特許第6738597号(P6738597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738597
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】局所屈折力を決定する方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20200730BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   G01N21/41 Z
   G01B11/25 H
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-206027(P2015-206027)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-105075(P2016-105075A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】10 2014 115 336.7
(32)【優先日】2014年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506284968
【氏名又は名称】イスラ サーフィス ヴィズィオーン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ クビヤック
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン リッペルダ
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−522234(JP,A)
【文献】 特開2011−227093(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3186077(JP,U)
【文献】 特表2002−529184(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02637011(EP,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102004047531(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0219522(US,A1)
【文献】 Markus C. Knauer et al.,Measuring the refractive power with deflectometry in transmission,DGaO Proceedings,2008年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
G01B 11/00−11/30
G01M 11/00−11/08
G01N 21/00−21/01,21/17−21/61,
21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを用いて、透明体(12)の体積要素(12a)における局所屈折を決定する方法であって、
前記パターン、前記透明体(12)を介して、第1カメラ(13)によって観察して、前記パターンに対向する前記透明体の前記体積要素(12a)の表面(17)の3次元形状及び位置決定し、
前記3次元形状及び前記位置を用いて、前記局所屈折力を決定する方法であって、
前記体積要素(12a)の前記表面(17)の既知の前記3次元形状及び前記位置に基づいて、前記パターンの観察によって決定される前記局所屈折力のそれぞれの補正が行われ、
前記補正は、前記体積要素(12a)の光学軸からの距離及び前記体積要素(12a)の前記表面(17)の曲率に対応して行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記表面(17)の前記3次元形状及び前記位置は、第2カメラ(15)を用いてデフレクトメトリ法によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記観察によって決定される前記体積要素(12a)の前記局所屈折力は、前記体積要素(12a)が前記光学軸から離れて位置する場合には、前記表面(17)の既知の三次元形状及び位置に基づいて補正されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、前記パターンは、動的格子(11)によって生成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の方法において、前記パターンに対向する前記透明体(12)の前記表面(17)の全体の3次元形状は、前記体積要素(12a)全ての前記3次元形状を結合することによって、決定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項記載の方法において、前記全体の3次元形状は、前記透明体(12)のCADデータと比較され、それに基づいて、前記局所屈折の決定のために選択されるべき視野が決定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の方法であって、前記局所屈折力を、前記透明体(12)の全体形状によって引き起こされる部分と、局所的な歪によって引き起こされる光学的効果が顕著である部分とに分離する、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
