第1実施形態の循環管24の往路直管24B及び復路直管24Cの管径と等しい。また、第1比較例の循環管104は、往路部と復路部が直管とされ、管径は、循環管94の内管94Cの管径と等しい。第2比較例の循環管124は、第1比較例の循環管104が2本併設された構成とされている。なお、循環管24、94、104、124は、いずれも断熱材によって被覆されていない。
【0055】
単位時間当たりの熱媒体還流量、熱媒体の初期温度、帯水層の地下水温度及び難透水層の土壌温度等の諸条件は、循環管24、94、104、124の解析モデル100では等しくされている。
【0056】
図6は、解析結果を示すグラフである。
図6において実線で示されるグラフは循環管24(スパイラル管)が適用された熱交換杭における地表面深さと熱媒体温度との関係を示し、点線で示されるグラフは循環管94(二重管)、一点鎖線で示されるグラフは循環管104(シングル管)、二点鎖線で示されるグラフは循環管124(ダブル管)がそれぞれ適用された熱交換杭における地表面深さと熱媒体温度との相関関係を示している。
【0057】
図6に示される通り、循環管24、94、104、124を適用した熱交換杭における熱媒体の地表面と、孔底(GL−50m)の温度差の絶対値はそれぞれ、約9℃、約5℃、約3.5℃、約2.5℃であった。
【0058】
すなわち、解析モデル100においては、本発明の第1実施形態に用いられた循環管24、本発明の第2実施形態に用いられた循環管94、第2比較例に用いられた循環管124、第1比較例に用いられた循環管104、の順に熱交換効率が高い。換言すると、本発明に係る熱交換杭は、比較例に係る熱交換杭よりも熱交換効率が高い。
【0059】
[熱交換効率試験]
次に、第1実施形態の地中熱交換部20、第2実施形態の地中熱交換部90、及び比較例の熱交換効率試験について説明する。なお、試験は「官庁施設における地中熱利用システム導入ガイドライン(案)」(国土交通省、平成25年10月)に示された方法に準拠して行った。また、試験結果については、同ガイドラインに示されたケルビンの線源理論に基づき、温度の経時データから算定した有効熱伝導率により評価した。
【0060】
まず、試験方法について説明する。
図7に示すように、試験体として、比較例に相当する試験体A(一重直管)、第2実施形態の地中熱交換部90に相当する試験体B(二重直管)、第1実施形態の地中熱交換部20に相当する試験体C(一重らせん管)を、試験地盤Dに埋設したものを採用した。試験地盤Dには、難透水層D
sc1層、D
c5層が存在し、難透水層D
sc1層、D
c5層以外の部分が、細砂からなる3つの帯水層に分割されている。
【0061】
なお、
図7において試験体A、B、Cの各概要図に示された黒点は熱電対の概略位置を示しており、N値(標準貫入試験値)を示す柱状図に示された黒点は、対応する深度で測定したN値を示している。また、N値を示す柱状図の隣に示された下向き三角の記号は各帯水層の地下水位を示している。
【0062】
図8に示すように、試験体Aの一重直管は、25AのPE(ポリエチレン)管を採用した。
【0063】
試験体Bの二重直管は、外管と内管の間を熱媒の往路管、内管を熱媒の復路管としたものであり、一重管よりも往路の通水断面積、地盤との接触面積が大きく、熱媒を循環する際に、一重管よりも地盤との熱交換時間が長くかつ熱交換面積が大きい。また、復路管は往路間への熱ロスを低減するため、通水断面積が小さく熱媒の熱交換時間を短縮するために20AのPE管とした。
【0064】
試験体Cの一重らせん管は、往路の帯水層部分のみ25Aのサクションホースを用いたらせん形状とし、帯水層部分以外の部分における直管の7.3倍の長さとした。往路のシルト層部分は試験体Aと同じ25AのPE管とし、復路は20AのPE管とした。試験体Cは、試験体Aよりも往路の管長が長く、地盤との接触面積も大きいため、試験体Aよりも地盤との熱交換時間が長くかつ熱交換面積が大きい。
【0065】
いずれの試験体も、掘削孔と熱交換管の隙間に2号硅砂を充填した。また、地下水位の異なる帯水層間で鉛直浸透流を生じさせないように、D
sc1層とD
c5層の深度には、2号硅砂の代わりに止水材料としてベントナイトペレットを充填した。
【0066】
浅層部においては、気温の変化を受けやすい深度や地下水位以浅の深度では、熱交換管の周囲に保温材(発泡ポリエチレン)を施し、その外周に塩ビ管(VP125)を挿入して地盤との断熱処理を行った。地盤温度の計測部においては、熱交換管外側の所定の深度に、熱交換管に沿って熱電対を設置し、孔内設置時の破損を防ぐために熱電対の周りに保護ネットを設置した。さらに保護ネットの端部をビニルテープ及び結束バンドを用いて熱交換管に固定し、保護ネットが容易にずれたり剥がれたりしないようにした。
【0067】
以上の条件の下、試験体A、B、Cのそれぞれについて、ポンプにより循環水を循環させ、電気ヒーターにより循環水を加熱し、循環水の流量、入り口温度、出口温度の上昇を計測する温水循環試験の後、電気ヒーターとポンプを停止し、循環水の温度の回復を計測した(温度回復試験)。
【0068】
なお、試験体A、B、Cにおける加熱電力は、全て4200Wとした。循環水の流量は、それぞれ19.68L/min、14.97L/min、7.89L/minとなった。循環水の流量が異なるのは、ポンプの圧送圧力に対して、熱交換管の圧送抵抗により差異が出るためである。