透明体(12)の体積要素(12a)における局所屈折を決定するための装置であって、該装置は、所定のパターンを用いて、前記局所屈折を決定し、前記パターンは、前記透明体(12)を介して、第1カメラ(13)によって観察され、前記パターンに対向する前記透明体(12)の前記体積要素(12a)の表面(17)の3次元形状及び位置を決定し、前記3次元形状及び前記位置を用いて、前記局所屈折を決定する装置であって、
前記体積要素(12a)の前記表面(17)の既知の前記3次元形状及び前記位置に基づいて、前記パターンの観察によって決定される前記局所屈折力のそれぞれの補正が行われ、
前記補正は、前記体積要素(12a)の光学軸からの距離及び前記体積要素(12a)の前記表面(17)の曲率に対応して行うことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項記載の装置において、前記表面の前記3次元形状及び前記位置は、第2カメラ(15)を用いてデフレクトメトリ法によって決定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、前記観察によって決定される前記体積要素(12a)の前記局所屈折力は、前記体積要素(12a)が前記光学軸から離れて位置する場合には、前記表面(17)の既知の三次元形状及び位置に基づいて補正されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の装置において、前記パターンは、動的格子(11)によって生成されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の装置において、前記パターンに対向する前記透明体(12)の前記表面(17)の全体の3次元形状は、前記体積要素(12a)全ての前記3次元形状を結合することによって、決定されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、前記全体の3次元形状は、前記透明体(12)のCADデータと比較され、それに基づいて、前記局所屈折の決定のために選択されるべき視野が決定されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項8又は9記載の装置であって、前記局所屈折力を、前記透明体(12)の全体形状によって引き起こされる部分と、局所的な歪によって引き起こされる光学的効果が顕著である部分とに分離する、ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラによって透明体を介して観察されるパターンを用いて、該透明体の体積要素における局所屈折を決定する方法に関する。本発明はさらに、その装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明体、例えば、車両用の窓ガラス、の品質検査のために、図1に示すような装置を用いて、光学的歪みが測定されることが多い。該装置において、光学的歪みは、局所屈折率に変換することができる。欧州規格ECE R43に記載された既知の方法において、以下のようなプロジェクタ1が使用される。すなわち、該プロジェクタ1は、透明体(例えばフロントガラス)を通して所定のパターンを投影壁3に投影する。フロントガラス2を通過したプロジェクタ1からの光は、投影壁において電子的な手段又は手動で観察される。フロントガラス2は多くの場合、搭載位置において検査される。フロントガラス2は、無視できないほどの広がりを有しているため、プロジェクタ1とフロントガラス2との間の既知の距離(伝搬距離)R1及びフロントガラス2と投影壁3との間の既知の距離R2は、フロントガラス2の領域のうち、プロジェクタ1と投影壁3との間の光軸上に存在する領域のみに適用される。フロントガラスの体積要素のうち、光軸から離れている体積要素は、プロジェクタ1及び投影壁3からの離間距離が大きくなる。上記規格によれば、屈折率の高精度測定は、光軸上のみで行わなければならないことになっている。これは、フロントガラスの大領域を検査するためには、フロントガラス2又はプロジェクタ1を投影壁3に対して、動かさなければならないということを意味する。これは、測定時間に対して、非常に時間のかかる作業となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、透明体における局所屈折率の高精度測定を簡便且つコスト効率よく行える方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記方法を行うコスト効率のよい装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題は、以下の方法によって解決される。該方法において、パターンに対向する透明体の体積要素の表面の3次元形状及び位置が決定され、該3次元形状及び該位置を用いて、局所屈折率が決定される。局所屈折率は、例えば、透明体の自動品質検査において、光学的歪みを引き起こす光学的欠陥を検知し分類するために決定される。これを達成するため、決定された局所屈折率は、要求される屈折率と自動的に比較される。透明体の特定の体積要素又は選択された領域において、それらが合致しない場合、又は決定された局所屈折率と要求される屈折率との違いが大きい場合、エラーが報告され(例えば、光学的及び/又は音声的に示され)、及び/又はそのような透明体は生産工程から除去される。ここで、体積要素は、透明体の3次元要素/部分であり、透明体は、複数の該体積要素から構成される。
【0005】
局所屈折率(屈折力)は、透明体の各体積要素における屈折率であると理解される。各体積要素における屈折率は、体積要素の表面の曲率、体積要素の性質、屈折率(透明体の光学的物性)に起因し、(局所)焦点距離の逆数である。局所屈折率は、任意の方向(光学軸)、例えば特定の品質検査において要求される方向(例えば、取り付け位置におけるフロントガラスを介して見通される方向)、において決定される。
【0006】
好ましい実施形態において、体積要素に関する表面の3次元形状及び位置は、カメラを用いたデフレクトメトリ法によって、決定される。或いは、参照マークを用いた手法において、純粋に機械的な接触による測定、又は三角測量による拡散反射面の測定、によって表面の3次元形状及び位置を決定することもできる。
【0007】
本発明に係る方法は、以下の知見に基づいている。すなわち、透明・反射体の3次元形状が測定可能な場合、透過における屈折値測定を補正するために、該3次元形状のデータを使用することは好都合であるということである。透明体の形状が既知である場合、それに対応した形状補正が可能である。全ての体積要素に対して、光学軸上における屈折率測定を行うことは必ずしも必要ではない。上述の屈折率の決定において、光学軸上に位置しない体積要素に対しては、透明体の体積要素の3次元形状及び位置が既知であれば、光学軸からの距離に応じて、或いは表面の曲率に応じて、屈折率の補正を行うことが可能である。これにより、測定時間が大幅に短縮され、また、正確な伝搬距離を用いることができるため、測定精度も向上する。また、本発明に係る方法は、生産において、より高い信頼性を有する。さらに、小さいスペースで済む。
【0008】
透明体の表面の形状及び各体積要素の位置が既知であれば、これら体積要素に対して、実座標を割り当てることができる。
【0009】
また、本発明によれば、好適には、透明体の大表面面積形状及び表面上の又は体積内における局所的な歪みの両方によって引き起こされる光学的効果が測定される。本発明によれば、透明体全体の3次元形状(各体積要素の3次元形状及び位置)が既知である場合、装置は、透明体全体の形状によって引き起こされる全体での効果を推測することができる。すなわち、各体積要素の屈折力を、透明体の全体形状によって引き起こされる部分と、局所的な歪み(例えば、表面上の又は体積内の欠陥)によって引き起こされる光学的効果が顕著である部分とに分離することができる。従って、本発明によれば、大表面面積による光学的効果と局所的な光学的効果とに分離することができる。
【0010】
透過における屈折率測定の前に、又は該屈折率測定と同時に、透明体の表面の3次元形状の決定を行うことができる。
【0011】
また、透明体の表面の形状が既知であるため、透過光学特性の測定結果、すなわち、決定された屈折力、を補正した状態で示すことができる。
【0012】
好ましい実施形態において、前記パターンは、動的格子を用いて生成される。この格子は、屈折率の決定を行うため、例えば、品質検査に対する、顧客からの様々な仕様に対して、異なるパターンを生成することができる。動的格子は、測定において特定の目的に適したパターンを電子的に生成する。局所屈折率は、透過において考慮されるパターンの局所的な歪みに基づいて、各体積要素に対して決定される。
【0013】
動的格子が使用される場合、各パターンに対して別々に測定が行われなければならない。この場合、測定は、時間的に連続して行われる。好ましい実施形態において、異なるパターンは、色分けされるか、及び/又は偏光で分けられる。これによって、異なるパターンの投影及び測定を同時に行え、時間を節約できる。例えば、3つの異なる格子を、3つのフォトダイオード(赤、黄、青)によって生成してもよい。これにより、これら3つの格子を同時に測定できる。格子の透過像を撮影するカメラは、色フィルター及び/又は偏光フィルターによって、異なる格子同士を区別することができる。
【0014】
他の好ましい実施形態において、パターンに対向する透明体の表面全体の3次元形状は、体積要素全ての表面の3次元形状を結合することによって決定される。従って、透明体の表面の全体形状は、各体積要素の位置を考慮した体積要素の個々の形状から構成される。透明体が比較的大きな場合及び/又は透明体の表面の曲率が比較的大きな場合、透明体の全体形状を決定するため、複数のカメラが必要とされる場合もある。この場合、各カメラは、透明体の一部を観察する。