【0069】
次に、試験結果について説明する。上述したように、試験結果は循環水の温度の経時データから算定した有効熱伝導率により評価した。
【0070】
図9には、試験体A、B、Cの熱交換管外側の所定の深度に設置した熱電対が測定した温度データから算出した有効熱伝導率の値が示されている。なお、有効熱伝導率は、単位厚みあたり1度の温度差がある場合に単位時間で単位面積を移動する熱量であり、値が大きいほど熱が伝わりやすく、熱交換効率が高いことを示す。
【0071】
図9に示したように、試験体A(一重直管)の有効熱伝導率は1.41〜1.77W/mKであり、試験体B(二重直管)の有効熱伝導率は1.62〜1.91W/mKであり、試験体C(一重らせん管)の有効熱伝導率は1.91〜2.05W/mKであった。すなわち、熱交換効率は、試験体Cが最も高く、次いで、試験体Bが高かった。換言すると、本発明に係る熱交換杭(試験体B、C)は、比較例に係る熱交換杭(試験体A)よりも熱交換効率が高かった。
【0072】
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0073】
第1実施形態においては、スパイラル管24Aが往路部のみに形成されていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば復路部のみに形成されていてもよいし、往路部、復路部の双方に形成されていてもよい。復路部のみに形成する場合は、熱媒体26の循環方向を逆にすればよく、循環管24をこのように構成しても熱交換効率を高くすることができる。また、往路部、復路部の双方に形成する場合は、熱交換効率をさらに向上させることができる。
【0074】
また、第1実施形態においては、地中熱交換部20は、砂杭(サンドパイル)の内部に循環管24が埋設された構成としたが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、筒状の鋼管杭を地盤80に埋設して、該鋼管杭の内部に珪砂を充填し、該鋼管杭を介して帯水層82A、82Bから熱伝達されるものであってもよい。管体を用いることで、止水材を用いることなく、帯水層82Aの地下水が地中熱交換部20を通って帯水層82Bに流入することを抑制できる。また、地震時などに循環管24が破断することを抑制することができる。
あるいは、鋼管杭の管体の帯水層82A、82Bを通る部分に、適宜な大きさと間隔を有するスクリーン(縦長のスリット、円形に削孔された孔等)を設けてもよい。このようにすれば、循環管24の破断を抑制しつつ、帯水層82A、82Bの地下水とスパイラル管24Aとが直接熱交換することができる。なお、管体を用いる構成については、第2実施形態、及び各変形例において適用してもよい。
【0075】
また、第1実施形態においては、地中熱交換部20の縦孔22は、2層の帯水層82Aと帯水層82Bを貫通しており、循環管24はそれぞれの帯水層に対応する部分にスパイラル管24Aを備えるものとしたが本発明の実施形態はこれに限られない。例えば縦孔22が貫通する帯水層は1層であってもよいし、3層以上であってもよい。また、縦孔22が複数の帯水層を貫通する場合において、スパイラル管24Aは全ての帯水層に対応する部分に設けられている必要はなく、例えば年間を通して温度が安定している地中深い部分の帯水層に対応する部分のみに設けてもよい。このように、地中熱交換部20の構成は、地盤80の状態に合わせて適宜変更することができる。
【0076】
また、第2実施形態においては、帯水層82A、82Bに対応する部分に設けられた外管94Aと、難透水層84A、84B、84Cに対応する部分に設けられた外管94Bとは同一径の同一部材とされているが本発明の実施形態はこれに限られない。例えば外管94Aを、外管94Bよりも太径として、継手部材等で接合してもよい。このように外管94Aを太径とすることで、熱媒体26が帯水層82A、82Bを通過する速度が遅くなるので、熱交換効率を高めることができる。この場合の外管94Bは、熱交換抑制部の一例である。同様に、第1実施形態のスパイラル管24Aも、往路直管24B、復路直管24Cと比較して太径としてもよい。
【0077】
また、第2実施形態においては、循環管94の外管94A、94Bが往路管とされ、内管94Cが復路管とされているが本発明の実施形態はこれに限られない。例えば外管94A、94Bを復路管として、内管94Cを往路管としてもよい。循環管94をこのように構成しても、熱交換効率を高くすることができる。
【0078】
また、第1実施形態においては、循環管24を樹脂製としたが本発明の実施形態はこれに限られず、複数の材料を組み合わせて構成してもよい。例えばスパイラル管24Aをステンレス、アルミ等の金属製とし、往路直管24B、復路直管24Cを、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の合成樹脂としてもよい。これにより、帯水層を通る部分での熱交換効率をさらに高めることができる。同様に、第2実施形態においても、外管94Aを金属製とし、外管94B、内管94Cを合成樹脂製としてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態の例について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。