【0015】
さらに、好適には、透明体の表面全体の3次元形状が既知であるので、この表面の曲率ひいては種々の視野角に対する透明体の屈折力は既知である。従って、設計によって決定されるような透明体の形状のみに基づく窓ガラスの光学特性を、計算することができる。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態において、パターンに対向する透明体の表面全体の3次元形状は、該透明体に関するCADデータと比較され、それに基づいて、局所屈折率の決定のために選択されるべき視野が決定される。そのような視野は、透明体の検査において必要とされる場合がある。というのは、品質検査において重要なものは透明体全体ではなく、仕様において決められているような、ある一部の特別な部分のみだけでよいという場合があるからである。
【0017】
さらに、上記課題は、透明体の体積要素における局所屈折率を決定するための以下の装置によって解決される。すなわち、該装置は、所定のパターンによって局所屈折率を決定し、該パターンは、透明体を介して、カメラによって観察され、該パターンに対向する該透明体の体積要素の表面の3次元形状及び位置を(例えば、反射において)決定し、該3次元形状及び該位置によって、局所屈折率を決定する。
【0018】
上記したように、本発明に係る装置は、透明体の自動品質検査において使用することができる。
【0019】
本発明に係る装置は、本発明に係る方法において述べた効果を有する。該装置は、上述の方法のステップを行うように設計される。
【0020】
本発明の他の効果、特徴及び可能な用途が、実施形態に対する以下の説明及び添付の図面から理解できよう。ここに記載及び/又は示す全ての特徴は、請求項又は以下に記載の文言にかかわらず、それ自体或いはそれらを組み合わせることで本発明の主題を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、従来技術に係る、透明体の体積要素における局所屈折率を決定する装置の側面図である。
図2図2は、本発明に係る、透明体の体積要素における局所屈折率を決定する装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2に示される装置において、動的格子11(dynamic lattice)によって生成された任意のタイプのパターンは、フロントガラス12の形態の透明体を通して、第1カメラ13によって観察される。これに基づいて、フロントガラス12の体積要素12aの局所屈折率が、既知の方法によって決定される。具体的には、光学軸外に位置する体積要素に対しても決定される。さらに、第2カメラ15が、フロントガラス12の動的格子11と同じ側に設けられ、フロントガラス12の反射光を観察する。
【0023】
フロントガラス12の表面17の形状は、第2カメラ15によるデフレクトメトリ法(deflectometry)によって同時に決定される。そうすることで、パターン/格子11に向かい合う表面の3次元形状が、各体積要素12aに対して決定され、体積要素12aの位置が決定される。透過測定において考慮される体積要素12aの局所屈折率の決定において、透明体12の表面17の形状もまた考慮される。従って、局所屈折率が光学軸から離れた位置において決定された場合、光学軸19上に位置しない体積要素において決定された局所屈折率に対して、フロントガラス12の表面17の形状及びフロントガラスにおける体積要素の位置に基づいて、補正を行うことができる。従って、屈折率を決定するための測定において、動的格子11に対してフロントガラス12も第1カメラ13も移動させる必要はない。その結果、測定時間が大幅に短縮され、決定された屈折率の精度が向上する。
【0024】
第1カメラ13を用いて、格子11の歪みに基づいた光学的効果が測定される。該光学的効果は、フロントガラス12の大表面面積形状及びフロントガラス12の表面17上又は体積中の局所的な歪みによって、引き起こされる。本発明によれば、全ての体積要素12aの表面17の局所3次元形状を結合することによって、フロントガラス12の表面全体の3次元形状が構成される場合、透明体の大表面面積によって引き起こされる全体的な効果を、本発明に係る装置において推測することができる。従って、局所屈折率の決定において、局所的な歪みによって引き起こされる光学的効果を示すことができる。従って、本発明を用いて、大表面面積の光学的効果と局所的な光学的効果を分離することができる。
【0025】
透明体の品質検査において、(例えば、ある視野における)各体積要素に対して決定された屈折率は、要求される屈折率範囲又は要求される屈折率と比較される。決定された屈折率が、要求される屈折率又は屈折率範囲と合わない場合、該透明体は、品質仕様を満たしておらず、エラーが知らされ及び/又は該透明体は、生産工程から除去される。
【符号の説明】
【0026】
1…プロジェクタ
2…透明体
3…投影壁
R1…距離:プロテクタ−透明体間
R2…距離:透明体−投影壁間
11…動的格子
12…フロントガラス
12a…フロントガラスの体積要素
13…第1カメラ
15…第2カメラ
17…フロントガラスの表面
図1
図2